【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1に係る内部欠陥検査装置20の模式的な構成図である。
図1において、本実施例の内部欠陥検査装置20は、被測定物10に照射されるマイクロ波8を出力する送信アンテナ1と、送信アンテナ1と空間的に分離され、マイクロ波8の被測定物10からの反射波9を受信する受信アンテナ2とを有し、被測定物10の内部の層状の欠陥11を検出する検査装置である。被測定物10に照射されるマイクロ波8は被測定物10の表面12と欠陥11間の多重反射による干渉を生ずる周波数を含み、その周波数における反射波9の強度を測定することにより被測定物10の内部の欠陥11を検出する。送信アンテナ1から出力されるマイクロ波8の波源の生成および受信アンテナ2で受信された反射波9からの検出信号の生成は回路部3で行われる。
【0026】
図1において、被測定物10の表面12と欠陥11との間の間隔をd、マイクロ波8の入射角、即ち表面12の法線と成す角度をθ、マイクロ波8の周波数をf、被測定物10の比誘電率をε
rとし、欠陥11の比誘電率が剥離による空隙などの場合のようにε
rより小さいとすると、表面12と欠陥11間の多重反射による干渉により、反射波9の強度は式(1)を満たすとき最小となり、式(2)を満たすとき最大となる。但し、mは任意の整数、cは真空中の光速である。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
図2は、照射するマイクロ波8の周波数に対する反射波9の強度を示す図である。被測定物10の欠陥11がない部分においては、上記のdの値を表裏面間の厚さとして、式(1)、式(2)を満たす周波数において、表面12と裏面13間の多重反射による干渉が生じ、
図2の破線に示すような特性となる。一方、欠陥11が存在する部分においては、dの値は表裏面間の厚さよりも小さいので、式(1)、式(2)を満たす周波数は欠陥11が存在しない場合よりも大きくなり、
図2の実線で示す特性となる。例えば、反射波が最小強度となる周波数は欠陥11がない部分ではF
1、欠陥11がある部分ではF
2となり、周波数F
2で被測定物10を移動させながら反射波9の強度を測定した場合、欠陥11がある部分ではその強度は大きく減少する。欠陥11の表面からの深さdによって式(1)、式(2)を満たす周波数は変化するが、表面12と欠陥11間の多重反射による干渉を生ずる欠陥の存在によって反射波9の強度は大きく変化するので、本発明では、多重反射による干渉を利用しないで単にマイクロ波の欠陥11からの反射強度や位相を検出する場合に比べて、短時間に簡易に、かつ高精度に検出可能である。
【0030】
ここで、本発明において検出回路を簡易化するためには、多重反射による干渉を明確に生じさせる必要があり、このためには、被測定物10の表面12と欠陥11が略並行であるか、または、平行でない場合、1つの欠陥における表面からの深さの変化量が照射するマイクロ波の波長に対して十分に小さいこと、例えばマイクロ波の波長の1/5以下であることが望ましく、さらに、照射するマイクロ波の周波数は、式(1)でm=1を満たす周波数より大きく、通常用いられるマイクロ波の周波数の範囲内で設定することが望ましい。
【0031】
図3は実施例1に係る内部欠陥検査装置20の全体の構成を示すシステム構成図である。
図3に示すように、回路部3において、先ず、固定周波数f
1のマイクロ波を発信する発振器31により生成された信号に、掃引周波数として可変の周波数f
2のマイクロ波を発信する掃引発振器32により生成された信号をアップコンバータ33により合波して周波数f
1+f
2の送信波を生成する。この送信波をアッテネータ34により電波法によって規定された送信強度に調整し、送信アンテナ1からマイクロ波8として放射し被測定物10へ照射する。
図1に示すように、マイクロ波8は被測定物10の表面12、裏面13や欠陥11等の誘電率が変化する境界面で反射し、その反射波9を受信アンテナ2で受信する。受信波の振幅A4は、
図2のような干渉の情報を含んでおり、送信周波数f
1+f
2の関数で表わされる。
【0032】
本発明の内部欠陥検査装置において、マイクロ波の周波数によっては、送信アンテナ1から放射されるマイクロ波の出力強度は電波法により非常に小さな強度に制限される。その場合、受信アンテナ2での受信強度も非常に小さくなり、アンプで増幅するだけではS/Nが不十分となり、精度よく測定することができない場合が生ずる。そこで、本実施例では、高い検出感度を得るため、送信アンテナ1から出力されるマイクロ波の周波数と異なる周波数のマイクロ波である局部波を発信する局部発振器と、局部波と受信アンテナ2により受信された受信信号とを合波し両者の周波数の差の周波数を有する差周波数信号を生成するミキサと、差周波数信号を通過させる周波数フィルタとを備え、ヘテロダイン方式により受信回路を構成している。すなわち、本実施例において、局部発振器として掃引発振器32を使用し、受信アンテナ2により受信された受信信号をローノイズアンプ36で増幅した後、ミキサ35において掃引発振器32により生成された信号と合波することにより、受信信号の周波数f
1+f
2と掃引発振器32の信号の周波数f
2の差の周波数 f
1を有する信号を得ている。ここで、ミキサ35からの出力には差の周波数f
1、元の周波数f
1+f
2、和の周波数f
1+2f
2の信号が含まれるため、それをバンドパスフィルタ37を通過させることにより差の周波数f
1のみを有する信号を得ている。
【0033】
周波数f
1以外の不用成分が除去された信号はローノイズアンプ38で増幅され、欠陥情報を有する計測信号としてIQミキサ40に入力され、IQミキサ40内で発振器31の周波数f
1の参照波信号と合波され、検出信号が得られる。
【0034】
図4は本実施例に使用するIQミキサの内部構成図である。
図4において、計測信号をパワーディバイダ41で2つに分け、その分けられた同位相の2つの信号をそれぞれミキサ43、ミキサ44のRFポートに入力する。一方、参照波信号はハイブリッド42に入力され、位相が互いに90度異なる2つの信号に分けられ、それぞれミキサ43、ミキサ44のLOポートに入力する。ミキサ43、ミキサ44では、それぞれ計測信号と参照波信号の差の周波数信号と和の周波数信号が生成され、それぞれローパスフィルタ45、ローパスフィルタ46を通過させることにより差の周波数信号だけを取り出す。取り出される信号は、受信波の位相δと振幅A4の情報を含んだsin波成分とcos波成分の検出信号として出力される。
【0035】
次に、本発明にかかる内部欠陥の検査方法について説明する。先ず、
図1のように、送信アンテナ1から出力したマイクロ波8が被測定物10の表面12で正反射して反射波9として受信アンテナ2に入射するように送信アンテナ1と受信アンテナ2を配置する。
図3において、マイクロ波8の周波数f
1+f
2が式(1)をm≧1の範囲で満たし、被測定物10の表面12と欠陥11間の多重反射による干渉を生ずるように固定の周波数f
1と掃引周波数f
2を設定する。掃引周波数f
2を変化させることによりマイクロ波8の周波数f
1+f
2を変化させて反射波9の強度を測定し、特定の周波数に対する強度、または周波数変化に対する強度の変化量の大きさから欠陥を検出する。
【0036】
図5は、実施例1の内部欠陥検査装置20を用いて、層状のゴム製品の剥離欠陥を測定した結果の一例を示す図である。28〜29GHzの周波数のマイクロ波を掃引して送信アンテナ1から被測定物の表面に照射し、IQミキサから得られた検出信号の振幅の上記周波数内における最大値と最小値の差を算出してプロットした結果である。横軸はマイクロ波を照射した基準点からの相対的な位置である。
図5に示すように、剥離欠陥のある位置では明確な信号出力の増加が得られ、目的とした欠陥の検出が確認できた。
【0037】
なお、上記の層状のゴム製品の測定においては、マイクロ波の照射範囲を、表面の凹凸よる反射波の変動が平均化して低減されるように考慮した。
【0038】
また、表面に周期的な凹凸を有する被測定物においては、表面の凹凸による反射波の変動によって計測信号に現れるノイズ波形は表面形状に応じてほぼ一定となるので、その波形を信号処理により除去することも可能である。
【実施例2】
【0039】
図6は、実施例2に係る内部欠陥検査装置21の模式的な構成図である。
図6において、本実施例の内部欠陥検査装置21は、実施例1と同様に、被測定物10に照射されるマイクロ波8を出力する送信アンテナ1と、送信アンテナ1と空間的に分離され、マイクロ波の被測定物10からの反射波19を受信する受信アンテナ2とを有し、被測定物10の内部の層状の欠陥11を検出する検査装置である。被測定物10に照射されるマイクロ波8は被測定物10の表面12と欠陥11間の多重反射による干渉を生ずる周波数を含み、その周波数における反射波19の強度を測定することにより被測定物10の内部の欠陥11を検出する。送信アンテナ1から出力されるマイクロ波8の波源の生成および受信アンテナ2で受信された反射波19からの検出信号の生成は回路部3で行われる。
【0040】
本実施例においては、マイクロ波の一部を透過する半透過反射板4を有し、送信アンテナ1から出力されたマイクロ波8の一部が半透過反射板4を透過して被測定物10の表面12にほぼ垂直に照射され、被測定物10からの反射波の一部が半透過反射板4により反射されて受信アンテナ2に反射波19として入射するように構成されている。また、本実施例では、マイクロ波8が被測定物10以外で反射されて受信アンテナ2に入射するのを避けるため、マイクロ波8の半透過反射板4により反射された成分を吸収体5で吸収している。半透過反射板4としては、使用するマイクロ波の周波数においてマイクロ波の一部を反射、透過する機能を有する板状の材料であればよく、例えば、アクリル板などを使用できる。
【0041】
図1に示す実施例1の構成においては、アンテナ位置を固定して被測定物10を取り替える場合、送信アンテナ1および受信アンテナ2と被測定物10との間の距離により測定箇所に入射するマイクロ波8の入射角度θが変化し、この結果、式(1)、式(2)を満たす最小強度、最大強度を与える周波数が若干変化してしまう。このため、被測定物10はある程度同じ位置に設置する必要がある。一方、本実施例においては、半透過反射板4を用いて、マイクロ波を被測定物の表面にほぼ垂直に照射することにより入射角度θは常に0となり、理論的には被測定物10との間の距離に対して式(1)、式(2)を満たす周波数は依存性しない。この結果、本実施例においては被測定物10に対する設定許容度を大きくでき、また、被測定物10の設定位置に対する検出信号の変動を抑えることができる。
【実施例3】
【0042】
図7は、実施例3に係る内部欠陥検査装置22の模式的な構成図である。
図7において、本実施例の内部欠陥検査装置22は、実施例1および2と同様に、被測定物10に照射されるマイクロ波8を出力する送信アンテナ1と、送信アンテナ1と空間的に分離され、マイクロ波8の被測定物10からの反射波29を受信する受信アンテナ2とを有し、被測定物10の内部の層状の欠陥11を検出する検査装置であり、被測定物10に照射されるマイクロ波8は被測定物10の表面12と欠陥11間の多重反射による干渉を生ずる周波数を含み、その周波数における反射波29の強度を測定することにより被測定物10の内部の欠陥11を検出する。また、実施例2と同様に、本実施例ではマイクロ波は被測定物10の表面12にほぼ垂直に照射される。
【0043】
但し、本実施例においては、マイクロ波の一部を透過する半透過反射板4を有し、送信アンテナ1から出力されたマイクロ波8の一部が半透過反射板4により反射されて被測定物10の表面12にほぼ垂直に照射され、被測定物10からの反射波の一部が半透過反射板4を透過して受信アンテナ2に反射波29として入射するように構成されている。マイクロ波8の半透過反射板4を透過した成分は吸収体5で吸収される。
図7に示すように、半透過反射板4のマイクロ波8の進行方向に対する角度は、半透過反射板4のマイクロ波の透過率、反射率、偏波特性などの入射角度に対する依存性を考慮して、最適な構成となるように任意に設定できる。
【0044】
本実施例においても、実施例2と同様に、被測定物10に対する設定許容度を大きくでき、また、被測定物10の設定位置に対する検出信号の変動を抑えることができる。
【0045】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、反射波から得られる信号強度が大きく、必要なS/Nが得られれば、回路部の構成は、通常のアンプと、平均化処理やフィルタなどによるノイズ低減回路と、ピーク値や振幅の検出回路などの信号処理回路を用いても構成可能であり、ヘテロダイン方式を採用しなくてもよい。また、本発明の対象とする被測定物は、表面と欠陥との間で多重反射による干渉を生ずるような層状の欠陥を有するものであれば如何なる物体であってもよい。