特許第5917405号(P5917405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917405機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタ及び振動エネルギー・ハーベスタを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917405
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタ及び振動エネルギー・ハーベスタを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20160422BHJP
   G05F 1/618 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   G05F1/56 310T
   G05F1/618 310
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-539313(P2012-539313)
(86)(22)【出願日】2010年11月17日
(65)【公表番号】特表2013-511756(P2013-511756A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2010067655
(87)【国際公開番号】WO2011061215
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年9月25日
(31)【優先権主張番号】0920259.9
(32)【優先日】2009年11月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507340234
【氏名又は名称】パーペトゥーム、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERPETUUM LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100153914
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 勝己
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スチュアート、パーカー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、ロバーツ
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−245842(JP,A)
【文献】 特開平07−239721(JP,A)
【文献】 特開平11−032475(JP,A)
【文献】 実開平05−062183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
G05F 1/618
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタであって、
機械的振動を受けたとき電気エネルギーを生成する装置と、
前記装置に電気的に接続され、前記振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に実質的に一定の出力電流を供給する電流制御回路と、を備え、
前記電流制御回路は、前記装置と前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力との間に接続された第1の制御可能な可変抵抗を有し、
前記電流制御回路は、前記第1の制御可能な可変抵抗を制御して所定の入力電圧を維持するように構成され、且つ、前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力における出力電圧を、前記出力電圧が所定のしきい値電圧を超えないように制御するように構成され、
前記電流制御回路は、
前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力に接続された第2の制御可能な可変抵抗であって、前記第2の制御可能な可変抵抗は、前記装置の電源線と接地線との間にシャント抵抗を備える、第2の制御可能な可変抵抗と、
予め設定された基準電圧を生成する基準電圧生成器と、前記装置からの前記入力電圧を前記基準電圧と比較し、前記入力電圧が前記基準電圧とは異なる場合に、前記第1の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第1の制御信号を生成する誤差増幅器と、を有する、
振動エネルギー・ハーベスタ。
【請求項2】
前記第1の制御可能な可変抵抗は、MOSFETまたはバイポーラ接合トランジスタを備える、請求項1に記載の振動エネルギー・ハーベスタ。
【請求項3】
前記第2の制御可能な可変抵抗は、MOSFETまたはバイポーラ接合トランジスタを備える、請求項1に記載の振動エネルギー・ハーベスタ。
【請求項4】
前記誤差増幅器の出力が、前記第2の制御可能な可変抵抗に接続され、それによって前記誤差増幅器は、前記入力電圧が前記基準電圧とは異なる場合に、前記第2の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第2の制御信号を生成する、請求項1に記載の振動エネルギー・ハーベスタ。
【請求項5】
前記電流制御回路は前記装置と一体化されている、請求項1に記載の振動エネルギー・ハーベスタ。
【請求項6】
前記電流制御回路は、前記装置に取外し可能に取り付けられたモジュール内にある、請求項1に記載の振動エネルギー・ハーベスタ。
【請求項7】
機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタを動作させる方法であって、
a.振動可能な支持体上に、機械的振動を受けたとき電気エネルギーを生成する装置を設けるステップと、
b.前記装置に電気的に接続され、前記装置が振動したとき、前記振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に実質的に一定の出力電流を供給するステップを実行する電流制御回路を使用するステップと、を含み、
前記実質的に一定の出力電流を供給するステップは、
前記装置と前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力との間に接続された第1の制御可能な可変抵抗を、前記装置からの入力電圧が所定の電圧で維持されるように制御するステップと、
前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力に接続された第2の制御可能な可変抵抗を変化させることによって、前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力における出力電圧を、前記出力電圧が所定のしきい値電圧を超えないように制御するステップと、
含み、
前記第1の制御可能な可変抵抗を制御するステップは、前記装置からの前記入力電圧を基準電圧と比較し、そして当該比較は、前記入力電圧が前記基準電圧とは異なる場合に、前記第1の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第1の制御信号を生成するステップを含み、
前記第2の制御可能な可変抵抗は、前記装置の電源線と接地線との間にシャント抵抗を備える、方法。
【請求項8】
前記電流制御回路は、前記装置からの前記入力電圧を前記基準電圧と比較し、そして当該比較は、前記入力電圧が前記基準電圧とは異なる場合に、前記第2の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第2の制御信号を生成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
記振動エネルギー・ハーベスタを設置するステップをさらに含み、前記設置するステップにおいて、前記装置が振動したとき、前記振動エネルギー・ハーベスタの前記電気出力にて前記出力電流が測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記出力電流はマルチメータを用いて測定される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタ(vibration energy harvester)に関する。本発明はまた、設置段階(installation phase)中を含めた、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタの動作方法に関する。特に、本発明は、例えば、インテリジェント・センサ・システムへの電力供給で用いられる、周囲の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能な小型発電機のような装置に関する。かかるシステムは、電源ケーブルまたはバッテリをなくすことに経済的利点または動作上の利点がある数多くの分野で使用され得る。
【背景技術】
【0002】
振動エネルギー・ハーベスタ(VEH)は、当技術分野で良く知られており、電磁誘導または圧電電力変換を用いた機械的共振器からなる。いずれの場合も、機械的共振器は、ばね上質量(sprung mass)からなる。
【0003】
例えば、無線センサに電力供給するために、周囲の振動から有用な電力を取得する振動エネルギー・ハーベスタ、例えば電気機械発電機を使用することが知られている。
【0004】
典型的な電気機械発電機は、システムが振動したとき磁気コアによって形成された磁束をコイルが横断するように、磁石またはコイルに取り付けられた機械的なばねと質量の組合せからなる磁石コイル発電機である。振動エネルギー・ハーベスタは、固定の固有(共振)振動数を有するか、または動作温度が変化したときこの振動数の変化に対処できるほど十分大きくされた帯域幅を有するべきである。
【0005】
振動エネルギー・ハーベスタを予測される振動源上に設置している間、振動源に対する様々な予測される取付け位置を比較することができるように、VEHの電流出力を測定する何らかの方策を有すると有利となるであろう。このようにして、所与の振動エネルギー・ハーベスタの、所与の振動源に取り付けられたときの出力電流を最大化することができる。
【0006】
しかし一般に、その負荷へのVEHの電流出力は、負荷のインピーダンスにも依存する。最大のVEHの電流出力の実現にとってさらに厄介なことに、使用時、負荷は通常、VEHによって徐々に充電されるコンデンサである。充電過程中、コンデンサの実効インピーダンスは、大幅に変化する。したがって、電流出力もやはり、変化することになる。設置時の、所与の位置での初期のいかなる電流測定値も、動作中に最大電流が供給されることを必ずしも示さない。
【0007】
したがって、VEH使用時に容量性負荷のインピーダンスを適正に表すことになる単一の負荷インピーダンスを、設置中に使用することができないという問題がある。したがって、VEHが設置された後で使用されているとき、VEH電流出力が後でどうなるかを予測することは困難である。したがって、後の動作中に最大電流出力が得られることになる、予測される振動源上のVEHの特定の取付け位置を決定することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタ、例えば電気機械発電機などを提供することを目的とし、ユーザが設置中に電流出力を測定すること、及び、振動エネルギー・ハーベスタが後で用いられる時に、同じ電流出力が負荷に送り込まれることを知ることが可能となるように構成された振動エネルギー・ハーベスタを提供することによって、上述の問題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタであって、機械的振動を受けたとき電気エネルギーを生成する装置と、その装置に電気的に接続され、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力(electrical output)にて実質的に一定の出力電流を供給する電流制御回路と、を備える、振動エネルギー・ハーベスタを提供する。
【0010】
好ましくは、電流制御回路は、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に接続された第1の制御可能な可変抵抗を備える。
【0011】
典型的には、第1の制御可能な可変抵抗は、MOSFETまたはバイポーラ接合トランジスタを備える。
【0012】
好ましくは、電流制御回路は、装置からの入力電圧が所定の電圧で維持されるように、第1の制御可能な可変抵抗を制御するように構成される。
【0013】
より好ましくは、電流制御回路は、予め設定された基準電圧を生成する基準電圧生成器と、装置からの入力電圧を基準電圧と比較し、入力電圧が基準電圧とは異なる場合に、第1の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第1の制御信号を生成する誤差増幅器と、をさらに備える。オプションで、追加の増幅器が、誤差増幅器の出力に接続されてもよく、追加の増幅器の出力は、第1の制御可能な可変抵抗への出力であり、第1の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する。
【0014】
一実施形態では、電流制御回路は、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力における出力電圧が所定のしきい値電圧を超えないように、出力電圧を制御するように構成される。
【0015】
好ましくは、電流制御回路は、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に接続された第2の制御可能な可変抵抗をさらに備え、この第2の制御可能な可変抵抗は、装置の電源線と接地線との間にシャント抵抗(shunt resistance)を備える。
【0016】
典型的には、第2の制御可能な可変抵抗は、MOSFETまたはバイポーラ接合トランジスタを備える。
【0017】
より好ましくは、誤差増幅器の出力は、第2の制御可能な可変抵抗に接続され、それによって誤差増幅器は、入力電圧が基準電圧とは異なる場合に、第2の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第2の制御信号を生成する。
【0018】
一実施形態では、電流制御回路は装置に組み込まれる。別の実施形態では、電流制御回路は、装置に取外し可能に取り付けられたモジュール内にある。
【0019】
本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー・ハーベスタの動作方法であって、a.振動可能な支持体上に、機械的振動を受けたとき電気エネルギーを生成する装置を設けるステップと、b.装置に電気的に接続され、装置が振動したとき、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力にて実質的に一定の出力電流を供給する電流制御回路を使用するステップと、を含む方法をさらに提供する。
【0020】
好ましくは、電流制御回路は、装置からの入力電圧が所定の電圧で維持されるように、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に接続された第1の制御可能な可変抵抗を制御する。
【0021】
より好ましくは、電流制御回路は、装置からの入力電圧を基準電圧と比較し、かかる比較によって、入力電圧が基準電圧とは異なる場合に、第1の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第1の制御信号を生成する。
【0022】
一実施形態では、電流制御回路は、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力における出力電圧が所定のしきい値電圧を超えないように、出力電圧を制御する。
【0023】
より好ましくは、電流制御回路は、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に接続された第2の制御可能な可変抵抗を変化させることによって、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力における出力電圧を制御し、この第2の制御可能な可変抵抗は、装置の電源線と接地線との間にシャント抵抗を備える。
【0024】
好ましくは、電流制御回路は、装置からの入力電圧を基準電圧と比較し、かかる比較によって、入力電圧が基準電圧とは異なる場合に、第2の制御可能な可変抵抗を選択的に調整する第2の制御信号を生成する。
【0025】
典型的には、この方法は、設置段階中に、振動エネルギー・ハーベスタを設置するステップをさらに含み、この設置するステップにおいて、装置が振動したとき、振動エネルギー・ハーベスタの電気出力にて出力電流が測定される。
【0026】
好ましくは、出力電流は、マルチメータを用いて測定される。
【0027】
本発明は、電気機械発電機、すなわち振動エネルギー・ハーベスタの電気出力に、“バッファ”回路を組み込むことによる、本発明の発明者らによる発見に少なくとも部分的に基づき、“バッファ”回路は、使用時にVEHとVEHの負荷との間に電気的に接続されることになり、かかる“バッファ”回路は、使用時に、VEHの電気出力が、VEHに接続されたいかなる負荷のインピーダンスのいかなる変化からも実質的に無関係となるように構成されている。その結果、広範囲にわたる負荷インピーダンスに同じ電流を送達(供給)し、最も重要なことには、充電容量性負荷に一定の電流を送達するように構成された改良された振動エネルギー・ハーベスタが得られる。
【0028】
VEHに電気的に接続されたかかるバッファ回路を用いると、設置中にVEHの電流出力を測定し、装置の使用時に、どの負荷が後に選択されるかに拘わらず、同じ電流出力が後にいかなる負荷にも送り込まれることを知ることが可能となる。
【0029】
VEHの使用寿命中に負荷が交換される場合でも、VEHの電流出力はなおも知られることになり、その後も同じ電流出力が、交換された負荷に送り込まれることになる。
【0030】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態が単なる例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態による機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する電気機械発電機の電気出力に接続された可変抵抗素子を含む、電流制御回路の概略回路図である。
図2図1の電流制御回路中で使用する可変抵抗素子の一実施形態の概略回路図である。
図3図2の電流制御回路の特定の例である。
図4】本発明の第2の実施形態による機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する電気機械発電機の電気出力に接続された2つの可変抵抗素子を含む、電流制御回路の概略回路図である。
図5図4の電流制御回路中で使用する可変抵抗素子の一実施形態の概略回路図である。
図6図5の電流制御回路の特定の例である。
図7】電圧に対する第1または第2の可変抵抗の値の間の関係を示し、且つ、入力電圧Vinを基準電圧Vrefと比較する制御回路の動作によって、抵抗値がどのように低減されたかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する電気機械発電機2が概略的に示されている。かかる電気機械発電機は、当技術分野において、振動エネルギー・ハーベスタとして知られている。電気機械発電機2は、既知の構成のものでよく、特に、当技術分野で“速度減衰型(velocity-damped)”共振器として知られる共振発電機(resonant generator)を備えることができ、この共振器では、振動する装置に取り付けられたハウジングに対する慣性質量の運動によって行われる仕事は全て、その運動の瞬間速度に比例する。必然的に、そうした仕事量の一部分は、望ましくない機械的または電気的損失を克服するように吸収されるが、仕事量の残る部分が、電気コイル/磁気アセンブリなどの適切な変換機構を介して、電流を生成するために使用され得る。
【0033】
最も典型的には、電気機械発電機は、ハウジング内に取り付けられた共振質量−ばね装置(resonant mass-spring arrangement)を使用する。電気機械発電機2が外部振動源の影響を受けると、次いで慣性質量を備える磁気コア・アセンブリがハウジングに対して動き、少なくとも1つの静的電気コイルを備えるダンパに対して仕事が行われ、この移動可能な磁気コア・アセンブリは、前記または各電気コイルが内部に配設される磁束領域を生成する。電気コイルと磁束との相対運動は、電流を電気コイル内に誘起させ、この電流は、外部装置(図示せず)を駆動するための電力源として使用され得る。コイルは、整流器および関連付けられた回路に接続され、電気機械発電機2からの出力電力が、当技術分野で良く知られるように、全波整流され平滑化された出力の形で、出力線4、6に送達されることを実現する。
【0034】
適切な電気機械発電機2が、例えば先に公開された本出願人の特許明細書WO−A−2007/096615、WO−A−2008/132423、およびWO−A−2009/068856などから知られる。
【0035】
図1に示されるように、本発明の第1の実施形態によれば、バッファ回路8の入力側が、電源線としての一方の出力線4と、グランドに接続された他方の出力線6とに接続されている。バッファ回路8の出力側は、改良された電気機械発電機2の第1の出力端子10と、グランドに接続された第2の出力端子12とに接続されている。したがって、バッファ回路は、2本の線、すなわち電源線14と接地線16とを備える。
【0036】
図1に示されるように、出力線4、6は、電圧Vinと電流Iinとを供給し、出力端子10、12は、電圧Voutと電流Ioutとを供給する。
【0037】
図1から6は全て、Vin、Vout、およびGNDノードを有し、これらは互いに置換え可能であり、各実施形態の回路は3端子装置でよい。
【0038】
電源線14は、そこに電気的に接続された、図1ではRadjで概略的に示された第1の制御可能な可変抵抗18を有する。この制御可能な可変抵抗は、MOSFETなどの素子を備えることができる。抵抗Radjは、Vinを一定の電圧バイアス点で保持するために、バッファ回路8によって変化させられるように構成されている。言い換えれば、抵抗Radjは、入力電圧Vinが一定値に維持されるように自動的に調整される。特定の振動振幅、および振動周波数、および一定の出力電圧(これは、同等のVinに制御される場合に実現される)では、VEHは、一定の電力(これはIVである)を送達し、したがって一定の電流Iinを送達するというのが、電気機械発電機VEHの特性である。Ioutは、(制御可能な可変抵抗18内の無視できる漏れシャント電流を除いて)Iinに等しいので、バッファ回路8は、VoutがVinを超えない限り、Voutに拘わらず、その負荷に流れ込む一定の出力電流を有する。
【0039】
VEHの設置中、電流および電圧を選択的に測定するマルチメータ(図示せず)が出力端子10、12に取り付けられる場合、マルチメータのインピーダンスが、出力端子10、12に電気的に接続されると共にVEHによって電力供給されることになる負荷、例えば蓄積コンデンサとは全く異なる場合でも、このマルチメータは、VEHが最終的に現場(field)で使用される間、出力電流Ioutを正確に測定するために使用され得る。このように、VEHの設置中に、使用時の電流出力が正確に予測され得る。
【0040】
図2は、図1の電流制御回路中で使用する、可変抵抗素子の実施形態の概略回路図である。言い換えれば、図1のそれぞれのブロックによって概略的に示された、Radjを供給する第1の制御可能な可変抵抗18が、この可変抵抗を制御する制御回路を示す図2の回路図に組み込まれている。
【0041】
図2を参照すると、第1の制御可能な可変抵抗18は、それぞれの電源線50のVinとVoutとの間に設けられ、接地線52も存在している。これらの線は、電源線4および接地線6と同じでもよい。電圧センサ54が、電源線50と接地線52との間に接続されている。電圧センサ54の出力56が、誤差増幅器60の第1の入力58に接続されている。基準電圧生成器62が、接地線52と、誤差増幅器60の第2の入力64との間に接続されている。誤差増幅器60は、感知された電圧と基準電圧との間の任意の差の増幅である第1の制御信号を含む出力65を有し、したがってこの信号は、実際の入力電圧Vinと基準電圧Vrefとの間の誤差を構成する。出力65における制御信号は、抵抗値Radjを制御するように第1の制御可能な可変抵抗18に送られる。
【0042】
図3の特定の回路を参照すると、誤差増幅器60の出力65は、トランジスタ68のベース66に接続され、このトランジスタ68は、増幅器を構成している。トランジスタ68のコレクタ70は、第1の制御可能な可変抵抗18に接続され、さらに抵抗器72を介して電源線50に接続されている。トランジスタ68のエミッタ74は、接地線52に接続されている。コレクタ70の出力電圧は、第1の制御可能な可変抵抗18を選択的に制御し、それによって抵抗値Radjを制御する第1の制御信号を構成する。
【0043】
誤差増幅器60と、トランジスタ68によって構成される増幅器とは、感知電圧値Vsenseを供給する電圧センサ54によって感知された入力電圧Vinを、基準電圧生成器62によって生成された基準電圧Vrefと比較する働きをし、Vin値に対応するVsense値とVref値との間のいかなる差も、誤差増幅器60によって増幅され、この増幅器60はトランジスタ68を動作させて可変抵抗18を制御する。
【0044】
in値に対応するVsense値とVref値との間のいかなる差も増幅され、その結果生じる出力65における高い出力信号によって、トランジスタ68がオンになり、そこを電流が流れることになる。これは、第1の可変抵抗18を有するMOSFET18のベースに高い信号を生じ、このことは電源線50に沿った電流に対するそれの抵抗値を低下させる。
【0045】
誤差増幅器60と、トランジスタ68によって構成される増幅器とは、したがって抵抗値Radjを有する可変抵抗18を制御し、図1に関して上記で論じられたように、電圧値Vinは、基準電圧Vrefによって決定された一定の電圧バイアス点でVinを保持するように維持されることになる。この制御回路は、電圧値Vinを実質的に基準電圧Vrefに維持するように自動的に動作する。
【0046】
第1の実施形態では、一般に、誤差増幅器が、可変抵抗18を直接的に制御するのに必要とされる制御信号を生成する十分な利得を有する場合、Radjを駆動する誤差増幅器は1つしか必要でなく、すなわち実際には2つの増幅器を有する必要はない。したがって、この実施形態の変形形態において、増幅器68は省略されてもよい。
【0047】
図7を参照すると、誤差増幅器60は、感知電圧値Vsenseを供給する電圧センサ54によって感知された入力電圧Vinを、基準電圧生成器62によって生成された基準電圧Vrefと比較する。Vin値に対応するVsense値がVref値よりも大きい場合、誤差増幅器からの出力信号は、可変抵抗18を制御し、特に、入力電圧Vinと基準電圧Vrefとの間に正の差がある場合、抵抗値Radjが高レベルから低レベルに切り換わるようにする。したがって、Radjは、Vinと、電圧バイアス点を成す基準電圧と、を比較する増幅器によって制御される。
【0048】
基準電圧生成器62と、増幅器を構成するトランジスタ68とのための電力は、Vinとグランドとの間で取り出されることに留意すべきである。典型的な実施形態では、上記の機能を実施するのに必要とされる電流は、Iinのうち少量、典型的にはほんのわずかな部分に相当する。
【0049】
図4に示されるように、本発明の第2の実施形態によれば、出力電圧をさらに制御するように構成された改良されたバッファ回路28が設けられ、その結果端子10、12の最大出力電圧Voutが最大しきい値を超えることはない。こうした変形形態は、例えば、VEHによって電力供給されるべき装置内で、負荷蓄積コンデンサが最大動作電圧を有することが知られているか又は意図される場合に設けられる。第1の実施形態と比較して、同様の部品は、同様の参照符号によって識別される。
【0050】
この変形形態は、図4のRadj(shunt)によって概略的に示される第2の制御可能な可変抵抗30をバッファ回路28中にさらに設けることを含み、この第2の可変抵抗30は、シャント抵抗として出力線4と6との間に接続され、したがって抵抗Radjを有する制御可能な可変抵抗18の入力側に接続される。この場合もやはり、第2の制御可能な可変抵抗30は、MOSFETまたはバイポーラ接合トランジスタ(BJT)などの素子を備えることができ、後者が図6の例に示されている。
【0051】
このバッファ回路28では、そのVoutがVinよりも低い間の通常動作中、抵抗Radj(shunt)は、非常に高い抵抗で維持されるように制御され、一方Radjは、上記で論じられたように、基準電圧によって決定されるそのバイアス電圧にてVinを維持するように調整される。上記によって、出力線4と6との間のいかなるシャント電流も無視できるか、又はなくなることになる。
【0052】
しかし、Voutが上昇してVinに等しくなると、通常動作中のRadj(shunt)は非常に高い抵抗であり、その後Radj(shunt)は、電流Iinの幾分かをグランドに分流させる(シャントさせる)ために低下される。このように、Voutはバイアス電圧Vinを超えることを防止される。したがって、負荷に印加される電圧はバイアス電圧に制限され、したがって負荷が、選択された最大しきい値電圧を受けるように制限する。
【0053】
図5は、図4の電流制御回路中で使用する可変抵抗素子の追加の実施形態の概略回路図である。言い換えれば、図4のそれぞれのブロックによって概略的に示される、Radjを供給する第1の制御可能な可変抵抗18と、Radj(shunt)を供給する第2の制御可能な可変抵抗30とのそれぞれが、それぞれの可変抵抗を制御する制御回路を示す図5の回路図に組み込まれている。
【0054】
図5を参照すると、第1の制御可能な可変抵抗18は、それぞれの電源線50のVinとVoutとの間に設けられ、接地線52もやはり存在している。これらの線は、電源線14および接地線16と同じでよい。第2の制御可能な可変抵抗30は、電源線50と接地線52との間にシャント抵抗として設けられている。電圧センサ54が、電源線50と接地線52との間に接続されている。電圧センサ54の出力56が、誤差増幅器60の第1の入力58に接続されている。基準電圧生成器62が、接地線52と、誤差増幅器60の第2の入力64との間に接続されている。誤差増幅器60は、2つの素子に接続される出力65を有する。第1の素子は、第2の制御可能な可変抵抗30であり、この可変抵抗30は、先の実施形態の第1の制御可能な可変抵抗18について上述されたように、MOSFETまたはBJTでよい。第2の素子は、増幅器82の入力80であり、第1の実施形態と同様に、増幅器82の出力84は、第1の制御可能な可変抵抗18に接続され、この可変抵抗18もやはり、上述のようにMOSFETまたはBJTでよい。増幅器82によって増幅される誤差増幅器60の出力は、第1の制御可能な可変抵抗18を選択的に制御し、それによって抵抗値Radjを制御する第1の制御信号を構成し、そして、誤差増幅器60の出力は、第2の制御可能な可変抵抗30を選択的に制御し、それによって抵抗値Radj(shunt)をそれぞれ制御する第2の制御信号も構成する。
【0055】
図6の特定の回路を参照すると、誤差増幅器60の出力65は、第1のトランジスタ168のベース166に接続されている。第1のトランジスタ168のコレクタ170は、電源線50に接続されている。第1のトランジスタ168のエミッタ174は、第2のトランジスタ176のベース175に接続されている。第2のトランジスタ176のコレクタ177は、第1の制御可能な可変抵抗18に接続され、さらに抵抗器172を介して電源線50に接続されている。コレクタ177の出力電圧は、第1の制御可能な可変抵抗18を選択的に制御し、それによって抵抗値Radjを制御する第2の制御信号を構成する。トランジスタ168のエミッタ178は、接地線52に接続されている。
【0056】
誤差増幅器60は、感知電圧値Vsenseを供給する電圧センサ54によって感知された入力電圧Vinを、基準電圧生成器62によって生成された基準電圧Vrefと比較する。Vin値に対応するVsense値とVref値との間のいかなる差も増幅され、その結果生じる出力65における高い出力信号によって、トランジスタ168がオンになり、そこを電流が流れることになる(トランジスタ168は、そこを流れる比較的小さい電流だけを供給するように構成されている)。上記によって、次いでトランジスタ176のベース175に高い入力を供給し、したがってトランジスタ176がオンになり、そこを電流が流れることになる(トランジスタ176は、トランジスタ168に比べて、そこを流れる比較的高い電流を供給するように構成されている)。このことは、第1の可変抵抗18を有するMOSFET18のベースに高い信号を生じ、したがって電源線50に沿った電流に対するそれの抵抗値を低下させる。上記によってまた、電流が電源線50から、抵抗器172を介し、トランジスタ176を介し、接地線52へと流れることになり、これは低抵抗シャントとして働く。このように、第1の可変抵抗18と可変抵抗30とはどちらも、共通の回路によって制御され、低下される。
【0057】
トランジスタ168、176は、抵抗値Radjを有する可変抵抗18を制御し、したがって電圧値Vinは、図4に関して上記で論じられたように、一定の電圧バイアス点でVinを保持するように維持される。
【0058】
したがって、RadjとRadj(shunt)とは、共通の誤差増幅器によって制御され、この誤差増幅器は、Vinを、電圧バイアス点を成す基準電圧と比較し、この電圧バイアス点は、電圧値Vinと基準電圧Vrefとの間に正の電圧差がある場合に、両抵抗を高レベルから低レベルに低下させることによって、両抵抗を制御するように利用される。
【0059】
再度図7を参照すると、誤差増幅器60は、感知電圧値Vsenseを供給する電圧センサ54によって感知された入力電圧Vinを、基準電圧生成器62によって生成された基準電圧Vrefと比較する。Vin値に対応するVsense値が、Vref値よりも大きい場合、誤差増幅器からの出力信号は、可変抵抗18、30を制御し、特に、抵抗値RadjとRadj(shunt)とが高レベルから低レベルに切り換わるようにする。抵抗値Radj(shunt)は、Radj(shunt)を介した電流分流によって生じる電流損失を最小限に抑えるために、抵抗値Radjの低減の後のみに低減される。
【0060】
したがって、上記で図4に関して論じられたように、電圧値Vinが上昇してしきい値を超えると、抵抗値Radj(shunt)が低下され、それによって、電圧値Voutをしきい値以下で保持するようにそこを流れる電流を分流させる。
【0061】
したがって、Radj及びRadj(shunt)は、共通の電圧と、Vinを、各々の制御可能な抵抗の電圧バイアス点を成す基準電圧と比較する誤差増幅器回路と、によって制御される。このことは、共通の基準電圧を用いることによって2つの抵抗を制御する、安価で且つ簡単な電気的解決策である。
【0062】
図7から、第1の制御可能な抵抗18、すなわちRadjは、第2の制御可能な抵抗30、すなわちRadj(Shunt)よりも急速に低下されており、したがって第1の制御可能な抵抗Radjがその最も低いレベル付近まで低下する前には、ごくわずかな電流しかグランドに分流されていないことに留意すべきである。
【0063】
したがって、好ましい実施形態は、振動エネルギー・ハーベスタの出力を制御して、一定の電流出力を供給するように適合された、信頼性が高く、かつ簡単なバッファ回路を提供する。バッファ回路は、振動エネルギー・ハーベスタに、例えば、このような振動エネルギー・ハーベスタにおいて従来から使用されている電圧制御および整流回路に、組み込まれ得る。あるいは、バッファ回路は、このような振動エネルギー・ハーベスタの電圧制御および整流回路への電気的な接続に適した別個のモジュール内に設けられてもよい。いずれのモードの実装形態の結果として得られる構造体も、堅牢で耐久性があり、かつコンパクトとなり得る。
【0064】
かかるバッファ回路を設けることによって、設置中にVEHの電流出力を測定すること、及び、装置の使用時に、どの負荷が後に選択されるかに拘わらず、同じ電流出力が後にいかなる負荷にも送り込まれることになることを知ることが可能となる。さらに、VEHの使用寿命中に負荷が交換される場合でも、VEHの電流出力はなおも知られ、その後も同じ電流出力が、交換された負荷に送り込まれることになる。その電流を送り込むことが、Vinが“クランプされた”電圧バイアス点よりも大きい電圧を必要としない限り、いかなる負荷にも同じ電流が流れ込むことになる。
【0065】
本発明の他の変形形態および実施形態が、当業者には明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7