特許第5917013号(P5917013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917013
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/648 20060101AFI20160422BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01R13/648
   H01R13/52 301E
   H01R13/52 301H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-93054(P2011-93054)
(22)【出願日】2011年4月19日
(65)【公開番号】特開2012-226948(P2012-226948A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2013年10月4日
【審判番号】不服2015-9712(P2015-9712/J1)
【審判請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 政幸
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 森川 元嗣
【審判官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−94027(JP,A)
【文献】 特開2011−9108(JP,A)
【文献】 特開2010−40396(JP,A)
【文献】 特開2003−272729(JP,A)
【文献】 特開2011−44354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される機器が収容された金属製のケースに装着されるシールドコネクタであって、
電線の端末に接続された端子金具を内部に収容して前記電線が引き出されたコネクタハウジングと、
前記電線と前記コネクタハウジングとの間をシールする第一シール部材と、
前記コネクタハウジングを覆うシールドシェルとを備えて構成されており、
前記シールドシェルは、一端に前記ケースが電気的に接続され、他端に前記コネクタハウジングから引き出された前記電線を包囲する金属製のシールド導電体がかしめリングによってかしめ付けられて電気的に接続されるようになっており、
前記シールドシェルの他端には、前記シールド導電体を覆って締め付けバンドによってかしめ固定されることにより同シールドシェルの外面を伝う水が前記シールド導電体に接触することを防ぐゴムブーツが固定されて装着されており、
前記コネクタハウジングと前記シールドシェルとの間には、前記コネクタハウジングと前記シールドシェルとの間から前記シールド導電体が配された方向への水の浸入を防ぐ第二シール部材が設けられており、
前記シールドシェルにおいて前記シールド導電体が接続された部分は、前記シールドシェルにおいて前記ゴムブーツが固定された部分よりも小径に形成されており、
前記第二シール部材は、前記シールドシェルにおいて前記ゴムブーツが固定された部分の内側に配されていることを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項2】
前記シールド導電体は、標準電極電位が異なる複数の異種金属が電気的に接続されて形成されていることを特徴とする請求項1記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載された機器に接続されるシールドコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このシールドコネクタは、機器が収容された金属製のケースに装着され、電線に接続された複数の端子金具を内部に保持するコネクタハウジングと、このコネクタハウジングから引き出された電線の外周とコネクタハウジングの内周との間をシールするゴム栓と、コネクタハウジングの外面を覆うようにコネクタハウジングに装着される筒状のシールドシェルとを備えて構成されている。
【0003】
シールドシェルは、ケースと電気的に接続され、且つ、コネクタハウジングから引き出された電線を覆う編組線などのシールド導電体に電気的に接続されることで、ケースからシールド導電体までの間をシールドしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−113909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、シールドコネクタを車両の外部に配索する場合、シールドコネクタが風雨に晒される虞があり、風雨に晒されると水がコネクタハウジングとシールドシェルとの隙間を通ってシールドシェル内に浸入してしまう。そして、シールドシェル内に浸入した水は、ゴムリングによってコネクタハウジング内に浸入することは防がれるものの、シールドシェル内を通ってシールド導電体側に浸入してしまう。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、水がシールドシェル内を通ってシールド導電体側に浸入することを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、車両に搭載される機器が収容された金属製のケースに装着されるシールドコネクタであって、電線の端末に接続された端子金具を内部に収容して前記電線が引き出されるコネクタハウジングと、前記電線と前記コネクタハウジングとの間をシールする第一シール部材と、前記コネクタハウジングを覆うシールドシェルとを備えて構成されており、前記シールドシェルは、一端に前記ケースが電気的に接続され、他端に前記コネクタハウジングから引き出された前記電線を包囲する金属製のシールド導電体がかしめリングによってかしめ付けられて電気的に接続されるようになっており、前記シールドシェルの他端には、前記シールド導電体を覆って締付バンドによってかしめ固定されることにより同シールドシェルの外面を伝う水が前記シールド導電体に接触することを防ぐゴムブーツが固定されて装着されており、前記コネクタハウジングと前記シールドシェルとの間には、前記コネクタハウジングと前記シールドシェルとの間から前記シールド導電体が配された方向への水の浸入を防ぐ第二シール部材が設けられており、前記シールドシェルにおいて前記シールド導電体が接続された部分は、前記シールドシェルにおいて前記ゴムブーツが固定された部分よりも小径に形成されており、前記第二シール部材は、前記シールドシェルにおいて前記ゴムブーツが固定された部分の内側に配されているところに特徴を有する。
【0008】
このような構成のシールドコネクタによると、コネクタハウジングと電線との間からコネクタハウジング内に水が浸入することを第一シール部材によって防止できることは勿論、コネクタハウジングとシールドシェルとの間からシールドシェルの内部に水が浸入することを第二シール部材によって防止できる。これにより、水がシールドシェル内を通ってシールド導電体側に浸入することを防止することができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下のような構成としてもよい。
前記シールド導電体は、標準電極電位が異なる複数の異種金属が電気的に接続されて形成されている。
このような構成によると、強度が求められる場所では強度の高い金属を使用し、曲げ変形が求められる場所では変形のし易い金属を使用するなど適宜異種金属を繋ぎ合せてシールド導電体を形成することができる。ところが、標準電極電位が異なる異種金属同士が接続された部分に水分などの電解質溶液が介在すると、両金属が水中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応により腐食が進行する電食が発生する。その点、本発明によるとコネクタハウジングとシールドシェルとの間から浸入する水を第二シール部材によって防ぐことができるので、標準電極電位が異なる異種金属同士が接続された部分に水が浸入することを防ぐことができる。これにより、標準電極電位が異なる異種金属同士の間で電食が発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水がシールドシェル内を通ってシールド導電体側に浸入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シールドコネクタに第一ゴムブーツを装着した状態の斜視図
図2】シールドコネクタの分解斜視図
図3】シールドコネクタが機器のケースとシールド導電体とに接続された状態を示す平面図
図4図3のV−V線断面図
図5図4の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の一実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。
本実施形態は、図4に示すように、機器を収容する金属製のケースCに設けられた取付孔C1に嵌着されるシールドコネクタ10を例示している。
【0013】
このシールドコネクタ10は、図1に示すように、電線Wの端末に接続された複数(本実施形態では2つ)の端子金具20を内部に収容する合成樹脂製のコネクタハウジング30と、コネクタハウジング30を覆うシールドシェル50とを備えて構成されている。
【0014】
端子金具20は、図2及び図5に示すように、平板状をなし、端子金具20の後端部には電線Wが導通可能に接続されている。また、端子金具20の前後方向略中央部には上下方向に貫通する係止孔21が形成されている。
【0015】
コネクタハウジング30は、図2に示すように、横長な扁平形状をなし、前後方向に貫通する筒状に形成されている。また、コネクタハウジング30は、前後方向略中央部より前方側が幅方向に横長な断面楕円形状をなす大径部32とされ、後方側が幅方向に横長な断面長円形状をなす小径部33とされている。
【0016】
大径部32は、図5に示すように、ケースCの取付孔C1に嵌合可能とされている。大径部32の外周面には、図2及び図5に示すように、楕円形状をなす第一ゴムリング71が嵌着された第一装着溝35が全周に亘って形成されている。
【0017】
第一ゴムリング71は、図5に示すように、大径部32がケースCの取付孔C1に嵌合された際に、第一装着溝35の底壁(大径部32の外周面)と取付孔C1の内周面とに密着して、大径部32の外周面と取付孔C1の内周面との間を水密状にシールしている。これにより、外部からケースCの内部に水が浸入することを防止している。
【0018】
一方、小径部33は、図2及び図5に示すように、幅方向に横長な扁平形状をなし、大径部32に対して幅方向に偏心した位置に設けられている。
【0019】
小径部33の後端部における幅方向中央部には、上下両側に内側に弾性変形可能な一対の係止爪33Aが形成されている。
【0020】
コネクタハウジング30の内部には、図2及び図5に示すように、前後方向に貫通するキャビティ31が幅方向に複数(本実施形態では2つ)並んで形成されている。また、キャビティ31は、大径部32及び小径部33に亘って形成されている。
【0021】
キャビティ31内には、図5に示すように、端子金具20が後方から挿入可能とされている。各キャビティ31の内部には、上方に弾性変形可能な片持ち状のランス34が形成されている。このランス34と端子金具20の係止孔21とが前後方向に係止することにより、端子金具20がキャビティ31内に保持されている。また、端子金具20に接続された電線Wはキャビティ31の後端開口から後方に引き出されている。
【0022】
また、各キャビティ31の後端開口には、図5に示すように、環状のゴム栓(本発明の「第一シール部材」の一例)70が装着されており、キャビティ31の内周面と電線Wの外周面とに密着することで、キャビティ31の内周面と電線Wの外周面との間を水密状にシールしている。これにより、キャビティ31の後端開口からキャビティ31内に水が浸入することを防止している。
【0023】
ゴム栓70の後方には、図2及び図5に示すように、バックリテーナ80が配置されている。このバックリテーナ80は、各ゴム栓70の後端面に接触する形態とされ、各ゴム栓70を一括して抜け止めしている。また、バックリテーナ80は、一対の半割体を上下方向から挟み付けるように電線Wに組み付けて構成されている。バックリテーナ80の上下両側には、抜け止め突起81が複数設けられている。一方、各キャビティ31の後端開口には、上下両側にバックリテーナ80の抜け止め突起81と係止可能な抜け止め孔31Aとが上下方向に貫通して設けられている。そして、抜け止め突起81が抜け止め孔31Aと前後方向に係止することにより、バックリテーナ80がコネクタハウジング30に対して後方に抜け止めされた状態で保持されている。
【0024】
シールドシェル50は、図2及び図5に示すように、小径部33の外周面を覆う筒状のシェル本体部51と、シェル本体部51の前端開口縁から径方向に延出された延出片52とを備えて構成されている。なお、シールドシェル50は、鉄製の板材を母材としてプレス加工することによって形成されており、シェル本体部51は、延出片52に対して絞り加工することによって形成されている。
【0025】
シェル本体部51は、断面長円形状をなし、シェル本体部51の内部には、図5に示すように、小径部33が嵌合可能とされている。そして、シェル本体部51と小径部33とが正規の嵌合状態に至った際には、ケースCから露出されたコネクタハウジング30がシェル本体部51によってほぼ完全に覆われるように形成されている。すなわち、コネクタハウジング30のキャビティ31内に保持された端子金具20及び電線Wは、シェル本体部51に一括して覆われるようになっている。
【0026】
また、シェル本体部51の前端部は、図5に示すように、大径部32と小径部33との境界部分に設けられた段付部32Aと当接することで前止まり状態とされ、シェル本体部51の後端部は、小径部33の両係止爪33Aによって係止されることにより、シールドシェル50がコネクタハウジング30に対して前後方向に移動が規制された状態で保持されている。
【0027】
延出片52の上縁部における幅方向両側には、図1に示すように、一対の取付片53が設けられている。両取付片53は、延出片52の上端部から前方に突出して形成されている。また、両取付片53には、図1及び図5に示すように、上下方向に貫通するボルト挿通孔54が形成されている。このボルト挿通孔54に固定ボルトVを挿通して、ケースCに締め込むことにより、シールドコネクタ10がケースCに確実に取り付け固定されると共に、シールドシェル50がケースCに対して電気的に接続される。
【0028】
また、シールドシェル50のシェル本体部51の後方部には、図4に示すように、コネクタハウジング30のキャビティ31から後方に引き出された複数の電線Wを一括して覆うシールド導電体60が装着されている。
【0029】
シールド導電体60は、図4に示すように、シールドシェル50のシェル本体部51の後端部に電気的に接続される編組線61と、編組線61の後端部に電気的に接続されるシールドパイプ62とから構成されている。
【0030】
編組線61は、銅又は銅合金製の素線を編んだ筒状をなし、編組線61の内部には、複数の電線Wが一括して挿通可能とされている。編組線61の前端部は、図5に示すように、シェル本体部51の後端部に被せられた状態で、金属製のかしめリング63によってかしめ付けられることでシェル本体部51に対して電気的に接続されている。また、編組線61は、可撓性を有しており、任意の方向に曲げ変形可能とされている。なお、編組線61の素線の表面は、錫めっきが施されており、酸化や錆の発生が抑制されている。
【0031】
シールドパイプ62は、図4に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金製の円筒状をなし、シールドパイプ62の内部には、複数の電線Wが一括して挿通可能とされている。シールドパイプ62の前端部は、編組線61の後端部が被せられた状態で、金属製のかしめリング63によってかしめ付けられることで編組線61に対して電気的に接続されている。また、シールドパイプ62は、その内部に挿通される電線Wを水や異物の干渉から保護する保護機能を有している。
【0032】
コネクタハウジング30のキャビティ31から後方に引き出された複数の電線Wは、図4に示すように、この編組線61及びシールドパイプ62内に挿通され、編組線61とシールドパイプ62とによって、一括してシールドされている。
【0033】
また、編組線61の配設部分には、図4に示すように、略円筒状の合成樹脂製のプロテクタ64が被着されている。プロテクタ64は、可撓性を有する蛇腹状のコルゲートチューブ64Aと、コルゲートチューブ64Aの前端部に装着された略筒状の第一ゴムブーツ64Bと、コルゲートチューブ64Aの後端部に装着された略筒状の第二ゴムブーツ64Cとから構成されている。なお、第一ゴムブーツ64Bの後端開口部の内周面には、コルゲートチューブ64Aの前端部の外周面に密着する複数条の図示しない内周リップが設けられている。この内周リップは、コルゲートチューブ64Aの前後両端部の外周面に密着することにより、第一ゴムブーツ64Bとコルゲートチューブ64Aとの隙間から水が浸入することを防止している。また、第二ゴムブーツ64Cの前端開口部の内周面には、第一ゴムブーツ64Bの後端開口部の内周面と同様、コルゲートチューブ64Aの後端部の外周面に密着する複数条の図示しない内周リップが設けられている。この内周リップは、コルゲートチューブ64Aの前後両端部の外周面に密着することにより、第二ゴムブーツ64Cとコルゲートチューブ64Aとの隙間から水が浸入することを防止している。
【0034】
第一ゴムブーツ64Bの前端開口部は、図3及び図4に示すように、編組線61の前端部及びかしめリング63を覆うようにしてシェル本体部51に嵌合され、締め付けバンド65によってかしめ固定されている。これにより、シェル本体部51と第一ゴムブーツ64Bとの隙間から水が浸入することが防止されている。一方、第二ゴムブーツ64Cは、編組線61の後端部及びかしめリング63を覆うようにしてシールドパイプ62の前端部に嵌合され、締め付けバンド65によってかしめ固定されている。これにより、シールドパイプ62と第二ゴムブーツ64Bとの隙間から水が浸入することが防止されている。すなわち、コネクタハウジング30のキャビティ31から後方に引き出された複数の電線Wは、シールドパイプ62及びプロテクタ64によって一括して覆われることにより、水や異物の干渉などから保護されている。
【0035】
また、電線Wは、軽量でかつ強度が必要とされる箇所では、シールドパイプ62に覆われることで電線Wが水や異物の干渉などから保護され、曲げ変形が必要とされる箇所では、可撓性を有する編組線61及びコルゲートチューブ64Aに覆われることで任意の方向に曲げ変形可能とされている。すなわち、編組線61とシールドパイプ62とを必要に応じて繋ぎ合せることにより、車両内において、シールド導電体60を任意な形態に容易に配索することができるようになっている。
【0036】
さて、小径部33の外周面には、図5に示すように、第二ゴムリング(本発明の「第二シール部材」の一例)72が装着された第二装着溝36が全周に亘って形成されている。
【0037】
この第二ゴムリング72は、コネクタハウジング30の小径部33とシールドシェル50のシェル本体部51とが嵌合された際に、小径部33の外周面とシェル本体部51との間を水密状にシールするようになっている。
【0038】
詳細には、第二装着溝36は、小径部33の略中央部に全周に亘って張り出したフランジ36Aと、大径部32と小径部33との境界に設けられた段付部32Aとに囲まれることによって凹状に構成されている。このため、第二装着溝36は、小径部33の前後方向略中央部よりも前方に配設されている。
【0039】
一方、第二ゴムリング72は、図2乃至図5に示すように、長円形状をなし、第二ゴムリング72が第二装着溝36に装着された状態では、第二装着溝36から僅かに突出するように設定されている。また、第二ゴムリング72の内周面には、第二装着溝36の底壁(小径部33の外周面)に密着する複数条の内周リップ72Aが全周に亘って形成されており、第二ゴムリング72の外周面には、シェル本体部51の内周壁に密着する複数条の外周リップ72Bが全周に亘って形成されている。
【0040】
そして、第二ゴムリング72は、小径部33とシェル本体部51とが嵌合された際に、小径部33の前方部において内周リップ72Aが第二装着溝36の底壁(小径部33の外周面)に密着すると共に、外周リップ72Bがシェル本体部51の内周壁に密着することで、小径部33とシェル本体部51との間を水密状にシールすることができる。これにより、例えば、ケースCとシールドシェル50の延出片52との隙間Xを通ってきた水が小径部33とシェル本体部51との間からシェル本体部51内に浸入することを防止することができる。
【0041】
ところで、水がコネクタハウジング30とシールドシェル50との間から浸入することを防ぐには、ケースCとシールドシェル50との間にシールを設ける手段が考えられる。ところが、その場合には、ケースCの取付孔C1の周辺に面シールなどを装着するスペースが必要であると共に、ケースCに対してシールドシェル50を強く押さえつける必要がある。シールドシェル50をケースCに対して強く押しつける手段としては、一般にシールドシェル50をケースCに対して嵌合方向(前後方向)にねじやボルトで固定する手段が考えられる。しかしながら、このような手段によると、面シールの外周縁部にねじやボルトなどを嵌合方向に締め付けるスペースが更に必要となる。このようなスペースが確保することができない場合、ケースCに対してシールドシェル50を嵌合方向に押さえつけることができなくなることから、ケースCとシールドシェル50との間のシール性が低下してしまう。その点、本実施形態によると、第二ゴムリング72が小径部33とシェル本体部51との間に設けられているので、ケースCの取付孔C1の外周縁部に面シールなどを装着するスペースやねじやボルトなどを嵌合方向に締め付けるスペースがない場合においても有効である。
【0042】
また、シールドシェル50の後方に接続された編組線61とシールドパイプ62とがかしめリング63によってかしめ付けられた部分では、編組線61の錫めっきが剥がれてしまう場合があり、錫めっきが剥がれると編組線61とシールドパイプ62とが直接接続された状態となる。アルミニウムと銅とは、標準電極電位が異なるため、編組線61とシールドパイプ62との接続部分において、埃や砂などに混じった塩分が付着し、更に水分が付着すると、編組線61とシールドパイプ62との接続部分に電解質溶液が付着した状態となる。すると、電解質溶液が付着した部分で電気化学的反応により腐食が進行する電食が発生してしまう。その点、本実施形態によると、シールドシェル50とシールドパイプ62との間から浸入する水をプロテクタ64によって防ぐと共に、小径部33とシェル本体部51との隙間から浸入する水を第二ゴムリング72によって防ぐことができるので、編組線61とシールドパイプ62との接続部分に水が浸入することを防ぐことができる。ひいては、編組線61とシールドパイプ62との接続部分で電食が発生することを抑制することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施形態では、小径部33の前方部に第二ゴムリング72を装着した構成としたが、参考例として、例えば、第二ゴムリング72を小径部33の前後方向中央部や後方部に装着する構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、各キャビティ31にそれぞれゴム栓70を装着する構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、複数のキャビティ31を一括してシールする一括ゴム栓を装着する構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、第二シール部材を内周リップ72A、外周リップ72Bが設けられた第二ゴムリング72として構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、第二シール部材をOリングによって構成してもよい。
(4)上記実施形態では、シールド導電体60を編組線61とシールドパイプ62とから構成したが、参考例として、例えば、シールド導電体60をシールドパイプ62のみで構成し、シールドパイプ61をシールドシェル50に直接接続する構成としてもよい。
(5)上記実施形態では、第二シール部材を小径部33の外周面に装着する第二ゴムリング72として構成したが、参考例として、例えば、第二シール部材をコネクタハウジング30とシールドシェル50との間で前後方向に面接触させる面シールとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:シールドコネクタ
20:端子金具
30:コネクタハウジング
50:シールドシェル
60:シールド導電体
70:ゴム栓(第一シール部材)
72:第二ゴムリング(第二シール部材)
C :ケース
W :電線
図1
図2
図3
図4
図5