(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明が適用される電動式旋回装置が搭載されるショベルの一例であるハイブリッド型ショベルの側面図である。本発明による電動式旋回装置は、ショベルに限られず、作業要素が取付けられた旋回体を有する作業機械や建設機械等に搭載することができる。
【0013】
図1に示すハイブリッド型ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、運転室としてキャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。ショベルの運転者はキャビン10内に乗り込んで、操作レバー等を操作することで、ショベルによる作業を行なう。
【0014】
図2は、
図1に示すハイブリッド型ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
【0015】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0016】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド型ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0017】
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器を含む蓄電系120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0018】
図2に示すハイブリッド型ショベルには、旋回機構2を電動にした電動式旋回装置が搭載されている。すなわち、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。また、旋回機構2と、旋回機構2を駆動するための旋回用電動機21と、旋回用電動機21に電力を供給するインバータ20と、インバータの駆動を制御するコントローラ30とで、電動式旋回装置が構成される。
【0019】
コントローラ30は、ハイブリッド型ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0020】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0021】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100(
図3参照)を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。また、コントローラ30は、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ)の充電率SOCを算出する。
【0022】
図3は、蓄電系120の回路図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータとDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
【0023】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18A、及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
【0024】
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0025】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18Aを介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
【0026】
昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための電源接続端子104、インバータ105を接続するための出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用のコンデンサ107を備える。昇降圧コンバータ100の出力端子106とインバータ18A,20との間は、DCバス110によって接続される。
【0027】
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子104に接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
【0028】
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
【0029】
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、
図4には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を用いてもよい。
【0030】
電源接続端子104及び出力端子106は、キャパシタ19及びインバータ18A,20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
【0031】
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の電圧値Vcapを検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧値Vdcを検出する。平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ107によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持されている。
【0032】
キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段である。すなわち、キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子に流れる電流値I1を検出する。一方、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタの負極端子(N端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段である。すなわち、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタ19の負極端子に流れる電流値I2を検出する。
【0033】
昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。
【0034】
DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102B、インバータ105を介して供給される回生電力がDCバス110からキャパシタ
19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。
【0035】
本実施形態では、キャパシタ19の正極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン114に、当該電源ライン114を遮断することのできる遮断器としてリレー130−1,130−2が設けられる。リレー130−1は、電源ライン114へのキャパシタ電圧検出部112の接続点115とキャパシタ19の正極端子の間に配置されている。リレー130−1はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン114を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
【0036】
また、キャパシタ19の負極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン117に、当該電源ライン117を遮断することのできる遮断器としてリレー130−2が設けられる。リレー130−2は、電源ライン117へのキャパシタ電圧検出部112の接続点118とキャパシタ19の負極端子の間に配置されている。リレー130−2はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン117を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、リレー130−1とリレー130−2を一つのリレーとして正極端子側の電源ライン114と負極端子側の電源ライン117の両方を同時に遮断してキャパシタを切り離すこととしてもよい。
【0037】
なお、実際には、コントローラ30と昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとの間には、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bを駆動するPWM信号を生成する駆動部が存在するが、
図3では省略する。このような駆動部は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
【0038】
本実施形態では、上述のように、電動式旋回装置により上部旋回体3を旋回させる。電動式旋回装置は、上部旋回体3を旋回させるための旋回機構2と、旋回機構2を駆動するための旋回用電動モータとして旋回用電動機21と、旋回用電動機21に電力を供給するインバータ20と、インバータ20の駆動を制御するための制御部としてコントローラ30とを含んでいる。
【0039】
そして、本実施形態による電動式旋回装置は、例えば、ショベルの運転状態における異常を検出する異常検出手段を有する。異常検出手段が検出する異常には、ショベルの運転機能や動作状態に関する異常や故障が含まれ、また、ショベルの周囲の環境における異常も含まれる。すなわち、異常検出手段が検出する異常は、操作者に当該異常を通知しておくべきものであれば、どのような異常や故障であってもよい。
【0040】
なお、電動式旋回装置は、電気駆動される電動モータの応答性が良く、油圧式旋回駆動装置に比較し、電動モータに供給する電力を細かく制御することで、容易に所望の振動を発生させることができる。したがって、電動式旋回装置を採用することで、旋回装置の動作を細かく制御することができるという利点がある。
【0041】
本実施形態による電動式旋回装置は、異常検出手段が異常を検出すると、異常が発生したことを操作者に通知するために、旋回用電動機21が旋回方向に振動を発生するように旋回電動機21へ供給する駆動信号を生成する。具体的には、電動式旋回装置の制御部として機能するコントローラ30は、異常検出手段が異常を検出すると、旋回用電動機21に供給する駆動指令に振動成分を加え、振動成分を有する駆動指令をインバータ20に供給する。
【0042】
インバータ20は、振動成分が加えられた駆動指令に基づいて旋回用電動機21に駆動電流を供給する。これにより、旋回用電動機21が発生する動力に振動が発生し、旋回している上部旋回体3に僅かではあるが操作者が感じとれる程度の振動が発生する。この振動は、上部旋回体3の旋回動作に支障をきたさない程度の振動にしておくことが好ましい。上部旋回体3のキャビン10内でショベルを操作している操作者は、上部旋回体3の振動を体で感じ取ることで、何らかの異常あるいは故障が発生したことを認識することができる。
【0043】
すなわち、上部旋回体3の旋回運動に振動を発生させることで、操作者に異常の発生を通知し警告を与えることができる。振動で通知する事項は、本実施形態ではショベルやその周囲の環境に生じた異常や故障であるが、異常の発生に限られず、ショベルの運転状態など、操作者に通知すべき他の情報であってもよい。
【0044】
操作者に通知すべき他の情報として、例えば、ショベルの周囲環境における異常が挙げられる。すなわち、ショベルでの作業領域内(上部旋回体3に取付けられたブーム4、アーム5、バッケット6の旋回範囲内)に人が立ち入った場合は危険であるので、周囲環境に異常が生じたとして、上部旋回体3を振動させて操作者に警告あるいは通知する。
【0045】
上部旋回体3内の操作者は、バケット6が視野に入るようにバケット6の方向のみを見ていることが多く、操作者の視野外で旋回範囲内に人が立ち入ったとしても、操作者はそのような周囲環境の異常を認識することができない。そこで、本実施形態による電動式旋回装置では、ショベルでの作業領域内に人が立ち入ったことを異常検出手段により検出すると、上部旋回体3の旋回運動に振動を発生させて操作者に通知する。
【0046】
ショベルの運転中は運転音や作業音が大きく、警告音を発しても、操作者は音を聞き取り難い場合が多い。また、表示による警告は操作者が表示部や表示灯などをみていなければ通知できない。しかし、振動で通知することとすれば、上部旋回体3のキャビン10内で操作している操作者は、上部旋回体3の振動を常に感じることができるので、操作者が通知や警告に気がつかないことは無い。
【0047】
また、作業領域に立ち入った人にとっても、自分が危険な作業領域に入り込んだことを認識させることができる。すなわち、ショベルの上部旋回体3に通常では無い振動が発生すると、作業領域に立ち入った人も異常な振動を聴覚や視覚で感じ取り、自分が異常な環境内にいることを感じ取る。そこで、作業領域に立ち入った人も周囲を良く見渡して、自分がショベルの作業領域内に立ち入っていることを認識することができる。
【0048】
上述のように、ショベルの周囲環境における異常を検出する異常検出手段は、例えば、ショベルに設けられたビデオカメラとすることができる。作業中にビデオカメラで上部旋回体3の周囲を撮像し、作業領域に人が立ち入ったことや障害物が作業領域内に入り込んだことを画像認識することで、異常を検出する。
【0049】
異常検出手段としては、ショベル自体の異常や故障を検出するものであれば、どのような検出器であってもよい。例えば、エンジン11の冷却水温度を検出する温度センサが異常検出手段であってもよく、その場合はエンジン11の過熱異常を振動で操作者に通知することができる。ここでは特に具体的に説明しないが、異常検出手段で検出する異常や故障は様々なものがあり、既知の異常検出手段を用いることができる。
【0050】
また、振動により警告を与える場合、振動の種類を変えることで、軽度の警告であるか重大な警告であるか、などを区別して通知することができる。振動の種類として、例えば、操作者が体に感じる程度の微振動であれば軽度の警告とし、操作者が不快に感じるもしくは異常な振動であると感じるような振動を重大な警告とすることができる。
【0051】
軽度の警告のための微振動は、例えば、旋回用電動機21のみが振動し、上部旋回体3自体の振動はほとんど無いというような振動である。このような微振動を発生させるには、例えば、比較的高い周波数(10Hz〜数10Hz)の振動としたり、あるいは、小さな振幅の振動とすることができる。
【0052】
一方、重大な警告のための振動は、例えば、操作者が明らかに感じ取れるような振動であり、操作者に対して不快感を与えたり、ショベルが異常であるといった感じを与えるような振動である。このような振動を発生させるためには、上部旋回体3自体を振動させるような強い振動、あるいは上部旋回体3が共振を起こすように、機械定数である上部旋回体の固有振動数に近い周波数の振動である。このような振動の周波数の範囲としては、数Hz〜10Hz程度の比較的低い周波数である。また、このような振動の振幅も上述の微振動の振幅よりは大きな振幅とし、微振動との相違が分るようにする。
【0053】
このように、機械定数に応じて振動の振幅又は周波数を変えることで、異なる種類の振動とすることができる。振動の振幅及び周波数の組み合わせを変えることで、様々な種類の振動を発生させることができる。
【0054】
振動の種類を変える方法として、周波数及び振幅を変える方法以外に、振動波形を変える方法がある。例えば、コントローラ30がインバータ20に供給する駆動指令に加える振動成分を、例えば、矩形波、サイン波、あるいは三角波等の異なる波形とすることで、駆動指令に基づいて生成される旋回用電動機21の出力における振動のモードが変化する。これにより、異なるモードの振動が上部旋回体3に発生し、その振動を感じた操作者は、それぞれのモードの振動を区別して振動が何を意味するのかを認識することができる。振動波形は、矩形波、サイン波、及び三角波に限定されることなく、またそれらの波形の組み合わせであってもよい。
【0055】
次に、本実施形態による電動式旋回装置において、振動成分を駆動指令に加えるための制御機能について説明する。振動成分を加えるべき駆動指令としては、旋回用電動機21に供給する電流を制御するための電流値に対する速度指令とトルク指令とが考えられる。
【0056】
まず、速度指令に振動成分を加えて駆動指令を生成するための制御構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4は振動成分を速度指令に加えて駆動指令を生成する際の制御ブロック図である。
【0057】
操作者が旋回操作レバーを操作して上部旋回体3を旋回させるときは、旋回操作レバーの操作量(レバー入力量)が圧力センサ29により検出され、圧力センサ29の出力Pがコントローラ30の速度指令変換部30−1に入力される。速度指令変換部30−1は、圧力センサ29の出力Pに基づいて、旋回用電動機21の回転速度を示す速度指令V1を生成して出力する。
【0058】
一方、異常検出手段40は、異常を検出するとその異常が操作者に通知すべき異常であるかを判別し、操作者に通知すべき異常である場合には、通知又は警報の要否を示す通知信号Nを出力する。通知信号Nは、生成すべき振動の種類を示す種別信号を含んでもよい。通知信号Nはコントローラ30の振動成分生成部30−7に入力される。振動成分生成部30−7は、通知信号Nに基づいて、速度振動成分VC1を生成し出力する。
【0059】
振動成分生成部30−7から出力された速度振動成分VC1は、速度指令変換部30−1から出力された速度指令V1に加算され、速度指令V2が生成される。速度指令V2から現在の旋回用電動機21の速度を示す速度検出信号VD1が減算されて速度指令V3が生成される。速度検出信号VD1は、レゾルバ22からの出力信号に基づいて、旋回動作検出部30−6が生成した、旋回用電動機21の現在の速度を示す信号である。速度指令V3は、PI制限部30−2に入力され、比例積分制御処理が行なわれて速度指令V4が生成され、トルク制限部30−3に出力される。トルク制限部30−3は速度指令V4にトルク制限を加えてトルク電流指令T1を生成する。
【0060】
トルク制限部30−3から出力されたトルク電流指令T1から、電流変換部30−5により生成されたトルク電流値T2が減算されてトルク電流指令T3が生成され、比例積分制御部(PI制御部)30−4に入力される。比例積分制御部30−4は、トルク電流指令T3に比例積分制御処理を行ない、駆動指令D1を生成して、インバータ20に出力する。
【0061】
インバータ20は、駆動指令D1に基づいて、旋回用電動機21に駆動電流を供給する。この駆動電流には、振動成分生成部30−7が生成した振動成分が載せられており、旋回用電動機21は駆動電流の振動成分により振動しながら駆動される。したがって、旋回用電動機21により駆動される上部旋回体3に振動が発生し、この振動を操作者が感じることとなる。
【0062】
次に、トルク指令に振動成分を加えて駆動指令を生成するための制御構成について、
図5を参照しながら説明する。
図5は振動成分を速度指令に加えて駆動指令を生成する際の制御ブロック図である。
【0063】
操作者が旋回操作レバーを操作して上部旋回体3を旋回させるときは、旋回操作レバーの操作量(レバー入力量)が圧力センサ29により検出され、圧力センサ29の出力Pがコントローラ30の速度指令変換部30−1に入力される。速度指令変換部30−1は、圧力センサ29の出力Pに基づいて、旋回用電動機21の回転速度を示す速度指令V1を生成して出力する。
【0064】
速度指令V1から、上述の旋回動作検出部30−6が生成した速度検出信号VD1が減算され、速度指令V5が生成される。速度指令5は、PI制限部30−2に入力され、比例積分制御処理が行なわれて速度指令V6が生成され、トルク制限部30−3に出力される。トルク制限部30−3は速度指令V6にトルク制限を加えてトルク電流指令T4を生成する。
【0065】
一方、上述のように、異常検出手段40は、異常を検出するとその異常が操作者に通知すべき異常であるかを判別し、操作者に通知すべき異常である場合には、通知又は警報の要否を示す通知信号Nを出力する。通知信号Nは、生成すべき振動の種類を示す種別信号を含んでもよい。通知信号Nはコントローラ30の振動成分生成部30−8に入力される。振動成分生成部30−8は、通知信号Nに基づいて、トルク振動成分TC1を生成し出力する。
【0066】
振動成分生成部30−8から出力されたトルク振動成分TC1は、トルク制限部30−3から出力されたトルク電流指令T4に加算され、トルク電流指令T5が生成される。そして、トルク電流指令T5から、上述の電流変換部30−5により生成されたトルク電流値T2が減算されてトルク電流指令T6が生成され、比例積分制御部30−4に入力される。比例積分制御部30−4は、トルク電流指令T6に比例積分制御処理を行ない、駆動指令D1を生成して、インバータ20に出力する。
【0067】
インバータ20は、駆動指令D1に基づいて、旋回用電動機21に駆動電流を供給する。この駆動電流には、振動成分生成部30−8が生成した振動成分が載せられており、旋回用電動機21は駆動電流の振動成分により振動しながら駆動される。したがって、旋回用電動機21により駆動される上部旋回体3に振動が発生し、この振動を操作者が感じることとなる。
【0068】
なお、本実施形態では、速度指令変換部30−1、比例積分制御部30−2,30−4、トルク制限部30−3、電流変換部30−5、旋回動作検出部30−6、及び振動成分生成部30−7,30−8はコントローラ30に含まれるものとして説明したが、コントローラ30とは別に、これらの機能を実行する制御装置を設けてもよい。そのような制御装置は、コントローラ30と同様に、CPU、ROM,RAM等を有し、速度指令変換部30−1、比例積分制御部30−2,30−4、トルク制限部30−3、電流変換部30−5、旋回動作検出部30−6、及び振動成分生成部30−7,30−8の機能を実行する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態による電動式旋回装置は、旋回用電動機21の駆動を制御して上部旋回体3に振動を発生させる。このように振動を発生するため、操作者が操作する操作レバー自体には振動を発生させない。したがって、操作者が操作レバー自体の振動を感じること無く、操作レバーを誤操作したり、操作レバーから手を離して操作を中断してしまうような状況にはならないので、振動による誤操作が発生する可能性が低く、安全である。また、振動を発生させるために特別な部品を追加する必要が無く、通知又は警報手段を安価に実現することができる。
【0070】
また、ショベル等では、ブームやアーム等のアタッチメント重量が大きく、慣性が大きいため、上部旋回体を振動させても、その振動はアタッチメントにおいて減衰してしまい、アタッチメントの先端部分(すなわちバケットの部分)はほとんど振動しない。このため、上部旋回体を振動させても、バケットに積載された積載物には影響はほとんど無い。したがって、バケットに積載された積載物には影響を与えずに、キャビン内の操作者に異常の発生を確実に通知することができる。