特許第5917184号(P5917184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917184
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】カラフルシューパフ
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/08 20060101AFI20160422BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20160422BHJP
   A21D 2/08 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A21D13/08
   A21D2/36
   A21D2/08
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-34755(P2012-34755)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-169173(P2013-169173A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】仙崎 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大友 さつき
(72)【発明者】
【氏名】加登 博文
(72)【発明者】
【氏名】小泉 賢一
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−102387(JP,A)
【文献】 特開平07−135889(JP,A)
【文献】 特開平09−037706(JP,A)
【文献】 特開2010−227038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 13/00−13/08
A21D 2/00−2/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シュー生地のパフと、前記第1シュー生地のパフと異なる色のシュー生地のパフが一体的に形成、かつ外観或いは断面において色の違いが区別され、或いは外観において色のグラデーションを示してなり
前記第1及び/又は第1シュー生地のパフと異なる色のシュー生地のパフが、タピオカ澱粉を含む澱粉粉体、酸性剤、卵白、油脂、水分を必須成分とすることを特徴とする
カラフルシューパフ。
【請求項2】
内部に、前記第1及び/又は第1シュー生地のパフと異なる色のシュー生地のパフで共有される1つの空洞が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のカラフルシューパフ。
【請求項3】
前記澱粉粉体に、タピオカ澱粉が10〜30重量%、コーンスターチが20〜40重量%、米粉(うるち米)が30〜70重量%、の範囲で含まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカラフルシューパフ。
【請求項4】
前記酸性剤が、酸性リン酸塩又は/及び有機酸であり、前記澱粉粉体に対して0.1〜0.8重量%の範囲で前記第1シュー生地及び/又は第1シュー生地と異なる色のシュー生地に添加され、生地をpH8.0以下としたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のカラフルシューパフ。
【請求項5】
タピオカ澱粉が10〜30重量%、コーンスターチが20〜40重量%、米粉(うるち米)が30〜70重量%を含む澱粉粉体と、酸性剤と、卵白と、油脂と、水分とを加熱混合してシュー生地とし、さらに、異なる色素材を添加して2以上の異なる色のシュー生地を調製し、オーブンプレートにそれぞれのシュー生地を接触するように適量絞り、オーブンの上火を190℃以下として、オーブンで焼成されパフが一体的に形成、かつ外観或いは断面において色の違いが区別され、或いは外観において色のグラデーションを示すことを特徴とするカラフルシューパフの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の異なる色のシューパフを一体的かつ外観或いは断面において明瞭に色の違いを区別でき、又は外観において色のグラデーションを知覚できる、色彩豊かなカラフルシューパフに関する。
【背景技術】
【0002】
シューパフとは、内部が空洞(中空)になるようにシュー生地を膨張させながら焼成し、焼成後カットして空洞部にカスタード又はホイップクリーム或いはその混合物、アイスクリーム、フルーツ、チョコレートなどの具材を充填して食されるシュークリーム用のパフ(焼成生地)である。
【0003】
なお、シューパフ用の焼成前の生地をシュー生地というが、シュー生地から作られる他の形態、例えばエクレア、パリブレストなどの焼成生地もシューパフという。
【0004】
家庭では、原料として、小麦粉100g、バター80〜100g、全卵3〜4個(150〜200g程度)、牛乳130ccなどを用いて、次のようにしてシューパフは作られる。
【0005】
鍋に牛乳、バターを入れて沸騰するまで加熱する。沸騰した後に、小麦粉を篩いでふるいながら鍋に投入し、よく混合する。その後、火から鍋を降ろし、全卵を少しずつ加えていき、絞れる程度の粘度に調整(全卵の投入量で調整)する。
【0006】
その後、調整されたシュー生地を、絞り袋にいれて、オーブン皿に載せたオーブンペーパー紙または天板上に絞る。そして、200〜230℃程度のオーブンでキツネ色になるまで約12分程度焼成する。最後に、焼き上がったら加熱を止めオーブンの中で6〜8分程度放置してしぼまないように乾燥させて、シューパフは完成する。その後、シューパフを平面水平方向にカットして、具材を挟みシュークリームとして喫食する。
【0007】
食品工業的には、焼成時の膨張率を高めるため、加熱により発泡する炭酸水素アンモニウムなどの膨張剤などが添加される。さらに、それら粉体原料を混合したシュー生地用ミックス粉なども市販されている。
【0008】
そして、シューパフは、一般に、生地の色に起因した単色である。その色は、穀粉、卵を配合されるため、クリーム色〜黄色或いはキツネ色である。なかには、ココアを添加してチョコレート色、抹茶を添加して緑色、その他色素、着色材(例えば、特許文献1、請求項3)を添加したものがあるが、単色の上、その色も鮮やかなものとはいえない。
【0009】
一般に、シューパフの生地は、上述のように小麦粉を使用し、焼成して膨らませる。そして全卵の配合量が高いため、小麦粉の焼成に伴う褐変(焦げ)、卵黄の色素により、キツネ色単色なのが一般である。
【0010】
さらに、従来のシューパフは前述の原料由来の色素があり、茶色く焼き色がつくことから、別途色素材を添加しても、意図する色素材の色に鮮やかに発色せず、色鮮やかなシューパフは得られない。
【0011】
他方、外観が複数色で焼成されるものとして、メロンパンがある。パン生地の上に硬いビス生地を載置して、焼成することで、メロンパン上面の仕上がりが緑色或いはオレンジを呈する。しかし、パン生地部とビス生地部の生地組成が全く異なるため焼成後の一体感はなく(一体的に形成されない)、喫食する際ビス生地が剥がれ落ち、辺りを汚し食べづらいことも指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−191872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、2以上の異なる色のシューパフを一体的かつ外観或いは断面において明瞭に色の違いを区別でき、又は外観において色のグラデーションを知覚できる、色彩豊かなカラフルシューパフを提供し、さらに添加した色素材が色鮮やかに発色するカラフルシューパフを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
第1シュー生地と、前記第1シュー生地と異なる色のシュー生地からなる、2以上の異なる色のシュー生地を接触させ、焼成してなることを特徴とするカラフルシューパフの構成とした。
(2)
前記第1及び/又は第1シュー生地と異なる色のシュー生地が、タピオカ澱粉を含む澱粉粉体、酸性剤、卵白、油脂、水分を必須成分として、調整されたことを特徴とする(1)に記載のカラフルシューパフの構成とした。
(3)
前記澱粉粉体に、タピオカ澱粉が10〜30重量%、コーンスターチが20〜40重量%、米粉(うるち米)が30〜70重量%、の範囲で含まれていることを特徴とする(2)に記載のカラフルシューパフの構成とした。
(4)
前記酸性剤が、酸性リン酸塩又は/及び有機酸であり、前記澱粉粉体に対して0.1〜0.8重量%の範囲で前記第1シュー生地及び/又は第1シュー生地と異なる色のシュー生地に添加され、生地をpH8.0以下としたことを特徴とする(2)又は(3)に記載のカラフルシューパフの構成とした。
(5)
タピオカ澱粉が10〜30重量%、コーンスターチが20〜40重量%、米粉(うるち米)が30〜70重量%を含む澱粉粉体と、酸性剤と、卵白と、油脂と、水分とを加熱混合してシュー生地とし、さらに、異なる色素材を添加して2以上の異なる色のシュー生地を調整し、オーブンプレートにそれぞれのシュー生地を接触するように適量絞り、オーブンの上火を190℃以下として、オーブンで焼成することを特徴とするカラフルシューパフの製造方法の構成とした。
【0015】
ここで、シュー生地とは、従来からシューパフの生地として使用されている一般的なシュー生地を採用することができる。ただし、一層色鮮やかにするためには、シュー生地配合を上述のように特定の組成にすることが望ましい。さらに、焼成温度を上述のように限定すると一層色素材の色が鮮やかに発色したカラフルシューパフが得られる。
【0016】
第1、第2シュー生地とあるが、本発明は2色を限定するものではなく、隣接するシュー生地が異なる色のシュー生地であればよく、2色以上の複数のシュー生地を焼成したシューパフも本願発明に包含される。
【0017】
また、色素材を添加しないシュー生地を調整して、分割して別途色素材を添加しないものを第1シュー生地とし、分割した残りに色素材を添加して第2シュー生地としても、第1、第2シュー生地を別々に調整してもよい。
【0018】
「色素材」としては、食品添加物として使用される色素、着色を目的として天然素材の抽出物があり、ココア、抹茶、フルーツ、フルーツピューレ、果汁、野菜、野菜ピューレ、野菜ジュースなど色を呈する食材そのものも色素材となる。色素材の添加量は、色素材の発色の程度、意図する発色度合い、呈味の観点から、シューパフとしての機能、形態を維持する範囲で適宜選択すればよい。
【0019】
異なる色のシュー生地を「接触させ、焼成」するとは、シュー生地を絞るなどして焼成開始前から接触させることを意味するのは勿論であるが、焼成開始前は非接触でも、シュー生地が膨張し焼成途中で互いに接触し、焼成完了時に一体的に形成される場合も含むものである。
【0020】
色鮮やかに色素材を発色させるためのシュー生地組成(第1シュー生地)においては、澱粉粉体として、タピオカ澱粉を必須として、米粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉を一部混合して使用することができる。中でも、米粉はタピオカ澱粉の代用として多く使用する。米粉の種類としては、もち米より粘性の低いうるち米ベースが、よりパフの膨張性が高まり好ましい。また、コーンスターチは澱粉糊液の粘度が比較的低いため、生地の粘度を低く抑えることができる。なお、パフの焼き色に影響しない範囲の配合量で、澱粉粉体に小麦粉またはグルテンを併用しても構わない。
【0021】
卵の種類としては、割卵の他、殺菌卵、殺菌凍結卵、乾燥卵を使用することができる。卵成分は、色素材を添加する場合には、色素材の発色をより鮮やかにするため、卵黄をできるだけ低下、除去することが望ましいので、卵白を多用する。全卵或いは卵黄はシュー生地の粘度調整として使用する程度に留めることが望ましい。
【0022】
油脂として、液体油よりバター、マーガリン、ファットスプレット、ショートニングなど固形脂が機能的に望ましく、色素材の発色をより鮮やかにするのであれば、バターより乳固形分の少ないマーガリン、ファットスプレッドが好ましい。また、シューパフ専用のマーガリンまたはファットスプレッドを使用しても良い。
【0023】
水分として、水、牛乳などが単一又は混合して使用できるが、色素材の発色をより鮮やかにするのであれば、牛乳より水が好ましい。
【0024】
シュー生地に膨張剤を使用することで、従来品と同様に、シューパフのボリュームが増す。膨張剤の種類は、特に限定されるものでなく、炭酸水素アンモニウム(炭安)、炭酸水素ナトリウム(重曹)、ベーキングパウダーなどが例示できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、異なる色調のシュー生地を2以上接触させ、焼成することで、内部空洞を備え、従来にない一体的かつ外観或いは断面において明瞭に色の違いを区別できる等の色彩豊かな外観、或いは断面において、カラフルシューパフを提供することができる。
【0026】
また、シュー生地原料を特定することで、小麦粉を使用しなくても、タピオカ澱粉、酸性剤、卵白、油脂、水分を必須成分とすることで、焼成後も焼き色(焦げ)の発生度合いが低く、色素材の発色が鮮やかなカラフルシューパフ提供できる。加えて、オーブン(窯)の上火を190℃以下、好ましくは160℃〜190℃、さらに好ましくは180℃〜190℃の範囲であれば、焼き色を抑制でき、一層色素材の発色が鮮やかになる。そのような焼成温度域であっても、発色を鮮やかにする上記シュー生地配合組成であれば、焼成後のシューパフのボリュームは従来配合と同等に得られる。
【0027】
酸性剤は、シュー生地のpHを酸性側に傾けることで、焼き色の生成を抑制することができ、色素材の発色を一層鮮やかに仕上げることができる。酸性剤とともに酸性O/W乳化物をシューパフの風味に影響しない範囲内で添加しても、同様に、シューパフの焼き色を低減して色素材の発色を一層鮮やかにすることができる。
【0028】
そして、色素材の種類、配置を工夫することで、実施の形態は多様で、従来にない外観のカラフルシューパフを提供することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明であるカラフルシューパフの第1の実施形態の写真である。
図2】本発明であるカラフルシューパフの第2の実施形態の写真である。
図3】第2の実施形態の他の応用例の模式図である。
図4】本発明であるカラフルシューパフの第3〜5の実施形態の写真である。
図5】本発明であるカラフルシューパフの第6、7の実施形態の写真である。
図6】本発明であるカラフルシューパフの第8〜10の実施形態の写真である。
図7】本発明であるカラフルシューパフの第11の実施形態の写真である。
図8】第1、第2シュー生地の配合組成の一例である。
図9】カラフルシュー生地のベース配合例と比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜6に、本発明であるカラフルシューパフの一例の写真を示した。それぞれのシュー生地は図8の配合をベースとして、色素材のみ異なる。シュー生地の調整、焼成条件は後述する。
【0031】
それら実施例に示したいずれのカラフルシューパフも、第1シュー生地と、第1シュー生地と異なる色の第2シュー生地を接触させて焼成して得たものである。なお、断面写真における白抜破線は空洞の外輪位置を示している。
【実施例1】
【0032】
第1の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図1の上段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。下段は、それを平面垂直方向にカットしたときの断面写真である。
【0033】
図1上段のカラフルシューパフの右側が第1シュー生地が焼成されてなる第1シューパフ部(現物は黄色味を呈する一般的なシュー生地、以下、単に「第1シューパフ部」という。)で、左側が第2シュー生地が焼成されてなる第2シューパフ部(現物はチョコレート色、以下、単に「第2シューパフ部」という。ただし実施例11は除く。)である。
【0034】
実施例1のカラフルシューパフは、第1シュー生地を絞るノズルと、第2シュー生地を絞るノズルを併設して、生地をオーブンプレートに、それぞれのシュー生地を接触させて8g絞って焼成して得られる。第2シュー生地の色素材はカラメル色素であり、第2シュー生地は第1シュー生地重量の4重量%のカラメル色素を第1シュー生地に添加して得たものである。
【0035】
図1下段に示すように、本発明のカラフルシューパフは、通常のシューパフ同様内部にはシューパフ特有の空洞(白抜破線内)が形成される。その上で、異なる色調のシューパフ部が一体に形成される。シューパフ内部においても異なる色調のシューパフが一体でありながら、色調は明確に区別される。
【0036】
このように、色調の異なるシューパフが一体化したカラフルシューパフは、いままで市場に流通しておらず、極めて斬新な外観、形態のシューパフである。
【実施例2】
【0037】
第2の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図2の上段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。下段は、それを平面垂直方向にカットしたときの断面写真である。
【0038】
実施例2のカラフルシューパフは、第1シュー生地(実施例1と同一品、以下同じ。)をオーブンに5g絞り、その第1シュー生地の上に第2シュー生地を8g絞って、第2シュー生地で第1シュー生地を被覆して接触させた上で、焼成したものである。
【0039】
図2(B)に示すように、底部には第1シューパフ部が表面に露出し、それ以外の表面は概ね第2シューパフ部で覆われている。内部においては、(C)断面(左)に見えるように、通常通り内部空洞が形成された上で、概ね第1シューパフが膜状に形成されている。このような外観、形態のカラフルシューパフも知られていない。
【0040】
図3に、実施例2の他の応用例を模式図を示した。図3(A)が焼成前の異なる色のシュー生地(2種)を天板状に絞ったときの縦断面模式図であり、図3(B)が(A)を焼成した後のカラフルシューパフの縦断面模式図である。
【0041】
第1シュー生地を包餡するように、天板上に絞りだし(A)、焼成することで(B)、外皮(第2シューパフ部)は1色であるが、内皮(第1シューパフ部)は外皮異なる色となり、第2シューパフ部内部には空洞ができる。そして、焼成後のカラフルシューパフの断面において、外皮と内皮の色が明確に区別される(B)。
【0042】
異なる色のシュー生地を包餡するには、パン、饅頭などで使用される包餡機が例示できる。さらに、第2シュー生地を絞った上に、第1シュー生地を絞り、さらに第2シュー生地で第1シュー生地を覆うように絞ることで、第1シュー生地を包餡することができる。ライン上で、3回に分け連続的に絞りだすことも可能である。一見すると、外観は単色でカラフルでなないが、断面において、色調が明確に区別できるものも、本願発明のカラフルシューパフに包含される。
【0043】
さらには、2重筒のノズルを用いて、外側通路から第2シュー生地を、内部ノズルから第1シュー生地をポンプで絞る。そのとき、外側の通路と内部ノズルのポンプ稼働時間を制御する、即ち外側通路の第2シュー生地を長く、内部ノズルの第1シュー生地を短く吐出させることで、連続的かつ一度に2色の包餡状態でカラフルシュー生地を絞ることができる。外側の通路の第2シュー生地が天板状に広がりその上に内部ノズルから吐出される第1シュー生地が載せられ、図3(A)に示すように、最終段階で外側通路から吐出される第2シュー生地が第1シュー生地を覆うことが可能になる。
【実施例3】
【0044】
第3の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図4の上段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第3の実施形態は、第1シュー生地をオーブンプレート上に5g絞り、その上面上に、さらに第2シュー生地を螺旋状に3g絞り、焼成したものである。
【0045】
図4上段に示されるように、第3の実施形態では、第1シューパフ部表面に、第2シューパフ部(第1シューパフより濃い色)が一体的に形成され、その表面に螺旋状の模様を形成する。ここでは示さないが内部には空洞が形成される。断面写真等がない場合でも本願発明であるカラフルシューパフにおいて内部空洞ができる点、以下同じ。
【実施例4】
【0046】
第4の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図4の中段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第4の実施形態は、第1シュー生地を絞るノズルと、第2シュー生地を絞るノズルを併設して、オーブンプレート上に螺旋状に合計8g絞った後に、焼成したものである。
【0047】
図4中段に示されるように、第4の実施形態では、渦巻き状に第1シューパフ部と第2シューパフ部が一体的に形成される。
【実施例5】
【0048】
第5の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図4の下段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第5の実施形態は、第1シュー生地をオーブンプレート上に5g絞り、その表面上に、さらに第2シュー生地を十字状に3g絞り、焼成したものである。
【0049】
図4下段に示されるように、第5の実施形態では、第1シューパフ部表面に、第2シューパフ部(第1シューパフより濃い色)が一体的に形成され、その表面に十字状の模様を形成する。
【実施例6】
【0050】
第6の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図5の上段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第6の実施形態は、第1シュー生地をオーブンプレート上に5g絞り、その表面上に、さらに第2シュー生地を複数本線状に3g絞った上、串で表面を2箇所、それぞれ逆方向になぞり、焼成したものである。
【0051】
図5上段に示されるように、第6の実施形態では、第1シューパフ部表面に、第2シューパフ部(第1シューパフより濃い色)が一体的に形成され、その表面に屈折した模様を形成するとともに、第1、第2シューパフ部とが撹拌され、中間の色調を呈すグラデーション部(第1シューパフ部より濃く、第2シューパフ部よりも黒みが薄い部分)も形成される。
【実施例7】
【0052】
第7の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図5の下段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第7の実施形態は、オーブンプレート上に、第1シュー生地5gを絞り、その上に第2シュー生地(カラメル色素4重量%)2.5gと第3シュー生地(カラメル色素2重量%)(以下、単に「第3シュー生地」という。ただし、実施例11を除く。)2.5gを併設して被覆した後、焼成した。
【0053】
図5下段に示されるように、第7の実施形態では、異なる3色のシューパフ部(第1シューパフ(最も薄いグレー部)、第2シューパフ(最も濃いグレー部)、第3シューパフ部(第1シューパフ部より濃く、第2シューパフ部より薄いグレー部))が区別され、一体的に形成される。
【0054】
次に、図6を参照しながら、エクレアタイプのカラーシューパフについて説明する。第1〜第3シュー生地及び第1〜第3シューパフ部は実施例1〜10と同じである。
【実施例8】
【0055】
第8の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図6の上段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第8の実施形態は、第1シュー生地をオーブンプレート上に15g長細く絞り、その表面に、斜めの境界が形成されるよう第2シュー生地を7g絞り、焼成したものである。第8の実施形態では、第1シューパフ部表面に、第2シューパフ部(第1シューパフより濃い色)が一体的に形成され、その表面に図6実施例8に示すような2色模様が形成される。
【実施例9】
【0056】
第9の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図6の中段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第9の実施形態は、第1シュー生地をオーブンプレート上に15g長細く絞り、その表面に、長手方向半分に第2シュー生地を、残りの半分に第3シュー生地を各々6g絞り、焼成されてなる。第9の実施形態では、底部に第1シューパフ部が露出し、上面には、第2シューパフ部と第3シューパフ部が概ね半分になるよう明確に区別され一体的に形成され、その表面に図6実施例9に示すような2色模様を形成する。
【実施例10】
【0057】
第10の実施形態である焼成後のカラフルシューパフを、図6の下段に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。第10の実施形態は、第1シュー生地をオーブンプレート上に15g長細く絞り、その表面に、第2シュー生地と第3シュー生地を各々5g波状に絞り、焼成したものである。第10の実施形態では、底部の殆どに第1シューパフ部が露出し、上面には、第2シューパフ部と第3シューパフ部が線状に明確に区別され一体的に形成され、その表面に図6実施例10に示すような縞模様を形成する。
【実施例11】
【0058】
次に、メロンパンの模様、形状を模したカラーシューパフについて説明する。第11の実施形態である焼成後のメロンパンタイプのカラフルシューパフを、図7に、(A)平面、(B)底面斜視写真として示した。
【0059】
第11の実施形態は、黄色く着色(色素材:カロチン色素と紅麹色素を第1シュー生地に対して0.6重量%添加)した第3シュー生地をオーブンプレート上に6g円形に絞り、その表面に、緑色に着色(色素材:クチナシ色素を第1シュー生地に対して0.5重量%添加)した第2シュー生地を10g絞り被覆して、さらに第2シュー生地表面に格子状に第1シュー生地を2gに絞り、焼成したものである。
【0060】
第11の実施形態では、各シューパフ部が一体的に形成され、底部に第3シューパフ部が露出し、上面には、第2シューパフ部と第3シューパフ部とで、図7に示すようなメロン表面のマスク模様を明瞭に形成する。
【0061】
以上、実施例3〜4に示す外観、形態のカラフルシューパフは知られていない。また、ここに示した形態以外にも、色素材の選択、配置により、一体的かつ空洞を備えた外観が複雑でバラエティーに富んだカラフルシューパフを提供することができる。
【0062】
[カラフルシューパフのシュー生地例]
図8に、本発明であるカラフルシューパフのシュー生地組成の一例を示した。ここでは、色素材を添加しないものを第1シュー生地とし、第1シュー生地に色素材を添加したものが第2シュー生地である。
【0063】
色素材は、上述のように、目的、呈味によって種々あり、カラフルシューパフの完成外観に応じて適宜選択することができる。色素材の添加量は、色素材の発色程度、カラフルシューパフの最終色調、呈味に応じて、適宜添加量は調節する。
【0064】
本発明でカラフルシューパフのシュー生地は、ここに例示するほか、一般的なシュー生地であっても、発色の鮮やかさの程度に違いがあるもののシュー生地のベースとして使用できる。また、色素材の種類によっては何ら支障ない。
【0065】
なお、図8の配合にいて、卵白の比率を高くしたこと、酢(シュー生地pHの低下)を添加する目的は、シューパフのベースの色調をより白くし、色素材の発色を際だたせるためである。
【0066】
[シュー生地の調整]
以下、図8を参照してシュー生地の調整方法を説明する。先ず、図8a(油脂、水)を加熱して沸騰(95℃以上)させる。次に、沸騰したaにb(澱粉、強力粉)を篩でふるって撹拌しながら投入し、混合物とする。
【0067】
その後、図8c(卵白、全卵)の一部を3〜4回に分けて、前記混合物に撹拌しながら添加する。その際、図8e(炭安)を溶解する分量およびシュー生地の硬さを調整する分量のcを残しておく。次に、図8d(酢)を投入する。最後に、図8eを溶解したcを投入し、残りのcでシュー生地の硬さを調節する。
【0068】
このようにして調整されたシュー生地は、実施例1〜10の第1シュー生地となる。第2、第3シュー生地など異なる色のシュー生地は、当該第1シュー生地をベースに、必要量の色素材を添加すればよい。
【0069】
[焼成条件]
異なる色の所望のシュー生地重量、例えば10gと10gを接触させて、オーブンプレートに絞り、下火210℃、上火180℃で、18分前後焼成すればよい。
【実施例12】
【0070】
図8に示した配合でもあっても、カラフルシューパフにおける色素材の発色は通常のシュー生地組成より優れているが、以下の配合であればシュー生地のベースが一層白色になるので、一層色素材の発色が鮮やかになる。さらに、焼成温度を下述のように調節することで、焦げ色が低減され、一層色素材の発色が鮮やかになる。
【0071】
[シュー生地の配合]
試験例1〜9及び比較例1〜3のシュー生地の配合組成を図(A)配合に示した。いずれも、澱粉粉体の合計は100重量部とした。
【0072】
[シュー生地の調整]
シュー生地調整は、従来法に準じた。図1に示した澱粉粉体と油脂と水と酸性剤を混合して煮立てて糊化した。これに、卵白および全卵の一部を3〜4回に分けて加え、混合した。更に、酸性O/W乳化物を必要に応じて加え、混合した。最後に、残りの全卵に溶かした膨張剤と色素を混合した。配合水は、シュー生地の糊化を抑え、粘度を下げるため通常(対澱粉粉体130重量%)より少なくしている。即ち、水分量を対澱粉粉体50〜60重量%とした。
【0073】
酸性剤は、煮沸前の配合時に添加する。膨張剤の添加時に酸性剤を混合添加すると、酸性剤と膨張剤が反応して発泡し、焼成時のシュー生地の膨張が十分起こらなくなる。
【0074】
[焼成条件]
調整したシュー生地を、天板の上に約23g絞って焼成した。オーブンの上火は、シューパフの焼き色を抑えるため、従来約230℃とするところ、180℃〜190℃に低く設定した。下火は、従来通り210℃とした。焼成時間は18分であった。
【0075】
[試験結果]
図9(B)評価に、焼成後のシューパフの評価をまとめた。試験例1〜6、8、9では、いずれもシューパフの焼き色は極めて白いものであった。また試験例7では、鮮やかなピンク色に焼成できた。シュー生地に焼き色がつかないためである。焼成による生地の膨張も従来の小麦粉を主体とした配合で焼成したものと比較して遜色ないものであった。
【0076】
[澱粉粉体の影響]
試験例1〜5に示すように、小麦粉を使用しなくても、小麦粉を主体として作られる従来のシューパフと遜色のない焼成後のボリュームを得ることができた。加え、卵黄成分の低減、酸性剤の添加により、焼成後のシューパフの色調は焼き色が少なく白色であった。
【0077】
また、試験例6、7に示すように、小麦粉を少量(10重量%)添加しても、白色に焼成できた。このような結果になったのは、pHを8.0以下に抑えること、卵黄成分を低減させたことによるものと思われる。
【0078】
更に、試験例8、9に示すように、タピオカ澱粉の配合量として、10〜30重量%であれば、シューパフの色調は白色に焼成することができる。なお、タピオカ澱粉が10重量%程度までは、シューパフのボリュームは適正であるが、それを下回るにつれ、シューパフのボリュームは小さくなっていく傾向にある。
【0079】
他方、比較例1、2では、試験例1と同様にpH8.0以下に、卵黄成分を低下させているものの、澱粉粉体としてタピオカ澱粉を使用しなかったために、焼き色は白くならず、焼成後のシューパフのボリュームも十分に得られなかった。このことから、焼き色が白く、十分なボリュームを得るためにはタピオカ澱粉が必須で、米粉(うるち米)、コーンスターチを含むことが好ましいことがわかる。
【0080】
[酸性剤の影響]
比較例3をみると、澱粉粉体組成、卵成分は同一であるが酸性剤の添加がないために、pHが8.0を越え、焼成後のボリュームは十分得られるものの白色に焼成できなかった。このことから、シューパフを白色に焼成するために、即ち色素材を鮮やかに発色させるためには、タピオカ澱粉と酸性剤が極めて重要であることがわかる。なお、酸性剤の一部を酸性O/W乳化物に置換すると、生地粘度が好適になり、焼成後のシューパフのボリュームも増加した。
【0081】
これらの結果は、焼成によって焦げ色の発生が少なく、色素材添加前のシュー生地が極めて白く焼き上がることを示し、色素材を添加した場合には、添加した色素材本来の色調でかつ鮮やかに発色させることができることを示す。本発明のカラフルシューパフの色素材の鮮やかさは、従来のシュー生地に色素を添加しただけでは到底実現できるものではない。
図8
図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7