(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917042
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】錠前におけるロック状態解消維持機構
(51)【国際特許分類】
E05B 65/06 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
E05B65/06 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-175858(P2011-175858)
(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公開番号】特開2013-40441(P2013-40441A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】児島 龍一
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−249920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
E05C 1/00− 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダルマの回転力を直線運動に変換する動力変換部材を構成する制御レバーの下端部に形成した係合制御部(24)に、その中央部が第2固定軸(12)に軸支され、該中央部から上向きの人差し指に相当する部分が第1係合部(13b)であり、一方、前記第1係合部に対して所定の角度開いた親指に相当する部分が第2係合部(13a)であるハンドルロック部材(13)の前記第1係合部を係合させ、
また前記制御レバーの下端部に形成した係合突起(26)を、ロック状態解消維持片(31)を錠箱のフロント方向へ常時付勢するように第3固定軸(42)とロック解除レバー(41)を介して間接的に設けられ、或いはロック状態解消維持片側に直接的に設けられたかのいずれかである復帰バネ(36)のバネ力により施錠位置に戻る共に、支持突起(33)を有する前記ロック状態解消維持片に係合させ、
前記ダルマがロックを解消する方向に回転した作動時、前記制御レバーが該ダルマに連動して上昇すると、前記ハンドルロック部材は、ハンドル軸と共に回転する或いは第1固定軸(4)に軸支されているかのいずれかである基端部(3a)と、該基端部に連設すると共に前記錠箱のフロントから突出する錠片と係合する腕状係合部(3c)と、該腕状係合部に連設すると共に前記錠片の上辺から突出する先端部(3d)とを有するハンドルカム部材(3)に対するロックを解く方向へと回転し、
一方、前記ロック状態解消維持片は、前記支持突起が上方に位置変位する係合突起に押圧されることにより、前記復帰バネのバネ力に抗して位置変位すると共に、前記係合突起が前記支持突起を越えた瞬間に該復帰バネのバネ力によって戻され、該係合突起は該支持突起に一時的に支持されることにより、前記ハンドルロック部材のロック状態の解消を維持する錠前におけるロック状態解消維持機構。
【請求項2】
請求項1に於いて、ハンドルロック部材を軸支する第1固定軸には、錠片を施錠する錠片用ストッパー片の基端部が同軸上に軸支され、該錠片用ストッパー片とロック状態解消維持片には、第3固定軸で軸支されたロック状態解消維持片用のロック解除レバーが介在し、該ロック解除レバーは、前記錠片用ストッパー片に連動して、復帰バネのバネ力に抗して回転することを特徴とする錠前におけるロック状態解消維持機構。
【請求項3】
請求項2に於いて、ハンドルカム部材に対するハンドルロック部材のロック状態が解消すると、前記ハンドルカム部材は、その腕状係合部でもって錠片用ストッパー片の施錠状態を解くと共に、直接、錠片を箱内に後退動させることを特徴とする錠前におけるロック状態解消維持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠前におけるロック状態解消維持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、出願人が提案したものである。例えば特許文献1は、「錠箱のラッチボルト進退方向の奥行き長を最小限にすること」を主たる目的とし、「扉の縦枠に設けられ閉扉で該縦枠から横方向に錠ボルトを突出するとともに、開扉で該錠ボルトを後退させて収納保持するプッシュプル電気錠であって、開扉方向と同方向の押し引き操作力を扉面に垂直な軸回りの回転操作力として操作軸に入力する変換機構と、錠ボルト突出状態で前記操作軸を回転規制するロック爪と、解錠回転される解錠軸に従動し該ロック爪の回転規制を解除するリンク機構と、前記操作軸の回転で前記縦枠の長手方向にスライドされ斜め穴に係合させた前記錠ボルトを後退方向に従動させるスライドカム板と、前記錠ボルトが突出する方向に該スライドカム板を付勢する付勢手段と、前記錠ボルトを後退位置に保持するラチェット爪と、閉扉にて被施錠体から磁気反発力を受けて作動し該ラチェット爪による前記錠ボルトの保持を解除するリリーサと、前記錠ボルトを突出させた前記スライドカム板のスライド位置で該スライドカム板に押圧されて揺動し傾斜姿勢から垂下姿勢に配置される保持レバーと、垂下配置される該保持レバーの揺動先端に揺動一端が当接して起立配置されるとともに、揺動他端が前記ロック爪に当接し前記ロック爪の係止解除方向の回転で該ロック爪に押圧されて倒れるスイッチレバーと、該スイッチレバーの起立配置でのみ該スイッチレバーに押圧されて電気接点を動作させる施錠検出手段と、を具備したことを特徴とするプッシュプル電気錠」が開示されている。特許文献2も同様の目的を有する。
【0003】
ところで、例えば特許文献1の段落0033乃至段落0036には、本願発明の左右方向に往復動可能なロック状態解消維持片の機能に相当する保持プレート51が、
図8及び
図9と共に記載されているが、該保持プレート51は、支持片135を有するスペーサ部材57、解錠アーム69及びスライドカム板43にそれぞれ係脱するように錠ケース19のフロント側に、スプリング14と共に支持ピン137を介して配設しなければならないので、部品点数が多くなるのみならず、配設が面倒であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−256907号公報
【特許文献2】特開2009−257049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の所期の目的は、例えば電気錠に関する特許文献1等と同様に、電気錠を構成する各部材を錠箱の上下方向に合理的に配設し、錠箱の錠片、例えばラッチボルト進退方向の奥行き長を最小限にすることである。第2の目的は、機械的錠前又は電気的錠前のいずれにも適用することができる次世代型の錠前を提供することである。第3の目的は、例えば特許文献1、特許文献2等の次世代型の電気錠として、ハンドルカム部材に対するハンドルロック部材のロック状態が解消した時、左右方向に位置変位するロック状態解消維持片を用いて一時的に該ロック解消状態を保持し、操作部材の操作力により、扉枠側の受け具に係合する錠片を錠箱内に後退動させることができることである。その他の目的は、開扉の際、ハンドルロック部材が操作部材の操作力により回転する該回転力を利用して、一時的にロック解消状態の保持を解くことである。また、縦長錠箱内の内部空間を有効的に活用することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハンドルカム部材に対するハンドルロック部材のロック状態が解消すると、扉枠側の受け具に係合する錠片を操作部材の操作力により錠箱内に後退動させることができる錠前におけるロック状態解消維持機構である。
【0007】
具体的には、本発明のロック状態解消維持機構は、ダルマの回転力を直線運動に変換する動力変換部材を構成する制御レバーの下端部に形成した係合制御部
(24)に
、その中央部が第2固定軸(12)に軸支され、該中央部から上向きの人差し指に相当する部分が第1係合部(13b)であり、一方、前記第1係合部に対して所定の角度開いた親指に相当する部分が第2係合部(13a)であるハンドルロック部材
(13)の
前記第1係合部を係合させ、また前記制御レバーの下端部に形成した係合突起
(26)を、
ロック状態解消維持片(31)を錠箱のフロント方向へ常時付勢するように第3固定軸(42)とロック解除レバー(41)を介して間接的に設けられ、或いはロック状態解消維持片側に直接的に設けられたかのいずれかである復帰バネ
(36)のバネ力により
施錠位置に戻る共に
、支持突起
(33)を有する
前記ロック状態解消維持片に係合させ、前記ダルマがロックを解消する方向に回転した作動時、前記制御レバーが該ダルマに連動して上昇すると、前記ハンドルロック部材は、
ハンドル軸と共に回転する或いは第1固定軸(4)に軸支されているかのいずれかである基端部(3a)と、該基端部に連設すると共に前記錠箱のフロントから突出する錠片と係合する腕状係合部(3c)と、該腕状係合部に連設すると共に前記錠片の上辺から突出する先端部(3d)とを有するハンドルカム部材
(3)に対するロックを解く方向へと回転し、一方、前記ロック状態解消維持片は、
前記支持突起が上方に位置変位する係合突起に押圧されることにより、前記復帰バネのバネ力に抗して位置変位すると共に、前記係合突起が前記支持突起を越えた瞬間に該復帰バネのバネ力によって戻され、該係合突起は該支持突起に一時的に支持されることにより、前記ハンドルロック部材のロック状態の解消を維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(a)請求項1に記載の発明は、例えば特許文献1とは異なる構成で、電気錠を構成する各部材を錠箱の上下方向に合理的に配設し、錠箱の錠片、例えばラッチボルト進退方向の奥行き長を最小限にすることができる。
(b)また次世代型の錠前として、機械的錠前又は電気的錠前のいずれにも適用することができる。特に、ハンドルカム部材に対するハンドルロック部材のロック状態が解消した時、左右方向に位置変位するロック状態解消維持片を用いて一時的に該ロック解消状態を保持し、操作部材の操作力により、扉枠側の受け具に係合する錠片を錠箱内に後退動させることができる。
(c)請求項2に記載の発明は、ロック状態解消維持片用のロック解除レバーは、錠片用ストッパー片とロック状態解消維持片との間に介在するので、開扉の際、ハンドルロック部材が操作部材の操作力により回転する該回転力を利用し、一時的にロック解消状態の保持を解くことができる。付言すると、簡単な機構と合理的手段(ロック状態解消維持片)により、本発明の所期の目的を達成することができる。
(d)請求項3記載の発明は、特許文献1等の如く、錠片を、スライド板等を介して間接的に錠箱内へ後退動させないので、錠前の機構をシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1乃至
図8は、本発明の実施形態の一例を示す各説明図である。
【
図1】ハンドルカム部材をロックしている初期状態の概略説明図。
【
図2】ハンドルカム部材を中心とする各部材の説明図。
【
図4】ロック状態解消維持片31及び動力変換部材の制御レバーの下端部を中心とする説明図。
【
図6】ロック状態、その中途状態及びロック解消状態の流れを示す説明図(主要部の概略)。
【
図7】操作部材の操作力によりハンドルカム部材3が回転した時の作用図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、錠片2が錠箱1のフロント1aから水平方向へ進出して扉枠aの受け金具bに係合していると共に、ハンドルカム部材3がハンドルカム部材用ロック部材13の下側の第2係合部13aにロックされ、また同時に、前記錠片2がハンドルカム部材用ロック部材13と同軸12で軸支された錠片用ストッパー片11の先端部で施錠されている施錠状態を示す概略説明図である。また
図1は、縦長或は細長状錠箱1の内部空間の上方に配設されたダルマラック20bを含む付勢手段20の付勢力により、該付勢手段20よりも下方に配設されたダルマ21がロックを解消する方向に回転する前(いわば施錠位置)にある状態を示す。したがって、ダルマ21は、図示しないシリンダ錠又はサムターン側の操作力により、
図1の状態から、
図5の状態を経て、
図8のロックを解消する方向へと回転することができる(いわば解錠位置)。
【0011】
本発明は、機械的錠前又は電気的錠前のいずれにも適用することができるが、例えば機械的錠前を一例にして説明する。もちろん、本実施形態に、図示しない駆動モータ、ソレノイド等の、制御基板、遠隔又は手動操作による施・解錠モート切換え装置等を加味して、電気錠にすることもできる。
【0012】
まず、錠箱1の錠片2と関りあうハンドルカム部材3、該ハンドルカム部材3に関りあうハンドルカム部材用ロック部材13及び錠片用ストッパー片11の構成を説明する。
【0013】
1は、扉の幅の狭い縦框cに取り付けられる錠前Xの錠箱で、この錠箱1は、例えば、前記狭縦框の幅に対応して縦長状に形成されている。したがって、実施形態の錠前Xは、特許文献1の記載の扉(例えばガラス扉)に適合する。しかし、本発明の錠前Xはガラス扉に限定されるものではない。
【0014】
2は、錠箱1に進退動自在に設けられた錠片(例えば、デッドラッチ、ラッチボルト、錠ボルトなど称される係合部材)で、該錠片2はその後端部2aにハンドルカム部材3と係合する貫通状あるいは凹所状の不番の係合部を有する。前記ハンドルカム部材3は、その基端部3aが錠片2よりも下方に位置する第1固定軸4に軸支されている(実施形態によって、ノブやレバーハンドルのハンドル軸)。該基端部3aの下側には、図示しない内外の操作部材(例えばプッシュ・プルハンドル)の内端部にそれぞれ設けられた内外の突片5,6と係合する短片状第1係合部3bが半径外方向に延在している。また、該基端部3aの上側には、腕状第2係合部3cが延在し、該腕状第2係合部3cは前述した錠片2の後端部2aの係合部と貫通状態に係合する。そして、腕状第2係合部3cの錠片2から突出する先細り状先端部3dには、小さなローラ7が回転自在に設けられている。
したがって、ハンドルカム部材3は、ノブやレバーハンドルのハンドル軸と共に回転する、或いは第1固定軸4に軸支されているかのいずれかである基端部3aと、該基端部に連設すると共に錠箱1のフロント1aから突出する錠片2と係合する腕状係合部3cと、該腕状係合部に連設すると共に前記錠片2の上辺から突出する先端部3aとを有するものである。
【0015】
11は、錠片2よりも多少上方に位置する第2固定軸12に軸支された錠片用ストッパー片で、この錠片用ストッパー片11の下辺に形成した下向き弧状の切欠状係合部には、前述したハンドルカム部材3の小ローラ7が係脱する。13は、錠片用ストッパー片11と同様に前記第2固定軸12に軸支されたハンドルカム部材用ロック部材で、このハンドルカム部材用ロック部材13は、いわば、右手の親指と人差指とを左向きに開いた格好のL型状に形成され、錠片2の施錠時、前記右手の親指に相当する、或は左右方向を指向する第2係合部13aは、ハンドルカム部材3の先細り状先端部3dに係合して該ハンドルカム部材3の回転を阻止する。
したがって、ハンドルロック部材13の形状と前記第1係合部13b及び第2係合部13aの部分について、例えば図1を基準にして説明すると、ハンドルロック部材13は逆向きのL型状に形成され、その中央部が第2固定軸に軸支され、該中央部から若干斜め上向きの人差し指に相当する部分が第1係合部13bであり、一方、前記第1係合部に対して所定の角度開いた若干斜め下向きの親指に相当する部分が第2係合部13aである。
【0016】
そして、前記人差指に相当する、或は上下方向を指向する第1係合部13bの上端部には、水平方向に突出する可動ピン14が設けられ、該可動ピン14は後述の動力変換部材の制御バー23に形成した切欠状係合制御部24に係合する。
【0017】
ここで、説明の便宜上、
図7を参照にして、操作部材の一例としてのプッシュブルハンドルの操作力によって、前述の錠片用ストッパー片11がどのように作動するかについて簡単に説明する。
【0018】
上記構成に於いて、例えば外側の操作部材を操作すると、外側の突片6がハンドルカム部材3の短片状第1係合部3bの側面を押圧し、また同様に、内側の操作部材を操作すると、内側の突片5がハンドルカム部材3の短片状第1係合部3bを押圧する。
図7では、外側の操作部材の操作力によって外側の突片6が矢印A方向へと水平移動し、これによりハンドルカム部材3が第1固定軸4を支点に反時計方向である矢印B方向へと回転することになる。
【0019】
したがって、ハンドルカム部材3に対するロック部材13が存在しない限り、ハンドルカム部材3の小ローラ7が錠片用ストッパー片11の弧状切欠状係合部を滑動して該錠片用ストッパー片11を、第2固定軸12を支点にして上方へと押し上げるので、錠片用ストッパー片11の係合先端部は錠片2の上辺に段差状に形成した被係合部から矢印Cの上方方向へと離れ、ハンドルカム部材3は矢印Bで示す時計方向へと回転可能となり、その結果、錠片2は、ハンドルカム部材3の腕状第2係合部3cを介して矢印Dの後退方向へと後退動可能である。
【0020】
しかしながら、
図1の施錠状態では、ハンドルカム部材用ロック部材13の第2係合部13aがハンドルカム部材3の先細り状先端部3dに係合し、該ハンドルカム部材3の回転を阻止している。そこで、錠片2を施錠状態から解錠状態にするためには、その前提条件として、ハンドルカム部材に対するロック部材のロック状態を解消させる必要がある。
【0021】
本発明は、(A)ハンドルカム部材3に対するロック部材13のロック状態を解消させる手段21、22、23、(B)及びハンドルカム部材3に対するロック部材13のロック状態が解消させた場合に、一時的にロック部材13のロック状態の解消を維持する手段31を錠箱1内に組み込んだことを特徴とする。したがって、本明細書では、該(A)及び(B)を特定する事項に的を絞って、次の構成を説明する。
【0022】
さて、20は縦長錠箱1の内部空間の一番上方に横方向に配設された施錠用付勢手段で、この付勢手段20は、実施形態では、ラック付勢バネ20aと、該ラック付勢バネ20aの付勢力により、ピニオン及び複数の係合部を有するダルマ21を元の回転位置へ戻す方向へと付勢するダルマラック20bとから構成されている。前記付勢手段20及びダルマ21の構成・作用は、周知事項(特許文献1、特許文献2等)なので、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0023】
22、23は、ダルマ22の回転力を直線運動に変換する動力変換部材で、実施形態では、縦長錠箱1の内部空間を有効的に活用するために、ダルマ21の突片状押圧部21aに係合すると共に、その中央部が上方固定軸28に軸支された回転レバー22と、該回転レバーと共働して上下方向に移動する制御レバー23とから成る。付言すると、前記回転レバー22は、例えば右手の親指を上方に向け、一方、人差し指を左向きに向けた格好のL型に形成され、前記親指に相当する山形状係合受け部22aは前述したダルマ22の突片状押圧部21aと係合可能であり、また前記人差し指に相当する係合碗部22bは、制御レバー23の半円形状或はリング状の連係部25に係合する係合ピン22cを有する。
【0024】
また前記制御レバー23は、例えば
図3で示すように、垂直板部23aと水平板部23bを有し、前記垂直板部23aの下端部には、横方向に湾曲状に切欠された係合制御部24が形成され、該係合制御部24は、上述したハンドルカム部材用ロック部材13の第1係合部13b(実施形態では可動ピン14)が係合する。そして、前記制御レバー23の垂直板部23aの上端部には、前述の半円形状或はリング状の連係部25が連設形成され、該連係部25は回転レバー22の係合ピン22cと係合している。であるから、回転レバー22が上方固定軸26を支点に
図3の矢印A方向に回転するならば、制御レバー23は該回転レバー22に共働して
図3の矢印B方向へ上昇可能である。
【0025】
ところで、実施形態では、例えば
図4で示すように、さらに、前記制御レバー23の垂直板部23aの下端部の切欠状係合制御部24の付近に係合突起26を設け、該下端部に設けた或は形成した係合突起26を、復帰バネ36のバネ力により
施錠位置に戻ると共に、矩形状開口部32を形成する枠状フレーム部分31aに、前記開口部32内へ水平方向にやや突出する支持突起33を有する一つのロック状態解消維持片31に係合させている。このロック状態解消維持片31の前記枠状フレーム部分31aに横方向に連設する非開口部分31bには、さらに、小孔状の被係合部35が形成され、該被係合部35には、逆向き「く」の字形状のロック解除レバー41の上端部41aが係合しており、本実施形態では、該ロック解除レバー41の中央部を軸支する第3固定軸42に前述した復帰バネ36の中心部が巻装されている。
【0026】
なお、復帰バネ36の配設箇所は、第3固定軸42及びロック解除レバー41ではなく、例えばロック状態解消維持片31側に配設することも可能である。また、ロック解除レバー41の下端部41bは錠片用ストッパー片11の先端部の上辺に係合しており、錠片用ストッパー片11に連動して同方向に回転可能である。
【0027】
ここで作用について説明する。まず
図5はロック解消状態の概略説明図である。各部材20、21、23、13、31の動作は、
図5の符号A乃至Eの如くである。すなわち、ダルマ21が図示しないシリンダ錠又はサムターン側の操作力によりロックを解消する方向Bに回転した作動時、動力変換部材の制御レバー23が該ダルマに連動して矢印C方向へ上昇すると、ハンドルロック部材13は、前記制御レバー23の係合制御部24の傾斜面24a及びその第1係合部13bの可動ピン14を介して、ハンドルカム部材3のロックを解く矢印D方向(時計方向)へと回転し、その第2係合部13aがハンドルカム部材3の先細り状先端部3dから外れる。
【0028】
一方、維持片31は、その支持突起33が上方に位置変位する制御レバー23の係合突起26に押圧されることにより、その復帰バネ36のバネ力に抗して矢印Eの右方向へ位置変位すると共に、該係合突起26が該支持突起33を越えた瞬間に、該復帰バネ36のバネ力によって矢印Eの左方向へと戻され、該係合突起26は該支持突起33に一時的に支持されることにより、ロック部材13のロック状態の解消を維持する。
なお、復帰バネ36は、一つのロック状態解消維持片31を錠箱1のフロント1a方向に常時付勢している。図6は、ロック状態、その中途状態及びロック解消状態の流れを示す主要部の説明図である。
【0029】
次に、
図7は操作部材の操作力によりハンドルカム部材3が回転した時の作用図、
図8解錠状態の概略説明図である。この作用については既に説明した通りであるが、本発明では、錠片用ストッパー片11に連動して、その復帰バネ36のバネ力に抗して回転するロック解除レバー41が介在するので、
図6で示すように維持片31の支持突起33に乗っかった係合突起26は、一時的にロック部材13のロック状態の解消を維持しているものの、錠片用ストッパー片11の先端部の上辺に押し上げられて矢印で示す時計方向へと回転すると、維持片31は矢印で示す右方向へ復帰バネ36のバネ力に抗して一旦スライドするので、前記係合突起26は支持突起33から外され、その結果、制御レバー23は下方へと下降する。したがって、係合突起26は、維持片31の矩形状開口32の下方領域に戻る。そして、閉扉時、錠片2は付勢手段20の付勢力により、施錠位置へと自動的に戻る。
【実施例】
【0030】
実施形態の動力変換部材は、ダルマ21の突片状押圧部21aに係合すると共に、その中央部が上方固定軸28に軸支された回転レバー22と、該回転レバーと共働して上下方向に移動する制御レバー23とから成るが、該実施形態に限定するものではなく、発明の目的を逸脱しない範囲に於いて、ピニオン、ラック、リンク等を用いた動力変換機構に置換することができる。
【0031】
また、ロック状態解消維持片31を初期位置へと戻す復帰バネ36の配設位置は、発明の本質的事項ではなく、例えばロック状態解消維持片31の枠状フレーム部分31aの外側の右横に配設することもできる、また、制御レバー23の形態も適宜に設計変更し得る事項である。また本実施形態では、操作部材の一例としてのプッシュブルハンドルを挙げたが、もちろん、操作部材は図示しないレバーハンドルやノブであっても良い。さらに、ハンドルロック部材をロック方向に付勢する不番のバネは、適宜に設けることができる。
【0032】
なお、錠前Xの細部的事項、例えばプッシュプルハンドル、レバーハンドル等の操作部材、該操作部材用復帰バネ、錠片用案内手段、ロック状態解消維持片用案内手段、固着具等は省略してある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、錠前や建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0034】
X…錠前、1…錠箱、2…錠片、3…ハンドルカム部材、5…内側の突片、6…外側の突片、7…ローラ、11…錠片用ストッパー片、13…ハンドルロック部材、13a…第2係合部、13b…第1係合部、20…付勢手段、21…ダルマ、22…回転レバー、23…制御レバー、24…係合制御部、26…係合突起、31…ロック状態解消維持片、32…開口部、33…支持突起、36…復帰バネ、41…ロック解除レバー。