(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の弾性片により換気扇を換気パイプに強固に取着するには、弾性片の突張り力を大きくする必要があり、そのために、弾性片の長さを大きくする必要があった。また、換気パイプの径に対応して換気扇を取着するためにも、同様に、弾性片の長さを大きくする必要があった。
【0006】
しかし、弾性片は、その基端部が換気扇の円筒状の挿入部の外面に接合され、換気パイプの軸方向つまりは換気扇の挿入部の軸方向に向けて突設されていた。このため、弾性片を長くすると、換気扇の挿入部も長くする必要があり、換気パイプへの内挿量が大きくなって換気扇全体が大型化し、取着時の取り扱いが不便となり、運搬、保管等にも不便をきたした。
【0007】
また、換気パイプには、その端部に取着される換気器具として、換気扇の他、壁裏側に換気フードが取付けられることもあり、その取付けにおいても、同様の弾性片を使用して換気パイプの内面に突張らせて取着するものがあるが、その換気フードと換気扇とを換気パイプの両端部に取付けたときに、突張り強度を増すためにそれぞれの弾性片を長めに設定すると、換気パイプ内で挿入端部同士が干渉して取付けできないこともあった。
【0008】
更に、大径の挿入部と小径の挿入部とを換気パイプの軸方向にずらして並設させることにより、1個の換気扇で、径の異なる大小2種類の換気パイプに対応して取着するものを考えた場合、これを小径の換気パイプに取着したときに、大径の挿入部の部分は換気パイプの外部である壁表側にはみ出すことになる。そのとき、大径の挿入部に設けられている弾性片が上記と同様に長めに設定されていると、その分大径の挿入部は換気パイプの端部から壁表に大きくはみ出してしまうため、室内側の見栄えを著しく低下させてしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明は、換気パイプへの取着強度を増すため、或いは、換気パイプの径に対応して取着するために、換気パイプの内面に圧接される弾性片を長くすることに伴って、前記弾性片が設けられ換気パイプの端部に内挿される挿入部の軸方向長さが大きくなるのを防止できる換気器具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1及び2の換気器具は、
換気パイプの端部に内挿される挿入部に、一端側が該挿入部の外面に接合され、他端側が換気パイプの内部空間より外方に張り出し、取着時に該換気パイプの内方に撓むとともに、弾性復帰力により前記換気パイプの内面に圧接する弾性片が設けられ、該弾性片は、前記一端側から前記他端側へと延びる方向が前記挿入部の周方向に設けられているとともに、幅方向における挿入方向奥側端部が前記一端側から前記他端側にかけて挿入方向手前側に傾斜したものである。
請求項2の換気器具は、更に、挿入部は、径の異なる大小2種類の前記換気パイプに対応して挿入すべく、挿入方向奥側に小径の前記換気パイプに対応する小径挿入部が設けられ、挿入方向手前側に大径の前記換気パイプに対応する大径挿入部が設けられて成り、挿入方向において隣り合う前記小径挿入部と前記大径挿入部との間に、前記小径の換気パイプに挿入された際に、該小径の換気パイプの開口端に当接して挿入が規制される規制段部が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、弾性片の一端側から他端側へと延びる方向が挿入部及び換気パイプの周方向に形成されているので、換気パイプへの換気器具の取着強度を増すために、或いは、換気パイプの径に対応して取着するために、挿入部に設けられて換気パイプの内面に圧接される弾性片の長さを大きくしても、挿入部における換気パイプの軸方向長さは変わらない。つまり、弾性片の弾発力の確保や換気パイプの径に対応すべく弾性片を長めに設定したまま換気パイプ内への挿入部の挿入量を小さくできる。その結果、換気扇を換気パイプ内に挿入する際に取り扱いやすく、挿入作業を円滑かつ楽に行なうことができるとともに、換気扇が小型化、軽量化して、管理や保管が容易となる。また、壁を挟んだ換気パイプの両端部に換気器具としての換気扇と換気フードとを取着するときには、換気器具の挿入部や弾性片の先端部が互いに干渉して取付け不能となるのを防止できる。
【0014】
請求項2の発明は、少なくとも大径挿入部に設けられた弾性片の一端側から他端側へと延びる方向が大径挿入部及び換気パイプの周方向に形成されているので、径の異なる大小2種類の換気パイプに対応した換気扇において、請求項1と同様に前記弾性片を長めに設定しても、少なくとも大径挿入部の軸方向長さは変わらず、短かいものとなる。これにより、換気扇を小径の換気パイプに取付けたとき、大径挿入部が換気パイプの端部から壁表にはみ出す長さを小さくできる。その結果、室内側の見栄えが低下するのを防止できる。
【0015】
請求項1及び2の発明は、
換気パイプの端部に内挿される挿入部の周方向に設けられた弾性片の幅方向における挿入方向奥側端部が一端側から他端側にかけて挿入方向手前側に傾斜しているため、他端側は取着前において換気パイプの内部空間より外方に張り出していても、最初に一端側が換気パイプ内に挿入された後、以降の延設部分における挿入方向奥側端部は順次換気パイプの開口端に当接しつつ内部空間側に導かれるようにして押し込まれ換気パイプ内に挿入されていく。したがって、前記弾性片は、挿入方向奥側端部が換気パイプの開口端につかえて挿入が阻止されることなく円滑に換気パイプ内に挿入され取着される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の換気扇を表側から見た斜視図である。
【
図2】
図1の換気扇を示し、(a)は裏側から見た斜視図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は背面図、(e)は(d)のA−A切断線による断面図である。
【
図3】
図2の換気扇本体を示し、(a)は表側から見た斜視図、(b)は裏側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(c)のB−B切断線による断面図である。
【
図4】
図2のフィルタを示し、(a)は表側から見た斜視図、(b)は裏側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。
【
図5】
図2のファンを示し、(a)は表側から見た斜視図、(b)は裏側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(c)のC−C切断線による断面図である。
【
図6】(a)は
図1の換気扇を大径の換気パイプに取着した状態を示す側面図、(b)は小径の換気パイプに取着した状態を示す側面図である。
【
図7】換気パイプに換気フード及び
図1の換気扇を取着した状態を示す側面図である。
【
図8】
図7の換気フードを示し、(a)は表側から見た斜視図、(b)は裏側から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。
【
図9】従来の換気扇及び換気フードを換気パイプに取着した状態を示す側面図である。
【
図10】従来の換気扇を小径の換気パイプに取着した状態を示す側面図である。
【
図11】
図1の大径側弾性片の変形例を示し、(a)は要部拡大斜視図、(b)は(a)のD−D切断線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1及び
図2において、アパート、マンション等の壁74に形成された壁孔75から臨む円筒状の換気パイプ71の端部には換気器具としての換気扇1が取着され、その換気扇1は径の異なる大小2種類の円筒部が軸方向に同軸で並設された形状をなす換気扇本体2と、大径側の円筒部の開口端部に取着されたフィルタ41と、換気扇本体2の大径側の円筒部の内部に収容されたファン51とで構成されている。
【0018】
前記換気扇本体2は、
図3に示すように、径の異なる大小2種類の換気パイプ71に対応して挿入すべく、挿入方向奥側即ち挿入先端側に、小径の換気パイプ71に対応して内挿される小径の円筒部からなる小径挿入部11が設けられ、挿入方向手前側即ち挿入後端側に、大径の換気パイプ71に対応して内挿される大径の円筒部からなる大径挿入部21が設けられている。挿入方向において隣り合う小径挿入部11と大径挿入部21との境界部には、小径挿入部11が小径の換気パイプ71に挿入された際に、小径の換気パイプ71の開口端73に当接してそれ以上の挿入が規制される規制段部31が形成されている。換気扇本体2は、合成樹脂により一体に形成されている。なお、換気扇本体2は、金属板等で形成してもよい。
【0019】
更に、小径挿入部11及び大径挿入部21には、一端側がこれら挿入部の外面に接合され、他端側が換気パイプ71の内部空間より外方に張り出し、換気パイプ71への取着時に換気パイプ71の内方に弾性的に撓むとともに、弾性復帰力によって換気パイプ71の内面72に圧接する弾性片が設けられている。
【0020】
このうち、小径挿入部11に設けられた小径側弾性片13は、小径挿入部11の外面12に周方向に等間隔で4箇所設けられており、それぞれ一端側が小径挿入部11の外面12における挿入方向奥側端部付近に接合されているとともに、他端側は挿入方向手前側に向けて延設されている、即ち、一端側から他端側へと延びる方向が奥側から手前側にかけて換気パイプ71及び小径挿入部11の軸方向に設けられている。各小径側弾性片13は、小径挿入部11の外面12を一端部を残してコ字状に切り起こしたようにして一定幅の短冊板状に形成され、挿入方向奥側端部付近から外方に突出するように傾斜した後、長さ方向の略中間でく字状に折曲され、その後は小径挿入部11の外面12と略平行に延びている。但し、小径側弾性片13は、く字状に折曲されたものでなくてもよい。また、小径側弾性片13は、
図2に示すような断面平板状のものであってもよく、或いは換気パイプ71の内面72や小径挿入部11の外面12に合わせた曲率を有する断面円弧板状のものとしてもよい。
【0021】
次に、大径挿入部21に設けられた大径側弾性片23は、大径挿入部21の外面22に周方向即ち換気パイプ71の軸方向と直交する方向に等間隔で4箇所設けられているとともに、それぞれ大径挿入部21の外面22において一端側がその外面22に接合された後、その接合部を基端部として大径挿入部21の外面22の周方向に延設されている、即ち、基端部である一端側から開放端部である他端側へと延びる方向が大径挿入部21及び換気パイプ71の軸方向と直交する周方向に形成されている。
【0022】
大径側弾性片23は大径挿入部21の外面22を一端部を残してコ字状に切り起こしたような形状に設けられており、換気パイプ71の内面72に圧接されたとき、一部は切り起こされたような形状の空間24内に嵌め込むことも可能となっている。大径側弾性片23は、延設方向の形状が大径挿入部21の外面22の形状と同じく湾曲面に形成され、その外面の曲率は、大径挿入部21の外面22と略同一であり、大径挿入部21が換気パイプ71内に挿入され、大径側弾性片23が換気パイプ71の内面72に圧接したときには、換気パイプ71の内面72の曲率と略同一となるようにすることもできる。これにより、4箇所の大径側弾性片23は、換気パイプ71内に挿入されたとき、換気パイプ71によって筒状に囲まれ、場合によっては外面全体がほぼ均一に該換気パイプ71の内面72に圧接する。その場合、換気パイプ71の内面72との圧接面積は大きくなり、圧接強度も大きくなる。なお、大径側弾性片23の曲率は、必ずしも大径挿入部21の外面22と略同一のものとする必要はない。
【0023】
また、大径側弾性片23は、一端側である大径挿入部21との接合部の幅が大径挿入部21の軸方向長さと略同一に形成されている。また、大径側弾性片23の一端側から他端側に至る周方向の延設長さは、一端側の基端部25の幅より長く形成され、換気パイプ71の内面72に強く突張って圧接されるに足る十分な長さに形成されている。更に、大径側弾性片23は、幅方向における挿入方向奥側端部27が一端側から他端側にかけて挿入方向手前側に直線状に傾斜し、幅は一端側から他端側にかけて徐々に狭く形成され、先細りとなっている。
【0024】
次に、小径挿入部11と大径挿入部21との境界部に形成された規制段部31は、小径挿入部11側の面に、所定長さの円弧板状のガイド板32が周方向に等間隔をおいた4箇所に立設されている。また、規制段部31には、コ字状に切欠されてなる係止凹部33が形成されているとともに、壁表側の面の4箇所に位置決め片34が立設されている。なお、ガイド板32は、換気扇1が換気パイプ71に取着される際に、規制段部31の係止凹部33から挿入方向奥側に突出する、後述するフィルタ41の取着脚46の係止凸部46aが、壁74に突き当たって表装紙が傷付くのを避けるため、壁74或いは換気パイプ71の開口端73と当接して、規制段部31と壁74との隙間内に係止凸部46aが収まるようにするものである。したがって、ガイド板32の立設高さは、フィルタ41の係止凸部46aが規制段部31の係止凹部33から挿入方向奥側に突出する長さより大きく形成されている。
【0025】
次に、前記フィルタ41は、
図4に示すように、全体が略円環板状に形成され、円環板部42の中央の円形穴部分は縦横格子状のフィルタ部43で一体に覆われている。円環板部42の周縁には周方向全体に至って所定高さのフランジ44が円環板部42に直交して表面側つまり挿入方向手前側に立設されている。なお、フランジ44の内面には周方向に等間隔をおいて補強リブ45が設けられている。また、円環板部42の裏面側の周縁には周方向に等間隔をおいてフランジ44と反対方向即ち挿入方向奥側に向けて4個の取着脚46が突設されており、取着脚46の先端の係止凸部46aが換気扇本体2の規制段部31の係止凹部33に係止することよって、フィルタ41は換気扇本体2の大径挿入部21の内部空間に着脱自在に取付けられ収容されている。
【0026】
なお、大径挿入部21の外面22には大径側弾性片23が設けられている4箇所に切り起こされたような空間24が形成されて挿入方向手前側の開口端部周辺部26の構造的強度、剛性が小さくなるおそれがあるが、内部にフィルタ41が収容され、フランジ44の外壁全体が大径挿入部21の内面22に当接して支持するので、大径挿入部21の開口端部周辺部26が変形するのが防止されている。
【0027】
前記換気用のファン51は、
図5に示すように、四角枠体52の内部に羽根53が収容され、スイッチ54によって運転停止されるようになっている。ファン51は、換気扇本体2の規制段部31の壁表側の面に立設された位置決め片34の内部側に四角枠体52の4隅の角部が位置合わせされて収容された後、壁表側からフィルタ41が取着されることによりフィルタ41と換気扇本体2の規制段部31とに挟まれて、換気扇本体2の大径挿入部21の内部に取付けられ収容されるようになっている。したがって、規制段部31は、フィルタ41とともにファン51を保持する保持手段としても機能し、ファン51は簡易な構成で一定位置に保持される。ファン51の電源としては、一般家庭用電源が用いられる他、蓄電機能を備えた太陽電池を用いることもでき、太陽電池を使用した場合は、アパート、マンション等の空き部屋の換気に好適である。なお、ファン51は、大径挿入部21内に収容されているが、これに限られるものではなく、小径挿入部11内に収容してもよく、或いは、両挿入部に跨った位置に収容することもできる。
【0028】
次に、このように構成された本実施形態の換気扇1は、大径及び小径の換気パイプ71に取着することができる。まず、換気扇1を大径の換気パイプ71に取付ける場合は、小径挿入部11を先頭にして大径の換気パイプ71内に換気扇1全体を挿入する。すると、大径側弾性片23は換気パイプ71の内面72に押圧されて大径挿入部21の外面22と接合される一端側の基端部25を軸に内部空間側に弾性的に撓んで換気パイプ71内に収容された後、弾性復帰力により換気パイプ71の内面72に突張り圧接される。これにより、換気扇1は、
図6(a)に示すように、全体が大径の換気パイプ71内に収容される。ここで、大径側弾性片23の周方向即ち延設方向の部分が湾曲形成され、その外面の曲率が、大径の換気パイプ71内に挿入されたときに、該換気パイプ71の内面72の曲率と略同一となるように形成されている場合は、その外面全体がほぼ均一に換気パイプ71の内面72に圧接し、換気扇1は安定して取着される。なお、
図6(a)で、大径挿入部21の外面22と換気パイプ71の内面72との間に隙間を生じているが、これは、この部分は大径側弾性片23が設けられていないからであり、大径側弾性片23は、
図6(a)においては大径挿入部21の奥側で換気パイプ71の内面72に圧接している。取着後は、換気パイプ71の開口端73と壁孔75との間にはパテ材が詰め込まれる。
【0029】
ここで、大径側弾性片23は、挿入方向奥側端部27が一端側から他端側にかけて挿入方向手前側に直線状に傾斜し、幅は一端側から他端側に向けて徐々に狭くなっている。このため、他端側は取着前において換気パイプ71の内部空間より外方に張り出していても、最初に、基端部25であって換気パイプ71の内面72より内部空間側にある一端側が換気パイプ71内に挿入された後、以降の延設部分における挿入方向奥側端部27は順次換気パイプ71の開口端73に当接しつつ内部空間側に導かれるように押し込まれ換気パイプ71内に挿入されていく。したがって、大径側弾性片23は、他端側が換気パイプ71の内部空間より外方に張り出していても、延設部分における挿入方向奥側端部27が換気パイプ71の開口端73につかえて挿入が阻止されることなく全体が円滑に換気パイプ71内に挿入され取着される。
【0030】
次に、換気扇1を小径の換気パイプ71に取付ける場合は、
図6(b)に示すように、小径挿入部11を小径の換気パイプ71内に挿入する。すると、小径側弾性片13は小径挿入部11の外面12に接合されている一端側の基端部15を軸に弾性的に換気パイプ71の内部空間側に撓んで収容された後、弾性復帰力によりく字状の折曲部が換気パイプ71の内面72に圧接される。そして、規制段部31が換気パイプ71の開口端73に当接すると、それ以上の進入が阻止される。これにより、大径挿入部21は、
図6(b)に示すように、壁表側に露出した状態にはみ出る。その後、換気パイプ71の開口端73と壁孔75との間にはパテ材が詰め込まれる。
【0031】
ところで、
図6(a)、(b)に示したものは、換気パイプ71に換気扇1のみを取着した場合を示すが、換気パイプ71には、換気扇1に加えて、反対側端部に換気器具としての換気フードが取付けられる場合もあり、それを
図7に示す。
図7において、換気扇1は屋内側、換気フード61は屋外側に取付けられており、換気扇1は全体が換気パイプ71内に収容され取着されている。ここで、換気フード61は、
図8に示すように、下方が開口して屋外に配置されるカバー部62と、換気パイプ71内に挿入される円筒状の取着部63とで構成されている。取着部63の外面64には、周方向に等間隔で複数、
図8では3箇所に弾性片65が設けられている。弾性片65は、換気扇1の小径側弾性片13と同様、一定幅の短冊状に形成され、一端側が壁裏側から見て挿入方向奥側端部付近に接合され、他端側は挿入方向手前側に向けて取着部63及び換気パイプ71の軸方向に延設されているとともに、長さ方向の略中間でく字状に折曲されている。また、取着部63における挿入方向奥側の開口の下部は雨水の浸入を防ぐ水切り用の遮蔽板66で塞がれている。
【0032】
次に、換気扇1の作用を説明する。
換気扇1は、弾性片の一端側から他端側へと延びる方向が挿入部及び換気パイプ71の周方向に形成されているので、弾性片の弾発力を確保して換気パイプ71への換気器具の取着強度を増すために、或いは、換気パイプ71の径に対応して取着するために、挿入部に設けられて換気パイプ71の内面72に圧接される弾性片を長く設定しても、挿入部の軸方向長さは変わらず短かいものとなる。逆に言えば、換気パイプ71への挿入量を維持したまま各弾性片を長くすることができる。
【0033】
その結果、挿入部が短かいことによって、
図6(a)等において、換気扇1を換気パイプ71内に挿入する際に取り扱い易く、挿入作業を円滑かつ楽に行なうことができるとともに、換気扇1が小型化、軽量化して管理や保管が容易となる。また、壁74を挟んだ換気パイプ71の両端側に換気扇1と換気フード61とを取着するときは、これら換気器具の挿入部の先端部同士が互いに干渉することによってこれらの換気器具の取付けが不能となるのを防止することができる。
【0034】
即ち、
図9に示すように、従来の換気扇81は、大径挿入部82の大径側弾性片83が一端側から他端側にかけて軸方向に延設されているため、大径側弾性片83が長めに設定されていたり、換気フード61の取着部63が長く設定されていたり、壁74の厚さが小さかったりすると、換気扇81の小径挿入部11の奥側先端部が換気フード61の取着部63の奥側先端部の遮蔽板66と干渉し、これらの換気器具を換気パイプ71に取着できない事態が生じ得る。
【0035】
しかし、通常、換気扇の大径挿入部の大径側弾性片は、幅より延設長さの方が大きいところ、本実施形態の大径側弾性片23の場合は、一端側から他端側へと延びる方向が大径挿入部23及び換気パイプ71の周方向に形成されていることによって、
図7に示す大径挿入部21の軸方向長さL1は、
図9に示す従来の大径挿入部82の軸方向長さL2より小さい。したがって、
図7に示すように、換気扇1と換気フード61とが挿入部において互いに干渉するのを防止することが可能となっている。従来との差は、大径側弾性片を長くして換気パイプ71の内面72への突張り力を増す程拡大する。なお、小径側弾性片13が換気扇1の小径挿入部11の奥側先端から更に軸方向外側まで突出していたり、換気フード61の弾性片65が取着部63の奥側先端から更に軸方向外側まで突出しているものである場合は、弾性片同士、或いは弾性片と小径挿入部11または取着部63とが互いに干渉するのが防止される。
【0036】
他に、換気扇1を小径の換気パイプ71に取付けた場合では、
図6(b)に示すように、大径挿入部21は壁表側にはみ出すものの、そのはみ出し量を小さくすることができ、それによって、室内側の見栄えの低下を抑えることができる。
【0037】
即ち、従来は、
図10に示すように、換気扇81の大径挿入部82の大径側弾性片83が一端側から他端側にかけて軸方向に延設されているため、換気パイプ71の内面72への突張り力を増強するために大径側弾性片83を長くすることに比例して、大径挿入部82が壁表にはみ出す量は拡大し、室内側の見栄えが低下してしまった。
【0038】
しかし、本実施形態の大径側弾性片23は、
図6(b)に示すように、大径側弾性片23の長さ如何に拘わらず、軸方向長さ即ち幅は不変であり、従来の軸方向に延びた大径側弾性片83の長さより相当小さいので、大径挿入部21が換気パイプ71の開口端73から壁表側にはみ出す長さを相当小さくでき、見栄えの低下を抑えることができる。
【0039】
ところで、上記実施形態の換気扇1の小径側弾性片13及び換気フード61の弾性片65は、一端側から他端側にかけて換気パイプ71の軸方向に延設されているが、本発明を実施する場合は、これらにおいても、大径側弾性片23と同じく、一端側から他端側にかけて換気パイプ71の周方向に延設してもよく、この場合は、換気扇1の各挿入部及び換気フード61の取着部63の長さを短縮でき、壁74の厚さが更に小さい場合にも対応して、換気扇1と換気フード61との端部同士が干渉するのを防止できる。
【0040】
また、上記実施形態の換気扇1は、大径挿入部21と小径挿入部11との2段に形成されているが、挿入部は、軸方向の全長に至って同一径であって規制段部31を有しないものであってもよく、或いは逆に、大、中、小径の挿入部と3段以上に形成したものであってもよく、これらの場合も、挿入部に設けた弾性片を、一端側から他端側にかけて換気パイプ71の周方向に延設したものとすることにより、挿入部の軸方向長さを短縮でき、壁74の厚さが小さい場合にも換気パイプ71内に収容して取着でき、また、換気フード61をも取付けた場合ではそれとの干渉も防止できる。
【0041】
そして、大径側弾性片23は、延設部分における挿入方向奥側端部27が換気パイプ71の開口端73につかえることなく円滑に換気パイプ71内に挿入させるべく、挿入方向奥側端部27が一端側から他端側にかけて挿入方向手前側に直線的に傾斜しているが、本発明を実施する場合は、この形状に限られることはなく、挿入方向奥側端部27が直線状に傾斜したものではなく例えば緩やかな曲線状に傾斜したものであってもよく、また、例えば、
図11(a)、(b)に示すように、挿入方向奥側端部27を、全長に至って僅かに内部の空間24側に屈曲または湾曲して傾斜した傾斜部23aに形成することもできる。この場合、大径側弾性片23の幅は、延設部分全長に至って一定としてもよく、上記実施形態と同様に徐々に他端側に向かうに従って狭くなるものとしてもよい。
【0042】
また、大径側弾性片23は、一端側から他端側にかけて周方向に延設されている部分が湾曲面に形成されているが、必ずしも湾曲形成されたものでなくてもよく、小径側弾性片13と同様に長さ方向略中間位置でく字状に折曲したものとしてもよい。
【0043】
加えて、大径側弾性片23及び小径側弾性片13は、周方向に等間隔で4箇所設けられているが、それに限られるものではなく、3箇所或いは5箇所以上設けてもよい。
【0044】
更に、上記実施形態の換気扇1は、円筒状の換気パイプ71に適用され取着されるものを示しているが、四角筒状等の換気パイプ71にも同様に適用することができる。