(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層ないし巻回された負極芯体露出部及び正極芯体露出部を有する電極体と、前記負極芯体露出部及び前記正極芯体露出部にそれぞれ電気的に接続された負極集電体及び正極集電体と、前記負極集電体及び前記正極集電体にそれぞれ電気的に接続された負極端子及び正極端子とを備えている角形二次電池において、
前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面に前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方が配置され、他方の面に負極集電受け部材ないし正極集電受け部材が配置され、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方には、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に対向する領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面が部分的に凹んだ凹部が形成され、前記凹部の厚さは他の部分の厚さに比して薄く形成されており、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、前記凹部において前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に抵抗溶接されていることを特徴とする角形二次電池。
積層ないし巻回された負極芯体露出部及び正極芯体露出部を有する電極体と、前記負極芯体露出部及び前記正極芯体露出部にそれぞれ電気的に接続された負極集電体及び正極集電体と、前記負極集電体及び前記正極集電体にそれぞれ電気的に接続された負極端子及び正極端子とを備えている角形二次電池において、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、一体に形成されると共に前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面及び他方の面にそれぞれ配置され、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方には、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面に配置された領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面が部分的に凹んだ第1の凹部が形成され、前記第1の凹部の厚みが他の部分の厚さに比して薄く、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方には、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の他方の面に配置された領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面が部分的に凹んだ第2の凹部が形成され、前記第2の凹部の厚みが他の部分の厚さに比して薄く、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、前記第1の凹部において前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面に抵抗溶接され、前記第2の凹部において前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の他方の面に抵抗溶接されていることを特徴とする角形二次電池。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護運動が高まり、二酸化炭素ガス等の温暖化の原因となる排ガスの排出規制が強化されている。そのため、自動車業界では、ガソリン、ディーゼル油、天然ガス等の化石燃料を使用する自動車に換えて、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の開発が活発に行われている。このようなEV、HEV用電池としては、ニッケル−水素二次電池やリチウムイオン二次電池が使用されているが、近年は軽量で、かつ高容量の電池が得られるということから、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池が多く用いられるようになってきている。
【0003】
EV、HEV用途においては、環境対応だけでなく、自動車としての基本性能、すなわち、加速性能や登坂性能等の走行能力の高度化も必要とされる。このような要求を満たすためには、単に電池容量を大きくすることのみならず、高出力の電池が必要である。一般に、EV、HEV用の二次電池は、発電要素を角形外装缶内に収容した角形二次電池が多く使用されているが、高出力の放電を行うと電池に大電流が流れるため、電池の内部抵抗を極力低減させる必要がある。そのため、電池の発電要素における電極極板の芯体露出部と集電体との間の溶接不良を防止して内部抵抗を低下させることについても種々の改良が行われてきている。
【0004】
発電要素における電極極板の芯体露出部と集電体を電気的に接合して集電する方法としては、機械的なカシメ法、溶接法等があるが、高出力が要求される電池の集電方法としては、低抵抗化を実現し易く、しかも経時変化が生じ難いことから、溶接法が適している。このような角形二次電池の電極極板の芯体露出部と集電体との間の抵抗溶接は、以下のようにして行われている。
【0005】
例えば、
図9に示したように、正極極板と負極極板とをセパレータを介して互いに絶縁された状態で多数巻回された偏平状巻回電極体50において、例えば束ねられた銅又は銅合金製の負極芯体露出部51の一方側の面に銅又は銅合金製の負極集電体52を配置し、同じく他方側の面には銅又は銅合金製の負極集電受け部材53を配置し、負極集電体52及び負極集電受け部材53とにそれぞれ抵抗溶接用電極54及び55を当接させて抵抗溶接が行われる。その結果、一対の抵抗溶接用電極54及び55の間に位置する負極芯体露出部51の一部が溶融して、適宜ナゲット56が形成され、負極芯体露出部51、負極集電体52及び負極集電受け部材53との間に良好な電気的導通が達成される。
【0006】
なお、正極芯体露出部、正極集電体及び正極集電受け部材(何れも図示省略)についても、それぞれの形成材料がアルミニウム又はアルミニウム合金からなること以外は負極芯体露出部51、負極集電体52及び負極集電受け部材53と実質的に同様の構成を備えている。また、この明細書においては、負極集電体ないし正極集電体は、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に直接抵抗溶接され、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部を負極端子ないし正極端子に電気的に接続するために用いられる部材を示し、負極集電受け部材ないし正極集電受け部材は、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に直接抵抗溶接され、負極集電体ないし正極集電体と組み合わせて使用される部材を意味する。
【0007】
また、下記特許文献1にも、正極極板と負極極板とをセパレータを介して互いに絶縁された状態で多数巻回された偏平状巻回電極体において、正極極板ないし負極極板の芯体露出部に正極集電体ないし負極集電体を抵抗溶接法によって溶接した角形二次電池が示されている。この下記特許文献1に示されている角形二次電池を
図10を用いて説明する。なお、
図10Aは下記特許文献1に開示されている角形二次電池における端子部の縦断面図であり、
図10Bは同じく抵抗溶接時の縦断面図である。
【0008】
下記特許文献1に示されている角形二次電池60は、
図10Aに示すように、正極極板及び負極極板がそれぞれセパレータを介して互いに絶縁された状態で巻回された正極芯体露出部(図示省略)及び負極芯体露出部61を有する巻回電極体62が角形電池外装缶63内に配置されている。そして、例えば負極芯体露出部61は一部が束ねられ、この束ねられた負極芯体露出部61の一方の表面に負極集電体64が抵抗溶接され、この負極集電体64は、角形電池外装缶63の開口部を密閉するように取り付けられた封口体65に対して絶縁された状態に取り付けられた負極端子66に電気的に接続されている。
【0009】
また、負極集電体64の抵抗溶接部64aは他の部分よりも薄肉化されている。そして、
図10Bに示すように、負極集電体64の抵抗溶接部64aは、一方の面が負極芯体露出部61の束ねられた部分の一方側の表面に当接され、この抵抗溶接部64aの他方の面の表面に一対の抵抗溶接用電極67のうちの一方が当接され、また、負極芯体露出部61の他方側の面には一対の抵抗溶接用電極67のうちの他方が当接され、この一対の抵抗溶接用電極67間に抵抗溶接用電流を流すことによって抵抗溶接が行われる。なお、負極集電体64の抵抗溶接部64a側には、負極集電体64の溶接部64a以外の部分が負極芯体露出部61と短絡しないようにするために絶縁テープ68が添付されている。下記特許文献1に示されている非水電解質二次電池によれば、束ねられた負極芯体露出部61内にナゲット69が形成され、負極芯体露出部61と負極集電体64との間に良好な電気的接続が達成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、EV、HEV用の角形二次電池としての非水電解質二次電池の電極体は、正極極板と負極極板とがセパレータを介して積層ないし巻回された構成を備えている。そして、正極極板及び負極極板の芯体露出部は、それぞれ互いに異なる側に位置するように配置され、正極極板の芯体露出部は積層されて正極集電体に溶接され、負極極板の芯体露出部も積層されて負極集電体に溶接されている。これらの負極芯体露出部及び正極芯体露出部の積層枚数は、EV、HEV用の角形二次電池としての非水電解質二次電池の容量が大きい場合には、非常に多くなる。そのため、抵抗溶接法によって負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と正極集電体ないし負極集電体との間に安定的に良好なナゲットを形成するには、今だに改善の余地が存在している。
【0012】
負極集電体ないし正極集電体は、機械的強度を保ちかつ低抵抗とするためにある程度の厚さが必要である。しかしながら、負極集電体ないし正極集電体の厚さが厚いと、抵抗溶接する際に溶接部が発熱し難いため、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電体ないし正極集電体との間にナゲットが安定的に形成され難く、たとえナゲットが形成されたとしても、小さいナゲットしか形成されないので、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電体ないし正極集電体との間に通電経路を確実に確保できないという課題があった。
【0013】
また、負極集電体ないし正極集電体の全体を薄くすると、低いエネルギーでも負極集電体ないし正極集電体が溶融し易くなるためにナゲットが形成され易くなるが、それぞれの端子と集電体とのカシメ部において、集電体の変形によるカシメ不足による封止性の低下や封口体と電極体の連結強度の不足により電極体が動きやすくなって耐振性が低下するという課題も存在する。
【0014】
さらに、上記特許文献1に示されているように、負極集電体ないし正極集電体が負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に当接する領域の全体の厚さをその他の部分の厚さよりも薄くすると、低いエネルギーでも抵抗溶接部が溶融し易くなるためにナゲットが形成され易くなるが、負極集電体ないし正極集電体が負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に当接する領域の断面積がその他の部分の断面積よりも小さくなるので、抵抗の増加(出力の低下)が生じ、しかも、振動等によって厚さに段差が生じている部分で切断し易くなるという課題が存在している。
【0015】
発明者等は、上述のような従来技術の問題点を解決すべく種々実験を重ねてきた結果、集電体がそれぞれの芯体露出部に対向する領域において、集電体の芯体露出部と対向していない側の面に部分的に凹部を形成すると共にこの凹部の厚さを他の部分の厚さに比して薄く形成し、この凹部において抵抗溶接することにより安定的に集電体の近傍の芯体露出部中に大きなナゲットを形成することができることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0016】
すなわち、本発明は、厚さが厚い集電体を用いていながら、集電体、多数の芯体露出部及び集電受け部材等が確実に抵抗溶接された角形二次電池を提供することを目的とする。
【0017】
なお、上記特許文献2には、
図11に示したように、リード端子つき偏平形電池70において、リード端子71が一方の電極端子72に当接する領域において、リード端子71の電極端子72と当接していない側の面に部分的に凹部73を形成すると共に、この凹部73の厚さを他の部分の厚さに比して薄く形成し、この凹部73において抵抗溶接した例が示されているが、多数の負極芯体露出部ないし正極芯体露出部にリード端子を抵抗溶接することに関しては何も示されていない。なお、
図11Aは上記特許文献2に示されているリード端子つき偏平形電池の斜視図であり、
図11Bはリード端子の第1具体例の斜視図であり、
図11Cは同じく第2具体例の斜視図である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本願発明の角形二次電池は、積層ないし巻回された負極芯体露出部及び正極芯体露出部を有する電極体と、前記負極芯体露出部及び前記正極芯体露出部にそれぞれ電気的に接続された負極集電体及び正極集電体と、前記負極集電体及び前記正極集電体にそれぞれ電気的に接続された負極端子及び正極端子とを備えている角形二次電池において、
前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面に前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方が配置され、他方の面に負極集電受け部材ないし正極集電受け部材が配置され、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方には、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に対向する領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面
が部分的
に凹んだ凹部
が形成され、前記凹部の厚さは他の部分の厚さに比して薄く形成されており、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、前記凹部において
前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に抵抗溶接されていることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明における角形二次電池は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池だけでなく、ニッケル−水素二次電池等の水性電解質二次電池も含む意味で用いられている。
【0020】
本発明の角形二次電池においては、負極集電体及び正極集電体の少なくとも一方は、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に対向する領域において、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と対向していない側の面に部分的に凹部が形成されて、この凹部の厚さは他の部分の厚さに比して薄く形成されており、しかも、この凹部において抵抗溶接されている。そのため、負極集電体及び正極集電体の厚さが厚くても、抵抗溶接に際して集電体の凹部が発熱し易くなるので、積層された負極芯体露出部ないし正極芯体露出部の内部において負極集電体ないし正極集電体側に安定的に大きなナゲットが生じるため、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電体ないし正極集電体との間の溶接強度が増加すると共に、通電経路を確実に確保することができるので、抵抗溶接部の信頼性が向上する。
【0021】
しかも、負極集電体ないし正極集電体の厚さを厚くすることができるため、負極端子ないし正極端子と負極集電体ないし正極集電体との固定部において、負極集電体ないし正極集電体の厚さを薄くした場合に生じ易いそれぞれの集電体の変形による封止性の低下が生じ難くなる。しかも、負極端子ないし正極端子に負極集電体ないし正極集電体が強固に固定されるため、外部からの振動等によって電極体が動き難くなると共に負極集電体ないし正極集電体の変形が生じ難くなり、耐振性が良好となる。
【0022】
加えて、抵抗溶接部となる凹部は負極集電体ないし正極集電体に部分的に形成されているものであり、負極集電体ないし正極集電体が負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と対向している部分とその他の部分とでは厚さの変化がないようにできるため、外部から振動等が加わっても負極集電体ないし正極集電体が切断され難くなる。
【0023】
また、本発明の角形二次電池においては、集電体に凹部を設ける際に凹加工部分の厚みを調製することで、金属板材を打ち抜いて得られたものを集電体としてそのまま使用する場合と比べて、集電体の溶接箇所における厚みのバラツキを小さくすることが可能となるために抵抗溶接の際に安定して溶接が行えるようになり、抵抗溶接部の信頼性がより向上した角形二次電池が得られる。なお、本発明における集電体及び集電受け部材は、負極芯体露出部及び正極芯体露出部の何れか一方又は両方に設けられていればよいものである。また、本発明の角形二次電池における凹部の形状は、特に限定されるものではなく、四角形、多角形、円形等、任意の形状を採用することができ、また、凹部の側壁面は傾斜面とされていてもよい。さらに、芯体露出部と集電体ないし集電受け部材の間には、抵抗溶接部を除いて、絶縁フィルムが配置されていてもよく、また、集電体ないし集電受け部材の芯体露出部と対向する側にプロジェクションが形成されていてもかまわない。
【0024】
また、本発明の角形二次電池においては、前記凹部の厚さは、前記負極集電受け部材ないし前記正極集電受け部材の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0025】
負極集電体ないし正極集電体に形成される凹部の厚さを負極集電受け部材ないし前記正極集電受け部材の厚さよりも薄くすると、抵抗溶接によって負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に形成されるナゲットは、負極集電体ないし正極集電体側に大きく形成される。そのため、本発明の角形二次電池によれば、負極集電体ないし正極集電体と負極芯体露出部ないし正極芯体露出部との間の溶接強度が増加すると共に、電気抵抗が小さくなるため、大電流放電時にもより出力の低下は少なくなる。
【0026】
また、本発明の角形二次電池においては、前記負極芯体露出部及び前記正極芯体露出部の少なくとも一方は2分割されてその間に少なくとも1つの導電部材を有する中間部材が配置され、前記2分割された芯体露出部側の前記集電体及び前記集電受け部材は、それぞれ前記2分割された芯体露出部の最外側の面に配置されているものとすることができる。
【0027】
その場合、積層された負極芯体露出部及び正極芯体露出部の少なくとも一方を2分割し、この2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ集電体及び集電受け部材を配置し、2分割された芯体露出部間に少なくとも1つの導電部材を有する中間部材が配置されているので、2分割された芯体露出部のそれぞれの積層枚数が少なくなるので、それぞれの側で芯体露出部の内部で良好に抵抗溶接が行われるようになる。しかも、このような中間部材を設けると、抵抗溶接時には、集電体又は集電受け部材→芯体露出部→導電部材→芯体露出部→集電体又は集電受け部材へと流れるので、一度の抵抗溶接で負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と集電体及び集電受け部材とを同時に抵抗溶接することができるようになる。しかも、集電体側に大きなナゲットが形成されるので、負極集電体ないし正極集電体と負極芯体露出部ないし正極芯体露出部との間の溶接強度が増加すると共に、電気抵抗が小さくなり、大電流放電時の出力の低下は少なくなる。
【0028】
また、本発明の角形二次電池においては、前記集電受け部材は、前記2分割された芯体露出部に対向する領域において、前記2分割された芯体露出部と対向していない側の面の一部に凹部が形成され、前記凹部の厚さは他の部分の厚さに比して薄く形成されており、前記凹部において抵抗溶接されているものとしてもよい。
【0029】
その場合、中間部材は2分割された芯体露出部間に配置されており、しかも、2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置された集電体及び集電受け部材には、2分割された芯体露出部に対向する領域において、2分割された芯体露出部と対向していない側の面に凹部が形成されてこれらの凹部の厚さは他の部分の厚さに比して薄く形成されており、これらの凹部において抵抗溶接されている。抵抗溶接時に、導電部材よりも集電体の凹部及び集電受け部材の凹部の方がより発熱し易くなるので、2分割された芯体露出部内において、集電体側及び集電受け部材側に安定的に大きなナゲットが形成されるようになる。このため、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電体ないし正極集電体との間、及び負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電受け部材ないし正極集電受け部材との間の溶接強度が増加すると共に、通電経路を確実に確保することができるので、抵抗溶接部の信頼性が向上する。
【0030】
また、本発明の角形二次電池においては、前記中間部材の導電部材は、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に接する側に突起が形成されていてもよい。
【0031】
導電部材の負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に接する側に突起が形成されていると、抵抗溶接時にこの突起部分に電流が集中するために発熱し易くなる。そのため、集電体と中間部材との間に位置する2分割された一方の芯体露出部内及び集電受け部材と中間部材との間に位置する2分割された他方の芯体露出部内にもそれぞれ大きなナゲットが形成されるので、抵抗溶接部の強度がより強くなると共に、大電流放電時にもより出力の低下の少ない角形二次電池が得られる。
【0032】
更に、上記目的を達成するため、本願発明の角形二次電池は、積層ないし巻回された負
極芯体露出部及び正極芯体露出部を有する電極体と、前記負極積層ないし巻回された負極芯体露出部及び正極芯体露出部を有する電極体と、前記負極芯体露出部及び前記正極芯体露出部にそれぞれ電気的に接続された負極集電体及び正極集電体と、前記負極集電体及び前記正極集電体にそれぞれ電気的に接続された負極端子及び正極端子とを備えている角形二次電池において、 前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、一体に形成されると共に前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面及び他方の面にそれぞれ配置され、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方には、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面に配置された領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面が部分的に凹んだ第1の凹部が形成され、
前記第1の凹部の厚みが他の部分の厚さに比して薄く、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方には、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の他方の面に配置された領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面が部分的に凹んだ第2の凹部が形成され、
前記第2の凹部の厚みが他の部分の厚さに比して薄く、
前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、前記
第1の凹部において
前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の一方の面に抵抗溶接され、
前記第2の凹部において前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の他方の面に抵抗溶接されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の角形二次電池においては、前記負極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一方は、一体に形成されると共に前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部の両面に配置されており、かつ、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に対向する領域において、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部と対向していない側の面の両方に凹部が形成されて前記凹部の厚さが他の部分の厚さに比して薄く形成されており、前記凹部において抵抗溶接されている。そのため、負極集電体及び正極集電体の厚さが厚くても、抵抗溶接に際して集電体の凹部が発熱し易くなるので、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部の内部において負極集電体ないし正極集電体側に安定的に大きなナゲットが生じるため、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電体ないし正極集電体との間の溶接強度が増加すると共に、通電経路を確実に確保することができ、抵抗溶接部の信頼性が向上する。
【0034】
しかも、負極集電体ないし正極集電体の厚さを厚くすることができるため、負極端子ないし正極端子と負極集電体ないし正極集電体との固定部の強度が大きくなるので、負極集電体ないし正極集電体の厚さを薄くした場合に生じ易い負極集電体ないし正極集電体の変形による封止性の低下が生じ難くなる。しかも、負極端子ないし正極端子に負極集電体ないし正極集電体が強固に固定されるため、外部からの振動等によって負極集電体ないし正極集電体の変形が生じ難くなり、耐振性が良好となる。
【0035】
しかも、抵抗溶接部となる凹部は負極集電体ないし正極集電体に部分的に形成されているものであり、負極集電体ないし正極集電体が負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と対向している部分とその他の部分とでは厚さの変化がないようにできるため、外部から振動等が加わっても負極集電体ないし正極集電体が切断され難くなる。この場合においても、芯体露出部と集電体の間には、抵抗溶接部を除いて、絶縁フィルムが配置されていてもよく、また、集電体の芯体露出部と対向する側にプロジェクションが形成されていてもかまわない。
【0036】
また、本発明の角形二次電池においては、前記負極芯体露出部及び前記正極芯体露出部の少なくとも一方は2分割されてその間に少なくとも1つの導電部材を有する中間部材が配置され、前記2分割された芯体露出部側の前記集電体は、それぞれ前記2分割された芯体露出部の最外側の両面に配置されているものとしてもよい。
【0037】
その場合、積層された負極芯体露出部及び正極芯体露出部の少なくとも一方を2分割し、この2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ集電体を配置し、2分割された芯体露出部間に少なくとも1つの導電部材を有する中間部材が配置されているので、2分割された芯体露出部のそれぞれの積層枚数が少なくなるので、それぞれの側で芯体露出部の内部で良好に抵抗溶接が行われるようになる。しかも、このような中間部材を設けると、抵抗溶接時には、一方の集電体→芯体露出部→導電部材→芯体露出部→他方の集電体へと流れるので、一度の抵抗溶接で負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と集電体及び集電受け部材とを同時に抵抗溶接することができるようになる。
【0038】
また、本発明の角形二次電池によれば、中間部材は2分割された芯体露出部間に配置されており、しかも、2分割された芯体露出部の最外側の両表面にそれぞれ配置された集電体には、2分割された芯体露出部に対向する領域において、2分割された芯体露出部と対向していない側の面に凹部が形成されてこれらの凹部の厚さは他の部分の厚さに比して薄く形成されており、これらの凹部において抵抗溶接されている。抵抗溶接時に、導電部材よりも集電体の凹部の方がより発熱し易くなるので、2分割された芯体露出部内において、両側の集電体側に安定的に大きなナゲットが形成されるようになる。このため、負極芯体露出部ないし正極芯体露出部と負極集電体ないし正極集電体との間の溶接強度が増加すると共に、通電経路を確実に確保することができるので、抵抗溶接部の信頼性が向上する。
【0039】
また、本発明の角形二次電池においては、前記中間部材の導電部材は、前記負極芯体露出部ないし前記正極芯体露出部に接する側に突起が形成されていてもよい。
【0040】
導電部材の負極芯体露出部ないし正極芯体露出部に接する側に突起が形成されていると、抵抗溶接時にこの突起部分に電流が集中するために発熱し易くなる。そのため、両側の集電体と中間部材の導電部材との間にそれぞれ位置する2分割された芯体露出部内にそれぞれ大きなナゲットが形成されるので、抵抗溶接部の強度がより強くなると共に、大電流放電時にもより出力の低下の少ない角形二次電池が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例、比較例と共に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に示す各実施例は、本発明の技術思想を具体化するための角形二次電池としての角形非水電解質二次電池を例示するものであって、本発明をこの角形非水電解質二次電池に特定することを意図するものではなく、本発明は、例えばニッケル−水素二次電池、ニッケル−カドミウム二次電池等の水性電解質を使用した角形二次電池等、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0043】
また、本発明で使用し得る電極体は、正極極板と負極極板とをセパレータを介して巻回又は積層することにより、両端部にそれぞれ積層された正極芯体露出部及び負極芯体露出部が形成された偏平状のものであるが、以下においては、巻回電極体に代表させて説明する。さらに、各実施例及び各比較例に共通する偏平状の巻回電極体においては、負極用及び正極用の集電体、集電受け部材及び中間部材の導電部材は、それぞれ形成材料が相違するにしても構造は実質的に同一とすることができ、しかも、それぞれの抵抗溶接方法も実質的に同様であるので、以下においては負極極板側のものに代表させて説明することとする。
【0044】
[実施例1及び比較例1]
まず、実施例1及び比較例1に共通する角形非水電解質二次電池10Aの具体的構成を
図1〜
図4を用いて説明する。なお、
図1Aは実施例1及び比較例1に共通する角形非水電解質二次電池の内部構造を示す正面図であり、
図1Bは
図1AのIB−IB線に沿った断面図である。
図2は抵抗溶接方法を説明する
図1AにおけるII−II線に沿った部分の断面図である。
図3Aは実施例1の負極集電体の折り曲げ前の平面図であり、
図3Bは同じく側面図であり、
図3Cは負極集電受け部材の平面図であり、
図3Dは同じく側面図である。
図4Aは実施例1のナゲットの形成状態を示す断面図であり、
図4B及び
図4Cは比較例1のナゲットの形成状態を示す断面図である。
【0045】
この角形非水電解質二次電池10Aは、正極極板と負極極板とがセパレータ(いずれも図示省略)を介して巻回された偏平状の巻回電極体11を、角形の電池外装缶12の内部に収容し、封口体13によって電池外装缶12を密閉したものである。
【0046】
この偏平状の巻回電極体11は、巻回軸方向の両端部に正極合剤、負極合剤を塗布しない正極芯体露出部14、負極芯体露出部15を備えている。正極芯体露出部14は正極集電体16を介して正極端子17に接続され、負極芯体露出部15は負極集電体18を介して負極端子20に接続されている。正極端子17、負極端子20はそれぞれ絶縁部材21、22を介して封口体13に固定されている。
【0047】
この角形非水電解質二次電池10Aは、偏平状の巻回電極体11を電池外装缶12内に挿入した後、封口体13を電池外装缶12の開口部にレーザ溶接し、その後電解液注液孔(図示せず)から非水電解液を注液して、この電解液注液孔を封孔することにより作製される。なお、電解液としては、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比で3:7となるように混合した溶媒に対し、LiPF
6を1モル/Lとなるように溶解した非水電解液を使用することができる。
【0048】
次に、実施例1及び比較例1に共通する偏平状の巻回電極体11の具体的製造方法について説明する。
【0049】
[正極極板の作製]
正極極板は次のようにして作製した。まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO
2)粉末94質量%と、導電剤としてのアセチレンブラックあるいはグラファイト等の炭素系粉末3質量%と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)よりなる結着剤3質量%とを混合し、得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)からなる有機溶剤を加えて混練して正極活物質合剤スラリーを調製した。次いで、アルミニウム箔(例えば、厚さが20μmのもの)からなる正極芯体を用意し、上述のようにして作製した正極活物質合剤スラリーを正極芯体の両面に、均一に塗布して正極活物質合剤層を塗布した。この際、正極活物質合剤層の一方側には、正極活物質合剤スラリーの塗布されていない所定幅(ここでは12mmとした)の非塗布部(正極芯体露出部)が正極芯体の端縁に沿って形成されるように塗布した。この後、正極活物質合剤層を形成した正極芯体を乾燥機中を通過させて、スラリー作製時に必要であったNMPを除去して乾燥させた。乾燥後に、ロールプレス機により厚みが0.06mmとなるまで圧延して正極極板を作製した。このようにして作製した正極極板を幅が100mmとなる短冊状に切り出し、幅が10mmの帯状のアルミニウムからなる正極芯体露出部を設けた正極極板を得た。
【0050】
[負極極板の作製]
負極極板は次のようにして作製した。まず、負極活物質としての天然黒鉛粉末98質量%と、結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレン−ブタジエンゴム(SBR)をそれぞれ1質量%ずつ混合し、水を加えて混練して負極活物質合剤スラリーを調製した。次いで、銅箔(例えば、厚みが12μmのもの)からなる負極芯体を用意し、上述のようにして作製した負極活物質合剤スラリーを負極芯体の両面に均一に塗布して、負極活物質合剤層を形成した。この場合、負極活物質合剤層の一方の側には、負極活物質合剤スラリーの塗布されていない所定幅(ここでは10mmとした)の非塗布部(負極芯体露出部)が負極芯体の端縁に沿って形成されるように塗布した。この後、負極活物質合剤層を形成した負極芯体を乾燥機中を通過させて乾燥させた。乾燥後に、ロールプレス機により厚みが0.05mmとなるまで圧延して負極極板を作製した。このようにして作製した負極極板を幅が110mmとなる短冊状に切り出し、幅が8mmの帯状の負極芯体露出部を設けた負極極板を得た。
【0051】
[巻回電極体の作製]
上述のようにして得られた正極極板の正極芯体露出部と負極極板の負極芯体露出部とがそれぞれ対向する電極の活物質合剤層と重ならないようにずらして、ポリエチレン製の多孔質セパレータ(厚みが0.022mmで、幅が100mmのもの)を間に介在させて巻回し、両側にそれぞれ複数のアルミニウム箔からなる正極芯体露出部14と、複数の銅箔からなる負極芯体露出部15が形成された実施例1及び比較例1で使用する偏平状の巻回電極体11を作製した。なお、この巻回電極体11の総積層数は88枚である。
【0052】
[集電体の抵抗溶接]
このようにして作製された偏平状の巻回電極体11の正極芯体露出部14にアルミニウム製の正極集電体16及び正極集電受け部材(図示省略)を抵抗溶接によって取り付け、同じく負極芯体露出部15に銅製の負極集電体18及び負極集電受け部材19を抵抗溶接によって取り付ける。
【0053】
負極芯体露出部15に銅製の負極集電体18及び負極集電受け部材19を抵抗溶接によって取り付ける場合、
図2に示したように、下側の固定されている抵抗溶接用電極棒23上に負極集電受け部材19を載置し、更に負極芯体露出部15が間に介在されるように負極集電体18を載置する。次いで、上側の抵抗溶接用電極棒23を、負極集電体18上に配置し、予め実験的に定めた所定の加圧力で負極集電体18側に押しつけると共に所定の抵抗溶接電流を流すことにより抵抗溶接を行う。
【0054】
なお、
図2及び
図3には、実施例1に対応する負極集電体18に凹部30を設けたものを使用した例が示されているが、比較例1に対応する負極集電体18にはこの凹部30は形成されていない。また、実施例1及び比較例1における負極集電体18及び負極集電受け部材19は、
図3に示したように、厚さ0.8mmの銅板を、負極端子20との接続部を除いて、幅7mmに打ち抜き、曲げ加工にて作製した。なお、負極集電体18及び負極集電受け部材19には、それぞれ抵抗溶接部分にリブ31、32が形成されている。
【0055】
このようにして負極芯体露出部15に銅製の負極集電体18及び負極集電受け部材19を抵抗溶接によって取り付けた後、別途、正極集電体露出部14に正極集電体16及び正極集電受け部材を取付け、上述のようにして角形二次電池としての角形非水電解質二次電池10Aが組み立てられる。
【0056】
ここで、負極集電体18の負極芯体露出部と対向しない側に本発明の凹部30を形成した場合(実施例1)及び形成しない場合(比較例1)について、それぞれ5個ずつ抵抗溶接を行ない、引っ張り試験及び溶接部の分解を行って溶接部の強度及びナゲットの生成状態を確認した。なお、実施例1及び比較例1で用いた負極集電体18の平面図及び側面図はそれぞれ
図3A及び
図3Bに示すとおりであり、負極集電受け部材19の形状は
図3Cに示すとおりであり、厚さはいずれも0.8mmである。また、実施例1における凹部30の薄肉部の厚さは0.6mmであり、比較例1の負極集電体18には凹部30は形成されていない。
【0057】
[引っ張り試験]
引っ張り試験は次のようにして行った。まず、溶接部近傍の負極集電体18及び負極集電受け部材19のリブ31及び32を掴み、負極集電体18を負極芯体露出部15に対して180°の方向に抵抗溶接部が外れる(破断する)まで引っ張った。その後、負極集電体18の凹部30の薄肉部に孔ができるかどうかを目視で確認した。抵抗溶接が十分な場合、負極集電体18と負極芯体露出部15との間に良好なナゲット33が形成されるため、引っ張り試験を行うと、強度の弱い負極集電体18の凹部30の薄肉部に孔が開く。しかし、溶接が不十分な場合には、負極集電体18と負極芯体露出部15との間に良好なナゲットが形成されず、圧接された状態に近くなるため、負極集電体18と負極芯体露出部15の界面ないし負極芯体露出部15内で剥れてしまうので、負極集電体18に孔が開かない。
【0058】
この引っ張り試験の結果によれば、実施例1の電池では全て負極集電体18の凹部30の薄肉部に孔ができたが、比較例1の電池では全て負極集電体18に孔ができず、負極集電体18と負極芯体露出部15の界面ないし負極芯体露出部15内で剥れてしまった。
【0059】
[ナゲットの生成状態の確認]
実施例1の場合、ナゲットの形成状態は5例とも、
図4Aに示したとおり、負極集電体18側に大きなナゲット33が形成されていた、それに対し、比較例1の場合は、
図4Bないし
図4Cに示したとおりとなり、負極芯体露出部15の内部(
図4B参照)ないし負極集電受け部材19側に大きなナゲット33が形成されていた。
【0060】
このことは、実施例1の負極集電体18のように、凹部30を形成すると共に、この凹部30の部分において抵抗溶接すると、凹部30の部分の厚さが他の部分よりも薄いために抵抗溶接時に良好に凹部30部分が発熱して溶融するため、凹部30側に大きなナゲットが形成されるものと思われる。それに対し、比較例1の場合は、負極集電体18及び負極集電受け部材19は、共に厚さが厚いため、抵抗溶接時に両者共に良好に発熱しないために、負極芯体露出部15の内部にナゲット33が形成(
図4B参照)、ないし、負極集電受け部材19の熱容量が負極集電体18よりも小さいために、負極集電受け部材19側に大きなナゲット33が形成(
図4C参照)したものと思われる。
【0061】
[実施例2、比較例2]
次に実施例2、比較例2に共通する角形非水電解質二次電池10Bの具体的構成を
図5〜
図7を用いて説明する。なお、
図5Aは実施例2及び比較例2にかかる角形非水電解質二次電池の断面図であり、
図5Bは
図5AのVB−VB線に沿った断面図であり、
図5Cは
図5AのVC−VC線に沿った断面図である。
図6Aは実施例2の負極集電体の折り曲げ前の平面図であり、
図6Bは同じく側面図であり、
図6Cは負極用導電部材の平面図である。
図7Aは実施例2のナゲットの形成状態を示す断面図であり、
図7B及び
図7Cは比較例2のナゲットの形成状態を示す断面図である。なお、
図5〜
図7においては、実施例1及び比較例1に共通する角形非水電解質二次電池10Aと同一の構成部分には同一の参照符号を付与して説明する。
【0062】
実施例2及び比較例2に共通する偏平状の巻回電極体11は、
図5B及び
図5Cに示すように、正極極板側では積層された複数枚の正極芯体露出部14が2分割されてその間に正極用導電部材24Aを2個保持した樹脂材料からなる正極用中間部材24が挟まれており、同じく負極極板側では積層された複数枚の負極芯体露出部15が2分割されてその間に負極用導電部材25Aを2個保持した樹脂材料からなる負極用中間部材25が挟まれている。また、正極用導電部材24Aの両側に位置する正極芯体露出部14の最外側の両側の表面にはそれぞれ正極集電体16が配置されており、負極用中間部材25の両側に位置する負極芯体露出部15の最外側の両側の表面にはそれぞれ負極集電体18が配置されている。
【0063】
なお、実施例2及び比較例2に共通する角形非水電解質二次電池10Bにおいては、正極用導電部材24Aは正極芯体と同じ材料であるアルミニウム製のものを用い、負極用導電部材25Aは負極芯体と同じ材料である銅製のものを用いた。正極用導電部材24A及び負極用導電部材25Aの形状は、同じであっても異なっていてもよい。また、正極用中間部材24及び負極用中間部材25に使用した樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)製のものを用いた。
【0064】
これらの負極集電体18と負極芯体露出部15との間及び負極芯体露出部15と負極用導電部材25Aとの間(それぞれ4箇所、
図5B参照)は共に抵抗溶接されており、また、正極集電体16と正極芯体露出部14との間及び正極芯体露出部14と正極用導電部材24Aとの間(それぞれ4箇所)も共に抵抗溶接によって接続されている。
【0065】
以下、実施例2及び比較例2に共通する偏平状の巻回電極体11の具体的製造方法、各芯体露出部、各集電体、各導電部材を有する各中間部材を用いた抵抗溶接方法を、負極極板側のものに代表させて説明することとする。
【0066】
まず、実施例1及び比較例1の場合と同様にして作成した正極極板及び負極極板を、正極極板のアルミニウム箔露出部と負極極板の銅箔露出部とがそれぞれ対向する電極の活物質層と重ならないようにずらして、ポリエチレン製多孔質セパレータを介して巻回した。得られた偏平状の巻回電極体11の負極芯体露出部15を、巻回中央部分から両側に2分割し、それぞれ電極体の外面から電極体厚さの1/4の位置を中心として負極芯体露出部15を集結させた。ここで、集結させた銅箔の厚さは片側約530μmであり、総積層数は88枚(片側44枚)である。また、負極集電体18は、
図6Aに示したように、厚さ0.8mmの銅板を、負極端子20との接続部を除いて、幅7mmに打ち抜き、曲げ加工にて作製した。なお、負極集電体18には、それぞれ抵抗溶接部分にリブ31、32が形成されている。
【0067】
また、実施例2の負極集電体18には、負極芯体露出部15と対向していない側の抵抗溶接部分(4箇所)に凹部30が形成されており、この凹部の厚さは0.6mmとされている。なお、比較例2の負極集電体18には、凹部30は形成されていない。そして、負極芯体露出部15の最外周側の両面に負極集電体18、内周側に負極用導電部材25Aを有する負極用中間部材25を、負極用導電部材25Aの両端がそれぞれ負極芯体露出部15と当接するように、2分割された負極芯体露出部15の間に挿入する。
【0068】
ここで、実施例2及び比較例2に共通する負極用中間部材25に保持された負極用導電部材25Aの形状を
図6Cを用いて説明する。この負極用導電部材25Aは、両端にそれぞれに円錐台状の突起25Bが形成された円柱状の形状をしている。この突起25Bの先端には凹部が形成されている。この円錐台状の突起25Bの高さは、抵抗溶接部材に一般的に形成されている突起(プロジェクション)と同程度の1mmとしたが、この突起25Bは必ずしも必要な構成ではない。また、負極用導電部材25Aの径及び長さは、偏平状の巻回電極体11や電池外装缶12(
図5参照)のサイズによっても変化するが、ここでは円柱状部分の径φ=5mm、長さ9mmのものを用いた。
【0069】
実施例2及び比較例2に共通する負極用導電部材25Aは、2個が樹脂材料によって一体に保持され負極用中間部材25とされている。この場合、それぞれの負極用導電部材25Aは互いに並行になるように保持されている。この負極用中間部材25の形状は角柱状、円柱状等任意の形状をとることができるが、ここでは2分割した負極芯体露出部15内で安定的に位置決めして固定されるようにするために、横長の角柱状としたものを用いた。角柱状の負極用中間部材25としては、ここでは30mmの長さのものを用い、その幅は、7mmの長さのものを用いた。
【0070】
次いで、
図2に示した実施例1及び比較例1の抵抗溶接方法と同様にして、最外側の一対の負極集電体18に一対の抵抗溶接用電極棒を当接し、両側の負極集電体18の負極芯体露出部15に対向しない側に本発明の凹部30を形成した場合(実施例2)及び形成しない場合(比較例3)について、それぞれ5個ずつ抵抗溶接を行ない、引っ張り試験及び溶接部の分解を行って溶接部の強度及びナゲットの生成状態を確認した。なお、この抵抗溶接においては、負極用中間部材25は2分割された負極芯体露出部15の間に安定的に位置決めされた状態で配置されているので、一対の抵抗溶接用電極棒を一組のみ用いて、最初に角形非水電解質二次電池10Bの封口体13(
図5A参照)側の負極用導電部材25A部分を抵抗溶接し、その後に他方の負極用導電部材25A部分を抵抗溶接した。
【0071】
[引っ張り試験]
引っ張り試験は、実施例1及び比較例1の場合と同様にして行った。まず、溶接部近傍の両側の負極集電体18のリブ31及び32を掴み、負極集電体18を負極芯体露出部15に対して180°の方向に、抵抗溶接部が外れる(破断する)まで引っ張った。その後、負極集電体18の凹部30の薄肉部に孔ができるかどうかを目視で確認した。この引っ張り試験の結果によれば、実施例2の電池では全て負極集電体18の凹部30の薄肉部に孔ができたが、比較例2の電池では全て負極集電体18に孔ができず、負極集電体18と負極芯体露出部15との界面ないし負極芯体露出部15内で剥れてしまった。
【0072】
[ナゲットの生成状態の確認]
実施例2の場合、ナゲットの形成状態は5例とも、
図7Aに示したとおり、両側の負極集電体18側に大きなナゲット33が形成されていた。それに対し、比較例2の場合は、
図7Bに示したとおり、負極芯体露出部15の負極用導電部材25A側に大きなナゲット33が形成されていた。
【0073】
このことは、実施例2の負極集電体18のように、凹部30を形成すると共に、この凹部30の部分において抵抗溶接すると、凹部30の薄肉部の厚さが他の部分よりも薄いために抵抗溶接時に良好に凹部30の薄肉部が発熱して溶融するため、凹部30側に大きなナゲットが形成されるものと思われる。それに対し、比較例2の場合は、負極集電体18の厚さが厚く、しかも、負極用導電部材25Aの両端にはプロジェクションとして作用する突起25Bが形成されているため、突起25B側で大きく発熱するために、負極用導電部材25A側に大きなナゲット33が形成されるものと思われる。なお、比較例2において、負極用導電部材25Aの両端に突起25Bを形成しない場合、抵抗溶接時に負極集電体18及び負極用導電部材25A共に良好に発熱しないために、
図7Cに示したように、負極芯体露出部15の内部にナゲット33が形成されるものが多くなる。
【0074】
[実施例3、比較例3]
次に、実施例3及び比較例3に共通する角形非水電解質二次電池のナゲットの形成状態を
図8を用いて説明する。なお、
図8Aは実施例3のナゲットの形成状態を示す断面図であり、
図8B及び
図8Cは比較例3のナゲットの形成状態を示す断面図である。
【0075】
実施例3及び比較例3に共通する角形非水電解質二次電池は、実施例2及び比較例2に共通する角形非水電解質二次電池10Bでは負極芯体露出部15の最外部の両側に配置されたものが共に負極集電体18であるのに対し、一方が負極集電体18であり、他方が負極集電受け部材19である点で相違するのみであるので、その具体的な図示は省略する。なお、実施例3では、負極集電体18に凹部30を形成するだけでなく、負極集電受け部材19にも凹部30aを形成した以外は実施例1で用いた負極集電体18及び負極集電受け部材19と同様の構成のものを用いた。なお、比較例3では、負極集電体18及び集電受け部材19共に凹部30は形成されていない。
【0076】
実施例3及び比較例3に共通する角形非水電解質二次電池は、
図2に示した実施例1及び比較例1の抵抗溶接方法と同様にして、最外側の負極集電体18及び負極集電受け部材19に一対の抵抗溶接用電極棒を当接し、負極集電体18及び負極集電受け部材19に本発明の凹部30及び30aを形成した場合(実施例3)及び形成しない場合(比較例3)について、それぞれ5個ずつ抵抗溶接を行ない、引っ張り試験及び溶接部の分解を行って溶接強度及びナゲットの生成状態を確認した。なお、この抵抗溶接においては、負極用中間部材25は2分割された負極芯体露出部15の間に安定的に位置決めされた状態で配置されているので、一対の抵抗溶接用電極棒を一組のみ用いて、最初に角形非水電解質二次電池10Bの封口体13(
図5A参照)側の負極用導電部材25A部分を抵抗溶接し、その後に他方の負極用導電部材25A部分を抵抗溶接した。
【0077】
[引っ張り試験]
実施例3及び比較例3の角形非水電解質二次電池に対し、実施例1及び比較例1の場合と同様にして引っ張り試験を行った。まず、溶接部近傍の負極集電体18のリブ31及び負極集電受け部材19のリブ32を掴み、負極集電体18を負極芯体露出部15に対して180°の方向に、抵抗溶接部が外れる(破断する)まで引っ張った。その後、負極集電体18ないし負極集電受け部材19の凹部30、30aの薄肉部に孔ができるかどうかを目視で確認した。この引っ張り試験の結果によれば、実施例3の電池では全て負極集電体18及び集電受け部材19の凹部30、30aの薄肉部に孔ができたが、比較例3の電池では全て負極集電体18及び集電受け部材19に孔ができず、負極集電体18ないし負極集電受け部材19と負極芯体露出部15との界面ないし負極芯体露出部15内で剥れてしまった。
【0078】
[ナゲットの生成状態の確認]
実施例3の場合、ナゲットの形成状態は5例とも、
図8Aに示したとおり、負極集電体18及び負極集電受け部材19側に大きなナゲット33が形成されていた。それに対し、比較例2の場合は、
図8Bに示したとおり、負極芯体露出部15の負極用導電部材25A側に大きなナゲット33が形成されていた。
【0079】
このことは、実施例3の負極集電体18及び負極集電受け部材19のように、それぞれ負極芯体露出部15に対向しない側に凹部30、30aを形成すると共に、この凹部30、30aの部分において抵抗溶接すると、凹部30、30aの薄肉部の厚さが他の部分よりも薄いために抵抗溶接時に良好に凹部30、30aの薄肉部が発熱して溶融するため、凹部30、30a側に大きなナゲットが形成されるものと思われる。それに対し、比較例3の場合は、負極集電体18及び負極集電受け部材19の厚さが厚く、しかも、負極用導電部材25Aの両端にはプロジェクションとして作用する突起25Bが形成されているため、突起25B側で大きく発熱するために、負極用導電部材25A側に大きなナゲット33が形成されるものと思われる。なお、比較例3において、負極用導電部材25Aの両端に突起25Bを形成しない場合、抵抗溶接時に負極集電体18及び負極用導電部材25A共に良好に発熱しないために、
図8Cに示したように、負極芯体露出部15の内部にナゲット33が形成されるものが多くなる。
【0080】
なお、実施例3では集電受け部材19にも凹部30aを設けた例を示したが、集電受け部材19の負極芯体露出部15に対向しない側にに凹部が形成されていなくても、集電体側に大きなナゲットが形成されるため、負極集電体ないし正極集電体と負極芯体露出部ないし正極芯体露出部との間の溶接強度が増加すると共に、電気抵抗が小さくなり、大電流放電時の出力の低下は少なくなる。
【0081】
なお、上記実施例1〜3及び比較例1〜3では、負極側について述べたが、正極側においても、正極芯体露出部14、正極集電体16、正極用中間部材24、正極用導電部材24A、正極用集電受け部材(図示省略)の材料が相違する他は、同様の構成を採用することにより、実質的に同様の作用・効果を奏する。また、本発明は、必ずしも負極側及び正極側の両方に採用しなければならないものではなく、負極側及び正極側のいずれか一方にのみ適用してもよい。さらに、芯体露出部と集電体ないし集電受け部材の間には、抵抗溶接部を除いて、絶縁フィルムが配置されていてもよく、また、集電体ないし集電受け部材の芯体露出部と対向する側にプロジェクションが形成されていてもかまわない。