【文献】
THE JOURNAL OF NEUROSCIENCE,2007年,Vol.27,No.34,p.9115-9129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記治療または予防用が、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP−17)、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、タングル限定認知症(tangle only dementia)、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、嗜銀性グレイン型認知症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン認知症複合体、ボクサー認知症、ダウン症候群、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、ハレルフォルデン−スパッツ病、封入体筋炎、クロイツフェルト−ヤコブ病、多系統萎縮症、C型ニーマン−ピック病、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパシー、亜急性硬化性全脳炎、筋強直性ジストロフィー、神経原線維タングルを伴う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障害、および脳炎後パーキンソニズムからなる群より選択されるタウオパシーの治療用である、請求項1に記載の薬学的組成物。
前記1つ以上の免疫原性タウペプチドが、1つ以上のアミノ酸残基においてリン酸化されており、かつ前記1つ以上の抗体が、リン酸化された免疫原性タウペプチドを認識する、請求項1、3または5に記載の薬学的組成物。
1つ以上の請求項11に記載の単離されたタウペプチド、薬学的キャリア、および任意で配列番号81−100からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上のさらなる免疫原性タウペプチドを含む、薬学的組成物。
1つ以上のアミロイド形成タンパク質またはペプチドが、ベータタンパク質前駆体、プリオンおよびプリオンタンパク質、αシヌクレイン、アミロイドβ、島アミロイドポリペプチド、アポリポプロテインAI、アポリポプロテインAII、リゾチーム、シスタチンC、ゲルソリン、心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン、ケラトエピセリン、ラクトフェリン、免疫グロブリン軽鎖、トランスサイレチン、Aアミロイドーシス、β2マイクログロブリン、免疫グロブリン重鎖、フィブリノーゲンアルファ鎖、プロラクチン、ケラチン、およびメディン(medin)からなる群より選択される、請求項15に記載の組み合わせ免疫治療剤。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A−1Bは、本発明の免疫原性タウペプチドに対する、JNPL3 P301Lタングルマウスモデルにおける免疫応答を示す。2−3ヶ月齢のマウスは、2週間間隔をあけて最初の2回免疫を受容し、次いで、その後毎月、免疫を受容した。抗体応答を評価するために、マウスは最初の免疫前に採血され、その後、ワクチン投与の1週間後に定期的に採血され、そして8−9ヶ月齢で組織収集のために屠殺された。
図1Aおよび1Bに示されるIgGおよびIgM抗体応答は、6回目の免疫(T3)の1週間後に測定され、8−9ヶ月齢で再度測定され、これは屠殺の時点であった(Tf=T最終)。
図1Aは、GPSLリンカーを介して破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたTau210−216[P−Thr
212−Ser
214](配列番号2)で免疫されたJNPL3 P301Lマウスにおける強固なIgGおよびIgM免疫応答を示す。
図1Bは、GPSLを介してTT947−967に連結された関連性のないタウエピトープTau260−264[P−Ser
262]に結合しているIgGおよびIgMによって評価されるように、強力な抗体応答が破傷風毒素エピトープに対して生成されることを示す。ELISAプレートは、ウェルあたり0.5μgペプチドでコートされ、血漿は1:200で希釈された。
【
図2】
図2A−Cは、GPSLリンカーを介して破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)(T299ペプチドとも呼ばれる)に連結されたTau260−264[P−Ser
262](配列番号3)で免疫されたJNPL3 P301Lマウスが免疫原に対する強固なIgG応答を生じることを示す。
図2Aは、Tau260−264[P−Ser
262]ペプチドを用いる免疫後のマウスにおけるIgG抗体応答を示す。上記と同様に、マウスは最初の2回の免疫は2週間間隔をあけて受容し、次いで、その後、8−9ヶ月齢になるまで2−3ヶ月毎月免疫を受容した。
図2Bは、抗体応答の良好な部分が、GPSLを介してTT947−967に連結された関連性のないタウエピトープTau210−216[P−Thr
212−Ser
214]へのIgG結合によって評価されるように、破傷風毒素エピトープに対して生成されることを示す。
図2Cは、抗体応答の良好な部分が、Tau260−264[P−Ser
262]領域を含む、より大きなタウエピトープTau240−270[P−Ser
262]へのIgG結合によって評価されるように、タウエピトープに対して生成されることを示す。ELISAプレートは、ウェルあたり0.5μgペプチドでコートされ、血漿は1:200希釈された。T0−T最終:ワクチン接種の前の採血(T0)、3回目の免疫の1週間後の採血(T1)、6回目の免疫の1週間後の採血(T2)、7回目の免疫の1週間後の採血(T3)、および組織収集時の採血(Tf)。
【
図3】
図3は、破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたTau229−237[P−Thr
231−Ser
235](配列番号4)を用いて免疫されたJNPL3 P301Lタングルマウスにおいて生成された強固な抗体(IgG)応答を示す。これらのマウスは、2−3ヶ月齢で、2週間間隔をあけて、次いで、1ヶ月後免疫され、そして3回目の免疫の1週間後に採血された(T1)。ELISAプレートは、ウェルあたり0.5μgペプチドでコートされ、血漿は1:200で希釈された。
【
図4】
図4は、ミョウバンアジュバント中の擬リン酸化免疫原であるTau379−408[Asp
396,404](配列番号57)を用いて免疫されたJNPL3 P301Lタングルモデルマウスにおいて生成された強固な抗体(IgG)応答を示す。重要なことに、これらの抗体は、ホスホエピトープであるTau379−408[P−Ser
396,404]を同程度まで認識する。これらのマウスは、2−3ヶ月齢で、最初の2回の免疫から2週間間隔をあけて、その後1ヶ月に1回免疫した。これらのマウスは、8−9ヶ月齢での組織採集の時点で採血された(Tf=T採集)。ELISAプレートは、ウェルあたり0.5μgペプチドでコートされ、血漿は1:200で希釈された。
【
図5】
図5A−5Bは、タウ免疫治療後のタングルマウスモデルの脳幹(
図5A)および歯状回(
図5B)において観察された病理学的タウの減少を示す。ホモ接合性JNPL3タウP301Lマウスは、GPSLリンカー配列を介して破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたT299(Tau260−264[P−Ser
262](配列番号3))を用いて免疫された。脳幹と歯状回の両方で病理学的タウがPHF1抗体免疫染色によって評価された。PHF1は、C末端のセリンアミノ酸404および396上でリン酸化される、タウを認識するモノクローナル抗体である(Greenberg et al.,「Hydrofluoric Acid−Treated Tau PHF Proteins Display the Same Biochemical Properties as Normal Tau」J Biol Chem 267:564−569(1992)、これは、その全体が参照により組み込まれる)。病理学的タウ染色は、アジュバントのみを受容する対照動物と比較して、T299ペプチドで積極的に免疫した動物の脳幹と歯状回の両方で観察された。
【
図6】
図6は、リン酸化Tau379−408[P−Ser
396,404](配列番号82)を用いるhtau/PS1マウスの免疫が梨状皮質(pyriform cortex)中で56%までタウ凝集の量を減じることを示す。免疫群と対照群の間で有意な違いが観察された(片側ANOVA、p<0.01)。ポストホック分析もまた、免疫したhtau/PS1マウスがそれらのhtau/PS1対照とは異なったことを示した(p<0.01)**p<0.01。
【
図7】
図7A−7Bは、タウ免疫治療がタングルマウスモデルにおいて機能障害を予防することを示す。ホモ接合性JNPL3 P301Lマウスは、GPSLリンカー配列を介して破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたリン酸化された免疫原性Tau299ペプチド(Tau260−264[P−Ser
262](配列番号3))を用いて免疫された。対照動物はアジュバント単独を受容した。Tau260−264[P−Ser
262]ペプチドワクチンの投与は、対照動物と比較して、免疫された動物について記録された、足を滑らせることがより少ないことによって示されるような、8ヶ月齢における横方向ビームによって評価される機能障害を予防した(
図7A)。同様に、Tau260−264[P−Ser
262]ペプチドワクチンの投与は、5−6ヶ月齢と8−9ヶ月齢の両方においてロータロッドテストによって評価される機能障害を予防した(
図7B)。
【
図8】
図8A−8Bは、リン酸化Tau379−408[P−Ser
396,404](配列番号82)を用いるhtau/PS1マウスの免疫が、放射状アーム迷路(
図8A)および物体認識テスト(
図8B)における成績を改善することを示す。
図8Aにおいて示されるように、放射状アーム迷路において免疫群と対照群の間で有意な違いが観察された(二元ANOVA反復測定、p<0.0001)。Neuman−Keulsポストホック検定は、すべての日数に対して、対照htau/PS1よりも、免疫htau/PS1マウスがよりよい成績であった(すなわち、より少ないエラーを犯した)ことを明らかにした(p<0.01−0.001)。有意な違いは、物体認識テストにおける群間においてもまた観察された(一元ANOVA、p=0.005)(
図8B)。Neuman−Keulsポストホック検定は、免疫したhtau/PS1マウスが、同一の対照マウスよりもより良好な短期記憶を有したことを明らかにした(p<0.01)。認知能力が正常のマウスは、古い物体と比較して、それらの時間の約70%を新たな物体に費やすことは十分に確立されている。**p<0.01。
【
図9】
図9A−9Cは、リン酸化されたTau379−408[P−Ser
396,404](配列番号82)を用いるhtau/PS1マウスの免疫が、閉鎖フィールド対称迷路(closed field symmetrical maze)における成績を改善することを示す。9A−9Cの各迷路において、犯したエラーの数に関して、免疫群と対照群の間で有意な違いが観察された(一元ANOVA、迷路A:p<0.001、迷路B:p<0.0001、迷路C:p<0.01)。ポストホック分析は、処理されたhtau/PS1群が、それらの同一の対照マウス(htau/PS1対照)よりもより良好な成績であったことを明らかにした(迷路A:p<0.01、迷路B、C:p<0.001)。ポストホック分析は、迷路に依存して他の群のいくつかとの間で有意な違いを明らかにしたが、これらの違いは、関連性がより少なく、それゆえに、ここでは詳述されない。これらの3つの迷路は、エラーの数によって示されているように、複雑度が増加しているものであった(Y軸のスケールが異なることに注目のこと)。**p<0.01、***p<0.001。
【
図10】
図10A−10Fは、リン酸化Tau379−408[P−Ser
396,404](配列番号82)および対応する対照で免疫されたhtau/PS1マウスにおけるウェスタンブロット分析によって検出された可溶性および不溶性Tau(全体のタウおよび病理学的タウ)のレベルを示すグラフである。タウ免疫治療は、全体のタウと比較して、病理学的タウを35−43%減少させる(
図10Cおよび10D)。この免疫治療は、B19抗体を用いて評価されるような全体のタウレベルに影響を与えず(
図10Aおよび10B)、このことは、このアプローチの安全性のために重要である。htau/PS1対照と比較すると、PHF1可溶性タウはわずかに減少され(p<0.001)、そして可溶性タウ比率(PHF1/全体のタウ)は35%減少された(p<0.05)(
図10E)。PHF1不溶性タウの減少についての強力な傾向が同様に観察され(p=0.06)、不溶性タウ比率(PHF1/全体のタウ)は43%減少された(p=0.08)(
図10F)。*p<0.05,***p<0.001。
【
図11】
図11A−11Cは、リン酸化されたタウ396および404エピトープを標的とする受動的免疫治療が、P301Lタングルマウスにおいて、機能低下を予防し、そしてタウ病理を減少することを実証する。
図11Aは、IgG注射対照およびPHF1免疫P301Lマウスによって横方向ビームに取られた足を滑らせることの回数の有意な違いを示すグラフであり、対照動物は、ビームと交差するときにより多く足を滑らせた(試行を合わせた、p=0.03)。
図11Bは、免疫マウスおよび対照P301Lマウスの歯状回におけるタウ免疫染色のパーセンテージを示すグラフである。PHF1免疫P301Lマウスは、歯状回においてPHF1染色されたタウ病理が対照と比較して58%少なかった(p=0.02)。
図11Cに示されるように、血漿中のPHF−1抗体の量(μg/μL)は、2週間の間に4分の1に減少した。対照には検出可能な抗体が観察されなかったのに対して、免疫動物におけるレベルは時間の経過とともに減少した。これらは、免疫マウスについての平均値である。T0:初回免疫前、T1:12回目の注射の24時間後、T2:13回目および最後の注射の7日後、T3:最後の注射の14日後。ELISAプレートはTau379−408[P−Ser
396,404]でコートされた。
【
図12】
図12A−12Bは、PHF1抗体の血漿レベルとタウ病理の間の逆相関を示すグラフである。有意な相関は脳幹において観察され(
図12A;p<0.01)、運動皮質において相関の強い傾向が観察された(
図12B;p=0.06)。
【
図13】
図13A−13Bは、アミノ酸396位および404位においてリン酸化セリンエピトープを含有するアミノ酸386−408を含む免疫原性タウペプチド(配列番号13)に対するモノクローナル抗体の生成を示すグラフである。
図13Aに示されるように、非常に強力な力価が、血漿の段階希釈によって検出されるように、免疫原性Tau−386−408[P−Ser
396,404](赤色)のタウ部分に対して生成された。血漿抗体は、好ましくは、ホスホSer404エピトープ(青色)および非ホスホエピトープ(白色)を認識した。ホスホSer396エピトープ(緑色)はより低い程度まで認識された。多くの強力にポジティブなクローンが検出された(>50)。これらの中で、8個のホスホ特異的クローンが最初のサブクローニングのために選択された(
図13B)。すべてが安定であるように見え、3個が2回目のサブクローニングのために選択された(すべてIgG1)。リン酸化エピトープを特異的に認識しなかったクローンのうち、6個が最初のサブクローニングのために選択された。すべてが安定であるように見え、3個が2回目のサブクローニングのために選択された(IgG1、IgG2a、およびIgM)。
【
図14】
図14A−14Bは、ELISAによる3回目のサブクローニング後の安定なホスホ特異的(
図14A)および非ホスホ特異的(
図14B)Tau−386−408[P−Ser
396,404]抗体クローンのエピトープ結合を示すグラフである。さらなるサブクローニングのために選択されたホスホ特異的モノクローナル抗体のうち、6個のうちの4個がホスホ−Ser
404エピトープについてのそれらの特異性を保持していた(
図14Aにおけるクローン1F12C2、1F12G6、4E6E3、および4E6G7を参照のこと)。2個のクローンは、ホスホ特異性が低いか(8B2D1)またはホスホ非特異的であった(8B2D4)(
図14A)。非ホスホ特異的モノクローナル抗体のうち、特に、6B2E9および6B2G12は、さらなるサブクローニング後にそれらの特異性を保持した(
図14B)。提示されたデータは、培養上清の1:810希釈で得られた。
【
図15】
図15A−15Bは、4個のTau−386−408[P−Ser
396,404]ホスホ特異的(
図15A)および非ホスホ特異的(
図15B)モノクローナル抗体クローンの、JNPL3 P301Lマウスおよび野生型(Wt)マウスからの脳ホモジネートとの反応性を示すウェスタンブロットである。4個のホスホ特異的クローンのうち、4E6G7は、最も強い反応性を示し、これは、
図14AのELISA結果と一貫している。タウP−Ser
396,404エピトープもまた認識するPHF−1抗体とは対照的に、すべてのクローンは、WtホモジネートよりもJNPL3 P301L脳ホモジネートとより良好に反応する。大部分のタウは非リン酸化型であるので、予測されたように、非ホスホ特異的クローンはより速く反応した。
【
図16】
図16A−16Bは、アミノ酸260−271(配列番号12)を含み、リン酸化セリン262エピトープを含有する免疫原性タウペプチドに対するモノクローナル抗体の生成を図示する。
図16Aに示されるように、強力な力価は、免疫原性Tau260−271[P−Ser
262](紫色)に対して生成されたが、血漿抗体は非ホスホペプチドTau260−271を同様に認識した(No−P;白色)。8個の安定なホスホ特異的クローンがさらなる分析のために選択された(
図16B)。
【
図17】
図17は、3個のホスホ特異的Tau260−271[P−Ser
262]モノクローナル抗体クローンの反応性を示すウェスタンブロットである。2C11抗体クローンは、他のホスホ特異的クローンよりも高分子量バンドを認識し、野生型とP301L組織の間を区別しない。5F7D10および5F7E9は、他のクローンを代表するものである。Tau−5は全体のタウを認識し、タウのアミノ酸216−227周辺のエピトープに結合する。CP27はヒトのタウを認識するがマウスのタウを認識しない。
【
図18】
図18A−18Eは、P301Lタングルマウス脳切片において5F7D10抗体クローンを使用してタウ病理の検出を示す免疫組織化学顕微鏡写真である。5F7D10モノクローナル抗体は、野生型(
図18B)と比較して、P301L脳切片(
図18A)において強力な組織学的染色を示す。PHF1抗体は同じタングルマウスにおいてタウ病理を捕捉したが(
図18C)、このパターンは5F7D10を用いるものとは異なっており、このことは、これらの抗体が異なるタウエピトープを認識するので驚くべきことではない。
図18Dは、凝集したタウを伴う神経細胞を示す
図18Aにおけるボックスを付した領域の拡大画像である。
図18Eは、異なるJNPL3 P301Lマウスにおいて5F7D10を用いて検出されたタングル様病理のより高度な拡大画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様は、被験体におけるアルツハイマー病または他のタウオパシーを予防または治療する方法に関する。この方法は、配列番号2−75からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する任意の1つ以上の免疫原性タウペプチド、または配列番号2−75および101−103からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫原性タウエピトープを認識する1つ以上の抗体を、被験体におけるアルツハイマー病または他のタウオパシーを予防または治療するために有効な条件下で、被験体に投与することを包含する。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「タウオパシー」とは、脳の中で微小管タンパク質タウの病理学的凝集を含む任意の神経変性疾患を包含する。従って、本発明の方法を使用して治療できる他のタウオパシーには、家族性と散発性の両方のアルツハイマー病に加えて、非限定的に、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP−17)、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、タングル限定認知症(tangle only dementia)、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、嗜銀性グレイン型認知症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン認知症複合体、ボクサー認知症、ダウン症候群、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、ハレルフォルデン−スパッツ病、封入体筋炎、クロイツフェルト−ヤコブ病、多系統萎縮症、C型ニーマン−ピック病、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパシー、亜急性硬化性全脳炎、筋強直性ジストロフィー、神経原線維タングルを伴う非グアム型(non-guanamian)運動ニューロン疾患、脳炎後パーキンソニズム、および慢性外傷性脳障害が含まれる。
【0016】
本発明の別の態様は、被験体の脳からのタウ凝集物のクリアランスを促進する方法に関する。この方法は、配列番号2−75からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する任意の1つ以上の免疫原性タウペプチド、または配列番号2−75および101−103からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫原性タウエピトープを認識する1つ以上の抗体を、被験体の脳からのタウ凝集物のクリアランスを促進するために有効な条件下で、被験体に投与することを包含する。
【0017】
タウ凝集物のクリアランスには、神経原線維タングル、および/または神経原線維タングルに至る病理学的タウ前駆体のクリアランスが含まれる。神経原線維タングルは、しばしば、家族性および散発性のアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、嗜銀性グレイン型認知症、ボクサー認知症、慢性外傷性脳障害、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、ハレルフォルデン−スパッツ病、遺伝性前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP−17)、封入体筋炎、クロイツフェルト−ヤコブ病、多系統萎縮症、C型ニーマン−ピック病、ピック病、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパシー、散発性大脳皮質基底核変性症、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、筋強直性ジストロフィー、神経原線維タングルを伴う運動ニューロン疾患、タングル限定認知症、および進行性皮質下グリオーシスを含む神経変性疾患に付随する。
【0018】
本発明の別の態様は、被験体におけるタウ病理学関連行動表現型の進行を遅延させる方法に関する。この方法は、配列番号2−75からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する任意の1つ以上の免疫原性タウペプチド、または配列番号2−75および101−103からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫原性タウエピトープを認識する1つ以上の抗体を、被験体におけるタウ病理学関連行動表現型の進行を遅延させるために有効な条件下で、被験体に投与することを包含する。
【0019】
本明細書で使用されるとき、タウ病理学的関連行動表現型には、非限定的に、認知機能障害、早発性人格変化および脱抑制、無気力、無為、無言症、失行症、固執、常同運動/行動、口愛過度、無秩序、逐次的な仕事を計画または組織化できないこと、身勝手/無神経、反社会的形質、共感の欠如、たどたどしさ、頻繁な錯語的な誤りを伴うが比較的理解は保たれている失文的なスピーチ、理解障害および言葉を探すことの欠損、遅進行性の歩行不安定、後方突進、すくみ、頻繁な落下、非レボドパ応答性軸方向硬直、核上性注視麻痺、矩形波眼球運動、遅垂直性の持続性運動、偽性球麻痺、四肢失行、筋失調症、皮質感覚の喪失、およびふるえが含まれる。
【0020】
本発明の方法に従うと、1つの実施形態において、免疫原性タウペプチドまたは免疫原性タウペプチドの組み合わせが必要のある被験体に投与される。タウタンパク質の適切な免疫原性タウペプチドフラグメントは、病理学的型のタウタンパク質を模倣する1つ以上の抗原性エピトープを含有する。例示的な免疫原性タウエピトープは、タウの病理学的型においてリン酸化されている1つ以上のアミノ酸においてリン酸化されているが、タウの正常型または非病理学的においてはリン酸化されていない。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、免疫原性タウペプチドの投与は、被験体において免疫原性タウペプチドに対する活発な免疫応答を誘導し、それによって、関連するタウ凝集物のクリアランスを容易にし、タウ病理学関連行動の進行を遅延させ、そして根底にあるタウオパシーを治療する。本発明のこの態様に従って、免疫応答は、免疫原性タウペプチドに対して指向される体液性(抗体媒介性)および/または細胞性(抗原特異性T細胞および/またはそれらの分泌生成物によって媒介される)応答の発展を含む。
【0022】
体液性免疫学的応答の存在は、免疫原性タウペプチドに指向される抗体の存在について、被験体からの生物学的サンプル(例えば、血液、血漿、血清、尿、唾液、糞便、CSF、またはリンパ液)を試験することによって決定およびモニターできる。生物学的サンプル中で抗体を検出するための方法は当該技術分野において周知であり、例えば、ELISA、ドットブロット、SDS−PAGEゲル、またはELISPOTである。細胞媒介性免疫学的応答の存在は、当該技術分野において容易に公知である、増殖アッセイ(CD4
+T細胞)またはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイによって決定できる。
【0023】
本発明の単離された免疫原性タウペプチドには、以下の表1に示される配列番号2−30のアミノ酸配列のいずれか1つが挙げられる。リン酸化されている各配列のアミノ酸残基は太字で示され、アスタリスクでマークされている。表1におけるペプチドの名称は、以下に示されるような配列番号1のアミノ酸配列を有するヒトタウタンパク質の最長のアイソフォームの中のこれらのペプチドのアミノ酸位置に対応する。
【0025】
タウタンパク質の好ましいエピトープに対する抗体を誘導し、および/またはそれと相互作用する上記の免疫原性ペプチドの変異体および類似体もまた使用できる。対立遺伝子変異体、種変異体、および誘導された変異体を含む類似体は、典型的には、しばしば、保存性置換により、1個、2個、または数個の位置において、天然に存在するペプチドとは異なる。類似体は、天然のペプチドと、少なくとも80%または90%の配列同一性を示す。ある類似体は、1個、2個、または数個の位置において、非天然アミノ酸またはN末端もしくはC末端の修飾もまた含む。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、変異体タウペプチドは、擬リン酸化ペプチドである。この擬リン酸化ペプチドは、タウペプチドの1つ以上のリン酸化されたセリン残基、スレオニン残基、およびチロシン残基を、グルタミン酸およびアスパラギン酸などの酸性アミノ酸残基で置換することによって生成される(Huang et al.,「Constitutive Activation of Mek1 by Mutation of Serine Phosphorylation Sites,」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(19):8960−3(1994)、これは参照によりその全体が組み込まれる)。本発明の例示的な単離された免疫原性擬リン酸化タウペプチドは以下の表2に示される。アミノ酸残基置換の位置は表2の各配列において「X」で示され、ここで、Xはグルタミン酸またはアスパラギン酸残基の置換である。
【0027】
(表2)免疫原性擬リン酸化タウペプチド
【0028】
本発明の各タウペプチド、すなわち、配列番号2−75および87−88(以下の表3)は、好ましくは、全長タウタンパク質の同じ内部アミノ酸により密接に似るように、N末端上でアセチル化され、C末端上でアミド化される。本発明のタウペプチドは、ペプチドの安定性を増強するために1つ以上のDアミノ酸残基もまた含むことができる。これらのDアミノ酸は、ネイティブ配列の全体のトポロジーを維持するために、L型のペプチドと同じ順序であり得、またはL型配列から逆の順序でアセンブルされ得る(Ben−Yedidia et al.,「A Retro−Inverso Peptide Analogue of Influenza Virus Hemagglutinin B−cell Epitope 91−108 Induces a Strong Mucosal and Systemic Immune Response and Confers Protection in Mice after Intranasal Immunization,」Mol Immunol.39:323(2002);Guichard,et al.,「Antigenic Mimicry of Natural L−peptides with Retro−Inverso−Peptidomimetics,」PNAS 91:9765−9769(1994);Benkirane,et al.,「Antigenicity and Immunogenicity of Modified Synthetic Peptides Containing D−Amino Acid Residues,」J.Bio.Chem.268(35):26279−26285(1993)、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)。
【0029】
上記のペプチド配列の各々は、その免疫原性を増強するために、免疫原性キャリア分子に連結されてもよい。適切な免疫原性キャリアには、ヘルパーT細胞エピトープ、例えば、破傷風トキソイド(例えば、P2およびP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、コレラ毒素B、トキソイド、ジフテリアトキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、Chlamydia trachomatis主要外膜タンパク質、Plasmodium falciparumスポロゾイト周囲T、P.falciparum CS抗原、Schistosoma mansoniトリオースリン酸イソメラーゼ、Bordetella pertussis、Clostridium tetani、Pertusaria trachythallina、Escherichia coli TraT、およびインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)が挙げられるがこれらに限定されない(Wangへの米国特許第6,906,169号;Wangへの米国特許出願公開第20030068325号、およびWangへの国際特許第2002/096350号を参照のこと、これらは、それらの全体が参照により組み込まれる)。本発明の好ましい実施形態において、Tヘルパー細胞エピトープは、FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号76)のアミノ酸配列を有する破傷風毒素947−967(P30)エピトープである。別の実施形態において、Tヘルパー細胞エピトープは、QYIKANSKFIGIT(配列番号77)のアミノ酸配列を有する破傷風毒素830−843(P2)エピトープである。
【0030】
本発明の免疫原性タウペプチドは、短いアミノ酸リンカー配列を使用して免疫原キャリア分子に連結できる。本発明の好ましい実施形態において、GPSL(配列番号78)リンカー配列は、免疫原性タウペプチドを免疫原性キャリア分子に連結するために使用される。他の適切なリンカー配列には、グリシンリッチ(例えば、G
3−5)またはセリンリッチ(例えば、GSG,GSGS(配列番号79)、GSGSG(配列番号80)、GS
NG)リンカー配列、またはHuang et alへの米国特許第5,516,637号に開示されるようなフレキシブル免疫グロブリンリンカーが挙げられ、この特許は全体が参照により組み込まれる。
【0031】
あるいは、本発明の免疫原性タウペプチドは、化学架橋を使用して免疫原性キャリア分子に連結できる。ペプチド免疫原を免疫原性キャリア分子に連結するための技術には、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジル−チオ)プロピオン酸(SPDP)およびスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)(ペプチドがスルフヒドリル基を欠く場合、これはシステイン残基の付加によって提供できる)を使用するジスルフィド結合の形成が挙げられる。これらの試薬は、それら自体と、あるタンパク質上のペプチドシステイン残基との間でジスルフィド結合を、およびリジン上のイプシロンアミノを通して、または他のアミノ酸における他の遊離のアミノ基を通してアミド結合を作る。様々なこのようなジスルフィド/アミド形成剤がJansen et al.,「Immunotoxins:Hybrid Molecules Combining High Specificity and Potent Cytotoxicity,」Immun Rev 62:185−216(1982)によって記載されており、これは、その全体が参照により組み込まれる。他の二官能カップリング剤は、ジスルフィド結合ではなくチオエーテルを形成する。これらのチオエーテル形成剤の多くは市販されており、6−マレイミドカプロン酸、2−ブロモ酢酸、および2−ヨード酢酸、4−(N−マレイミド−メチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸の反応性エステルを含む。カルボキシル基は、これらをスクシンイミドまたは1−ヒドロキシ−2−ニトロ−4−スルホン酸、ナトリウム塩と合わせることによって活性化できる。
【0032】
本発明の免疫原性タウペプチドは、固相ペプチド合成または組換え発現系によって合成できる。自動ペプチドシンセサイザーはApplied Biosystems(Foster City,Ca.)などの多くの供給業者から市販されている。組換え発現系は、E.coliなどの細菌、酵母、昆虫細胞、または哺乳動物細胞を含むことができる。組換え発現のための手順は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(C.S.H.P.Press,NY 2d ed.,1989)によって記載されており、これはその全体が参照により組み込まれる。
【0033】
本発明の免疫原性タウペプチドは、単独で、または他の本発明の免疫原性タウペプチドと組み合わせて、必要がある被験体に投与できる。1つの実施形態において、本発明の免疫原性タウペプチドは、全体が参照により組み込まれるSigurdssonへの米国特許出願公開第20080050383号に開示されるような、以下の表3に示される1つ以上の免疫原性タウペプチドと組み合わせて投与される。表3におけるペプチド名称は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタウタンパク質の最長のアイソフォームの中のこれらのペプチドのアミノ酸の位置に一致する。リン酸化されている各配列のアミノ酸残基は太字で示され、アスタリスクでマークされている。
【0034】
(表3)組み合わせ投与のための免疫原性タウペプチド配列
【0035】
本発明の免疫原性タウペプチドは、被験体における所望の免疫応答を達成するために適切なアジュバントと組み合わせて投与できる。適切なアジュバントは、本発明の免疫原性タウペプチドの投与前、投与後、または投与と同時に投与できる。好ましいアジュバントは、応答の定性的な型に影響を与える免疫原のコンホメーション変化を引き起こすことなく、免疫原に固有の応答を増大する。
【0036】
好ましい種類のアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン)である。このようなアジュバントは、3 De−O−アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)もしくは3−DMPなどの他の免疫刺激剤、ポリグルタミン酸もしくはポリリジンなどのポリマー性もしくはモノマー性アミノ酸とともに、またはこれらを伴わずに使用できる。このようなアジュバントは、ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1'−2'ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルコサミニル(acetylglucsaminyl)−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソglu−L−Ala−ジパルミトイルプロピルアミド(DTP−DPP)テラミド(theramide)(登録商標))、または他の細菌細胞壁成分などの他の特定の免疫刺激剤とともに、またはこれらを伴わずに使用できる。水中油エマルジョンには、マイクロフルイダイザーを使用してサブマイクロメートル粒子に製剤化された、5% スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85(任意に様々な量のMTP−PEを含有する)を含有するMF59(Van Nest et al.への国際特許第90/14837号を参照のこと、これは、その全体が参照により組み込まれる);サブマイクロメートルエマルジョンに微小流動化されるかまたはより大きな粒径のエマルジョンを生成するためにボルテックスされるかのいずれかである、10% スクアレン、0.4% Tween 80,5% プルロニック−ブロックポリマーL121およびthr−MDPを含有するSAF;ならびに、2% スクアレン、0.2% Tween 80、ならびに、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群より選択される1つ以上の細菌細胞壁成分、好ましくは、MPL+CWS(Detox(登録商標))を含有するRibi(登録商標)アジュバントシステム(RAS)(Ribi ImmunoChem,Hamilton,Mont.)が挙げられる。他のアジュバントには、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、およびサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL−1、IL−2、およびIL−12)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、および腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0037】
アジュバントの選択は、アジュバントを含有する免疫原性製剤の安定性、投与の経路、投薬スケジュール、ワクチン接種される種についてのアジュバントの効力に依存し、および、ヒトにおいては、薬学的に許容可能なアジュバントは、妥当な規制機関によってヒトへの投与のために認可されたか、認可されるものである。例えば、ミョウバン、MPL、または不完全フロイントアジュバントは、単独で、または任意のそれらのすべての組み合わせにおいて、ヒト投与のために適切である(Chang et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 32:173−186(1998)、これは、その全体が参照により組み込まれる)。
【0038】
本発明の別の態様は、前出に記載された1つ以上の免疫原性タウペプチドおよび薬学的キャリア(以下に記載する)を含有する薬学的組成物に関する。あるいは、薬学的組成物は、本発明の1つ以上の異なる免疫原性タウペプチドの混合物を含有する。好ましい実施形態において、本発明の薬学的組成物は、前出に記載されたような1つ以上の適切なアジュバントを含有する。
【0039】
本発明の別の実施形態において、本発明の1つ以上の免疫原性タウエピトープを認識する抗体は必要のある被験体に投与される。本発明の適切な抗体は、配列番号2−75および101−103の任意の1つのアミノ酸配列を含む免疫原性タウエピトープに特異的に結合する任意の免疫グロブリン分子を包含する。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、病理学的型のタウに特異的なエピトープを認識および結合し、そして正常なタウタンパク質または非タウタンパク質との交差反応性はほとんどないか、または交差反応性は全くない。
【0040】
本明細書に記載されるように、配列番号13(タウ386−408[P−Ser
396,404])および配列番号12(タウ260−271[P−Ser
262])を含む免疫原性タウエピトープを認識するモノクローナル抗体が生成された。これらの抗体はホスホ特異的であり、それゆえに、病理学的タウ型に特異的であり、正常なタウタンパク質に対しては、交差反応性をほとんど有さないか、全く有さない。
【0041】
タウタンパク質のリン酸化された病理学的エピトープを認識する抗体に加えて、本発明は、神経細胞毒性の促進および/またはタウ凝集の播種にも向けられる。例えば、優先的にタウタンパク質のアスパラギン酸残基42(D421)におけるタウのカスパーゼ切断は、タングルと共局在化する短縮型分子を作り、これは、アルツハイマー病およびタウオパシーの動物モデルにおける進行と相関する(Calignon et al.,「Caspase Activation Precedes and Leads to Tangles,」Nature 464:1201−1205(2010)を参照のこと、これはその全体が参照により組み込まれる)。切断されたタウタンパク質の遊離のD421末端に指向される抗体は、病理学的タウに特異的であり、病理学的タウの除去を容易にするが、正常タウには特異的ではなく、正常タウの除去を容易にするのではない。従って、本発明は、正常タウタンパク質中には存在していない、切断された病理学的タウタンパク質の遊離のC末端上のD421に指向される抗体、好ましくは、モノクローナル抗体に向けられる。本発明の1つの実施形態において、抗体は、HLSNVSSTGSIDMVD(配列番号101)のアミノ酸配列を含む免疫原性タウペプチドを用いて、本明細書に記載される方法を使用して生成される。
【0042】
グルタミン残基319(E391)上でのタウの切断は、アルツハイマー病における神経原線維タングルの形成ともまた関連する(Basurto−Islas et al.,「Accumulation of Aspartic Acid
421− and Glutamic Acid
391−Cleaved Tau in Neurofibrillary Tangles Correlates with Progression in Alzheimer Disease,」J Neuropathol Exp Neurol 67:470−483(2008)、これはその全体が参照により組み込まれる)。従って、本発明はまた、正常タウタンパク質中には存在していない、切断された病理学的タウタンパク質の遊離のC末端上のE391に指向される抗体、好ましくは、モノクローナル抗体に向けられる。本発明の1つの実施形態において、抗体は、RENAKAKTDHGAE(配列番号102)のアミノ酸配列を含む免疫原性タウペプチドを用いて、本明細書に記載される方法を使用して生成される。
【0043】
カルパイン−1もまた、Aβ−誘導性神経毒性を促進する毒性17kDaタウフラグメントを生成する、タウの切断を媒介する(Park et al.,「The Generation of a 17kDa Neurotoxic Fragment:An Alternative Mechanism by which Tau Mediates β−Amyloid−Induced Neurodegeneration,」J Neurosci 25(22):5365−75(2005)、これはその全体が参照により組み込まれる)。従って、本発明の実施形態は、以下の配列番号103として示されるタウのアミノ酸残基45−230(配列番号1)を含む、この毒性タウフラグメントの遊離のN末端および/または遊離のC末端を特異的に認識するが、正常タウタンパク質は認識しない抗体、好ましくは、モノクローナル抗体に向けられる。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、天然の供給源、または組換えの供給源から誘導されるインタクトな免疫グロブリン、ならびにインタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分(すなわち、抗原結合部分)を含む。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(「イントラボディー」)、抗体フラグメント(例えば、Fv、Fab、およびF(ab)2)、ならびに単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体およびヒト化抗体を含む様々な型で存在してもよい(Ed Harlow and David Lane,USING ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);Houston et al.,「Protein Engineering of Antibody Binding Sites:Recovery of Specific Activity in an Anti−Digoxin Single−Chain Fv Analogue Produced in Escherichia coli,」Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−5883(1988);Bird et al,「Single−Chain Antigen−Binding Proteins,」Science 242:423−426(1988))。
【0045】
モノクローナル抗体産生のための方法は、本明細書に記載されている技術または当該技術分野において周知である他の技術を使用して実行されてもよい(MONOCLONAL ANTIBODIES−PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATIONS(Mary A.Ritter and Heather M.Ladyman eds.,1995)、これはその全体が参照により組み込まれる)。一般的に、このプロセスは、インビボまたはインビトロのいずれかで関心対象の抗原(すなわち、免疫原性タウペプチド)で以前に免疫された哺乳動物の脾臓から免疫細胞(リンパ球)を得ることを包含する。例示的なタウペプチドは上記に記載されている。配列番号2−75のタウペプチドまたは配列番号101−103のタウペプチドを使用するモノクローナル抗体を生成するために、システイン残基が各配列のN末端またはC末端に加えられ、免疫の際に抗体産生を増強するキャリアタンパク質の連結を容易にしてもよい。適切なキャリアタンパク質には、非限定的に、キーホールリンペットヘモシアニン、ブルーキャリア免疫原タンパク質(blue carrier immunogenic protein)(Concholepas concholepas由来)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、およびカチオン化BSAが挙げられる。
【0046】
抗体分泌リンパ球は、細胞培養中に無制限に複製することが可能であるミエローマ細胞または形質転換細胞と融合され、それによって、不死化免疫グロブリン分泌細胞を産生する。細胞培養中で無制限に複製することが可能である哺乳動物ミエローマ細胞または他の融合パートナーとの融合は、標準的技術および周知技術によって、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)または他の融合剤を使用することによって達成される(Milstein and Kohler,「Derivation of Specific Antibody−Producing Tissue Culture and Tumor Lines by Cell Fusion」,Eur J Immunol 6:511(1976)、これはその全体が参照により組み込まれる)。好ましくはマウスであるが、他の哺乳動物種の細胞からもまた誘導されてもよい不死化細胞系統は、特定の栄養の利用のために必要な酵素が欠損しているように、急速な増殖が可能であるように選択され、そして良好な融合能力を有する。得られる誘導細胞またはハイブリドーマは培養され、そして得られるコロニーは所望のモノクローナル抗体の産生についてスクリーニングされる。このような抗体を産生するコロニーはクローニングされ、大量の抗体を産生するためにインビボまたはインビトロのいずれかで増殖される。
【0047】
あるいは、モノクローナル抗体は、全体が参照により組み込まれる、Cabilly et alへの米国特許第4,816,567号に記載されるように、組換えDNA法を使用して作製できる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するRT−PCRによって、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から単離される。次いで、重鎖および軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドは、適切な発現ベクターにクローニングされ、これらは、さもなくば免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.coli細胞、シミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされたときに、モノクローナル抗体が宿主細胞によって生成される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはそのフラグメントがファージディスプレイライブラリーから単離できる(McCafferty et al.,「Phage Antibodies:Filamentous Phage Displaying Antibody Variable Domains」,Nature 348:552−554(1990);Clackson et al.,「Making Antibody Fragments using Phage Display Libraries」,Nature 352:624−628(1991);およびMarks et al.,「By−Passing Immunization.Human Antibodies from V−Gene Libraries Displayed on Phage」,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)、これらは、それらの全体が参照により組み込まれる)。
【0048】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、代替の抗体を生成するために組換えDNA技術を使用してさらに修飾できる。例えば、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、キメラ抗体を生成するためにヒト抗体のこれらの領域について置換できる。あるいは、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、融合タンパク質を生成するために非免疫グロブリンポリペプチドについて置き換えできる。他の実施形態において、定常領域は、モノクローナル抗体の所望の抗体フラグメントを生成するために短縮または除去される。さらに、可変領域の部位特異的または高密度変異誘発が、モノクローナル抗体の特異性および親和性を最適化するために使用できる。
【0049】
本発明のモノクローナル抗体はヒト化抗体であり得る、ヒト化抗体は、可変領域の中に非ヒト(例えば、マウス)からの最小限の配列を含む抗体である。このような抗体は、ヒト被験体に投与されたときに、抗原性およびヒト抗マウス抗体応答を減少させるために治療的に使用される。
【0050】
抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)を非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)のそれの代わりに置換することによってヒト化できる(Jones et al.,「Replacing the Complementarity−Determining Regions in a Human Antibody With Those From a Mouse」,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,「Reshaping Human Antibodies for Therapy」,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,「Reshaping Human Antibodies:Grafting an Antilysozyme Activity」,Science 239:1534−1536(1988)、これらは、それらの全体が参照により組み込まれる)。ヒト化抗体は、抗体の特異性、親和性、および/または能力を洗練および最適化するために、Fvフレームワーク領域および/または置き換えられた非ヒト残基のいずれかの中でさらなる残基の置換によってさらに修飾できる。
【0051】
ヒト抗体は、当該技術分野において公知である種々の技術を使用して産生できる。インビトロで免疫されたか、または標的抗原に対して指向される抗体を産生する免疫された個体から単離された不死化ヒトB細胞が生成できる(例えば、Reisfeld et al.,MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY 77(Alan R.Liss ed.,1985)および米国特許第5,750,373号を参照のこと、これらは、それらの全体が参照により組み込まれる)。あるいは、ヒト抗体は、ファージライブラリーがヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択できる(Vaughan et al.,「Human Antibodies with Sub−Nanomolar Affinities Isolated from a Large Non−immunized Phage Display Library」,Nature Biotechnology,14:309−314(1996);Sheets et al.,「Efficient Construction of a Large Nonimmune Phage Antibody Library:The Production of High−Affinity Human Single−Chain Antibodies to Protein Antigens」,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:6157−6162(1998);Hoogenboom et al.,「By−passing Immunization.Human Antibodies From Synthetic Repertoires of Germline VH Gene Segments Rearranged In Vitro」,J Mol Biol 227:381−8(1992);Marks et al.,「By−passing Immunization.Human Antibodies from V−gene Libraries Displayed on Phage」,J Mol Biol 222:581−97(1991)を参照のこと、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)。ヒト抗体はまた、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の全レパートリーを産生する免疫に際して可能であるヒト免疫グロブリンを含有するトランスジェニックマウスにおいてもまた作製できる。このアプローチは、Surani et al.への米国特許第5,545,807号;Lonberg et al.への同第5,545,806号;Lonberg et al.への同第5,569,825号;Lonberg et al.への同第5,625,126号;Lonberg et al.への同第5,633,425号;およびLonberg et al.への同第5,661,016号において記載されており、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0052】
ポリクローナル抗体を惹起するための手順もまた当該技術分野において周知である。典型的には、このような抗体は、関心対象のエピトープを含有するペプチド(すなわち、配列番号2−75または配列番号101−103からなる群より選択される任意のタウペプチド)を、免疫前血清を得るために採血されたニュージーランドシロウサギに皮下投与することによって惹起できる。抗原はアジュバントと組み合わせて注射できる。ウサギは最初の注射後約2週間毎に採血され、6週間毎に3回同じ抗原で定期的に追加免疫される。ポリクローナル抗体は、抗体を捕捉するための対応する抗原を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって血清から回収される。ポリクローナル抗体を惹起するためのこの手順および他の手順は、Ed Harlow and David Lane,USING ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)に記載されており、これはその全体が参照により組み込まれる。
【0053】
全体の抗体に加えて、本発明は、このような抗体の結合部分を包含する。このような結合部分には、一価Fabフラグメント、Fvフラグメント(例えば、単鎖抗体、scFv)、および単一の可変V
HおよびV
Lドメイン、および二価F(ab')
2フラグメント、ビス−scFv、ジアボディー、トリアボディー、ミニボディーなどが挙げられる。これらの抗体フラグメントは、全体が参照により組み込まれるJames Goding,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE 98−118(Academic Press,1983)およびEd Harlow and David Lane,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory,1988)に記載されるように、タンパク質加水分解フラグメント化手順などの従来的な手順によって、または当該技術分野において公知である他の方法によって作製できる。
【0054】
細胞内タンパク質に結合するように操作された抗体フラグメント、すなわち、イントラボディーもまた、本発明における使用のために適切である。配列番号2−75または(of)配列番号101−103のいずれか1つを含む免疫原性タウエピトープを指向するイントラボディーは、神経細胞もしくはグリア細胞の中で病理学的タウの凝集および蓄積を妨害し、ならびに/または凝集のクリアランスを容易にする。タウオパシー含む、神経学的障害の治療のためのイントラボディー技術の適用は、全体が参照により組み込まれるMiller et al.,「Intrabody Applications in Neurological Disorders:Progress and Future Prospects」,Mol Therapy 12:394−401(2005)において概説されている。
【0055】
イントラボディーは、一般的には、2つの可変ドメインを有する抗体の可変領域から単鎖可変ドメインを選択することによって得られる(すなわち、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのヘテロダイマー)。単鎖Fvフラグメント、Fabフラグメント、ScFv−Ck融合タンパク質、単鎖ジアボディー、V
H−C
H1フラグメント、および全体のIgG分子さえもがイントラボディー開発のための適切な形式である(Kontermann R.E.,「Intrabodies as Therapeutic Agents」,Methods 34:163−70(2004)これは、その全体が参照により組み込まれる)。
【0056】
病理学的タウタンパク質エピトープに対する抗原特異性を有するイントラボディーは、ファージディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、またはリボソーム表面ディスプレイから得ることができる。イントラボディーのライブラリーを作製するため、および関心対象のイントラボディーを単離するための方法は、Zaudererへの米国特許出願公開第20030104402号およびRabbittsらへの米国特許出願公開第20050276800号にさらに記載され、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる。イントラボディーの安定性および親和性結合特性を改善するための方法は、Zhenpingへの国際特許第2008070363号、およびContreras−Martinez et al.「Intracellular Ribosome Display via SecM Translation Arrest as a Selection for Antibodies with Enhanced Cytosolic Stability」,J Mol Biol 372(2):513−24(2007)に記載されており、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0057】
とりわけ、抗体フラグメントの場合において、抗体の血清半減期を増加させるために、抗体を修飾することがさらに所望されるかもしれない。これは、例えば、抗体フラグメントの中の適切な領域の変異による、抗体フラグメントへのサルベージ受容体結合エピトープの取り込みによって、またはいずれかの末端もしくは中間部において抗体フラグメントに次いで融合される(例えば、DNAまたはペプチド合成によって)ペプチドにエピトープを取り込むことによって達成できる。
【0058】
抗体模倣物もまた、本発明に従う使用のために適切である。多数の抗体模倣物が当該技術分野において公知であり、これには、10番目のヒトフィブロネクチンIII型ドメイン(
10Fn3)から誘導される、モノボディーとして知られているもの(Koide et al.,「The Fibronectin Type III Domain as a Scaffold for Novel Binding Proteins」,J Mol Biol 284:1141−1151(1998);Koide et al.,「Probing Protein Conformational Changes in Living Cells by Using Designer Binding Proteins:Application to the Estrogen Receptor」,Proc Natl Acad Sci USA 99:1253−1258(2002)、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)、およびスタフィロコッカスプロテインAの安定なαへリックス細菌受容体ドメインZから誘導される、アフィボディーとして知られるもの(Nord et al.,「Binding Proteins Selected from Combinatorial Libraries of an alpha−helical Bacterial Receptor Domain」,Nature Biotechnol 15(8):772−777(1997)、これはその全体が参照により組み込まれる)が非限定的に挙げられる。
【0059】
本発明はさらに、上記に記載されるような本発明の免疫原性タウペプチドを認識する1つ以上の抗体を含有する薬学的組成物に向けられる。この薬学的組成物は、同じタウエピトープを認識する同じ抗体の混合物を含んでもよい。あるいは、この薬学的組成物は、1つ以上の異なるタウエピトープを認識する1つ以上の抗体の混合物を含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、下記に記載されるような薬学的に許容可能なキャリアまたは他の薬学的に許容可能な成分をさらに含む。
【0060】
免疫原性タウペプチドまたは免疫原性タウペプチドを認識する抗体を含有する本発明の薬学的組成物は、活性な治療剤に加えて、種々の他の薬学的に許容可能な成分を含む(Remington's Pharmaceutical Science(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1980)を参照のこと、これはその全体が参照により組み込まれる)。薬学的組成物の好ましい処方は、意図される投与の様式および治療的適用に依存する。これらの組成物は、動物またはヒトへの投与のための薬学的組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容可能な、非毒性のキャリアまたは希釈剤を含むことができる。この希釈剤は、組み合わせ(combination)の生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。加えて、薬学的組成物または製剤は、他のキャリア、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤などもまた含んでもよい。
【0061】
薬学的組成物は、大きな、ゆっくりと代謝される高分子、例えば、タンパク質、キトサンのようなポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックス官能基化セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム)もまた含むことができる。加えて、これらのキャリアは、免疫刺激剤として機能できる(すなわち、アジュバント)。
【0062】
本発明の薬学的組成物は、適切な送達ビヒクルをさらに含むことができる。適切な送達ビヒクルには、ウイルス、細菌、生分解性ミクロスフェア、微粒子、ナノ粒子、リポソーム、コラーゲンミニペレット、およびコクリエート(cochleate)が含まれる。
【0063】
本発明の薬学的組成物の1つの実施形態において、送達ビヒクルはウイルスまたは細菌であり、免疫原性タウペプチドは、ウイルスまたは細菌によって免疫原性組成物の一部として提示される。本発明のこの実施形態に従って、免疫原性ペプチドをコードする核酸分子は、ウイルスまたは細菌のゲノムまたはエピソームに取り込まれる。任意に、核酸分子は、免疫原性ペプチドが分泌タンパク質としてまたはウイルスの表層タンパク質もしくは細菌の膜貫通タンパク質との融合タンパク質として発現されるような様式で取り込まれ、その結果、ペプチドがディスプレイされる。このような方法において使用されるウイルスまたは細菌は、非病原性でありまたは弱毒化されているべきである。適切なウイルスには、アデノウイルス、HSV、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルスおよび他のアルファウイルス、水疱性口内炎ウイルスおよび他のラブドウイルス、ワクシニア、ならびに鶏痘が含まれる。適切な細菌にはサルモネラ属および赤痢菌属が含まれる。HBVのHBsAgへの免疫原性ペプチドの融合が特に適切である。
【0064】
本発明の別の実施形態において、薬学的組成物は、リポソーム送達ビヒクルを含有する。リポソームは、水相をカプセル化している1つ以上の同心円上に順序付けられた脂質二重層から構成されている。免疫原性タウペプチドまたは本発明の免疫原性タウペプチドに対して惹起された抗体は、リポソームビヒクルの膜と表面結合され、これでカプセル化され、またはこれに付随できる。タウペプチドのワクチン送達のために適切な種々の型のリポソームが当該技術分野において公知である(例えば、Hayashi et al.,「A Novel Vaccine Delivery System Using Immunopotentiating Fusogenic Liposomes」,Biochem Biophys Res Commun 261(3):824−28(1999)およびMichaeli et al.への米国特許出願公開第20070082043号を参照のこと、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)。本発明における使用のためにリポソームを調製するための他の方法には、Bangham et al.,「Diffusion of Univalent Ions Across the Lamellae of Swollen Phospholipids」,J.Mol.Biol.13:238−52(1965);Hsuへの米国特許第5,653,996号;Lee et al.への同第5,643,599号;Holland et al.への同第5,885,613号;Dzau & Kanedaへの同第5,631,237号;およびLoughrey et al.への同第5,059,421号に開示されているものが含まれ、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0065】
本発明の別の実施形態において、本発明の免疫原性タウペプチドまたはタウ抗体をコードする核酸分子は遺伝子治療送達系を使用して投与される。適切な遺伝子治療ベクターには、非限定的に、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびヘルペスウイルスベクターが含まれる。
【0066】
アデノウイルスベクター送達ビヒクルは、全体が参照により組み込まれる、Berkner,「Development of Adenovirus Vectors for the Expression of Heterologous Genes」,Biotechniques 6:616−627(1988)およびRosenfeld et al.,「Adenovirus−Mediated Transfer of a Recombinant Alpha 1−Antitrypsin Gene to the Lung Epithelium In Vivo」,Science 252:431−434(1991)、Curiel et al.への国際特許第93/07283号、Perricaudet et al.への国際特許第93/06223号、およびCuriel et al.への国際特許第93/07282号に記載されるように容易に調製および利用できる。アデノ随伴ウイルス送達ビヒクルは、全体が参照により組み込まれる、Shi et al.,「Therapeutic Expression of an Anti−Death Receptor−5 Single−Chain Fixed Variable Region Prevents Tumor Growth in Mice」,Cancer Res.66:11946−53(2006);Fukuchi et al.,「Anti−Aβ Single−Chain Antibody Delivery via Adeno−Associated Virus for Treatment of Alzheimer's Disease」,Neurobiol.Dis.23:502−511(2006);Chatterjee et al.,「Dual−Target Inhibition of HIV−1 In Vitro by Means of an Adeno−Associated Virus Antisense Vector」,Science 258:1485−1488(1992);Ponnazhagan et al.,「Suppression of Human Alpha−Globin Gene Expression Mediated by the Recombinant Adeno−Associated Virus 2−Based Antisense Vectors」,J.Exp.Med.179:733−738(1994);およびZhou et al.,「Adeno−associated Virus 2−Mediated Transduction and Erythroid Cell−Specific Expression of a Human Beta−Globin Gene」,Gene Ther.3:223−229(1996)に記載されるように、本発明のタウ抗体をコードする核酸を送達するために構築および使用できる。これらのビヒクルのインビボ使用は、全体が参照により組み込まれる、Flotte et al.,「Stable in Vivo Expression of the Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator With an Adeno−Associated Virus Vector」,Proc.Nat'l.Acad.Sci.90:10613−10617(1993)およびKaplitt et al.,「Long−Term Gene Expression and Phenotypic Correction Using Adeno−Associated Virus Vectors in the Mammalian Brain」,Nature Genet.8:148−153(1994)に記載されている。アデノウイルスベクターのさらなる型は、全体が参照により組み込まれる、Wickham et al.への米国特許第6,057,155号;Bout et al.への同第6,033,908号;Wilson et al.への同第6,001,557号;Chamberlain et al.への同第5,994,132号;Kochanek et al.への同第5,981,225号;Spooner et al.への同第5,885,808号;およびCurielへの同第5,871,727号に記載されている。
【0067】
感染トランスフェクション系を形成するために改変されているレトロウイルスベクターもまた、所望のペプチドまたは抗体をコードする核酸分子を標的細胞に送達するために使用できる。1つのこのような型のレトロウイルスベクターは、全体が参照により組み込まれる、Kriegler et al.への米国特許第5,849,586号に開示されている。
【0068】
免疫原性タウペプチドまたはタウ抗体をコードする核酸分子を保有する遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(全体が参照により組み込まれるNabel et al.への米国特許第5,328,470号)、または定位注射(例えば、全体が参照により組み込まれる、Chen et al.,「Gene Therapy for Brain Tumors: Regression of Experimental Gliomas by Adenovirus Mediated Gene Transfer In Vivo」,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 91:3054−3057(1994)を参照のこと)によって被験体に投与される。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている遅延放出マトリックスを含むことができる。
【0069】
本発明の方法を実行する際に、アルツハイマー病もしくは他のタウオパシーであるかもしくはそのリスクがある被験体、脳の中にタウ凝集物がある被験体、または本発明の免疫原性ペプチドもしくは抗体を投与する前にタングル関連行動表現型を示している被験体を選択することが好ましい。治療に対して敏感な被験体には、疾患のリスクがあるが徴候を示していない個体、ならびに現在徴候を示している患者が含まれる。アルツハイマー病の場合には、実質的に誰でもアルツハイマー病のリスクがある。従って、本発明の方法は、被験体患者のリスクのいかなる評価の必要も伴わずに、一般的な集団に対して予防的に投与できる。本発明の方法は、既知のアルツハイマー病の遺伝的リスクがある個体のためにとりわけ有用である。このような個体には、この疾患を経験した血縁者がいる個体、および遺伝マーカーまたは生化学マーカーの分析によってリスクが決定された個体が含まれる。アルツハイマー病に向けたリスクの遺伝マーカーには、APP遺伝子における変異、特に、それぞれ、Hardy変異およびSwedish変異と呼ばれる、717位ならびに670位および671位における変異が含まれる。他のリスクのマーカーには、プレセニリン遺伝子PS1およびPS2、ならびにApoE4における突然変異、アルツハイマー病の家族歴、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症が含まれる。現在アルツハイマー病に罹患している個体を、特徴的な認知症から上記の危険因子の存在によって認識することができる。加えて、多くの診断試験が、ADの個体を同定するために利用可能である。これらには、CSFタウおよびAβ42レベルの測定が含まれる。タウの上昇およびAβ42レベルの減少は、ADの存在の現れである。アルツハイマー病に罹患している個体は、アルツハイマー病および関連障害協会診断基準(Alzheimer's Disease and Related Disorders Association criteria)によってもまた診断できる。
【0070】
無症候性の患者において、治療は、あらゆる年齢(例えば10歳、20歳、30歳の年齢)において開始できる。しかし、通常、患者が40歳、50歳、60歳または70歳の年齢に達するまで治療を開始する必要はない。治療は、典型的には、一定の期間にわたって複数の投薬を必要とする。治療は、抗体、または活性化されたT細胞もしくはB細胞応答を治療剤に対して経時的にアッセイすることによりモニターできる。応答が低下する場合、追加免疫が示される。潜在的なダウン症候群患者の場合においては、治療は、母体治療剤を投与することによって出産前に、または誕生直後に開始できる。
【0071】
予防的適用において、免疫原性タウペプチドを含有する薬学的組成物は、アルツハイマー病または他のタウオパシーに感受性であるか、またはさもなくばそのリスクがある患者に、そのリスクを排除もしくは低減し、重篤度を軽減し、またはその疾患の生化学的、組織学的および/または行動的徴候、その合併症およびこの疾患の発症の間に提示される疾患の中間的な病理学的表現型を含む疾患の発生を遅延させるために十分な量で投与される。治療的適用において、タウ抗体を含有する組成物は、このような疾患の疑いがあり、またはすでにこのような疾患に罹患している患者に、その合併症およびこの疾患の発症における中間的な病理学的表現型を含む疾患の徴候(生化学的、組織学的および/または行動的徴候)を治癒し、または少なくとも停止させるために十分な量で投与される。ある方法においては、薬剤の投与は、特徴的なアルツハイマー病理をまだ発症していない患者において軽度の認知障害を減少または排除する。治療的または予防的処置を達成するために積雪な量は、治療的または予防的に有効な用量として定義される。予防レジメンと治療レジメンの両方において、薬剤は、通常、十分な免疫応答が達成されるまで数回の投薬で投与される。典型的には、免疫応答はモニターされ、免疫応答が減弱し始める場合、反復用量が与えられる。
【0072】
上記に記載された条件の治療のために、本発明の組成物の有効用量は、投与の様式、標的部位、患者の生理学的状態、投与される他の医薬、および治療が予防的であるかまたは治療的であるかを含む多くの異なる因子に依存して変化する。治療用量は、安全性および効力を最適化するように力価測定される必要がある。免疫原の量は、アジュバントもまた投与されるか、アジュバントの非存在下で必要とされる、より多い用量を用いるかに依存する。投与のための免疫原の量は、時折、患者あたり1−500μgで変動し、より通常には、ヒト投与のために注射あたり5−500μgである。たまに、より多い用量である注射あたり1−2mgが使用される。典型的には、約10、20、50、または100μgが各ヒト注射のために使用される。免疫原の質量はまた、免疫原中の免疫原性エピトープ対全体としての免疫原の質量の質量比に依存する。典型的には、10
−3〜10
−5マイクロモルの免疫原性エピトープが各マイクログラムの免疫原のために使用される。注射のタイミングは、1日に1回から、1年に1回まで、10年に1回まで顕著に変動できる。免疫原の投薬量が与えられる任意の所定の日において、アジュバントもまた投与されるならば、投薬量は1μg/患者よりも多く、通常、10μg/患者よりも多く、そしてアジュバントの非存在下では、10μg/患者よりも多く、通常、100μg/患者より多い。典型的なレジメンは、免疫、続いて、6週間間隔などの時間間隔での追加免疫注射からなる。別のレジメンは、免疫、続いて1、2、および12ヶ月後の追加免疫注射からなる。別のレジメンは、一生涯の間、2ヶ月に1回の注射を伴う。あるいは、追加免疫注射は、免疫応答のモニタリングによって示されるような不規則ベースであり得る。
【0073】
抗体を用いる受動免疫のために、投薬量は、宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、およびより通常には0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重、または1−10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療レジメンは、2週間毎または1ヶ月に1回または3〜6ヶ月毎に1回の投与を伴う。ある方法において、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この場合において、投与される各抗体の投薬量は示された範囲内に収まる。抗体は、通常は、複数の場合に対して投与される。単回の投薬の間の間隔は、毎週、毎月、または毎年であり得る。ある方法において、投薬量は、1−1000μg/mLの血漿抗体濃度、およびある方法においては25−300μg/mLを達成するように調整される。あるいは、抗体は、持続放出製剤として投与でき、この場合において、より頻度が少ない投与が必要とされる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変動する。一般的に、ヒト抗体が最長の半減期を示し、以下、ヒト化抗体、キメラ抗体、そして非ヒト抗体の順となる。投与の用量および頻度は、治療が予防的であるかまたは治療的であるかに依存して変動し得る。予防的適用において、比較的低い投薬量が、長期間の時間にわたって比較的頻繁でない間隔で投与された。このような患者は、彼らの残りの生涯の間、継続して治療を受ける。治療的適用において、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、疾患の進行が減少または終了するまで、および好ましくは、患者が疾患の徴候の部分的または完全な改善を示すまで、時折必要とされる。その後、患者は予防的レジメを投与できる。
【0074】
免疫原をコードする核酸についての用量は、患者あたり約10ng〜約1g、約100ng〜約100mg、約1μg〜約10mg、または約30〜約300μg DNAの範囲である。感染性ウイルスベクターについての用量は、用量あたり、10−100ビリオンまたはそれ以上変動する。
【0075】
免疫応答を誘導するための因子は、予防的および/または治療的処置のための非経口的、局所的、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内、または筋肉内手段によって投与できる。免疫原性因子の投与の最も典型的な経路は皮下であるが、他の経路も同程度に有効であり得る。次に最も一般的な経路は筋肉内注射である。この型の注射は、最も典型的には、腕または足の筋肉において実施される。ある場合において、本発明の治療剤を、沈着が蓄積している特定の組織に直接注射すること、例えば、頭蓋内注射が所望され得る。筋肉内注射または静脈内注入が抗体の投与のために好ましい。ある方法において、特定の治療抗体は頭蓋に直接的に注射される。ある方法において、抗体は、持続放出組成物またはデバイス、例えば、Medipad(登録商標)デバイス(Elan Pharm.Technologies,Dublin,Ireland)として投与される。
【0076】
本発明の別の態様は、免疫原性タウペプチドまたは免疫原性タウエピトープを認識する抗体が、アミロイド形成性タンパク質またはペプチドの沈着に関連しまたはそれから生じる他の状態または疾患の予防または治療のために有効である薬剤と組み合わせて投与される、組み合わせ治療に向けられる。沈着を受けるアミロイド形成性タンパク質/ペプチドには、非限定的に、ベータタンパク質前駆体、プリオンおよびプリオンタンパク質、αシヌクレイン、タウ、ABri前駆体タンパク質、ADan前駆体タンパク質、島アミロイドポリペプチド、アポリポプロテインAI、アポリポプロテインAII、リゾチーム、シスタチンC、ゲルソリン、心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン、ケラトエピセリン、ラクトフェリン、免疫グロブリン軽鎖、トランスサイレチン、Aアミロイドーシス、β2マイクログロブリン、免疫グロブリン重鎖、フィブリノーゲンアルファ鎖、プロラクチン、ケラチン、およびメディン(medin)が含まれる。従って、本発明の組み合わせ治療剤は、免疫原性タウペプチドまたは免疫原性タウエピトープを認識する抗体、および上述のアミロイド形成性タンパク質またはペプチドの1つ以上を標的とする薬剤を含む。
【0077】
アルツハイマー病およびダウン症候群などのアミロイド形成性疾患の場合において、アミロイドベータ(Aβ)沈着を取り除くための免疫調節が新興の治療である。Aβを標的とする免疫治療は、一貫して認知の改善を生じた。タウおよびAβ病理は相乗作用的である。従って、タウとAβおよびAβ関連病理の両方のクリアランスを同時に標的とする組み合わせ治療は、各々個別に標的化するよりも有効であり得る。
【0078】
パーキンソン病および関連する神経変性疾患の場合において、凝集型のαシヌクレインタンパク質を取り除くための免疫修飾もまた新興の治療である。タウとαシヌクレインの両方のクリアランスを同時に標的とする組み合わせ治療は、いずれかのタンパク質を個別に標的とするよりも有効であり得る。
【0079】
プリオン病および関連する神経変性疾患の場合において、疾患関連型のプリオンタンパク質PrP
Scを取り除くための免疫修飾もまた新興の治療である。従って、タウと病理学的PrP
Scタンパク質の両方のクリアランスを同時に標的とする組み合わせ治療は、いずれかのタンパク質を個別に標的とするよりも有効であり得る。
【0080】
2型糖尿病の個体はアルツハイマー病の発症に対する傾向がより大きい可能性がある。従って、島アミロイドポリペプチドのクリアランスを標的とする薬剤と、アルツハイマー病の発症または進行を予防する(すなわち、タウ沈着を予防する)薬剤を含む組み合わせ治療は、個体に対して治療的利点を増強する。
【0081】
本発明の別の態様は、アルツハイマー病または他のタウオパシーを被験体において診断する方法に関する。この方法は、診断試薬を使用して病理学的タウコンフォーマーの存在を被験体において検出することを包含し、ここで、この診断試薬は、本発明の抗体またはその活性結合フラグメントである。上記に記載されるように、抗体は、配列番号2−75または配列番号101−103から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたタウペプチドについての抗原特異性を有する。アルツハイマー病または他のタウオパシーの診断は、被験体における病理学的タウコンフォーマーの検出に基づく。
【0082】
本発明の診断用抗体試薬を使用する、被験体における病理学的タウコンフォーマーの存在の検出は、被験体からの生物学的サンプル(例えば、血液、尿、脳脊髄液)を入手すること、診断用抗体試薬と生物学的サンプルを接触させること、および被験体からのサンプル中の病理学的タウタンパク質コンフォーマーへの診断用抗体試薬の結合を検出することによって達成できる。本発明の診断用抗体を使用して生物学的サンプル中の病理学的タウタンパク質の検出を実行するためのアッセイは当該技術分野において周知であり、これには、非限定的に、ELISA、免疫組織化学、ウェスタンブロットが含まれる。
【0083】
あるいは、本発明の診断用抗体試薬を使用する、被験体における病理学的タウタンパク質コンフォーマーの存在の検出は、インビボ画像化技術を使用して達成できる。インビボ画像化技術は、病理学的タウペプチドまたはエピトープ(すなわち、配列番号2−75および101−103)についての抗原特異性を有する診断用抗体を被験体に投与すること、および病理学的タウコンフォーマーへの診断用抗体試薬の結合をインビボで検出することを包含する。上記に記載されるように、好ましい抗体は、非タウタンパク質に結合することなく、かつタウの非病理学的型に結合することなく、病理学的タウタンパク質に結合する。
【0084】
診断用抗体または同様の試薬は、静脈内注射によって患者の身体に、または頭蓋内注射によって脳に直接的に投与できる。抗体の投薬量は、治療方法用と同じ範囲内であるべきである。典型的には、抗体は標識されるが、ある方法においては、病理学的タウタンパク質についての親和性を有する一次抗体は標識されておらず、そして二次標識剤は一次抗体に結合するために使用される。標識の選択は検出の手段に依存する。例えば、蛍光標識が光学検出のために適切である。常磁性標識の使用は、外科的介入なしでの断層撮影検出のために適切である。放射性標識もまた、PETまたはSPECTを使用して検出できる。
【0085】
診断は、被験体からのサンプル中または被験体における、標識されたタウコンフォーマー、タウ凝集物、および/または神経原線維タングルの数、サイズ、および/または強度を、対応するベースライン値に対して比較することによって実施される。これらのベースラインの値は、疾患ではない個体の集団における平均レベルを表すことができる。ベースライン値はまた、同じ被験体において決定された以前のレベルを表すこともできる。
【0086】
上記の診断方法はまた、治療に対する被験体の応答をモニターするためにも使用できる。この実施形態において、被験体における病理学的タウの存在の検出は、治療の開始前に決定される。この時点での被験体における病理学的タウのレベルは、ベースライン値として使用される。治療の過程の間の種々の時点において、病理学的タウタンパク質コンフォーマー、タウ凝集物、および/または神経原線維タングルの検出が反復され、その後、測定値はベースライン値と比較される。ベースラインと比較した値の減少は治療に対するポジティブな応答のシグナルである。病理学的タウは脳から取り除かれるので、値はまた、生物学的液体の中で一次的に増加することもあり得る。
【0087】
本発明はまた、上記の診断方法およびモニタリング方法を実施するためのキットに向けられる。典型的には、このようなキットは、診断用試薬、好ましくは、病理学的タウペプチド(すなわち、配列番号2−75および101−103)について抗原特異性を有する本発明の抗体を含む。本キットはまた、検出可能な標識を含むことができる。診断用抗体それ自体が、直接的に検出可能であるかまたは二次反応(例えば、ストレプトアビジンとの反応)を介して検出可能である検出可能な標識(例えば、蛍光分子、ビオチンなど)を含んでもよい。あるいは、検出可能な標識を含む第2の試薬が利用されてもよく、ここで、この第2の試薬は、一次抗体に結合特異性を有する。生物学的サンプル中の病理学的タウタンパク質を測定するために適切な診断用キットにおいて、キットの抗体は、マイクロタイターディッシュのウェルなどの固相にあらかじめ結合されて供給されてもよい。
【0088】
本発明の診断キットはまた、本発明の免疫原性タウペプチドの投与後に被験体における抗体産生を検出するために有用であるキットもまた含む。典型的には、このようなキットは、被験体によって生成される抗体の抗原性エピトープを含有する試薬を含む。このキットは検出可能な標識もまた含む。好ましい実施形態において、この標識は、典型的には、抗イディオタイプ抗体の型である。このキットの型は、固相、例えば、マイクロタイタープレートのウェルに前もって結合されて供給できる。
【0089】
以下の実施例は、本発明の治療方法における組成物のための種々の方法を例示する。これらの実施例は、例示することが意図されるが、本発明の範囲を限定することはいかなる場合においても意図されない。
【実施例】
【0090】
実施例1−ペプチド
ペプチド免疫原は、Keck施設(the Keck facility)(Yale University)において、p−メチル−ベンズヒドリルアミン樹脂上での固相技術によって、Biosearch SAM 2合成装置(Biosearch,Inc.,San Rafael,Ca.)を使用して合成された。これらのペプチドは、HFを用いて樹脂から切断され、次いで、エーテルおよび酢酸を用いて抽出され、その後凍結乾燥された。続いて、ペプチドは、0.78×30cmカラム上での逆相支持媒体(Delta−Bondapak)の使用を伴い、0.1% TFA中のアセトニトリルの0−66%直線状グラジエントを用いるHPLCによって精製された。
【0091】
実施例2−研究に使用された動物
研究は、いくつかの脳領域および脊髄に神経原線維タングルを発生するトランスジェニック(Tg)JNPL3 P301Lマウスモデルにおいて実施された(Taconic,Germantown,NY)(Lewis et al.,「Neurofibrillary Tangles,Amyotrophy and Progressive Motor Disturbance in Mice Expressing Mutant(P301L)Tau Protein」,Nat Genet 25:402−405(2000)、これはその全体が参照により組み込まれる)。このモデルは、ADのために理想的ではないが、これは、タングルの発生の結果を研究するため、およびこれらの凝集物の生成を妨害し得る治療をスクリーニングするための優秀なモデルである。これらの動物の別の利点は、比較的初期の病理の発症である。ホモ接合性系統において、タウ病理に付随する行動の異常は、少なくとも3ヶ月まで初期に観察できるが、動物は、少なくとも8ヶ月齢まで比較的健常のままである。換言すれば、8ヶ月目において、動物は、治療の効果がモニターされることを可能にするために十分良好に移動し、それら自体で摂食し、そして行動学的な作業を実施できる。
【0092】
JNPL3 P301Lモデルに加えて、研究は、htau/PS1(M146L)マウスモデルを使用してもまた実行された(Boutajangout et al.,「Presenilin 1 Mutation Promotes Tau Phosphorylation and Aggregation in a Novel Alzheimer's Disease Mouse Model,」Alzheimer's and Dementia 4:T185(2008)、これはその全体が参照により組み込まれる)。htauマウスは、ヌルマウスタウバックグラウンド上で変異されていないヒトタウタンパク質を発現し、発症の齢および脳分布におけるアルツハイマータウ病理に良好に類似する(Andorfer et al.,「Hyperphosphorylation and Aggregation of Tau in Mice Expressing Normal Human Tau Isoforms,」J Neurochem 86:582−90(2003)、これはその全体が参照により組み込まれる)。プレセニリン(Presenlin)1タンパク質中に変異(M146L)を保有するPS1モデルは、Tg2576マウスと交雑させた場合に、Aβレベルを増加し、およびAβ沈着を促進したことが示された(Duff et al.,「Increased Amyloid−beta 42(43)in Brains of Mice Expressing Mutant Presenilin 1,」Nature 383:710−713(1996)およびHolcomb et al.,「Accelerated Alzheimer−Type Phenotype in Transgenic Mice Carrying Both Mutant Amyloid Precursor Protein and Presenilin 1 Transgenes,」Nature Med 4:97−100(1998)、これはその全体が参照により組み込まれる)。
【0093】
タウの6種すべてのヒトアイソフォームを発現するhtauマウスは、PS1(M146L)マウスと交雑され、マウスタウノックアウトバックグラウンド(htau/PS1/mtau−/−)に維持された。PS1変異は、htauモデルにおけるよりも初期の発症を伴う、より攻撃的なタウ病理に導くこのモデルにおいてタウの過剰リン酸化を促進する(Boutajangout et al.,「Presenilin 1 Mutation Promotes Tau Phosphorylation and Aggregation in a Novel Alzheimer's Disease Mouse Model,」Alzheimer's and Dementia 4:T185(2008)、これはその全体が参照により組み込まれる)。
【0094】
実施例3−ワクチン投与
Phos−タウペプチドは、Adju−Phosアジュバント(Brenntag Biosector,Denmark)と1mg/mLの濃度で混合され、この溶液は、投与の前に4℃で一晩回転され、リン酸アルミニウム粒子にペプチドが吸着することを可能にした。
【0095】
JNPL3 P301Lマウスは、100μlの皮下注射、続いて2週間後の2度目の注射、次いで、その後毎月(他に示されない限り)の注射を受容した。ワクチン接種は2−3月齢で開始し、動物が8−9月齢になるまで継続し、その時点で、動物は潅流され、それらの器官は分析のために収集された。マウスは一連の感覚運動試験を5−6ヶ月齢で経験し、そして8−9ヶ月齢で再度経験し、その後屠殺された。対象マウスはアジュバント単独を受容した。
【0096】
htau/PS1/mtau−/−マウス(n=12)は、リン酸化タウ免疫原タウ379−408[P−Ser396,404]で免疫された。アジュバント単独を受容した3つの非免疫対照群が含まれた。主要な対照群には、免疫されなかった同一のマウス(htau/PS1対照;n=16)からなった。他の対照群は、マウスタウを発現したhtau/PS1マウス(htau/PS1/mtau;n=8)ならびにマウスタウノックアウトバックグラウンドのhtau同腹子(htau対照;n=10)からなった。
【0097】
htau/PS1/mtau−/−マウス(3−4月齢)は、ミョウバンアジュバント中で100μgのリン酸化タウ誘導体を腹腔内(i.p.)で、最初の3回注射を2週間毎に受容した。引き続く投与は、毎月の間隔であった。対照群はアジュバント単独を受容した。7−8ヶ月目において、マウスは、治療効力を決定するための行動試験を経験し、引き続いて、8−9ヶ月齢で分析のために屠殺された。運動能力、横方向ビーム、およびロータロッドテストは、学習および記憶課題における測定された認知欠損が感覚運動異常に寄与できるか否かを決定するために実施された。認知試験は、放射状アーム迷路、閉鎖されたフィールド対称迷路、および物体認識テストを使用して実施された(Sigurdsson et al.,「An Attenuated Immune Response is Sufficient to Enhance Cognition in an Alzheimer's Disease Mouse Model Immunized with Amyloid−beta Derivatives」,J Neurosci 24:6277−6282(2004),Asuni et al.,「Vaccination of Alzheimer's Model Mice with Abeta Derivative in Alum Adjuvant Reduces Abeta Burden Without Microhemorrhages.」Eur J Neurosci.24:2530−42(2006),and Asuni et al.,「Immunotherapy Targeting Pathological Tau Conformers in a Tangle Mouse Model Reduces Brain Pathology with Associated Functional Improvements」,J Neurosci 27:9115−9129(2007)、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)。
【0098】
実施例4−Tau免疫治療は強固な抗体応答を生成する
マウスは研究の開始前(T0)、3回目の注射の1週間後、その後定期的に、そして屠殺の際(Tf)に採血された。ワクチンに対する抗体応答は、血漿の希釈により(他に示されない場合、1:200)、ELISAアッセイを使用して、以前に記載されたように決定され(Sigurdsson et al.,「Immunization with a Non−Toxic/Non−Fibrillar Amyloid−β Homologous Peptide Reduces Alzheimer's Disease Associated Pathology in Transgenic Mice」Am J Pathol.159:439−447(2001)and Sigurdsson et al.,「An Attenuated Immune Response is Sufficient to Enhance Cognition in an Alzheimer's Disease Mouse Model Immunized with Amyloid−beta Derivatives」J Neurosci.24:6277−6282(2004)、これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)、ここで、免疫原はImmulon(登録商標)マイクロタイターウェル(Thermo Fischer Scientific,Waltham,MA,)にコートされた。検出のために、西洋ワサビペルオキシダーゼに連結されたヤギ抗マウスIgG(Pierce,Rockford,IL)または抗マウスIgM(Sigma,St.Louis,MO)が1:3000希釈で使用された。テトラメチルベンジジン(Pierce)が基質であった。
【0099】
図1Aは、GPSLリンカーを介して破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたTau210−216[P−Thr
212−Ser
214](配列番号2)で免疫されたJNPL3 P301Lタングルマウスにおける強固なIgGおよびIgM免疫応答を示す。2−3ヶ月齢のマウスは、2週間間隔をあけて最初の2回の免疫を受容し、次いで、その後毎月、免疫を受容した。抗体応答を評価するために、マウスは最初の免疫前に採血され、その後、ワクチン投与の1週間後に定期的に採血され、そして8−9ヶ月齢で組織収集のために屠殺された。
図1Aは、IgGおよびIgM抗体応答が、6回目の免疫(T3)の1週間後に測定され、8−9ヶ月齢で再度測定され、これは屠殺の時点であった(Tf=T最終)ことを示す。
図1Bは、GPSLを介してTT947−967に連結された関連性のないタウエピトープTau260−264[P−Ser
262]に結合しているIgGおよびIgMによって評価されるように、強力な抗体応答が破傷風毒素エピトープに対して生成されることを示す。
【0100】
図2Aに示されるように、GPSLリンカーを介して破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたTau260−264[P−Ser
262](配列番号3)で免疫されたJNPL3 P301Lタングルマウスは、免疫原に対する強固なIgG応答を生じることを示す。上記と同様に、マウスは、2−3ヶ月齢から8−9ヶ月齢になるまで、最初の2回の免疫は2週間間隔をあけて受容し、次いでその後は毎月、免疫を受容した。抗体応答の良好な部分は、GPSLを介してTT947−967(
図2B)に連結された関連性のないタウエピトープTau210−216[P−Thr
212−Ser
214]へのIgG結合によって評価されるように、破傷風毒素エピトープに対して生成される。しかし、
図2Cに示されるように、抗体応答の良好な部分は、Tau260−264[P−Ser
262]領域を含む、より大きなタウエピトープTau240−270[P−Ser
262]へのIgG結合によって評価されるように、タウエピトープに対して生成される。T0−T最終:ワクチン接種の前の採血(T0)、3回目の免疫の1週間後の採血(T1)、6回目の免疫の1週間後の採血(T2)、7回目の免疫の1週間後の採血(T3)、および組織収集時の採血(Tf)。
【0101】
強固な抗体(IgG)応答が、破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたTau229−237[P−Thr
231−Ser
235](配列番号4)を用いて免疫されたJNPL3 P301Lタングルマウスにおいて生成された(
図3)。これらのマウスは、2−3ヶ月齢で、2週間間隔をあけて、次いで、1ヶ月後免疫され、そして3回目の免疫の1週間後に採血された(T1)。
【0102】
強固な抗体(IgG)応答は、ミョウバンアジュバント中の擬リン酸化免疫原であるTau379−408[Asp
396,404](配列番号57)を用いて免疫されたJNPL3 P301Lタングルモデルマウスにおいてもまた生成された。重要なことに、これらの抗体は、ホスホエピトープであるTau379−408[P−Ser
396,404]を同程度まで認識する。これらのマウスは、2−3ヶ月齢から、最初の2回の免疫については2週間毎に、その後は1ヶ月に1回免疫した。これらのマウスは、7−8ヶ月齢での組織採集の時点で採血された(Tf=T最終)。
【0103】
実施例5−免疫治療は脳におけるタウ凝集を減少する
タウ病理の組織学的分析のために、マウスは、フェノバルビタールナトリウム(120 mg/kg,i.p.)で麻酔され、動脈を横切ってPBSで潅流され、そして以前に記載されたように脳が処理された(Sigurdsson et al.,「Immunization with a Non−Toxic/Non−Fibrillar Amyloid−β Homologous Peptide Reduces Alzheimer's Disease Associated Pathology in transgenic Mice」Am J Pathol 159:439−447(2001);Sigurdsson et al.,「An Attenuated Immune Response is Sufficient to Enhance Cognition in an Alzheimer's Disease Mouse Model Immunized with Amyloid−beta Derivatives」J Neurosci 24:6277−6282(2004);およびSigurdsson E.,「Histological Staining of Amyloid−beta in Mouse Brains」Methods Mol Biol 299:299−308(2005)これらはそれらの全体が参照により組み込まれる)。手短に述べると、右半球が、過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒド(PLP)中で一晩浸漬固定され、一方、左半球は、タウタンパク質分析のために素早く凍結された。固定後、脳は、20% グリセロールおよび2% ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有するリン酸緩衝液に移され、切片化するまで4℃で保存された。連続冠状脳切片(40μm)が切断され、10番目毎に、PHFタウタンパク質のC末端上の微小管結合反復の中に位置するリン酸化セリン396および404を認識するPHF1モノクローナル抗体で染色された(Otvos et al.,「Monoclonal Antibody PHF−1 Recognizes Tau Protein Phosphorylated at Serine Residues 396 and 404」J Neurosci Res 39:669−673(1994),これはその全体が参照により組み込まれる)。
【0104】
タウ抗体染色は、全体が参照により組み込まれる、Sigurdsson et al.,「Immunization with a Non−Toxic/Non−Fibrillar Amyloid−β Homologous Peptide Reduces Alzheimer's Disease Associated Pathology in Transgenic Mice」Am J Pathol 159:439−447(2001)およびSigurdsson et al.,「An Attenuated Immune Response is Sufficient to Enhance Cognition in an Alzheimer's Disease Mouse Model Immunized with Amyloid−beta Derivatives」J Neurosci 24:6277−6282(2004)に記載されるように実施された。手短に述べると、切片は、1:100〜1:1000希釈で一次PHF1抗体中でインキュベートされた。マウスオンマウス免疫検出キット(a mouse on mouse immunodetection kit)(Vector Laboratories,Burlingame,CA)が使用され、ここでは、抗マウスIgG二次抗体が1:2000希釈で使用された。
【0105】
組織切片の分析は、Bioquant画像解析システムを用いて定量された。このソフトウェアは、画像フィールドの中の物体をセグメント化するために、色調、彩度、および強度を使用する。閾値は、標準のスライドセット上で正確に同定された物体を用いて確立され、これらのセグメント化閾値は、分析セッションの全体を通して一定のままであった。閾値パラメーターの確立後、画像フィールドはフレームグラバーでデジタル化された。Bioquantソフトウェアは、バックグラウンド照射における不均一性を補正し(ブランクフィールド補正)、全体のフィールドの測定パラメーターを計算する。免疫組織化学の定量的画像分析のために、歯状回の顆粒層が最初に選択され、これは、ニューロン内タウ凝集物(前タングル(pretangles)およびタングル(tangles))を一貫して含んだ。この観察は、このモデルのもともとの特徴と一致する(Lewis et al.,「Neurofibrillary Tangles,Amyotrophy and Progressive Motor Disturbance in Mice Expressing Mutant(P301L)Tau Protein」Nat Genet 25:402−405(2000)、これはその全体が参照により組み込まれる)。すべての手順は、研究の実験条件に対して盲検的である個人によって実施された。サンプル番号は組織処理の開始前にランダム化され、暗号は分析が完了した後のみに破られた。マウス脳からの各10番目の切片がサンプリングされ、測定は、フィールドの左端において歯状回の先端を有する反応生成物によって占められた×200拡大の測定フィールド中の領域のパーセントであった。動物あたり4〜5個の切片が分析された。
【0106】
TT947−967(T299)に連結されたTau260−264[P−Ser
262](配列番号3)を用いるホモ接合性JNPL3タウP301Lマウスの免疫は、アジュバントのみを受容する対照マウスと比較して、脳幹(
図5A)と歯状回(
図5B)の両方において病理学的タウを減少した。同様に、リン酸化Tau379−408[P−Ser
396,404]免疫原性ペプチドを用いるhtau/PS1マウスの免疫は、梨状皮質(pyriform cortex)中で56%までタウ凝集の量を減じた(
図6、htau/PS1免疫をhtau/PS1対照に対して比較)。免疫群と対照群の間で有意な違いが観察された(片側ANOVA、p<0.01)。ポストホック分析もまた、免疫したhtau/PS1マウスがそれらのhtau/PS1対照とは異なったことを示した(p<0.01)**p<0.01。
【0107】
実施例6−Tau免疫治療は認知低下を予防する
タウ免疫治療がP301Lにおいて観察される加齢関連感覚運動異常を予防もしくは逆転するか否か、またはこれがhtau/PS1マウスにおいていかなる運動不全も引き起こすか否かを決定するために、免疫原性Tau 260−264[P−Ser
262](配列番号3)またはTau 379−408[P−Ser
396,404](配列番号82)を投与された動物が、以下に記載される種々の感覚運動試験および認知試験を使用して評価された。
【0108】
ロータロッドテスト:動物はロッド(直径3.6cm)装置上に配置され、前肢および後肢の運動神経およびバランスを測定することによって、運動神経およびバランスの違いを評価した(Rotarod 7650加速(accelerating)モデル;Ugo Basile,Biological Research Apparatus,Varese,Italy)。この手順は、混乱した訓練を伴うことなく運動行動を評価するために設計された。動物は、実演のベースラインレベルに達するために十分である2回の試行の訓練セッションを受容することによって、この装置に慣らされた。次いで、マウスは、速度を増加させながら、3回の追加の回数、試験された。慣熟の間、ロータロッドは1.0rpmに設定され、これは、30秒ごとに徐々に上昇され、そして各セッション後には30% エタノール溶液で清浄にふき取られた。柔らかい発泡クッションが装置の下に配置され、落下による潜在的な傷害を防いだ。各動物は3回のセッションについて試験され(続く分析のためにデータは合わせられた)、各セッションは15分間離され、そして測定は、回転バレルの上端から落下または転倒(しがみつきによる)するための待ち時間について取られた。
【0109】
横方向ビーム:この課題は、バランスおよび一般的な運動神経および機能の統合を試験する。マウスは、ゴールボックスに到達するために段階付けした木製ビームを横切るそれらの能力を測定することによって評価される(Torres et al.,「Behavioural,Histochemical and Biochemical Consequences of Selective Immunolesions in Discrete Regions of the Basal Forebrain Cholinergic System」Neuroscience 63:95−122(1994),これはその全体が参照により組み込まれる)。マウスは、50.8cm長であり、パッドを詰めた表面の30cm上に2つの同一の柱によって吊されている1.1cm幅のビーム上に配置される。ビームの各端には遮光したゴールボックスが付属している。マウスは、慣れるために垂直方向でビーム上に配置され、次いで、最大で60秒間モニターされた。落下前の各マウスの足のすべりの数、またはゴールボックスに達する数が、4回の連続する試行の各々について記録された。エラーは足のすべりとして定義され、数値として記録された。
【0110】
放射状アーム迷路:この迷路装置は、プレキシグラスから構築された8アーム上昇放射状迷路である。各アームは35cm長および7cm幅であり、1cm直径の水カップが各アームの端に位置している。15cmの高さの側壁が各アームに向けて12cm伸びており、動物をアーム間の交差から防いでいる。中心領域は、直径14cmの八角形形状のハブである。プーリーシステムによって遠隔操作される透明なプレキシグラスギロチンドアがアームへの接近を制御する。この迷路は、床レベルの75cm上に上昇しており、定められた位置のいくつかの独特な物体が、迷路の特別な手がかりとして働く。試験の前に、マウスは5日間適合された。この期間の間、マウスは、1日あたり1時間の間、水中0.1% サッカリンを受容し、次いで、各アームの端に配置されたカップから糖溶液にアクセスするように、その後16時間適合された。適合の最初の2日間は、マウスが自由に探索することが許容されたY迷路で行われた。次の3日間の適合は、放射状アーム迷路において実施され、ここでは、ドアは定期的に上げられ、および下げられて、それらの操作に付随する音に対して動物を慣れさせた。同じ水枯渇スケジュールは、9日間の試験期間の間維持された。マウスは、このスケジュール上で良好な健康を維持する。各試験の試行は、中心領域にマウスを配置すること、およびすべてのドアを上げることによって開始された。アームが入られたときに、すべてのドアは下げられた。マウスがサッカリン水を消費した後、そのアームへのドアが上げられ、マウスが中心領域に戻ることを可能にした。5秒間間隔後、次の試行が、すべてのドアを再度同時に上げることによって開始された。この手順は、動物が8個すべてのアームに入るか、または10分間が経過するかまで継続された。1日の習得セッションは9日間継続された。エラーの数(以前に訪問したアームに入ること)および各セッションを完了するための時間が記録された。
【0111】
物体認識:利用された自発的物体認識テストは短期記憶の欠損を測定し、床から50cmに上げられた正方形形状のオープンフィールドボックス(48cm正方形、黒色プレキシグラスから構築された18cmの高さの壁を有する)の中で実施された。光強度は30ルクスに設定された。テストの前日に、マウスは個別にセッションに慣らされ、ここで、これらは、15分間の間、空のボックスを探索させられた。訓練セッションの間、2つの新たな物体がオープンフィールドの対角線の角に配置され、動物は15分間探索された。任意の所定の試行のために、一対の物体は10cmの高さであり、同じ材料からなり、その結果、これらは、嗅覚的な手がかりによって容易に区別できなかった。各物体の探索に費やされた時間は追跡システムによって記録され(San Diego Instruments,San Diego,CA)、訓練フェーズの最後において、マウスは、保持遅延の期間の間(RD=3h)、ボックスから取り外された。正常マウスは、1時間までの遅延後に特定の物体を覚えており、保持試行の間に新規な物体を調べることにそれらの時間の大部分を費やす。保持テストの間、動物は、同じボックスに戻して配置され、ここでは、訓練の間に使用される以前によく知っている物体の1つが第2の新規な物体によって置き換えられ、6分間の間、自由に探索させられた。異なる物体の対は、所定の動物についての各試行のために使用され、物体の対に対する曝露の順序、ならびに各対のための指定されたサンプルおよび新規な物体は、群の中でおよび群を横切ってバランスが保たれた。新規な物体およびよく知っている物体を探索するために費やされた時間が6分間の間記録された。
【0112】
閉鎖フィールド対称迷路:この装置は、長方形フィールド、36に分割された9cm高さの壁を有する30cm正方形、9.5cmの正方形であり、透明なプレキシグラスの上端によって覆われている。各11×16×9cmのエンドボックスは、フィールドの対角線の角に位置される。対称迷路は、以前に議論されたような、Hebb−WilliamsおよびRabinovitch−Rosvold型のテストの改変である(Asuni et al.,「Vaccination of Alzheimer's Model Mice with Abeta Derivative in Alum Adjuvant Reduces Abeta Burden without Microhemorrhages」,Eur J Neurosci 24:2530−2542(2006)、これはその全体が参照により組み込まれる)。手短に述べると、主な違いは、各末端コンパートメントが、スタートボックスとゴールボックスの両方として機能し、マウスが代替試行に対して反対方向に走り、それによって、試行間の操作を排除することである。障壁は対称パターンでフィールドに配置され、その結果、マウスは同じターンに面し、与えられた問題の中でのいずれかの方向に行く。試験の前に、マウスは、水制限スケジュールに適合された(1日に2時間の水へのアクセス)。マウスは、試験の開始前に2回の適合セッションを与えられた。最初のセッションにおいて、すべての動物は、ゴールボックスにおいて、10分間、サッカリンフレーバーの水を与えられた。セッション2において、これらは、開始チャンバーに配置され、フィールドを探索することが許可され、そして水報酬(0.05mL)が利用可能であるゴールボックスに入る。マウスがスタートチャンバーからゴールボックスまで確実に走っていた場合、これらは、3つの練習セッションが与えられ、ここでは、ゴールボックスまでの直接的なアクセスを妨害するために、フィールドの中の異なる位置に1つまたは2つの障壁が配置された。正式の試験は、以前のデータ(Asuni et al.,「Vaccination of Alzheimer's Model Mice with Abeta Derivative in Alum Adjuvant Reduces Abeta Burden without Microhemorrhages」,Eur J Neurosci 24:2530−2542(2006)、これはその全体が参照により組み込まれる)および公開されているマウスについての基準に基づいて、困難さが等級付けられた3つの課題の提示からなった。1つの課題は1日あたりに提示され、そしてマウスは2分間の試行間間隔で各課題に対して5回の試行が与えられた。成績は同じ観察者によってエラー(すなわち、指定されたエラーゾーンへのエントリーおよび再エントリー)、および各試行を完了するための時間により手動で点数付けされた。
【0113】
これらの実験の目的は、選択された感覚運動(すなわち、横方向ビームおよびロータロッド)および認知行動(すなわち、放射状アーム迷路、物体認識テスト、および閉鎖フィールド対称迷路テスト)に対するワクチン接種の効果を評価することであった。ホモ接合性P301Lマウスは3ヶ月齢まで初期にタングル病理を有し、これらの動物は5および8ヶ月齢で試験された。htau/PS1動物は7−8ヶ月齢で試験された。
【0114】
破傷風毒素ヘルパーT細胞エピトープ(TT947−967)に連結されたリン酸化された免疫原性タウペプチドTau260−264[P−Ser
262]を用いるホモ接合性JNPL3タウP301Lマウスの免疫は、8ヶ月齢における横方向ビームテストを使用して評価されるように、神経原線維タングルの発生に伴う機能障害(
図7A)、ならびに5−6ヶ月齢および8−9ヶ月齢におけるロータロッドテストによって評価される機能障害(
図7B)を予防した。対照JNPL3タウP301Lマウスはアジュバント単独を受容した。
【0115】
リン酸化Tau379−408[P−Ser396,404]を用いるhtau/PS1マウスの免疫は、利用された3種すべてのテスト:1)放射状アーム迷路(RAM;二元ANOVA反復測定、p<0.0001、
図8A)、2)物体認識テスト(ORT;一元ANOVA、p=0.005、
図8B)、および3)閉鎖フィールド対称迷路(CFSM;一元ANOVA、迷路A:p<0.001、迷路B:p<0.0001、迷路C:p<0.01、
図9A−9C)において認知の低下を予防した。RAMおよびCFSMにおいて、免疫されたhtau/PS1マウスは、すべての日に(RAM;p<0.01−0.001)およびエラーの数によって示されるような複雑さが増加しているものである迷路のすべておいて、対照htau/PS1よりも良好な性能であった(注記:Y軸スケールは異なる;CFSM 迷路A:p<0.01、迷路B,C:p<0.001)。ORTにおいて、ポストホック分析は、処理されたhtau/PS1群が、それらの同一の対照マウスよりもより良好な短期記憶を有した(p<0.01)。認知的に正常なマウスが、古い物体と比較して、新しい物体にそれらの時間の約70%を費やすことは十分に確立されている(Asuni et al.,「Immunotherapy Targeting Pathological Tau Conformers in a Tangle Mouse Model Reduces Brain Pathology with Associated Functional Improvements」,J Neurosci 27:9115−9129(2007),これはその全体が参照により組み込まれる)。免疫されたhtau/PS1マウスは、感覚運動課題(ロータロッド、横方向ビーム、運動活動)のいずれかにおいて、それらの免疫されていない同一の対照マウスとな有意に異なっていなかった。これらの知見は、免疫後に観察された認知の改善が、結果をさらに強化する感覚運動効果によって説明できないことを示す。
【0116】
実施例7−タウ免疫治療は病理学的タウのレベルを減少する
脳組織は、0.1mM 2−(N−モルホリノ)エタン(ethano)スルホン酸、0.5mM MgSO
4、1mM EGTA、2mM ジチオスレイトール、pH 6.8、0.75mM NaCl、2mM フェニルメチルスルホニルフルオリド、完全ミニプロテアーゼ阻害剤混合物(Complete mini protease inhibitor mixture)(10mLの水中に1タブレット;Roche)、およびホスファターゼ阻害剤(20mM NaFおよび0.5mM オルトバナジウム酸ナトリウム)を含む緩衝液中で均質化された。次いで、このホモジネートは、4℃で30分間遠心分離され(20,000×g)、可溶性細胞質画分(上清1)および不溶性画分(ペレット1)を分離する。このペレットは、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤を有さないが、1%(v/v)Triton X−100および0.25%(w/v)デオキシ(desoxy)コール酸ナトリウムを含んだ同じ体積の緩衝液に再懸濁され、50,000で30分間超遠心分離を行って、不溶性画分として分析された、界面活性剤で抽出された上清2を得た。上清1および2は100℃で5分間加熱され、同じ量のタンパク質が12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動された。ブロットはTBS中0.1% Tween−20を有する5%ノンファットミルクでブロックされ、様々な抗体とともに一晩インキュベートされ、次いで、ペルオキシダーゼ結合体化抗マウスまたは抗ウサギIgGとともに室温で1時間インキュベートされた。続いて、結合した抗体は、ECL(Pierce)によって検出された。イムノブロットのデンシトメトリー分析は、NIH Image Jプログラムによって実施された。ある研究は、病理生理学的条件の変化および細胞外マトリックス成分との相互作用はアクチンタンパク質合成を変化し得、アクチンを内部標準として不適切にすると報告しているので、病理学的タウのレベルはアクチンレベルの代わりに全体のタウタンパク質の量と比較して正常化された。
【0117】
ウェスタンブロット分析のために、全体のタウはポリクローナルB19抗体を用いて測定されたのに対し、病理学的タウはモノクローナルPHF1抗体を用いて検出された(
図10A−10F)。全体の可溶性および不溶性タウのレベルは群の間で有意に異なっていないのに対して(
図10A−10B)、可溶性PHF1染色されたタウのレベルは、免疫されたマウスにおいて、それらの同一の対照と比較して、有意に減少した(41%、p<0.001)(
図10C)。不溶性PHF1反応性タウの減少(22%)の傾向が観察された(
図10D)。さらなる分析は、免疫治療が、PHF1/B19の比率を、可溶性画分および不溶性画分において、それぞれ、35%および43%に減少させるという非常に強い傾向を示した(
図10Eおよび10F)。これらの知見は、病理学的タウが優先的に取り除かれたことを示す。
【0118】
重要なことに、免疫治療を受容したhtau/PS1マウスにおいて観察された認知改善は、免疫組織化学によって評価されたPHF1染色されたタウ凝集物の減少と良好に相関していた。有意な相関は、3つすべての記憶テストにおいて観察された(RAM(分析された試験の最終日):r=0.36,p=0.01;CFSM:迷路A、r=0.33、p=0.02;迷路C、r=0.40、p=0.01;ORT:r=−0.31、p=0.03)。ウェスタンブロット画分に関しては、有意な相関は、可溶性と不溶性の両方の画分、および放射状アーム迷路における全体のタウと比較したそれらの比率において観察されたが(可溶性PHF1:r=0.41,p<0.01;可溶性PHF1/全体の可溶性タウ:r=0.34、p<0.05;不溶性PHF1:r=0.52、p<0.001;不溶性PHF1/全体の不溶性タウ:r=0.33,p<0.05)、しかし、2つの他の認知テストにいては観察されなかった。
【0119】
実施例8−P−396、404エピトープを標的とする受動免疫治療は、脳における機能低下を予防し、タウ凝集を減少する
受動免疫の実行可能性を決定するために、ホモ接合性P301Lマウスは、P301L(JNPL3)マウスモデルおよびADにおいてNFTおよび前タングルを認識するモノクローナルタウ抗体であるPHF1(Dr.Peter Daviesより恵与)を腹腔内(i.p.)注射された(Lewis et al,「Neurofibrillary Tangles,Amyotrophy and Progressive Motor Disturbance in Mice Expressing Mutant(P301L)Tau Protein」,Nat Genet 25:402−40522(2000),これはその全体が参照により組み込まれる)。このモノクローナル抗体は、タウのC末端におけるセリンアミノ酸404および396上でリン酸化されたタウを認識する(Greenberg et al.,「Hydrofluoric Acid−Treated Tau PHF Proteins Display the Same Biochemical Properties as Normal Tau」,J Biol Chem 267:564−569(1992)これはその全体が参照により組み込まれる)。従って、これは、1つの積極的な免疫アプローチの表現型のモノクローナル類似体である(Asuni et al.,「Immunotherapy Targeting Pathological Tau Conformers in a Tangle Mouse Model Reduces Brain Pathology with Associated Functional Improvements」,J Neurosci 27:9115−9129(2007),これはその全体が参照により組み込まれる)、PHF1抗体エピトープを含有するTau379−408[P−Ser396,404]である。
【0120】
PHF1の用量はPBSに溶解された250μg/125μLであった。対照は、PBS中の同じ用量のマウスIgGをi.p.注射された。1回目の注射は9−12週齢の間に投与された。続いて、動物は、総計13回の注射で毎週受容され、続いて、5−6ヶ月の行動テスト、引き続き6−7ヶ月の組織分析を行った。
【0121】
PHF1抗体を用いる受動免疫は、P301Lマウスモデルにおけるタウ病理関連運動低下を予防した。
図11Aに示されるように、横方向ビームに対して、IgG注射対照とPHF1免疫動物の間に有意な違いが存在し、対照動物は、ビームと交差するときにより多く足を滑らせた(試行を合わせた、p=0.03)。同様に、PHF1免疫P301Lマウスは、歯状回においてPHF1染色されたタウ病理が対照よりも58%少なかった(p=0.02)(
図11B)。血漿レベルのPHF1抗体とタウ病理の間の逆相関が、脳幹において観察され(
図12A;p<0.01)、運動皮質において相関の強い傾向が観察された(
図12B;p=0.06)。
【0122】
免疫された動物の血漿中のPHF−1抗体の量(μg/μL)は、2週間の間に4分の1に減少した(
図11C)。対照には検出可能な抗体が観察されなかった。これらは、免疫マウスについての平均値である。
【0123】
実施例9−モノクローナルタウ抗体の生成
10匹のbalb/cマウスは、N末端に加えられたシステイン残基を介してKLHに連結されたTau386−408[P−Ser
396,404](配列番号13)で免疫される。血漿の段階希釈によって検出されるように、免疫原のタウ部分に対して強力な抗体力価が生成された(
図13A)。2匹のマウスが細胞融合のために選択され、最初のスクリーニングが、KLHなしの同免疫ペプチドを用いて実施された。二次スクリーニングが、同じペプチド、ならびにTau386−408[P−Ser
396],Tau386−408[P−Ser
404]、および非ホスホペプチドTau386−408(
図13B)を用いて実施された。このスクリーニングに基づいて、クローンが最初および2回目のサブクローニングのために選択された。重要なことに、多数の強力にポジティブなクローンが同定され(>50)、そして、この領域の中でホスホ−エピトープを特異的に認識し、またはこの領域の中のリン酸化されていない部位に結合し、それによって、分子の同じ領域の中のホスホまたは非ホスホタウエピトープに結合する抗体の効力および安全性のプロフィールの比較を可能にする、安定なクローンが同定された。
【0124】
さらなるサブクローニングのために選択されたホスホ特異的モノクローナル抗体の中で、6個のうちの4個がホスホ−Ser
404エピトープについての特異性を保持していた(
図14Aのクローン1F12C2、1F12G6、4E6E3、および4E6G7を参照のこと)。2個のクローンはホスホ−特異性が弱いか(8B2D1)、または非特異的であった(8B2D4)(
図14A)。非ホスホ特異的モノクローナル抗体のうち、特に、6B2E9および6B2G12は、さらなるサブクローニングの後でそれらの非特異性を保持していた(
図14B)。
【0125】
4個のP−Ser
396,404タウホスホ−特異的(
図15A)および非ホスホ−特異的(
図15B)モノクローナル抗体クローンの反応性は、JNPL3 P301Lマウスおよび野生型(Wt)マウスからの脳ホモジネートに対して試験された。4個のホスホ−特異的クローンのうち、4E6G7は最強の反応性を示し(
図15A)、これは、
図14AのELISAの結果と一致している。タウP−Ser
396,404エピトープもまた認識するPHF−1抗体とは対照的に、すべてのクローンは、WtホモジネートよりもJNPL3 P301L脳ホモジネートとより良好に反応する。タウの大部分はリン酸化されていないので、非ホスホ特異的クローンは、予測されたように、より速く反応する。
【0126】
別のセットの10匹のbalb/cマウスは、C末端上のシステイン残基を介してKLHに連結されたTau260−271[P−Ser
262](配列番号12)で免疫された。強力な力価がTau260−271[P−Ser
262]免疫原に対して生成されたが、血漿抗体は非ホスホペプチドTau260−271を同様に認識した(
図16A)。8個の安定なホスホ−特異的クローンが、さらなる分析のための2回目のサブクローニングから選択され(
図16B)、そして2C11クローンが、そのままでIgG2aアイソタイプの抗体産生のために選択された。IgG3はより短い半減期を有し、それゆえに、受動免疫研究のために理想的とは見なされていない。
【0127】
JNPL3 P301Lおよび野生型(Wt)マウスからの脳ホモジネートに対する3個のホスホ−特異的P−Ser
262タウモノクローナル抗体クローンの反応性が評価された(
図17)。2C11抗体クローンは、他のホスホ−特異的クローンよりも高分子量バンドを認識し、これは、野生型とP301L組織を区別する。5F7D10および5F7E9は他のクローンの代表的なものである。Tau−5は全体のタウを認識し、タウのアミノ酸216−227の周辺のエピトープに結合する。CP27はヒトタウを認識するが、マウスタウを認識しない。
【0128】
5F7D10抗体クローンは、
図18A−18Eに示されるように、P301Lタングルマウス脳切片におけるタウ病理を容易に検出した。5F7D10モノクローナル抗体は、野生型(
図18B)と比較して、P301L脳切片(
図18A)において強力な組織学的染色を示す。PHF1抗体は、同じタングルマウスの中でタウ病理を捕捉するが(
図18C)、このパターンは5F7D10抗体とは異なっており、このことは、これらが異なるタウエピトープを認識するので、驚くべきことではない。
図18Dは、凝集したタウを有する神経細胞を示す
図18Aにおけるボックスを付した領域の拡大画像である。
図18Eは、異なるJNPL3 P301Lマウスにおいて5F7D10を用いて検出されたタングル様病理のより高度な拡大画像である。
【0129】
好ましい実施形態が本明細書においてより詳細に表現され、記載されてきたが、種々の改変、付加、置換などが本発明の技術思想から逸脱することなくなされ得ること、従って、これらは以下に続く特許請求の範囲において規定されるような本発明の範囲内にあると見なされることが関連分野における当業者には明白である。