(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ニッケル又はニッケル合金層がニッケル−リン合金から構成され、該ニッケル−リン合金中のリン濃度が4質量%以上20質量%以下である請求項1または2に記載の導電性微粒子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.導電性金属層
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する少なくとも一層の導電性金属層から構成されており、前記導電性金属層はニッケル又はニッケル合金で形成される層を含む。そして、このニッケル又はニッケル合金層は、その破断面に現れる粒界を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した時、平均厚みと平均粒界幅の比(平均厚み/平均粒界幅)(以下、「高さ割合」ともいう)が0.1以上5未満であることを特徴とする。このような低い高さ割合の(換言すれば、幅広の)粒界構造は、後述するように簡便に形成可能である。しかも幅広の粒界構造を形成すると、圧縮応力を適度に分散することが可能なためか、ニッケル又はニッケル合金層形成前後で粒子の圧縮破壊点の低下を抑制でき、異方性導電材材料の導電性を高めることができる。なお、粒界とは、破断面に認められる線を意味する。
【0012】
前記高さ割合(平均厚み/平均粒界幅)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上である。また、4.5以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。高さ割合が大きい粒界構造は、特許文献2の様に煩雑な2段階製膜法によって製造されるのに対して、高さ割合が小さい粒界構造は、1段階製膜法によって簡便に製造できる。そして高さ割合が小さくなるほど、粒界が幅広になって、圧縮応力を適度に分散でき、ニッケル又はニッケル合金層形成後の粒子の圧縮破壊点荷重値の低下を抑制できる。なお高さ割合が小さくなり過ぎて、実質、粒界が認められない様な構造になると、再び煩雑な2段階製膜法によって製造する必要が生じるため、本願では、高さ割合の下限を定めた。
【0013】
平均粒界幅は、例えば、25nm以上、好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。平均粒界幅が大きいほど、圧縮破壊点荷重の低下を抑制できる。平均粒界幅の上限は特に限定されないが、例えば、500nm以下であってもよく、300nm以下、或いは200nm以下であってもよい。
【0014】
粒界幅は、結晶粒間で揃っているのが好ましい。粒界幅が揃っているほど、圧縮破壊点荷重の低下を抑制できる。粒界幅の標準偏差は、例えば、10nm以下であることが好ましく、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは6nm以下である。粒界幅の標準偏差の下限は特に限定されないが、例えば、1.7nm以上であってもよく、1.8nm以上、或いは1.9nm以上であってもよい。
【0015】
ニッケル又はニッケル合金層の平均厚みは、例えば、50nm以上、好ましくは100nm以上、さらに好ましくは120nm以上であり、500nm以下、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは250nm以下である。なお本発明のニッケル又はニッケル合金層では、通常、結晶粒は一層で周方向(横方向)に並んでおり、結晶粒の高さがニッケル又はニッケル合金層の厚みになる。よって、結晶粒の高さの平均値の好適な範囲が上記平均厚みと同様の範囲である。
【0016】
また、平均粒界幅と個数平均基材粒子径との比(平均粒界幅/個数平均基材粒子径)は、例えば、好ましくは0.001〜0.20、より好ましくは0.003〜0.10、さらに好ましくは0.005〜0.07、特に好ましくは0.01〜0.03である。平均粒界幅と個数平均基材粒子径の比率が前記範囲であると、ニッケル又はニッケル合金層形成後の粒子の圧縮破壊強度の低下を抑制する効果が一層高くなる。
【0017】
平均厚みとは、ニッケル又はニッケル合金層の断面のSEM写真において、任意の点における層厚みを測定した時の算術平均値を意味する。写真点数及び測定点数が多くなるほど平均値が真値に収斂する為、写真点数及び測定点数はこの収斂が認められる範囲で適宜設定でき、例えば、測定点数は5点以上10点未満の範囲で設定してもよい。
平均粒界幅及び粒界幅の標準偏差は以下のように求められた値として定義される。
ニッケル又はニッケル合金層の断面のSEM写真において、層厚さ方向中央(基材粒子の表面から、上記平均厚みの1/2の距離)を通り、基材粒子の円周に平行な円弧を引く。該円弧は各粒界と交叉する(交叉する点を粒界交点という)が、隣り合う粒界交点間の距離を測り、該距離を各粒界それぞれの粒界幅とする。得られた粒界幅の値より、平均粒界幅及び標準偏差を求めることができる。なお、平均粒界幅は、単純平均値(算術平均値)である。
粒界幅の測定点数は多くなるほど平均粒界幅及び標準偏差の値は真値に収斂する為、測定点数はこの収斂が認められる範囲で適宜設定でき、例えば、5点以上10点未満の範囲で設定してもよい。
【0018】
前記ニッケル又はニッケル合金層は、ニッケルで形成してもよく、ニッケル合金で形成してもよい。ニッケル合金を使用する場合、ニッケル合金中のニッケル含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
前記ニッケル合金としては、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−Ti等のNi含有金属間化合物、及びNi又はNi含有金属間化合物と半金属又は非金属元素との合金(例えばリン合金、ホウ素合金。特にNi−P、Ni−B)が好ましく、これらの中でもリン合金(特にNi−P)が好ましい。
【0019】
前記ニッケル合金がリン合金(特にNi−P)の時、ニッケル合金中のリン濃度は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。適度のリンを含有させると、所定の粒界構造を得やすくなる。一方、ニッケル合金中のリン濃度が高くなりすぎると、ニッケル合金層の導電性が低下するおそれがある。従ってニッケル合金中のリン濃度は、20質量%以下とすることが好ましく、16質量%以下がより好ましく、14質量%以下がさらに好ましい。なお、リン濃度は、ニッケル合金中のニッケルとリンとの合計質量に対するリン質量の比率であり、後述する様に、メッキ液組成やメッキ液のpHを適宜コントロールすること等によって調節することができる。
【0020】
導電性金属層は、ニッケル又はニッケル合金層以外の他の金属層を有していてもよい。他の金属層を構成する金属は特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、パラジウム、銀、銅、スズが導電性の観点から好ましい。また、コスト的な観点からは、銅又は銅合金(CuとFe、Co、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Ag、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも一種の元素との合金、好ましくはAg、Sn、Znとの合金);銀又は銀合金(AgとFe、Co、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも一種の元素との合金、好ましくはAg−Sn、Ag−Zn);スズ又はスズ合金(たとえばSn−Ag、Sn−Cu,Sn−Cu−Ag,Sn−Zn、Sn−Sb、Sn−Bi−Ag、Sn−Bi−In、Sn−Au、Sn−Pb等)等が好ましい。
【0021】
前記他の金属層を形成する場合、該他の金属層は、ニッケル又はニッケル合金層の外側に形成するのが好ましい。この様な積層型導電性金属層のうち特に好ましいものとしては、内側層から順に、ニッケル又はニッケル合金層−金又は金合金層となる層、ニッケル又はニッケル合金層−パラジウム又はパラジウム合金層となる層、ニッケル又はニッケル合金層−パラジウム又はパラジウム合金層−金又は金合金層となる層、ニッケル又はニッケル合金層−銀又は銀合金層となる層等が挙げられる。
【0022】
導電性金属層は、基材粒子表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、基材粒子表面の全てが導電性金属層で被覆され、かつ導電性金属層の表面に実質的な割れがないことが好ましい。ここで、「基材粒子表面の全てが導電性金属層で被覆され、かつ実質的な割れがない」とは、電子顕微鏡(倍率1000倍)を用いて任意の10000個の導電性微粒子の表面を観察したときに、導電性金属層の割れ、及び、基材粒子表面の露出が、実質的に目視で観察されないことを意味する。
【0023】
2.導電性金属層の形成方法
導電性金属層は、基材粒子表面に無電解メッキを施すことによって形成できる。
【0024】
無電解メッキに供される基材粒子には、メッキを施す前に予め触媒化処理を施しておくのが好ましい。また、基材粒子自体が親水性を有さず、導電性金属層との密着性が良好でない場合は、触媒化処理前に、エッチング処理しておくことが好ましい。
【0025】
エッチング処理工程では、クロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;その他市販の種々のエッチング剤等を用いて、基材粒子の表面を親水化し、その後の無電解メッキ液に対する濡れ性を高める。また、微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解メッキ後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図る。
【0026】
触媒化処理工程では、例えば、基材粒子表面に貴金属イオンを捕捉させた後、これを還元して前記貴金属を基材粒子表面に担持させ、基材粒子の表面に次工程の無電解メッキの起点となりうる触媒層を形成させる(捕捉還元法)。基材粒子自体が貴金属イオンの捕捉能を有さない場合、触媒化を行う前に、表面改質処理を行うことも好ましい。表面改質処理は、表面処理剤を溶解した水又は有機溶媒に、基材粒子を接触させることで行うことができる。
【0027】
捕捉還元法では、例えば、塩化パラジウムや硝酸銀のような貴金属塩の希薄な酸性水溶液に、必要に応じてエッチングした基材粒子を浸漬させた後、基材粒子を分離し水洗する。引き続き水に分散させて、これに還元剤を加えて貴金属イオンの還元処理を行う。触媒化処理で用いられる還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジン、ホルマリン等が挙げられる。還元剤は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
また、触媒化処理では、スズイオン(Sn
2+)を含有する溶液に、必要に応じてエッチングした基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させ感受性化処理を施した後、パラジウムイオン(Pd
2+)を含有する溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等を用いてもよい。スズイオン含有溶液、パラジウムイオン含有溶液に基材粒子を浸漬する際の液温、浸漬時間は、各イオンが樹脂粒子に十分に吸着できれば特に限定されず、適宜調整すればよいが、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0029】
無電解メッキ工程では、前記触媒化工程にて貴金属触媒を吸着させた触媒化樹脂粒子表面に、導電性金属層を形成する。具体的には、還元剤と所望の金属塩を溶解したメッキ液中に触媒化基材粒子を浸漬することにより、貴金属触媒を起点として、メッキ液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成する。この無電解メッキ工程によってニッケル又はニッケル合金層を形成する場合、初期薄膜形成工程などの予備工程を行わず、1段階でニッケルメッキ又はニッケル合金メッキを施すことが推奨される。2段階でニッケルメッキ又はニッケル合金メッキを施すと、結晶粒界が存在しない層が形成されたり、高さ割合が大きすぎる結晶粒が形成されたりして、本願の所定の結晶粒構造を形成することが難しくなる。以下、1段階での無電解メッキ工程を例にとって説明する。
【0030】
無電解メッキ工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、触媒化基材粒子を、メッキ処理を行う水性媒体に十分分散させておくことが好ましい。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常撹拌装置、高速撹拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波や分散剤(界面活性剤等)を併用してもよい。
【0031】
次に、所望の導電性金属の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを無電解メッキ液に添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
【0032】
前記導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として例示した金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。例えば、導電性金属層としてニッケル又はニッケル合金層を形成する場合には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等を無電解メッキ液に含有させればよい。これらのニッケル塩は一種のみを用いてもよいし二種以上を併用してもよい。また、導電性金属層として銅層を形成する場合には、塩化銅、硫酸銅、酢酸銅、炭酸銅、硝酸銅等の銅塩等を無電解メッキ液に含有させればよい。銅合金層を形成する場合には、前記銅塩に加えて、銅合金層に含ませる金属の塩(例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩)を無電解メッキ液に含有させればよい。無電解メッキ液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0033】
前記還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、グリオキシル酸、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、導電性金属層にリンを含有させるには、還元剤として次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩を用いることが好ましい。例えば、次亜リン酸塩の添加量を調整することにより、導電性金属層のリン濃度を調整することができる。
【0034】
前記錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、ヒドロキシ酢酸、乳酸、グルコン酸、及びそれらの塩等のヒドロキシモノカルボン酸類、グリシン、アラニン、及びそれらの塩等のアミノモノカルボン酸類等のモノカルボン酸類;酒石酸、イミノ二酢酸、酒石酸、リンゴ酸、及びそれらの塩等のジカルボン酸類;グリセリン、D−ソルビトール、ズルシトール等のポリオール類;エチレンジアミン、トリエタノールアミン、アルキルアミン等のアミン類;その他のアンモニウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、2,2’−ビピリジン、ピロリン酸;等が挙げられる。なお、これらの化合物は、アルカリ金属塩やアンモニウム塩であってもよい。
【0035】
所望の粒界構造のニッケル又はニッケル合金層を形成する場合、前記錯化剤を二種以上組み合わせて使用することが好ましく、特にアミノ基を含有するモノカルボン酸類及びアミノ基を含有しないジカルボン酸類を必須成分とする組み合わせ、もしくは2価のニッケルとの錯体安定度定数が1.5以上であるアミノ基を含有しないモノカルボン酸類及びアミノ基を含有しないジカルボン酸類を必須成分とする組み合わせを使用することが好ましい。特に好ましいアミノ基を含有するモノカルボン酸類は、グリシン、アラニン、及びそれらの塩等であり、特に好ましいアミノ基を含有しないジカルボン酸類は、酒石酸、リンゴ酸並びに及びその塩等のヒドロキシ基含有ジカルボン酸類であり、特に好ましい2価のニッケルとの錯体安定度定数が1.5以上であるアミノ基を含有しないモノカルボン酸類は乳酸である。
【0036】
錯体安定度定数は、溶液中における錯体の生成しやすさを表す尺度で、平衡状態にある錯体の活量a
ML、錯体を構成する金属イオンの活量a
M及び錯化剤の活量a
Lとの関連を示す量である。金属イオンMと錯化剤Lが反応して錯体を生ずるとき、M+L→MLの反応に対して、錯体の安定度定数kは、各温度、圧力において、
【0037】
【数1】
と定義される。
アミノ基を含有しないモノカルボン酸類において、2価のニッケルとの錯体安定度定数が1.5以上であると、形成される錯体が安定であり、所定の粒界構造を得るのが容易となるため好ましい。
【0038】
アミノ基を含有するモノカルボン酸類とアミノ基を含有しないジカルボン酸類の質量基準の比率(モノカルボン酸/ジカルボン酸)は、例えば、50/50以上、好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、例えば、95/5以下、好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。また、ニッケル錯体の安定度定数が1.5以上のアミノ基を含有しないモノカルボン酸類とアミノ基を含有しないジカルボン酸類の質量基準の比率(モノカルボン酸/ジカルボン酸)は、例えば0/50以上、好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、例えば、95/5以下、好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
【0039】
無電解メッキ液のpHは、ニッケル又はニッケル合金層以外のメッキ層を形成する場合には特に限定されないが、ニッケル又はニッケル合金層を形成する場合には、例えば、4〜14、好ましくは4.1〜6.0、さらに好ましくは4.2〜5.5にするのが推奨される。なお、無電解メッキ液が次亜リン酸塩等のリン化合物を含む場合、無電解メッキ液のpHを調整することにより、導電性金属層のリン濃度を調整することもできる。例えば、無電解メッキ液のpHを低くすることにより導電性微粒子のリン濃度を上げることができる。
【0040】
触媒化処理後の基材粒子を無電解メッキ液に分散、攪拌する際の液温、浸漬時間は、導電性金属層が十分に形成されれば特に限定されず、適宜調整すればよいが、液温は50℃〜90℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0041】
無電解メッキ工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解メッキ液を用いて無電解メッキ工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケル又はニッケル合金メッキを施して第1被覆粒子を得た後、該第1被覆粒子をさらに無電解金メッキ液に投入して金置換メッキを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル又はニッケル合金層を有する導電性微粒子が得られる。
【0042】
導電性金属層の膜厚を調整するには、具体的には、無電解メッキ処理を行う際の基材粒子濃度(処理液あたりの基材粒子の量)や無電解メッキ処理で使用する無電解メッキ液の濃度、pH、あるいは無電解メッキ処理の反応温度等を調整すればよい。例えば、無電解メッキ処理の処理液に対する基材粒子の量を増やしたり、無電解メッキ処理で使用する無電解メッキ液の濃度を薄くしたりすると、導電性金属層の膜厚は薄くなる。
【0043】
なお、無電解メッキ工程に先立って、触媒化基材粒子表面の貴金属触媒を活性化させる活性化工程を設けてもよい。貴金属触媒を活性化させることにより、導電性金属層と基材粒子との密着性を高めることができ、また、無電解メッキにおける金属の析出を促進できる。活性化工程では、触媒化基材粒子を、活性化剤を含有する活性化液(アクセレーター溶液)中に浸漬することにより行う。活性化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア溶液等が挙げられる。
【0044】
3.基材粒子
前記導電性金属層の形成母材となる基材粒子は、特に制限されず、導電性微粒子用の公知の基材粒子やそれを適宜変更した粒子の中から用途に応じて適切な基材粒子を適宜選択すればよい。
従って基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径も特に制限されないが、例えば、1.0μm以上であってもよく、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.2μm以上、より一層好ましくは1.3μm以上であり、例えば、50μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。前記基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、例えば、10.0%以下であってもよく、好ましくは8.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より一層好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下である。
近年の電極構造の微細化に適合させるには、基材粒子の粒径は、より一層微細であってもよく、そのような微細化基材粒子の個数平均粒子径は、例えば、10.0μm以下、好ましくは7.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下が好ましく、より一層細かくても(例えば、3.0μm以下、特に2.8μm以下であっても)よい。
【0045】
基材粒子の形状は特に限定されるものではなく、たとえば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状等のいずれでもよいが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
【0046】
基材粒子の圧縮破壊点荷重値は特に限定されないが、基材粒子の圧縮破壊点荷重値が小さすぎる場合は、電気接続に供する際、導電性微粒子が破壊されやすくなり、電極等との接触面積が十分確保されず、導通性を低下させるおそれがある。この観点から、基材粒子の圧縮破壊点荷重値は、大きいことが好ましい。例えば、10mN以上、好ましくは15mN以上、さらに好ましくは20mN以上である。圧縮破壊点荷重値の上限は特に限定されず、無破壊性であってもよく、100mN以下であってもよく、60mN以下であってもよい。
【0047】
基材粒子の10%K値は特に限定されないが、基材粒子の10%K値が大きすぎる場合は、電極等との接触面積が十分確保されず、導電性微粒子の接続抵抗値が高くなるおそれがある。一方、基材粒子の10%K値が小さすぎる場合は、導電性微粒子とするために導電性金属層を形成する際、もしくは異方性導電材料とするためにバインダー樹脂等に分散させる際など、電気接続に供するまでに基材粒子が変形し、従来の形状を維持できないおそれがある。基材粒子の10%K値は、例えば、基材粒子の10%K値は5,000N/mm
2以上、好ましくは6,000N/mm
2以上であり、例えば、30,000N/mm
2以下、好ましくは25,000N/mm
2以下である。
【0048】
基材粒子を構成する材質も特に限定されないが、基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。前記樹脂粒子としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノシロキサン等が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。これらの中でも、導電性微粒子の異方導電接続の際の接続信頼性を高める点から、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノポリシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、特にビニル重合体が好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形特性に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。
【0049】
3.1.ビニル重合体粒子
前記ビニル重合体は、前記例示のものに限られず、ビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成されるものは全て本願のビニル重合体に含まれ、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0050】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、一分子中に二個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に一個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0051】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に二個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)の中でも、前記1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(ジ(メタ)アクリレート)が特に好ましく、前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0053】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0054】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0055】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が特に好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマー、スチレン系多官能モノマー、多官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含む態様が好ましい。さらに好ましくは、スチレン系多官能モノマー及び多官能(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;スチレン系多官能モノマー及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;多官能(メタ)アクリレート及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;である。上記態様において、スチレン系単官能モノマーとしてはスチレンが好ましく、スチレン系多官能モノマーとしてはジビニルベンゼンが好ましく、多官能メタ(アクリレート)としてはジ(メタ)アクリレートが好ましい。従って、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;ジビニルベンゼン及びスチレンを必須構成成分とする態様;ジ(メタ)アクリレート及びスチレンを必須構成成分とする態様が好ましい。
【0057】
前記ビニル重合体粒子は、ビニル重合体の特性を損なわない程度に、他の成分を含んでいてもよい。この場合、ビニル重合体粒子は、ビニル重合体を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0058】
前記他の成分としては、特に限定されないが、ポリシロキサン成分が好ましい。ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入することで、加圧接続時の弾性変形に優れるものとなる。
【0059】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。また、シラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、ビニル重合体とビニル重合体とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0060】
第一の形態(ビニル重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0061】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0062】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0063】
前記ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入する場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して5質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、1000質量部以下が好ましく、より好ましくは750質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0064】
前記ビニル重合体粒子は、構成する単量体成分としてビニル系架橋性単量体やシラン系架橋性単量体の架橋性単量体を含むことが好ましい。この際、ビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、弾性変形と復元力に優れる点から、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。架橋性単量体の割合が上記範囲内であれば、優れた弾性変形特性を維持しつつ、復元力を向上させることができる。架橋性単量体の割合の上限は、特に限定されないが、用いる架橋性単量体の種類によっては、架橋性単量体の割合が多すぎると硬くなりすぎて異方導電接続時に圧縮変形させるために高い圧力が必要となる場合がある。そのため、架橋性単量体の割合は、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0065】
前記ビニル重合体粒子は、例えば、ビニル系単量体を重合することによって製造することができるが、具体的には、(i)ビニル系単量体を重合成分として含む単量体組成物を用いて、従来公知の水性懸濁重合、分散重合、乳化重合する方法;(ii)シラン系単量体を用いてビニル基含有ポリシロキサンを得た後、このビニル基含有ポリシロキサンとビニル系単量体とを重合(ラジカル重合)する方法;(iii)シード粒子に、ビニル系単量体を吸収させた後、ビニル系単量体をラジカル重合する、いわゆるシード重合する方法;が好ましい。
【0066】
前記製造方法(i)では、ビニル系単量体として、前記2つ以上のビニル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物を併用してもよい。前記製造方法(ii)においては、少なくとも前記第三の形態を形成し得るシラン系架橋性単量体を用いることによって、ポリシロキサン骨格が導入されたビニル重合体粒子が得られる。
【0067】
前記製造方法(iii)において、シード粒子としては、非架橋又は架橋度の低いポリスチレン粒子、ポリシロキサン粒子を用いることが好ましい。シード粒子にポリシロキサン粒子を用いることで、ビニル重合体にポリシロキサン骨格を導入できる。
【0068】
ポリシロキサン粒子としては、前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体を含む組成物を、(共)加水分解縮合して得られるポリシロキサン粒子が好ましく、特にビニル基含有ポリシロキサン粒子が好ましい。ポリシロキサン粒子がビニル基を有する場合、得られるビニル重合体粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格がポリシロキサンを構成するケイ素原子を介して結合するため、弾性変形性及び接触圧に特に優れたものとなる。ビニル基含有ポリシロキサン粒子は、例えば、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシランを含むシラン系単量体(混合物)を(共)加水分解縮合することによって製造できる。
【0069】
また、前記ビニル重合体粒子がポリシロキサン骨格を含む場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0070】
3.2.アミノ樹脂粒子
基材粒子としてアミノ樹脂粒子を用いる場合、アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物により構成されるものが好ましい。前記アミノ化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミン等のグアナミン化合物、メラミン等のトリアジン環構造を有する化合物等の多官能アミノ化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能アミノ化合物が好ましく、トリアジン環構造を有する化合物がより好ましく、特にメラミン、グアナミン化合物(特にベンゾグアナミン)が好ましい。前記アミノ化合物は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0071】
前記アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物中、グアナミン化合物を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲であれば、より粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたものとなる。なお、アミノ化合物として、グアナミン化合物のみを用いることも好ましい。
【0072】
アミノ樹脂粒子は、例えば、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることにより得られる。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行う。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下で反応を行うことにより、架橋度を高めることができる。
【0073】
アミノ樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報等に記載のアミノ樹脂架橋粒子及びその製造方法を適用することが好ましい。
【0074】
具体例としては、前記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、該縮合物オリゴマーが溶解又は分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸等の酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂粒子を製造することができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、付加縮合反応を、界面活性剤の存在下で行うことにより、粒度分布のシャープなアミノ樹脂粒子が得られる。
【0075】
3.3.オルガノポリシロキサン粒子
基材粒子としてオルガノポリシロキサン粒子を用いる場合、オルガノポリシロキサン粒子は、ビニル基を含有しないシラン系単量体(シラン系架橋性単量体、シラン系非架橋性単量体)の一種又は二種以上を(共)加水分解縮合することによって得られるものであればよい。前記ビニル基を含有しないシラン系単量体としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン系単量体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0076】
4.導電性微粒子
前記基材粒子に前記導電性金属層を形成することによって得られる本発明の導電性微粒子は、所定の粒界構造を有するため、圧縮破壊点荷重値が基材粒子に比べて低下していない点に特徴がある。導電性微粒子の圧縮破壊点荷重値そのものは、基材粒子の圧縮破壊点荷重値に応じて変化するが、例えば、10mN以上であることが好ましく、より好ましくは15mN以上であり、さらに好ましくは20mN以上である。なお圧縮破壊点荷重値の上限は特に制限されず、無破壊性であってもよいが、例えば、100mN以下であってもよく、特に60mN以下であってもよい。
また基材粒子の圧縮破壊点荷重値と比較した時の破壊点低下率(=導電性微粒子の破壊点荷重値/基材粒子の破壊点荷重値×100)は、例えば、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0077】
また、本発明の導電性微粒子は、粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が5,000N/mm
2以上であることが好ましく、5,500N/mm
2以上であることがより好ましい。また、好ましくは30,000N/mm
2以下であり、より好ましくは25,000N/mm
2以下である。
【0078】
導電性微粒子の個数平均粒子径は、基材粒子の粒子径と導電性金属層の平均厚さに応じて定まり、例えば、1.1μm以上であってもよく、好ましくは1.2μm以上、より好ましくは1.3μm以上、より一層好ましくは1.4μm以上であり、例えば、50μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。またより微粒子を指向する場合には、個数平均粒子径は、例えば、10μm以下、好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下が好ましく、より一層細かくても(例えば、3.2μm以下、特に3.0μm以下であっても)よい。
【0079】
導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、例えば、10.0%以下であってもよく、好ましくは8.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より一層好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下である。
【0080】
5.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。異方性導電材料としては、導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
【0081】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0082】
バインダー樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0083】
なお、異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0084】
異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0085】
異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0087】
なお以下の例で得られた基材粒子及び導電性微粒子の物性は、以下の様にして評価した。
1.ニッケル合金層の平均厚み、平均粒界幅、及び粒界幅の標準偏差
導電性微粒子0.1gをメノウ鉢に取り、すり潰すことにより導電性金属層を破断させた。すり潰した導電性微粒子のニッケル又はニッケル合金層の厚さ方向破断面を、走査型電子顕微鏡で100,000〜150,000倍の拡大倍率で観察した。
破断面が認められる導電性微粒子5個を任意に選び、任意の点におけるニッケル又はニッケル合金層の厚みを測定し算術平均値を平均厚みとする。
次に、平均粒界幅及び粒界幅の標準偏差は以下のように求めた。
すなわち、ニッケル又はニッケル合金層の厚さ方向破断面(SEM写真)において、厚さ方向中央(基材粒子の表面から、上記平均厚みの1/2の距離)を通り、基材粒子の円周に平行な円弧を引く。該円弧は各粒界と交叉する(交叉する点を粒界交点という)が、隣り合う粒界交点間の距離を測り、該距離を各粒界それぞれの粒界幅(X
n:nは整数)とする。得られたn個の粒界幅の値を算術平均することにより平均粒界幅(X)を求め、また下記式により標準偏差を求めた。
標準偏差(nm)={((X
1−X)
2+(X
2−X)
2+・・・・(X
n−X)
2)/n}
1/2
【0088】
2.リン濃度
導電性微粒子0.05gに王水4mlを加え、加熱下で攪拌することにより金属層を溶解しろ別した。その後、ろ液をICP発光分析装置を用いて、ニッケル及びリンの含有量を分析した。
【0089】
3.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、基材粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。
【0090】
4.10%K値
島津微小圧縮試験機(島津製作所製、「MCT−W200」)を用い、室温(25℃)において10%K値を測定した。具体的には、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.65mN/秒(0.27gf/秒))で荷重をかけた。粒子の直径が10%変位するまで粒子を変形させたときの圧縮荷重(N)と圧縮変異量(mm)を測定し、下記式に基づいて圧縮弾性率を求め、これを10%K値とした。なお測定は、試料粒子を代えながら10点行い、その結果の算術平均値を求めた。
【0091】
【数2】
(式中、Eは圧縮弾性率(N/mm
2)、Fは圧縮荷重(N)、Sは圧縮変位量(mm)、Rは試料粒子の半径(mm)を示す)
【0092】
5.破壊点荷重
試料粒子が破壊するまで試料を圧縮する以外は、上記10%K値の測定と同様の装置、測定方法により、室温(25℃)において試料粒子の中心方向へ荷重をかけた。試料粒子が破壊したときの荷重値を破壊点荷重(mN)とした。なお測定は、試料粒子を代えながら10点行い、その算術平均値を求めた。
【0093】
製造例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れた。攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調整した。このポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は3.01μmであった。
【0094】
次いで、乳化剤としてのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF−08」)の20%水溶液10部をイオン交換水400部で溶解した溶液に、スチレン200部及びDVB960(新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%)200部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調整した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0095】
前記混合液に、前記ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96部、イオン交換水500部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得た。
得られた重合体粒子を水酸化ナトリウム等によりエッチング処理を行い親水化処理し、これを基材粒子1とした。この基材粒子1の個数平均粒子径は6.02μm、変動係数(CV値)は3.6%であった。
【0096】
実施例1
基材粒子1に、水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング処理を施した後、二塩化スズ溶液に接触させ、その後、二塩化パラジウム溶液に浸漬させることにより(センシタイジング−アクチベーティング法)、パラジウム核を形成させた。パラジウム核を形成させた基材粒子10部をイオン交換水5000部に添加し、超音波照射により十分に分散させ、懸濁液を得た。この懸濁液を70℃に加熱して撹拌しながら、70℃に加熱したニッケルメッキ液310mLを添加した。前記ニッケルメッキ液は、グリシン38.7g/L、リンゴ酸10.5g/L、酢酸ナトリウム24.3g/L、硫酸ニッケル113.6g/L、次亜リン酸ナトリウム230g/Lを含有しておりpHは5.0に調整されていた。液温を70℃で保持し、水素ガスの発生が停止したことを確認してから、60分間撹拌した。その後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄することにより、ニッケルメッキを施した導電性微粒子1を得た。
得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を撮影したSEM写真を
図1に示す。
【0097】
実施例2
実施例1において、ニッケルメッキ液の組成を、乳酸52.5g/L、リンゴ酸10.5g/L、硫酸ニッケル110.0g/L、次亜リン酸ナトリウム230g/Lに変更し、そのpHを4.6に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりニッケルメッキを施した導電性微粒子2を得た。
【0098】
比較例1
実施例1の導電性金属層の形成において、ニッケルメッキ液の組成を、グリシン38g/L、酢酸ナトリウム57.0g/L、硫酸ニッケル110.0g/L、次亜リン酸ナトリウム230g/Lに変更し、そのpHを6.3に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりニッケルメッキを施した導電性微粒子3を得た。 得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察した結果を
図3に示す。
【0099】
製造例1で得られた基材粒子について、平均粒子径、粒径の変動係数、10%K値、及び破壊点荷重を調べた。またこの基材粒子にニッケル合金層を形成した導電性微粒子1〜3についても基材粒子と同様に、平均粒子径、粒径の変動係数、10%K値、及び破壊点荷重を調べると共に、下記式に基づいて破壊点荷重低下率も算出した。さらにニッケル合金層については、平均厚み(Y)、平均粒界幅(X)、高さ割合(Y/X)、粒界幅の標準偏差、リン濃度を求めた。結果を表1に示す。
破壊点荷重低下率(%)=(導電性微粒子の破壊点荷重値)/(基材微粒子の破壊点荷重値)×100
【0100】
【表1】
【0101】
表1より明らかなように、高さ割合(平均厚み/平均粒界幅)が適切である実施例1、2の導電性微粒子1、2は、いずれも破壊点荷重低下率が高く(即ち導電性金属層を形成後の破壊点荷重低下を抑制でき)、高い破壊点荷重値を示した。しかもこの導電性微粒子1、2は、簡便な1段階製膜によって製造できた。
これに対して、比較例1の導電性微粒子3では、高さ割合(平均厚み/平均粒界幅)が大きく、基材粒子に比べて破壊点荷重値が著しく低下した。