(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管路が新管によって構成される場合、前記凹部は、予め設定された厚さを持つ新管の内面からなる底面と、該新管の内面に予め設定された距離離隔させて突出させた一対の段部とによって形成され、
前記凹部が底部となるように配置して複数の新管を連続させて敷設して構成したことを特徴とする請求項1に記載した管路構造。
前記管路が既設管によって構成される場合、前記凹部は、前記管路の底部を含む内面と、前記管路の内面に於ける底部を中心として予め設定された距離離隔させて管路の長手方向に配置した一対の枕部材とによって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載した管路構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明では、熱源水が流通するジャケットが下水道管の外周面に配置されるため、下水と熱源水との熱交換は下水道管とジャケットを通して行われることとなる。下水道管はコンクリート管であるのが一般的であり、必ずしも効率の良い熱交換を実現し得ない虞がある。
【0007】
また、ジャケットの補修を行う場合、このジャケットが下水道管の上方にのみ配置されていたとしても、所要長さの掘削が必要となる。このため、補修作業が容易ではない虞がある。
【0008】
本発明の目的は、管路を流れる水との熱交換を効率良く行うことができ、補修作業も容易に行うことができる管路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る管路構造は、管路内を流れる水の熱を利用するための管路構造であって、水が流れる管路の底部を含む内面に形成され、該管路の強度に悪影響を与えることのない凹部と、前記凹部に着脱可能に配置され、熱交換媒体が流通する流路を有する流通部材と、前記凹部の内面側の開放部に着脱可能に配置され、該凹部に塊状物が入ることを防ぐ蓋部材と、を有するものである。
【0010】
上記管路構造に於いて、前記管路が新管によって構成される場合、前記凹部は、予め設定された厚さを持つ新管の内面からなる底面と、該新管の内面に予め設定された距離離隔させて突出させた一対の段部とによって形成され、
前記凹部が底部となるように配置して複数の新管を連続させて敷設して構成したことが好ましい。
【0011】
また、前記管路が既設管によって構成される場合、前記凹部は、前記管路の底部を含む内面と、前記管路の内面に於ける底部を中心として予め設定された距離離隔させて管路の長手方向に配置した一対の枕部材とによって形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管路構造では、管路の底部を含む内面に形成された凹部に流通部材を着脱可能に配置すると共に、該凹部の開放部に蓋部材を着脱可能に配置したので、流通部材は管路の底部に配置されることとなり、該管路を流れる水の深さに関わらず、水と熱交換媒体との間で熱交換を行うことができる。
【0013】
即ち、管路の断面形状が正方形や長方形の場合、水は必ず底部を流れるため、効率良く熱交換することができる。また、管路の断面形状が円形で流れる水が下水であるような場合、流れる水の深さは通常管径の1/3程度であり、凹部を管径の1/3程度に相当する部位まで形成しておくことで、効率良く熱交換することができる。更に、上水や農業用水或いは工業用水のように管路を略満水状態で流れる場合、凹部を管路の底部を含む内面の全周にわたって、或いは深さの約80%〜約90%程度に相当する部位まで形成しておくことで、効率良く熱交換することができる。
【0014】
また、流通部材が凹部に着脱可能に配置されると共に蓋部材が凹部の開放部に着脱可能に配置されるため、流通部材を補修する際には、蓋部材を凹部から離脱させて開放した後、開放された凹部から容易に流通部材を離脱させることができる。このため、管路が地中に敷設されている場合でも、特許文献1に記載された発明のように地面を掘削する必要がなく、作業員がマンホールから入り込んで容易に目的の作業を行うことができる。
【0015】
特に、目的の管路を新管によって構成する場合には、該新管を製造する際に内面側に予め設定された間隔を持って一対の段部を形成しておき、これらの段部の間を凹部として利用することができる。これらの段部は、新管を製造する際に段部に対応する形状を形成した内型枠を利用することで形成することが可能であり、また、新管を製造する際に管壁の一部を厚く形成しておき、この厚い部分を切削して形成することも可能である。そして、前記新管の凹部を底部として複数の新管を連続して敷設することで、目的の管路を構成することができる。
【0016】
また、目的の管路が既設管路によって構成される場合、該管路の底部を中心として予め設定された距離だけ離隔させて一対の枕部材を管路の長手方向に配置し、これら一対の枕部材と、該枕部材の間の内面とによって凹部を形成することができる。この場合、既設の管路を利用するので、目的の管路を容易に構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る管路構造について説明する。本発明に係る管路構造は、内部を流れる水が持つ熱を効率良く熱交換して利用することを実現すると共に、管路の清掃や熱交換媒体が流通する流通部材を交換するような補修作業を容易に行えるようにしたものである。
【0019】
本発明に於いて、管路を流れる水の用途について限定するものではなく、目的の管路として、下水道管路、上水道管路、農業用水管路、工業用水管路等を対象とすることが可能である。そして、管路の底部を含む内面に形成した凹部に流通部材を配置し、この流通部材に熱交換媒体を流通させることで、管路内を流れる水との熱交換を行うようにしたものである。
【0020】
このように、本発明では、流通部材を配置する凹部が管路の底部を含む内面に形成されることが必須であり、目的の管路の底部に水が流れていれば、流れる水の用途が如何なるものであっても熱交換を行うことが可能である。従って、下水道管路のように管路内を流れる水量が少なくとも、該水の熱を効果的に熱交換して効率良く利用することが可能である。また、上水道管路や農業用水管路或いは工業用水管路のように、水が満水状態で流れる管路の場合、管路の底部を含む内面に形成する凹部の幅寸法を大きくして熱交換媒体が流通する流路を大きくすることで、より効果的に熱交換することが可能である。
【0021】
上記の如く、目的の管路の用途を限定することがないため、該管路を構成する管の断面形状や材質も限定することはない。即ち、管路を構成する管が、該管路の敷設部位や、管路としての性格、或いは流れる水の性状等の条件に応じた、円形、卵形、正方形、長方形等の断面形状を有するものであっても適用することが可能である。また、管路を構成する管が、鉄筋コンクリート管や鋼管又は鋳鉄管、或いは合成樹脂管等の材質からなるものであっても適用することが可能である。
【0022】
また、対象となる管路が新管によって敷設されたものであるか、既設管路であるかを限定するものではなく、新管による新設の管路、或いは既に敷設されている既設管路、の何れも対象とすることが可能である。
【0023】
目的の管路の底部を含む内面に形成された凹部は、管路の強度に悪影響を与えることがない。即ち、管路の底部を含む内面に形成された凹部の底面と、管の外周面、との間の寸法(管の厚さ)は、目的の管路に対して予め設定された強度(管の厚さ)を保有している。
【0024】
特に、凹部の深さや幅寸法は、該凹部に着脱可能に配置される流通部材の寸法に応じて設定される。即ち、凹部の深さや幅寸法は限定するものではなく、目的の管路の口径や、流れる水の水量、想定される温度等の条件に対応させて適宜設定される。
【0025】
例えば、目的の管路が下水道用の管路である場合、該管路を流れる水は通常管径の1/3の深さとなるように設定される。このため、凹部の幅寸法を管径の1/3の深さに対応するように設定することで、効率の良い熱交換を実現することが可能である。また、目的の管路が上水や農業用水或いは工業用水である場合、該管路を流れる水は略満水状態となる。このため、凹部の幅寸法を管路の内面の全周或いは約80%〜約90%に設定することで、効率の良い熱交換を実現することが可能である。
【0026】
また、目的の管路が新管を連続して埋設することで新たに敷設するものである場合、新管を製造する際に、管路の強度に悪影響を与えることのない凹部を形成しておくことが可能である。この場合、予め厚さが設定された新管の内面に、予め設定された凹部の深さと対応する高さを有する一対の段部を、予め設定された幅寸法に対応させて対向させて形成することで、凹部を形成することが可能である。前記段部は、新管が振動成形或いは遠心成形によって製造されるコンクリート管である場合、内型枠を段部に応じた形状に形成しておくことで、新管の成形と同時に凹部を形成することが可能である。また、新管を、段部を含んだ厚さで成形しておき、凹部に対応する部分を切削を含む機械加工することによって、凹部を形成することが可能である。
【0027】
また、目的の管路が既設管路である場合、該管路の内面に、予め設定された凹部の深さに対応した高さを有する一対の枕部材を、予め設定された凹部の幅寸法に対応した寸法に対向して配置することで、凹部を形成することが可能である。特に、目的の管路が既設管路である場合、劣化の状態によっては該既設管路の強度そのものが低下している虞があるため、目的の既設管路の劣化状態に対応させて最適な凹部を形成することが必要である。
【0028】
例えば、目的の既設管路が敷設後まもなく、初期の強度を保持しているような場合、一対の枕部材を既設管路の内部に挿入して予め設定された間隔を持って対向させ、この状態で夫々の枕部材を既設管路の内面に固定することで凹部を形成することが可能である。枕部材を既設管路の内面に固定する手段については限定するものではなく、接着による固定や、ボルト等を利用した機械的な固定等を適宜選択して採用することが可能である。特に、枕部材をボルトを利用して既設管路の内面に固定する場合、ボルトの頭部が枕部材から突出することがないように、埋め込むことが好ましく、ボルトの頭部を埋め込んだ穴にコーキング剤を充填しておくことが好ましい。
【0029】
また、目的の既設管路が劣化して強度が低下しているような場合、該既設管路の内面を補修すると共に強度を向上させた後、枕部材を配置して凹部を形成することが可能である。特に既設管路の内面を補修すると共に強度を向上させる際の補修工法を限定するものではなく、通常行われている補修工法を選択的に採用することが可能である。このような補修工法としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を含浸させたライナーを既設管路の内面に圧接させた状態で硬化させる工法がある。また、合成樹脂の成形体からなる長尺状の部材を既設管路の内面に螺旋状に巻き付けた後、セメントミルクを充填して一体化させる工法もある。更に、合成樹脂製のセグメントを既設管路の内面に取り付けた後、セメントミルクを充填して一体化させる工法もある。そして、前記した工法は、何れも好ましく採用することが可能である。
【0030】
劣化した既設管路を上記の如くして補修した後、一対の枕部材を既設管路の内部に挿入して底部に配置すると共に予め設定された間隔を持って対向させ、この状態で夫々の枕部材を既設管路の内面に固定することで、底部を含む凹部を形成することが可能である。この場合、既設管路の内面が補修材によって構成されるため、枕部材を固定する手段としては、接着によることが好ましい。
【0031】
管路の底部を含む内面に枕部材を挿入して固定することで凹部を形成する場合、枕部材の材質は限定するものではなく、管路の内面を構成する材質(コンクリート、鋼、合成樹脂等)との関係を考慮して採用することが好ましい。特に、流れる水による劣化を考慮した場合、枕部材はコンクリートの成形品、或いはFRPや合成樹脂の成形品であることが好ましい。
【0032】
凹部に配置される流通部材は、内部に熱交換媒体を流通する流路を有している。流路の数や断面積等は限定するものではなく、目的の管路を流れる水の流量や温度、及び利用しようとする熱量等の条件を考慮して適宜設定することが好ましい。特に、流通部材が複数の流路を有する場合、流路の末端に折返用の流通管を設けて隣接する流路と接続すると共に少なくとも二つの流路をヒートポンプに接続し、或いは各流路の両端に合流管を接続すると共に該合流管をヒートポンプに接続して構成することが好ましい。
【0033】
上記流通部材は凹部に対し着脱可能に配置されるため、適度な可撓性を有することが好ましい。また、流通部材は、管路を流れる水と流路を流れる熱交換媒体との間で効率良く熱交換を行うために、熱伝導性が良いものであることが好ましく、アルミニウム管や銅管或いは厚さの薄い鋼管を含む金属管、或いは合成樹脂製の管等の管を用いることが可能である。更に、流通部材として、内部に複数の流路が形成された長尺状の合成樹脂の成形体であると好ましい。
【0034】
流通部材に形成される熱交換媒体を流通させる流路は、管路を流れる水と接触する面積が大きいことが好ましい。このため、前記通路の断面形状は、楕円形、長円形、台形等、真円よりも一方方向に伸びた形状であることが好ましい。このような形状を持った流路を有する流通部材は、金属製の管である場合には扁平な状態にプレスして形成することが可能である。また、合成樹脂製の管である場合には、流通部材を成形する際に流路を目的の形状とすることが可能である。
【0035】
流通部材を凹部に対し着脱可能に配置する際の着脱構造については限定するものではなく、流通部材を単に凹部に挿入しておくだけて良い。即ち、流通部材には熱交換媒体が流通し、大きい重量を有しているため、凹部に挿入しておくだけで移動する虞はない。しかし、バラバラな複数の管によって流通部材を構成するような場合、これらの管が一体化するように互いに拘束しておくことが好ましい。
【0036】
凹部に対し流通部材を装着した後、この凹部の内面側の開放部に蓋部材が着脱可能に配置される。開放部に蓋部材を装着したとき、凹部には流通部材と管路の内面との間、或いは隣接する流通部材の間に隙間が形成されるが、このような隙間は、そのまま放置しておいても良く、粘性のある物体を充填して閉塞しても良い。
【0037】
凹部に形成された隙間を放置した場合、水と共に流れる塊状の物体が凹部に入り込んで隙間を閉塞して滞留する虞がある。そして、塊状の物体が滞留した場合、水の流れを阻害すると共に流通部材の内部を流通する熱交換媒体との熱交換を阻害する虞がある。このため、凹部の内面側に形成された開放部に配置された蓋部材によって水と共に流れる塊状の物体が凹部に入り込むことを防ぐように構成されていることが好ましい。
【0038】
上記の如く、蓋部材は、上記したように塊状の物体が凹部に入り込むことを防ぐ機能を有するものであれば良く、形状や細部の構成を限定するものではない。このため、蓋部材には塊状の物体が入り込むことのない細かい穴が形成されていても良い。このように、細かい穴が形成されることによって、凹部には管路の水が入り込んで流れることで、より効率の良い熱交換を実現することが可能となる。
【0039】
また、凹部に於ける流通部材と管路の内面との間、或いは隣接する流通部材の間に形成された隙間に、適度な粘性を有し且つ熱伝導性が良いグリス状の物体を充填しても良い。この場合、隙間が閉塞されるため、管路を流れる水が凹部に入り込むことがなく、且つ水との間で良好な熱交換を行うことが可能である。
【0040】
上記の如くして、管路の底部を含む内面に形成された凹部の内面側の開放部に蓋部材を配置したとき、凹部の長手方向の両端部に形成される開口部は閉塞されることなく、開放した状態となっている。
【0041】
また、蓋部材は凹部に対し着脱されるために適度な可撓性を有することが好ましい。例えば、管路が円形や卵形である場合、蓋部材は少なくとも管路の内周面に沿った方向への可撓性を有することが好ましい。このため、蓋部材は薄い鋼板やステンレス鋼板等の鉄系金属板、或いは薄いアルミニウム板や銅板等の非鉄系金属板、更に、合成樹脂板等によって構成することが可能である。
【0042】
また、蓋部材を凹部の内面側の開放部に取り付ける場合、蓋部材の凹部の幅と対応する部位にばね性を持った複数の片を突設しておき、この片を凹部に嵌合させて該凹部の側面に圧接させるようにすることが可能である。また、蓋部材の幅方向に複数の取付片を形成しておき、この取付片を管路の内面に沿わせてボルト等によって固定することも可能である。
【0043】
本発明に於いて、目的の管路の底部を含む内面に形成する凹部の長さは限定するものではなく、該管路に設けた1又は複数のマンホールに跨って形成することが可能である。また、凹部に対し着脱可能に配置する流通部材の長さも限定するものではなく、形成された凹部の全長にわたって配置しても良く、途中で折り返して配置しても良い。
【0044】
凹部に配置された流通部材が有する流路はヒートポンプに接続され、目的の管路を流れる水の熱が、熱交換媒体を介して熱エネルギーとして取り出される。
【0045】
次に、図を用いて本実施例に係る管路構造について説明する。本実施例に於いて、目的の管路は、既設の下水道用の管路であって、敷設後の経過期間が短く充分に初期の強度を維持しているものとする。
図1に示す、目的の管路Dを構成する管1は鉄筋コンクリート管として成形されており、内面1bの劣化は進行しておらず、予め設定された初期の強度を維持している。
【0046】
図1に示すように、管路Dを構成する管1の底部1aを含む内面1bには、凹部Aが形成されており、該凹部Aに流通部材Bが着脱可能に配置されると共に、内面側の開放部3(
図2(a)、(b)参照)に蓋部材Cが着脱可能に配置されている。
【0047】
凹部Aは、管1の底部1aを含む内面1bに一対の枕部材2を挿入し、これらの枕部材2を対向させると共に予め設定された凹部Aの幅寸法(開放部3の幅寸法)に対応させて配置することで構成されている。枕部材2は管1の内面に配置されて凹部Aを形成するものであり、管1の断面形状や口径、及び凹部Aの深さや幅寸法等の条件に応じた形状と寸法を有している。
【0048】
本実施例では、管1の断面形状が円形であるため、枕部材2の外周面2aは管1の内面1bと等しい円弧状に形成されており、内周面2bは管路Dに於ける水の流れを阻害することがないように管1の内面1bに接続し得る曲線状に形成されている。このため、外周面2aと内周面2bの曲率が異なることから、両面2a、2bは頂点2cで互いに接続している。また、枕部材2の凹部Aに対向する端面2dは、予め凹部Aに設定された深さと等しい高さを持つ平坦な面として形成されている。従って、枕部材2は、三日月形を頂点から離隔した位置で切断したような断面形状を有して形成されている。
【0049】
枕部材2の断面に於ける端面2dと内周面2bとのなす角度は限定するものではなく、略直角であって良く、直角以外の角度であって良い。本実施例では、前記角度は鋭角に形成されており、一対の枕部材2を対向して配置することで凹部Aを形成したとき、互いの端面2dが対向して凹部Aの両側面はあり溝状に形成されている。
【0050】
上記の如くして形成された凹部Aには流通部材Bが着脱可能に配置されている。本実施例に於いて、流通部材Bは、内部に熱交換媒体となる例えば不凍液を流通させる流路4aを有する例えば銅管等の管4を複数(本実施例では6本)並列させることによって構成されている。これらの管4は互いに独立しており、作業員が個々の管4を凹部Aに挿入することで装着し、且つ凹部Aから取り出すことで離脱させることが可能である。
【0051】
一対の枕部材2の端面2dを対向させてあり溝状の側面を有し、且つ流通部材Bが配置された凹部Aには蓋部材Cが着脱可能に配置され、この蓋部材Cによって凹部Aの内面側の開放部3が覆われている。
【0052】
本実施例に於いて、蓋部材Cは、
図4(a)に示すように、凹部Aの内面側の開放部3の幅寸法よりも充分に大きい幅寸法を持った蓋体5aと、蓋体5aの裏面に配置され開放部3の幅寸法と略等しい間隔を有し且つ長手方向に所定の間隔を持って蓋体5aに固定された係止片5bと、によって構成されている。
【0053】
蓋体5aは、厚さが約1mm〜2mm程度のステンレス鋼板を用いて構成されている。また、係止片5bは、蓋体5aと同じステンレス鋼板を用いて、枕部材2の内周面2bと端面2dとのなす角度と略等しい角度を持って折り曲げられており、この係止片5bを蓋体5aの裏面に溶接等の手段で固定することで、ばね性を発揮し得るように構成されている。尚、前述したように、蓋体5aとして、防錆処理した鋼板やアルミニウム板或いは銅板等の金属板、合成樹脂板を用いることが可能なことは当然である。
【0054】
従って、流通部材Bを配置した凹部Aの開放部3に蓋部材Cを対向させ、係止片5bを枕部材2の端面2dに当接させるようにして嵌め込むことで、開放部3に装着することが可能である。また、蓋体5aの自由端を把持して引き上げることで蓋部材Cを凹部Aから離脱させることが可能である。
【0055】
上記の如く構成された管路構造では、既設の管路Dを構成する管1の底部1aを含む内面1bに、一対の枕部材2を配置することによって凹部Aを形成し、この凹部Aに流通部材Bを挿入して配置し、更に、凹部Aの開放部3に蓋部材Cを装着することで構成することが可能である。そして、流通部材B或いは他の部位を補修する必要が生じたとき、作業員が管路Dに入り込んで蓋部材Cの蓋体5aを把持して引き上げることで、該蓋部材Cを凹部Aの開放部3から離脱させ、その後、流通部材Bを凹部Aから離脱させることで、容易に補修することが可能である。
【0056】
特に、流通部材Bが管路Dの底部を含む内面に配置されていることから、該流通部材Bは直接管路Dを流れる水と接触することとなり、効率的な熱交換を実現することが可能である。従って、管路D内を流れる水の持つ熱を有効に利用することが可能である。
【0057】
上記した実施例では、管路Dを構成する管1として劣化が進行していない既設の管路に適用した場合について説明したが、
図2に示すように、管1として新管10又は劣化が進行して内部を補修した更生管11に適用することも可能である。
【0058】
図2(a)は、断面が正方形に成形された新管10を示している。この新管10に於ける管路Dを構成したとき、該管路Dの底部となる内面10aに凹部Aが形成されている。即ち、内面10aは同図に一点鎖線で示す予め設定された厚さに加えて、凹部Aの深さに対応させた一対の段部10bに相当する厚さを持って形成されている。このように、新管10は予め設定された厚さが確保されることによって、凹部Aを形成しても、この凹部Aが管路Dの強度に悪影響を与えることはない。
【0059】
新管10の内面10aに形成された段部10bは、予め設定された凹部Aの深さに対応した高さを有しており、また端面10cの間隔は、予め設定された凹部Aの幅寸法に対応している。このように、新管10の内面10aに一対の段部10bを形成することによって、該新管10の底部を含む内面に予め設定された深さと幅寸法を有する凹部Aが形成されている。
【0060】
従って、新管10の内面10aに形成された凹部Aに流通部材Bを配置し、この凹部Aの開放部3に蓋部材Cを装着することで、新管10からなる管路Dを流れる水との熱交換を行うことが可能である。
【0061】
新管10のように断面が正方形である場合、又は長方形である場合、
図4(b)に示す蓋部材Cを利用することが可能である。この蓋部材Cは、凹部Aの幅寸法よりも充分に大きい幅寸法を有する蓋体5aと、該蓋体5aの両側に形成された複数の係止片5cと、によって構成されている。特に、係止片5cは、新管10の側面10dの上部に到達し得る長さを有しており、端部近傍に夫々ボルト穴5dが形成されている。
【0062】
そして、蓋体5aを凹部Aの開放部3に対向させた後、係止片5cを段部10bの内面に沿わせると共に新管10の側面10dに沿わせて折り曲げ、夫々のボルト穴5dにボルトを挿通して該ボルトを側壁10dに締結することで、蓋部材Cを凹部Aの開放部3に装着することが可能である。そして、新管10の側壁10dに締結したボルトを離脱させることで、蓋部材Cを凹部Aの開放部3から離脱させることが可能である。
【0063】
同図(b)は、劣化した管路Dの内面を更生ライナー12によって被覆することで更生した更生管11を示している。更生ライナー12としては、光硬化性樹脂を含浸させたスリーブを用いており、この更生ライナー12を管路Dに引き込んだ後、該管路Dの内面に密着させ、内部に挿入した光照射装置によって光を照射して、該更生ライナー12を硬化させることで更生管11を構成している。
【0064】
そして、更生管11の内面11bに、前述の実施例と同様にして一対の枕部材2を配置することで、管路Dの底部11aを含む内面に凹部Aを形成すると共に、流れる水との熱交換を行うことが可能である。
【0065】
図3は、凹部Aに着脱可能に配置される流通部材Bの例を示すものである。
【0066】
図3(a)は、内部に流路14aを有する複数の管14を並列させて袋体15に挿入した状態で、該袋体15によって互いに拘束して構成した流通部材Bを示している。管14としては合成樹脂製の流路14aが長円状に扁平したものを用いており、袋体15としては例えば熱収縮性の合成樹脂からなる袋を用いている。このため、流通部材Bは適度な可撓性を有している。このように構成された流通部材Bでは、凹部Aに挿入することによって、該凹部Aに一度に複数の流路14aを形成することが可能である。
【0067】
図3(b)は、内部に複数の流路16aを並列させて形成した成形体16からなる流通部材Bを示している。この成形体16はゴムを含む合成樹脂によって成形されており、可撓性と弾力性を有している。このように構成された流通部材Bでは、凹部Aに挿入することによって、該凹部Aに一度に複数の流路16aを形成することが可能である。また、流通部材Bを凹部Aに挿入して開放部3に取り付けた蓋部材Cによって、流通部材Bを構成する成形体16を押圧させたとき、この押圧に応じて成形体16を変形させると共に、流路16aを扁平に変形させることも可能である。