(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917134
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】階段ユニットおよび階段ユニットの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20160422BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
E04F11/02
E04B1/348 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-284786(P2011-284786)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133646(P2013-133646A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】中井 郁夫
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−336804(JP,A)
【文献】
特開2000−129881(JP,A)
【文献】
特開2001−220874(JP,A)
【文献】
特開2000−204737(JP,A)
【文献】
特開2011−157684(JP,A)
【文献】
特開平07−076876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/02
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットと、この建物ユニットに隣接して配置された他の建物ユニットに設けられる階段ユニットにおいて、
前記建物ユニットに取り付けられた2段目以上の複数の段板を有する上部階段ユニットと、
前記他の建物ユニットに取り付けられるとともに前記上部階段ユニットに隣接し、かつ前記上部階段ユニットの2段目の段板の斜め下に配置される1段目の段板を有する下部階段ユニットと、に分離され、
前記下部階段ユニットは、蹴込み板と3つの板材が四角形に枠組みされた部材と、この部材の上に取り付けられた前記1段目の段板と、を有し、
前記1段目の段板は平面視において矩形であり、この1段目の段板における短辺の長さは、前記上部階段ユニットの2段目の段板の幅と同じ長さであり、この1段目の段板における長辺の長さは、前記2段目の段板の幅方向の長さよりも長く設定されていることを特徴とする階段ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の階段ユニットにおいて、
前記1段目の段板は、前記建物ユニットと前記他の建物ユニットに跨っていることを特徴とする階段ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の階段ユニットを、前記建物ユニットと前記他の建物ユニットに設ける階段ユニットの施工方法であって、
前記建物ユニットと前記他の建物ユニットとを隣接して配置した後、前記他の建物ユニットに前記下部階段ユニットを前記上部階段ユニットの2段目の段板の斜め下に、下階から上階への1段目の上り口の方向を任意の方向に設定して配置する、
ことを特徴とする階段ユニットの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段ユニッ
トおよ
び階段ユニット
の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下階の床から上階までの階段ユニットが、工場で、製造され、この階段ユニットが建物ユニットに取り付けられていた。予め工場で、建物ユニットに階段ユニットを艤装することにより、コストを低減することができた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−93163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の階段ユニットでは下階から上階への階段の上り口の方向が所定の方向に決まってしまうという問題があった。また、階段ユニット単体を輸送する際に、1段目の段板を大きくするほど、トラックで輸送する際に大きな積載スペースを確保する必要があり、輸送効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、下階から上階への階段の上り口の方向を任意の方向に設定可能であり、かつ、輸送効率または艤装効率を向上する階段ユニッ
トおよ
び階段ユニット
の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば、
図1に示すように、建物ユニット10と、この建物ユニット10に隣接して配置された他の建物ユニット20に設けられる階段ユニット1において、
前記建物ユニット10に取り付けられた2段目以上の複数の段板3a〜3kを有する上部階段ユニット1Aと、
前記他の建物ユニット20に取り付けられ
るとともに前記上部階段ユニット1Aに隣接し、かつ前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの斜め下に配置される1段目の段板2を有する下部階段ユニット1Bと、
に分離され、
前記下部階段ユニット1Bは、蹴込み板2aと3つの板材2bが四角形に枠組みされた部材と、この部材の上に取り付けられた前記1段目の段板2と、を有し、
前記1段目の段板2は平面視において
矩形であり、この1段目の段板2
における短辺の
長さは、前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの幅と同じ
長さであ
り、この1段目の段板2における長辺の長さは、前記2段目の段板3aの幅方向の長さよりも長く設定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記1段目の段板2は平面視において四角形であり、この1段目の段板2の各辺の幅は、前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの幅と同じ幅、または、それ以上の幅であるので、下階から上階への階段の上り口7の方向を任意の方向に設定することが可能になり、前記上部階段ユニット1Aと1段目の段板2とに分離されているので、1段目の段板2をトラックの荷台の空いたスペースに積載することが可能となり、輸送効率を向上することができる。
また、前記建物ユニット10に前記上部階段ユニット1Aが取り付けられているので、前記上部階段ユニット1Aを建物ユニット10に取り付けている状態で搬送することが可能になる。
また、前記建物ユニット10に隣接する他の建物ユニット20に、前記1段目の段板2が前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの斜め下に配置されるように設けられているので、隣接する2つの建物ユニット10,20に対して階段ユニット1を設置することができる。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、例えば、
図5に示すように、
請求項
1に記載の階段ユニット10において、
前記1段目の段板2は、前記建物ユニット10と前記他の建物ユニット20に跨っていることを特徴とす
る。
【0014】
請求項
3に記載の発明は、例えば、
図3〜
図5,
図7に示すように、
請求項1
または2に記載の階段ユニットを、前記建物ユニットと前記他の建物ユニットに設ける階段ユニットの施工方法であって、
前記建物ユニット10と前記他の建物ユニット20とを隣接して配置した後、前記他の建物ユニット20に前記下部階段ユニット1Bを前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの斜め下に、下階から上階への1段目の上り口7の方向を任意の方向に設定して配置する、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項
3に記載の発明によれば、建物ユニット10と他の建物ユニット20とを隣接して配置した後、前記他の建物ユニット20に前記1段目の段板2を配置するので、現場において、2つの建物ユニット10,20を隣接して配置し、この隣接する2つの建物ユニット10,20に対して階段ユニット1を設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下階から上階への階段の上り口の方向を任意の方向に設定可能であり、かつ、輸送効率または艤装効率を向上する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る階段ユニットの一例を示す図であり、上部階段ユニットと下部階段ユニットとを切り離している例を示す斜視図である。
【
図2】同、上部階段ユニットと下部階段ユニットと接合している階段ユニットの例を示す斜視図である。
【
図3】同、(a)は
図2に示す階段ユニットの平面図を示し、(b)及び(c)は下部階段ユニットの配置を変えて上り口7の方向を変更した例を示す平面図である。
【
図4】同、(a)は下部階段ユニットの分解斜視図を示し、(b)は下部階段ユニットの斜視図を示し、(c)は下部階段ユニットの平面図を示す図である。
【
図5】本発明に係る建物ユニットの一例を示す図であり、階段ユニットを建物ユニットに配置した例を示す図である。
【
図6】
階段ユニットを建物ユニットに配置した例を示す図である。
【
図7】本発明に係る階段ユニットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<実施の形態>
(階段ユニット)
図1において、階段ユニット1は、回り階段であり、上部階段ユニット1Aと、下部階段ユニット1Bとに分離されている。上部階段ユニット1Aは、2段目以上の複数の段板3a〜3kと2段目以上の複数の蹴込み板4a〜4kとを有する。下部階段ユニット1Bは、この上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの斜め下に配置される。このような階段ユニット1は、
図2に示すように、下階から上階への1段目の上り口7の方向と2段目の上り口7aの方向を同じ方向にして、上部階段ユニット1Aの斜め下に下部階段ユニット1Bを配置している。
【0020】
図1に示すように、上部階段ユニット1Aの2段目以上の複数の段板3a〜3kと複数の蹴込み板4a〜4kは、複数の支持部材5で適宜支持されている。また、
図4に示すように、下部階段ユニット1Bでは、1段目の蹴込み板2aと3つの板材2bが四角形に枠組みされ、この枠組みされた部材の上に1段目の段板2が取り付けられている。
【0021】
また、
図4(c)に示すように、前記1段目の段板2の各辺の幅は、前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの幅と同じ幅であり、前記1段目の段板2は、平面視において正方形である。
【0022】
(建物ユニット)
図5に示すように、建物ユニット10に、前記上部階段ユニット1Aが取り付けられている。建物ユニット10,20の各々は、四隅に立設された柱11と、これら柱11の上端間および下端間を相互に連結する天井梁12および床梁13とを備えて直方体状に形成されている。
図5において、床梁13は天井梁12の鉛直下方に配置されている。なお、柱11は正方形筒状に形成されており、天井梁12と床梁13は、それぞれ断面コ字型に形成されている。互いに対向する2本の長手の床梁13には、複数の根太が架設されており、該根太は長手の床梁13の長手方向に所定間隔で設けられている。これら根太の上面には床板が固定され、この床板上に上部階段ユニット1Aが設置されている。
【0023】
また、
図5において、上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aは、隣接する他の建物ユニット20側に向けられている。この隣接する他の建物ユニット20に前記1段目の下部階段ユニット1Bが配置され、前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの斜め下に前記1段目の段板2(下部階段ユニット1B)が配置されている。
図5に示す例では、平面視において、段板2は、互いに隣接する建物ユニット10の床梁13および建物ユニット20の床梁13間を跨いでいる。
【0024】
(階段ユニットの建物ユニットへの施工方法)
図5に示すように、上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aへの上り口7aが、平面視において、建物ユニット10の天井梁12および床梁13の近くに配置されている建物ユニット10に対して、前記2段目の段板3aの上り口7aに隣接するように、他の建物ユニット20を隣接して配置する。前記建物ユニット10と前記他の建物ユニット20とを配置した後、前記他の建物ユニット20に前記下部階段ユニット1B(1段目の段板2)を配置し、上部階段ユニット1Aと下部階段ユニット1Bとを接合する。
現場において、上部階段ユニット1Aに下部階段ユニット1Bを接合するだけで、階段ユニット1が完成するため、艤装効率が向上する。
【0025】
本実施の形態によれば、前記1段目の段板2は平面視において四角形であり、この1段目の段板2の各辺の幅は、前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの幅と同じ幅であるので、下階から上階への階段の上り口7の方向を任意の方向に設定することが可能になり、前記上部階段ユニット1Aと下部階段ユニット1Bとに分離されているので、下部階段ユニット1Bをトラックの荷台の空いたスペースに積載することが可能となり、輸送効率を向上することができる。
【0026】
また、前記1段目の段板2の各辺の幅は前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの幅と同じ幅であり、前記1段目の段板2は平面視において、正方形であるので、下階から上階への階段の上り口7の方向を任意の方向に設定しても、2段目の段板3aに対する前記1段目の段板2の位置を平面視において変更する必要がないので、設計及び施工が容易になる。
【0027】
また、前記建物ユニット10に前記上部階段ユニット1Aが取り付けられているので、前記上部階段ユニット1Aを建物ユニット10に取り付けている状態で搬送することが可能になる。
【0028】
また、前記建物ユニット10に隣接する他の建物ユニット20に、前記下部階段ユニット1B(1段目の段板2)が前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの斜め下に配置されるように設けられているので、隣接する2つの建物ユニット10,20に対して階段ユニット1を設置することができる。
【0029】
また、上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aへの上り口7aが、平面視において、建物ユニット10の天井梁12および床梁13の近くに配置されている建物ユニット10に対して、前記2段目の段板3aの上り口7aに隣接するように他の建物ユニット20を隣接して配置した後、前記他の建物ユニット20に前記1段目の段板2を配置するので、現場において、2つの建物ユニット10,20を隣接して配置し、この隣接する2つの建物ユニット10,20に対して階段ユニット1を設置することができる。
【0030】
図6に示すように、建物ユニット30において、前記上部階段ユニット1Aおよび下部階段ユニット1Bが取り付けられていてもよい。
図6においては、階段ユニット1が、建物ユニット30の柱11と天井梁12の内側に収まるように、下階から上階への上り口7が建物ユニット30の長手方向に向けられている。
【0031】
(変形例)
上記実施の形態において、下階から上階への1段目の上り口7の方向と2段目の上り口7aの方向を同じにしたが、これに限られない。1段目の上り口7の方向と2段目の上り口7aの方向を異ならせてもよい。例えば、
図3(b)に示すように、平面視において、左側に上り口7を設定してもよいし、
図3(c)に示すように、平面視において、右側に上り口7を設定してもよい。
【0032】
また、上記実施の形態において、回り階段を例に説明したが、これに限られない。直階段、折返し階段、中げた(力げた)階段、ささらげた階段などにも適応できる。
【0033】
また、上記実施の形態において、1段目の段板の平面視における形状が正方形である例について説明したが、本発明は、これに限られない。例えば、
図7(a)から
図7(c)に示すように、前記1段目の段板2は平面視において矩形であり、蹴込み板2aの幅と蹴込み板4aの幅とが同じ幅であり、蹴込み板2aと交差する方向の1段目の段板2の一対の辺の幅を、前記上部階段ユニット1Aの2段目の段板3aの幅以上の幅にしてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態において、蹴込み板2a,3a〜3kを有する階段の例について説明したが、本発明は、これに限られない。蹴込み板2a,3a〜3kを有さない中げた階段等にも適用できる。この場合、例えば、1段目の段板2の四隅に脚をそれぞれ設けて、この1段目の段板2を2段目の段板3aの斜め下に配置してもよい。
【0035】
なお、変形例においては、上記実施の形態と同じ部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
【符号の説明】
【0036】
1 階段ユニット
1A 上部階段ユニット
1B 下部階段ユニット
2 段板
2a 蹴込み板
3a〜3k 段板
2a,4a〜4k 蹴込み板
5 支持部材
7 上り口
11 柱
12 天井梁
13 床梁
10,20,30 建物ユニット