特許第5917267号(P5917267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917267
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】発熱量検出方法及び発熱量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 17/06 20060101AFI20160422BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   G01K17/06
   H05K7/20 N
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-100928(P2012-100928)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-228300(P2013-228300A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】512110695
【氏名又は名称】株式会社 サーマルデザインラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】512110709
【氏名又は名称】梶田 欣
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】国峯 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】梶田 欣
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−063261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 17/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装された電子部品に、吸熱量を変更可能な冷却器を設け、
前記冷却器の吸熱量を変化させつつ、前記冷却器の吸熱量、前記電子部品の温度、及び外気温を複数回測定し、それら複数の測定結果に基づいて前記電子部品の発熱量を求める
ことを特徴とする発熱量検出方法。
【請求項2】
前記冷却器は、内部を流れる冷却媒体により前記電子部品を冷却するとともに、前記冷却媒体の流量を変化させることで前記吸熱量を変更可能なものであり、
前記冷却器の吸熱量を、前記冷却器に流入される前記冷却媒体の温度、前記冷却器から排出される前記冷却媒体の温度、及び前記冷却媒体の流量に基づいて求める
請求項1に記載の発熱量検出方法。
【請求項3】
前記冷却器は、一端部が前記電子部品に接触する棒状の熱伝導部材と、同熱伝導部材の他端部に冷却媒体として外気を送風するファンとを備え、前記ファンの回転数を変更することで前記吸熱量を変更可能なものであり、
前記冷却器の吸熱量を、前記熱伝導部材の一端部及び他端部のそれぞれの温度差に基づいて検出する
請求項1に記載の発熱量検出方法。
【請求項4】
前記電子部品において前記冷却器と接触している部分の温度を測定するとともに、前記冷却器において前記電子部品と接触していない部分の温度を測定し、
前記電子部品において前記冷却器と接触している部分の温度、及び前記冷却器において前記電子部品と接触していない部分の温度に基づいて前記電子部品の温度を求める
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発熱量検出方法。
【請求項5】
請求項2に記載の発熱量検出方法に基づいて電子部品の発熱量の検出を行う発熱量検出装置であって、
前記冷却器の内部には、前記冷却媒体が流れる管路を拡大させることで形成された冷却ジャケットが設けられ、
前記冷却ジャケットの外壁に形成された前記冷却媒体の流入口及び排出口の間には、それらの間の前記冷却媒体の流れを阻害する阻害壁が設けられる
ことを特徴とする発熱量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装された電子部品の発熱量を検出する発熱量検出方法、及び発熱量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品は高性能化、小型軽量化の流れで素子が高密度で実装されており、故障や不具合の抑制のために熱対策が必要となっている。熱対策のための手法としてシミュレーションを活用した熱設計の需要が高まりつつあるが、これを利用するためには電子部品の発熱量を把握することが不可欠である。従来、電子部品の発熱量を検出する方法としては、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1では、電子部品の消費電力から発熱量を間接的に演算する方法を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−167434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板上に複数の電子部品が実装されている場合、各種電子部品は総合的に動作する。このため、必要な電子部品だけを個別に取り出してその消費電流を測定することは困難である。また、電子部品が実際に動作している場合、その消費電力は動作状態に応じて大きく変化する。このため、電子部品の発熱量をその消費電力から検出することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板に実装された電子部品の発熱量を精度良く検出することのできる発熱量検出方法及び発熱量検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基板に実装された電子部品に、吸熱量を変更可能な冷却器を設け、前記冷却器の吸熱量を変化させつつ、前記冷却器の吸熱量、前記電子部品の温度、及び外気温を複数回測定し、それら複数の測定結果に基づいて前記電子部品の発熱量を求めることを要旨とする。
【0007】
同方法のように、電子部品に冷却器を設けた場合、電子部品から発生する熱の大部分は冷却器により吸収されるが、その一部は基板側に逃げる。すなわち、電子部品の発熱量は冷却器の吸熱量と基板の吸熱量とを加算した値となる。このうち、基板の吸熱量は、電子部品の温度と外気温との差、及び電子部品から基板を経由して外気に至る熱抵抗に基づいて演算することができる。しかしながら、電子部品の温度及び外気温は容易に検出可能であるが、熱抵抗の測定は困難である。よって、冷却器の吸熱量を測定することができれば、未知数は電子部品の発熱量、及び電子部品から基板を経由して外気に至る熱抵抗となる。この点、上記方法のように、冷却器の吸熱量を変化させつつ、冷却器の吸熱量、電子部品の温度、及び外気温を複数回測定すれば、未知数が2つ存在する場合であっても、統計的な手法を用いることで電子部品の発熱量を精度良く求めることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発熱量検出方法において、前記冷却器は、内部を流れる冷却媒体により前記電子部品を冷却するとともに、前記冷却媒体の流量を変化させることで前記吸熱量を変更可能なものであり、前記冷却器の吸熱量を、前記冷却器に流入される前記冷却媒体の温度、前記冷却器から排出される前記冷却媒体の温度、及び前記冷却媒体の流量に基づいて求めることを要旨とする。
【0009】
同方法によれば、冷却媒体の流量を変更するだけで冷却器の吸熱量を容易に変更することができる。また、冷却媒体の吸熱量は、冷却器に流入される冷却媒体の温度と冷却器から排出される冷却媒体の温度との差、冷却媒体の密度、比熱、及び流量から演算可能である。ここで、冷却媒体の密度及び比熱は既知の値を用いることができる。よって、冷却器に流入される冷却媒体の温度、冷却器から排出される冷却媒体の温度、及び冷却媒体の流量を測定すれば、冷却器の吸熱量を容易に検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発熱量検出方法において、前記冷却器は、一端部が前記電子部品に接触する棒状の熱伝導部材と、同熱伝導部材の他端部に冷却媒体として外気を送風するファンとを備え、前記ファンの回転数を変更することで前記吸熱量を変更可能なものであり、前記冷却器の吸熱量を、前記熱伝導部材の一端部及び他端部のそれぞれの温度差に基づいて検出することを要旨とする。
【0011】
同方法によれば、ファンの風量を変更するだけで冷却器の吸熱量を容易に変更することができる。また、熱伝導部材の吸熱量は、その一端部と他端部との温度差、熱伝導部材の断面積、長さ、及び熱伝導率に基づいて演算することができる。ここで、熱伝導部材の断面積、長さ、及び熱伝導率は既知の値を用いることができる。よって、熱伝導部材の一端部及び他端部のそれぞれの温度を測定すれば、冷却器の吸熱量を容易に測定することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発熱量検出方法において、前記電子部品において前記冷却器と接触している部分の温度を測定するとともに、前記冷却器において前記電子部品と接触していない部分の温度を測定し、前記電子部品において前記冷却器と接触している部分の温度、及び前記冷却器において前記電子部品と接触していない部分の温度に基づいて前記電子部品の温度を求めることを要旨とする。
【0013】
電子部品の構造によっては、その温度を直接測定することが難しいことがある。この場合には、上記方法のように、電子部品において冷却器と接触している部分の温度を測定するとともに、冷却器において電子部品と接触していない部分の温度を測定し、それらの温度に基づいて電子部品の温度を求めることが有効である。これにより、電子部品の温度を精度良く求めることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発熱量検出方法に基づいて電子部品の発熱量の検出を行う発熱量検出装置であって、前記冷却器の内部には、前記冷却媒体が流れる管路を拡大させることで形成された冷却ジャケットが設けられ、前記冷却ジャケットの外壁に形成された前記冷却媒体の流入口及び排出口の間には、それらの間の前記冷却媒体の流れを阻害する阻害壁が設けられることを要旨とする。
【0015】
上述のように統計的な手法を用いて電子部品の発熱量を演算する場合、冷却器に流入される冷却媒体の温度と冷却器から排出される冷却媒体の温度との差が生じ易い方が、演算精度が向上する。そして、それらの温度差を大きくするためには、冷却器の冷却効率を向上させることが有効である。この点、上記構成によれば、冷却媒体が冷却器内部の冷却ジャケットに流入すると、冷却媒体と冷却器との接触面積が増加するため、それらの間で熱交換が行われ易くなる。よって、冷却効率が向上する。ところで、冷却ジャケットの内壁に形成された流入口から排出口へと冷却媒体が直接流れてしまうと、冷却媒体が冷却ジャケット全体に行き渡らないため、冷却効率が低下する懸念がある。この点、上記構成によれば、流入口から排出口への冷却媒体の直接的な流れが阻害壁により阻害されるため、冷却媒体が冷却ジャケット全体に行き渡る。このため、冷却効率が更に向上する。これにより、電子部品の発熱量をより精度良く求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発熱量検出方法及び発熱量検出装置によれば、基板に実装された電子部品の発熱量を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の発熱量検出方法についてその原理の一例を示す断面図。
図2】同発熱量検出方法の原理についてその放熱経路を回路的に示す図。
図3】本発明の発熱量検出装置の第1の実施形態についてその構成を示すブロック図。
図4】第1の実施形態について冷却器の分解斜視構造を示す斜視図。
図5図3のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
図6】第1の実施形態について測定器の検出結果の一例を示す図表。
図7】第1の実施形態の変形例についてその構成を示すブロック図。
図8】本発明の発熱量検出装置の第2の実施形態についてその構成を示すブロック図。
図9】第2の実施形態について測定器の検出結果の一例を示す図表。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
(原理の説明)
本発明を利用した発熱量検出装置の第1の実施形態の説明に先立ち、実施形態の原理についてまずは説明する。
【0019】
図1に示すように、基板2に実装されたCPUなどの電子部品1の上面に冷却器3を設け、電子部品1から発せられる熱を冷却器3で吸熱する。冷却器3の内部には、冷却媒体として冷却水が流れる水管が形成されている。よって、電子部品1から冷却器3に伝達された熱は冷却水により吸収される。これにより、電子部品1の温度上昇が抑制され、その動作性能の低下が抑制される。また、冷却水の流量Vmを大きくするほど、冷却水により吸収される熱量が大きくなるため、冷却器3の吸熱量が増加する。よって、電子部品1をより効果的に冷却することができる。このように、冷却器3では、冷却水の流量Vmを変化させることで、吸熱量を変化させることができる。
【0020】
このような冷却構造では、電子部品1から発生する熱の大部分は冷却器3により吸収されるが、その一部は基板2側に逃げる。すなわち、電子部品1の発熱量Qgは、冷却器3の吸熱量Qtと基板2の吸熱量Qbとを加算した値となる。
【0021】
このうち、冷却器3により吸収される熱の大部分は冷却水の上昇に費やされる。よって、冷却器3の吸熱量Qtは以下の式(1)により推定することができる。なお、「Cp」は冷却水の比熱、「ρ」は冷却水の密度、「Vm」は冷却水の流量を示す。また、「Tw1」は冷却器3に流入される冷却水の温度、及び「Tw2」は冷却水から排出される冷却水の温度を示す。
【0022】
Qt=Cp・ρ・Vm・(Tw2−Tw1)・・・(1)
一方、基板2の吸熱量Qbは以下の式(2)により求めることができる。なお、「Rb」は電子部品1から基板2を経由して外気に至る熱抵抗、「T0」は電子部品1の温度、「Ta」は外気温を示す。
【0023】
Qb=(T0−Ta)/Rb・・・(2)
以上により、電子部品1の発熱量Qgは、以下の式(3)により求めることができる。
Qg=Qt+Qb
=Cp・ρ・Vm・(Tw2−Tw1)+(T0−Ta)/Rb・・・(3)
なお、冷却器3に流入される冷却水の温度Tw1及び外気温Taが略同等と仮定すると、式(3)は以下の式(4)のように変形することが可能である。
【0024】
Qg=Cp・ρ・Vm・(Tw2−Ta)+(T0−Ta)/Rb・・・(4)
したがって、電子部品1から発せられる熱の放熱経路を回路的に図示すると図2に示すようになる。図2では、「1/(Cp・ρ・Vm)」を「Rp」で示している。
【0025】
ところで、冷却水の比熱Cp及び密度ρは既知の値を用いることができる。また、冷却水の流量Vm、冷却水の排出時温度Tw2、電子部品1の温度T0、及び外気温Taは各種センサで測定することができる。結局、式(4)では、電子部品1の発熱量Qg、及び熱抵抗Rbが未知数となる。
【0026】
そこで、冷却水の流量VmをVm(1),Vm(2),…と変化させることで冷却器3の吸熱量Qtを変化させる。そして、流量Vm(1),Vm(2),…のそれぞれで、冷却水の排出時温度Tw2(1),Tw2(2),…、電子部品1の温度T0(1),T0(2),…、及び外気温Ta(1),Ta(2),…をセンサにより測定する。これにより、式(4)を満たす式を以下の式(4)’,(4)’’,…に示すように2個以上用意する。
【0027】
Qg=Cp・ρ・Vm(1)・{Tw2(1)−Ta(1)}+{T0(1)−Ta(1)}/Rb・・・(4)’
Qg=Cp・ρ・Vm(2)・{Tw2(2)−Ta(2)}+{T0(2)−Ta(2)}/Rb・・・(4)’’



そして、これらの式を満たす発熱量Qg及び熱抵抗Rbの値を統計的に算出すればよい。例えば各式間での発熱量Qgの残差の二乗和を最小とするように熱抵抗Rbを決定する最小二乗法を利用すれば、熱抵抗Rbを効率的に、しかも精度良く求めることができる。そして、求めた熱抵抗Rbを式(4)’,(4)’’,…のいずれかに代入すれば、電子部品1の発熱量Qgを求めることができる。
【0028】
以下、この原理を利用した発熱量検出装置の第1の実施形態について図3図5を参照して説明する。
(実施形態)
図3に示すように、本実施形態でも、基板2に実装されたCPUなどの電子部品1の上面に冷却器3が設けられている。電子部品1及び冷却器3の間には、それらの熱抵抗を小さくすべく、熱伝導グリス4が塗布されている。また、冷却器3の上面には、外気への放熱を抑制するために断熱材5が設けられている。
【0029】
冷却器3は銅などの高い熱伝導率を有する金属部材からなる。図4に冷却器3の分解斜視構造を示す。図4に示すように、冷却器3は、底面が開口した箱状の本体部30、及び本体部30の底面に組み付けられる底板部31を備えている。図3に示すように本体部30に底板部31が組み付けられたとき、本体部30の内壁及び底板部31により冷却ジャケットRが区画形成される。また、図4に示すように、本体部30の両側壁には筒状の流入管32及び排出管33がそれぞれ設けられている。流入管32の内部管路32aが冷却ジャケットRに連通されることで冷却ジャケットRの外壁に流入口32bが形成されている。また、排出管33の内部管路33aが冷却ジャケットRに連通されることで冷却ジャケットRの外壁に排出口33bが形成されている。冷却ジャケットRは管路32a,33aを拡大した形状を有している。これにより、流入管32から流入口32bを通じて冷却ジャケットR内に冷却水が流入すると、冷却水と冷却器3との接触面積が増加するため、それらの間で熱交換が行われ易くなる。よって、冷却効率が向上する。冷却ジャケットR内に流入された冷却水は熱を吸収した後、排出口33bから排出管33を介して排出される。
【0030】
図5は、図3のA−A線に沿った断面構造を示したものである。図5に示すように、本体部30の排出口33bにはメッシュ34が固定して設けられている。このメッシュ34により、冷却水が冷却ジャケットRから排出口33bを介して管路33aに流れ込む際に攪拌される。よって、冷却器3から排出される冷却水の温度が均一化される。なお、図3及び図4では、便宜上、メッシュ34の図示を割愛している。
【0031】
図4に示すように、底板部31の上面には、冷却水の流れる方向に伸びる複数のフィン31aが形成されている。このフィン31aにより、冷却水の流れを阻害することなく、冷却水と底板部31との接触面積を増やすことができるため、それらの間で熱交換が行われ易くなる。よって、冷却効率が向上する。
【0032】
また、底板部31の上面には、フィン31aの中央部に阻害壁31bが形成されている。図5に示すように、阻害壁31bは、流入口32b及び排出口33bの間に位置するように配置されている。これにより、流入口32bから冷却ジャケットR内に冷却水が流入したとき、冷却水が阻害壁31bに衝突する。このため、流入口32bから排出口33bへの冷却水の直接的な流れが阻害壁31bにより阻害され、冷却水が冷却ジャケットR全体に行き渡る。このため、冷却効率が更に向上する。
【0033】
一方、図3に示すように、発熱量検出装置には、冷却水としての水が貯留されたタンク6、タンク6と冷却器3の流入管32とを接続する配管7、及びタンク6と冷却器3の排出管33とを接続する配管8が設けられている。配管7の途中には、冷却水の流量を変更可能な電動ポンプ9が設けられている。タンク6に貯留された冷却水は電動ポンプ9により汲み上げられて冷却器3へと供給される。冷却器3から排出された冷却水は配管8を介してタンク6へと戻される。こうした冷却水の循環を通じて電子部品1が冷却される。
【0034】
また、この発熱量検出装置には各種センサが設けられている。例えば電子部品1には、その温度T0を検出する温度センサ10が設けられている。配管7において流入管32との接続部付近には、冷却器3に流入される冷却水の温度(流入時温度)Tw1を検出する温度センサ11が設けられている。本実施形態では、タンク6の水温が外気温にほぼ等しいこと、また冷却器3に流入される前の冷却水の温度はタンク6の水温にほぼ等しいことに着目して、温度センサ11により検出される流入時温度Tw1を外気温として用いる。配管8において排出管33との接続部付近には、冷却器3から排出された冷却水の温度(排出時温度)Tw2を検出する温度センサ12が設けられている。温度センサ10〜12は例えば熱電対により構成される。配管8の途中には、冷却水の流量Vmを検出する流量センサ13が設けられている。これら各センサ10〜13の出力は測定器20に取り込まれている。
【0035】
測定器20は、ユーザの操作に基づいて各センサ10〜13の出力を取り込むとともに、それらの出力から得られる温度T0,Tw1,Tw2及び流量Vmの検出結果を記憶する。そして、測定器20は、それらの検出結果に基づいて電子部品1の発熱量Qgを演算する。
【0036】
次に、本実施形態の発熱量検出装置の動作例(作用)について説明する。
ユーザは電動ポンプ9の流量VmをVm(1),Vm(2),…に設定しつつ測定器20を操作し、各流量に対応する温度T0,Tw1,Tw2の検出結果を図6に示すように測定器20に記憶させる。測定器20は、図6に示す流量Vm(1),Vm(2),…に対応するそれぞれの検出結果から上記式(4)を満たす発熱量Qg及び熱抵抗Rbを求める。詳しくは、測定器20は、流量Vm(1),Vm(2),…のそれぞれに対応する検出結果から得られる上記式(4)’,(4)’’,…から最小二乗法などの統計的な手法を利用して熱抵抗Rbを決定する。なお、式(4)’,(4)’’,…では外気温Taに代えて流入時温度Tw1を用いる。また、測定器20は、決定した熱抵抗Rbを用いて上記式(4)’,(4)’’,…のいずれかから発熱量Qgを演算する。このような発熱量検出方法によれば、電子部品1の発熱量Qgを精度良く検出することができる。
【0037】
ところで、このような手法を用いて電子部品1の発熱量Qgを求める場合、冷却水の流入時温度Tw1及び排出時温度Tw2の間で差が生じ易い方が、発熱量Qgを精度良く求めることができる。そして、それらの温度差を大きくするためには、冷却器3の冷却効率を向上させることが有効である。この点、本実施形態では、図3に示すように冷却器3の内部に冷却ジャケットRを形成したり、図5に示すように冷却器3にフィン31aや阻害壁31bを形成することで冷却器3の冷却効率が高められている。よって、発熱量Qgの検出精度が向上する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の発熱量検出方法及び発熱量検出装置によれば、以下のような効果が得られる。
(1)冷却器3の吸熱量Qtを変化させて、電子部品1の温度T0、冷却器3に流入される冷却水の温度Tw1、冷却器3から排出される冷却水の温度Tw2、冷却水の流量Vmを複数回測定した。そして、それらの測定結果に基づいて電子部品1の発熱量Qgを求めた。これにより、電子部品1の発熱量Qgを精度良く検出することができる。
【0039】
(2)冷却器3では、内部を流れる冷却水により電子部品1を冷却するとともに、冷却水の流量Vmを変化させることで吸熱量Qtを変更可能とした。そして、冷却器3に流入される冷却水の温度Tw1、冷却器3から排出される冷却水の温度Tw2、及び冷却水の流量Vmに基づいて冷却器3の吸熱量Qtを求めた。これにより、冷却器3の吸熱量Qtを容易に検出することができる。
【0040】
(3)冷却器3の内部には、冷却水が流れる管路32a,33aを拡大した形状からなる冷却ジャケットRを形成した。また、冷却ジャケットRの外壁に形成された冷却水の流入口32b及び排出口33bの間には、それらの間の冷却水の流れを阻害する阻害壁31bを設けた。これにより、冷却器3の冷却効率が向上するため、冷却水の流入時温度Tw1及び排出時温度Tw2の間で差が生じ易くなる。よって、電子部品1の発熱量Qgを精度良く求めることが可能となる。
【0041】
(4)冷却ジャケットRの外壁の排出口33bにはメッシュ34を固定して設けた。これにより、冷却ジャケットR内の冷却水が排出口33bを介して排出される際に冷却水が攪拌されるため、冷却水の温度が均一化される。よって、温度センサ12により検出される冷却水の排出時温度Tw2をより適切に検出することができる。
【0042】
(変形例)
続いて、第1の実施形態の変形例について図7を参照して説明する。
電子部品1の構造によっては、その温度を直接検出することが難しい場合がある。そこで本変形例では、図7に示すように、電子部品1と冷却器3との間に温度センサ14のセンシング部14aを挟み込み、電子部品1と冷却器3との間の温度T1を温度センサ14で検出する。また、冷却器3の上面に温度センサ15のセンシング部15aを固定し、冷却器3の温度T2を温度センサ15で検出する。そして、温度センサ14の検出温度T1及び温度センサ15の検出温度T2に基づいて電子部品1の温度を求める。以下、その詳細を説明する。
【0043】
電子部品1と冷却器3との間には熱抵抗が存在すると考えられるため、温度センサ14の検出温度T1は、電子部品1の温度T0と冷却器3の温度T2との中間の温度であると推定される。単純に、温度センサ14の検出温度T1が電子部品1の温度T0と冷却器3の温度T2との平均温度になっていると仮定すると、それらの間には以下の式が成立する。
【0044】
T1=(T0+T2)/2
これを変形すると以下の式(5)が得られる。
T0=2・T1−T2・・・(5)
そこで、上記式(4)で用いられる電子部品1の温度T0として、温度センサ14の検出温度T1、及び温度センサ15の検出温度T2から式(5)に基づいて求められる温度T0を用いる。このような方法であれば、電子部品1の温度T0を直接検出することが難しい場合でも、その温度T0を精度良く求めることができる。
【0045】
<第2の実施形態>
(原理の説明)
続いて、本発明を利用した発熱量検出装置の第2の実施形態の説明に先立ち、実施形態の原理についてまずは説明する。
【0046】
図8に示すように、冷却器3は、一端部35aが電子部品1に接触した棒状の熱伝導部材35、熱伝導部材35の他端部35bに固定されるフィン36、及びフィン36に外気を送風するファン37を備えている。この冷却器3では、ファン37から送風される外気によりフィン36を介して熱伝導部材35が冷却される。よって、電子部品1に発生する熱が熱伝導部材35により効率良く吸収され、電子部品1の温度上昇が抑制される。また、ファン37の回転数(回転速度)Nfを増加させるほど、熱伝導部材35の他端部35bがより冷却されるため、冷却器3の吸熱量が増加する。よって、電子部品1をより効果的に冷却することができる。このように、冷却器3では、ファン37の回転数Nfを変化させることで、吸熱量を変化させることができる。
【0047】
このような冷却構造では、冷却器3の吸熱量Qtは以下の式(6)により推定することができる。なお、「Rc」は熱伝導部材35の熱抵抗、「Ts1」は熱伝導部材35の一端部35aの温度、「Ts2」は熱伝導部材35の他端部35bの温度を示す。
【0048】
Qt=(Ts2−Ts1)/Rc・・・(6)
ここで、熱伝導部材35の熱抵抗Rcは以下の式(7)により求めることができる。なお、「S」は熱伝導部材35の軸方向(図中の矢印aで示す方向)に直交する断面の面積、「L」は熱伝導部材35の軸方向の長さ、「λ」は熱伝導部材35の熱伝導率を示す。
【0049】
Rc=L/(λ・S)・・・(7)
また、基板2の吸熱量Qbは上記式(2)により求めることができる。よって、電子部品1の発熱量Qgは以下の式(8)により求めることができる。
【0050】
Qg=Qt+Qb
=(Ts2−Ts1)/Rc+(T0−Ta)/Rb・・(8)
ところで、熱伝導部材35の断面積S、その長さL、及びその熱伝導率λは既知の値を用いることができるため、熱伝導部材35の熱抵抗Rcは式(7)により予め求めることができる。よって、式(8)では、電子部品1の発熱量Qg、及び熱抵抗Rbが未知数となる。そこで、ファン37の回転数NfをNf(1),Nf(2),…と変化させることで冷却器3の吸熱量Qtを変化させる。そして、ファン37の回転数Nf(1),Nf(2),…のそれぞれで、熱伝導部材35の一端部35aの温度Ts1(1),Ts1(2),…、熱伝導部材35の他端部35bの温度Ts2(1),Ts2(2),…、電子部品1の温度T0(1),T0(2),…、及び外気温Ta(1),Ta(2),…をセンサにより測定する。これにより、式(8)を満たす式を以下の式(8)’,(8)’’,…に示すように2個以上用意する。
【0051】
Qg={Ts2(1)−Ts1(1)}/Rc+{T0(1)−Ta(1)}/Rb・・・(8)’
Qg={Ts2(2)−Ts1(2)}/Rc+{T0(2)−Ta(2)}/Rb・・・(8)’’



そして、これらの式を満たす発熱量Qg及び熱抵抗Rbの値を例えば最小二乗法などの統計的な手法を用いて求める。
【0052】
以下、この原理を利用した発熱量検出装置の第2の実施形態について図8を参照して説明する。
(実施形態)
図8に示すように、本実施形態の発熱量検出装置には、ファン37の駆動を制御するコントローラ40が設けられている。ユーザはコントローラ40を操作することでファン37の回転数Nfを変更することができる。また、熱伝導部材35は銅などの高い熱伝導率を有する金属部材により形成されている。
【0053】
この発熱量検出装置には各種センサが設けられている。例えば発熱量検出装置には、外気温Taを検出する温度センサ16が設けられている。熱伝導部材35の一端部35aには、その温度Ts1を検出する温度センサ17が設けられている。熱伝導部材35の他端部35bには、その温度Ts2を検出する温度センサ18が設けられている。電子部品1には、その温度T0を検出する温度センサ10が設けられている。これら各センサの出力は測定器20に取り込まれている。
【0054】
測定器20は、ユーザの操作に基づいて各センサの出力を取り込むとともに、それらの出力から得られる温度Ta,Ts1,Ts2,T0の検出結果を記憶する。そして、測定器20は、それらの検出結果に基づいて電子部品1の発熱量Qgを演算する。
【0055】
次に、本実施形態の発熱量検出装置の動作例(作用)について説明する。
ユーザはコントローラ40を操作してファン37の回転数NfをNf(1),Nf(2),…に設定しつつ測定器20を操作し、各回転数に対応する温度Ta,Ts1,Ts2,T0の検出結果を図9に示すように測定器20に記憶させる。測定器20は図9に示す温度Ta,Ts1,Ts2,T0の検出結果から上記式(8)を満たす発熱量Qg及び熱抵抗Rbを求める。詳しくは、測定器20は、検出結果から得られる上記式(8)’,(8)’’,…から最小二乗法などの統計的な手法を用いて熱抵抗Rbを決定する。そして、決定した熱抵抗Rbを用いて上記式(8)’,(8)’’,…のいずれかから発熱量Qgを演算する。このような発熱量検出方法によれば、電子部品1の発熱量Qgを精度良く検出することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の発熱量検出方法及び発熱量検出装置によれば、以下のような効果が得られる。
(5)冷却器3の吸熱量Qtを変化させて、外気温Ta、熱伝導部材35の一端部35aの温度Ts1、熱伝導部材35の他端部35bの温度Ts2、及び電子部品1の温度T0を複数回測定した。そして、それらの検出結果に基づいて電子部品1の発熱量Qgを求めた。これにより、電子部品1の発熱量Qgを精度良く検出することができる。
【0057】
(6)冷却器3には、一端部35aが電子部品1に接触する棒状の熱伝導部材35、及び熱伝導部材35の他端部35bに外気を送風するファン37を設けた。そして、ファン37の回転数を変更することで冷却器3の吸熱量を変更可能とした。また、熱伝導部材35の一端部35a及び他端部35bのそれぞれの温度Ts1,Ts2に基づいて冷却器3の吸熱量Qtを求めた。これにより、冷却器3の吸熱量Qtを容易に検出することができる。
【0058】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・第1の実施形態では、冷却水として水を用いたが、例えば不活性液体や不凍液などの適宜の液体を用いてもよい。
【0059】
・第1の実施形態では、冷却水により冷却器3に錆が発生するおそれがある。そこで、冷却器3を錆の発生し難い金属で形成したり、冷却器3の内壁面にめっきなどのコーティングを施すことが有効である。また、冷却媒体として液体に代えて空気などの気体を用いることも錆の抑制に有効である。
【0060】
・第1の実施形態では、冷却器3の形状を適宜変更してもよい。例えば冷却器3からフィン31aや阻害壁31b、メッシュ34を省略してもよい。また、冷却ジャケットRの形状を変更してもよい。
【0061】
・第1の実施形態では、冷却水の流入時温度Tw1を検出する温度センサ11に代えて、タンク6の水温を検出する水温センサや、外気温を検出する温度センサを用いてもよい。
【0062】
・第1の実施形態では、式(4)’,(4)’’,…から発熱量Qg及び熱抵抗Rbを求める方法は任意である。例えば式(4)’,(4)’’の連立方程式を解くことにより発熱量Qg及び熱抵抗Rbを求めてもよい。また、第2の実施形態についても、式(8)’,(8)’’,…から発熱量Qg及び熱抵抗Rbを求める方法は任意である。
【0063】
・第2の実施形態では、熱伝導部材35やフィン36、ファン37の形状を適宜変更してもよい。また、フィン36を省略することも可能である。
・第2の実施形態では、電子部品1の温度を検出する方法として、第1の実施形態の変形例に示した方法を採用してもよい。
【0064】
<付記>
次に、各実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記冷却ジャケットの外壁の前記排出口にはメッシュが固定して設けられる請求項5に記載の発熱量検出装置。同構成によれば、冷却ジャケット内の冷却媒体が排出口を通じて排出される際に冷却媒体が攪拌されるため、冷却媒体の温度が均一化される。よって、冷却器から排出される冷却媒体の温度をより適切に検出することができる。
【符号の説明】
【0065】
R…冷却ジャケット、1…電子部品、2…基板、3…冷却器、31b…阻害壁、32b…流入口、33b…排出口、35…熱伝導部材、35a…一端部、35b…他端部、37…ファン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9