(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の接着剤組成物、接着シートおよび該シートを用いた半導体装置の製造方法についてさらに具体的に説明する。
【0020】
(接着剤組成物)
本発明に係る接着剤組成物は、アクリル重合体(A)(以下「(A)成分」とも言う。他の成分についても同様である。)、熱硬化性樹脂(B)、フィラー(C)を必須成分として含み、各種物性を改良するため、必要に応じ他の成分を含んでいても良い。以下、これら各成分について具体的に説明する。
【0021】
(A)アクリル重合体
アクリル重合体(A)としては従来公知のアクリル重合体を用いることができる。アクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。アクリル重合体(A)の重量平均分子量が低過ぎると、接着剤層と支持体との接着力が高くなってチップのピックアップ不良が起こることがある。アクリル重合体(A)の重量平均分子量が高すぎると、被着体の凹凸へ接着剤層が追従できないことがあり、ボイドなどの発生要因になることがある。アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0022】
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。アクリル重合体(A)のTgが低過ぎると、接着剤層と支持体との剥離力が大きくなってチップのピックアップ不良が起こることがある。アクリル重合体(A)のTgが高過ぎると、ウエハを固定するための接着力が不充分となるおそれがある。
【0023】
アクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルおよびその誘導体が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などを用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
これらの中では、アクリル重合体(A)を構成するモノマーとして、後述する熱硬化樹脂(B)との相溶性が良いアクリル重合体が得られることから、少なくとも水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。この場合、アクリル重合体(A)において、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、1〜20質量%の範囲で含まれることが好ましく、3〜15質量%の範囲で含まれることがより好ましい。アクリル重合体(A)として、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
【0025】
また、上記(メタ)アクリル酸エステルおよびその誘導体などと共に、本発明の目的を損なわない範囲で、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどをアクリル重合体(A)の原料モノマーとして用いてもよい。
【0026】
アクリル重合体(A)は、接着剤組成物の全重量中、50質量%以上の割合で含まれていることが好ましい。このような構成とすることで、接着剤層を一括硬化するプロセスに用いられる場合に好ましい性状となる。なぜなら、硬化前の接着剤が高温に晒された際にもある程度の硬さを保つことでき、ワイヤボンディングできるからである。すなわち、接着剤組成物におけるアクリル重合体(A)の含有量が比較的多いと、熱硬化前であっても接着剤層の貯蔵弾性率を高くできる。このため、接着剤層が未硬化あるいは半硬化の状態でもワイヤボンディング時におけるチップの振動、変位が抑制され、ワイボンディングを安定して行えるようになる。このように、工程適性を確保するためにアクリル重合体(A)の含有量を増やした場合、相対的に熱硬化性樹脂(B)の量が少なくなる。このため、硬化が不足する可能性があるが、本発明の接着剤組成物は、熱硬化性樹脂(B)と反応性二重結合基を表面に有するフィラーとが反応性二重結合を介して結合可能であるため、このような硬化不足の問題を解消できる。アクリル重合体(A)は、接着剤組成物の全重量中、50〜90質量%の割合で含まれていることがより好ましく、50〜80質量%の割合で含まれていることがさらに好ましい。
【0027】
(B)不飽和炭化水素基を有する熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂(B)は、エポキシ樹脂および熱硬化剤からなり、本発明では、エポキシ樹脂および熱硬化剤の何れか一方または両方が不飽和炭化水素基を有する。エポキシ樹脂としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(B1)および不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂(B1’)があり、熱硬化剤としては、不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)および不飽和炭化水素基を有しない熱硬化剤(B2’)がある。本発明の熱硬化性樹脂(B)には、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(B1)および不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)の何れか一方を必須成分として含む。また、エポキシ樹脂(B1)およびエポキシ樹脂(B1’)の何れか一方を必須成分として含み、熱硬化剤(B2)および熱硬化剤(B2’)の何れか一方を必須成分として含む。ただし、エポキシ樹脂および熱硬化剤の両方が不飽和炭化水素基を有しない場合、すなわち成分(B1’)と成分(B2’)のみの組み合わせは除外される。
【0028】
熱硬化性樹脂(B)は、不飽和炭化水素基を有することから、不飽和炭化水素基を有さない熱硬化性樹脂と比較してアクリル重合体(A)および後述するフィラー(C)との相溶性が高い。このため、本発明の接着剤組成物は、熱硬化性樹脂として不飽和炭化水素基を有さない熱硬化性樹脂のみを含む接着剤組成物よりも信頼性が向上している。
【0029】
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、具体的な例としてはビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられ、好ましくはアクリロイル基が挙げられる。したがって、本発明における不飽和基は、重合性を有しない二重結合を意味しない。たとえば、成分(B)には芳香環が含まれていてもよいが、芳香環の不飽和構造は本発明の不飽和炭化水素基を意味しない。
【0030】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(B1)としては、接着剤の熱硬化後の強度や耐熱性が向上するため、芳香環を有する樹脂が好ましい。また、このような不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(B1)としては、たとえば、多官能のエポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を含む基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、たとえば、エポキシ基へアクリル酸を付加反応させることにより合成できる。あるいは、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物などが挙げられる。
【0031】
ここで、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(B1)としては、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、あるいは後述する不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂(B1’)の一部のエポキシ基ヘアクリル酸を付加反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0033】
〔Rは、H−またはCH
3−、nは、0〜10の整数である。〕
【0035】
Rは、H−またはCH
3−、nは、0〜10の整数である。〕
【0036】
なお、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂(B1’)とアクリル酸との反応により得られる不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(B1)は、未反応物やエポキシ基が完全に消費された化合物との混合物となっている場合があるが、本発明においては、上記化合物が実質的に含まれているものであればよい。
【0037】
不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂(B1’)としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、多官能系エポキシ樹脂や、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
エポキシ樹脂(B1)および(B1’)の数平均分子量は、特に制限されないが、接着剤の硬化性や硬化後の強度や耐熱性の観点からは好ましくは300〜30000、さらに好ましくは400〜10000、特に好ましくは500〜3000である。また、該エポキシ樹脂の全量[(B1)+(B1’)]中の不飽和基の含有量は、該エポキシ樹脂全量中のエポキシ基100モルに対して0.1〜1000モル、好ましくは1〜500モル、さらに好ましくは10〜400モルであることが望ましい。0.1モル以下であるとパッケージ信頼性の向上の効果が無いことがあり、1000モル以上であると熱硬化性が不十分となるおそれがある。
【0039】
熱硬化剤は、エポキシ樹脂(B1)および(B1’)に対する硬化剤として機能し、本発明では、不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)および不飽和炭化水素基を有しない熱硬化剤(B2’)が用いられ、エポキシ樹脂が、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂(B1’)のみからなる場合には、不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)が必須成分として用いられる。エポキシ樹脂が、不飽和炭化水素基を有する場合には、熱硬化剤(B2)および熱硬化剤(B2’)の何れが用いられても良い。
【0040】
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)は、重合性の不飽和炭化水素基を有し、好ましくはビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられ、より好ましくはメタクロイル基、アクリルアミド基を含む。また、さらに好ましくは、これらに加えてエポキシ基と反応しうる官能基を含む。エポキシ基と反応しうる官能基としては好ましくはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられ、これらの中でもさらに好ましくはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、特に好ましくはフェノール性水酸基があげられる。
【0041】
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、たとえばフェノール樹脂の水酸基の一部を、不飽和炭化水素基を含む基で置換してなる化合物あるいは、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物などがあげられる。ここで、フェノール樹脂としては、下記式(化3)に示すノボラック型フェノール樹脂、(化4)で表されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、(化5)で表される多官能系フェノール樹脂等があげられ、特にノボラック型フェノール樹脂が好ましい。したがって、不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、ノボラック型フェノール樹脂の水酸基の一部を、不飽和炭化水素基を含む基で置換してなる化合物あるいは、ノボラック型フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物が好ましい。
【化3】
【化4】
【化5】
【0042】
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)の特に好ましい例としては、下記式(a)のようなフェノール性水酸基を含有する繰返単位の一部に不飽和炭化水素基が導入された構造であり、下記式(b)または(c)のような不飽和炭化水素基を含む基を有する繰返単位を含む化合物があげられる。特に好ましい不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)は、下記式(a)の繰返単位と、下記式(b)または(c)の繰返単位を含む。
【0046】
(式中nは0または1であり、R
1は水酸基を有していてもよい炭素数1〜5の炭化水素基であり、Xは−O−、−NR
2−(R
2は水素またはメチル)であるか、またはR
1Xは単結合であり、Aはアクリロイル基またはメタアクリロイル基である)
【0047】
繰返単位(a)に代表されるフェノール性水酸基は、エポキシ基と反応しうる官能基であり、接着剤組成物の熱硬化時にエポキシ樹脂のエポキシ基と反応硬化する硬化剤としての機能を有する。また、繰返単位(b)および(c)に代表される不飽和炭化水素基は、接着剤組成物のエネルギー線硬化時に重合硬化し、接着剤層と支持体との接着力を低下する作用を有する。また、繰返単位(b)および(c)に代表される不飽和炭化水素基は、アクリル共重合体(A)と熱硬化性樹脂(B)との相溶性を向上させる。この結果、接着剤組成物の硬化物がより強靭な性質となり、これにより接着剤としての信頼性が向上する。この熱硬化剤(B2)における前記(a)式で示される繰返単位の割合は、5〜95モル%、さらに好ましくは20〜90モル%、特に好ましくは40〜80モル%であり、前記(b)または(c)式で示される繰返単位の割合は、合計で5〜95モル%、さらに好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは20〜60モル%である。
【0048】
不飽和炭化水素基を有しない熱硬化剤(B2’)としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0049】
フェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0050】
上記した熱硬化剤(B2)および(B2’)の数平均分子量は好ましくは300〜30000、さらに好ましくは400〜10000、特に好ましくは500〜3000である。
【0051】
接着剤組成物における熱硬化剤[(B2)および(B2’)]の含有量は、エポキシ樹脂[(B1)および(B1’)]100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤の含有量が少ないと硬化不足で接着性が得られないことがあり、過剰であると接着剤層の吸湿率が高まりパッケージ信頼性を低下させることがある。また、熱硬化剤[(B2)および(B2’)]の含有量は、アクリル重合体(A)100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。熱硬化剤の含有量が少ないと硬化不足で接着性が得られないことがあり、過剰であると接着剤層の吸湿率が高まりパッケージ信頼性を低下させることがある。
【0052】
接着剤組成物には、アクリル重合体(A)100質量部に対して、熱硬化性樹脂(B)(エポキシ樹脂と熱硬化剤の合計)が、好ましくは1〜1500質量部含まれ、より好ましくは3〜1200質量部含まれる。熱硬化性樹脂(B)の含有量が1質量部未満であると十分な接着性が得られないことがあり、1500質量部を超えると接着剤層と支持体との剥離力が高くなり、ピックアップ不良が起こることがある。
【0053】
(C)反応性二重結合を表面に有するフィラー
反応性二重結合基を表面に有するフィラー(C)は、反応性二重結合基を表面に有していれば特に限定されない。反応性二重結合基は、反応性を有するビニル基、アリル基または(メタ)アクリル基であることが好ましい。
【0054】
上記フィラーは、反応性二重結合基を有する化合物により表面処理されたフィラーであることが好ましい。
【0055】
フィラー(未処理のフィラー)の材質として、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、カーボンブラック、タルク、マイカ又はクレー等が挙げられる。中でも、シリカが好ましい。シリカが持つシラノール基は、シランカップリング剤との結合に有効に作用する。
【0056】
反応性二重結合基を表面に有するフィラーは、例えば、未処理のフィラーの表面を、反応性二重結合基を有するカップリング剤により表面処理することにより得られる。
【0057】
上記反応性二重結合基を有するカップリング剤は、特に限定されない。該カップリング剤として、例えば、ビニル基を有するカップリング剤、スチリル基を有するカップリング剤、(メタ)アクリロキシ基を有するカップリング剤が好適に用いられる。上記カップリング剤は、シランカップリング剤であることが好ましい。
【0058】
上記カップリング剤の具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランおよび3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの市販品として、例えば、KBM−1003、KBE−1003、KBM−1403、KBM−502およびKBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103(以上いずれも信越シリコーン社製) が挙げられる。
【0059】
上記カップリング剤により上記フィラーを表面処理する方法は特に限定されない。この方法として、例えば、ヘンシェルミキサー又はV型ミキサー等の高速攪拌可能なミキサー中に未処理のフィラーを添加し、攪拌しながら、カップリング剤を、直接又は、アルコール水溶液、有機溶媒溶液若しくは水溶液として添加する乾式法が挙げられる。さらに、未処理のフィラーのスラリー中にカップリング剤を添加するスラリー法、未処理のフィラーを乾燥させた後、カップリング剤をスプレー付与するスプレー法等の直接処理法、又は上記組成物の調製時に、未処理のフィラーとアクリル系ポリマーとを混合し、該混合時にカップリング剤を直接添加するインテグレルブレンド法等が挙げられる。
【0060】
上記未処理のフィラー100質量部を表面処理するカップリング剤の量の好ましい下限は0.1質量部、好ましい上限は15質量部である。カップリング剤の量が0.1質量部未満であると、上記カップリング剤により未処理のフィラーが充分に表面処理されず効果を発揮しない可能性がある。カップリング剤の量が15質量部を超えると、未反応のカップリング剤が多量に残存することがあり、パッケージ信頼性低下の原因になったりする。上記フィラーは、未処理のフィラー100質量部がカップリング剤0.1〜15質量部により表面処理されたフィラーであることが好ましい。
【0061】
上記フィラーの平均粒径は0.01〜2μmの範囲内にあることが好ましい。上記フィラーの平均粒径がこれらの好ましい範囲内にある場合、半導体ウエハとの貼付性を損なわず接着性を発揮することができる。また、特にチップを基板や他のチップなどの被着体に載置するのに用いる場合に、本発明の接着剤の信頼性向上効果が顕著に得られる。上記平均粒径が大きすぎると、シートの面状態が悪化し、ウエハとの貼付性が悪くなったり、接着層の面内厚みがばらつく可能性がある。なお、上記「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法によって測定される体積平均径を示す。
【0062】
反応性二重結合基を表面に有するフィラー(C)は、アクリル重合体(A)、熱硬化性樹脂との親和性に優れ、接着剤組成物中に均一に分散させることができる。
【0063】
アクリル重合体(A)および熱硬化性樹脂(B)の合計100質量部に対して、上記フィラーは5〜100質量部の範囲で含まれることが好ましい。上記フィラーの量が多すぎると、ウエハや基板への密着性が悪くなることがある。上記フィラー粒子の量が少なすぎると、フィラー添加の効果が十分に発揮されないことがある。また上記アクリル重合体(A)100質量部に対して、上記フィラーの好ましい下限は10質量部であり、好ましい上限は100質量部である。
【0064】
このような範囲で、接着剤層がフィラー(C)を含有すると、接着剤層は、未硬化あるいは半硬化の状態でも、ワイヤボンディング時の振動に耐える程度の弾性率を示す。このため、ワイヤボンディング時にチップが振動、変位することもなく、ワイヤボンディングを安定して行える。
【0065】
その他の成分
接着剤組成物は、上記成分に加えて下記成分を含むことができる。
(D)光重合開始剤
接着剤組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することで、たとえば本発明の接着シートを、ダイシング・ダイボンディングシートとして用いた場合に、ウエハに貼付後、ダイシング工程前に紫外線を照射することで反応性二重結合基を表面に有するフィラーおよび熱硬化性樹脂の有する不飽和炭化水素基を反応せしめ、予備硬化させることができる。予備硬化を行うことにより、硬化前には接着剤層が比較的軟化しているのでウエハへの密着性がよく、かつダイシング時には適度な硬度を有しダイシングブレードへの接着剤の付着その他の不具合を防止することができる。また、支持体(樹脂フィルムまたはダイシングテープ)と、接着剤層の界面の密着性のコントロール等も可能となる。さらに、予備硬化状態では未硬化状態よりも硬度が高くなるため、ワイヤボンディング時の安定性が向上する。
【0066】
光重合開始剤(D)として具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびβ−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(D)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
光重合開始剤(D)を用いる場合、その配合割合は、前記したフィラー表面の反応性二重結合基および熱硬化性樹脂の有する不飽和炭化水素基の合計量に基づいて、適宜に設定すればよい。何ら限定されるものではないが、たとえば、熱硬化性樹脂(B)およびフィラー(C)の合計100質量部に対して、光重合開始剤(D)は通常は0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤(D)の含有量が上記範囲より下回ると光重合の不足で満足な反応が得られないことがあり、上記範囲より上回ると光重合に寄与しない残留物が生成し、接着剤組成物の硬化性が不十分となることがある。
【0068】
(E)硬化促進剤
硬化促進剤(E)は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0069】
硬化促進剤(E)を用いる場合、硬化促進剤(E)は、熱硬化性樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部の量で含まれる。硬化促進剤(E)を上記範囲の量で含有することにより、高温度高湿度下に曝されても優れた接着特性を有し、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高いパッケージ信頼性を達成することができる。硬化促進剤(E)の含有量が少ないと硬化不足で十分な接着特性が得られず、過剰であると高い極性をもつ硬化促進剤は高温度高湿度下で接着剤層中を接着界面側に移動し、偏析することによりパッケージの信頼性を低下させる。
【0070】
(F)カップリング剤
カップリング剤(F)は、接着剤層の被着体に対する接着性、密着性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤(F)を使用することで、接着剤層を硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。
【0071】
カップリング剤(F)としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。またこれらの中でも上記アクリル重合体(A)、熱硬化性樹脂(B)などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。
【0072】
カップリング剤(F)を用いる場合、カップリング剤は、アクリル重合体(A)および熱硬化性樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。カップリング剤(F)の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0073】
(G)架橋剤
接着剤組成物には、接着剤層の初期接着力および凝集力を調節するために、架橋剤(G)を添加することもできる。なお、架橋剤を配合する場合には、前記アクリル重合体(A)には、架橋剤と反応する官能基が含まれる。架橋剤(G)としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。
【0074】
上記有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0075】
有機多価イソシアネート化合物としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0076】
イソシアネート系の架橋剤を用いる場合、アクリル重合体(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤がイソシアネート基を有し、アクリル重合体(A)が水酸基を有すると、架橋剤とアクリル重合体(A)との反応が起こり、接着剤に架橋構造を簡便に導入することができる。
【0077】
上記有機多価イミン化合物としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0078】
架橋剤(G)を用いる場合、架橋剤(G)はアクリル重合体(A)100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の比率で用いられる。
【0079】
(H)エネルギー線重合性化合物
接着剤組成物には、エネルギー線重合性化合物が配合されていてもよい。エネルギー線重合性化合物(H)は、エネルギー線重合性基を含み、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する。このようなエネルギー線重合性化合物(H)として具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびイタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が挙げられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、重量平均分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。エネルギー線重合性化合物(H)を用いる場合、その配合量は、特に限定はされないが、接着剤組成物の固形分全量100質量部に対して、1〜50質量部程度の割合で用いることが好ましい。
【0080】
(I)熱可塑性樹脂
接着剤組成物には、熱可塑性樹脂(I)を用いてもよい。熱可塑性樹脂(I)は、硬化後の接着剤層の可とう性を保持するために配合される。熱可塑性樹脂(I)としては、重量平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、3000〜8万のものがさらに好ましい。熱可塑性樹脂(I)を含有することにより、半導体チップのピックアップ工程における支持体と接着剤層との層間剥離を容易に行うことができ、さらに基板の凹凸へ接着剤層が追従しボイドなどの発生を抑えることができる。
【0081】
熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度は、好ましくは−30〜150℃、さらに好ましくは−20〜120℃の範囲にある。熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度が低過ぎると接着剤層と支持体との剥離力が大きくなってチップのピックアップ不良が起こることがあり、高過ぎるとウエハを固定するための接着力が不十分となるおそれがある。
【0082】
熱可塑性樹脂(I)としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレンなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0083】
熱可塑性樹脂(I)を用いる場合、その配合量は、アクリル重合体(A)および熱硬化性樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、さらに好ましくは2〜100質量部の範囲にある。熱可塑性樹脂(I)の含有量がこの範囲にあることにより、上記の効果を得ることができる。
【0084】
(J)その他の無機充填材
また、接着剤組成物には、前記フィラー(C)以外にも、反応性二重結合を有しないフィラーとして、無機充填材(J)を配合してもよい。無機充填材としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。
【0085】
(K)汎用添加剤
接着剤組成物には、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、ゲッタリング剤などが挙げられる。
【0086】
(接着シート)
上記のような各成分からなる接着剤組成物からなる接着剤層は、感圧接着性と加熱硬化性とを有し、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧して貼付することができる。また、接着剤層には、フィラーが均一に分散しているため、半導体チップを接合し、ワイヤボンディングを行う高温でも接着剤層の変形が少なく、ワイヤボンディングを安定して行える。そして熱硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い硬化物を与えることができ、せん断強度にも優れ、厳しい高温度高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。光重合開始剤(D)が含まれる場合には、エネルギー線硬化性をも有し、本硬化の前にエネルギー線照射により予備硬化することができる。予備硬化により接着剤層の硬度が増し、ワイヤボンディング時の安定性が向上する。
【0087】
接着シートは、上記の接着剤組成物を製膜してなる単層の接着フィルムであっても良いが、好ましくは上記接着剤組成物からなる接着剤層が支持体上に剥離可能に形成されてなる接着シートである。
【0088】
以下、接着剤層が支持体上に剥離可能に形成されてなる接着シートを例にとり、その好適態様および使用態様について説明する。接着剤層が支持体上に剥離可能に形成されてなる接着シートの使用に際して、接着剤層をウエハ、チップ等の被着体に接着し、支持体を剥離して、接着剤層を被着体に転写する。本発明に係る接着シートの形状は、テープ状などあらゆる形状をとり得る。接着シートは、表面にタックを有しない樹脂フィルムであってもよく、またいわゆるダイシングシートであってもよい。
【0089】
接着シートの支持体として用いられる樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルム、不透明フィルムなどを用いることができる。
【0090】
本発明に係る接着シートは、各種の被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、接着剤層は、被着体に固着残存した状態で支持体から剥離される。すなわち、接着剤層を、支持体から被着体に転写する工程を含むプロセスに使用される。このため、支持体(樹脂フィルム)の接着剤層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が低い樹脂フィルムは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また樹脂フィルムの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0091】
樹脂フィルムの剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0092】
上記の剥離剤を用いて樹脂フィルムの表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、常温もしくは加熱または電子線硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成すればよい。
【0093】
支持体は、ダイシングシートであってもよい。ダイシングシートは、上記のような樹脂フィルム上に粘着剤層を有し、粘着剤層上に、前記接着剤層が剥離可能に積層される。したがって、ダイシングシートの粘着剤層は、再剥離性を有する公知の粘着剤から構成することができ、紫外線硬化型、加熱発泡型、水膨潤型、弱粘型等の粘着剤を選択することで、接着剤層の剥離を容易とすることができる。
【0094】
また、接着シートは、支持体および接着剤層が、予め被着体(半導体ウエハ等)と同形状に型抜きされてなる形状であってもよい。特に、支持体および接着剤層からなる積層体が、長尺の剥離フィルム上に保持された形態であることが好ましい。
【0095】
支持体の厚さは、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。また、接着剤層の厚みは、通常は2〜500μm、好ましくは6〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
【0096】
接着シートの製造方法は、特に限定はされず、支持体が樹脂フィルムである場合には、樹脂フィルム上に、接着剤組成物を塗布乾燥し、接着剤層を形成することで製造してもよい。また接着剤層を別の剥離フィルム上に設け、これを上記樹脂フィルムまたはダイシングシートに転写することで製造してもよい。
【0097】
なお、接着シートの使用前に、接着剤層を保護するために、接着剤層の上面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。該剥離フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルムなどのプラスチック材料にシリコーン樹脂などの剥離剤が塗布されているものが使用される。また、接着シートの表面外周部には、リングフレームなどの他の治具を固定するために別途粘着剤層や粘着テープが設けられていてもよい。
【0098】
次に本発明に係る接着シートの利用方法について、該接着シートを半導体装置の製造に適用した場合を例にとって説明する。
【0099】
(半導体装置の製造方法)
本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記接着シートの接着剤層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハ及び接着剤層をダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に接着剤層を固着残存させて支持体から剥離し、該半導体チップを有機基板やリードフレームのダイパッド部上、または別の半導体チップ上に接着剤層を介して接着する工程を含む。
【0100】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法について詳述する。
本発明に係る半導体装置の製造方法においては、まず、表面に回路が形成され、裏面が研削された半導体ウエハを準備する。
【0101】
半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は20〜500μm程度である。
【0102】
次いで、リングフレームおよび半導体ウエハの裏面側を本発明に係る接着シートの接着剤層上に載置し、軽く押圧し、半導体ウエハを固定する。次いで、接着剤層に光重合開始剤(D)が配合されている場合には、接着剤層に支持体側からエネルギー線を照射し、反応性二重結合基を表面に有するフィラー(C)および熱硬化性樹脂(B)の有する不飽和炭化水素基を反応、硬化し、接着剤層の凝集力を上げ、接着剤層と支持体との間の接着力を低下させておく。照射されるエネルギー線としては、紫外線(UV)または電子線(EB)等が挙げられ、好ましくは紫外線が用いられる。次いで、ダイシングソーなどの切断手段を用いて、上記の半導体ウエハを切断し半導体チップを得る。この際の切断深さは、半導体ウエハの厚みと、接着剤層の厚みとの合計およびダイシングソーの磨耗分を加味した深さにし、接着剤層もチップと同サイズに切断する。なお、エネルギー線照射は、半導体ウエハの貼付後、半導体チップの剥離(ピックアップ)前のいずれの段階で行ってもよく、たとえばダイシングの後に行ってもよく、また下記のエキスパンド工程の後に行ってもよい。さらにエネルギー線照射を複数回に分けて行ってもよい。
【0103】
次いで必要に応じ、接着シートのエキスパンドを行うと、半導体チップ間隔が拡張し、半導体チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。この際、接着剤層と支持体との間にずれが発生することになり、接着剤層と支持体との間の接着力が減少し、半導体チップのピックアップ性が向上する。このようにして半導体チップのピックアップを行うと、切断された接着剤層を半導体チップ裏面に固着残存させて支持体から剥離することができる。
【0104】
次いで接着剤層を介して半導体チップを、チップ搭載部であるリードフレームのダイパッド上または別の半導体チップ(下段チップ)表面に載置する。チップ搭載部は、半導体チップを載置する前に加熱するか載置直後に加熱されチップが仮着される。加熱温度は、通常は80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、通常は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜3分であり、載置するときの圧力は、通常1kPa〜200MPaである。
【0105】
チップが仮着された状態で順次チップを積層し、ワイヤボンディング後に、パッケージ製造において通常行われる樹脂封止での加熱を利用して接着剤層を本硬化させることが好ましい。このような工程を経ることで、接着剤層を一括して硬化でき製造効率が向上する。また、ワイヤボンディング時には、接着剤層は予備硬化された状態であり、ワイヤボンディングを安定して行われる。さらに、接着剤層はダイボンド条件下では軟化しているため、チップ搭載部の凹凸にも十分に埋め込まれ、ボイドの発生を防止できパッケージの信頼性が高くなる。
【0106】
本発明の接着剤組成物および接着シートは、上記のような使用方法の他、半導体化合物、ガラス、セラミックス、金属などの接着に使用することもできる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、<分散性評価>、<貯蔵弾性率測定>および<パッケージ信頼性評価>は次のように行った。
【0108】
<分散性評価>
実施例および比較例で調製した接着剤組成物を、剥離フィルム上に20μmの厚みになるように塗工し、スジ発生の有無を目視にて確認した。フィラーの分散性が悪く、凝集している場合にはスジが発生する。
【0109】
<貯蔵弾性率の測定>
前記実施例及び比較例に於いて作製した接着剤層について貯蔵弾性率を以下の通り測定した。
測定装置は、動的粘弾性測定装置(DMAQ800 TAインスツルメンツ社製)を用いて測定される。接着剤層は厚み800μmまで積層したものを縦10mm×横10mmに切断し用いた。測定条件は、引張モードで、一定の周波数(11Hz)で、温度を5℃/分で昇温させ、40〜300℃での測定を行い、その175℃での貯蔵弾性率を決定した。
【0110】
<パッケージ信頼性評価>
(半導体チップの製造)
ドライポリッシュ仕上げシリコンウエハ(150mm径, 厚さ75μm)の研磨面に、実施例および比較例の接着シートの貼付をテープマウンター(リンテック社製, Adwill RAD2500)により行い、ウエハダイシング用リングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック社製, Adwill RAD2000)を用いて支持体面から紫外線を照射(220mW/cm
2, 160mJ/cm
2)した。次いで、ダイシング装置(株式会社ディスコ製, DFD651)を使用して8mm×8mmのチップサイズにダイシングした。ダイシングの際の切り込み量は、支持体を20μm切り込むようにした。
【0111】
(半導体パッケージの製造)
基板として銅箔張り積層板(三菱ガス化学株式会社製CCL-HL830)の銅箔(18μm厚)に回路パターンが形成され、パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ製PSR-4000 AUS303)を有している基板を用いた(株式会社ちの技研製LN001E−001 PCB(Au)AUS303)。上記で得た接着シート上のチップを接着剤層とともに支持体から取り上げ、基板上に、接着剤層を介して120℃, 250gf, 0.5秒間の条件で圧着した。
【0112】
その後、ワイヤボンディング時の熱を仮定し175℃の雰囲気下で、1時間の熱をかけ、モールド樹脂(京セラケミカル株式会社製KE-1100AS3)で封止厚400μmになるように封止し (封止装置 アピックヤマダ株式会社製MPC-06M TriAl Press)、175℃5時間で樹脂を硬化させた。ついで、封止された基板をダイシングテープ(リンテック株式会社製Adwill D-510T)に貼付して、ダイシング装置(株式会社ディスコ製, DFD651)を使用して8mm×8mmサイズにダイシングすることで信頼性評価用の半導体パッケージを得た。
【0113】
(評価)
得られた半導体パッケージを85℃,湿度60%RH条件下に168時間放置し、吸湿させた後、プレヒート160℃(通常条件)及びプレヒート130℃(過酷条件)で最高温度が260℃になる加熱時間1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工製WL-15-20DNX型)を3回行なった際に接合部の浮き・剥がれの有無、パッケージクラック発生の有無を走査型超音波探傷装置(日立建機ファインテック株式会社製Hye-Focus)および断面研磨機(リファインテック株式会社製 リファイン・ポリッシャーHV)により断面を削り出し、
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製 VHX−100)を用いて断面観察により評価した。基板/半導体チップ接合部に長さ0.5mm以上の剥離を観察した場合を剥離していると判断して、パッケージを27個試験に投入し剥離が発生しなかった個数を数えた。
【0114】
<接着剤組成物>
接着剤組成物を構成する各成分を下記に示す。
(A)アクリル重合体:日本合成化学工業社製 N−4617(水酸基含有)
(B)熱硬化性樹脂:
(B−1)アクリロイル基付加クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製CNA−147)
(B−2)熱硬化剤:アラルキルフェノール樹脂(三井化学株式会社製ミレックスXLC−4L)
(C)フィラー:
(C−1)ビニル基修飾のシリカフィラー(平均粒径0.5μm、SO-C2, アドマテックス社製 ビニルトリメトキシシラン処理品)
(C−2)メタクリル基修飾の
シリカフィラー(平均粒径0.5μm、SO-C2, アドマテックス社製 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理品)
(C−3)エポキシ基修飾の
シリカフィラー(平均粒径0.5μm、SO-C2, アドマテックス社製 3−グリシドキシプロピルトリメトキシラン処理品)
(C−4)無修飾
シリカフィラー(平均粒径0.5μm、SO-C2、アドマテックス社製)
(D)光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184)
(E)硬化促進剤:イミダゾール(四国化成工業株式会社製キュアゾール2PHZ)
(F)シランカップリング剤(三菱化学株式会社製MKCシリケートMSEP2)
(G)架橋剤:芳香族性多価イソシアナート(日本ポリウレタン工業株式会社製コロネートL)
【0115】
(実施例および比較例)
(接着剤層)
上記各成分を表1に記載の量(質量比)で配合し、接着剤組成物を得た。得られた組成物のメチルエチルケトン溶液(固形濃度30質量%)を用い、分散性を評価した。結果を表1に示す。また、接着剤組成物溶液を、シリコーンで剥離処理された剥離フィルム(リンテック株式会社製、SP−PET381031)の剥離処理面上に乾燥後20μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃、1分間)した後に支持体(ポリエチレンフィルム、厚さ100μm、表面張力33mN/m)と貼り合せて、接着剤層を支持体上に転写することで接着シートを得た。得られた接着シートを用いて半導体パッケージを作成し、その信頼性を評価した。また、接着剤層の貯蔵弾性率を評価した。結果を表1に示す。表1中PKG信頼性はパッケージ信頼性を意味し、上述の評価において剥離が発生しなかった個数/27(試験に投入したパッケージの個数)であらわした。接着剤層の貯蔵弾性率は全て0.3MPa以上であった。
【表1】
【0116】
上記結果から、本発明の構成を採用することで、フィラーの分散性が改善され、半導体ウエハとの貼付性も向上し、ワイヤボンディング時の高熱に晒されても半導体パッケージの信頼性を維持できることがわかる。このため、本発明の接着剤組成物および接着シートを提供することで、多段スタックの半導体パッケージの製造が容易になると共に、生産性が向上する。