【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して、スチールコード被覆用ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0035】
・NR:天然ゴム(RSS#3)
・カーボンブラック:HAF、東海カーボン株式会社製「シースト300」
・マレイミド化合物A:4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業株式会社製「BMI−1000H」
・マレイミド化合物B:ポリフェニルメタンマレイミド、大和化成工業株式会社製「BMI−2300」
・マレイミド化合物C:1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、大和化成工業株式会社製「BMI−TMH」
・マレイミド化合物D: 4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、大和化成工業株式会社製「BMI−7000H」
・メタクリル酸亜鉛:川口化学工業株式会社製「アクターZMA」
・不溶性硫黄:フレキシス社製「ミュークロンHS OT−20」
・加硫促進剤A:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS−P」(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
・加硫促進剤B:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDZ−G」(N,N−ジシクロヘキシル−2−べンゾチアゾリルスルフェンアミド)
・加硫促進剤C:WO2009/084538の段落0034に記載の方法により合成されるN−エチル−N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
・加硫促進剤D:フレキシス社製「サントキュアTBSI」(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンイミド)
【0036】
各ゴム組成物には、共通配合として、ゴム成分100質量部に対し、亜鉛華(三井金属工業株式会社製「亜鉛華3号」)8質量部、プロセスオイル(株式会社ジャパンエナジー製「JOMOプロセスNC140」)3質量部、老化防止剤6C(フレキシス社製「サントフレックス6PPD」)2質量部、老化防止剤FR(松原産業社製「Antioxidant FR」)1質量部、レゾルシン(住友化学工業株式会社製「レゾルシン」)2質量部、ヘキサメトキシメチルメラミン(三井サイテック株式会社製「サイレッツ963L」)4質量部、ステアリン酸コバルト(株式会社ジャパンエナジー製「ステアリン酸コバルト(Co分
9.5%)」)2質量部を配合した。
【0037】
得られた各ゴム組成物を用いて、ゴム−スチールコード複合体の未加硫試料を作製した。詳細には、ベルト用スチールコード(3×0.20+6×0.35mm構造、銅/亜鉛=64/36(質量比)、付着量5g/kgの真鍮めっき)を12本/25mmの打ち込み密度で平行配列したものの両面を、上記各ゴム組成物からなる厚さ1mmのゴムシートを用いて被覆し、この2枚をコードが平行になるように積層した剥離接着試験用の未加硫試料を作製した。得られた未加硫試料を用いて、初期接着性と湿熱接着性と未加硫保管後接着性を下記方法により評価した。
【0038】
[初期接着性]
上記未加硫試料を作製後、室温にて24時間放置した後、150℃×30分の条件で加硫し、島津製作所(株)製オートグラフ「DCS500」を用いて2層のスチールコード間の剥離試験を行い、剥離後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察し、0〜100%で評価した。数値が大きいほど初期接着性が良好である。
【0039】
[湿熱接着性(湿熱老化後の接着性)]
上記未加硫試料を作製後、室温にて24時間放置した後、150℃×30分の条件で加硫し、加硫した試験片を105℃の飽和蒸気内で96時間放置した後、上記初期接着性と同様の剥離試験を行い、剥離後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察し、0〜100%で評価した。数値が大きいほど湿熱接着性が良好である。
【0040】
[未加硫保管後接着性]
上記未加硫試料を作製後、40℃×95%RHの恒温恒湿槽中に168時間放置した後、150℃×30分の条件で加硫し、上記と同様、島津製作所(株)製オートグラフ「DCS500」を用いて剥離試験を行い、剥離後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察した。数値が大ほど未加硫保管時の接着安定性が良好である。
【0041】
【表1】
【0042】
結果は、表1に示す通りであり、コントロールである比較例1に対し、各種マレイミド化合物を単独で添加した比較例2〜4では、初期接着性や湿熱接着性には改善効果が見られたものの、未加硫保管後接着性にはほとんど改良効果は見られなかった。
【0043】
マレイミド化合物Aを2質量部に増量した比較例5では、配合量が1質量部である比較例2に対し、さらに初期接着性及び湿熱接着性に改良効果が見られたが、未加硫保管後接着性はまだ満足行く値ではなかった。すなわち、単純に配合量を増やしただけでは、未加硫保管後接着性の改良効果は小さかった。
【0044】
また、メタクリル酸亜鉛を単独で添加した比較例6では、比較例1に対し、初期接着性は大幅に改善し、湿熱接着性にも改善効果が見られたが、未加硫保管後接着性にはほとんど改良効果は見られなかった。
【0045】
メタクリル酸亜鉛を2質量部に増量した比較例7では、配合量が1質量部である比較例6に対し、さらに初期接着性及び湿熱接着性に改良効果が見られたが、未加硫保管後接着性はまだ満足行く値ではなかった。すなわち、単純に配合量を増やしただけでは、未加硫保管後接着性の改良効果は小さかった。
【0046】
以上のように、マレイミド化合物やメタクリル酸亜鉛をそれぞれ単独で添加する従来手法では、初期接着性や湿熱接着性は向上するものの、未加硫状態での長期保管後での接着性については、ほとんど改良効果は見られなかった。
【0047】
これに対し、各種マレイミド化合物とメタクリル酸亜鉛を各1質量部にて併用した実施例1〜4では、比較例2〜7に比べて、初期接着性と湿熱接着性が改良されるだけでなく、未加硫保管後接着性に顕著な改良効果が見られた。これらの未加硫保管後接着性の改良効果は、マレイミド化合物とメタクリル酸亜鉛をそれぞれ単独で用いた比較例2〜7において上記の通り改良効果がほとんど見られなかったことに鑑みれば、相加効果を上回る顕著な相乗効果であった。
【0048】
また、マレイミド化合物とメタクリル酸亜鉛を各4質量部にて併用した実施例5では、実施例1よりも湿熱接着性及び未加硫保管後接着性がさらに改良されていた。マレイミド化合物Aとメタクリル酸亜鉛を各0.5質量部に減らして併用した実施例6でも、これらの添加剤の総量が等しい比較例2及び比較例6に比べて、いずれの接着性も改良されており、特に未加硫保管後接着性に顕著な改良効果が見られた。また、加硫促進剤の種類を変更した実施例7,8,9でも、実施例1と同等以上の優れた効果が得られた。
【0049】
以上のように、マレイミド化合物とメタクリル酸亜鉛とを併用したことにより、初期のスチールコードとの接着性、湿熱老化後の接着性を高めつつ、未加硫保管後の接着性を予想外に高いレベルまで引き上げることができた。そのため、タイヤの耐久性能を高めることができると共に、タイヤの製造工程において、トッピング反の長期保管時の安定性を高めることもできる。このようにトッピング反の保管期間を延長できるので、工程性や生産性を損なうことがなく、材料の廃棄処理などの経費節減にも寄与することができる。