【実施例1】
【0022】
図1に、本発明に用いるシュー生地(A)及びパン生地(B)の原材料及び配合量(重量部表示)の一例を示した。シュー生地、パン生地の配合及び調
製は、一般的なシュー生地、パン生地の配合及び調
製方法でよい。以下、シュー生地及びパン生地の調
製方法を具体的に説明する。各原料の添加量は、
図1に示す通りである。
【0023】
[
図1(A)シュー生地の調
製]
以下、
図1(A)を参照してシュー生地の調
製方法を説明する。
先ず、
図1のa(油脂、水、牛乳、食塩)を加熱して沸騰させる。次に、沸騰したaにb(薄力粉、強力粉)を撹拌しながら投入し、低速で30秒、中高速で2〜3分間撹拌を継続して混合物を得る。撹拌速度は、一般的な生地の調
製速度であって、当業者において周知、慣用されている範囲でよい。以下同じ。
【0024】
その後、8割程度の
図1c(液卵)を複数回に分けて前記混合物に添加する。添加する毎に低速で30秒、中高速で3〜4分間撹拌する。最後にcの残りのd(重曹、炭案)を溶かした上で、前記混合物に添加し、低速で30秒、中高速で2〜3分間撹拌する。
【0025】
ここでは、
図1(A)の油脂は、月島食品工業株式会社製「シューファンデR」を使用したが、油脂としてはシュー生地に使用されるバター、マーガリン、その他シュー用油脂調
製品を使用することもできる。
【0026】
[
図1(B)パン生地の調
製]
・ミキシング
以下、
図1(B)を参照してパン生地の調
製方法を説明する。
パン生地は、一般的なパン生地で常法によって調
製すればよい。ここでは、ストレート法を用いた。
図1(B)の全て原材料を容器に投入し、撹拌する。例えば、低速で2分間、中速で5分間、さらに低速で2分間、中速で6分間、高速で1分などである。このときのパン生地温度は、27℃であった。
・発酵
パン生地の発酵は、27℃、湿度75%で60分間行った。なお、本発明では、パン生地の発酵工程を必須とする。
【0027】
次に、シュー生地利用食品の生地の調
製について、
図2を参照して説明する。
・実施例1
図1の(A)で調
製し粗熱を除去したシュー生地(A)100重量部と、
図1の(B)で調
製したパン生地(B)40重量部を撹拌、例えば中高速2〜3分間、する。その後、パンの製造における一般的な発酵工程をとることなく、フライに供する。一般的な発酵工程とは、生地の雰囲気温度、湿度、発酵時間などのパラメータの管理をし、生地を膨化させるために行うものである。
【0028】
このように調
製したシュー生地(A)とパン生地(B)との関係は、
図2実施例1重量%の欄に示すように、パン生地中の小麦粉重量に対して約476重量%であった。
【0029】
また、シュー生地とパン生地の混合時の温度は25〜35℃の範囲が好ましい。混合時の温度が低いとシュー生地利用食品のボリュームが出にくく、外観も略球形になりにくい。
【0030】
なお、シュー生地とパン生地を撹拌し、シュー生地利用食品生地を調
製した後にフライに供すまでの時間に極僅かな発酵が進行すると思われるが、このような発酵現象は、前記パラメータを管理していない状態で進行するものであるから、本願出願では発酵工程とは言わない。
【0031】
一方、シュー生地と発酵済みのパン生地を混合した後に発酵工程を採用すると、混合生地がダレ、フライ後に略球形が確保できない。また、そのようなものの食感は、揚げパンのような食感であり、上述の新規な食感とはほど遠いものである。従って、シュー生地と発酵済みのパン生地の混合からフライまでの時間もなるべく短くすることが望ましい。
【0032】
・比較例1
比較例1は特許文献1の実施例3段落0019に記載の通り調
製した。そして、シュー生地のパン生地への配合割合は、
図2比較例1重量%に示したように約150%であり、実施例1(476重量%)より極めて少ない。さらに、比較例1は、特許文献1に記載のように、フロアタイム45分の発酵工程を経ている。これらの点が、本発明と特許文献1との形状及び食感に大きな差が生じる要因である。
【0033】
[フライ]
・実施例1
その後、所定量分割する、実施例1ではグラシン紙に100g絞りだした。そして、油(190℃)で、10分間揚げた。
・比較例1
油(180℃)で、3分間揚げた。
【0034】
図3に、本発明のシュー生地利用食品の製造
方法のフローをまとめた。シュー生地とパン生地(発酵)を別個に調
製し、それぞれ、所定の割合で混合し、その後は発酵工程を特別設けることなく、油中でフライする。それによって、外観は略球形で、内部には大きめの空洞が散在する従来にないシュー生地利用食品が製造できる。
【0035】
シュー生地及びパン生地は、一般的な配合でよい。なお、シュー生地とパン生地の混合割合は、上述の範囲であることが好ましい。
【0036】
次に、フライした実施例1のシュー生地利用食品と比較例1(特許文献1実施例3明細書段落0019)のドーナツの写真を
図4に示し、外観、内部形状を対比する。
【0037】
フライ後の外観は、実施例1では
図4(A)(B)に示すように略球形であり、他方比較例1では
図4(C)(D)に示すようにやや上下に圧縮した扁平であり、明ら
かに異なる外観を示した。また、外皮は、実施例1では硬く(断面外周の一層黒みが強い部分)、内部組織と明確に区別され、極めてサクサクした食感である。他方比較例1の外皮では一般的なドーナツと同程度のパサパサした食感で、食感における内部組織との境界も明確でなかった。
【0038】
内部形状(断面)においては、実施例1では
図4(B)に示すように内部に大きめの空洞が多数散在し、他方比較例1では
図4(B)に示すように一般的な焼成パン程度の小さな空洞(微細空洞)が密に形成されるにすぎず、明ら
かに異なる内部形状を示した。
【0039】
食感においては、実施例1は、パサパサ感はなく、ソフトでもなく、内部に厚膜が形成あれ、みずみずしく、しっとり、そして歯切れが良く、弾力のある食感で、外皮は従来のドーナツにないパリッとした食感である。他方比較例1では特許文献1段落0019に記載の通りであり、全く異なる食感を示した。
【実施例2】
【0040】
以下、シュー生地とパン生地の混合比率、パン生地中の小麦粉に対するシュー生地の添加量(重量%)を試験した。その結果を
図5に、その試験の内何点かについてフライ後の外観写真及び断面写真
図6に示した。
図6の写真と
図5の対応は、
図5第2行目に示した。
【0041】
食感総合評価は、熟練したパネラーが内部組織のみずみずしさ、しっとり感、歯切れ、空洞と空洞との間の組織(膜)の膜厚感(もっちり感)を、総合的に評価し、◎優、○良、△可、×不可で評価した。
【0042】
比較例2はシュー生地のみをフライしたもので、外観は略球形に仕上がるものの内部はいくつかの大空洞で構成され、食感は油っぽいシューパフであった。比較例3はパン生地のみをフライしたもので、従来の揚げパンである。これらは、いずれも本発明の形状、食感呈するものではなかった。
【0043】
図5、6の試験の結果、本発明のシュー生地の適切なパン生地への配合割合は、パン生地中の小麦粉重量に対して20〜1700重量%、好ましくは50〜1100重量%、より好ましくは300〜500重量%の範囲であった。
【0044】
シュー生地の混合重量%が20重量%より少ないと本発明の特徴である膜厚感、モッチリ感が十分に発揮されず、みずみずしさ、しっとり感がなくなり、パサパサ感が増す。一方、1700重量%より多いと大空洞が形成され、膜厚感、モッチリ感がなくなり、パサパサ感が増し、望ましくない。