特許第5917448号(P5917448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917448
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】遊間止水材
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   E01C11/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-131604(P2013-131604)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-4256(P2015-4256A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】393024603
【氏名又は名称】旭化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】山内 寛
(72)【発明者】
【氏名】片島 大志
(72)【発明者】
【氏名】木原 竜一
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−155581(JP,A)
【文献】 特開2010−168814(JP,A)
【文献】 特開2013−011344(JP,A)
【文献】 特開2013−064305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/02−17/00
E04B 1/62
E04B 1/682
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡連続気泡スポンジ材からなる保護層と、気泡間皮膜を破断して形成した皮膜亀裂によって気泡間を連通してなる疎水性発泡連続気泡スポンジ材からなる止水層と、発泡連続気泡スポンジ材からなるバックアップ層とを、一体に積層してなる遊間止水材であって、保護層、止水層及びバックアップ層を構成する発泡連続気泡スポンジ材の弾性を、保護層、止水層、バックアップ層の順に高くなるように設定してなることを特徴とする遊間止水材。
【請求項2】
バックアップ層の遊間壁と対向する側の側面に、吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材からなる側面止水層を設けたことを特徴とする請求項記載の遊間止水材。
【請求項3】
バックアップ層の厚さhを、遊間止水材の遊間の伸縮方向の幅寸法wを基準として、0.35w以上としたことを特徴とする請求項1記載の遊間止水材。
【請求項4】
バックアップ層を構成する発泡連続気泡スポンジ材を伸縮方向に分割して構成し、発泡連続気泡スポンジ材の弾性を、遊間の伸縮方向の側より外側が高くなるように設定してなることを特徴とする請求項1、2は3記載の遊間止水材。
【請求項5】
遊間止水材を遊間の伸縮方向と直交する長手方向に分割して構成し、該分割して構成した遊間止水材同士を、遊間止水材と同じ層構成からなる接続部材を介して接続したことを特徴とする請求項1、2、3は4記載の遊間止水材。
【請求項6】
接続部材の止水層の厚さを、遊間止水材の止水層の厚さより大きく設定してなることを特徴とする請求項記載の遊間止水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮幅の大きな動的目地遊間や伸縮遊間の複雑な動的変位に容易に追随し、かつ、動的目地遊間から水の浸入や漏水落下を防止することができる遊間止水材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮装置の遊間に挿入配備する遊間止水材として、例えば、図1に示すようなものがある。
この遊間止水材M′は、伸縮装置の遊間の伸縮変位を体積変化で吸収する伸縮フォーム層F′を基材とし、その上表面及び両側面に亘って柔軟な止水シートL′を被覆配備し、さらに、その止水シートL′の上表層面に、連続気泡フォーム材の保護層C′を積層配備するようにしている。
【0003】
ところで、この遊間止水材M′は、配設する伸縮装置の最大遊間幅以上で設計され、遊間の伸縮に対して圧縮変形でその変位を吸収しながら追随する。すなわち、この遊間止水材M′の止水シートL′は、遊間の伸縮に対して、その幅調整を自身の弛み波型凹凸変形で追随し、その波型凹凸変形は、遊間止水材M′の上表層の凹凸変形となり、遊間の伸縮変位に合わせて凹凸変形が繰り返される。
この遊間止水材M′の上表層の波型凹凸変形の繰り返し運動は、遊間止水材M′の上表層に浸入した土砂を、その凹凸溝の一か所に集中堆積させる作用をし、伸縮装置のフェイスプレートと遊間止水材M′の上層面との間に土砂の堆積滞留層を形成し、遊間止水材M′の接着固定部を破壊し、漏水や遊間止水材M′の落下を助長するという問題があった。
【0004】
また、遊間止水材M′は、図2−2に示すような遊間のせん断角θの変位によって、図2−1の遊間の止水シートL′は、伸縮方向の幅寸法wから幅寸法wθに伸張されることとなる。
すなわち、遊間がせん断変位した場合、遊間止水材M′の止水シートL′は、せん断伸張されており、その状態で遊間の伸縮方向の幅寸法wが伸縮すると、止水シートL′に過剰な伸張力が掛かり、遊間止水材M′の接着界面に剥離応力が作用して、接着剥離による漏水及び接着固定の破壊による止水材の落下要因となる。
【0005】
さらに、遊間止水材M′の止水構造は、止水シートL′を伸縮フォーム層F′の接着界面と表層の止水面の3面表層に被覆接着配備するようにしている。一方、伸縮装置の道路幅員長さ方向の両端部から雨水等を落下漏水させないために、遊間止水材M′を水平ラインに対し、屈曲立ち上げ配備する必要があるが、屈曲部の接着側面に止水シートL′の歪皺が発生し、接着界面の気密接触接着が困難となり、漏水の原因となるという問題があった。
【0006】
また、他の遊間止水材として、低硬度高伸張性の弾性止水シール材を伸縮装置の遊間内に充填する工法が提案されているが、弾性止水シール材は遊間の伸縮に対して、体積変化ができず、自身の充填形状変化で追随する。
そのため、伸縮追随性が低く、その変形応力も高いため、遊間壁の接着固定界面には変形歪応力が集中し、接着界面の破壊を招くという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の遊間止水材の有する問題点に鑑み、遊間の伸縮変位による遊間止水材の伸縮変形において、その表層の土砂堆積要因となる波型凹凸変形が生じにくく、また、せん断伸縮変形による接着固定部の破壊による漏水や止水材脱落がなく、さらに、止水材の伸縮変形応力が高く、変形歪応力が発生して接着破壊による漏水のない遊間止水材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の遊間止水材は、発泡連続気泡スポンジ材からなる保護層と、気泡間皮膜を破断して形成した皮膜亀裂によって気泡間を連通してなる疎水性発泡連続気泡スポンジ材からなる止水層と、発泡連続気泡スポンジ材からなるバックアップ層とを、一体に積層してなる遊間止水材であって、保護層、止水層及びバックアップ層を構成する発泡連続気泡スポンジ材の弾性を、保護層、止水層、バックアップ層の順に高くなるように設定してなることを特徴とする。
【0010】
この場合において、バックアップ層の遊間壁と対向する側の側面に、吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材からなる側面止水層を設けることができる。
【0011】
また、バックアップ層の厚さhを、遊間止水材の遊間の伸縮方向の幅寸法wを基準として、0.35w以上とすることができる。
【0012】
また、バックアップ層を構成する発泡連続気泡スポンジ材を伸縮方向に分割して構成し、発泡連続気泡スポンジ材の弾性を、遊間の伸縮方向の側より外側が高くなるように設定することができる。
【0013】
また、遊間止水材を遊間の伸縮方向と直交する長手方向に分割して構成し、該分割して構成した遊間止水材同士を、遊間止水材と同じ層構成からなる接続部材を介して接続することができる。
【0014】
また、接続部材の止水層の厚さを、遊間止水材の止水層の厚さより大きく設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遊間止水材によれば、遊間の伸縮変位による遊間止水材の伸縮変形において、その表層の土砂堆積要因となる波型凹凸変形が生じにくく、また、せん断伸縮変形による接着固定部の破壊による漏水や止水材脱落がなく、さらに、止水材の伸縮変形応力が高く、変形歪応力が発生して接着破壊による漏水のない遊間止水材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の遊間止水材を示す斜視図である。
図2-1】遊間止水材の通常状態を示す平面図である。
図2-2】遊間止水材のせん断変形状態を示す平面図である。
図3】本発明の遊間止水材の第1実施例を示す断面図である。
図4】本発明の遊間止水材の第2実施例を示す断面図である。
図5-1】同遊間止水材の圧縮変形状態を示す断面図である。
図5-2】同遊間止水材の圧縮湾曲変形状態を示す断面図である。
図6-1】本発明の遊間止水材の第3実施例を示す断面図である。
図6-2】同遊間止水材の圧縮変形状態(小変形時)を示す断面図である。
図6-3】同遊間止水材の圧縮変形状態(大変形時)を示す断面図である。
図7】発泡独立気泡スポンジ材の気泡構成モデル図である。
図8】本発明の遊間止水材の止水層を構成する発泡連続気泡スポンジ材の気泡構成モデル図である。
図9】本発明の遊間止水材の保護層を構成する発泡連続気泡スポンジ材の気泡構成モデル図である。
図10】本発明の遊間止水材の分割、接続構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の遊間止水材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図3に、本発明の遊間止水材の第1実施例を示す。
この遊間止水材Eは、硬質で高弾性の空気通過抵抗の低い発泡連続気泡スポンジ材で形成したバックアップ層Bを構成基材とし、その上にバックアップ層Bより軟質で低弾性の気泡間皮膜を破断して形成した皮膜亀裂によって気泡間を連通してなる疎水性発泡連続気泡スポンジ材からなる止水層Qを配備し、さらに、その上に止水層Qよりさらに軟質で低弾性の発泡連続気泡スポンジ材で形成した保護層Cを配備し、全体を接着剤等によって積層、一体化してなるものである。
【0019】
図4に、本発明の遊間止水材の第2実施例を示す。
この遊間止水材Eは、上記第1実施例の遊間止水材Eのバックアップ層Bの遊間壁と対向する側の側面に、吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材からなる側面止水層Gを配備し、全体を接着剤等によって一体化してなるものである。
この吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材からなる側面止水層Gは、遊間壁の不陸凹凸を吸収し、気密密着接着性を高めるとともに、接着界面に雨水等が浸入した場合、この側面止水層Gを構成する吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材が雨水を吸収、ゲル化して遮水し、さらに膨張して雨水浸入隙間を密閉し、接着界面からの浸入水を完全に遮水できる。
【0020】
ところで、上記第1及び第2実施例の遊間止水材Eは、より具体的には、バックアップ層Bを構成する発泡連続気泡スポンジ材として、エーテル系のウレタンスポンジ材等の汎用の発泡連続気泡スポンジ材を用いることができ、第1及び第2実施例においては、気孔率:75%(スポンジ材の密度から算出)、40%圧縮応力:1.01×10−2MPa(試験方法:JIS K−6400)を用いるようにしている。
【0021】
また、側面止水層Gを構成する吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材として、吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材(CS#8137(旭化工製))を用いるようにしている。
この吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材は、厚さ3.0mmで、気孔率:89%、吸水膨張率:180%(水中に浸漬後、10分経過時の後の体積/当初の体積)であり、また、引張力:0.16MPa、伸び:250%、湿熱老化(70℃×90%RH×24時間)引張力変化:−7.0%、伸び変化:0(試験方法:JIS K−6400)である。
【0022】
また、止水層Qを構成する疎水性発泡連続気泡スポンジ材は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)やエチレンプロピレンゴム(EPMゴム)等の疎水性の合成ゴムからなるスポンジ材、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)(AF−0080(旭化工製))からなるスポンジ材を用いるようにしている。
この疎水性発泡連続気泡スポンジ材は、厚み15mmで、気孔率は90%(スポンジ材の密度から算出)、連続気泡率は75%(50%エタノール水溶液含浸量から算出)であり、また、引張力:0.13MPa、伸び:320%、圧縮応力:0.6×10−2MPa(試験方法:JIS K−6400)である。
【0023】
ここで、止水層Qを構成する疎水性発泡連続気泡スポンジ材(以下、単に、「スポンジ材A」という。)についてさらに詳述する。
【0024】
このスポンジ材Aは、原材料として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)やエチレンプロピレンゴム(EPMゴム)等の疎水性の合成ゴム(例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)の真比重:1.11)を発泡させ、密度:0.11、気泡の体積率(気孔率):90.1%(スポンジ材の密度から算出。)、寸法:300×300×30(t)mmの独立気泡ゴム材(図7(気泡構成モデル図)に示すような、ゴム基材S中に多数の独立気泡1が分散した状態の独立気泡ゴム材)からなる板状素材を製作した。この独立気泡ゴムの独立気泡1の直径はφ1.5mm以下(拡大して測定。)であった。
【0025】
次に、この板状素材を、必要に応じて、60〜80℃に加熱しながら、例えば、周速1〜10m/minで等速回転する2本のロールを備えたロール機を用い、ロール間隙を25mmに設定して数回〜十数回程度、ロール間隙を15mmに設定して数回〜十数回程度、ロール間隙を7mmに設定して数回〜十数回程度通過させることにより圧縮処理を施すことで、独立気泡1を隔てる気泡間皮膜Sを亀裂破断させて、皮膜亀裂Vを形成する。
【0026】
このようにして得たスポンジ材Aは、密度:0.12、気泡の体積率(気孔率):90%(スポンジ材の密度から算出。)、気泡2の直径:φ1.0mm以下、皮膜亀裂Vにより連通された気泡2の体積率(気孔率):67%(50%エタノール水溶液含浸量から算出。)、残存する独立気泡1を含む全気泡に対する皮膜亀裂Vにより連通された気泡2の割合:75%(気泡の体積率(気孔率)と皮膜亀裂Vにより連通された気泡2の体積率(気孔率)とから算出。)であった。
また、スポンジ材Aの物理特性(試験方法:JIS K6400−2に準じる。)は、引張力:0.13MPa、100%伸張応力:0.04MPa、伸び:320%、40%圧縮応力:0.6×10−2MPa、最大破壊圧縮率:95%以上であった。
【0027】
ところで、圧縮処理は、上記の例では、乾燥下で施すようにしたが、湿式下で施すこともできる。
具体的には、上記板状素材を、必要に応じて、60〜80℃に加熱しながら、例えば、周速1〜10m/minで等速回転する2本のロールを備えたロール機を用い、ロール間隙を25mmに設定して1回〜数回程度通過させることにより圧縮処理を施すことで、独立気泡1を隔てる気泡間皮膜Sを亀裂破断(予備破断)させて、皮膜亀裂Vを予備形成する。
次に、上記皮膜亀裂Vの予備形成処理を行った板状素材を、50%エチルアルコール処理溶液に浸漬し、処理溶液を板状素材中に含浸させるようにする。
この状態の板状素材を、2枚の面状の圧縮板を備えたプレス機を用い、例えば、圧縮速度100〜1000mm/minで、含浸させた処理溶液を絞り出させるように圧縮処理を行う。
圧縮処理は、例えば、60〜80%圧縮を1回〜数回程度、80〜90%圧縮を1回〜数回程度、加圧と除圧を繰り返すことで、独立気泡1を隔てる気泡間皮膜Sを亀裂破断させて、皮膜亀裂Vを形成する。
なお、圧縮処理を行ったスポンジ材Aは、必要に応じて、脱水、乾燥処理を行うようにする。
【0028】
また、上記50%エチルアルコール処理溶液に、必要に応じて、3%シリコンオイル含有エマルジョン等の撥水剤を添加することができる。
これにより、気泡2の内面が撥水剤で処理されることとなり、気泡2内に水が浸入することを阻止し、止水性をさらに向上することができる。
【0029】
このようにして得られたスポンジ材Aは、ゴム基材S中に多数分散して存在する気泡2を隔てる気泡間皮膜Sを破断して形成した皮膜亀裂Vによって気泡2間が連通されてなることから、皮膜亀裂Vを有する気泡間皮膜Sは、気泡2間を連通する弁体機能を果たし、水の通過を阻止して止水機能を発揮する一方で、気体の通過は容易であるため、低応力で自由変形が可能となり、伸縮変移追随性が、皮膜亀裂Vをガスが通過することによる連続気泡の気泡体積変化と一部に存在する独立気泡1の形状変化により確保されるため、変形量が大きく、変形応力が低く、伸縮対応性が高いものとなる。
また、独立気泡1を含む全気泡の体積率を85〜95%とすることにより、気泡の体積率が高いことで、変形方向性がより自由となり、より変形量が大きく、変形応力が低く、伸縮対応性が高いものとなる。
また、全気泡に対する皮膜亀裂によって連通された気泡2の割合を70%以上とすることにより、伸縮変移に対して自身の体積変化で追随し、その変形応力は低く、大きな変形量で自由変形方向に追随するものとなる。
これらによって、スポンジ材Aは、止水材として、図3に示すような複雑な動的方向や振幅量の異なる2物体の間隙を含む動的隙間等に挿入することによって、動的隙間等の動的変移に容易に追随し、かつ、動的隙間等への水の浸入や動的隙間等からの漏水を防止することができる。
【0030】
また、保護層Cは、遊間止水材Eの表層に浸入する土砂から止水層Qを保護するために配設されるもので、保護層Cを構成する発泡連続気泡スポンジ材として、エーテル系のウレタンスポンジ材のほか、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)やエチレンプロピレンゴム(EPMゴム)等の疎水性の合成ゴムからなるスポンジ材を用いることができ、好ましくは、止水層Qを構成する材料と、同種の材料からなる発泡連続気泡スポンジ材を用いることができる。
そして、この発泡連続気泡スポンジ材は、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)からなるスポンジ材で、気孔率:85%(スポンジ材の密度から算出。)、引張力:0.40MPa、伸び:160%、圧縮応力:0.5×10−2MPa(試験方法:JIS K−6400)である。
【0031】
ここで、保護層Cを構成する発泡連続気泡スポンジ材(以下、単に、「スポンジ材D」という。)についてさらに詳述する。
【0032】
このスポンジ材Dは、図9に示すように、スポンジ材Dを形成する発泡気泡が、気泡間皮膜Sが発泡ガス通過孔Uによって気泡間連結された完全連通気泡3と独立気泡1の気泡間皮膜Sが皮膜亀裂Vで連通された気泡2及び一部の独立気泡1の3種の気泡構成で形成されているものを好適に用いることができる。
このスポンジ材Dは、保護層Cとして適用した場合に、完全連通気泡3には容易に雨水が浸入するが、浸入した雨水は、各気泡個々の中に滞留しており、例えば、寒冷低温環境では凍結するが、気泡個々内に浸入している雨水の凍結であり、単独粒状凍結となるため、伸縮変位に対して追随することができる。すなわち、遊間止水材Eは寒冷地においても伸縮遊間止水材として機能する。
【0033】
図3及び図4に示す第1及び第2実施例の遊間止水材Eは、バックアップ層Bの厚さhを、遊間止水材Eの遊間の伸縮方向の幅寸法wを基準として、0.35w以上とするようにしている。
この遊間止水材Eに、図5−1に示すように圧縮変形を与えると、その圧縮過程において、構成する連続気泡個々が、遊間止水材Eの外側面から順次圧縮変形され、外側部からスポンジ材の密度を高くし、高弾性化するとともに、バックアップ層Bの外側面(接着界面の幅(=バックアップ層Bの厚さh))から順次内部に向かって圧縮弾性エネルギf、fが蓄積して行く。さらに、遊間止水材Eに圧縮変形が加わると、外側部からの圧縮弾性エネルギf、fは大きくなり、中央部のスポンジ材の密度や弾性エネルギが高くなり、バックアップ層Bの圧縮弾性エネルギf、fが中央で衝突し、両側の圧縮弾性エネルギf、fが均衡状態となる。この両側の均衡した圧縮弾性エネルギf、fの分布が、バックアップ層Bの接着界面の幅の水平上面側と下面側においてバランスがとれていると、遊間止水材Eは正常な形態を堅持する。
一方、図5−2に示すように、遊間壁に接着固定する両側面の接着幅の上下面の圧縮弾性エネルギf、fが伸縮軸平面に対して並行バランスを崩すと、圧縮弾性エネルギf、fは遊間の伸縮方向の中央を起点とした屈折回転モーメントMに転換し、圧縮座屈変形を起こす。この両側部の圧縮弾性エネルギf、fの上下伸縮軸面並行バランスの崩れによる屈折回転モーメントMへの転換は、遊間止水材Eの伸縮方向の幅寸法wと遊間壁との接着界面の幅(=バックアップ層Bの厚さh)との寸法比率によって、難易度が異なり、遊間止水材Eの伸縮方向の幅寸法wに対して、接着界面の幅が小さくなると上下の圧縮弾性エネルギf、fの並行バランスの崩れが容易に屈折回転モーメントMに転換する。
図3及び図4に示す第1及び第2実施例の遊間止水材Eはこれを防止するために、遊間止水材Eのバックアップ層Bの厚さhを、遊間止水材Eの遊間の伸縮方向の幅寸法wを基準として、0.35w以上とすることで、座屈変形を阻止するようにしている。
【0034】
また、本発明の遊間止水材Eは、図6−1に示す第3実施例のように、遊間止水材Eのバックアップ層Bを構成する発泡連続気泡スポンジ材を伸縮方向に分割して構成し、発泡連続気泡スポンジ材の弾性を、遊間の伸縮方向の側より外側が高くなるように設定することができる。
より具体的には、バックアップ層Bの中央部Bと両側部Bの2種類の縦並行配列とし、その配備構成比は、中央部Bの伸縮方向の幅寸法wは遊間止水材Eの伸縮方向の幅寸法wの0.5w(0.4〜0.6w)とし、また両側部Bの伸縮方向の幅寸法wは遊間止水材Eの伸縮方向の幅寸法wの0.25w(0.2〜0.3w)とし、かつ中央部Bの弾性は、その表層に配備する止水層Qと同等又はそれ以上とし、また、両側部Bの弾性は中央部Bよりさらに高弾性の硬質スポンジ材とする。ここで、遊間止水材Eの伸縮方向の幅寸法wを210mmとした場合には、バックアップ層Bの両側部Bの伸縮方向の幅寸法w=52.5mm、中央部Bの伸縮方向の幅寸法w=105mmとする。両側部B及び中央部Bを構成する発泡連続気泡スポンジ材は、エーテル系ウレタンスポンジ材からなり、両側部Bは、気孔率:75%(スポンジ材の密度から算出。)、40%圧縮応力:1.01×10−2MPa(試験方法:JIS K−6400)であり、中央部Bは、気孔率:68%(スポンジ材の密度から算出。)、40%圧縮応力:0.60×10−2MPa(試験方法:JIS K−6400)である。
この遊間止水材Eに、図6−2に示すように圧縮変形を与えると、遊間止水材Eに圧縮変形を与えると、その初期一次過程でバックアップ層Bの高弾性の両側部Bは変形せず、低弾性の中央部Bが先に圧縮変形し、両側部Bとの境界面を起点とし、中央部Bが外側から順次内部に向かって、圧縮弾性エネルギf、fが発生し、中央部に伝達されて蓄積し、中央部が高密度高弾性部B′を形成する。すなわち、この遊間止水材Eの初期一次圧縮過程での圧縮変形系の形状構造設計は、伸縮幅がw(=0.5w)で、バックアップ層Bの外側面(接着界面の幅(=バックアップ層Bの厚さh))との関係で、h≧0.35wの構造系での伸縮変位となり、これを座屈変形対策安全設計基準に適用して解析すると、伸縮幅のwに対してh≧0.7wの伸縮系構造設計となり、圧縮弾性エネルギf、fの屈折回転モーメントMに転換されにくく、この初期圧縮時点で座屈変形することはない。
また、この初期一次圧縮時点で中央部の高密度高弾性部B′の状態は、図6−2に示すように、伸縮方向の幅寸法wがw′に圧縮され、高密度の圧縮弾性エネルギf″、f″が蓄積される。
さらに、図6−2に示すような遊間止水材Eに、図6−3に示すように追加二次圧縮を与える時点では、バックアップ層Bの両側部Bにおいて、中央部の高密度高弾性部B′は中央部壁部として作用し、各々その外側遊間壁接着界面と中央部の高密度高弾性部B′は遊間壁との境界面の両側面を起点として、バックアップ層Bの両側部Bに、その層の幅中央に向かって順次圧縮が進行し、圧縮弾性エネルギf″、f″が蓄積し、密度の高い、高弾性のB′層が形成される。
この圧縮変形系の形状構造設計は、伸縮幅がw(=0.25w)で、バックアップ層Bの外側面(接着界面の幅(=バックアップ層Bの厚さh))との関係で、h≧0.35wの構造系での伸縮変位となり、これを座屈変形対策安全設計基準に適用して解析すると、伸縮幅のwに対してh≧1.4wでの伸縮系構造設計となり、圧縮弾性エネルギf′、f′の屈折回転モーメントMへの転換が全く発生しない、安全率が高い設計となる。
すなわち、図6−1の構造の遊間止水材Eは、伸縮変形で全く座屈変形しない遊間止水材Eとなる。
【0035】
図4に示す第2実施例の遊間止水材Eを用いて行った伸縮漏水試験について説明する。
遊間止水材Eの伸縮方向の幅寸法wを80mmとし、最大遊間70mmにこの遊間止水材Eを長さ750mmで製作して挿入セットし、その両端部250mmを約45°に折り曲げ、中央に水を溜め、伸縮速度を200mm/min、最大圧縮70%、最小遊間:24mmで360回伸縮漏水試験を行った。
その結果、表層面に波型凹凸溝の発生や湾曲変形も発生せず、また、遊間止水材E本体や、接着界面からの漏水も認められなかった。10%圧縮セットで伸縮スピードを200mm/minとし、55%伸縮量で300回の伸縮漏水試験を行い、漏水は認めなかった。
【0036】
この遊間止水材Eは、上記各実施例に奏せられる作用効果のほか、以下の作用効果を奏する。
・遊間止水材Eは、図3及び図4に示す第1及び第2実施例のように、そのすべてが発泡連続気泡スポンジ材で構成されており、外力による変形は自身の構成気泡の変形で追随する。これにより、自由伸縮変形方向性を持ち、低変形応力で大きな伸縮変位に追随でき、また、表層土砂堆積の要因となる圧縮変形による遊間止水材Eの表層に波型凹凸溝が発生しない。また、遊間止水材Eを挿入、接着固定した側面の変形歪皺の発生を阻止し、接着界面の気密性を堅持して界面漏水を防止する。さらに、伸縮変形を自身が体積変化で追随できることで、遊間止水材Eを挿入、接着固定した固定部に伸縮変形による界面歪応力集中がなく、耐久性及び止水性の高い接着固定を可能とする。
・そのすべてが発泡連続気泡スポンジ材で構成された遊間止水材Eが伸縮変形した場合、スポンジ材の気泡内の空気は出入する。このとき、遊間止水材Eの保護層Cに雨水等が接している状態で伸縮変形すると、保護層C、止水層Q及びバックアップ層Bの大気接触面に内部減圧吸引力が作用するが、雨水等は止水層Qの疎水性による水の表面張力と構成気泡の亀裂皮膜による弁体機能で止水層Q内には容易に吸引されることはなく、一方、バックアップ層Bの下面大気接触側からは大気は容易に吸入され、内部減圧状態は解除されて遊間止水材Eが伸縮止水機能を堅持する。
・遊間止水材Eの高弾性のバックアップ層Bは、遊間止水材Eの上層に配備される他の低弾性で柔軟、低変形応力の止水層Qやさらに低弾性の保護層Cの支持材となり、遊間止水材Eを容易に伸縮装置遊間内に、正常で安定な状態に挿入接着固定することができる。また、これにより、遊間止水材Eの伸縮変形において、各構成材は高弾性のバックアップ層Bに他の軟質低弾性材が追随して変形することとなり、軟質材の表層に波型凹凸変形や伸縮座屈変形が発生することを阻止し、遊間内の浸入土砂堆積を抑止する。また、保護層Cは浸入する土砂等から止水層Qを保護している。
・保護層Cは、スポンジ材を構成する発泡気泡が、気泡間皮膜Sが発泡ガス通過孔Uによって気泡間連結された完全連通気泡3と独立気泡1の気泡間皮膜Sが皮膜亀裂Vで連通された気泡2及び一部の独立気泡1の3種の気泡構成で形成されている。そして、完全連通気泡3には容易に雨水が浸入するが、浸入した雨水は、各気泡個々の中に滞留しており、例えば、寒冷低温環境では凍結するが、気泡個々内に浸入している雨水の凍結であり、単独粒状凍結となるため、伸縮変位に対して追随することができる。すなわち、遊間止水材Eは寒冷地においても伸縮遊間止水材として機能する。
・遊間止水材Eのバックアップ層Bの両側接着界面に、吸水ゲル化膨張性連続気泡スポンジ材からなる側面止水層Gを配備した場合には、側面止水層Gが遊間壁の不陸凹凸を吸収し、気密密着接着性を高めるとともに、接着界面に雨水等が浸入した場合、側面止水層Gが雨水を吸収し、ゲル化して遮水し、さらに膨張して雨水浸入隙間を密閉し、接着界面からの浸入水を完全に遮水できる。
・道路橋伸縮装置の遊間に挿入、固定した遊間止水材Eが伸縮変形により、図5−2に示すように伸縮幅方向で座屈湾曲変形すると、伸縮装置のフェイスプレートと止水材表層面間に隙間が発生し、土砂が堆積滞留し、止水材接着固定部を破壊し、漏水及び止水材脱落を招くが、遊間止水材Eは、そのすべてが発泡連続気泡スポンジ材で構成されており、その構成材の高弾性部材であり遊間止水材Eの主構成基材であるバックアップ層Bに、他の軟質構成部材は追随して伸縮変形が行われる。
【0037】
ところで、上記各実施例の遊間止水材Eは、図10に示すように、遊間止水材Eを遊間の伸縮方向と直交する長手方向に分割して構成し、分割して構成した遊間止水材E、E同士を、遊間止水材Eと同じ層構成からなる接続部材Jを介して接続することができる。
この場合、遊間止水材Eの遊間の伸縮方向と直交する長手方向の寸法Lは、数mm〜数十mm程度の任意の寸法に設定することができる。
これにより、遊間止水材Eを、幅員の大きな遊間に適用する場合に、現場に分割して構成した遊間止水材Eを搬入し、分割して構成した遊間止水材E、E同士を、現場で接着剤等を用いて接続部材Jを介して接続することができ、作業性及び施工精度を向上することができる。
【0038】
この場合、接続部材Jの止水層Qの厚さtを、遊間止水材Eの止水層Qの厚さtの厚さと同じか、それより大きく、より具体的には、遊間止水材Eのバックアップ層B側に数mm〜十数mm程度かかるように大きく設定することが好ましい。
これにより、隣接して配設した分割して構成した遊間止水材E、E同士の上下方向のずれを接続部材Jで吸収して、止水層Qによる止水性能を維持することができる。
【0039】
以上、本発明の遊間止水材について、その実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の遊間止水材は、遊間の伸縮変位による遊間止水材の伸縮変形において、その表層の土砂堆積要因となる波型凹凸変形が生じにくく、また、せん断伸縮変形による接着固定部の破壊による漏水や止水材脱落がなく、さらに、止水材の伸縮変形応力が高く、変形歪応力が発生して接着破壊による漏水のないという特性を有していることから、伸縮幅の大きな動的目地遊間等に適用される遊間止水材の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
E 遊間止水材
B バックアップ層
両側部(バックアップ層)
中央部(バックアップ層)
Q 止水層
C 保護層
G 側面止水層
J 接続部材
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9
図10