特許第5917118号(P5917118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917118
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/04 20060101AFI20160422BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B60C13/04 Z
   B60C13/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-268131(P2011-268131)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-119315(P2013-119315A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年10月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】柴山 健輔
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−056785(JP,A)
【文献】 特開昭53−087406(JP,A)
【文献】 実開昭63−039003(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/04
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部にて係止されたカーカスを備えた空気入りタイヤにおいて、
左右一対のサイドウォール部のうちの一方のサイドウォール部では、サイドウォールゴムがタイヤ周方向の全周にわたり黒色ゴムで形成されるとともに、他方のサイドウォール部では、前記カーカスの外側に設けられたサイドウォールゴムに、タイヤ外面にマークを表示するための異色ゴム部が設けられ、前記異色ゴム部がタイヤ周方向に複数に分割されて該異色ゴム部と黒色ゴム部がタイヤ周方向に交互に隣接配置され、
前記異色ゴム部は、タイヤ周方向における両側の側面がタイヤ内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状に形成されて、タイヤ内面側ほど前記異色ゴム部のタイヤ周方向寸法が小さく形成され
前記複数の異色ゴム部は、タイヤ周方向に隣接する前記黒色ゴム部のボリュームが左右で異なっている異色ゴム部を含み、該異色ゴム部は、ボリュームの大きい黒色ゴム部との境界面をなす側面のタイヤ外面に対する傾斜角度(φ)よりも、ボリュームの小さい黒色ゴム部との境界面をなす側面のタイヤ外面に対する傾斜角度(θ)の方が小さく形成された
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記異色ゴム部は、タイヤ径方向における両側の端面がタイヤ内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状に形成されて、タイヤ内面側ほど前記異色ゴム部のタイヤ径方向寸法が小さく形成されたことを特徴とする請求項記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記異色ゴム部は、タイヤ径方向外側の端面のタイヤ外面に対する傾斜角度(β)よりも、タイヤ径方向内側の端面のタイヤ外面に対する傾斜角度(α)の方が小さく形成されたことを特徴とする請求項記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記異色ゴム部のタイヤ径方向における両側の端面のうちの少なくとも一方が、タイヤ子午線断面において曲線状に形成されたことを特徴とする請求項2又は3記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳細には、サイドウォール部に例えばホワイトレター等の異色のマークが表示された空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォール部には、文字、記号、図形などのマークが表示されている。該マークとして、タイヤ本来の黒地に例えば白文字を浮き出させたホワイトレターが用いられることがあり、ホワイトレタータイヤと称されている。
【0003】
ホワイトレタータイヤは、一般に、サイドウォールゴムにマーク形成用の白色ゴム部を設け、その表面に黒色ゴムからなるカバーゴム層を覆った状態で加硫成形するとともに、加硫成形時にマークを形成する部分を金型の凹面部により隆起させておき、該隆起部の表面を削ることによって作製される。すなわち、隆起部の表面を削ることによって白色ゴムを露出させ、これにより白色ゴムからなる浮き出しマークであるホワイトレターが形成される(下記特許文献1参照)。
【0004】
ホワイトレタータイヤは、車両装着時に外側に配置される一方のサイドウォール部にホワイトレターが表示され、従って白色ゴム部が設けられるが、他方のサイドウォール部には、ホワイトレターは表示されず、従って白色ゴム部が設けられていない。一般に、非カーボンブラック系充填剤で補強される白色ゴムは、カーボンブラックで補強される黒色ゴムよりも剛性が低い。しかるに、従来のホワイトレタータイヤでは、ホワイトレターが表示されるサイドウォール部において、タイヤ周方向の全周にわたり白色ゴム部が設けられていたために、白色ゴムと黒色ゴムの剛性差により、両側のサイドウォール部の間で剛性差が生じ、操縦安定性の低下につながるおそれがある。
【0005】
ところで、下記特許文献2には、回転することにより色が付いて見えるタイヤを提供するために、サイドウォール部に白色ゴム部と黒色ゴム部をタイヤ周方向に交互に隣接配置させることが開示されている。しかしながら、タイヤ周方向における白色ゴム部と黒色ゴム部との境界面の形状については開示されていない。仮に、白色ゴム部と黒色ゴム部の境界面がタイヤ周方向に垂直な平面状であると、タイヤ走行中に白色ゴム部と黒色ゴム部の境界面での歪み差が大きくなることが予想され、歪み差により境界面でのセパレーションが懸念される。
【0006】
下記特許文献3には、タイヤのサイドウォール部に感温変色部を設けた技術が開示されているが、感温変色部はタイヤ周方向の全周にわたって環状に形成されており、本発明を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−275136号公報
【特許文献2】特開2000−255223号公報
【特許文献3】特開2008−56785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、両側のサイドウォール部間で剛性差を低減して操縦安定性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部にて係止されたカーカスを備えた空気入りタイヤにおいて、左右一対のサイドウォール部のうちの一方のサイドウォール部では、サイドウォールゴムがタイヤ周方向の全周にわたり黒色ゴムで形成されるとともに、他方のサイドウォール部では、前記カーカスの外側に設けられたサイドウォールゴムに、タイヤ外面にマークを表示するための異色ゴム部が設けられ、前記異色ゴム部がタイヤ周方向に複数に分割されて該異色ゴム部と黒色ゴム部がタイヤ周方向に交互に隣接配置され、前記異色ゴム部は、タイヤ周方向における両側の側面がタイヤ内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状に形成されて、タイヤ内面側ほど前記異色ゴム部のタイヤ周方向寸法が小さく形成されたものである。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記複数の異色ゴム部は、タイヤ周方向に隣接する前記黒色ゴム部のボリュームが左右で異なっている異色ゴム部を含み、該異色ゴム部は、ボリュームの大きい黒色ゴム部との境界面をなす側面のタイヤ外面に対する傾斜角度(φ)よりも、ボリュームの小さい黒色ゴム部との境界面をなす側面のタイヤ外面に対する傾斜角度(θ)の方が小さく形成される。
【0011】
他の好ましい実施形態において、前記異色ゴム部は、タイヤ径方向における両側の端面がタイヤ内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状に形成されて、タイヤ内面側ほど前記異色ゴム部のタイヤ径方向寸法が小さく形成されてもよい。この場合、前記異色ゴム部は、タイヤ径方向外側の端面のタイヤ外面に対する傾斜角度(β)よりも、タイヤ径方向内側の端面のタイヤ外面に対する傾斜角度(α)の方が小さく形成されてもよい。また、前記異色ゴム部のタイヤ径方向における両側の端面のうちの少なくとも一方が、タイヤ子午線断面において曲線状に形成されてもよい。これらの好ましい実施形態は適宜に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マークを表示するための異色ゴム部を設けたサイドウォール部において、該異色ゴム部をタイヤ周方向に複数に分割して、剛性の高い黒色ゴム部と交互に設けたので、全周にわたって黒色ゴムからなるもう一方のサイドウォール部との剛性差を少なくすることができ、操縦安定性を向上することができる。
【0013】
また、該異色ゴム部のタイヤ周方向における両側の側面を傾斜面状に形成して、タイヤ内面側ほど異色ゴム部のタイヤ周方向寸法が小さくなるように形成したので、その分、黒色ゴム部のボリュームが増えて操縦安定性が向上する。また、タイヤ周方向における異色ゴム部と黒色ゴム部との境界面における歪み差を低減することができ、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図2】同空気入りタイヤの断面図である。
図3】同空気入りタイヤの一部を断面にした斜視図である。
図4】同空気入りタイヤのサイドウォール部の要部拡大断面図である。
図5図1のV−V線断面図である。
図6図1のVI−VI線に相当する位置での白色ゴム部の断面図である。
図7】(a)及び(b)は変更例に係る白色ゴム部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10は、図2に示されるように、左右一対のビード部12,14と、ビード部12,14からタイヤ径方向外方に延びる左右一対のサイドウォール部16,18と、一対のサイドウォール部16,18の径方向外方端同士を繋いで接地面を構成するトレッド部20とを備えてなる空気入りラジアルタイヤである。
【0017】
空気入りタイヤ10は、一対のビード部12,14間にまたがって延びるカーカス22を備える。カーカス22は、トレッド部20から左右のサイドウォール部16,18を経て、ビード部12,14に埋設された環状のビードコア24,24にて係止されており、上記各部12,14,16,18,20を補強する。カーカス22の両端部は、この例では、ビードコア24の周りを内側から外側に折り返すことにより係止されている。
【0018】
カーカス22は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90度の角度で配列した、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、この例では2枚のカーカスプライで形成されている。カーカスコードとしては、例えば、レーヨン、アラミド、ポリエステル等の有機繊維コードが好ましく用いられる。カーカス22は、タイヤ内面に沿って配設されており、カーカス22の内面側には、耐空気透過ゴム層としてインナーライナー層26が設けられている。
【0019】
トレッド部20におけるカーカス22の外側にはベルト28が配設されている。ベルト28は、トレッド部20においてカーカス22とトレッドゴム30との間に設けられている。ベルト28は、ベルトコードをタイヤ周方向に対して10〜35度の角度で配列した、少なくとも2枚のベルトプライからなる。ベルトコードとしては、スチールコードや高張力を有する有機繊維コードが用いられる。
【0020】
ベルト28の外周には、キャッププライやエッジプライと称される有機繊維コードよりなる補強層32が配されている。補強層32はタイヤ周方向に対して0〜10°の角度のコード配列よりなる。
【0021】
ビード部12,14において、カーカス22の折り返し部の外側にはリムストップゴム34が設けられており、ビード部12,14におけるタイヤ外面を構成している。
【0022】
サイドウォール部16,18においてカーカス22の外側にはサイドウォールゴム36が設けられている。サイドウォールゴム36は、その径方向外方端部においてトレッドゴム30の幅方向端部と接合され、また、径方向内方端部においてリムストリップゴム34の径方向外方端部と接合されている。
【0023】
左右のサイドウォール部16,18のうち、車両装着時に内側に配置されるサイドウォール部16では、サイドウォールゴム36がタイヤ周方向の全周にわたり黒色ゴムで形成されている。黒色ゴムは、補強性充填剤としてカーボンブラックを配合したゴム組成物からなり、汎用のサイドウォール用ゴム配合を用いることができる。
【0024】
一方、車両装着時に外側に配置されるサイドウォール部18では、サイドウォールゴム36の一部に、タイヤ外面にマークを表示するための異色ゴム部38が設けられている。本実施形態では、図1に示すように、マークとして、商号、商標、品番などの文字を白色で表示するホワイトレターが用いられており、そのため、異色ゴム部38は白色ゴム部であり(以下、白色ゴム部38という。)、タイヤはホワイトレタータイヤと称される。白色ゴム部38は、補強性充填剤としてカーボンブラックを配合しておらず、例えばシリカやタルク、クレーなどのカーボンブラック以外の充填剤(即ち、非カーボンブラック系充填剤)を配合したゴム組成物からなる。
【0025】
図2に示されるように、白色ゴム部38は、サイドウォール部18のタイヤ径方向における一部のサイドウォールゴム36を構成しており、この例ではタイヤ最大幅位置よりもやや下側の位置に設けられている。白色ゴム部38は、タイヤ径方向における上記一部において、サイドウォールゴム36の厚み方向における略全体のゴム部分を構成している。
【0026】
図3,4に示すように、白色ゴム部38は、タイヤ外面側の表面が黒色ゴムからなるカバーゴム層40により覆われており、マーク(文字)に対応させて隆起した隆起部39において表面のカバーゴム層40が削り取られることで白色ゴム部38が露出し、これにより、白色ゴムからなる浮き出しマークであるホワイトレター41が表示されている。この例では、図1に示すように、「TOYO A/T OPEN COUNTRY」なるマーク41が、白色に縁取りされた文字により形成されている。
【0027】
図1に示すように、白色ゴム部38は、タイヤ周方向に複数に分割されており、そのため、白色ゴム部38と黒色ゴム部42がタイヤ周方向に交互に隣接配置されている。この例では、白色ゴム部38は、「TOYO」、「A/T」及び「OPEN COUNTRY」の各文字列に対応して3つの白色ゴム部38A,38B,38Cに分割されている。そして、各文字列の間の部分が黒色ゴム部42となっており、すなわち、マーク(文字)を形成しない周方向部分は黒色ゴム部42により形成されている。この例では、上記3つの白色ゴム部38A,38B,38Cに挟まれた3つの黒色ゴム部42A,42B,42Cが設けられている。
【0028】
なお、黒色ゴム部42は、補強性充填剤としてカーボンブラックを配合した汎用のサイドウォール用ゴム組成物で形成することができ、この例では、その上下、即ち径方向外方側と内方側のサイドウォールゴム36と一体の黒色ゴムにより形成されている。
【0029】
図5に示すように、白色ゴム部38は、タイヤ周方向における両側の側面44,46がタイヤ内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状に形成されている。すなわち、両側面44,46は、サイドウォール部18の厚み方向における内方側ほど、タイヤ周方向において互いに近づくように傾斜している。そのため、タイヤ内面側ほど白色ゴム部38のタイヤ周方向寸法が小さく形成されている。
【0030】
詳細には、図5に示すタイヤ周方向に沿う断面形状において、白色ゴム部38のタイヤ周方向に対向する側面44,46は、タイヤ外面47に対して垂直ではなく、タイヤ外面側から内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状をなしている。これら側面44,46とタイヤ外面47(詳細には、白色ゴム部38のタイヤ外面側の面。但し、隆起部39を除く面)とのなす角度である傾斜角度θ,φは、15°以上60°以下であることが好ましく、より好ましくは15°以上45°以下であり、更に好ましくは15°以上30°以下である。このように傾斜させたことにより、白色ゴム部38は、タイヤ周方向に沿う断面形状がタイヤ外面側に向かって広がる台形状をなし、白色ゴム部38のタイヤ外面側の面での周方向寸法L1がタイヤ内面側の面での周方向寸法L2よりも大きく設定されている(L1>L2)。
【0031】
図1に示すように、本実施形態では、「OPEN COUNTRY」の文字列を表示する白色ゴム部38Cでは、その両側に隣接する黒色ゴム部42B,42Cのボリューム(より詳細には、タイヤ外面側での周方向寸法)が同一であるが、「TOYO」及び「A/T」の文字列を表示する白色ゴム部38A;38Bでは、その両側に隣接する黒色ゴム部42C,42A;42A,42Bのボリュームが異なっている。これに対応させて、白色ゴム部38A,38B,38Cの側面44,46の傾斜角度θ,φが次のように設定されている。
【0032】
まず、両側の黒色ゴム部42B,42Cのボリュームが同一である白色ゴム部38Cについては、両側の側面44,46の傾斜角度θ,φが同一に設定されている(θ=φ)。
【0033】
一方、両側の黒色ゴム部42C,42Aのボリュームが異なる白色ゴム部38Aについては、図5に示すように、ボリュームの大きい黒色ゴム部42Cとの境界面をなす側面44のタイヤ外面47に対する傾斜角度φよりも、ボリュームの小さい黒色ゴム部42Aとの境界面をなす側面46のタイヤ外面47に対する傾斜角度θの方が小さく設定されている(θ<φ)。同様に、白色ゴム部38Bについては、ボリュームの大きい黒色ゴム部42Bとの境界面をなす側面44のタイヤ外面47に対する傾斜角度φよりも、ボリュームの小さい黒色ゴム部42Aとの境界面をなす側面46のタイヤ外面47に対する傾斜角度θの方が小さく設定されている(θ<φ)。
【0034】
図4,6に示すように、白色ゴム部38は、タイヤ径方向における両側の端面48,50がタイヤ内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状に形成されている。すなわち、両端面48,50は、サイドウォール部18の厚み方向における内方側ほど、タイヤ径方向において互いに近づくように傾斜している。そのため、タイヤ内面側ほど白色ゴム部38のタイヤ径方向寸法が小さく形成されている。
【0035】
詳細には、図6に示すタイヤ径方向に沿う断面形状(タイヤ子午線断面)において、白色ゴム部38の上下の端面48,50は、タイヤ外面47に対して垂直ではなく、タイヤ外面側から内面側に向かって互いに近づく方向に傾斜した傾斜面状をなしている。これら上下の端面48,50とタイヤ外面47(詳細には、白色ゴム部38のタイヤ外面側の面。但し、隆起部39を除く面)とのなす角度である傾斜角度α,βは、15°以上60°以下であることが好ましく、より好ましくは15°以上45°以下であり、更に好ましくは15°以上30°以下である。このように傾斜させたことにより、白色ゴム部38は、タイヤ径方向に沿う断面形状がタイヤ外面側に向かって広がる台形状をなし、白色ゴム部38のタイヤ外面側の面での径方向寸法H1がタイヤ内面側の面での径方向寸法H2よりも大きく設定されている(H1>H2)。
【0036】
白色ゴム部38は、また、図6に示すように、タイヤ径方向外側のサイドウォールゴム36との境界面をなす上端面48のタイヤ外面47に対する傾斜角度βよりも、径方向内側のサイドウォールゴム36との境界面をなす下端面50のタイヤ外面47に対する傾斜角度αの方が小さく設定されている(α<β)。
【0037】
以上よりなる本実施形態の空気入りタイヤ10であると、ホワイトレターが表示されたサイドウォール部18において、ホワイトレター41を表示するための白色ゴム部38を、文字列毎に複数のブロックに分割して、剛性の高い黒色ゴム部42と周方向において交互に設けている。すなわち、文字列部分のみに白色ゴム部38を配置し、その他の周方向部分には硬度が高い黒色ゴム部42を配置している。そのため、全周にわたって白色ゴム部を設けた従来構造に比べて、左右のサイドウォール部16,18間での剛性差を低減することができ、操縦安定性を向上することができる。
【0038】
一方で、このようにサイドウォール部18の周上で白色ゴム部38と黒色ゴム部42を交互に設けると、白色ゴム部38の上下両端面48,50だけでなく、タイヤ周方向にも白色ゴム部38と黒色ゴム部42との境界面が生じる。そのため、かかる周方向の境界面において、白色ゴムと黒色ゴムの剛性の違いにより歪みの差が大きくなって、境界面でのセパレーションが懸念される。特に、ホワイトレタータイヤは、RV(レクリエーショナル・ビークル)用、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)用、LT(ライト・トラック)用などのような高荷重使用となるタイヤに主として適用されるので、境界面でのセパレーションがより生じやすく、耐久性が損なわれるおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態であると、白色ゴム部38のタイヤ周方向における両側の側面44,46を傾斜面状に形成し、その傾斜角度θ,φを15°以上60°以下と鋭角状に設定して、タイヤ内面側ほど白色ゴム部38のタイヤ周方向寸法を小さく設定している(L1>L2)。これにより、タイヤ周方向における白色ゴム部38と黒色ゴム部42との境界面である側面44,46の長さが大きくなるので、当該境界面における歪み差を低減することができ、耐久性を向上することができる。また、上記傾斜形状により、タイヤ内面側で黒色ゴム部42のボリュームを増やすことができるので、操縦安定性を向上することができる。
【0040】
本実施形態であると、図1の「TOYO」と「A/T」を表示する白色ゴム部38A,38Bでは、左右両側の黒色ゴム部42のボリュームが異なっている。このような白色ゴム部38A,38Bにおいて、ボリュームの小さい黒色ゴム部42Aとの境界面46の傾斜角度θを、ボリュームの大きい黒色ゴム部42C,42Bとの境界面44の傾斜角度φよりも小さく設定している(θ<φ)。これにより、ボリュームの小さい黒色ゴム部42Aにおいて、傾斜角度を小さくした分だけ黒色ゴムのボリュームを増やすことができ、耐久力の改善を図ることができ、操縦安定性の向上にもつながる。
【0041】
本実施形態であると、また、白色ゴム部38の上下両端面48,50を傾斜面状に形成し、その傾斜角度α,βを15°以上60°以下と鋭角状に設定して、タイヤ内面側ほど白色ゴム部38のタイヤ径方向寸法を小さく設定している(H1>H2)。これにより、白色ゴム部38の上下両側で黒色ゴムのボリュームを増やすことができ、操縦安定性を向上することができるとともに、白色ゴム部38と上下の黒色ゴムとの境界面である端面48,50の長さが大きくなるので、当該境界面における歪み差を低減して、耐久性を向上することができる。
【0042】
本実施形態であると、また、白色ゴム部38の上端面48での傾斜角度βよりも、下端面50での傾斜角度αを小さく設定している(α<β)。一般に、白色ゴム部38は、上端面48よりもビード部14に近い下端面50の方が境界面でのセパレーションを起こしやすいので、下端面50での傾斜角度αを小さく設定することにより、黒色ゴムとの境界面での剛性差をより小さくすることができ、耐久性を向上することができる。
【0043】
図7は、変更例に係る白色ゴム部38の断面図であり、図6と同様、図1のVI−VI線に相当する位置での断面形状を示している。
【0044】
図7(a)に示す例では、白色ゴム部38の上端面48は、タイヤ子午線断面において径方向外方側に膨らんだ曲線状に形成されており、従って、上端面48は凸面状の湾曲面に形成されている。また、白色ゴム部38の下端面50は、タイヤ子午線断面において径方向外方側に窪んだ曲線状に形成されており、従って、下端面50は凹面状の湾曲面に形成している。
【0045】
図7(b)に示す例では、これとは反対に、白色ゴム部38の上端面48は、タイヤ子午線断面において径方向内方側に窪んだ曲線状に形成され、下端面50は、径方向内方側に膨らんだ曲線状に形成されている。
【0046】
このように白色ゴム部38の上下両端面48,50において黒色ゴムとの境界面を湾曲面状に形成することにより、当該境界面の長さが大きくなり、境界面での歪みを分散することができるので、耐久性の更なる向上につながる。
【0047】
なお、このように端面48,50が曲面状に形成される場合、上記傾斜角度α,βは、図7(a)及び(b)に示すように、タイヤ外面側と内面側の端同士を結ぶ直線がタイヤ外面47となす角度により定義することができる。
【0048】
白色ゴム部38の周方向における両側面44,46についても、同様に曲面状に形成してもよく、すなわち、両側面44,46の少なくとも一方を、タイヤ周方向に沿う断面において曲線状に形成してもよい。なお、この場合も、傾斜角度θ,φの定義は、タイヤ外面側と内面側の端同士を結ぶ直線がタイヤ外面47となす角度により定義することができる。
【0049】
上記実施形態では、ホワイトレタータイヤの場合について説明したが、タイヤ表面に表示するマークは文字には限られず、記号、図形などの様々なマークを表示するものに適用することができる。また、マークの色も白色には限らず、黒色以外の色彩を有するものであれば、様々な色を採用することができる。
【0050】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【実施例】
【0051】
図1〜6に示す実施形態の空気入りラジアルタイヤを、タイヤサイズをP265/70R17とし、更に白色ゴム部38の構成を下記表1の通りとして試作した(実施例3)。詳細には、白色ゴム部38A,38Bについては、その周方向両側の側面44,46の傾斜角度θ,φを表1の通りとし、白色ゴム部38Cについては、その周方向両側の側面44,46の傾斜角度はθ=φ=45°とした。
【0052】
比較例1は、従来タイヤに相当するものであり、表1の子午線断面形状を持つ白色ゴム部を周方向の全周にわたり形成し、その他は実施例3と同様に作製したものである。比較例2は、白色ゴム部と黒色ゴム部を周方向において交互に隣接配置したが、両者の界面を全てタイヤ外面に対して垂直とし(θ=φ=90°)、また、白色ゴム部の子午線断面形状についても、上下両端面をタイヤ外面に対して垂直とし(α=β=90°)、その他は実施例3と同様に作製したものである。
【0053】
実施例2は、全ての白色ゴム部38A〜Cについての周方向両側の側面44,46の傾斜角度をθ=φ=45°とし、その他は実施例3と同様に作製したものである。実施例1は、白色ゴム部38の子午線断面形状を、表1に記載の通り、上端面48の傾斜角度βよりも下端面50の傾斜角度αを大きくし(α>β)、その他は実施例3と同様に作製したものである。実施例4は、白色ゴム部38の子午線断面形状を比較例1と同様の断面形状とし、その他は実施例2と同様に作製したものである。
【0054】
各空気入りラジアルタイヤについて、一般耐久力試験を実施するとともに、操縦安定性を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0055】
・一般耐久力試験:各タイヤをTRA(The Tire and Rim Association)に規定のリムに装着し、最大空気圧を充填して、ドラム試験機(ドラム直径=1700mm)を用い(周辺温度は38±3℃)、速度は80km/hで一定とし、最大荷重の85%の負荷をかけて4時間、次に最大荷重の90%で6時間、さらに最大荷重の100%で24時間走行させた後、外観及び内面を調査し、異常がなければ更に最大荷重の120%で24時間走行させる。このとき外観及び内面に異常がなければ更に最大荷重の140%で故障が起こるまで走行させる。故障が発生するまでの走行距離を表1に示した。
【0056】
・操縦安定性:各タイヤをTRA規定のリムに装着し、内圧250kPaとして、排気量4500ccの試験車両に装着し、訓練された3名のテストドライバーにてテストコースを走行し、フィーリング評価した。採点は10段階評価とし、比較例1のタイヤを5点とした相対比較にて行った。数字が大きいほど、操縦安定性に優れることを意味する。
【0057】
結果は、表1に示す通りであり、比較例1に対し、白色ゴム部を周方向で分割して黒色ゴム部と交互に配置した比較例2では、操縦安定性は向上したものの、耐久性に劣っていた。
【0058】
これに対し、白色ゴム部と黒色ゴム部をタイヤ周方向に交互に隣接配置した上で、白色ゴム部の周方向における両側の側面を傾斜面状に形成して、タイヤ内面側ほど白色ゴム部のタイヤ周方向寸法を小さく(L1>L2)設定した実施例1〜4であると、耐久性を損なうことなく、操縦安定性の向上が図られていた。
【0059】
特に、白色ゴム部の子午線断面形状について、その上下両端面を傾斜面状に形成して、タイヤ内面側ほど白色ゴム部のタイヤ径方向寸法を小さく(H1>H2)設定した実施例1〜3であると、耐久性及び操縦安定性により優れていた。更に、左右両側の黒色ゴム部のボリュームが異なる白色ゴム部において、ボリュームの小さい黒色ゴム部との境界面の傾斜角度θを、ボリュームの大きい黒色ゴム部との境界面の傾斜角度φよりも小さく(θ<φ)設定し、更に、白色ゴム部の上端面での傾斜角度βよりも下端面での傾斜角度αを小さく(α<β)設定した実施例3であると、耐久性と操縦安定性において更に優れていた。
【0060】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、RV(レクリエーショナル・ビークル)用、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)用、LT(ライト・トラック)用などのような高荷重使用となるタイヤに好適に用いることができるが、これに限らず、各種の乗用車用やトラック・バス用などの空気入りタイヤに用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10…空気入りタイヤ 12,14…ビード部 16,18…サイドウォール部
20…トレッド部 22…カーカス 36…サイドウォールゴム
38,38A,38B,38C…白色ゴム部(異色ゴム部)
42,42A,42B,42C…黒色ゴム部
44,46…白色ゴム部のタイヤ周方向における側面
47…タイヤ外面 48,50…白色ゴム部のタイヤ径方向における端面
θ,φ…白色ゴム部のタイヤ周方向における側面とタイヤ外面とのなす角度
α,β…白色ゴム部のタイヤ径方向における端面とタイヤ外面とのなす角度
L1…白色ゴム部のタイヤ外面側の面での周方向寸法
L2…白色ゴム部のタイヤ内面側の面での周方向寸法
H1…白色ゴム部のタイヤ外面側の面での径方向寸法
H2…白色ゴム部のタイヤ内面側の面での径方向寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7