(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力発電設備は、その耐用期間が20年前後となるように設計される。このため、増速機についても基本的に20年前後の寿命が確保されることが要求される。
【0007】
しかしながら、風力発電設備は、自然環境下に設置される設備であるため、ときに乱れた風や突風を受けたりすることがある。このような乱れた風や突風は、ときに想定外のトルクを発生し、増速機のトラブルの原因となることがある。増速機のトラブルは、一度発生するとその被害は深刻なものとなるため、信頼性の確保が重要視されている。
【0008】
一般に、増速機の信頼性を確保するにあたって有効な対策は、要するならば、設計時に各要素の安全率(セーフティファクタ)を大きくとることである。しかし、各要素の安全率を大きくとると、当然に増速機全体が大型化して重量も大きくなり、製造コスト、建設コストの増大を招くという問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、新たに見つけた中間課題(後述)を克服することによって、小型、軽量、低コストでありながら、信頼性が高く、寿命の長いロックドトレーン機構を備えた風力発電用の増速機を提供することをその本来の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ロックドトレーン機構を備えた風力発電用の増速機において、前記ロックドトレーン機構の一要素を構成する歯車と、該歯車と一体化された軸と、該軸を、軸受を介して回転可能に支持する支持部材と、を備え、前記軸受の内輪と前記軸との間、および前記軸受の外輪と前記支持部材との間の少なくとも一方に、隙間が形成され、該隙間に開口し、該隙間に潤滑剤を供給する潤滑通路を備え
、前記軸受の内輪と前記軸との間、および前記軸受の外輪と前記支持部材との間の少なくとも一方に、複数のリング状の部材が介在され、該リング状の部材の内周側および外周側の少なくとも一方に、前記隙間が形成されていることにより、上記本来の課題を解決したものである。
本発明は、また、ロックドトレーン機構を備えた風力発電用の増速機において、前記ロックドトレーン機構の一要素を構成する歯車と、該歯車と一体化された軸と、該軸を、軸受を介して回転可能に支持する支持部材と、を備え、前記軸受の内輪と前記軸との間、および前記軸受の外輪と前記支持部材との間の少なくとも一方に、隙間が形成され、該隙間または隙間を含む微小空間に液体が密封され、該隙間または隙間を含む微小空間が、前記増速機内の空間から隔離・密封されて
おり、前記軸受の内輪と前記軸との間、および前記軸受の外輪と前記支持部材との間の少なくとも一方に、複数のリング状の部材が介在され、該リング状の部材の内周側および外周側の少なくとも一方に、前記隙間が形成されていることにより、上記本来の課題を解決したものである。
本発明は、また、ロックドトレーン機構を備えた風力発電用の増速機において、前記ロックドトレーン機構の一要素を構成する歯車と、該歯車を、軸受を介して回転可能に支持する軸と、を備え、前記歯車と該軸受の外輪との間、および前記軸と該軸受の内輪との間の少なくとも一方に、隙間が形成され、該隙間または隙間を含む微小空間に液体が密封され、該隙間または隙間を含む微小空間が、前記増速機内の空間から隔離・密封されて
おり、前記歯車と該軸受の外輪との間、および前記軸と該軸受の内輪との間の少なくとも一方に、複数のリング状の部材が介在され、該リング状の部材の内周側および外周側の少なくとも一方に、前記隙間が形成されていることにより、上記本来の課題を解決したものである。
【0011】
本発明において、ロックドトレーン機構とは、入力軸の動力を、入力軸よりも数の多い複数の中間回転軸に分割して伝達するとともに、再び中間回転軸よりも数の少ない出力軸の動力として統合する動力伝達機構と定義する。
【0012】
本発明の前記中間課題およびその解決原理は、公知のものではないため、ここで、本発明が着目した当該中間課題とその解決原理について、詳細に説明する。
【0013】
風力発電設備の風車ブレードには、「風速や風向が変化する風」が瞬間的に強く掛かることがある。例えば、強い突風が風車ブレードに掛かると、増速機の各要素には瞬間的に強い加速トルクが掛かる。しかしながら、増速機の先には発電機が負荷として連結されているため、増速機の各要素は、慣性によりこの加速トルクに瞬時に追随して回転速度を増大させることができない。結果として、加速トルクの立ち上りが急峻の場合は、各要素にこの急峻に立ち上がる加速トルクが、(恰も静止している各要素に対して掛かるように)瞬間的にそっくり掛かってしまうことになる。
【0014】
また、例えば風向きが激しく変化するような悪天候の場合、「突然の逆風」等によって風車ブレードの逆側から風が掛かったりすることがある。すると、該風車ブレードの回転速度が瞬間的に大きく落ち込むという現象が発生する。この場合、増速機の各要素には、入力軸側から強い減速トルクが掛かる。しかし、(加速トルクが掛かるときと異なり)強い減速トルクが突然掛かるときは、たとえ風車ブレードの回転方向は逆にはならなくても、それまで各歯車の歯面間に形成されていたバックラッシの形成方向が反転してしまう現象が発生する。
【0015】
これは、入力軸が「駆動力を付与する状態」から、「制動力を付与する状態」に変化するためである。バックラッシが反転するときは、各歯車の歯面同士が直接ぶつかるため、歯面(この場合通常駆動時と逆側の面)に強い衝撃が加わると考えられる。この状態から、当該「突然の逆風」が止んで再加速するときに歯面のバックラッシは再び反転する。このため、結局、天候が荒れていて風が巻いていると、このような状況が発生するごとに、歯面同士の衝突が繰り返され、各歯面には両側から頻繁に衝撃が掛かってしまうことになる。
【0016】
入力軸に与えられる動力が、エンジンやモータ等で意図的に発生した動力である場合には、入力軸に上述したような極端なピークトルク等が掛かってしまう虞はない。しかし、風力発電設備の増速機にあっては、(自然の力を利用したものであるが故に)入力軸に掛かると想定されるトルクの範囲が極めて広いだけでなく、特に瞬間的に変化するトルクに関しては、想定自体が困難という問題もある。
【0017】
とりわけ、ロックドトレーン機構を備えた増速機にあっては、入力軸から瞬間的に立ち上がるピーク状のトルクが入ってきた場合、あるいはバックラッシが反転する程に瞬間的にトルクが急低下した場合、複数の中間回転軸上の各歯車には、必ずしも均一にトルクは伝達されず、製造誤差や組み付け誤差等に依存して、複数の中間軸のうちバックラッシの小さい(あるいはない)特定の中間回転軸を介した動力伝達系のみが大きな負担を受け易い。
【0018】
加えて、ロックドトレーン機構の各中間回転軸、その軸受、および該中間回転軸上の歯車は、トルクが複数の伝達系に分散されることを見越した強度設定(複数の中間回転軸が共同して動力を伝達することを前提とした強度設定)がなされているため、このような瞬間的に急変するトルクが複数の伝達系のうちの特定の伝達系のみに集中して掛かることを想定していない。したがって、ロックドトレーン機構の増速機は、その構成上、却って強度的に不利になる状況が形成されてしまっていると推察される。
【0019】
本発明は、風力発電用の増速機のトラブルには、強風時に連続的に掛かる大きなトルクだけでなく、むしろ、このような「風速や風向の急変」に起因して、増速機の各要素に瞬間的に(ピーク的に)発生する強い負荷あるいは衝撃が大きく影響していると着目したことを発想の原点としている。そして、とりわけ、ロックドトレーン機構を備えた増速機においては、こうした強い瞬間的な負荷あるいは衝撃が掛かった際に、該ロックドトレーン機構本来のトルク分散作用がうまく機能しないどころか、むしろ不利な状況が形成されてしまうことを「中間課題」として捉え、この中間課題を克服することによって、上記本来の課題を解決するという発想で創案された。
【0020】
本発明では、歯車と支持部材が軸受を介して相対回転する部位以外のいずれかの部位に、歯車、軸受、および支持部材のうちの少なくとも2者同士が、相対的に径方向に微小変位することを許容する隙間を形成する。
【0021】
本発明によれば、この隙間の存在により、「風速や風向の急変」等に起因して、入力軸回転速度が急変すると、増速機は、瞬時にその時点で最も安定的な噛合状態を自動的に形成することができる。すなわち、各歯車は、瞬間的に受け持つ荷重がより均等となる方向に自動的に変位し、特定の歯車だけが強い負荷を受けるのを防止できる。そのため、ロックドトレーン機構本来の荷重分散作用を十分に発揮することができ、増速機各部のピーク的な負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小型、軽量、低コストでありながら、信頼性が高く、寿命の長いロックドトレーン機構を備えた風力発電用の増速機を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0025】
始めに、
図5および
図6を用いて風力発電装置の増速機周辺の概略構成から説明する。風力発電装置1は、基礎6上に立設される支柱2と、支柱2の上端に設置されるナセル3と、該ナセル3に対して回転自在に組付けられたロータヘッド4とを有している。ロータヘッド4は、複数枚(図示の例では3枚)の風車ブレード(風車翼)5が取り付けられている。ナセル3の内部において、ロータヘッド4には、増速機20および発電機11が接続されている。
【0026】
風車ブレード5に風が当たると、ロータヘッド4が回転し、該ロータヘッド4の回転が増速機20にて増速した状態で発電機11に伝達される。これにより、ロータヘッド4の(トルクはあるが)速度が遅い回転を、速い回転に増速することができ、発電機11から効率的に発電出力を得ることができる。なお、
図6に示す符号12はトランス、13はコントローラ、14はインバータ、15はインバータクーラ、16は潤滑油クーラである。
【0027】
以下、本発明に係るロックドトレーン機構を備えた風力発電用の増速機20の構成について、詳細に説明する。ここで、ロックドトレーン機構とは、入力軸の動力を、入力軸よりも数の多い複数の中間回転軸に分割して伝達するとともに、再び中間回転軸よりも数の少ない出力軸の動力として統合する動力伝達機構を意味している。
【0028】
まず、本実施形態において採用されたロックドトレーン機構の基本構成を
図1、
図2に基づいて説明し、その後、本実施形態の特徴部分を
図3に基づいて説明する。なお、上記基本構成自体は、US2003/0015052A1と同様である。
【0029】
図1は、ロックドトレーン機構21を備えた風力発電用の増速機20の要部を模式的に示した斜視図、
図2は、同じ増速機20の要部を別の角度から模式的に示した斜視図をそれぞれ示している。なお、描写角度の関係で、一部に符号の振れていない軸が存在する。
【0030】
この増速機20は、
図5および
図6に示したロータヘッド4から図示せぬ入力軸に伝達されてきた回転を、該入力軸に組み込まれた入力歯車22を介して8本の第1中間回転軸31〜38に分割して伝達し、最終的に一本の出力軸(図示略)に統合するようにしたものである。以下具体的な構成を説明する。
【0031】
入力歯車22は、その外周を8等分する位置において、8本の第1中間回転軸31〜38上に設けられた8個の第1中間歯車41〜48と噛合している。これにより、ロータヘッド4側から単一(1個)の入力軸に伝達されてきた動力が、入力歯車22を介して8本の第1中間回転軸31〜38に分割された状態で伝達される。
【0032】
8本の第1中間回転軸31〜38のうち、半分(4本)の第1中間回転軸31、33、35、37には、それぞれの入力歯車22の軸方向ロータヘッド側(前段側)の端部に前段側第2中間歯車51、53、55、57が設けられている。また、残りの第1中間回転軸32、34、36、38には、それぞれの反ロータヘッド側(後段側)の端部に、後段側第2中間歯車52、54、56、58が設けられている。すなわち、第1中間回転軸31〜38上の第1中間歯車41〜48は、入力歯車22に対して軸方向前段側および後段側に4個ずつ交互に配置されていることになる。
【0033】
前段側に設けられた4個の前段側第2中間歯車51、53、55、57は、4本の第2中間回転軸61〜64上において軸方向前段側に設けられた前段側第3中間歯車71、73、75、77と噛合している。後段側に設けられた4個の後段側第2中間歯車52、54、56、58は、同じ4本の第2中間回転軸61〜64上において軸方向後段側に設けられた後段側第3中間歯車72、74、76、78とそれぞれ噛合している。
【0034】
これにより、8本の第1中間回転軸31〜38に分割・伝達された動力が、4本の第2中間回転軸61〜64に集約・統合される。
【0035】
4本の第2中間回転軸61〜64の後段側端部には、それぞれ第4中間歯車81〜84が設けられている。4個の第4中間歯車81〜84は、4本の第3中間回転軸91〜94上に設けられた第5中間歯車101〜104とそれぞれ噛合している。
【0036】
4本の第3中間回転軸91〜94のうち2本の第3中間回転軸91、93では、第5中間歯車101、103の後段側に後段側第6中間歯車111、113が設けられている。残りの2本の第3中間回転軸92、94では、第5中間歯車102、104の前段側に前段側第6中間歯車112、114が設けられている。
【0037】
後段側第6中間歯車111、113は、(2本の第4中間回転軸121、122のうちの1本である)第4中間回転軸121の後段側第7中間歯車131、133と噛合している。前段側第6中間歯車112、114は、もう一方の第4中間回転軸122の前段側第7中間歯車132、134と噛合している。
【0038】
これにより、4本の第3中間回転軸91〜94に分割・伝達されてきた動力が、2本の第4中間回転軸121、122の動力として集約・統合される。
【0039】
2本の第4中間回転軸121、122の回転は、この実施形態では、(4本の第3中間回転軸91〜94から2本の第4中間回転軸121、122に伝達した手法と同様の手法で)図示せぬ1本の出力軸にさらに集約され、前述の1台の発電機11を駆動する構成とされている。なお、2本の第4中間回転軸121、122を増速機20の出力軸として、2台の発電機を直接並列駆動するような構成としてもよい。
【0040】
この実施形態に係る増速機20では、このように図示せぬ1本の入力軸、8本の第1中間回転軸31〜38、4本の第2中間回転軸61〜64、4本の第3中間回転軸91〜94、2本の第4中間回転軸121、122、および図示せぬ1本の出力軸を備えている。
【0041】
ここで、これらの「軸」を符号Sa1で総轄して模式的に表現すると、これらの「軸」の支持構成は、いずれも、(該軸Sa1に組み込まれている歯車G1、G2の数や大きさが異なるだけで)基本的に、例えば、
図3あるいは
図4に示す支持構成に代表させることができる。
【0042】
そこで、先ず
図3に示されるような支持構成について説明する。
【0043】
図3に示した支持構成は、歯車G1、G2と軸Sa1が一体で、軸Sa1が軸受B1、B2を介して支持部材たるケーシングCa1、Ca2に支持されているものである。既に説明した全ての「軸」は、この
図3の支持構成にて支持することができる。なお、軸Sa1および歯車G1、G2は、一体の(単一の)部材で構成されていても、別体の部材を連結することで一体化した構成とされていてもよい。
【0044】
この
図3の支持態様では、軸受B1、B2の内輪B1a、B2aと軸Sa1との間に、該軸受B1、B2の内輪B1a、B2aおよび軸Sa1同士を相対的に径方向に微小変位可能とする隙間S1が形成されている。なお、この
図3の例では、さらに、この隙間S1に加え、軸受B1、B2の外輪B1b、B2bとケーシング(支持部材)Ca1、Ca2との間に、軸受B1、B2の外輪B1b、B2bとケーシングCa1、Ca2同士を相対的に径方向に微小変位可能とする隙間S2も形成している。
【0045】
この実施形態では、隙間S1、S2を、軸受B1、B2の外径dbに対して0.3%(3/1000)程度の(径方向の)大きさとなるように設定してある。
【0046】
なお、この隙間S1、S2の大きさの設定は、一例である。隙間S1、S2の形成位置(どの軸に形成するか)、形成個数、あるいは大きさ(間隔)を変更すると、微小変位できる部材(あるいは部材群)の変位の態様が異なってくるため、入力軸の負荷変動を良好に吸収できる領域の周波数成分を調整することができる。この観点で、例えば、隙間S1、S2のうちの一方はなくてもよく、また、隙間S1、S2の大きさを敢えて異ならせるのも、変動を吸収しようとする領域の周波数成分や振幅によっては有効である。
【0047】
軸Sa1と軸受B1、B2の内輪B1a、B2aが相対的に径方向に微小変位可能というのは(あるいは、ケーシングCa1、Ca2と軸受B1、B2の外輪B1b、B2bが相対的に径方向に微小変位可能というのは)、結果として、当該軸Sa1に組み込まれている歯車G1、G2と噛合している相手歯車(
図5では図示略)との実質的なピッチ円d1、d2を変更可能、ということと同義である。ピッチ円d1、d2が変更されれば、当該軸Sa1に組み込まれている歯車G1、G2と相手歯車との噛合状態も当然変化することになる。
【0048】
なお、本発明に係る隙間を形成する対象の「軸」に、(動力の分割された)各中間回転軸(8本の第1中間回転軸31〜38、4本の第2中間回転軸61〜64、4本の第3中間回転軸91〜94、および2本の第4中間回転軸121、122)が含まれるのは言うまでもないが、例えば1本しかない入力軸、あるいは出力軸に本発明を適用するようにしてもよい。それは、径方向の相対変位は、文字通り「相対的」なものであるため、例えば、入力軸に適用することで、該入力軸上の入力歯車22と8本の第1中間回転軸31〜38との間の相対位置を調整できるからである。
【0049】
隙間S1、S2内には、増速機20内の潤滑剤が満たされている。潤滑剤の充填は、基本的には、軸受B1、B2を潤滑する通常の手法にて、例えば、軸受B1、B2ごと増速機20内に入れられた潤滑剤に浸っている構成とするだけでよい。本実施形態においては、隙間S1、S2を介して対向している部材同士は、基本的に一体的に動く(相対回転しない)ため、例えば、径方向の変位による自動調心機能(後述)という点のみに着目した場合には、必ずしも常に該隙間S1、S2が「潤滑剤で完全に満たされている状態が維持される」ことは必須ではない。しかしながら、後述する適正なダンパ効果を得、寿命をより伸長させるためには、隙間S1、S2内に潤滑剤が確実に充填されるのが望ましい。
【0050】
そこで、該隙間S1、S2内に常に良好に潤滑剤を満たすための工夫として、例えば、
図3の破線で示すように、隙間に開口する潤滑通路150を形成するように構成するのは有効である。潤滑通路150を形成する場合には、軸Sa1内の軸心O1位置に形成した軸方向通路152と、該軸方向通路152と連通し隙間S1、S2内に開口する径方向通路154、156とを形成するようにすると、簡単な構成で遠心力によるポンプ作用を利用した潤滑系を構築することができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る風力発電用の増速機20の作用を説明する。
【0052】
風車ブレード5の回転は、ロータヘッド4の主軸を介して増速機20の図示せぬ入力軸に伝達され、入力歯車22が回転する。すると、入力歯車22と第1中間歯車41〜48との噛合により、8本の第1中間回転軸31〜38が同方向に同時に回転する。これにより、単一の入力軸(入力歯車22)の動力が8本の第1中間回転軸31〜38に分割される。
【0053】
8本の第1中間回転軸31〜38が回転すると、4個の前段側第2中間歯車51、53、55、57と前段側第3中間歯車71、73、75、77の噛合、および、残りの4個の後段側第2中間歯車52、54、56、58と後段側第3中間歯車72、74、76、78の噛合を介して、4本の第2中間回転軸61〜64が回転する。これにより、8本の第1中間回転軸31〜38の動力が、4本の第2中間回転軸61〜64に集約・統合される。
【0054】
4本の第2中間回転軸61〜64が回転すると、第4中間歯車81〜84と第5中間歯車101〜104の噛合を介して、4本の第3中間回転軸91〜94が回転する。4本の第3中間回転軸91〜94が回転すると、後段側第6中間歯車111、113および前段側第6中間歯車112、114との噛合を介して、2本の第4中間回転軸121、122が回転する。2本の第4中間回転軸121、122の回転は、図示せぬ2個の歯車を介して1本の出力軸に統合される。
【0055】
この結果、結局、ロータヘッド4側から入力されてきた風力による動力は、一本の入力軸から8本の第1中間回転軸31〜38に分割・伝達され、さらに4本の第2中間回転軸61〜64、4本の第3中間回転軸91〜94、および2本の第4中間回転軸121、122を介して、再び一本の出力軸に集約・統合されながら伝達されることになる。
【0056】
増速機20の出力軸は、発電機11(
図6)に連結されているため、以上の構成により風車ブレード5の回転を増速した上で発電機11を回転させることができ、効率的な風力発電を行うことができる。
【0057】
以下、主に
図3を参照しながら、隙間S1、S2に関連する作用を詳細に説明する。
【0058】
ロータヘッド4が回転すると、これに伴って各軸Sa1が軸受B1、B2を介してケーシングCa1、Ca2に対して回転する。このとき、軸Sa1と軸受B1、B2の内輪B1a、B2aとの間、およびケーシングCa1、Ca2と軸受B1、B2の外輪B1b、B2bとの間には、殆ど相対回転は発生しない。これは、もともと、軸受B1、B2の転動抵抗が小さく、一方、隙間S1、S2は、その間隔が極めて狭く、仮に相対回転しようとすると、該隙間S1、S2内の潤滑剤に剪断応力が発生することから、該相対回転に対する抵抗が非常に大きくなるためである。
【0059】
ここで、荒れた天候のとき、とりわけ風向きが頻繁に変わるような強い風が吹いているとき等にあっては、風車ブレード5の回転トルクが変動し、ときに急変するため、各歯車G1、G2の噛合反力も変動し、その結果歯車G1、G2と一体化されている軸Sa1の隙間S1(あるいはケーシングCa1との隙間S2)に掛かる径方向の荷重が変動する。
【0060】
この結果、各軸Sa1は径方向の微小変位により自動調心され、それぞれの歯車G1、G2の相手歯車に対する噛合状態が最も安定している状態に自動的に移行する。この結果、複数の軸Sa1が共同して該ピークトルクを受け持つことができるようになり、特定の軸Sa1のみに該ピークトルクが集中して掛かってしまうのが防止される。
【0061】
なお、この自動調心機能は、ピークトルクが発生したときだけでなく、強いトルクが連続して入力されてくるようなときにおいても発揮されるため、入力軸のトルクを複数の軸に分割して伝達するロックドトレーン本来の機能を十分に発揮させることができる。
【0062】
また、軸Sa1は、微小変位するときに、その外周に存在する隙間S1の円周方向のある部分の間隔を狭めながら(潤滑剤を押し分けながら)変位する。このとき、直径方向反対側の隙間S1の間隔はより広がろうとし、周囲の潤滑剤を引き込みながら変位する。隙間S2では、隙間S1の作用とほぼ逆の作用が発生する。このため、結局、軸Sa1の変位に対して隙間S1、S2内の潤滑剤がダンパとして機能する。その結果、もし、隙間S1、S2がなかったならば(すなわち、軸Sa1と軸受B1、B2の内輪B1a、B2a、あるいは軸受B1、B2の外輪B1b、B2bとケーシングCa1、Ca2が直接当接していたならば)、そのまま急峻に大きく立ち上がって直後に急峻に低下するような衝撃的なトルクがそのまま伝達されてしまうのが防止される。
【0063】
更には、急峻なトルク変動の伝達が抑制されることによって、バックラッシが反転する頻度を低減することができ、仮に反転したとしても、反転時の歯面の衝撃をより低減することもできる。
【0064】
さらには、仮に、それまで隙間S1、S2内の潤滑剤の円周方向の剪断応力の範囲内で一体的に回転していた歯車G1、G2と軸受B1、B2の内輪B1a、B2aとの間、または、ケーシングCa1、Ca2と外輪B1b、B2bとの間に、該剪断応力を超える円周方向のトルクが掛かると、当該歯車G1、G2と軸受B1、B2の内輪B1a、B2aとの間、または、ケーシングCa1、Ca2と外輪B1b、B2bとの間に「滑り」が発生する。この隙間S1、S2の部分で発生する滑りは、特に、瞬間的に増速機20自体が破壊されるような巨大な負荷が掛かったときに該巨大な負荷を逃がすように機能する。
【0065】
結果として、本実施形態に依れば、ロックドトレーン機構本来のトルク分散効果を最大限に活かすことができるようになり、同時に、各要素(軸Sa1、軸受B1、B2、あるいは歯車G1、G2等)に加わる負荷のピーク値を低減できようになるため、増速機20の寿命を大きく伸ばすことができる。
【0066】
なお、既に紹介したように、ロックドトレーン機構21の各軸は、例えば
図4に示されるような支持構成によって支持することも可能である。すなわち、
図4の支持構成は、歯車G3、G4と軸Cs1との間に、軸Cs1を支持する軸受B3、B4が介在され、該軸受B3、B4が、ケーシングCa3、Ca4等と一体化された支持部材たる支持軸Cs1の外周に組み込まれている。この支持構成の場合、支持軸Cs1と軸受B3、B4の内輪B3a、B4aとの間に本発明に係る隙間S3が形成されている。
【0067】
さらに、
図4の構成では、軸受B3、B4と支持部材たる支持軸Cs1の間にリング状の部材R1が介在されており、該リング状の部材R1の外周側に、隙間S4が形成されている。リング状の部材R1は、軸方向の移動は拘束されているが、径方向の微小移動が許容された態様で組み込まれている。このような構成とすると、リング状の部材R1の設計と相まって、隙間形成に関する設計の自由度を格段に広げることができる。
【0068】
また、リング状の部材R1を挟んで径方向に複数の隙間S4、S5を形成できることから、潤滑剤のダンパ機能が高まり、衝撃吸収作用自体もより高めることができるようになる。この観点で、リング状の部材R1の組み込みは、1個に限定されず、径方向に多重に複数配置するようにしてもよい。
【0069】
なお、図示はしないが、全く同様に、前述の
図3の実施形態においても、軸受B1、B2の内輪B1a、B2aと軸Sa1との間、あるいは、軸受B1、B2の外輪B1b、B2bと支持部材であるCa1との間のいずれか、または双方に、リング状の部材を配置するようにしてもよく、同様な付加的な作用効果が得られる。
【0070】
要するならば、リング状の部材は、歯車と軸受の間、軸受と支持部材の間のいずれに配置してもよく、更には、いずれに1個のみ配置しても複数配置してもよく、また、配置しなくてもよい。リング状の部材を配置する場合に、隙間は、(通常時において)当該リング状の部材の外周側にのみ設けても、また内周側にのみ設けても、さらには外周側および内周側の双方に設けてもよい。
【0071】
本発明においては、隙間を具体的にロックドトレーン機構のどの軸に対してどの程度の大きさで形成するかについても特に限定されない。要は、結果として、ロックドトレーン機構の所定の軸の軸受における相対回転する部位以外のいずれかの部位に、当該軸に組み込まれている歯車、軸受、および支持部材のうちの少なくとも2者同士を、相対的に径方向に微小変位可能とするように形成されていればよい。隙間の形成される軸、形成される軸の数、形成される軸における形成位置や大きさ等が異なると、変動を吸収可能な周波数領域が異なってくるため、風力発電設備の設置される地域に吹く風の性質を考慮してより効果的な変動吸収を行うことができるようになる。既に述べたように、各中間回転軸のみならず、入力軸や出力軸に対して本発明を適用することも可能である。ロックドトレーン機構自体の構成も、上記構成に限定されない(上記ロックドトレーン機構は一例である)。
【0072】
また、上記実施形態においては、隙間内に潤滑剤を常に確実に確保するために、潤滑通路を形成する例が示されていたが、「隙間内の潤滑剤の確保」に関しては、例えば、隙間(あるいは隙間を含む微小空間)を増速機内の空間から隔離・密封するように構成し、この密封空間内に積極的に潤滑剤を密封する構成としてもよい。なお、このように隙間を増速機内の空間から隔離・密封する構成を採用した場合には、隙間内に充填される潤滑剤は、増速機内の空間内の潤滑剤と異ならせるようにしてもよく、さらには、いわゆる潤滑剤ではなく、ダンパとして良好に機能し得る液体であってもよい。隙間を密封する構成は、所定の潤滑剤等の液体を確実に隙間内に保持できる点で優れる。
【0073】
更には、上記潤滑通路の形成と密封構成を組み合わせ、隙間あるいは隙間を含む微小空間が、該隙間への潤滑通路の開口以外の部分で密封されているように構成してもよい。この構成は、定性的傾向として、支持部材たる支持軸や歯車の回転が速いとき程、(遠心力が大きくなることから)隙間内の潤滑剤の圧力を高めることができるようになるため、隙間が狭められるときにより強い反発力を発生でき、より確実にダンパ効果が得られるように構成できる。
【0074】
また、上記実施形態においては、軸受として、いずれも玉軸受が採用されていたが、本発明においては、軸受の種類は必ずしも玉軸受に限定されない。発電容量、あるいはロックドトレーン機構の構成によっては、例えば、ころ軸受やニードル軸受が採用されてもよい。例えば、歯車がヘリカル歯車であるときは、アキシャル荷重の受けられるアンギュラ玉軸受やテーパードローラ軸受であってもよい。
【0075】
更には、上記実施形態においては、軸受はすべて内輪および外輪の双方を有していたが、本発明においては、隙間を形成しない側においては、内輪あるいは外輪が省略された軸受であってもよい。いずれの構造の軸受が採用される場合でも、軸受としての本来の(歯車と支持部材との間の)相対回転が行われる部位以外に、本発明に係る隙間が存在することになる。例えば、軸受として、滑り軸受が採用されている場合には、歯車と支持部材との間の通常運転時の相対回転はあくまで当該滑り軸受の部分で行われる。したがって、この滑り軸受における相対回転が行われる部位以外に、本発明に係る隙間が別途存在することになる。換言するならば、「軸受における相対回転する部位」には、不可避的に隙間が存在するが、この軸受において相対回転する部位の隙間は、本発明の隙間の範疇には含まれない。「軸受における相対回転する部位の隙間」は、例えば内外輪を有する軸受であれば、内輪−転動体−外輪間の隙間であり、内外輪の一方がない場合には、内外輪のある方−転動体−転動体の転走面を構成する部材間の隙間、ということになる。