特許第5917225号(P5917225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5917225-低圧蒸気加熱装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917225
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】低圧蒸気加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20160422BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B01J19/00 301A
   F25B1/00 399Y
   B01J19/00 301B
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-72734(P2012-72734)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202468(P2013-202468A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】森井 高之
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−158616(JP,A)
【文献】 特開2005−233439(JP,A)
【文献】 米国特許第05209284(US,A)
【文献】 特開平05−015774(JP,A)
【文献】 特開2010−164223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
F22
F25B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する熱交換器と、
蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張機、これらを連通する循環路及び前記循環路を流れる熱媒体を含むヒートポンプを備えた低圧蒸気加熱装置であって、
前記熱交換器に蒸気を供給する蒸気供給管を、前記ヒートポンプの前記凝縮器で前記熱媒体と熱交換させて加熱し、
エゼクタと、循環ポンプと、前記蒸発器としての循環水タンクとを含む吸引手段であって、前記熱交換器に供給した蒸気の復水を吸引する吸引手段を接続し、
前記吸引手段で前記熱交換器を低圧状態に維持し、
前記吸引手段を循環する循環を、前記ヒートポンプの前記蒸発器で前記熱媒体と熱交換させて冷却し、
前記蒸発器の上部に取り付けられたヒータを用いて、前記循環を所定温度まで加熱する、低圧蒸気加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換室で被熱交換物を低圧蒸気によって加熱する低圧蒸気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気加熱装置は、熱交換室に熱交換流体供給管と吸引手段を接続して、熱交換流体供給管から加熱用の蒸気を熱交換室へ供給することによって、蒸気で被加熱物を加熱することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3170669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蒸気加熱装置においては、タンク内の循環水の温度を所定値に維持するために冷却流体供給管から多量の冷却水を供給しなければならない問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、タンク内へ供給する冷却水の量を少なくすることのできる低圧蒸気加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加熱物を収容する熱交換器と、蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張機による閉ループ内に熱媒体を充填したヒートポンプと、当該ヒートポンプの凝縮器で熱交換器の加熱部に蒸気を供給する蒸気供給管を熱媒体と熱交換して加熱し、熱交換器の加熱部に加熱部内の流体を吸引する吸引手段を接続して、当該吸引手段で加熱部内を大気圧程度又は大気圧以下の低圧状態に維持して、ヒートポンプの蒸発器で吸引手段を循環する循環液体を熱媒体と熱交換して冷却すると共に、上記蒸発器の上部に循環液体を所定温度まで加熱する加熱手段を取り付けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の低圧蒸気加熱装置は、ヒートポンプの蒸発器で吸引手段を循環する循環液体を熱媒体と熱交換して冷却することにより、少量の循環液体としての冷却水をヒートポンプで所定温度まで冷却し、繰り返して使用することができ、必要とする冷却流体の量を少なくすることができる。
【0008】
本発明の低圧蒸気加熱装置は、蒸発器の上部に循環液体を所定温度まで加熱する加熱手段を取り付けたことにより、蒸発器の上部に位置する循環液体だけを所定の温度、例えば90℃に維持することができ、装置の初期立ち上げ時に、蒸発器から圧縮機へと流下するヒートポンプの熱媒体を時間遅れなく瞬時に所定温度まで昇温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の低圧蒸気加熱装置の実施例を示す構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ヒートポンプを設けたものであるが、このヒートポンプとしては、蒸発器と圧縮機と凝縮器と膨張機とそれらを接続する管路とで構成される従来周知のものを用いることができる。
【実施例1】
【0011】
本実施例においては、熱交換器として反応釜1のジャケット部2を用いた例を示す。反応釜1の内部に入れた図示しない被加熱物を、ジャケット部2に供給する加熱源としての加熱用蒸気によって加熱するものである。
【0012】
反応釜1のほぼ全周にわたりジャケット部2を形成して、このジャケット部2に吸引手段としての組み合わせ真空ポンプ4と、加熱流体としての加熱用蒸気供給管8を接続する。
【0013】
ジャケット部2の左側上部には、流量調節弁7を介在した加熱用蒸気供給管8を接続する。この加熱用蒸気供給管8から、所定圧力すなわち温度の加熱用蒸気が、ジャケット部2へ供給されることによって、反応釜1内の被加熱物を加熱することができるものである。
【0014】
ジャケット部2の下方に排出管20を接続して、組み合わせ真空ポンプ4のエゼクタ10と接続する。排出管20には蒸気トラップ22を取り付け、蒸気トラップ22と並列にバイパス弁23を取り付ける。
【0015】
組み合わせ真空ポンプ4を、エゼクタ10と、循環ポンプ14と循環水タンク13、並びに、循環水タンク13内に配置したヒートポンプ3の蒸発管21とで形成する。循環水タンク13の上部には、タンク13内の上部に位置する循環水だけを所望温度まで加熱することのできる加熱手段としての電気ヒータ24を取り付ける。
【0016】
組み合わせ真空ポンプ4は、循環水タンク13内の循環水を循環ポンプ14からエゼクタ10へ吐出し、再度循環水タンク13へと循環するものであり、エゼクタ10に循環水が高速で吐出されることによってエゼクタ10内で吸引力を発生して、ジャケット部2下方の排出管20からジャケット部2内で蒸気が凝縮した復水を吸引し、循環水と混合して循環水タンク13へと流下するものである。
【0017】
ヒートポンプ3を、圧縮機5と凝縮器6と膨張機としての蒸気トラップ9、及び、循環水タンク13がその作用を発揮する蒸発器13とで構成して、それぞれの機器を連通する循環路11で連通する。
【0018】
循環ポンプ14の吐出側を分岐して凝縮器6へ循環水の一部を供給する循環水供給管12を接続する。循環水供給管12は、凝縮器6内の水位を制御する水位制御弁15を介在して、凝縮器6内でヒートポンプ3の循環路11と熱交換して加熱されることによって蒸気供給管16で蒸気となり、加熱用蒸気供給管8からジャケット部2へその蒸気を供給する。ジャケット部2へ供給された蒸気によって、反応釜1内の被加熱物を加熱するものである。
【0019】
凝縮器6で蒸気供給管16内の循環水と熱交換して熱を奪われた循環路11内の熱媒体は、凝縮して液体となり、膨張機としての蒸気トラップ9を通過する間に膨張して気体となって循環路11から蒸発器13へ流下する。蒸発器13内の蒸発管21で循環水の熱を奪って昇温した熱媒体は、圧縮機5で圧縮されて更に昇温して凝縮器6へと送られる。
【0020】
タンク13内の上部に位置する循環水だけを所望温度まで加熱することのできる加熱手段としての電気ヒータ24を取り付けたことで、装置の初期立ち上げ時に、蒸発器13から圧縮機5へと流下するヒートポンプの熱媒体を時間遅れなく瞬時に所定温度まで昇温することができる。
【0021】
蒸発器13すなわち循環水タンク13内の循環水は、蒸発管21で熱を奪われて冷却される。このように、循環水が冷却されることによって、新たな冷却水を補給する必要がなく、組み合わせ真空ポンプ4で使用する冷却水の量を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、蒸気ボイラ等の蒸気発生源を別途設置することなく、熱交換室で被熱交換物を低圧蒸気によって加熱する低圧蒸気加熱装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 反応釜
2 ジャケット部
3 ヒートポンプ
4 組み合わせ真空ポンプ
5 圧縮機
6 凝縮器
8 加熱用蒸気供給管
9 蒸気トラップ
10 エゼクタ
11 循環路
12 循環水供給管
13 蒸発器
16 蒸気供給管
20 排出管
21 蒸発管
22 蒸気トラップ
24 加熱手段
図1