特許第5917208号(P5917208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917208クロス階段及びクロス階段往来用渡り部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917208
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】クロス階段及びクロス階段往来用渡り部材
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/02 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   E04F11/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-58705(P2012-58705)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-189832(P2013-189832A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】深尾 成博
(72)【発明者】
【氏名】磯部 寿一
(72)【発明者】
【氏名】坂下 明
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正音
(72)【発明者】
【氏名】久保 慶太
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−017700(JP,U)
【文献】 特開平05−163843(JP,A)
【文献】 特開2001−241192(JP,A)
【文献】 特開平10−115062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00−11/17
B63F 17/00
E04G 1/24、1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上、空間を挟んで対向し、層の異なる床間に架設される複数本の直階段型の階段がその幅方向に隣接しながら、立面上、互いに交差するクロス階段であり、
前記隣接する2本の階段が双方の階段の長さ方向中間部において互いに交差し、この交差する区間に、前記階段の長さ方向に前記各階段の複数枚の段板に跨る長さを持つと共に、前記階段の幅方向に前記隣接する階段間に跨る幅を持つ渡り部材が着脱自在に設置され、前記交差する区間において前記階段の幅方向に連通し、前記階段間が往来可能となっており、
前記渡り部材は前記階段の幅方向両側に前記各階段の2枚以上の前記段板に跨って支持される脚部を有し、この各脚部はそれぞれの側の前記階段の2枚以上の前記段板の踏面の形状に応じて切り欠かれた形状をしていることを特徴とするクロス階段。
【請求項2】
請求項に記載のクロス階段に使用され、隣接する2本の階段の前記交差する区間に配置される仮設の渡り部材であり、前記階段の長さ方向に前記各階段複数枚の段板に跨る長さを持つと共に、前記階段の幅方向に前記隣接する階段間に跨る幅を持ち、前記隣接する階段の各段板上に載置された状態で、前記隣接する階段の双方に着脱自在に設置され
前記階段の幅方向両側に前記各階段の2枚以上の前記段板に跨って支持される脚部を有し、この各脚部はそれぞれの側の前記階段の2枚以上の前記段板の踏面の形状に応じて切り欠かれた形状をしていることを特徴とするクロス階段往来用渡り部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は層(階)の異なる床間に架設される複数本の直階段型の階段が幅方向に隣接しながら、互いに交差し、主に工事期間中に隣接する階段間を往来(行き来)可能にしたクロス階段、及び隣接する階段間の往来の目的で使用されるクロス階段往来用渡り部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば階段の中途(長さ方向中間部)に広い踊り場を確保できる直階段が幅方向に隣接しながら、層(階)の異なる床間に架設される場合、隣接する直階段は踊り場を共有する形態になるため、双方の階段の踊り場を通じて隣接する階段間を自由に行き来することが可能である(特許文献1参照)。
【0003】
例えば一方の階段の上階への上り口からは、踊り場を経由して折り返すことで、隣接する階段の降り口に向かうことができるため、踊り場を経由しない場合より同一の、隣接する階段の降り口までの経路を短縮できる利点がある。但し、特許文献1では踊り場が建物の特定の階に位置しているため、一方の階段の下階の上り口から踊り場を経由し、隣接する階段の降り口に到達した地点は2層分、上の階になる。
【0004】
これに対し、図6に示すように長さ方向の中途に踊り場を確保できない直階段が隣接する場合、隣接する階段間には共有する踊り場が存在しないため、隣接する階段間に両者を仕切る壁が構築される以前の工事期間中においても隣接する階段間を往来することができない。この場合、例えば下階のある地点から上階の同一地点まで移動しようとするときには、図6に黒丸を起点とする矢印で示すように下階の上階への上り口からは、上階の対向する側(階段からの降り口)まで移動した後に迂回して同一地点まで戻らなければならない不便さがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−241192号公報(請求項3、段落0011、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では交差する直階段の交差区間に形成される踊り場7を通じて隣接する階段間を行き来可能にしているが、踊り場7の設置位置が前記のようにいずれかの階の床面のレベルに揃えられているため(段落0011)、上下に隣接する階間の中間部を通じた、隣接階間の同一地点間の移動が自由になっている訳ではない。踊り場7には階段の幅方向に配置される渡り廊下14、15が連続し、渡り廊下14、15が隣接する棟の廊下4に連続している。
【0007】
特許文献1は複数の層を持つ棟(建物)が平行に、隣接して立設される場合において、隣接する棟の対向する面に配置された廊下間の移動(往来)を可能にすることを目的とするに留まるため(請求項1、段落0002)、隣接階間の中間部を経由させ、隣接する直階段間を折り返して昇降させることは可能になっていない。特に工事期間中の作業性向上のための移動の便宜を考慮した、隣接階間の同一地点間の短絡化した移動は可能になっていない。
【0008】
本発明は上記背景より、主に工事期間中の作業性向上のための、上下に隣接する階間の同一地点間の移動を可能にするクロス階段と、それに使用され、交差する階段間の往来に適したクロス階段往来用渡り部材を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明のクロス階段は、平面上、空間を挟んで対向し、層の異なる床間に架設される複数本の直階段型の階段がその幅方向に隣接しながら、立面上、互いに交差するクロス階段であり、前記隣接する2本の階段が双方の階段の長さ方向中間部において互いに交差し、この交差する区間に、前記階段の長さ方向に前記各階段の複数枚の段板に跨る長さを持つと共に、前記階段の幅方向に前記隣接する階段間に跨る幅を持つ渡り部材が着脱自在に設置され、前記交差する区間において前記階段の幅方向に連通し、前記階段間が往来可能となっており、
前記渡り部材は前記階段の幅方向両側に前記各階段の2枚以上の前記段板に跨って支持される脚部を有し、この各脚部はそれぞれの側の前記階段の2枚以上の前記段板の踏面の形状に応じて切り欠かれた形状をしていることを構成要件とする。
【0010】
「空間」は階段室となる空間を指す。「層の異なる床間」は基本的には上下に隣接する階(ある階とその直上階)の床間を指すが、直階段が2層間(例えば1階と3階との間)に架設されることもあるため、必ずしも上下に隣接する階の床間とは限らない。
【0011】
クロス階段を構成する直階段型の階段は建物の平面計画に応じ、幅方向に3本以上、隣接して架設される場合もあり、その場合も、少なくともいずれか隣接する2本の階段が互いに交差する。2本の階段が交差する区間(連通区間)は主に建物(構造物)の工事(施工)期間中における作業者の作業効率向上の目的で通行されることから、交差区間(連通区間)の階段の長さ方向の幅には、人の通過が可能な大きさが確保されればよい。この関係で、交差区間は少なくとも各階段の長さ方向中間部に位置する1枚、もしくは複数枚の段板を含む領域(区間)であればよく、交差区間には踊り場の形成を要しない。
【0012】
直階段では階段が架設される下層階の床面のレベルと上層階の床面のレベルの差(階高)と、両床面間の水平距離の関係から、段数(段板の枚数)と1枚の段板の奥行き(踏面寸法)が決まる。このため、水平距離の制約から、踊り場を確保できる余裕のない床面積の領域内に踊り場を形成すれば、少なくともいずれかの段板の奥行きを縮小せざるを得ない結果を招く。これに対し、踊り場の形成を要することなく、階段の長さ方向には1枚、もしくは複数枚の段板を含む領域で幅方向に隣接する階段が連通することで、いずれの段板の奥行き(踏面寸法)をも減少させずに隣接する階段間の往来を自在にすることができる。
【0013】
直階段を構成する全段板の奥行きを減少させる必要がないことで、隣接する階段間の人(作業者)の往来(通行)に使用される交差区間(連通区間)の足場となる床面(段板の踏面)の内、段差のない平坦な面をなす領域(範囲)の面積を拡大することができる利点がある。段板の奥行きが小さければ、交差区間の足場となる床面、例えば後述する渡り部材の連結部の上面が段差のある階段状になり易い。
【0014】
詳しく言えば、交差区間(連通区間)には上記のように階段の長さ方向に、人の通行のための一定の幅が確保されるが、1枚の段板の奥行きが小さければ、交差区間の一定幅を確保する上で、多数の段板に跨る区間が必要になるため、交差区間の通路の足場となる床面が階段状になり、段差を有する形になり、段数も多くなり易い。これに対し、1枚の段板の奥行きを減少させずに済む場合には、通路の足場となる床面を平板状にすることが可能になるか、またはより少ない段数の段板に跨がればよい形状にすることができるため、通行時の安定性と安全性が確保され易くなる。
【0015】
また隣接する2本の階段が双方の階段の長さ方向中間部において互いに交差することで、異なる層間(階間)の中間部の高さ(レベル)で隣接する2本の階段間の移動(往来)が可能になるため、異なる層間、特に隣接階間の同一地点間の短絡化した移動が可能になる。
【0016】
異なる層間の同一地点間、例えば図5に示すように一方の階段の、○を付した下階の上り口から直上階の階段の上り口まで、1層分、移動する上では、下階の階段の上り口から階段の中途(長さ方向中間部)の交差区間(連通区間)まで上昇したところで、交差区間(連通区間)から隣接する階段に移動し、折り返してその階段の中途(中間部)から、矢印の先端である降り口まで上昇すればよいことになる。折り返した先の階段の降り口は直上階の階段の上り口と同一地点に他ならないから、異なる層間の同一地点間の移動距離は水平距離で言えば、直階段の上り口から降り口までの距離に過ぎない。
【0017】
結果として、図6に示すように下階の階段の上り口から階段(直階段)の対向する側である上階の降り口まで移動した後に上階の廊下や床を通じ、階段室周りを迂回する必要が図5ではなくなるため、移動の効率が大幅に向上し、移動時間が短縮される。
【0018】
図5に示す一方の階段の下階の上り口からは、交差区間(連通区間)を経由することで、隣接する他方の階段の同一階の上り口に移動することも可能であり、同一層内での階段室を挟んで対向する一方側の床から他方側の床にまで移動する際にも、階段室周りを迂回することなく、移動のための水平距離を短縮することが可能である。
【0019】
隣接する2本の階段の交差区間(連通区間)は少なくとも通路として使用されている期間は、手摺りや壁等の境界(仕切り)がない開放状態になるが、通行時の安全性確保の目的で、階段(段板)とは別に渡り部材が着脱自在に設置される渡り部材は2本の階段の交差区間(連通区間)に、階段の長さ方向に各階段複数枚の段板に跨る長さを持つと共に、階段の幅方向には隣接する階段間に跨る幅を持ち、隣接する階段の各段板上に載置された状態で、隣接する階段の双方に着脱自在に設置される(請求項1、2)。各階段の、少なくとも隣接する階段側に側桁がある場合には、渡り部材は両階段の側桁間に跨る幅を持つ。
【0020】
渡り部材は双方の階段に対して着脱自在であることで、主に建物の工事期間中の仮設部材として設置されるが、仮設の場合の設置状態での安定性は各階段の段板、側桁、もしくは仮設の手摺り等に仮固定されることにより確保される。渡り部材の段板に突き当たる部位段板の表面形状に応じて切り欠かれた形状に形成される。
【0021】
前記のように階段は幅方向に3本以上、隣接することもあり、その内の幅方向の中心に位置する階段の一方側に隣接する階段との交差位置と、他方側に隣接する階段との交差位置が異なるような場合には、階段幅方向の中心に位置する階段には2箇所の交差区間が形成されるため、その2箇所に渡り部材が設置されることもある。
【発明の効果】
【0022】
隣接する2本の階段が双方の階段の長さ方向中間部において互いに交差し、この交差する区間において階段の幅方向に連通するため、異なる層間の中間部の高さで隣接する2本の階段間の移動(往来)が可能になり、異なる層間の同一地点間の短絡化した移動が可能になる。
【0023】
従って例えば下階の階段の上り口から直上階の階段の上り口まで移動する際には、下階の階段の上り口から階段の中途(長さ方向中間部)の交差区間(連通区間)まで上昇したところで、交差区間(連通区間)から隣接する階段に移動し、折り返してその階段の中途(中間部)から降り口まで上昇すればよいため、階段室周りを迂回する必要がなくなり、移動の効率が大幅に向上し、移動時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】隣接する階段の交差(連通)区間とこの交差区間に配置された渡り部材を一方の階段の上方から見た様子を示した斜視図である。
図2図1に示す交差(連通)区間と渡り部材を一方の階段の中間部から見た様子を示した斜視図である。
図3】幅方向に隣接する階段が交差している様子を示した立面図である。
図4】(a)は交差区間に位置する各階段の各段板が階段の長さ方向に1枚の段板分、ずれている図3に示す例の隣接する階段の関係を示した斜視図、(b)は交差区間に位置する各階段の各段板がずれていない場合の隣接する階段の関係を示した斜視図である。
図5】隣接する階段の交差(連通)区間を通じて下階の上り口から直上階の同一位置の降り口まで移動するときの動線を示した平面図である。
図6】隣接する階段間に連通区間がない従来の階段室において、下階の上り口から直上階の同一位置の降り口まで移動するときの迂回した動線を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
図1図2は平面上、空間を挟んで対向し、層(階)の異なる床5,6間に架設される複数本の直階段型の階段21,22がその幅方向に隣接しながら、立面上、互いに交差し、その交差区間3を通じて隣接する階段21,22間の往来を可能にしたクロス階段1の施工例を示す。
【0027】
図1は一方の階段21の上階寄りから交差区間3を見下ろした様子を、図2は一方の階段21の下階寄りから交差区間3を水平に見た様子を示している。隣接する2本の階段21,22は双方の階段21,22の長さ方向中間部において互いに交差し、この交差区間3が階段21,22の幅方向に連通、もしくは開放し、階段21,22間が往来可能となる。交差区間3は連通区間、あるいは開放空間とも言い換えられる。
【0028】
交差区間3は階段21,22の長さ方向には少なくとも一人の人間が横向き(階段を昇降するときの向き)になって通行可能な幅を持つ。この幅は後述するように各階段21,222枚以上の段板2bに跨る長さになる。交差区間3は階段21,22の幅方向には少なくとも双方の階段21,22の後述する側桁2a,2a間、または段板2b,2b間に跨る長さを持つ。
【0029】
交差区間(連通区間)3は主に階段21,22を含めた建物(構造物)の工事(構築)期間中の作業性を向上させる目的で、仮設の設備として形成されるため、構築終了後には階段21,22の使用目的、用途等に応じて撤去(回収)、もしくは壁4等で塞がれることもあるが、構築終了後に開放したまま残されることもある。図示するクロス階段1(階段21,22)は交差区間(連通区間)3の撤去後に本設の階段として使用される場合の例を示しているが、クロス階段1自体が仮設の設備である場合もある。
【0030】
階段21,22は図5に示すように建物の完成時には、例えば階段室を構成する、各階段21,22の幅方向両側に位置する壁4,4に支持されることもあるが、少なくとも壁4が構築される以前の工事期間中には各階段21,22は独立して下層階の床5と上層階の床6間に架設される。このため、階段21,22は原則として幅方向両側に側桁(ささら桁を含む)2a,2aを持ち、両側の側桁2a,2a間に段板2bが架設され、支持された桁付きの階段として設置される。段板2bの側桁2a,2aへの支持(接合)方法は問われない。上下に隣接する段板2b,2b間には蹴込み板が配置される場合と配置されない場合がある。
【0031】
各階段21,22の両側の側桁2a,2aは仮設の、もしくは本設の壁4,4であることもあり、後者の場合、段板2bが両側の壁4,4に支持されることになる。壁4,4が段板2bを支持する場合、少なくとも交差区間3が仮設の設備として形成される工事期間中は、隣接する階段21,22間の境界に位置する壁4は交差区間3が開放した開口部を有する壁となる。
【0032】
図1図2では各階段21,22の段板2bが側桁2a,2aに支持された形であることから、作業期間中の階段21,22通行時の安全性確保のための仮設の手摺り7を、交差区間3以外の区間の側桁2a,2aにクランプ等の固定具71を用いて着脱自在に固定している。この場合、手摺り7は交差区間3では不在になり、交差区間3には通行のための踏み台になる渡り部材8が設置される。手摺り7は前記のように仮設の、もしくは本設の壁4(腰壁と垂れ壁を含む)であることもある。
【0033】
渡り部材8は図1図2に示すように階段21,22の幅方向両側に位置し、各階段21,22の段板2b,2bに接地する脚部8a,8aと両脚部8a,8aを繋ぎ、人(作業者)が交差区間3の通行時に踏み板として載り得る連結部8bの3部分を有し、脚部8a,8aの底部が段板2b,2bの表面に接触(当接)し、段板2b,2bに支持される。渡り部材8の製作方法は問われない。渡り部材8は例えば分離している部材としての脚部8a,8aと連結部8bを組み立て、互いに接合して製作される場合と、一体構造で製作される場合の他、2本の脚部8a,8aが一体化した部材に連結部8bを接合して製作されることもある。
【0034】
図1図2では階段21の長さ方向両側である連結部8bの幅方向両側が開放したままの状態にあるが、連結部8bの幅方向両側には、側桁2a,2bの形状、あるいは傾斜に応じた切り欠きが形成された端板が固定され、両側が塞がれることもある。端板は後述の壁部8cが兼ねることもある。
【0035】
図1図2ではまた、脚部8a,8aと連結部8bからなる渡り部材8の幅方向(階段の長さ方向)両側に、渡り部材8上を通行するときの落下(転落)防止のための壁部8c、もしくは柵を組み合わせ、脚部8a,8aと連結部8bの少なくともいずれかに一体的に接合し、壁部8cを仮設の手摺り7にクランプ、紐等の留め具9によって仮固定している。壁部8cは図2に示すように脚部8a,8a、もしくは連結部8bにねじ等によって固定される。
【0036】
連結部8bの底面は両階段21,22の側桁2a,2aに接触するか、側桁2a,2aから浮いた状態になる。側桁2a,2aに接触すれば、渡り部材8は段板2b,2bと側桁2a,2aに支持され、浮いた状態にあれば、渡り部材8は段板2b,2bに支持される。段板2bが側桁2aではなく、壁4に支持される場合、渡り部材8は基本的に脚部8a,8aにおいて両階段21,22の段板2b,2bに支持される。
【0037】
連結部8bの底面が側桁2a,2aに接触する場合には、連結部8bがその平面上の中心に関して長さ方向両側にある2点で側桁2a,2aに支持される形になるため、固定状態での安定性が高まる利点がある。連結部8bの底面には、固定状態での安定性を高めるために、向きの異なる側桁2a,2aの上端部の傾斜に合わせ、側桁2a,2aが納まる溝等が形成されることもある。
【0038】
渡り部材8は図1等に示すように幅方向(階段の長さ方向)には隣接する階段21,222枚以上の段板2bに跨る長さを持つ。渡り部材8は上り口から降り口にかけて互いに向きの相違する階段21,22間に跨る
【0039】
図3図4−(a)に示すように隣接する階段21,22の、交差区間3に位置する各段板2b,2bの奥行き方向中心が同一線上になく、階段21,22の長さ方向に1枚の段板2b分、ずれている場合の、交差する階段21,22の例を示している。図4−(b)は交差区間3に位置する各段板2b,2bの奥行き方向中心が同一線上にある場合の例を示している。
【0040】
図4−(a)、(b)では各階段21,22を3枚の段板2bで示しているが、(a)では各階段21,22の交差区間3に位置する中央の段板2b,2bが階段21,22の長さ方向に1枚分、ずれており、(b)では中央の段板2b,2bの奥行き方向中心が同一線上に位置している。
【0041】
図3図4−(a)に示す各階段21,22の中央と下段側の2枚の段板2b,2bが交差区間3に位置し、その2枚の段板2b,2bに渡り部材8が跨る場合である。図4−(b)に示す例では中央の1枚の段板2bのみが交差区間3に位置するか、(a)に例と同様に中央と下段側の2枚の段板2b,2bが交差区間3に位置する。図4−(b)の場合には各階段21,22の1枚の段板2bにのみ渡り部材8が跨ることもある。
【0042】
図1図2に示すよう渡り部材8の脚部8a,8aは一方の階段21の2枚以上の段板2bと他方の階段22の2枚以上の段板2bに支持される。図1図2は各脚部8aが各階段21,22の2枚の段板2bに支持されている場合の例を示す。脚部8a,8aが2枚以上の段板2bに支持される場合、脚部8aの底面は2枚以上の段板2bの踏面の形状に合わせて切り欠かれた形状に形成される。
【0043】
図1図2は前記のように仮設の手摺り7が各階段21,22の側桁2a,2aに仮固定されている様子を示している。ここで、仮設の全手摺り7の高さと長さが一定の場合、一方の階段21の上り口から交差区間3までの区間に固定される手摺り7の交差区間3(渡り部材8)側の高さと、それに階段21の幅方向に隣接する手摺り7の交差区間3(渡り部材8)側の高さには段差が生ずるため、渡り部材8の壁部8cの高さは相対的に上に位置する手摺り7の高さに合わせられる。壁部8c,8cの互いに対向する面にはその交差区間3が何階と何階の中間部であるかを表示する表示版8dが接着、ねじ止め等、何らかの手段で付着させられる。
【0044】
図4−(a)に示すように1枚の段板2bの奥行き(踏面寸法)が1個の渡り部材8(脚部8a)の長さ(交差区間3の幅)より小さく、渡り部材8(交差区間3)が2枚以上の段板2b,2bに跨って設置される場合、交差区間3(渡り部材8)まで上りとなる一方の階段21の交差区間3寄りの段板2bのレベル(高さ)と、その位置から上りとなる他方の階段22の段板2bのレベル(高さ)とに段差が生まれる。それに伴い、一方の階段21の上り口から交差区間3までの区間に固定される手摺り7の交差区間3(渡り部材8)側の高さと、それに階段21の幅方向に隣接する手摺り7の交差区間3(渡り部材8)側の高さには図1図2に示すように段差が生ずる。
【0045】
図4−(b)に示すように各階段21,22の1枚の段板2bの奥行きが1個の渡り部材8の長さ以上である場合には、交差区間3に位置する両段板2b,2bの中心が同一線上にあり、両段板2b,2bの表面も同一面内にあるため、双方の手摺り7,7の高さが等しくなることもある。
【0046】
渡り部材8は交差区間3を通行する人(作業者)の通行時の踏み台としての機能を果たすため、交差区間3への設置状態で階段21,22の長さ方向と幅方向に滑りを生じない程度の安定性を確保した状態で仮固定されることが適切である。渡り部材8は人が所持する道具や工具等が通行時に落下した場合に、階段21,22間の隙間から下方へ落下することを阻止する役割も果たす。
【0047】
例えば図1等に示すように渡り部材8が両階段21,22の2枚以上の段板2bに跨る場合は、脚部8aが一方の階段21の段板2b、もしくは蹴込み板に上り側へ係合すると同時に、他方の階段22の段板2b、もしくは蹴込み板に上り側へ係合することで、渡り部材8の幅方向(階段21,22長さ方向)の移動が拘束される。階段21,22の幅方向には脚部8aが両階段21,22の側桁2a,2aに係合することで、その方向の移動に対して拘束される。
【0048】
脚部8aの段板2b等への係合と側桁2aへの係合によって渡り部材8が階段21,22の長さ方向と幅方向の安定性を確保する場合は、図1図2に示すように壁部8cにおける留め具9での手摺り7等への連結によって設置状態での安定性が確保される。
【符号の説明】
【0049】
1……クロス階段、
21、22……階段、2a……側桁、2b……段板、
3……交差区間、
4……壁、
5、6……床、
7……手摺り、71……固定具、
8……渡り部材、8a……脚部、8b……連結部、8c……壁部、8d……表示版、
9……留め具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6