特許第5917191号(P5917191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917191歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917191
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   A46D 1/04 20060101AFI20160422BHJP
   A46D 9/00 20060101ALI20160422BHJP
   A46B 9/04 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A46D1/04
   A46D9/00
   A46B9/04
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-39708(P2012-39708)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-172887(P2013-172887A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207713
【氏名又は名称】大平工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晃
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−299455(JP,A)
【文献】 特開平04−096709(JP,A)
【文献】 特開平08−224127(JP,A)
【文献】 特開平10−286124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46D 1/00
A46B 9/00
A46D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントがほぼ同一長さに揃えられたストレート状のブラシ部とからなる歯間ブラシをそのブラシ先端が研磨シートに略接触する状態に保持した後、歯間ブラシを研磨シートに対する姿勢を維持して設定された回転半径で回転させるとともに、歯間ブラシをその長手方向軸心回りに設定角度ずつ回転させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨方法。
【請求項2】
請求項1に記載の歯間ブラシのブラシ先端研磨方法において、
記ブラシ先端を平行な研磨面を有する一対の研磨シートで略接触状態に挟み込むことを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨方法。
【請求項3】
基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントが、その長さが前記基台側に向かって徐々に長くなるテーパー形状に形成されたブラシ部とからなる歯間ブラシをそのブラシ先端が研磨シートに略接触する状態に保持した後、歯間ブラシを研磨シートに対する姿勢を維持して設定された回転半径で回転させるとともに、歯間ブラシをその長手方向軸心回りに設定角度ずつ回転させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨方法。
【請求項4】
基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントがほぼ同一長さに揃えられたストレート状のブラシ部とからなる歯間ブラシに対してそのブラシ先端を研磨する研磨装置であって、
加工台に歯間ブラシを保持するホルダーを、歯間ブラシにおけるストレート状のブラシに対応する垂直軸を介して回転自在に支持する一方、左右方向に延びる水平軸に偏心プレートを介して偏心位置に連結した偏心軸を加工台に回転自在に支持し、また、偏心軸に欠歯歯車を設けるとともに、垂直軸に欠歯歯車と噛み合う歯車を設け、さらに、歯間ブラシにおけるストレート状のブラシ先端に略接触して左右方向から挟み込む一対の研磨シートを設けてなり、水平軸を回転させ、加工台に保持された歯間ブラシを研磨シートに対する垂直姿勢を維持しつつ一対の研磨シート間において偏心軸の軸心と水平軸の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸の軸心回りに回転させるとともに、欠歯歯車及び歯車を介して歯間ブラシを垂直軸の軸心回りに水平軸の1回転に対して設定角度だけ回転させ、ストレート状のブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨装置。
【請求項5】
基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントが、その長さが前記基台側に向かって徐々に長くなるテーパー形状に形成されたブラシ部とからなる歯間ブラシに対してそのブラシ先端を研磨する研磨装置であって、
加工台に歯間ブラシを保持するホルダーを、歯間ブラシにおけるテーパー状のブラシのテーパー角に対応する傾斜角を有する傾斜軸を介して回転自在に支持する一方、左右方向に延びる水平軸に偏心プレートを介して偏心位置に連結した偏心軸を加工台に回転自在に支持し、また、偏心軸に欠歯かさ歯車を設けるとともに、傾斜軸に欠歯かさ歯車と噛み合うかさ歯車を設け、さらに、歯間ブラシにおけるテーパー状のブラシ先端に略接触する研磨シートを設けてなり、水平軸を回転させ、加工台に保持された歯間ブラシを研磨シートに対する傾斜姿勢を維持しつつ偏心軸の軸心と水平軸の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸の軸心回りに回転させるとともに、欠歯かさ歯車及びかさ歯車を介して歯間ブラシを傾斜軸の軸心回りに水平軸の1回転に対して設定角度だけ回転させ、テーパー状のブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置において、前記加工台を上下方向及び前後方向にそれぞれ移動自在に支持する支持フレームを設けることを特徴とする歯間ブラシのブラシ先端研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯間ブラシが知られている。この歯間ブラシ11は、図5(a)に示すように、金属ワイヤ12を撚り加工して形成されたワイヤロッド部13と、このワイヤロッド部13に直交して、かつ、その長手方向に間隔をおいて半径方向に放射状に突出された複数本のフィラメントからなるブラシ14と、ワイヤロッド部13の基部に一体に設けられたプラスチック製基台15とから構成されている。そして、歯間ブラシ11の基台15を摘んでワイヤロッド部13を歯と歯の間の隙間に出し入れすることにより、ワイヤロッド部13に固定されたブラシ14がともに移動し、通常の歯ブラシによるブラッシングでは歯垢清掃が困難な歯の側面部分や根元部分等を清掃することができる。
【0003】
このような歯間ブラシ11は、二つ折りした金属ワイヤ12の間に合成繊維束からなる複数本のフィラメントを挟み込み、金属ワイヤ12を撚り加工してフィラメントを複数本ずつ複数箇所でねじり止めした後、フィラメントを毛切り加工してブラシ14を形成し、最後に基台15をインサート成形等によって形成することで製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した歯間ブラシのブラシ先端を刃物で毛切り加工すると、ブラシを形成する各フィラメントの先端は、図5(b)に示すように、その可撓性によって鋭角状に切断されるとともに、切断面の周囲がささくれだって外方に拡がった形状を呈している。このため、歯間ブラシの使用に際して、ブラシを歯と歯の間へ挿入すると、毛先が固い等の違和感を覚える場合があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ブラシを形成する各フィラメントの先端をほぼ半球状に丸く研磨してブラシの歯間への挿入時の違和感の発生を抑制することのできる歯間ブラシのブラシ先端研磨方法及びその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨方法は、基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントがほぼ同一長さに揃えられたストレート状のブラシ部とからなる歯間ブラシをそのブラシ先端が研磨シートに略接触する状態に保持した後、歯間ブラシを研磨シートに対する姿勢を維持して設定された回転半径で回転させるとともに、歯間ブラシをその長手方向軸心回りに設定角度ずつ回転させ、ブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、歯間ブラシをそのブラシ先端が研磨シートに略接触する状態に保持する。次いで、歯間ブラシを研磨シートに対する姿勢を維持して設定された回転半径で回転させる。この回転と並行して、歯間ブラシをその長手方向軸心回りに設定角度ずつ回転させる。これにより、ブラシを形成する各フィラメントの先端は、研磨シートに対する接触位置を周方向に設定角度ずつ変えながら研磨シートに略接触した状態で回転半径上を回転することから、全周にわたってほぼ半球状に丸く研磨される。
【0009】
この結果、歯間ブラシを歯間へ挿入する際、ブラシを形成する各フィラメントの先端が歯肉に滑らかに接触し、違和感の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明において、ブラシ先端を平行な研磨面を有する一対の研磨シートで略接触状態に挟み込むことが好ましい。これにより、歯間ブラシにおけるストレート状のブラシ先端を研磨シートに対して180度離れた2箇所で同時に研磨することができ、短時間にブラシ先端を研磨することができる。
【0011】
本発明において、基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントが、その長さが前記基台側に向かって徐々に長くなるテーパー形状に形成されたブラシ部とからなる歯間ブラシのブラシ先端を単一の研磨シートの研磨面に略接触させることが好ましい。これにより、歯間ブラシにおけるテーパー状のブラシ先端を研磨することができる。
【0012】
本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置は、基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントがほぼ同一長さに揃えられたストレート状のブラシ部とからなる歯間ブラシに対してそのブラシ先端を研磨する研磨装置であって、加工台に歯間ブラシを保持するホルダーを、歯間ブラシにおけるストレート状のブラシに対応する垂直軸を介して回転自在に支持する一方、左右方向に延びる水平軸に偏心プレートを介して偏心位置に連結した偏心軸を加工台に回転自在に支持し、また、偏心軸に欠歯歯車を設けるとともに、垂直軸に欠歯歯車と噛み合う歯車を設け、さらに、歯間ブラシにおけるストレート状のブラシ先端に略接触して左右方向から挟み込む一対の研磨シートを設けてなり、水平軸を回転させ、加工台に保持された歯間ブラシを研磨シートに対する垂直姿勢を維持しつつ一対の研磨シート間において偏心軸の軸心と水平軸の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸の軸心回りに回転させるとともに、欠歯歯車及び歯車を介して歯間ブラシを垂直軸の軸心回りに水平軸の1回転に対して設定角度だけ回転させ、ストレート状のブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、加工台のホルダーに歯間ブラシを差し込んで保持し、水平軸を回転させると、水平軸が連結された偏平プレートが回転するとともに、偏平プレートに水平軸の軸心から偏心距離を有して連結された偏心軸が水平軸の軸心回りに水平軸の軸心と偏平軸の軸心との偏心距離を回転半径として回転する。この際、偏心軸は加工台に対して回転自在に支持されていることから、水平軸の軸心回りの偏心軸の回転は、加工台を追従して回転させる。これにより、加工台のホルダーに保持された歯間ブラシのストレート状のブラシは、その180度離れた2箇所の先端を一対の研磨シートにそれぞれ略接触した状態で、研磨シートに対する垂直姿勢を維持しつつ偏心軸の軸心と水平軸の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸の軸心回りに回転する。これにより、ストレート状のブラシを形成する各フィラメントの先端をほぼ半球状に丸く研磨することができる。
【0014】
また、偏心軸の回転は、該偏心軸に設けた欠歯歯車を水平軸の軸心回りに回転させるとともに、欠歯歯車と噛み合う歯車を垂直軸の軸心回りに回転させる。この際、欠歯歯車は設定範囲にのみ歯が設けられていることから、欠歯歯車の設定範囲に設けられた歯が噛み合う場合のみ歯車が回転する。すなわち、欠歯歯車の1回転に対して歯車は歯が設けられた設定範囲に対応する設定角度だけ垂直軸の軸心回りに回転する。したがって、歯車の設定角度の回転は、垂直軸及びホルダーに保持された歯間ブラシを垂直軸の軸心回りに設定角度回転させ、研磨シートに対する歯間ブラシのストレート状のブラシ先端の接触位置を周方向に設定角度ずつ変えることになる。したがって、ストレート状のブラシを形成する各フィラメントの先端を周方向に設定角度ずつ変えながら全周にわたってほぼ半球状に丸く研磨することができる。
【0015】
この結果、歯間ブラシを歯間へ挿入する際、ブラシを形成する各フィラメントの先端が歯肉に滑らかに接触し、違和感の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置は、基台と、この基台の先端から該基台の中心軸上に突出したワイヤロッド部と、このワイヤロッド部の先端に設けられ該ワイヤロッド部に直交して半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントが、その長さが前記基台側に向かって徐々に長くなるテーパー形状に形成されたブラシ部とからなる歯間ブラシに対してそのブラシ先端を研磨する研磨装置であって、加工台に歯間ブラシを保持するホルダーを、歯間ブラシにおけるテーパー状のブラシのテーパー角に対応する傾斜角を有する傾斜軸を介して回転自在に支持する一方、左右方向に延びる水平軸に偏心プレートを介して偏心位置に連結した偏心軸を加工台に回転自在に支持し、また、偏心軸に欠歯かさ歯車を設けるとともに、傾斜軸に欠歯かさ歯車と噛み合うかさ歯車を設け、さらに、歯間ブラシにおけるテーパー状のブラシ先端に略接触する研磨シートを設けてなり、水平軸を回転させ、加工台に保持された歯間ブラシを研磨シートに対する傾斜姿勢を維持しつつ偏心軸の軸心と水平軸の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸の軸心回りに回転させるとともに、欠歯かさ歯車及びかさ歯車を介して歯間ブラシを傾斜軸の軸心回りに水平軸の1回転に対して設定角度だけ回転させ、テーパー状のブラシ先端を全周にわたって研磨することを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、加工台のホルダーに歯間ブラシを差し込んで保持し、水平軸を回転させると、水平軸が連結された偏平プレートが回転するとともに、偏平プレートに水平軸の軸心から偏心距離を有して連結された偏心軸が水平軸の軸心回りに水平軸の軸心と偏平軸の軸心との偏心距離を回転半径として回転する。この際、偏心軸は加工台に対して回転自在に支持されていることから、水平軸の軸心回りの偏心軸の回転は、加工台を追従して回転させる。これにより、加工台のホルダーに保持された歯間ブラシのテーパー状のブラシは、その先端を研磨シートに略接触した状態で研磨シートに対する傾斜姿勢を維持しつつ偏心軸の軸心と水平軸の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸の軸心回りに回転する。これにより、テーパー状のブラシを形成する各フィラメントの先端をほぼ半球状に丸く研磨することができる。
【0018】
また、偏心軸の回転は、該偏心軸に設けた欠歯かさ歯車を水平軸の軸心回りに回転させるとともに、欠歯かさ歯車と噛み合うかさ歯車を傾斜軸の軸心回りに回転させる。この際、欠歯かさ歯車は設定範囲にのみ歯が設けられていることから、欠歯かさ歯車の設定範囲に設けられた歯が噛み合う場合のみかさ歯車が回転する。すなわち、欠歯かさ歯車の1回転に対してかさ歯車は歯が設けられた設定範囲に対応する設定角度だけ傾斜軸の軸心回りに回転する。したがって、かさ歯車の設定角度の回転は、傾斜軸及びホルダーに保持された歯間ブラシを傾斜軸の軸心回りに設定角度回転させ、研磨シートに対する歯間ブラシのテーパー状のブラシ先端の接触位置を周方向に設定角度ずつ変えることになる。したがって、テーパー状のブラシを形成する各フィラメントの先端を周方向に設定角度ずつ変えながら全周にわたってほぼ半球状に丸く研磨することができる。
【0019】
この結果、歯間ブラシを歯間へ挿入する際、ブラシを形成する各フィラメントの先端が歯肉に滑らかに接触し、違和感の発生を抑制することができる。
【0020】
本発明において、前記加工台を上下方向及び前後方向にそれぞれ移動自在に支持する支持フレームを設けることが好ましい。これにより、偏心軸の回転に追従して加工台が回転する際、加工台の回転を上下方向の移動と前後方向の移動に分解して支持フレームにおいて支持することができ、加工台の回転を安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ブラシを形成する各フィラメントの先端をほぼ半球状に丸く研磨してブラシの歯間への挿入時の違和感の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の研磨装置によるブラシ先端の研磨要領を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の研磨装置によって研磨された歯間ブラシ及びそのブラシ先端X部を拡大して示す説明図である。
図4】本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置の他の実施形態を一部省略して示す正面図である。
図5】従来の歯間ブラシ及びそのブラシ先端A部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1には、本発明の歯間ブラシのブラシ先端研磨装置1の一実施形態が示されている。
【0025】
この研磨装置1は、歯間ブラシ11におけるストレート状のブラシ14先端、すなわち、半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントがほぼ同一の長さに揃えたブラシ14先端を丸く研磨するものであって、支持フレーム2と、歯間ブラシ11のホルダー34を備えるとともに、支持フレーム2に対して前後方向及び上下方向にそれぞれ移動自在に支持された加工台3と、加工台3を垂直面内において水平軸心回りに回転させる第1回転機構4と、歯間ブラシ11のホルダー34を垂直軸心回りに回転させる第2回転機構5と、ホルダー34に保持された歯間ブラシ11のブラシ14をその先端に略接触した状態で左右方向から挟み込む一対の研磨ユニット6とから構成されている。
【0026】
支持フレーム2は、前後方向に間隔をおいて立設された一対の支持材21を有し、各支持材21には、内方に向けて支持ピン22がそれぞれ突設されており、各支持ピン22には、スプリング23が配設されている。
【0027】
加工台3は、箱状に形成された本体31と、本体31の前後端に、前述した支持フレーム2の一対の支持材21間に位置して下方に向けて垂設された一対の脚32と、本体31に図示しない軸受を介して回転自在に支持された垂直軸33及び該垂直軸33に一体に設けられた歯間ブラシ11のホルダー34とからなり、各脚32には、上下方向に延びる長穴32aが形成されている。そして、加工台3の脚32に形成された長穴32aには、スプリング23を配設した支持ピン22が挿入され、その先端に図示しないナットが止着されて支持フレーム2に対する加工台3の抜け出しが防止されている。これにより、加工台3は、支持フレーム2の支持ピン22に対して長穴32aの範囲内において上下方向に移動することができるとともに、脚32が支持ピン22に配設されたスプリング23を圧縮して支持ピン22の長手方向に沿う前後方向に移動することができる。
【0028】
第1回転機構4は、モータ41と、モータ41のシャフトと一体の水平軸42に連結された偏心プレート43と、水平軸42の軸心から偏心した位置において偏心プレート43に連結されるとともに、加工台3の本体31に貫通された偏心軸44とからなり、偏心軸44は、加工台3の本体31に図示しない軸受を介して回転自在に支持されている。したがって、モータ41を回転駆動させると、水平軸42を介して偏心プレート43が回転し、偏心プレート43に連結された偏心軸44が、水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転する。そして、偏心軸44が水平軸42の軸心回りに回転すると、偏心軸44を回転自在に支持する加工台3が偏心軸44の回転に追従して回転する。すなわち、加工台3は、水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転するものとなる。
【0029】
第2回転機構5は、加工台3の本体31内に延設された偏心軸44に固定された欠歯かさ歯車51と、加工台3の本体31に回転自在に支持された垂直軸33に固定され、欠歯かさ歯車51と噛み合うかさ歯車52とからなり、垂直軸33には、歯間ブラシ11のホルダー34が一体に連結されている。したがって、前述したように、モータ41を回転させると、偏心軸44が回転し、加工台3の本体31内において、欠歯かさ歯車51が回転する。そして、欠歯かさ歯車51と噛み合うかさ歯車52を垂直軸33の軸心回りに回転させる。この際、欠歯かさ歯車51は、周方向の設定範囲にのみ歯が設けられていることから、かさ歯車52は、欠歯かさ歯車51の歯と噛み合う場合のみ回転する。具体的には、欠歯かさ歯車51の1回転に対してかさ歯車52、すなわち、垂直軸33及びホルダー34は、歯が設けられた設定範囲に対応する設定角度だけ回転する。
【0030】
研磨ユニット6は、支持プレート61にスプリング62を介して押圧付勢された取付プレート63に紙やすり等の研磨シート64を貼着して形成され、垂直又は略垂直配置された平行な一対の研磨シート64がホルダー34に保持された歯間ブラシ11のブラシ14先端に略接触した状態で左右方向から緩やかに挟み込んでいる。
【0031】
次に、このように構成された研磨装置1を用いて歯間ブラシ11におけるブラシ14先端を研磨する場合について説明する。
【0032】
まず、ホルダー34に毛切り加工された歯間ブラシ11の基台15を差し込んで保持した後、詳細には図示しないが、一対の研磨ユニット6を左右方向から接近させ、180度離れたブラシ14先端にそれぞれ略接触するように挟み込む。次いで、モータ41を回転駆動させると、水平軸42が回転し、偏心プレート43を回転させる。偏心プレート43が回転すると、偏心プレート43に水平軸42の軸心から偏心した位置に連結された偏心軸44が、水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転する。水平軸42の軸心回りの偏心軸44の回転は、偏心軸44を回転自在に支持する加工台3を水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転させる。すなわち、加工台3のホルダー34に保持された歯間ブラシ11は、左右方向から見て垂直姿勢を維持したまま垂直に配置された一対の研磨ユニット6の研磨シート64の間において水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転する(図2参照)。
【0033】
これにより、ブラシ14を形成する各フィラメントの先端は、研磨シート64に対してわずかに撓んだ状態で回転することにより、その周囲が研磨され、ほぼ半球状に丸く加工される(図3(b)参照)。
【0034】
ここで、加工台3の各脚32は、その上下方向に延びる長穴32aを通して支持フレーム2の各支持材21に設けた支持ピン22が嵌挿されて上下方向に移動自在であり、また、支持ピン22に配設されたスプリング23を圧縮することで支持材21との間隔を調整して前後方向に移動自在となっている。したがって、加工台3の回転は、支持フレーム2に対して上下往復移動及び前後往復移動に分解されて支持されている。
【0035】
一方、偏心軸44の回転は、欠歯かさ歯車51を回転させ、欠歯かさ歯車51に噛み合うかさ歯車52を欠歯かさ歯車51の歯と噛み合う設定範囲に相当する設定角度だけ回転させる。具体的には、偏心軸44介して欠歯かさ歯車51が1回転するとき、かさ歯車52、すなわち、垂直軸33及びホルダー34に保持された歯間ブラシ11を設定角度だけ垂直軸33の軸心回りに回転させることから、研磨シート64に対するブラシ14先端の接触位置を周方向に設定角度ずつ変更させる。
【0036】
この結果、加工台3が水平軸42の軸心回りに回転することにより、加工台3のホルダー34に保持された歯間ブラシ11は、左右方向から見て水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として垂直姿勢を保持した状態で平行な一対の研磨シート64の研磨面間において水平軸42の軸心回りに回転するとともに、偏心軸44(水平軸42)の回転数を減速して垂直軸33がその軸心回りに回転する。したがって、加工台3に保持された歯間ブラシ11のブラシ14を形成する各フィラメントは、研磨シート64に略接触した状態で回転し、その先端をほぼ半球状に丸く研磨することができる。また、水平軸42の軸心回りの加工台3の1回転に対して歯間ブラシ11は、垂直軸33の軸心回りに設定角度だけ回転することにより、研磨シート64に対するブラシ14先端の接触位置を周方向に順次設定角度ずつ変化させることができ、ブラシ14先端を全周にわたってほぼ半球状に丸く研磨することができる。これにより、歯間ブラシ11を歯間へ挿入する際、ブラシ14を形成する各フィラメントの先端が歯肉に滑らかに接触し、違和感の発生を抑制することができる。
【0037】
ここで、モータ41の回転数が大きいと、研磨ユニット6の研磨シート64に対する摩擦による熱によってブラシ14(フィラメント)の先端が溶けて丸くならないばかりか、ささくれだった形状となる。このため、モータ41の回転数としては、摩擦熱の発生を抑制する上で約200rpm以下が好ましい。この場合、研磨ユニット6の研磨シート64に対するブラシ14の接触時間が大きくなると、その分摩擦熱が大きくなることから、4〜8秒程度が好ましい。
【0038】
なお、歯間ブラシ11の回転半径としては、ブラシ14の長さが10mmであることに対応して、5乃至10mm程度が好ましい。
【0039】
また、歯間ブラシ11の一対の研磨シート64間での回転に対するホルダー34の垂直軸心回りの回転としては、その回転数が多くなると、ブラシ14先端が平らになり易いことから、1/6程度、具体的には、歯間ブラシ11を研磨する時間(4〜8秒)に3回転以下に設定することが好ましい。
【0040】
さらに、研磨ユニット6の研磨シート64(紙やすり)としては、1500番乃至2000番が好ましい。この番手よりも粗い場合には、きれいな先丸形状にならず、また、ささくれだち易く、一方、細かい場合には、加工時間が大きくなる。
【0041】
また、摩擦熱を抑えるため、例えば、グリセリン1を水2の割合で薄めた冷却剤をブラシ14や研磨シート64に塗布してもよい。
【0042】
一方、前述した実施形態においては、第2回転機構として、欠歯かさ歯車及びかさ歯車を用いた場合を例示したが、かさ歯車に限定するものではなく、欠歯平歯車及び平歯車、欠歯ウォーム及びウォームホイールを用いることもできる。
【0043】
ところで、前述した実施形態の歯間ブラシ11においては、半径方向に放射状に突出する複数本のフィラメントがほぼ同一の長さに揃えたストレート状のブラシ14を研磨する場合について例示したが、半径方向に突出する複数本のフィラメントの長さが基台15側に向かって徐々に長くなるテーパー状に形成したブラシ14を研磨する場合に適用することもできる。
【0044】
例えば、図4に示すように、かさ歯車の特徴を生かして、図1の垂直軸33に代えて傾斜軸35を用いればよい。この場合、傾斜軸35は、ブラシ14における上方側フィラメントの半径方向突出長さと下方側フィラメントの半径方向突出長さに基づくテーパー角に対応して、ブラシ14先端が垂直に配置された単一の研磨シート64に略接触するように傾斜角度を設定する。この実施例においては、歯間ブラシ11のブラシ14のテーパー角が5度であることに対応して、傾斜軸35の傾斜角は水平面に対して85度に設定されている。
【0045】
この実施形態においても、ホルダー34に毛切り加工された歯間ブラシ11の基台15を差し込んで保持した後、研磨ユニット6の研磨シート64を歯間ブラシ11のブラシ14先端にそれぞれ略接触するように接近させる。次いで、モータ41を回転駆動させると、水平軸42、偏心プレート43及び偏心軸44を介して加工台3を水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転させる。このため、加工台3のホルダー34に保持された歯間ブラシ11は、テーパー状のブラシ14先端が研磨ユニット6の研磨シート64の研磨面に略接触した傾斜姿勢を維持したまま水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転する。
【0046】
これにより、ブラシ14を形成する各フィラメントの先端は、研磨シート64に対してわずかに撓んだ状態で回転することにより、その周囲が研磨され、ほぼ半球状に丸く加工される。
【0047】
また、偏心軸44の回転は、欠歯かさ歯車51を介してかさ歯車52、すなわち、傾斜軸35及びホルダー34に保持された歯間ブラシ11を設定角度だけ傾斜軸35の軸心回りに回転させることから、研磨シート64に対するテーパー状のブラシ14先端の接触位置を周方向に設定角度ずつ変更させる。
【0048】
この結果、加工台3が水平軸42の軸心回りに回転することにより、加工台3のホルダー34に保持された歯間ブラシ11は、傾斜姿勢を維持した状態で水平軸42の軸心と偏心軸44の軸心との偏心距離を回転半径として水平軸42の軸心回りに回転するとともに、偏心軸44(水平軸42)の回転数を減速して傾斜軸35の軸心回りに回転する。したがって、加工台3に保持された歯間ブラシ11のブラシ14を形成する各フィラメントは、研磨シート64に略接触した状態で回転することにより、その先端をほぼ半球状に丸く研磨することができる。また、水平軸42の軸心回りの加工台3の1回転に対して歯間ブラシ11は、傾斜軸35の軸心回りに設定角度だけ回転することにより、研磨シート64に対するブラシ14先端の接触位置を周方向に順次設定角度ずつ変化させることができ、ブラシ14先端を全周にわたってほぼ半球状に丸く研磨することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 研磨装置
2 支持フレーム
3 加工台
33 垂直軸
34 ホルダー
35 傾斜軸
4 第1回転機構
42 水平軸
44 偏心軸
5 第2回転機構
51 欠歯かさ歯車
52 かさ歯車
6 研磨ユニット
64 研磨シート
図1
図2
図3
図4
図5