特許第5917455号(P5917455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5917455-炭素繊維を含有する廃材の利用方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917455
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】炭素繊維を含有する廃材の利用方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/52 20060101AFI20160428BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C21C5/52
   B09B3/00 303H
   B09B3/00 303A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-151353(P2013-151353)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-21177(P2015-21177A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016602
【氏名又は名称】共英製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】針間 直樹
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−104940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/52
B09B 3/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維を含有する廃材を、破砕又は裁断し、容器に収容するとともに、該炭素繊維を含有する廃材を収容した容器を、鉄スクラップと共に製鋼用電気炉に装入し、製鋼を行うことにより溶融し、前記廃材に含有される炭素繊維を、鉄を構成する炭素材料としてリサイクルすることを特徴とする炭素繊維を含有する廃材の利用方法。
【請求項2】
炭素繊維を含有する廃材を収容する容器に鉄製容器を使用することを特徴とする請求項1記載の炭素繊維を含有する廃材の利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維を含有する廃材の利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素繊維を強化繊維として用いる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量で、剛性、耐衝撃性、耐熱性(炭素繊維自体の真空状態での耐熱性は、2000〜3000℃)、耐薬品性、耐腐食性等の力学的、化学的特性に優れ、宇宙・航空分野、自動車工業分野、電子機器分野、エネルギ分野、スポーツ用品分野、レジャー用品分野等の各種産業分野に幅広く使用されている。
【0003】
しかしながら、上記優れた力学的、化学的特性を有するため、炭素繊維を含有する廃材(炭素繊維自体の廃材を含み、本明細書において、「炭素繊維を含有する廃材」という。)は、再利用に適さず、また、焼却処理を行うためには多くのエネルギを必要とするため、各種産業分野においてゼロ・エミッションの実現の障害となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の炭素繊維を含有する廃材の有する問題点に鑑み、炭素繊維を含有する廃材を、炭素材料として有効利用できるようにする、炭素繊維を含有する廃材の利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法は、炭素繊維を含有する廃材を、破砕又は裁断し、容器に収容するとともに、該炭素繊維を含有する廃材を収容した容器を、鉄スクラップと共に製鋼用電気炉に装入し、製鋼を行うことにより溶融し、前記廃材に含有される炭素繊維を、鉄を構成する炭素材料としてリサイクルすることを特徴とする。
【0006】
この場合において、炭素繊維を含有する廃材を収容する容器に鉄製容器を使用することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法によれば、破砕又は裁断した炭素繊維を含有する廃材を収容した容器を、鉄スクラップと共に製鋼用電気炉に装入し、製鋼を行うことにより溶融し、廃材に含有される炭素繊維を、鉄を構成する炭素材料としてリサイクルすることによって、炭素繊維を含有する廃材を有効利用することができる。
【0008】
また、炭素繊維を含有する廃材を収容する容器に鉄製容器を使用することにより、炭素繊維を含有する廃材が、製鋼の際に製鋼用電気炉内の溶融金属の表面に浮き上がることを防止して、廃材に含有される炭素繊維の溶融金属内への溶け込みを促進することができ、かつ、リフティングマグネットによる製鋼用電気炉への装入操作が可能となり、取り扱いが容易で、さらに、鉄製容器自体も、鉄を構成する鉄材料としてリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法の一実施例を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に、本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法の一実施例を示す。
この炭素繊維を含有する廃材の利用方法は、炭素繊維を含有する廃材Cを、破砕又は裁断し、容器1に収容するとともに、この炭素繊維を含有する廃材Cを収容した容器1を、鉄スクラップSa、Sbと共に製鋼用電気炉3に装入し、製鋼を行うことにより溶融し、廃材Cに含有される炭素繊維を、鉄を構成する炭素材料としてリサイクルするものである。
【0012】
この場合において、炭素繊維を含有する廃材Cとしては、炭素繊維を強化繊維として用いる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や炭素繊維自体(炭素繊維の織物等の加工品を含む。)の廃材を対象とし、廃材Cが炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の場合は、一辺が数mm〜十数mm程度の小片となるようにシュレッダー等で破砕し、炭素繊維自体の場合は、長さが数cm〜数十cm程度の短尺となるように切断機等で裁断するようにする。
【0013】
炭素繊維を含有する廃材Cを収容する容器1には、鉄製容器(例えば、ドラム缶。)や合成繊維織物製のフレキシブルコンテナバッグを使用することができる。
これにより、炭素繊維を含有する廃材Cが、製鋼の際に製鋼用電気炉3内の溶融金属の表面に浮き上がることを防止して、廃材Cに含有される炭素繊維の溶融金属内への溶け込みを促進することができる。
特に、容器1に鉄製容器を使用することにより、リフティングマグネットによる製鋼用電気炉3への装入作業が可能となり、取り扱いが容易で、さらに、鉄製容器自体も、鉄を構成する鉄材料としてリサイクルすることができる。
【0014】
炭素繊維を含有する廃材Cを収容した容器1の製鋼用電気炉3への装入は、例えば、スクラップチャージングバスケット2を用いて行うことができるが、この場合、鉄スクラップSa、炭素繊維を含有する廃材Cを収容した容器1、さらに必要に応じて、鉄スクラップSaより少ない量の鉄スクラップSbを、この順に、かつ、炭素繊維を含有する廃材Cを収容した容器1の周囲に鉄スクラップSa、Sbが配置されるように製鋼用電気炉3に装入するようにする。
このように、炭素繊維を含有する廃材Cを収容した容器1を、鉄スクラップSa、Sbと共に製鋼用電気炉3に装入した状態で、製鋼用電気炉3に蓋3aをし、電極4に電力を供給することによりアーク放電を起こさせ、アーク放電の高温(約5000℃)下で製鋼を行うことにより、鉄スクラップSa、Sbと共に炭素繊維を含有する廃材Cを容器1ごと溶融し、廃材Cに含有される炭素繊維を、鉄を構成する炭素材料としてリサイクルするようにする。
これにより、炭素繊維を含有する廃材Cが、製鋼の際に製鋼用電気炉3内の溶融金属の表面に浮き上がることを防止して、廃材Cに含有される炭素繊維の溶融金属内への溶け込みを促進し、スラグに混入して排出されたり、製鋼用電気炉3の炉壁に付着することを防止することができる。
この場合、廃材Cに含有される炭素繊維は、鉄を構成する炭素材料としてリサイクルされるほか、その一部は、燃焼して熱源となったり、溶融金属(酸化鉄)を還元する還元材となる。
【0015】
このようにして製鋼を行った結果を、炭素繊維を含有する廃材Cを添加せずに製鋼を行った比較例とともに表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
ここで、製鋼条件は以下のとおりである。
・廃材に含有される炭素繊維重量:製鋼重量の0.1%を目処に添加
【0018】
表1から明らかなように、炭素繊維を含有する廃材Cを添加せずに製鋼を行った場合と比較して、炭素繊維を含有する廃材Cを添加して製鋼を行うことによって、同等の鉄を得る(製鋼を行う)ために必要となる、鉄を構成する炭素材料として添加する炭素重量及び溶融金属の還元材として添加する炭素重量を低減することができることを確認した。
【0019】
以上、本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の炭素繊維を含有する廃材の利用方法は、炭素繊維を含有する廃材を、炭素材料として有効利用できるという特性を有していることから、再利用に適さず、また、焼却処理を行うためには多くのエネルギを必要とするため、各種産業分野においてゼロ・エミッションの実現の障害となっていた炭素繊維を含有する廃材をリサイクルするために好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
C 炭素繊維を含有する廃材
Sa 鉄スクラップ
Sb 鉄スクラップ
1 容器(鉄製容器(ドラム缶))
2 スクラップチャージングバスケット
3 製鋼用電気炉
4 電極
図1