特許第5917471号(P5917471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917471
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   B23Q3/06 303F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-212039(P2013-212039)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-74054(P2015-74054A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 広
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−037829(JP,A)
【文献】 特開2009−279698(JP,A)
【文献】 実開昭63−038989(JP,U)
【文献】 実開昭59−024288(JP,U)
【文献】 特開平9−011175(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3005937(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/011209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B25J 15/00 − 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カム溝をそれぞれ有する一対の第1クランプレバーと、
第2カム溝をそれぞれ有する一対の第2クランプレバーと、
直線往復機構に連結されるとともに前記直線往復機構の作動によって直線的に移動するベースと、
前記ベースの両端部にそれぞれ支持されるシャフトと、を備え、
前記ベースと前記一対の第1クランプレバー及び前記一対の第2クランプレバーとは、各シャフトが各第1カム溝及び各第2カム溝にそれぞれ挿通されることにより連係されており、各シャフトは、前記ベースの移動に伴って、各第1カム溝及び各第2カム溝の第1端部と第2端部との間で各第1カム溝及び各第2カム溝に沿って移動するとともに、
各シャフトが各第1カム溝及び各第2カム溝における前記第1端部側に位置するときに前記一対の第1クランプレバーを用いたワークのクランプが行われるとともに、各シャフトが各第1カム溝及び各第2カム溝における前記第2端部側に位置するときに前記一対の第2クランプレバーを用いたワークのクランプが行われるように各第1カム溝及び各第2カム溝の形状を設定したことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
各シャフトが、各第1カム溝及び各第2カム溝における前記第1端部と前記第2端部との間の中間部に位置するときに前記一対の第1クランプレバー及び前記一対の第2クランプレバーがそれぞれアンクランプ位置に位置していることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記一対の第1クランプレバーの間、及び前記一対の第2クランプレバーの間には、前記ベースと当接して各シャフトを各第1カム溝及び各第2カム溝の前記中間部に位置させるストッパ機構が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クランプ装置として、例えば特許文献1のものが開示されている。特許文献1のクランプ装置は、カム溝をそれぞれ有する一対のクランプレバーと、エアシリンダによって上下方向へ直線的に移動可能に支持されたベースとを備えている。ベースの両端部にはシャフトがそれぞれ支持されている。各カム溝には各シャフトが挿通されている。そして、エアシリンダの作動によってベースが移動すると、各シャフトが各カム溝に沿ってカム溝内を移動し、この各シャフトの各カム溝に沿った移動に伴って、一対のクランプレバーが互いに接離する方向へ揺動する。
【0003】
一対のクランプレバーが、一対のクランプレバーの先端部が互いに接近する方向へ揺動すると、一対のクランプレバーの先端部がそれぞれワークに接触し、一対のクランプレバーを用いたワークのクランプが行われる。また、一対のクランプレバーが、一対のクランプレバーの先端部が互いに離間する方向へ揺動すると、一対のクランプレバーの先端部がそれぞれワークから離間し、一対のクランプレバーを用いたワークのクランプ状態が解除されたアンクランプが行われる。
【0004】
ところで、ワークをクランプするクランプ力は、カム溝の形状を適宜変更することで調整可能である。そして、特許文献1のクランプ装置では、クランプレバーを、所望のクランプ力が出力可能なカム溝を有するクランプレバーに適宜交換することにより、クランプレバーを交換する前とは異なるクランプ力を得ることが可能となる。また、ワークの形状は様々である。そこで、クランプレバーの先端部が、ワークをクランプ可能な形状であるクランプレバーに適宜変更することにより、形状の異なるワークをそれぞれクランプすることが可能となる。このように、特許文献1のクランプ装置によれば、クランプレバーを適宜変更することにより、クランプレバーを交換する前とは異なる種類のクランプ態様を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4950123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、異なる種類のクランプ態様を得るために、クランプレバーを交換する作業は煩雑である。また、異なる種類のクランプ態様を得るために、異なる種類のクランプレバーを備えたクランプ装置を別途用意しておくことが考えられるが、クランプ装置の設置スペースの関係上、異なる種類のクランプレバーを備えたクランプ装置を別途用意しておくことが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、クランプレバーを交換する作業を行うことなく、異なる種類のクランプ態様を1台の装置で達成することができるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するクランプ装置は、第1カム溝をそれぞれ有する一対の第1クランプレバーと、第2カム溝をそれぞれ有する一対の第2クランプレバーと、直線往復機構に連結されるとともに前記直線往復機構の作動によって直線的に移動するベースと、前記ベースの両端部にそれぞれ支持されるシャフトと、を備え、前記ベースと前記一対の第1クランプレバー及び前記一対の第2クランプレバーとは、各シャフトが各第1カム溝及び各第2カム溝にそれぞれ挿通されることにより連係されており、各シャフトは、前記ベースの移動に伴って、各第1カム溝及び各第2カム溝の第1端部と第2端部との間で各第1カム溝及び各第2カム溝に沿って移動するとともに、各シャフトが各第1カム溝及び各第2カム溝における前記第1端部側に位置するときに前記一対の第1クランプレバーを用いたワークのクランプが行われるとともに、各シャフトが各第1カム溝及び各第2カム溝における前記第2端部側に位置するときに前記一対の第2クランプレバーを用いたワークのクランプが行われるように各第1カム溝及び各第2カム溝の形状を設定した。
【0009】
上記クランプ装置において、各シャフトが、各第1カム溝及び各第2カム溝における前記第1端部と前記第2端部との間の中間部に位置するときに前記一対の第1クランプレバー及び前記一対の第2クランプレバーがそれぞれアンクランプ位置に位置していることが好ましい。
【0010】
上記クランプ装置において、前記一対の第1クランプレバーの間、及び前記一対の第2クランプレバーの間には、前記ベースと当接して各シャフトを各第1カム溝及び各第2カム溝の前記中間部に位置させるストッパ機構が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、クランプレバーを交換する作業を行うことなく、異なる種類のクランプ態様を1台の装置で達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態におけるクランプ装置を示す斜視図。
図2】(a)は各シャフトが各第1カム溝の中間部に位置している状態を示す正面図、(b)は各シャフトが各第2カム溝の中間部に位置している状態を示す正面図。
図3】(a)は各シャフトが各第1カム溝の第1端部側に位置している状態を示す正面図、(b)は各シャフトが各第2カム溝の第1端部側に位置している状態を示す正面図。
図4】(a)は各シャフトが各第1カム溝の第2端部側に位置している状態を示す正面図、(b)は各シャフトが各第2カム溝の第2端部側に位置している状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、クランプ装置を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、クランプ装置10は、直線往復機構としてのエアシリンダ11を備えている。エアシリンダ11において、エアシリンダ11の軸方向(クランプ装置10の上下方向)の一端部(上端部)には、エアシリンダ11の軸方向に対して直交する方向(クランプ装置10の左右方向)に沿って延びる平板状の支持部12が取り付けられている。支持部12は平面視長方形状である。
【0014】
支持部12において、支持部12の短手方向(クランプ装置10の前後方向)に位置する両側部には、エアシリンダ11の軸方向に沿って延びる一対のブラケット13が連結されている。各ブラケット13は平板状であるとともに正面視T字状である。具体的には、支持部12からエアシリンダ11の軸方向に沿って上方へ延びる第1延設部13aと、第1延設部13aの先端に連続するとともに第1延設部13aの延設方向に対して直交する方向に延びる第2延設部13bとから形成されている。
【0015】
図2(a)及び(b)に示すように、エアシリンダ11には、エアシリンダ11への圧縮空気の出し入れによって往復運動可能なピストンロッド11aが設けられている。ピストンロッド11aの先端部には矩形状のベース20が連結されている。ベース20は、ピストンロッド11aの往復運動によって、一対のブラケット13の第1延設部13aの間で第1延設部13aの延設方向に沿って直線的に移動する。ベース20は、一対のブラケット13の第2延設部13bの延設方向に沿って長手方向が延びる平板状に形成されている。そして、ベース20の長手方向の両端部は、一対のブラケット13の第1延設部13aよりも第2延設部13bの延設方向外側に位置している。ベース20の両端部には、シャフト30がそれぞれ支持されている。
【0016】
図1に示すように、一対のブラケット13の間には、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22が並設されている。一対の第1クランプレバー21は、一対のブラケット13の一方側に配置されるとともに、一対の第2クランプレバー22は、一対の第1クランプレバー21よりも一対のブラケット13の他方側に配置されている。
【0017】
図2(a)及び(b)に示すように、一対の第1クランプレバー21の一方、及び一対の第2クランプレバー22の一方は、一対のブラケット13における第2延設部13bの延設方向一端側に架け渡されるヒンジピン14に支持されている。そして、一対の第1クランプレバー21の一方、及び一対の第2クランプレバー22の一方は、ヒンジピン14を揺動中心として揺動可能になっている。同様に、一対の第1クランプレバー21の他方、及び一対の第2クランプレバー22の他方は、一対のブラケット13における第2延設部13bの延設方向他端側に架け渡されるヒンジピン15に支持されている。そして、一対の第1クランプレバー21の他方、及び一対の第2クランプレバー22の他方は、ヒンジピン15を揺動中心として揺動可能になっている。
【0018】
図2(a)に示すように、各第1クランプレバー21におけるエアシリンダ11とは反対側の先端部には、ワークW1をクランプするために用いられる第1クランプ部21aがそれぞれ着脱可能になっている。また、図2(b)に示すように、各第2クランプレバー22におけるエアシリンダ11とは反対側の先端部には、ワークW2をクランプするために用いられる第2クランプ部22aがそれぞれ着脱可能になっている。
【0019】
図2(a)及び(b)に示すように、各ワークW1,W2はそれぞれ形状が異なっている。具体的には、各ワークW1,W2はU字形状であるとともに、ワークW1の開口幅はワークW2の開口幅よりも長くなっている。また、本実施形態では、各第1クランプレバー21の先端部の形状と、各第2クランプレバー22の先端部の形状とは同じ形状になっている。そして、各第1クランプ部21a及び各第2クランプ部22aは、各ワークW1,W2をそれぞれクランプ可能とするためにそれぞれ形状が異なっている。具体的には、各第2クランプ部22aにおける一対の第2クランプレバー22の揺動方向の厚みは、各第1クランプ部21aにおける一対の第1クランプレバー21の揺動方向の厚みよりも厚くなっている。
【0020】
図2(a)に示すように、各第1クランプレバー21におけるエアシリンダ11側の基端部には、各第1クランプレバー21を厚さ方向(クランプ装置10の前後方向)に貫通する第1カム溝41が形成されている。各第1カム溝41は、各第1クランプレバー21の基端側から先端側へ延びる第1傾斜溝41aと、第1傾斜溝41aに連続して各第1カム溝41同士が互いに離間する方向へ屈曲しながら延びる第1屈曲溝41bと、第1屈曲溝41bに連続して各第1クランプレバー21の先端側へ直線状に延びる第1直線溝41cとから形成されている。第1傾斜溝41aは、第1直線溝41cの延設方向に直線状に延びる第1仮想線L1に対して第1角度θ1分だけ傾斜する方向に延びている。
【0021】
ここで、第1カム溝41における第1クランプレバー21の基端側を第1カム溝41の第1端部411とし、第1カム溝41における第1クランプレバー21の先端側を第1カム溝41の第2端部412とする。さらに、第1カム溝41における第1端部411と第2端部412との中間を中間部413とする。中間部413は、第1屈曲溝41bにおける第1直線溝41c側の端部に相当する。
【0022】
図2(b)に示すように、各第2クランプレバー22におけるエアシリンダ11側の基端部には、各第2クランプレバー22を厚さ方向(クランプ装置10の前後方向)に貫通する第2カム溝42が形成されている。各第2カム溝42は、各第2クランプレバー22の基端側から先端側へ直線状に延びる第2直線溝42cと、第2直線溝42cに連続して各第2カム溝42同士が互いに接近する方向へ屈曲しながら延びる第2屈曲溝42bと、第2屈曲溝42bに連続して各第2クランプレバー22の先端側へ延びる第2傾斜溝42aとから形成されている。第2傾斜溝42aは、第2直線溝42cの延設方向に直線状に延びる第2仮想線L2に対して第2角度θ2分だけ傾斜する方向に延びている。
【0023】
ここで、第2カム溝42における第2クランプレバー22の基端側を第2カム溝42の第1端部421とし、第2カム溝42における第2クランプレバー22の先端側を第2カム溝42の第2端部422とする。さらに、第2カム溝42における第1端部421と第2端部422との中間を中間部423とする。中間部423は、第2屈曲溝42bにおける第2直線溝42c側の端部に相当する。
【0024】
第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さくなっている。本実施形態では、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22を用いて、ワークW1,W2をクランプするクランプ力がそれぞれ同じになるように、各第1カム溝41及び各第2カム溝42の形状が設定されている。
【0025】
図2(a)及び(b)に示すように、ベース20と一対の第1クランプレバー21及び第2クランプレバー22とは、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42にそれぞれ挿通されることにより連係されている。
【0026】
支持部12におけるエアシリンダ11とは反対側の端面には、2本の支柱12aが立設されている。そして、各支柱12aの先端にはストッパ機構としてのストッパ用エアシリンダ50が支持されている。ストッパ用エアシリンダ50は、一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間に配置されている。
【0027】
ストッパ用エアシリンダ50には、ストッパ用エアシリンダ50への圧縮空気の出し入れによって往復運動可能なピストンロッド50aが設けられている。ストッパ用エアシリンダ50のピストンロッド50aのストローク長は、エアシリンダ11のピストンロッド11aのストローク長よりも短く設定されている。ピストンロッド50aの先端はベース20に当接可能になっている。
【0028】
ストッパ用エアシリンダ50に圧縮空気が供給されて、ピストンロッド50aがストローク長の最大まで突出された状態で、エアシリンダ11に圧縮空気が供給されてピストンロッド11aが突出し、ベース20がピストンロッド50aの先端に当接すると、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置する。
【0029】
そして、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置するときには、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22がそれぞれアンクランプ位置に位置している。ここで、アンクランプ位置とは、一対の第1クランプレバー21の第1クランプ部21a、及び一対の第2クランプレバー22の第2クランプ部22aがクランプ位置から離れ、各ワークW1,W2から離間した位置である。このとき、第1傾斜溝41a及び第2傾斜溝42aは、ベース20の移動方向に対して傾斜する方向に延びるとともに、第1直線溝41c及び第2直線溝42cは、ベース20の移動方向に対して略平行に延びるようになっている。
【0030】
各シャフト30は、ベース20の移動に伴って、各第1カム溝41及び各第2カム溝42の第1端部411,421と第2端部412,422との間で各第1カム溝41及び各第2カム溝42に沿って移動する。
【0031】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図2(a)及び(b)に示すように、クランプ装置10によって、ワークW1をクランプする場合、まず、ストッパ用エアシリンダ50に圧縮空気を供給してピストンロッド50aを突出させるとともに、エアシリンダ11に圧縮空気を供給してピストンロッド11aを突出させ、ベース20をピストンロッド50aの先端に当接させる。これにより、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置し、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22がそれぞれアンクランプ位置に位置する。そして、一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間にワークW1を配置する。続いて、エアシリンダ11の圧縮空気が排出されると、ピストンロッド11aが没入する方向へ移動するとともに、ベース20がエアシリンダ11側に移動する。
【0032】
図3(a)に示すように、ベース20のエアシリンダ11側への移動に伴い、各シャフト30が各第1カム溝41の第1屈曲溝41b及び第1傾斜溝41aに沿って移動する。このとき、第1屈曲溝41b及び第1傾斜溝41aは、ベース20の移動方向に対して傾斜しているため、各シャフト30は、第1屈曲溝41b及び第1傾斜溝41aの内面に押し付けられながら、各第1カム溝41の第1端部411に向かって移動する。この各シャフト30における各第1カム溝41の第1屈曲溝41b及び第1傾斜溝41aの内面への押し付けにより、各第1クランプレバー21の基端側が、ヒンジピン14,15を揺動中心として互いに離間する方向へ揺動するとともに、各第1クランプレバー21の先端側が、ヒンジピン14,15を揺動中心として互いに接近する方向へ揺動する。これにより、各第1クランプ部21aがワークW1に接触し、一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1のクランプが行われる。
【0033】
図3(b)に示すように、ベース20のエアシリンダ11側への移動に伴い、各シャフト30は各第2カム溝42の第1端部421に向かって移動する。このとき、第2直線溝42cは、ベース20の移動方向に対して略平行に延びているため、各シャフト30から第2直線溝42cの内面に作用する押し付け力が作用され難く、一対の第2クランプレバー22がアンクランプ位置に位置された状態が維持される。
【0034】
図2(a)及び(b)に示すように、クランプ装置10によって、ワークW2をクランプする場合、まず、ストッパ用エアシリンダ50に圧縮空気を供給してピストンロッド50aを突出させるとともに、エアシリンダ11に圧縮空気を供給してピストンロッド11aを突出させ、ベース20をピストンロッド50aの先端に当接させる。これにより、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置し、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22がそれぞれアンクランプ位置に位置する。そして、一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間にワークW2を配置する。
【0035】
続いて、ストッパ用エアシリンダ50の圧縮空気が排出されると、ピストンロッド50aが没入する方向へ移動すると同時に、ピストンロッド11aが突出する方向へ移動し、ベース20がエアシリンダ11から離れる側に移動する。
【0036】
図4(a)に示すように、ベース20のエアシリンダ11から離れる側への移動に伴い、各シャフト30は各第1カム溝41の第2端部412に向かって移動する。このとき、第1直線溝41cは、ベース20の移動方向に対して略平行に延びているため、各シャフト30から第1直線溝41cの内面に作用する押し付け力が作用され難く、一対の第1クランプレバー21がアンクランプ位置に位置された状態が維持される。
【0037】
図4(b)に示すように、ベース20のエアシリンダ11とは離れる側への移動に伴い、各シャフト30が各第2カム溝42の第2屈曲溝42b及び第2傾斜溝42aに沿って移動する。このとき、第2屈曲溝42b及び第2傾斜溝42aは、ベース20の移動方向に対して傾斜しているため、各シャフト30は、第2屈曲溝42b及び第2傾斜溝42aの内面に押し付けられながら、各第2カム溝42の第2端部422に向かって移動する。この各シャフト30における各第2カム溝42の第2屈曲溝42b及び第2傾斜溝42aの内面への押し付けにより、各第2クランプレバー22の基端側が、ヒンジピン14,15を揺動中心として互いに離間する方向へ揺動するとともに、各第2クランプレバー22の先端側が、ヒンジピン14,15を揺動中心として互いに接近する方向へ揺動する。これにより、各第2クランプ部22aがワークW2に接触し、一対の第2クランプレバー22を用いたワークW2のクランプが行われる。
【0038】
上記構成のクランプ装置10では、各第1傾斜溝41aとヒンジピン14,15との間の距離は、各第2傾斜溝42aとヒンジピン14,15との間の距離よりも長くなっている。そこで、第2角度θ2が第1角度θ1よりも小さくなるように各第1カム溝41及び各第2カム溝42の形状が設定されている。そうすることで、各シャフト30における第1傾斜溝41aの内面への押し付けによって発生する第1クランプレバー21の先端側を揺動させようとする力と、各シャフト30における第2傾斜溝42aの内面の押し付けによって発生する第2クランプレバー22の先端側を揺動させようとする力とが同じになるように調整されている。すなわち、各ワークW1,W2に対する一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22を用いたクランプ力が同じになるように調整されている。
【0039】
このように、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42における第1端部411,421側に位置するときに一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1のクランプが行われるように各第1カム溝41及び各第2カム溝42の形状が設定されている。さらに、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42における第2端部412,422側に位置するときに一対の第2クランプレバー22を用いたワークW2のクランプが行われるように各第1カム溝41及び各第2カム溝42の形状が設定されている。
【0040】
そして、各シャフト30を、ベース20の移動に伴って、各第1カム溝41及び各第2カム溝42の第1端部411,421と第2端部412,422との間で各第1カム溝41及び各第2カム溝42に沿って移動させる。そうすることで、一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1のクランプ動作と、一対の第2クランプレバー22を用いたワークW2のクランプ動作とが1台のクランプ装置10によって行われる。
【0041】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42における第1端部411,421側に位置するときに一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1のクランプが行われる。さらに、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42における第2端部412,422側に位置するときに一対の第2クランプレバー22を用いたワークW2のクランプが行われる。このように各第1カム溝41及び各第2カム溝42の形状を設定することで、ベース20の移動に伴って各シャフト30を各第1カム溝41及び各第2カム溝42に沿って移動させるだけで、一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1クランプ動作と、一対の第2クランプレバー22を用いたワークW2のクランプ動作とを行うことができる。よって、クランプレバーを交換する作業を行うことなく、異なる種類のクランプ態様を1台の装置で達成することができる。
【0042】
(2)各シャフト30が、各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置するときに一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22がそれぞれアンクランプ位置に位置している。これによれば、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22をそれぞれアンクランプ位置に位置させることで、一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間にワークW1,W2を配置する作業を容易に行うことができる。また、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22をそれぞれアンクランプ位置に位置させることで、一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間からワークW1,W2を取り出す作業を容易に行うことができる。
【0043】
(3)一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間に、ベース20と当接して各シャフト30を各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置させるストッパ用エアシリンダ50を配置した。これによれば、一対の第1クランプレバー21の間、及び一対の第2クランプレバー22の間に存在するスペースを有効利用することができ、クランプ装置10を小型化することができる。
【0044】
(4)上記構成のクランプ装置10によれば、形状が異なる各ワークW1,W2のクランプを1台の装置で達成することができるため、形状が異なる各ワークW1,W2のクランプ動作を行うために、クランプ装置10を別途用意する必要がなく、クランプ装置10の設置スペースを最小限に抑えることができる。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 実施形態において、一対の第1クランプレバー21及び一対の第2クランプレバー22におけるワークW1,W2をクランプするクランプ力を異ならせるために、各第1カム溝41及び各第2カム溝42の形状を適宜変更してもよい。これによれば、一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1をクランプするクランプ力と、一対の第2クランプレバー22を用いたワークW2をクランプするクランプ力とがそれぞれ異なる。すなわち、クランプ力を変更するために、クランプレバーを交換する作業を行う必要が無い。よって、異なる種類のクランプ態様を1台の装置で達成することができる。
【0046】
・ 実施形態において、各シャフト30を各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置させるストッパ用エアシリンダが、エアシリンダ11よりもエアシリンダ11の軸方向他端側に配置されていてもよい。そして、ストッパ用エアシリンダのピストンロッドがストローク長の最大まで突出されると、ストッパ用エアシリンダのピストンロッドがエアシリンダ11のピストンロッド11aを押すとともにベース20が移動して、各シャフト30が各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置するようにしてもよい。
【0047】
・ 実施形態において、第1クランプ部21a及び第2クランプ部22aを削除してもよく、一対の第1クランプレバー21の先端部及び一対の第2クランプレバー22の先端部によって各ワークW1,W2を直接クランプするようにしてもよい。
【0048】
・ 実施形態において、第1クランプ部21a及び第2クランプ部22aの形状が同じ形状であってもよい。この場合、例えば、ワークW1のクランプ位置を適宜変更する目的として、一対の第1クランプレバー21を用いたワークW1のクランプと、一対の第2クランプレバー22を用いたワークW1のクランプとを行ってもよい。このようにして、クランプレバーを交換する作業を行うことなく、異なる種類のクランプ態様を1台の装置で達成するようにしてもよい。
【0049】
・ 実施形態において、直線往復機構として電動シリンダを用いてもよい。この場合、通電制御によってピストンロッド11aの突出量を調整することができるため、各シャフト30を各第1カム溝41及び各第2カム溝42の中間部413,423に位置させるストッパ機構を省略してもよい。
【0050】
・ 実施形態において、直線往復機構として、例えば、液体圧でピストンロッド11aを往復運動させる流体圧シリンダを用いてもよい。
・ 実施形態において、ストッパ機構として、例えば、液体圧でピストンロッド11aを往復運動させる流体圧シリンダを用いてもよい。
【0051】
・ 実施形態において、各ワークW1,W2の形状は特に限定されるものではなく、各第1クランプ部21a及び各第2クランプ部22aの形状は、各ワークW1,W2の形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0052】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記第1カム溝は、前記第1クランプレバーの基端側から先端側へ延びる第1傾斜溝と、前記第1傾斜溝に連続して各第1カム溝同士が互いに離間する方向へ屈曲しながら延びる第1屈曲溝と、前記第1屈曲溝に連続して前記第1クランプレバーの先端側へ直線状に延びる第1直線溝とから形成され、前記第1傾斜溝は前記第1直線溝に対して傾斜する方向に延びており、前記第2カム溝は、前記第2クランプレバーの基端側から先端側へ直線状に延びる第2直線溝と、前記第2直線溝に連続して各第2カム溝同士が互いに接近する方向へ屈曲しながら延びる第2屈曲溝と、前記第2屈曲溝に連続して前記第2クランプレバーの先端側へ延びる第2傾斜溝とから形成され、前記第2傾斜溝は前記第2直線溝に対して傾斜する方向に延びている。
【0053】
(ロ)前記直線往復機構はエアシリンダである。
【符号の説明】
【0054】
W1,W2…ワーク、10…クランプ装置、11…直線往復機構としてのエアシリンダ、20…ベース、21…第1クランプレバー、22…第2クランプレバー、30…シャフト、41…第1カム溝、42…第2カム溝、50…ストッパ機構としてのストッパ用エアシリンダ、411,421…第1端部、412,422…第2端部、413,423…中間部。
図1
図2
図3
図4