特許第5917150号(P5917150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917150ポジ型感放射線性組成物、硬化膜及びその形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917150
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ポジ型感放射線性組成物、硬化膜及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20160422BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160422BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20160422BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
   G03F7/075 521
   G03F7/40 501
   H01L21/30 502R
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2011-543199(P2011-543199)
(86)(22)【出願日】2010年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2010069856
(87)【国際公開番号】WO2011065215
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年8月8日
【審判番号】不服2015-4972(P2015-4972/J1)
【審判請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2009-270792(P2009-270792)
(32)【優先日】2009年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】花村 政暁
(72)【発明者】
【氏名】一戸 大吾
【合議体】
【審判長】 藤原 敬士
【審判官】 本田 博幸
【審判官】 鉄 豊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−116785(JP,A)
【文献】 特開2009−169343(JP,A)
【文献】 特開2009−75326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/023
G03F 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]シロキサンポリマー、
[B]キノンジアジド化合物、及び
[C][B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い極大吸収波長を有する感放射線性酸発生剤
を含有し、
[C]酸発生剤が、下記式(1)、式(2−1)及び式(3)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であるポジ型感放射線性組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(1)中、
は、水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、水素原子、炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
aは、0〜7の整数である。bは、0〜10の整数である。cは、0〜3の整数である。但し、R及びRがそれぞれ複数ある場合、複数のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、Rが複数ある場合、複数のRのうち、2つのRが相互に結合して環状構造を形成してもよい。
Xは、SbF、(C2n+1PF6−Y又はC2n+1SOである。Yは、0〜6の整数である。nは、1〜6の整数である。
式(2−1)中、
10は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基又はフェニルチオ基である。
、C2n+1SOである。nは、1〜6の整数である。
式(3)中、
及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式アルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。但し、上記アリール基が有する水素原子の一部又は全部は、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
[C]酸発生剤が上記式(1)で表される化合物であり、この式(1)で表される化合物が下記式(1−1)で表される化合物である請求項1に記載のポジ型感放射線性組成物。
【化4】
(式(1−1)中、
及びRは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
Xは、上記式(1)と同義である。)
【請求項3】
[A]シロキサンポリマーが、下記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物である請求項1又は請求項2に記載のポジ型感放射線性組成物。
【化5】
(式(4)中、R11は、非加水分解性の基である。R12は、炭素数1〜4のアルキル基である。gは、0〜3の整数である。但し、R11及びR12がそれぞれ複数ある場合、複数のR11及びR12は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
[D]熱架橋性化合物をさらに含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のポジ型感放射線性組成物。
【請求項5】
硬化膜を形成するために用いられる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポジ型感放射線性組成物。
【請求項6】
(1)請求項5に記載のポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線が照射された塗膜を現像する工程、
(4)工程(3)で現像された塗膜に放射線を照射する工程、及び
(5)工程(4)で放射線が照射された塗膜を加熱する工程
を含む硬化膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5に記載のポジ型感放射線性組成物から形成される硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感放射線性組成物、硬化膜及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている。このような層間絶縁膜に代表される硬化膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なく、かつ十分な平坦性を有するものが好ましいことから、感放射線性組成物が幅広く使用されている。
【0003】
また、例えば液晶表示素子の層間絶縁膜においては、配線用のコンタクトホールのパターン形成が必要である。ネガ型組成物では、実用上使用できるレベルのホール径を有するコンタクトホールを形成することは困難であることから、液晶表示素子の層間絶縁膜等の硬化膜形成に、ポジ型感放射線性組成物が幅広く使用されている(特開2001−354822号公報参照)。
【0004】
硬化膜形成用の感放射線性組成物の成分としては、主にアクリル系樹脂が使用されている。これに対し、アクリル系樹脂よりも耐熱性及び透明性に優れたポリシロキサン系材料を感放射線性組成物の成分として用いる試みがなされている(特開2000−1648号公報、特開2006−178436号公報参照)。いずれの感放射線性組成物を用いた場合でも、放射線の照射及び現像の後の加熱工程(ポストベーク処理工程)において、形成したパターンのメルトフロー(パターンの形状が熱で融解し変形すること)を抑制することが、液晶表示素子の表示不良の防止の観点から重要となる。
【0005】
上記ポリシロキサン系材料を用いた感放射線性組成物としては、ポリシロキサン、キノンジアジド化合物及び熱架橋性化合物を含有する感光性シロキサン組成物が開発されている(特開2006−293337号公報参照)。このような感光性シロキサン組成物を用いることにより、高耐熱性、高透明性、低誘電率性、高耐薬品性、及び高解像性を併せもった硬化膜を形成可能であるとされている。しかし、これらの感光性シロキサン組成物を用いた場合でも、硬化膜の形成材料として実用的に十分なレベルの耐メルトフロー性は得られず、また使用する光酸発生剤によって透過率の低下を誘発する。
【0006】
このような状況下、一般的に要求される耐熱性、透明性、耐溶媒性及び低誘電性に優れた硬化膜、並びに電圧保持率が高い液晶セルを形成可能であり、かつ放射線感度に加えて、現像後の加熱工程における耐メルトフロー性に優れたポリシロキサン系のポジ型感放射線性組成物の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−354822号公報
【特許文献2】特開2000−1648号公報
【特許文献3】特開2006−178436号公報
【特許文献4】特開2006−293337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、耐熱性、透明性、耐溶媒性及び低誘電性に優れた硬化膜、並びに電圧保持率が高い液晶セルを形成するために好適に用いられ、かつ十分な放射線感度、及び現像後の加熱工程における耐メルトフロー性に優れたポリシロキサン系ポジ型感放射線性組成物、その組成物から形成される硬化膜、並びにその硬化膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]シロキサンポリマー、
[B]キノンジアジド化合物、及び
[C][B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い極大吸収波長を有する感放射線性酸発生剤(以下、[C]酸発生剤と称することがある)
を含有するポジ型感放射線性組成物である。
【0010】
当該ポジ型感放射線性組成物は、[A]シロキサンポリマー、[B]キノンジアジド化合物に加え、[C]酸発生剤を含んでいるので、パターン形成の際の露光で[B]キノンジアジド化合物の放射線吸収を促進してポジ型のパターン形成を行う一方、パターン形成時より短い波長での現像後の露光で[C]酸発生剤の放射線吸収により架橋反応を促進して[A]シロキサンポリマーの架橋構造を強固にすることができる。その結果、耐熱性、透明性、耐溶媒性及び低誘電性という一般的な要求特性をバランス良く満たす硬化膜、並びに高い電圧保持率を有する液晶セルを形成することができる。また、優れた放射線感度とともに、現像後の加熱工程における高い耐メルトフロー性を達成することができる。
なお、[B]キノンジアジド化合物及び[C]酸発生剤が、複数の吸収極大を有する場合は、その吸収極大の中で最も吸光度の大きい吸収極大に対応する波長を極大吸収波長という。複数の吸収極大が同一の吸光度を示す場合は、[B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短く、かつ最も長波長側にある吸収極大に対応する波長を極大吸収波長という。
【0011】
[C]酸発生剤は、下記式(1)、式(2)及び式(3)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、下記式(1)で表される化合物が下記式(1−1)で表され、下記式(2)で表される化合物が下記式(2−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(1)中、
は、水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、水素原子、炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
aは、0〜7の整数である。bは、0〜10の整数である。cは、0〜3の整数である。但し、R及びRがそれぞれ複数ある場合、複数のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、Rが複数ある場合、複数のRのうち、2つのRが相互に結合して環状構造を形成してもよい。
Xは、SbF、(C2n+1PF6−Y又はC2n+1SOである。Yは、0〜6の整数である。nは、1〜6の整数である。
式(2)中、
、R及びRは、それぞれ独立して水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基である。但し、上記アルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
d、e及びfは、それぞれ独立して0〜5の整数である。
但し、R、R及びRがそれぞれ複数ある場合、複数のR、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
は、SbF、(C2n+1PF6−Y又はC2n+1SOである。Yは、0〜6の整数である。nは、1〜6の整数である。
式(3)中、
及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式アルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。但し、上記アリール基が有する水素原子の一部又は全部は、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。)
【化4】
【化5】
(式(1−1)中、
及びRは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
Xは、上記式(1)と同義である。
式(2−1)中、
10は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基又はフェニルチオ基である。
は、上記式(2)と同義である。)
【0012】
[C]酸発生剤を上記特定の化合物とすることで、現像後の露光における[A]シロキサンポリマーの加水分解縮合反応をより促進させることができる。その結果、[A]シロキサンポリマーの架橋構造が強固となり、加熱工程における耐メルトフロー性をより向上させることができる。
【0013】
[A]シロキサンポリマーは、下記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
【化6】
(式(4)中、R11は、非加水分解性の基である。R12は、炭素数1〜4のアルキル基である。gは、0〜3の整数である。但し、R11及びR12がそれぞれ複数ある場合、複数のR11及びR12は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0014】
当該ポジ型感放射線性組成物において、上記[C]酸発生剤を採用するとともに、[A]シロキサンポリマーとして上記式(4)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物を用いることによって、放射線感度及び現像後の加熱工程における耐メルトフロー性をさらに高めることができる。
【0015】
当該ポジ型感放射線性組成物は、[D]熱架橋性化合物をさらに含有することが好ましい。さらに[D]熱架橋性化合物を含有することで、当該ポジ型感放射線性組成物の現像後の加熱工程における[A]シロキサンポリマーの架橋反応をより促進し、同工程における耐メルトフロー性をより改善することができる。
【0016】
当該ポジ型感放射線性組成物は、硬化膜を形成するために好適に用いられる。
【0017】
本発明の硬化膜の形成方法は、
(1)当該ポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線が照射された塗膜を現像する工程、
(4)工程(3)で現像された塗膜に放射線を照射する工程、及び
(5)工程(4)で放射線が照射された塗膜を加熱する工程
を含む。
【0018】
当該形成方法では、所定の放射線吸収領域を有する[B]キノンジアジド化合物に放射線を照射してポジ型のパターン形成する工程と、現像後に、[C]酸発生剤に放射線を照射して架橋反応を促進させることで、その後の加熱工程において耐メルトフロー性が高い塗膜を形成することができる。
【0019】
本発明の硬化膜は、当該ポジ型感放射線性組成物から好適に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のポジ型感放射線性組成物は、耐熱性、透明性、耐溶媒性及び低誘電性という一般的な要求特性をバランス良く満たす硬化膜を効率的に形成することができる。また、当該ポジ型感放射線性組成物は、優れた放射線感度及び高い耐メルトフロー性の発揮が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポジ型感放射線性組成物は、[A]シロキサンポリマー、[B]キノンジアジド化合物及び[C]酸発生剤を含有し、その他、任意成分を含有してもよい。
【0022】
<[A]シロキサンポリマー>
[A]シロキサンポリマーは、シロキサン結合を有する化合物のポリマーである限り、特に限定されない。この[A]シロキサンポリマーは、加水分解縮合することで硬化物を形成する。また、当該ポジ型感放射線性組成物は、[C]酸発生剤を含むので、放射線を照射することによって酸が発生し、これが触媒となって[A]シロキサンポリマーの自己縮合がさらに促進される。
【0023】
[A]シロキサンポリマーとしては、上記式(4)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
【0024】
本願における「加水分解性シラン化合物」とは、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(約25℃)〜約100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解してシラノール基を生成することができる加水分解性基を有するシラン化合物又はシロキサン縮合物を形成することができる加水分解性基を有するシラン化合物を指す。それに対して、「非加水分解性の基」とは、そのような加水分解条件下で、加水分解又は縮合を起こさず、安定に存在する基を指す。
【0025】
上記式(4)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解反応においては、一部の加水分解性基が未加水分解の状態で残っていてもよい。また、ここで言う「加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物」は、加水分解されたシラン化合物の一部のシラノール基同士が反応・縮合した加水分解縮合物を意味する。
【0026】
上記R11で表される非加水分解性の基としては、例えば無置換、(メタ)アクリロイル基若しくはエポキシ基により水素原子が1個以上置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はビニル基等が挙げられる。これらは、直鎖状、分岐状、又は環状であってよく、同一分子内に複数のR11が存在するときはこれらの組み合わせであってもよい。また、R11は、ヘテロ原子を有する構造単位を含んでいてもよい。そのような構造単位としては、例えばエーテル、エステル、スルフィド等が挙げられる。
【0027】
上記R12で表される炭素数が1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのR11の中でも、加水分解の容易性の観点から、メチル基及びエチル基が好ましい。また、gは、0〜3の整数であるが、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは1である。gが0〜2の整数である場合、加水分解縮合反応の進行がより容易となり、得られる硬化膜の耐熱性及び耐溶媒性をより向上させることができる。
【0028】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物としては、4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等が挙げられる。
【0030】
1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物としては、例えばクロロトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物としては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物としては、例えばトリブチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリブチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
これらの上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物のうち、4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、及び1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物が好ましく、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物がより好ましい。好ましい加水分解性シラン化合物としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらの加水分解性シラン化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる条件は、上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、縮合反応を起こさせるものである限り、特に限定されるものではないが、一例として以下のように実施することができる。
【0035】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は、上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解性基(−OR12)の合計量1モルに対して、好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.3〜2モル、特に好ましくは0.5〜1.5モルである。このような量の水を用いることによって、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
【0036】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合に使用することができる溶媒としては、特に限定されるものではないが、通常、後述するポジ型感放射線性組成物の調製に用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。このような溶媒としては、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類が好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチル、ジアセトンアルコールが、より好ましい。
【0037】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸等)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジン等の含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム等の水酸化物;炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩;各種ルイス塩基等)、又はアルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等)等の触媒の存在下で行われる。上記アルミニウムアルコキシドとしては、例えばトリ−i−プロポキシアルミニウム等が挙げられる。触媒の使用量としては、加水分解縮合反応の促進の観点から、加水分解性シラン化合物のモノマー1モルに対して、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.00001〜0.1モルである。
【0038】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合における反応温度及び反応時間は、適宜に設定される。例えば、下記の条件が採用できる。反応温度は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間である。このような反応温度及び反応時間とすることで、加水分解縮合反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解縮合においては、反応系内に加水分解性シラン化合物、水及び触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、又は加水分解性シラン化合物、水及び触媒を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解及び縮合反応を多段階で行ってもよい。なお、加水分解縮合反応の後には、脱水剤を加え、次いでエバポレーションをすることによって、水及び生成したアルコールを反応系から除去することができる。但し、この段階で用いられる脱水剤は、一般的に、過剰の水を吸着又は包接して脱水能が完全に消費されるか、又はエバポレーションにより除去されるため、ポジ型感放射線性組成物に任意に添加される後述の[F]脱水剤の範疇には入らないものとする。
【0039】
上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物の分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、ポリスチレン換算の数平均分子量として測定することができる。加水分解縮合物の数平均分子量としては、通常500〜10,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましい。加水分解縮合物の数平均分子量の値を500以上とすることで、ポジ型感放射線性組成物の塗膜の成膜性を改善することができる。一方、加水分解縮合物の数平均分子量の値を10,000以下とすることで、ポジ型感放射線性組成物の感放射線性の低下を防止することができる。
【0040】
<[B]キノンジアジド化合物>
[B]キノンジアジド化合物は、放射線の照射によってカルボン酸を発生するキノンジアジド化合物である。このようなキノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性組成物は、パターン形成のための放射線照射工程での露光部分が、その後の現像工程で除去されるポジ型の感放射線特性を有する。[B]キノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物及びナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドをエステル化反応させることによって得られる化合物が好ましい。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えばフェノール性水酸基のオルト位及びパラ位が、それぞれ独立して水素又は下記式(5)で表される置換基のいずれかである化合物が挙げられる。
【0041】
【化7】
(式(5)中、R13、R14及びR15は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、フェニル基、又は置換フェニル基である。但し、上記炭素数1〜10のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。また、R13とR14とが、又はR13とR14とR15とが、相互に結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【0042】
13、R14及びR15が表わす炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、2−カルボキシエチル基等が挙げられる。上記置換フェニル基の置換基としては、水酸基等が挙げられる。また、R13とR14とが、又はR13とR14とR15とが、相互に結合している炭素原子と共に形成してもよい環構造としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、フルオレン環等が挙げられる。
【0043】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば下記式(6)及び(7)で表される化合物群が挙げられる。
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
フェノール性水酸基を有する化合物の他の例としては、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0047】
ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、例えば4−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライド又は5−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドが挙げられる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物(キノンジアジド化合物)は、i線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物(キノンジアジド化合物)は、広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物、又は5−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドから得られたエステル化合物を選択することが好ましい。より好ましいキノンジアジド化合物としては、4,4’−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物が挙げられる。
【0048】
ナフトキノンジアジド化合物の分子量としては、好ましくは300〜1,500、より好ましくは350〜1,200である。ナフトキノンジアジド化合物の分子量を300以上とすることで、形成される硬化膜の透明性を高く維持することができる。一方、ナフトキノンジアジド化合物の分子量を1,500以下とすることで、ポジ型感放射線性組成物のパターン形成能の低下を抑制することができる。
【0049】
これらの[B]キノンジアジド化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該ポジ型感放射線性組成物における[B]キノンジアジド化合物の使用量としては、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部である。[B]キノンジアジド化合物の使用量を1〜100質量部とすることで、現像液となるアルカリ水溶液に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差が大きく、パターニング性能が良好となり、また得られる硬化膜の耐溶媒性も良好となる。
【0050】
<[C]酸発生剤>
当該ポジ型感放射線性組成物に含まれる[C]酸発生剤は、[B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い極大吸収波長を有しており、その吸収波長の放射線の照射によって酸、好ましくはパーフルオロスルホン酸等の強酸を発生する化合物である。このような[C]酸発生剤を含有するポジ型感放射線性組成物は、現像後の露光工程(ポスト露光工程)において、感放射線性酸発生剤から発生した酸によってシロキサンポリマー同士の縮合反応が促進される。また、この感放射線性酸発生剤は、パターン形成時の放射線とは異なる放射線吸収領域を有しているので、パターン形成時の放射線によって酸を発生することがないか、発生してもごく少量であり、ポジ型とネガ型の感放射線特性が混在して所望でない反応が生じてしまうことを防止することができる。
【0051】
[C]酸発生剤としては、[B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い極大吸収波長を有し、かつその吸収波長の放射線の照射によって酸を発生する化合物であれば特に限定されない。[B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長と[C]酸発生剤の極大吸収波長との波長差は、パターン形成時の露光又はポスト露光における放射線照射により実質的にいずれか一方の放射線吸収を選択的に発生させるような値であればよい。上記波長差としては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜100nmがより好ましい。
【0052】
[C]酸発生剤は、上記式(1)、式(2)及び式(3)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0053】
式(1)中、Rは、水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。aは、0〜7の整数である。bは、0〜10の整数である。cは、0〜3の整数である。但し、R及びRがそれぞれ複数ある場合、複数のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、Rが複数ある場合、複数のRのうち、2つのRが相互に結合して環状構造を形成してもよい。Xは、SbF、(C2n+1PF6−Y又はC2n+1SOである。Yは、0〜6の整数である。nは、1〜6の整数である。式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立して水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数6〜15のアリール基である。但し、上記アルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。d、e及びfは、それぞれ独立して0〜5の整数である。但し、R、R及びRがそれぞれ複数ある場合、複数のR、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、SbF、(C2n+1PF6−Y又はC2n+1SOである。Yは、0〜6の整数である。nは、1〜6の整数である。式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式アルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。但し、上記アリール基が有する水素原子の一部又は全部は、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0054】
上記式(1)で表される化合物は、上記式(1−1)で表され、上記式(2)で表される化合物は、上記式(2−1)で表される化合物であることがより好ましい。式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。Xは、上記式(1)と同義である。式(2−1)中、R10は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基又はフェニルチオ基である。Xは、上記式(2)と同義である。
【0055】
上記式(1−1)で表される化合物としては、例えば1−(4−ヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4−n−ブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4,7−ジエトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4,7−ジヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4,7−ジプロピルヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4,7−ジヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート、1−(4,7−ジヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート等のナフタレニルテトラヒドロチオフェニウム塩化合物等が挙げられる。これらの中でも、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−(4,7−ジヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナートが好ましい。
【0056】
上記式(2−1)で表される化合物としては、例えばジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート、ジフェニル(4−(フェニル)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート、ジフェニル(4−(ナフチル)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート、ジフェニル(4−(アントラニル)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩化合物等が挙げられる。これらの中でも、ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート、ジフェニル(4−(フェニル)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェートが好ましい。
【0057】
上記式(3)で表される化合物としては、例えばビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−t−ブチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(ナフタレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(アントラセンスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾジスルホン化合物が挙げられる。これらの中でも、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタンが好ましい。これらの[C]酸発生剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
当該ポジ型感放射線性組成物における[C]酸発生剤の使用量は、露光時に[A]シロキサンポリマーの縮合反応を促進し、架橋構造を強固にし得る限り特に限定されない。[C]酸発生剤の具体的な使用量は、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましく、1〜4質量部がより好ましい。[C]酸発生剤の使用量を上記範囲とすることで、加熱工程における熱に対しても高い耐メルトフロー性を発揮することができる。なお、[C]酸発生剤として複数種の化合物を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲に入るように設定すればよい。
【0059】
<[D]熱架橋性化合物>
当該ポジ型感放射線性組成物は、[D]熱架橋性化合物をさらに含有することが好ましい。[D]熱架橋性化合物は、加熱工程における熱硬化時に[A]シロキサンポリマーを架橋する化合物であり、このような[D]熱架橋性化合物を含むことにより硬化膜の架橋度が高くなる。その結果、硬化膜の耐薬品性が向上し、かつ加熱工程におけるメルトフローが抑制される。
【0060】
[D]熱架橋性化合物は、熱硬化時にシロキサンポリマーを架橋する化合物であれば特に制限されず、2個以上の反応性基、例えばエポキシ基、オキセタン基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、メチロール基、アルコキシメチル基、シラノール基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、好ましくは下記式(8)で表される基を2個以上有する化合物、下記式(9)で表される化合物、及びオキセタン基を2個以上有する化合物からなる群より選択される化合物が用いられ、これらの熱架橋性化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
【化10】
(式(8)中、R16は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。但し、R16が複数存在する場合、複数のR16は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0062】
【化11】
(式(9)中、iは、0〜2の整数である。R17は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数6〜15のアリール基である。但し、R17が複数存在する場合、複数のR17は、同一でも異なっていてもよい。R18は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数6〜15のアリール基である。但し、R18が複数存在する場合、複数のR17は、同一でも異なっていてもよい。)
【0063】
上記R16が表す炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0064】
上記式(8)で表される基を2個以上有する化合物としては、例えば以下の式(8−1)〜(8−10)で表されるメラミン誘導体や尿素誘導体(三和ケミカル製)、フェノール性化合物(本州化学工業製)等が挙げられる。なお、式(8−1)〜(8−10)で表される化合物は、商品名でそれぞれ順に、ニカラックMW−30HM、ニカラックMX−270、ニカラックMX−280、ニカラックMX−290、DML−PTBP、DMOM−PTBP、TML−BPA、TMOM−BPA、TML−BPAF、TMOM−BPAFである。
【0065】
【化12】
【0066】
上記式(8)で表される基を2個以上有する化合物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
上記式(9)中のR17において、アルキル基、アルケニル基、アリール基は置換されていてもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0068】
上記式(9)のR18において、アルキル基、アシル基、アリール基は置換されていてもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基等が挙げられる。
【0069】
上記式(9)で表される化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
上記式(9)で表される化合物は、オルガノシラン化合物であり、[A]シロキサンポリマーを構成する上記式(4)のオルガノシラン化合物と類似の化合物である。それゆえ、シロキサンポリマーとの相溶性が良好であり、硬化膜の高透明性を維持することができる。
【0071】
オキセタン基を2個以上有する化合物としては例えばOXT−121、OXT−221、OXT−191、OX−SQ−H、PNOX−1009、RSOX(以上、東亞合成製)エタナコールOXBP、エタナコールOXTP(以上、宇部興産製)等が挙げられる。
【0072】
オキセタン基を2個以上有する化合物は、熱硬化時に架橋剤として作用するが、室温では比較的安定な化合物である。よって、貯蔵安定性を損なうことなく、組成物から得られる膜の耐メルトフロー性や耐薬品性を向上することができる。
【0073】
さらに、[D]熱架橋性化合物として、下記式(10)又は(12)で表される他のシラン化合物を含んでいてもよい。これらの成分は、上述の[A]シロキサンポリマー(好ましくは上記式(4)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物)と共に縮合し、硬化物を形成する。
【0074】
【化13】
(式(10)中、R19及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。R20は、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基又は下記式(11)で表される基である。)
【0075】
【化14】
(式(11)中、k及びmは、それぞれ独立して1〜4の整数である。)
【0076】
【化15】
(式(12)中、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。p、q及びrは、それぞれ独立して1〜6の整数である。)
【0077】
上記式(10)のR19及びR21としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。式(10)のR20としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基が好ましい。これらの基の中でも、メチレン基、エチレン基、フェニレン基がより好ましい。また、R20が上記式(11)で表される基である場合、式(11)中のk及びmとしては、1又は2が好ましい。[D]熱架橋性化合物として、このような好ましい構造の上記式(10)のシラン化合物を用いることによって、[A]シロキサンポリマーとの反応性が向上する。
【0078】
式(12)のR22、R23及びR24としては、[A]シロキサンポリマーとの反応性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。これらのアルキル基の中でも、メチル基がより好ましい。また、式(12)中のp、q及びrは、[A]シロキサンポリマーとの反応性や相溶性の観点から1〜3の整数が好ましい。
【0079】
当該ポジ型感放射線性組成物が[D]熱架橋性化合物としてのシラン化合物を含むとき、シラン化合物は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。式(10)及び(12)のシラン化合物のうち、式(12)で示されるイソシアヌル環を有するシラン化合物がより好ましい。このように一分子中に3個のトリアルコキシシリル基が結合したイソシアヌル環を有するシラン化合物を用いることによって、高い放射線感度を示すポジ型感放射線性組成物が得られると共に、その組成物から形成される硬化膜の架橋度を向上させることができる。さらに、このようなイソシアヌル環含有シラン化合物を含むポジ型感放射線性組成物は、現像後の加熱工程におけるメルトフローに対する高い耐性を発現することができる。
【0080】
式(10)及び(12)で示されるシラン化合物としては、例えばビストリエトキシシリルエタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス−1,2−(トリメトキシシリル)エタン、ビス−1,6−(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス−1,6−(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス−1,4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス−1,4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、トリス(3−トリメトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス(3−トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらのうち、放射線感度、及び現像後の加熱工程における耐メルトフロー性向上の観点から、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、トリス(3−トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0081】
当該ポジ型感放射線性組成物が[D]熱架橋性化合物を含む場合、[D]熱架橋性化合物の使用量は、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上70質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下である。[D]熱架橋性化合物の使用量を1質量部以上70質量部以下とすることで、放射線感度、及び現像後の加熱工程における耐メルトフロー性のバランスに優れたポジ型感放射線性組成物を得ることができる。なお、[D]熱架橋性化合物として複数種の熱架橋性化合物を含む場合は、それぞれの合計量が上記範囲となるように配合すればよい。
【0082】
<その他の任意成分>
本発明のポジ型感放射線性組成物は、必須成分として上記の[A]〜[C]成分、及び好適成分の[D]熱架橋性化合物に加え、所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて[E]界面活性剤、[F]脱水剤等のその他の任意成分を含有することができる。
【0083】
<[E]界面活性剤>
[E]界面活性剤は、当該ポジ型感放射線性組成物の塗布性の改善、塗布ムラの低減、放射線照射部の現像性を改良するために添加することができる。好ましい界面活性剤の例としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0084】
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸系共重合体類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系共重合体類の例としては、ポリフローNo.57、同No.95(以上、共栄社化学製)等が挙げられる。
【0085】
フッ素系界面活性剤としては、例えば1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等が挙げられる。
【0086】
これらのフッ素系界面活性剤としては、例えばエフトップEF301、303、352(以上、新秋田化成製)、メガファックF171、172、173(以上、大日本インキ製)、フロラードFC430、431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC−101、102、103、104、105、106(以上、旭硝子製)、FTX−218(以上、ネオス製)等が挙げられる。
【0087】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばSH200−100cs、SH28PA、SH30PA、ST89PA、SH190、SH8400 FLUID(以上、東レダウコーニングシリコーン製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(以上、信越化学工業製)等が挙げられる。
【0088】
[E]界面活性剤を使用する場合の量は、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上5質量部以下である。[E]界面活性剤の使用量を0.01質量部以上10質量部以下とすることで、ポジ型感放射線性組成物の塗布性を最適化することができる。
【0089】
<[F]脱水剤>
[F]脱水剤は、水を化学反応により水以外の物質に変換することができるか、又は水を物理吸着若しくは包接によりトラップすることができる物質として定義される。当該ポジ型感放射線性組成物に、任意に[F]脱水剤を含有させることにより、環境から浸入する水分、又はポジ型感放射線性組成物の現像後の加熱工程における[A]シロキサンポリマー同士による縮合若しくは[A]シロキサンポリマーと[D]熱架橋性化合物との縮合の結果発生する水分を低減することができる。従って、[F]脱水剤を用いることによって、組成物中の水分を低減することが可能であり、その結果、組成物の保存安定性を向上させることができる。さらに、[A]シロキサンポリマー同士及び[A]シロキサンポリマーと[D]熱架橋性化合物との縮合の反応性を高め、ポジ型感放射線性組成物の耐メルトフロー性を向上させることができると考えられる。このような[F]脱水剤としては、カルボン酸エステル、アセタール類(ケタール類を含む)、及びカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく使用できる。
【0090】
カルボン酸エステルとしては、オルトカルボン酸エステル、カルボン酸シリルエステルが好ましい。オルトカルボン酸エステルとしては、例えばオルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト蟻酸プロピル、オルト蟻酸ブチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルト酢酸プロピル、オルト酢酸ブチル、オルトプロピオン酸メチル、オルトプロピオン酸エチル等が挙げられる。また、これらのオルトカルボン酸エステルのうち、オルト蟻酸メチル等のオルト蟻酸エステルがより好ましい。カルボン酸シリルエステルとしては、例えば酢酸トリメチルシリル、酢酸トリブチルシリル、蟻酸トリメチルシリル、シュウ酸トリメチルシリル等が挙げられる。
【0091】
アセタール類としては、ケトン類とアルコールとの反応物、ケトン類とジアルコールとの反応物、ケテンシリルアセタール類が好ましい。ケトン類とアルコールとの反応物としては、例えばジメチルアセタール、ジエチルアセタール、ジプロピルアセタール等が挙げられる。
【0092】
カルボン酸無水物としては、例えば無水蟻酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸、酢酸安息香酸無水物等が挙げられる。これらのカルボン酸無水物の中でも、脱水効果の点で、無水酢酸及び無水コハク酸が好ましい。
【0093】
[F]脱水剤を使用する場合の使用量は、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上30質量部以下であり、特に好ましくは0.05質量部以上10質量部以下である。[F]脱水剤の使用量を0.001質量部以上50質量部以下とすることで、ポジ型感放射線性組成物の保存安定性を最適化することができる。
【0094】
<ポジ型感放射線性組成物の調製方法>
本発明のポジ型感放射線性組成物は、上記の[A]シロキサンポリマー、[B]キノンジアジド化合物及び[C]酸発生剤、並びに任意成分([D]熱架橋性化合物、[E]界面活性剤、[F]成分の脱水剤等)を混合することによって調製される。通常、ポジ型感放射線性組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用される。例えば溶媒中で、[A]、[B]及び[C]酸発生剤、並びに任意成分を所定の割合で混合することによって、ポジ型感放射線性組成物を調製することができる。
【0095】
当該ポジ型感放射線性組成物の調製に用いることができる溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し、かつ各成分と反応しないものが好適に用いられる。このような溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。
【0096】
アルコール類としては、例えば、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0097】
エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフランや、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジn−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジn−ヘキシルエーテルなどのジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0098】
ジエチレングリコールアルキルエーテル類としては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0099】
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類としては、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0100】
プロピレングリコールモノアルキルエーテル類としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0101】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0102】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等が挙げられる。
【0103】
芳香族炭化水素類としては、例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0104】
ケトン類として、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
【0105】
エステル類としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロチル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0106】
これらの溶媒の中でも、溶解性又は分散性が優れていること、各成分と非反応性であること、及び塗膜形成の容易性の観点から、ジアルキルエーテル等のエーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ケトン類及びエステル類が好ましく、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチルがより好ましい。これらの溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
【0107】
また、上記エーテル類の中でも、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジn−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジn−ヘキシルエーテルなどのジアルキルエーテルが好ましく、ジイソペンチルエーテルがより好ましい。このような溶媒を用いることによって、感放射線性組成物をスリット塗布法で大型ガラス基板に塗布する際に、乾燥工程時間を短縮すると同時に、塗布性をより一層向上(塗布ムラを抑制)することが可能となる。
【0108】
上記した溶媒に加え、さらに必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の高沸点溶媒を併用することもできる。
【0109】
ポジ型感放射線性組成物を溶液又は分散液状態として調製する場合、液中に占める溶媒以外の成分の割合は、使用目的や所望の膜厚等に応じて任意に設定することができるが、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは15〜35質量%である。
【0110】
<硬化膜の形成方法>
本発明の硬化膜を形成する方法は、
(1)当該ポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線が照射された塗膜を現像する工程、
(4)工程(3)で現像された塗膜に放射線を照射する工程、及び
(5)工程(4)で放射線が照射された塗膜を加熱する工程
を含む。
【0111】
当該形成方法では、所定の放射線吸収領域を有する[B]キノンジアジド化合物に放射線を照射してポジ型のパターン形成する工程と、現像後に、[C]酸発生剤に放射線を照射して架橋反応を促進させることで、その後の加熱工程において耐メルトフロー性が高い塗膜を形成することができる。
【0112】
[(1)当該ポジ型感放射線性組成物の塗膜を基板上に形成する工程]
本工程では、基板上に本発明のポジ型感放射線性組成物の溶液又は分散液を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶媒を除去して、塗膜を形成する。使用できる基板としては、例えばガラス、石英、シリコン、樹脂等が挙げられる。樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0113】
組成物溶液又は分散液の塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、スピンコート法又はスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、好ましくは70℃〜120℃で1分〜10分間程度とすることができる。
【0114】
[(2)工程(1)で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程]
本工程では、形成された塗膜の少なくとも一部に露光する。この場合、塗膜の一部に露光する際には、通常、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。露光に使用される放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、[B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い波長であることが好ましい。
【0115】
当該工程における露光量は、放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100〜10,000J/m、より好ましくは500〜6,000J/mである。
【0116】
[(3)工程(2)で放射線が照射された塗膜を現像する工程]
本工程では、露光後の塗膜を現像することにより、不要な部分(放射線の照射部分)を除去して、所定のパターンを形成する。現像工程に使用される現像液としては、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が好ましい。アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0117】
また、このようなアルカリ水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、適当な現像性を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下とすることができる。現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用することができる。現像時間は、ポジ型感放射線性組成物の組成によって異なるが、好ましくは10秒〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒〜90秒間行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
【0118】
[(4)工程(3)で現像された塗膜に放射線を照射する工程]
本工程では、現像された塗膜に放射線を照射することにより、[C]酸発生剤から酸を発生させ、発生した酸によるシロキサンポリマーの縮合・架橋反応を促進させる。露光に使用される放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、レーザー発信光、発光ダイオード光等を使用できる。これらの放射線の波長としては、[B]キノンジアジド化合物の極大吸収波長より短い極大吸収波長であれば特に限定されないが、上記工程(2)で露光されなかった[B]キノンジアジド化合物への放射線照射も考慮すると、150〜400nmの範囲にある放射線が好ましく、特に300nm及び365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0119】
当該工程における露光量は、放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100〜10,000J/m、より好ましくは500〜6,000J/mである。
【0120】
[(5)工程(4)で放射線が照射された塗膜を加熱する工程]
本工程では、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、パターニングされた薄膜を比較的高温で加熱することによって、上記[A]シロキサンポリマー単独、又は[A]シロキサンポリマー及び[D]熱架橋性化合物の縮合反応を促進し、確実に硬化物を得ることができる。当該工程における加熱温度は、例えば120℃〜250℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、ホットプレート上で加熱工程を行う場合には5分〜30分間、オーブン中で加熱工程を行う場合には30分〜90分間とすることができる。2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。このようにして、目的とする硬化膜に対応するパターン状薄膜を基板の表面上に形成することができる。
【0121】
<硬化膜>
このように形成された硬化膜の膜厚は、好ましくは0.1〜8μm、より好ましくは0.1〜6μm、特に好ましくは0.1〜4μmである。
【0122】
本発明のポジ型感放射線性組成物から形成された硬化膜は、後述する実施例からも明らかなように、耐熱性、透明性、耐溶媒性及び低誘電性という一般的な要求特性をバランス良く満たすと共に、電圧保持率が高い液晶パネルを形成することができる。そのため、当該硬化膜は、液晶表示素子用の層間絶縁膜、保護膜等として好適に用いられる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
以下の各合成例から得られた加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、下記の仕様によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804(以上、昭和電工製)を結合したもの
移動相:テトラヒドロフラン
【0125】
<[A]シロキサンポリマーの合成>
[合成例1]
撹拌機付の容器内にプロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン30質量部、フェニルトリメトキシシラン23質量部、及びトリ−i−プロポキシアルミニウム0.1質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、イオン交換水18質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。次いで脱水剤としてオルト蟻酸メチル28質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、イオン交換水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上の手順により、加水分解縮合物(A−1)を得た。加水分解縮合物(A−1)の固形分濃度は40.5質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0126】
[合成例2]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン18質量部、テトラエトキシシラン15質量部、フェニルトリメトキシシラン20質量部、及びシュウ酸0.5質量部を仕込み、合成例1と同様の方法により、加水分解縮合物(A−2)を得た。加水分解縮合物(A−2)の固形分濃度は40.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0127】
[合成例3]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン22質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン12質量部、フェニルトリメトキシシラン20質量部、及びトリ−i−プロポキシアルミニウム0.1質量部を仕込み、合成例1と同様の方法により、加水分解縮合物(A−3)を得た。加水分解縮合物(A−3)の固形分濃度は39.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0128】
[合成例4]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン22質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12質量部、フェニルトリメトキシシラン20質量部、及びシュウ酸0.5質量部を仕込み、合成例1と同様の方法により、加水分解縮合物(A−4)を得た。加水分解縮合物(A−4)の固形分濃度は39.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0129】
[合成例5]
撹拌機付の容器内に、ジアセトンアルコール139質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン128質量部及びメチルトリメトキシシラン48質量部を仕込み、室温で攪拌した。次いで、イオン交換水54質量部にリン酸0.18質量部を溶解させたリン酸水溶液を滴下し、溶液温度が75℃になるまで加熱した。溶液温度が75℃に到達した後、3時間保持した。次いで脱水剤としてオルト蟻酸メチルを159質量部加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、この温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−5)を得た。加水分解縮合物(A−5)の固形分濃度は40.5質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,700であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0130】
[合成例6]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル25質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン17質量部、テトラエトキシシラン15質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12質量部、フェニルトリメトキシシラン15質量部、及びシュウ酸0.5質量部を仕込み、合成例1と同様の方法により、加水分解縮合物(A−6)を得た。加水分解縮合物(A−6)の固形分濃度は40.8質量%であり、得られた加水分解縮合物の数平均分子量(Mn)は1,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0131】
<ポジ型感放射線性組成物の調製>
[実施例1]
[A]シロキサンポリマーとして(A−1)を含む溶液((A−1)100質量部(固形分)に相当する量)に、[B]キノンジアジド化合物として後述する(B−1)1.0モルと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド3.0モルとの縮合物10質量部、[C]酸発生剤として後述する(C−1)2質量部、[E]界面活性剤として後述する(E−1)0.1質量部を加え、ポジ型感放射線性組成物を調製した。
【0132】
[実施例2〜13及び比較例1〜6]
各成分の種類及び量を表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に操作してポジ型感放射線性組成物を調製した。
【0133】
表1における[B]キノンジアジド化合物、[C]酸発生剤、[D]熱架橋性化合物、[E]界面活性剤の略称は、それぞれ以下のとおりである。
【0134】
B−1:4,4’−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物
B−2:1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物
C−1:1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート
C−2:1−(4,7−ジヒドロキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート
C−3:ジフェニル(4−(フェニルチオ)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート
C−4:ジフェニル(4−(フェニル)フェニル)スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスフェート
C−5:ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン
C−6:ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン
c−1:365nmより長い極大吸収波長を有する化合物として、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド(みどり化学製、NAI−105)
D−1:N,N’,N’’,N’’’−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル(三和ケミカル製、ニカラックMX−270)
D−2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
D−3:トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業製、X−12−965)
E−1:シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング製、SH 8400 FLUID)
【0135】
<評価>
調製したポジ型感放射線性組成物を使用し、以下のように当該ポジ型感放射線性組成物、硬化膜としての各種の特性を評価した。結果をあわせて表1に示す。
【0136】
[放射線感度]
シリコン基板上に、実施例1〜3及び5〜13並びに比較例1〜6については、スピンナーを用いて各組成物を塗布した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。実施例4については、スリットダイコーターを用いて組成物を塗布した後、室温で15秒かけて0.5Torrまで減圧し、溶媒を除去した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚4.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン製PLA−501F露光機(365nmの超高圧水銀ランプ)を用い、6.0μmのライン・アンド・スペース(1対1)のパターンを有するマスクを介して露光時間を変化させて露光を行った後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、80秒間、液盛り法で現像した。次いで、超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させてシリコン基板上にパターンを形成した。このとき、スペース線幅(底部)が6.0μmとなるのに必要な最小露光量を放射線感度とした。最小露光量が600(J/m)以下の時、感度は良好と判断した。
【0137】
[耐メルトフロー性]
上記「放射線感度の評価」と同様に、スペース線幅(底部)が6.0μmとなるパターンを形成した。得られたパターンに、それぞれキヤノン製PLA−501F露光機(365nmの超高圧水銀ランプ)を用いて、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することによりポストベークを行った。さらに、230℃で10分間加熱して、パターンをメルトフローさせ、SEM(走査型電子顕微鏡)によりパターン底部の寸法を測定した。この時、パターン底部の寸法が6.30μm未満であるとき、耐メルトフロー性を良好と判断した。一方、パターン底部の寸法が6.30μm以上の場合、耐メルトフロー性を不良であると判断した。
【0138】
[耐溶媒性]
上記「放射線感度の評価」で露光しなかった以外は、同様にシリコン基板上に塗膜を形成した。その後、得られた塗膜に、それぞれキヤノン製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用いて、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することにより硬化膜を得た。得られた硬化膜の膜厚(T1)を測定した。そして、この硬化膜が形成されたシリコン基板を70℃に温度制御されたジメチルスルホキシド中に20分間浸漬した後、当該硬化膜の膜厚(t1)を測定し、浸漬による膜厚変化率を下記式から算出した。
(|t1−T1|/T1)×100(%)
膜厚変化率が4%以下の時、耐溶媒性は良好と判断した。なお、耐溶媒性の評価においては、形成する膜のパターニングは不要のため、現像工程を省略し、塗膜形成工程、放射線照射工程及び加熱工程のみ行い評価に供した。
【0139】
[耐熱性]
上記「耐溶媒性の評価」と同様にしてシリコン基板上に硬化膜を形成し、得られた硬化膜の膜厚(T2)を測定した。次いで、この硬化膜が形成されたシリコン基板を、クリーンオーブン内にて240℃で1時間追加ベークした後、当該硬化膜の膜厚(t2)を測定し、追加ベークによる膜厚変化率を下記式から算出した。
(|t2−T2|/T2)×100(%)
膜厚変化率が3%未満の時、耐熱性を良好と判断した。
【0140】
[光線透過率(透明性)の評価]
上記「耐溶媒性の評価」において、シリコン基板の代わりにガラス基板「コーニング7059」(コーニング製)を用いたこと以外は同様にして、ガラス基板上に硬化膜を形成した。この硬化膜が形成されたガラス基板の光線透過率を、分光光度計(150−20型ダブルビーム、日立製作所)を用いて、400〜800nmの範囲の波長で測定した。最低光線透過率が95%以上の時、光線透過率を良好と判断した。
【0141】
[比誘電率(低誘電性)]
研磨したSUS304製基板上に、実施例1〜3及び5〜13並びに比較例1〜6については、スピンナーを用いて各組成物を塗布した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚3.0μmの塗膜を形成した。実施例4については、スリットダイコーターを用いて組成物を塗布した後、室温で15秒かけて0.5Torrまで減圧し、溶媒を除去した後、100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、キヤノン製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用い、積算照射量が3,000J/mとなるように露光を行った後、クリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することにより、基板上に硬化膜を形成した。この硬化膜上に、蒸着法によりPt/Pd電極パターンを形成し、比誘電率測定用サンプルを作成した。得られたサンプルにつき、横河・ヒューレットパッカード製HP16451B電極及びHP4284AプレシジョンLCRメーターを用い、CV法により周波数10kHzの周波数における比誘電率を測定した。なお、比誘電率の評価においては、形成する膜のパターニングは不要のため、現像工程を省略し、塗膜形成工程、放射線照射工程及び加熱工程のみ行い評価に供した。
【0142】
[電圧保持率]
表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO膜が形成され、さらにITO(インジウム−酸化錫合金)電極を所定形状に蒸着したソーダガラス基板上に、スピンナーを用いて表1に記載の各組成物を塗布し、100℃のホットプレート上で2分間プレベークを行って、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて、25℃、80秒間、ディップ法による現像を行った。次いで、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介さずに、塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を3,000J/mの積算照射量で露光した。さらに220℃で1時間ポストベークを行い、硬化膜を形成した。次いで、この硬化膜を有する基板上に5.5μm径のビーズスペーサーを散布後、これと表面にITO電極を所定形状に蒸着しただけのソーダガラス基板とを対向させた状態で、液晶注入口を残して4辺を0.8mmのガラスビーズを混合したシール剤を用いて貼り合わせ、メルク社製の液晶MLC6608(商品名)を注入した後に液晶注入口を封止することにより、液晶セルを作製した。この液晶セルを60℃の恒温層に入れて、液晶電圧保持率測定システム(VHR−1A型、東陽テクニカ製)により、印加電圧を5.5Vの方形波とし、測定周波数を60Hzとして液晶セルの電圧保持率を測定した。なお、ここで電圧保持率とは、下記式で求められる値である。
電圧保持率(%)=(基準時から16.7ミリ秒後の液晶セル電位差)/(0ミリ秒〔基準時〕で印加した電圧)×100
液晶セルの電圧保持率の値が低いほど、液晶パネル形成時に「焼き付き」と呼ばれる不具合を起こす可能性が高くなる。一方、電圧保持率の値が高くなるほど、「焼き付き」発生の可能性が低くなり、液晶パネルの信頼性が高くなる。
【0143】
【表1】
【0144】
表1の結果から明らかなように、本願発明に含まれる実施例1〜13のポジ型感放射線性組成物は、比較例1〜6のポジ型感放射線性組成物と比べて、現像後の加熱工程における耐メルトフロー性が良好であった。また、実施例1〜13のポジ型感放射線性組成物では、放射線感度に優れているとともに、耐熱性、透明性、耐溶媒性、光線透過率及び低誘電性という一般的な要求特性の全てを満足する硬化膜を形成可能であり、さらに高い電圧保持率を有する液晶セルが得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明のポジ型感放射線性組成物は、上述のように、耐メルトフロー性が良好であり、放射線感度に優れるとともに、耐熱性、透明性等の一般的な要求特性を全て満足する硬化膜を形成可能であり、また高い電圧保持率を有する液晶セルを得ることができる。従って、当該ポジ型感放射線性組成物は、液晶表示素子(LCD)の層間絶縁膜、レジスト用下層膜、マイクロレンズ、発光ダイオード素子用封止材等を形成するための材料として好適に用いることができる。