(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路と、を含む受光部を備えている光ビーコンのための検査装置であって、
前記受信回路を複数に区画した部分でありかつ一つ一つの当該部分それぞれが少なくとも一つの前記増幅回路を含む部分回路を検査単位として、この検査単位となる前記各部分回路へ入力させる入力信号を生成する信号生成部と、
前記入力信号に対して前記部分回路それぞれから出力される出力信号を取得し、これら入力信号と出力信号とに基づいて当該部分回路毎の増幅率を確認するための処理を行う第1処理部と、
検査用の光信号を前記受光素子に入力して前記受信回路から出力される信号に基づいて前記受光部の動作を確認するための処理を行う第2処理部と、
を備えている光ビーコンの検査装置。
前記部分回路の前段側に設けられた下記に定義する回路素子と、当該部分回路との間に、前記信号生成部が生成した入力信号を入力させる請求項1又は2に記載の光ビーコンの検査装置。
回路素子:前記部分回路への入力信号が、当該部分回路の前段側に接続されている他の前記部分回路へ入力されるのを抑える素子
アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路と、を含む受光部を備えている光ビーコンのための検査方法であって、
前記受信回路を複数に区画した部分でありかつ一つ一つの当該部分それぞれが少なくとも一つの前記増幅回路を含む部分回路を検査単位として、この検査単位となる前記各部分回路の入力信号と出力信号とを取得し、これら入力信号と出力信号に基づいて当該部分回路毎の増幅率を確認する部分検査ステップと、
検査用の光信号を前記受光素子に入力して前記受信回路から出力された信号に基づいて前記受光部の動作を確認する全体検査ステップと、
を含む光ビーコンの検査方法。
アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路と、を含む受光部を備えているビーコンヘッドを有する光ビーコンの製造方法であって、
前記受光部の検査を行う第1の検査工程と、前記受光部を備えている前記ビーコンヘッドを組み立てる組み立て工程と、組み立て後の前記ビーコンヘッドの検査を行う第2の検査工程と、を含み、
前記第1の検査工程では、請求項6に記載の検査方法により前記受光部の検査が行われる光ビーコンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔本発明の実施形態の説明〕
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に示す検査装置は、アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路と、を含む受光部を備えている光ビーコンのための検査装置であって、
前記受信回路を複数に区画した部分でありかつ一つ一つの当該部分それぞれが少なくとも一つの前記増幅回路を含む部分回路を検査単位として、この検査単位となる前記各部分回路へ入力させる入力信号を生成する信号生成部と、前記入力信号に対して前記部分回路それぞれから出力される出力信号を取得し、これら入力信号と出力信号とに基づいて当該部分回路毎の増幅率を確認するための処理を行う第1処理部と、検査用の光信号を前記受光素子に入力して前記受信回路から出力される信号に基づいて前記受光部の動作を確認するための処理を行う第2処理部と、を備えている。
【0018】
この検査装置によれば、増幅回路が多段接続された受信回路が、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして複数に区画され、区画された部分回路が検査単位となって、第1処理部によって部分回路毎の増幅率の確認を行うことが可能となる。このように、受信回路を複数の部分回路に分けて検査を行うことから、比較的大きな入力信号を用いて部分回路毎の増幅率の確認を行うことが可能となる。そして、第2処理部によって受光素子と受信回路とを含む受光部の動作が確認される。これら第1処理部と第2処理部との処理を総合することによって、受光部全体としての機能の検査が可能となる。
【0019】
(2)また、前記第1処理部は、前記出力信号が、前記入力信号を規定の増幅率によって増幅させた信号となっているか否かの判定処理を行い、前記第2処理部は、前記受信回路からの前記信号の出力の有無により前記受光部の正常又は異常の判定処理を行うのが好ましい。
この構成により、第1処理部によって部分回路毎の増幅率の確認が可能となる。そして、第2処理部では、増幅回路が多段に接続された受信回路の増幅率を確認するのではなく、受信回路からの信号の出力の有無により、この受光部の動作の確認を行う。このため、第1処理部と第2処理部との処理を総合することによって、受光部全体としての機能の検査が可能となる。
【0020】
(3)また、前記検査装置は、前記部分回路の前段側に設けられた下記に定義する回路素子と、当該部分回路との間に、前記信号生成部が生成した入力信号を入力させる構成とするのが好ましい。
回路素子:前記部分回路への入力信号が、当該部分回路の前段側に接続されている他の前記部分回路へ入力されるのを抑える素子
検査対象となる部分回路の前段側に比較的大きな入力信号を入力すると、この入力信号が、検査対象としている部分回路の前段側に接続されている他の部分回路へも入力されて、この他の部分回路から信号が出力される場合に、この信号も検査対象としている部分回路に入力され、意図せぬ入力信号となるおそれがある。なお、このような他の部分回路からの信号の出力は、当該他の部分回路がフィードバック回路を有している場合に生じる。そこで、検査対象となる部分回路の前段側に前記回路素子が設けられており、この回路素子と、検査対象となる部分回路との間に、前記信号生成部が生成した入力信号を入力することによって、意図した入力信号に基づく検査が可能となる。
【0021】
ここで、近年、低速フレームと高速フレームとの双方のアップリンク光の受信を可能とする光ビーコンが提案されている。これらアップリンク光を受信可能な通信エリアに関して、低速フレームを受信可能なエリアの最上流端である第1上流端よりも、高速フレームを受信可能なエリアの最上流端である第2上流端を、道路の走行方向上流側とする位置設定、又は、第1上流端を第2上流端と実質的に同じにする位置設定が行われるのが好ましい場合がある。そこで、低速受信回路と高速受信回路との受信性能の差が、そのまま低速フレームと高速フレームの受信可能な範囲の広狭となって表れることから、前記位置設定のために、低速フレームよりも高速フレームの方が電気信号の利得が大きくなるように、低速帯域で動作する低速受信回路、及び高速帯域で動作する高速受信回路を構成すれば良い(これら受信回路それぞれに含まれる各回路素子の定数を定めれば良い)。
【0022】
(4)そこで、前記受光部は、前記受信回路として、低速帯域で動作する低速受信回路、及び高速帯域で動作する高速受信回路を有しており、前記高速受信回路に含まれる前記各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値を乗算した値は、前記低速受信回路に含まれる前記各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値を乗算した値以上となっているのが好ましい。
【0023】
(5)また、前記検査装置は、複数の前記部分回路から選択した部分回路へ前記入力信号を入力させる切替部を、更に備えているのが好ましい。
この場合、部分回路に応じて信号生成部によって生成された入力信号を、その部分回路へ入力させることが可能となる。
【0024】
(6)また、本発明の実施形態に示す検査方法は、アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路と、を含む受光部を備えている光ビーコンのための検査方法であって、
前記受信回路を複数に区画した部分でありかつ一つ一つの当該部分それぞれが少なくとも一つの前記増幅回路を含む部分回路を検査単位として、この検査単位となる前記各部分回路の入力信号と出力信号とを取得し、これら入力信号と出力信号に基づいて当該部分回路毎の増幅率を確認する部分検査ステップと、検査用の光信号を前記受光素子に入力して前記受信回路から出力された信号に基づいて前記受光部の動作を確認する全体検査ステップと、を含む。
この検査方法によれば、増幅回路が多段接続された受信回路は、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして複数に区画され、区画された部分回路が検査単位となって、部分検査ステップで、部分回路毎の増幅率の確認を行うことが可能となる。このように、受信回路を複数の部分回路に分けて検査を行うことから、比較的大きな入力信号を用いて部分回路毎の増幅率の確認を行うことが可能となる。そして、全体検査ステップでは、受光素子と受信回路とを含む受光部の動作が確認される。これら部分検査ステップと全体検査ステップとを総合することによって、受光部全体としての機能の検査が可能となる。
【0025】
(7)また、本発明の実施形態に示す製造方法は、アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路と、を含む受光部を備えているビーコンヘッドを有する光ビーコンの製造方法であって、前記受光部の検査を行う第1の検査工程と、前記受光部を備えている前記ビーコンヘッドを組み立てる組み立て工程と、組み立て後の前記ビーコンヘッドの検査を行う第2の検査工程と、を含み、前記検査工程では、前記(6)の検査方法により前記受光部の検査が行われる。
この製造方法によれば、検査工程において、受光部全体としての機能の検査が行われることで、信頼性の高い受光部を備えているビーコンヘッドを有した光ビーコンを得ることが可能となる。
【0026】
〔本発明の実施形態の詳細〕
本発明の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
<1. 検査装置の全体構成>
図1は、検査装置40の一例を示すブロック図である。この検査装置40は、後述する光ビーコンの受光部11(
図2参照)を検査するための装置であり、解析装置41、ファンクションジェネレータ44、及び近赤外線を発光する発光源48を備えている。本実施形態の検査装置40は、更に、プロービング治具45、オシロスコープ46、及び入出力ユニット47を備えている。
【0027】
解析装置41は、コンピュータ装置からなり、CPU及び内部メモリ等を有する演算処理装置42の他に、ハードディスク等からなる記憶装置43を備えており、この記憶装置43にコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムが演算処理装置42によって実行されることで、解析装置41(前記コンピュータ装置)は、前記受光部11の検査処理を行う第1処理部42a、第2処理部42b、及び第3処理部42cとしての機能を有することができる。つまり、第1〜第3の処理部42a〜42cは、前記コンピュータプログラムが実行されることで動作する。前記コンピュータプログラムは、磁気ディスク、光学ディスク又は半導体メモリ等からなる記憶媒体に記憶させることができる。処理部42a〜42cの機能については、後に説明する。
【0028】
ファンクションジェネレータ44は、前記受光部11を検査するための電気信号を生成する信号生成部としての機能を有しており、この受光部11における検査単位となる「部分回路」へ入力させる入力信号を生成する。前記「部分回路」については、後に説明するが、受光部11(
図5参照)は受光素子32,52及び受信回路31,51,61を有しており、受信回路31,51,61それぞれは検査のために複数に区画されており、区画された一つの単位が「部分回路」となる。なお、受光素子32,52、及び複数の部分回路を含む受信回路31,51,61は、回路基板に実装されており、
図1では、この回路基板を「検査対象基板」と記載している。
【0029】
ファンクションジェネレータ44は、各部分回路への入力信号として、任意の周波数と波形を有する交流信号(高周波信号)を生成する電気機器である。つまり、ファンクションジェネレータ44は、特性が異なる入力信号を生成可能であり、部分回路に応じて入力信号を生成することができる。ファンクションジェネレータ44は正弦波及び矩形波を生成可能であり、さらに、各波の周波数と電圧値を変更自在である。検査単位となる部分回路に応じて、例えば、周波数が64kHzであって電圧値が50mVp−pの正弦波が生成されたり、周波数が256kHzであって電圧値が50mVp−pの正弦波が生成されたりする。ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号は、コンデンサ(図示せず)及びプロービング治具45を介して、後述するテストパッドへ入力される。
【0030】
入出力ユニット47は、コンピュータ装置からなる解析装置41にデジタル信号の入出力機能を拡張するためのものである。プロービング治具45を機能させるための制御信号が、演算処理装置42から入出力ユニット47を通じてプロービング治具45へ送信される。
【0031】
プロービング治具45は、検査対象基板の内の複数の部分回路の中から選択された部分回路に対して、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号を入力させる切替部としての機能を有している。
後に説明するが、部分回路を検査単位とするために、検査対象基板上の電気回路中に複数のテストパッドが設けられている(例えば、
図6の符号P1〜P6)。検査対象基板上には、更に、これらテストパッドそれぞれと電気的に繋がっている回路パターンが形成されており、これら回路パターンはプロービング治具45が有するリレーボード45aと電気的に繋がっている。そして、このリレーボード45aのスイッチング動作によって一つのテストパッドが選択され、このテストパッドに対してファンクションジェネレータ44によって発生させた信号を、前記回路パターンを通じて入力させることができる。また、リレーボード45aのスイッチング動作によって別の一つのテストパッドが選択され、このテストパッドからの出力信号を、前記回路パターンを通じて出力させ、この出力信号をオシロスコープ46及び解析装置41へ出力させることができる。
このように、プロービング治具45は、複数の部分回路から選択した部分回路へ入力信号を入力させることができ、その部分回路からの出力信号を取り出すことができる。
【0032】
ファンクションジェネレータ44が生成した検査用の信号を、一つの部分回路に入力すると、この入力に応じた出力がオシロスコープ46の画面上に表示される。また、この部分回路から出力された信号は入出力ユニット47を通じて解析装置41に入力され、解析装置41によって検査対象基板(投光部8)の検査が行われる。
この検査装置40による受光部11の検査の詳細については後に説明する。
【0033】
<2. 光ビーコンについて>
<2.1 光ビーコンの全体構成>
前記検査装置40による検査の対象となる光ビーコンについて説明する。
図2は、検査装置40による検査の対象となる光ビーコン1の説明図であり、光ビーコン1を路上に設置した状態を示している。光ビーコン1は、道路Rを走行する車両Cに搭載された車載機20との間で、所定の通信領域で光信号による双方向通信を行う。この光ビーコン1は、道路Rの上方に配置され、車両Cに搭載された車載機20と通信を行うビーコンヘッド2と、このビーコンヘッド2を制御するビーコン制御機3とを備えている。なお、ビーコン制御機3は、支柱等に設置され、電話回線等の通信回線を介して図外の交通管制システム等の中央装置と接続されており、ビーコンヘッド2による通信等の制御を行う。
【0034】
本実施形態では、
図3に示すように、2種類の光ビーコン(1A,1B)が設置されており、また、車両に搭載される車載機20には2種類の車載機(20A,20B)が存在している。
一方の光ビーコン1A(これを新光ビーコンともいう。)は、低速の伝送速度(64kbps)だけでなく高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク受信に対応している。これに対して、他方の光ビーコン1B(これを旧光ビーコンともいう。)は、低速の伝送速度(64kbps)でのアップリンク受信のみを行う。すなわち、光ビーコン1Bは、高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク受信に非対応である。
そして、一方の車載機20A(これを新車載機ともいう。)は、低速の伝送速度(64kbps)だけでなく高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク送信に対応している。これに対して、他方の車載機20B(これを旧車載機ともいう。)は、低速の伝送速度(64kbps)でのアップリンク送信のみを行う。すなわち、車載機20Bは、高速の伝送速度(例えば256kbps)でのアップリンク送信に非対応である。
【0035】
したがって、車載機20が高速アップリンク送信に対応する新車載機20Aの場合は、上りフレームとして、低速フレームUL1と高速フレームUL2の双方を送信でき、車載機20が高速アップリンク送信に非対応の旧車載機20Bの場合には、上りフレームとして低速フレームUL1しか送信できない。
また、光ビーコン1が高速アップリンク受信に対応する新光ビーコン1Aの場合は、上りフレームとして、低速フレームUL1と高速フレームUL2の双方を受信でき、光ビーコン1が高速アップリンク受信に非対応の旧光ビーコン1Bの場合には、上りフレームとして低速フレームUL1しか受信できない。
【0036】
前記検査装置40による検査対象となる光ビーコンは、新光ビーコン1Aであり、以下において、特に説明しない限り、光ビーコンに関する説明は、新光ビーコン1Aに関する説明である。
図2において、ビーコンヘッド2は、電気信号を変換した光信号を送信可能な投光部10と、光信号を電気信号に変換可能な受光部11とを筐体の内部に有している。本実施形態の光ビーコン1は、全二重通信方式を採用している。すなわち、ビーコン制御機3は、投光部10に対するダウンリンク方向の送信制御と、受光部11に対するアップリンク方向の受信制御とを同時に行うことができる。これに対して、車載機20は、半二重通信方式を採用している。すなわち、車載機20の制御機は、アップリンク方向の送信制御と、ダウンリンク方向の受信制御とを同時に行わない。
【0037】
投光部10は、ビーコン制御機3から送出される下りフレームを所定の伝送速度のシリアルな送信信号に変換する送信回路と、出力された送信信号をダウンリンク方向の光信号に変換する発光ダイオード等よりなる発光素子とを有している。発光素子は、近赤外線よりなるダウンリンク光DO(ダウンリンク方向の光信号)をダウンリンク領域DAに送出する。
本実施形態の光ビーコン1Aでは、投光部10が送信する光信号の伝送速度は、1024kbpsであり、この伝送速度は、従来の光ビーコン1Bと同様である。
【0038】
受光部11は、フォトダイオード等よりなる受光素子と、この受光素子が出力する電気信号を増幅してデジタルの受信信号を生成する受信回路とを備えている。受光素子は、アップリンク領域UAにある車載機20からの近赤外線よりなるアップリンク光UO(アップリンク方向の光信号)を受光する。
本実施形態の光ビーコン1Aでは、受光部11は、高低2種類の伝送速度での光電気変換が可能なマルチレート対応であり、低い方の伝送速度は64kbpsであり、この伝送速度は、従来の光ビーコン1Bと同様である。高い方の伝送速度は、128kbps、192kbps、256kbps、384kbps、512kbps、1024kbpsなどの速度を採用し得るが、本実施形態では256kbpsであるとする。
【0039】
光ビーコン1の通信領域Aは、ダウンリンク領域(
図2において実線のハッチングを設けた領域)DAと、アップリンク領域(
図2において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
このうち、ダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド2が送出するダウンリンク方向の光信号を、車載機20が受信できる領域であり、ビーコンヘッド2の投受光位置d、地上1m高さの位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲である。
また、アップリンク領域UAは、車載機20が送出するアップリンク方向の光信号を、ビーコンヘッド8にて受信できる領域であり、上記投受光位置dと、地上1m高さの位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲である。
【0040】
<2.2 用語の定義>
ここで、本明細書で用いる用語の定義を行う(
図2と
図3参照)。
下りフレームDL1:光ビーコン1が、ダウンリンク切り替え前に、ダウンリンク領域DAに向けて繰り返し送信する下りフレームのことをいう。
上りフレームUL1:下りフレームDL1の受信に応じて車載機20が送信する上りフレームのうち、伝送速度が低速のものをいう。「低速フレームUL1」ともいう。
上りフレームUL2:下りフレームDL1の受信に応じて車載機20が送信する上りフレームのうち、伝送速度が高速のものをいう。「高速フレームUL2」ともいう。
下りフレームDL2:光ビーコン1が、後述するダウンリンク切り替え後に、ダウンリンク領域DAに向けて繰り返し送信する下りフレーム(一連のフレーム群の場合を含む。)のことをいう。
ダウンリンク切り替え:光ビーコン1が繰り返して送信する下りフレームDL1,DL2に含める実質的なデータ内容を、当該切り替えの前後で変化させることをいう。
【0041】
<2.3 受光部11の構成>
図5は、光ビーコン1の受信側の回路構成を示す説明図である。
受光部11は、通信用の受光系(受信回路)である第1受光系26と、測定用の受光系(受信回路)である第2受光系27とを含む。なお、第1受光系26には、二種類の通信用受光系26A,26Bが含まれている。
ビーコン制御機3は、通信IC(通信処理部)28と、位置IC(位置処理部)29と、メインCPU30とを含む。
図5では図示していないが、ビーコン制御機3は、各IC28,29が出力する「位置データ」や「上りデータ」を記憶するメモリも備えている。
【0042】
図6は、第1受光系26(26A)の概略回路図である。
図5と
図6に示すように、第1受光系26(26A)は、入力側となる左側から順に、受光したアップリンク方向の光信号を電気信号に変換する通信用の受光素子32、FET(Field Effect Transistor)増幅器33、オペアンプ増幅器34、反転回路部35、フィルタ回路部36、及びコンパレータ37を有する。前記受光素子32は、フォトダイオード(Photo Diode)からなり、以下、PD32ともいう。
【0043】
図6において、FET増幅器33は、高速帯域で動作する増幅回路33aを有している。増幅回路33aは、PD32により変換された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号を後段のオペアンプ増幅器34へ出力する。
オペアンプ増幅器34は、高速帯域で動作する2段の増幅回路34a,34bを有している。増幅回路34a,34bは、前段から出力された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号を後段へ出力する。
反転回路部35も、高速帯域で動作する2段の増幅回路35a,35bを有している。増幅回路35a,35bは、前段のオペアンプ増幅器34から出力された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号を後段へ出力する。
フィルタ回路部36は、少なくとも高速帯域の成分を抽出できるローパスフィルタよりなる。フィルタ回路部36は、増幅された電気信号から高速成分を抽出し、抽出した高速信号を後段のコンパレータ37へ出力する。
コンパレータ37は、高速信号と閾値との比較が可能な高速用コンパレータよりなる。コンパレータ37は、入力された高速信号を閾値と比較し、この比較によって抽出したデジタルの受信信号(ビットデータ)を後段の通信IC28(
図5参照)に出力する。
なお、本実施形態では、前記高速帯域は、256kbpsである。
【0044】
図5において、通信IC28は、信号の伝送速度を判定し、判定した伝送速度によってビットデータをサンプリングし、上りフレームUL1,UL2に含まれるアップリンクデータを再生する。通信IC28は、再生したアップリンクデータを後段のメインCPU30に送る。
【0045】
図7は、第2受光系27(測定用受光系)及び第1受光系26(通信用受光系26B)の概略回路図である。
図5と
図7に示すように、第2受光系27は、左側から順に、位置検出素子52、FET増幅器53、オペアンプ増幅器54、及び位置標定出力部55を有する。前記位置検出素子52は、受光素子であり、以下、PSD52ともいう。なお、PSDは、Position Sensitive Detectorの略語である。
【0046】
PSD52は、上りフレームUL1,UL2(
図3参照)の受光面内の入力位置に応じた電気信号を出力する。PSD52は、2次元PSDよりなり、受光面に入射されたスポット光の2次元座標の演算に必要となる4つの電流値を出力可能である。なお、PSD52を用いたアップリンク位置の測定原理(
図4)ついては後述する。
FET増幅器53、オペアンプ増幅器54、及び位置標定出力部55は、PSD52の出力端子x1,x2,y1,y2それぞれと繋がっているが、
図7では、出力端子x1と繋がる部分についてのみ具体的な回路構成を記載しており、他については省略している。しかし、他についても、出力端子x1と繋がる部分の回路構成と同じである。
【0047】
PSD52の4つの出力端子x1,x2,y1,y2それぞれから出力される電気信号は、その後段のFET増幅器53によってそれぞれ増幅される。FET増幅器53は、低速帯域で動作する増幅回路53aを有している。増幅回路53aは、PSD52により変換された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号を後段のオペアンプ増幅器54へ出力する。
オペアンプ増幅器54は、低速帯域で動作する2段の増幅回路54a,54bを有している。増幅回路54a,54bは、前段から出力された電気信号を増幅し、増幅後の電気信号を後段へ出力する。
オペアンプ増幅器54が増幅した電気信号は、その後段の位置標定出力部55にそれぞれ入力される。位置標定出力部55はピークホールド回路を有しており、増幅信号の最大振幅を所定時間だけ保持して測定データを生成し、生成した測定データを後段の位置IC29に送る。
なお、本実施形態では、前記低速帯域は、64kbpsである。
【0048】
図5において、位置IC29は、各位置標定出力部55から入力された測定データ(PSD52の各出力端子の電気信号を増幅した信号)を用いて、例えば低速フレームUL1のアップリンク位置を測定する。位置IC29は、その測定結果である位置データをメインCPU30に送る。
位置IC29が出力する位置データは、
図4に示す、PSD52の受光面上の座標(x,y)又は道路側の座標(X,Y)のいずれに基づくものであってもよい。本実施形態では、位置データは座標(x,y)に基づいている。この場合、メインCPU30によって、座標(x,y)を座標(X,Y)に変換する演算が行われる。
【0049】
また、
図5において、本実施形態では、第2受光系27に用いられているPSD52が第1受光系26用(通信用)の変換素子としても兼用されるようになっている。つまり、第1受光系26は、上記構成のほか、通信用受光系として、PSD52、FET増幅部53、オペアンプ増幅部54、加算回路部56、フィルタ回路部57、及びコンパレータ58を更に備えている。
【0050】
加算回路部56は、各オペアンプ増幅器54の出力端子と接続されている。PSD52から出力された信号は、増幅器53,54によって増幅された後に、加算器56において加算される。
加算回路部56の出力端子はフィルタ回路部57に接続されている。加算器56において生成された信号は、フィルタ回路部57において所定の速度成分が抽出された後にコンパレータ58に出力される。
コンパレータ58は入力された信号を閾値と比較し、この比較によって抽出したデジタルの受信信号(ビットデータ)を通信IC28に出力する。
なお、
図5では、PD32を含む第1受光系を符号26Aで示し、PSD36を含む第1受光系を符号26Bで示している。
【0051】
PSD52は高速帯域(256kbps)における追従性能が比較的悪く、受信した高速帯域の光信号から上りデータを再生することは困難であるが、低速帯域(64kbps)の光信号に対しては十分な追従性能を有しているので、受信した低速帯域の光信号から上りデータを再生することが可能である。
したがって、本実施形態では、低速帯域(64kbps)の光信号、つまり低速フレームUL1に対してはPSD52を測定用としてだけでなく通信用としても利用し、PD32とPSD52とによって通信用受光系26A,26Bの二重化が図られている。
このような通信用受光系26A,26Bの二重化は、「上りデータ」を取得するうえでの確実性を高めるほか、PD32及びPSD36の故障等の不具合を早期に発見するためにも役立てることができる。
【0052】
以上のように、
図5に示すように、受光部11は、第1受光系26(通信用受光系26A,26B)及び第2受光系27(測定用受光系)の回路構成を有している。
通信用受光系26Aは、高速帯域(256kbps)で動作する高速受信回路31(以下、受信回路31ともいう。)を有しており、この高速受信回路31は、FET増幅部33、オペアンプ増幅部34、反転回路部35、フィルタ回路部36、及びコンパレータ37を含む。
通信用受光系26Bは、低速帯域(64kbps)で動作する低速受信回路51(以下、受信回路51ともいう)を有しており、この低速受信回路51は、FET増幅部53、オペアンプ増幅部54、加算回路部56、フィルタ回路部57、及びコンパレータ58を含む。
測定用受光系(第2受光系27)は、低速帯域(64kbps)で動作する低速受信回路56(以下、受信回路56ともいう)を有しており、この低速受信回路56は、FET増幅部53、オペアンプ増幅部54、及び位置標定出力部55を含む。
【0053】
つまり、高速対応の通信用受光系26A(
図6参照)は、近赤外線によるアップリンク光を受光して電気信号を出力するPD32と、このPD32側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路(33a,34a,34b,35a,35b)が多段接続された高速受信回路31とを含む構成からなる。
低速対応の通信用受光系26B(
図7参照)は、近赤外線によるアップリンク光を受光して電気信号を出力するPSD52と、このPSD52側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路(53a,54a,54b,56a,56b)が多段接続された低速受信回路51とを含む構成からなる。
低速対応の測定用受光系(27)(
図7参照)は、前記PSD52と、このPSD52側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路(53a,54a,54b)が多段接続された低速受信回路61とを含む構成からなる。
【0054】
<2.4 アップリンク位置の測定原理>
図4は、PSD52を用いたアップリンク位置の測定原理の説明図である。
図4に示すように、道路側の座標(X,Y)は、道路Rの路面から所定高さH(例えば、H=1.0m)の平面内の2次元座標であり、X方向は道路Rの延長方向(車両進行方向)に沿い、Y方向は道路Rの幅方向に沿っている。
【0055】
2次元のPSD52は、その受光面のx方向が道路側のX方向に対応し、その受光面のy方向が道路側のY方向に対応するように、ビーコンヘッド2の内部に配置されている。
2次元のPSD52では、出力端子x1,x2,y1,y2の電流値を、それぞれIx1,Ix2,Iy1,Iy2とすると、受光面に入射されたスポット光の入射位置の座標(x,y)を、次の関係式によって算出することができる。
2x/Lx={(Ix2+Iy1)-(Ix1+Iy2)}/(Ix1+Ix2+Iy1+Iy2)
2y/Ly={(Ix2+Iy2)-(Ix1+Iy1)}/(Ix1+Ix2+Iy1+Iy2)
【0056】
なお、上記関係式において、Lxは受光面のx方向の長さであり、Lyは受光面のy方向の長さである。
そこで、位置IC29(
図5参照)は、位置標定出力部55から得られた測定データIx1,Ix2,Iy1,Iy2の値が所定の閾値を超えると、それらの値を上記関係式に代入して、スポット光の入射位置の座標(x,y)の値を算出する。本実施形態では、この座標値が位置データである。
【0057】
一方、
図4に示すように、アップリンク領域UA内の任意の位置(X,Y)でビーコンヘッド2に向けて送出された光信号は、レンズで集光されて、PSD52の受光面内のいずれかの1つの位置(x,y)にスポット光となって入射される。
したがって、アップリンク領域UAで送信される上りの光信号(アップリンク光)の入射位置(x,y)は、道路側の送信位置(X,Y)と1対1で対応しており、入射位置(x,y)の値が判明すれば、幾何学的な関係に基づく座標変換により、光信号の送信位置(X,Y)(アップリンク位置の道路側の座標値)を求めることができる。なお、前記幾何学的な関係に基づく座標変換の具体例としては、線形関係による近似や3次関数近似を採用して行うものがある。
【0058】
そこで、メインCPU30は、位置ICから位置データを取得すると、その位置データの座標(x,y)の値を上記座標変換によって道路側の座標(X,Y)の値に変換し、アップリンク位置を求める。なお、位置IC29にて道路側の座標(X,Y)を求める場合には、上記の座標変換についても位置IC29が行う。この場合、位置IC29が出力する位置データは、道路側の座標(X,Y)に基づく値となる。
【0059】
<3. 前記検査装置40による検査方法について>
以上のような構成を有している光ビーコン1の受光部11(
図5参照)を、前記検査装置40(
図1参照)によって検査する方法について説明する。
<3.1 検査のための回路構成>
検査装置40によって前記受光部11を検査するために、この受光部11の電気回路に複数のテストパッドP1〜P6、P11〜P17が設けられている(
図6と
図7参照)。これらテストパッドは、前記増幅回路(33a、53a・・・)等が実装されている回路基板の配線パターンの一部に設けられている。
本実施形態では、光信号の入力側となる受光素子であるPD32及びPSD52を前段側とし、受光部11からの信号の出力側となるコンパレータ37,58及び位置標定出力部55側を後段側と定義すると、前後で隣り合うテストパッド間が一つの検査単位として設定される。
【0060】
つまり、
図6に示す第1受光系26(通信用受光系26A)において、第1のテストパッドP1と第2のテストパッドP2との間の増幅回路33aを含む部分回路(FET増幅部33)が、一つの検査単位となり、第2のテストパッドP2と第3のテストパッドP3との間の増幅回路34aを含む部分回路(オペアンプ増幅部34の前段)が、一つの検査単位となり、第3のテストパッドP3と第4のテストパッドP4との間の増幅回路34bを含む部分回路(オペアンプ増幅部34の後段)が、一つの検査単位となる。
さらに、第4のテストパッドP4と第5のテストパッドP5との間の増幅回路35a,35bを含む部分回路(反転回路部35)が、一つの検査単位となる。なお、この部分回路には、フィルタ回路部36も含まれる。
【0061】
また、本実施形態では、第4のテストパッドP4と第6のテストパッドP6との間における反転回路部35、フィルタ回路部36、及びコンパレータ37を含む部分回路も、一つの検査単位として設定されている。反転回路部35の増幅回路35a,35bそれぞれの増幅率は小さいため、これら増幅回路35a,35bは、一つの検査単位に集約されている。
このように、第1受光系26(通信用受光系26A)の受信回路31において、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして受信回路31を複数に区画した部分回路が検査単位とされている。なお、テストパッドは、入力信号を入力させる端子部としての機能と、出力信号を出力させる端子部としての機能との双方の機能を有するものがある。
【0062】
また、
図7に示すように、第2受光系27及び第1受光系26(通信用受光系26B)それぞれにおいても同様に、テストパッドP11〜P17が配線パターン中に設けられている。なお、FET増幅部53は並列に四つ設けられており、FET増幅部53それぞれの前段側にテストパッドが設置されている。
図7では、並列にあるFET増幅部53それぞれの前段側にあるテストパッドの符号を、P11a、P11b、P11c、P11dとしていて、並列に接続されているテストパッドには、その符号にa、b、c、dを付加している。この符号a、b、c、dに関しては、他のテストパッドでも同じである。
また、以下において、テストパッドP11a、P11b、P11c、P11dの内の一つを代表して説明する場合、そのテストパッドの符号を単にP11と省略した記載として説明する。また、この省略についても他のテストパッドでも同じである。
【0063】
そして、一つのテストパッドと他のテストパッドとの間が、検査単位として設定されている。つまり、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして通信用受光系26Bの受信回路51を複数に区画した部分回路が検査単位とされており、また、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして第2受光系27(測定用受光系)の受信回路61を複数に区画した部分回路が検査単位とされている。
【0064】
以上より、
図6に示す通信用受光系26Aの高速受信回路31には、テストパッドP1−P2間の部分回路、テストパッドP2−P3間の部分回路、テストパッドP3−P4間の部分回路、テストパッドP4−P5間の部分回路、及びテストパッドP4−P6間の部分回路が含まれている。
また、
図7に示す通信用受光系26Bの低速受信回路51には、テストパッドP11−P12間の部分回路、テストパッドP12−P13間の部分回路、テストパッドP13−P14間の部分回路、テストパッドP14−P15間の部分回路、及びテストパッドP14−P16間の部分回路が含まれている。
そして、測定用受光系(27)の低速受信回路61には、テストパッドP11−P12間の部分回路、テストパッドP12−P13間の部分回路、及びテストパッドP13−P17間の部分回路が含まれている。
【0065】
ここで、通信用受光系26Aに関して、各部分回路には、合格判定値が設定されている。合格判定値は、入力信号に対する出力信号の値についての正常範囲、又は、各部分回路の増幅率についての正常範囲を採用することができる。
これと同様に、通信用受光系26B、及び測定用受光系(27)それぞれに関しても、各部分回路について合格判定値(正常範囲)が設定されている。
出力信号の値についての正常範囲を採用する場合は、各部分回路の出力信号の電圧値(計算値)と、その許容値とにより規定されている。例えば、電圧値(計算値)を中心としたプラスマイナス5%の範囲内が、正常範囲に設定されている。なお、前記電圧値(計算値)とは、各部分回路への入力信号の電圧値に、その部分回路の設計上の増幅率を乗算した値である。
増幅率についての正常範囲を採用する場合は、各部分回路の増幅率の設計値(規定値)と、その許容値とにより規定されている。例えば、設計値を中心としたプラスマイナス5%の範囲内が、正常範囲に設定されている。
【0066】
そして、本実施形態において、検査対象とする光ビーコン1の受光部11では、通信用受光系26Aの高速受信回路31に含まれる各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値を乗算した値α2は、通信用受光系26Bの低速受信回路51に含まれる前記各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値を乗算した値α1以上となっている。なお、この正常範囲の代表値としては、正常範囲の上限値、正常範囲の下限値、又は正常範囲の中間値を採用することができるが、高速受光回路31に含まれる各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値を、正常範囲の最小値とし、低速受光回路51に含まれる各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値を、正常範囲の最大値とするのが好ましい。
このように前記値α2が前記値α1以上に設定されていることの意義は、前記高速フレームUL2と前記低速フレームUL1との双方のアップリンク光を受信可能なアップリンク領域UAの位置設定を行うためであり、この位置設定について、及びこの位置設定が実現されていることを確認するための検査については、後に説明する。
【0067】
また、
図6及び
図7に示すように、検査対象となる各部分回路の前段側には、所定の機能を有する回路素子が設けられている。例えば、
図9に示すように、一つの増幅回路34bを含む部分回路C2が検査単位とされている場合、この部分回路C2の前段側に前記回路素子として抵抗素子R1が設けられている。この部分回路C2の検査では、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号i1がテストパッドP3から入力され、この入力信号i1が増幅回路34bにより所定の増幅率で増幅され、テストパッドP4から増幅された出力信号j1が出力される。そして、解析装置41によって、この出力信号j1を用いて増幅回路34bの検査が行われる。
【0068】
抵抗素子R1は、検査対象としている部分回路C2への入力信号i1が、この部分回路C2の前段側に接続されている他の部分回路C1が有する増幅回路34aへ入力されるのを抑える素子である。つまり、テストパッドP3への入力信号i1は、検査の対象とする後段側の部分回路C2の増幅回路34bへ入力されるが、仮に抵抗素子R1が存在していない場合、この入力信号i1は、前段側の部分回路C1が有する増幅回路34aのフィードバック回路へも入力される。すると、このフィードバック回路を通じて増幅回路34aから信号n1が出力され、この出力された信号n1が、テストパッドP3からの入力信号i1に加えられ、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号i1とは異なる信号が、検査対象としている増幅回路34bを含む部分回路へ入力されてしまう。
そこで、このような不具合を回避するために、検査単位となる部分回路C2の前段側に、抵抗素子R1が設けられている。なお、前段側に前記のようなフィードバック回路による帰還信号が発生しない部分については、このような回路素子(抵抗素子R1)を不要とすることができる。
【0069】
そして、
図9において、部分回路C2の前段側に設けられた抵抗素子R1と、この部分回路C2との間のテストパッドP3を入力用として設定し、このテストパッドP3に対して、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号i1を入力させればよい。なお、テストパッドへの入力信号が高周波である場合、抵抗素子が設けられるが、テストパッドへの入力信号が直流である場合、前記回路素子としてコンデンサが設けられる。このような抵抗素子等の回路素子は、第1受光系26(通信用受光系26A,26B)、及び第2受光系27それぞれの受信回路31,51,61に設けられる。
【0070】
<3.2 検査処理の具体例>
図8は、このような受信回路31,51,61を有する受光系26A,26B,27を前記検査装置40が検査する方法を説明するフロー図である。受光系26A,26B,27それぞれについて検査を行うが、以下では、通信用受光系26Aを検査する場合についてその具体例を説明する。
【0071】
図6に示す通信用受光系26Aにおいて、検査単位となる一つの部分回路に信号を入力し、この部分回路からの出力信号を取得する(
図8のステップS1)。すなわち、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号を、第1のテストパッドP1に入力すると、この入力信号に応じてFET増幅部33の増幅回路33aから出力信号が出力される。例えば、通信用受光系26Aに含まれる一つの部分回路となるFET増幅部33への入力信号を、周波数が64kHzであって電圧が50mVp−pである入力正弦波とする。なお、この入力信号は任意に設定される信号である。
そして、テストパッドP2を通じて、この入力信号に対する出力信号の波形データを、
図1に示すオシロスコープ46、及び解析装置41が取得する。また、テストパッドP1への入力信号の波形データも解析装置41は取得する。これら入力信号と出力信号とのデータは、解析装置41が有する記憶装置43に記憶される(
図8のステップS2)。
【0072】
そして、ステップS3において、解析装置41の第1処理部42aは、前記ステップS2で記憶装置43に記憶させた前記出力信号が、前記入力信号を規定の増幅率によって増幅させた信号となっているか否かの判定処理を行う。前記のとおり、検査単位となる部分回路毎に合格判定値が設定されており、この合格判定値は部分回路に対応つけて記憶装置43に記憶されている。
【0073】
そこで、第1処理部42aは、テストパッドP1−P2間の部分回路の合格判定値と、記憶装置43に記憶させたテストパッドP1−P2間の部分回路からの出力信号の値(測定値)とを比較し、各部分回路の正常又は異常の判定を行う。以下では、出力信号の値(測定値)についての正常範囲を、合格判定値とする場合について説明する。
なお、前記のとおり、合格判定値は、各部分回路の増幅率についての正常範囲であってもよく、この場合、第1処理部42aは、この正常範囲と、記憶装置43に記憶させた各部分回路の入力信号と出力信号とから算出される増幅率(算出値)を比較し、各部分回路の正常又は異常の判定を行えばよい。
【0074】
すなわち、
図6において、前記のとおり、テストパッドP1−P2間の部分回路であるFET増幅部33に関して、テストパッドP1への入力信号として、周波数が64kHzであって電圧が50mVp−pである入力正弦波が入力されている。このFET増幅部33の増幅率の設計値は5倍に設定されているとすると、FET増幅部33のための合格判定値は、出力波形データとして、周波数が64kHzであって電圧が250mVp−pとなる入力正弦波となる。そして、その許容値として、電圧がこの250mVp−p(計算値)のプラスマイナス5%の範囲内であると規定されている。
そこで、前記ステップS2では、テストパッドP1への入力信号に対するテストパッドP2からの出力信号(測定値)が記憶装置43に記憶されていることから、この出力信号(測定値)と、前記合格判定値とを比較して、出力信号(測定値)が前記許容値以内(正常範囲内)であるか否かについての判定が行われる(ステップS3)。出力信号が許容値以内である場合、正常と判定され、出力信号(測定値)が許容値を超える場合、異常と判定される。このステップS3において、正常であると判定されると、ステップS4へ進むが、異常であると判定されると、その判定結果が記憶され(ステップS8)、その判定結果を解析装置41が出力する(ステップS9)。
【0075】
ステップS3において正常であると判定されることを条件として、これらステップS1とS2との処理、及び第1処理部42aによる判定処理(ステップS3)は、通信用受光系26Aに含まれる他の部分回路についても行われる(ステップS4)。すなわち、テストパッドP2−P3間のオペアンプ増幅部34の前段の部分回路に関して、正常又は異常の判定がされる。これと同様に、テストパッドP3−P4間の部分回路、テストパッドP4−P5間の部分回路、テストパッドP4−P6間の部分回路に関して、正常又は異常の判定がされる。
【0076】
具体的に説明すると、テストパッドP2への入力信号と、オペアンプ増幅部34の前段の増幅回路34aの出力側となるテストパッドP3の出力信号との波形データを取得し、記憶させ、正常又は異常の判定が行われる。テストパッドP3への入力信号と、オペアンプ増幅部34の後段の増幅回路34bの出力側となるテストパッドP4の出力信号との波形データを取得し、記憶させ、正常又は異常の判定が行われる。テストパッドP4への入力信号と、反転回路部35の2段の増幅回路35a,35bの出力側となるテストパッドP5の出力信号との波形データを取得し、記憶させ、正常又は異常の判定が行われる。反転回路部35の増幅回路35a,35bそれぞれの増幅率は小さいため、これら増幅回路35a,35bは、一つの検査単位に集約されている。なお、本実施形態では、テストパッドP4への入力信号と、コンパレータ37の出力側となるテストパッドP6の出力信号との波形データを取得し、記憶させ、正常又は異常の判定が行われる。
【0077】
ここで、ファンクションジェネレータ44は、前記のとおり、特性が異なる入力信号を生成可能であり、また、プロービング治具45は、複数の部分回路から選択した部分回路へ入力信号を入力させることができ、その部分回路からの出力信号を取り出すことができる。このため、部分回路を、プロービング治具45によって次々と切り替えることができ、各部分回路の検査が可能となる。
そして、全ての部分回路のうちの一つでも異常があると判断されると(ステップS3で「異常」の場合)、その異常である部分回路を示す情報が記憶され(ステップS8)、解析装置41が出力する(ステップS9)。
【0078】
通信用受光系26Aの全ての検査単位に設定されている部分回路について、ステップS1〜S3の処理を終えると(
図8のステップS4で「Yes」の場合)、この受光系26AのPD32に対して、検査用の近赤外線による光信号を入力して、このPD32の後段側に存在する受信回路31から出力される信号(以下、光信号出力信号という。)を、解析装置41が取得する(
図8のステップS5)。
検査用の近赤外線による光信号は、発光源48(
図1参照)から出力される。
また、通信用受光系26Aの場合、光信号出力信号は、コンパレータ37の後段側に設けられているテストパッドP6から出力される信号である。光信号出力信号の波形データは、記憶装置43に記憶される(
図8のステップS6)。
そして、解析装置41の第2処理部42bは、以下の判定処理を行い(
図8のステップS7)、判定結果が記憶装置43に記憶される(
図8のステップS8)。
【0079】
ステップS7において、第2処理部42bは、受信回路31からの前記光信号出力信号の出力の有無により通信用受光系26Aの正常又は異常の判定処理を行う。つまり、この第2処理42bでは、光信号出力信号の出力の絶対値(例えば、電圧値や、増幅率)を、前記のような合格判定値(正常範囲)と比較するのではなく、受信回路31(テストパッドP6)からの光信号出力信号の出力の有無により、この通信用受光系26Aの動作の確認を行う。つまり、PD32へ入力する光信号のレベル(強さ)に関係はなく、また、第2処理部42bは、出力信号の電圧値や増幅率を確認する必要はない。
【0080】
光信号出力信号が取得されており、この信号が記憶装置43に記憶されていれば、第2処理部42bは、通信用受光系26Aの動作(通電)は正常であると判定し、光信号出力信号が取得できていない場合、通信用受光系26Aの動作(通電)について異常であると判定する。そして、この第2処理部42bによる判定結果の情報が記憶装置43に記憶される。
【0081】
以上より、第1処理部42aによる判定結果(ステップS3)と、第2処理部42bによる判定結果(ステップS7)との双方が正常である場合、通信用受光系26Aは、規定の増幅率で作動していることの確認がされる。つまり、通信用受光系26Aは、すべて正常であると判定することができ、この判定結果が、解析装置41から出力される(
図8のステップS9)。
【0082】
以上のように、増幅回路が多段接続された通信用受光系26Aの受信回路31は、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして複数に区画されており、区画された部分回路が検査単位となっている。そして、第1処理部42aによって、部分回路毎の増幅率の確認を行うことができる。このように、受信回路31を複数の部分回路に分けて検査を行うことから、比較的大きな入力信号(例えば、電圧が50mVp−pである入力正弦波)を用いて部分回路毎の増幅率の確認を行うことが可能となる。
そして、第2処理部42bによって、PD32と受信回路31とを含む通信用受光系26Aの動作が確認される。
【0083】
これら第1処理部42aと第2処理部42bとの処理を総合することによって、通信用受光系26A全体としての機能の検査が可能となる。すなわち、受信回路31に含まれる全ての部分回路について部分回路毎に増幅率の確認を行うことは、受信回路31の全体の増幅率を確認することと等価であり、また、これに併せて、PD32への光信号の入力によって受信回路31から何らかの信号が出力されていることを確認することで、これら受信回路31及びPD32を含む通信用受光系26A全体としての機能の検査が可能となる。
【0084】
そして、他の受光系として、通信用受光系26B、及び第2受光系(測定用受光系)27についても、
図8に示すフローに沿って同様の検査がそれぞれ行われる。つまり、第1処理部42aと第2処理部42bとの処理を総合することによって、通信用受光系26B全体としての機能の検査が可能となり、また、第1処理部42aと第2処理部42bとの処理を総合することによって、第2受光系(測定用受光系)27全体としての機能の検査が可能となる。
【0085】
このように、第1受光系26の通信用受光系26A,26Bそれぞれの全体としての機能の検査、つまり、通信用受光系26A,26B全体における増幅率の検査を行うことにより、高速フレームUL2及び低速フレームUL1を受信可能となる規定のアップリンク領域が確保されていることを保証することができる。
また、第2受光系27は、アップリンク位置を測定するための位置標定用であり、PSD52の4つの出力端子から信号が出力され、それぞれの信号が受信回路61によって処理され、位置ICに入力される。このような第2受光系27の4系統の受信回路61それぞれの全体としての機能の検査、つまり、全体における増幅率の検査を行うことにより、位置標定の精度を高めることが可能となる。
【0086】
<3.3 検査処理の変形例>
前記<2.3 受光部11の構成>により説明したとおり、受光部11の内のPD32を含む通信用受光系26Aは、高速帯域で動作する高速受信回路31を有しており、受光部11の内のPSD52を含む通信用受光系26Bは、低速帯域で動作する低速受信回路51を有している。
なお、高速受信回路31は、FET増幅部33、オペアンプ増幅部34、反転回路部35、フィルタ回路部36、及びコンパレータ37を含み、低速受信回路51は、FET増幅部53、オペアンプ増幅部54、加算回路部56、フィルタ回路部57、及びコンパレータ58を含む。
【0087】
そこで、解析装置41の第3処理部42cは、低速受信回路51に含まれる各部分回路の増幅率を、各部分回路の入力信号と出力信号とに基づいて求める。そして、第3処理部42cは、この低速受信回路51に含まれる各部分回路の増幅率を乗算した第1乗算値σ1を求める。
つまり、
図7に示すように、低速受信回路51には、部分回路として、FET増幅部53の増幅回路53a、オペアンプ増幅部54の前段の増幅回路54a、オペアンプ増幅部54の後段の増幅回路54b、及び加算回路部56の増幅回路56a,56bが含まれる。このため、第3処理部42cは、これら増幅回路それぞれの増幅率を、各増幅回路の入力信号と出力信号とに基づいて求める。なお、各増幅回路の入力信号と出力信号とは、
図8のステップS2において、記憶装置43に記憶させたデータである。そして、第3処理部42cは、求めた増幅回路それぞれの増幅率の積を求め、その値を第1乗算値σ1とする。
【0088】
また、第3処理部42cは、高速受信回路31に含まれる各部分回路の増幅率を、各部分回路の入力信号と出力信号とに基づいて求める。そして、第3処理部42cは、この高速受信回路31に含まれる各部分回路の増幅率を乗算した第2乗算値σ2を求める。
つまり、
図6に示すように、高速受信回路31には、部分回路として、FET増幅部33の増幅回路33a、オペアンプ増幅部34の前段の増幅回路34a、オペアンプ増幅部34の後段の増幅回路34b、及び反転回路部35の増幅回路35a,35bが含まれる。このため、第3処理部42cは、これら増幅回路それぞれの増幅率を、各増幅回路の入力信号と出力信号とに基づいて求める。なお、各増幅回路の入力信号と出力信号とは、
図8のステップS2において、記憶装置43に記憶させたデータである。そして、第3処理部42cは、求めた増幅回路それぞれの増幅率の積を求め、その値を第2乗算値σ2とする。
【0089】
そして、第3処理部42cは、前記第1乗算値σ1と前記第2乗算値σ2との大小の判定を行う。この判定処理によれば、第2乗算値σ2が第1乗算値σ1以上となることを確認することが可能となる。そして、この条件(第2乗算値σ2≧第1乗算値σ1)を満たすことで、次の検査が可能となる。
すなわち、前記のとおり(
図3参照)、高速フレームUL2と低速フレームUL1との双方のアップリンク光の受信を可能とする新光ビーコン1Aが存在する。そして、これらアップリンク光を受信可能なアップリンク領域UAに関して、
図10に示すように、下記に定義する第1上流端P1よりも、下記に定義する第2上流端P2を、道路の走行方向上流側(
図10では右側)とする位置設定、又は、第1上流端P1を第2上流端P2と実質的に同じにする位置設定が行われるのが好ましい。なお、このように位置設定が行われることが好ましい理由については、後に説明する。
・第1上流端P1:低速フレームUL1を受信可能なエリアの物理的な最上流端
・第2上流端P2:高速フレームUL2を受信可能なエリアの物理的な最上流端
【0090】
低速受信回路51と高速受信回路31との受信性能の差は、そのまま低速フレームUL1と高速フレームUL2の受信可能な範囲の広狭となって表れることから、前記位置設定のために、低速フレームUL1よりも高速フレームUL2の方が電気信号の利得が大きくなるように、低速受信回路51及び高速受信回路31それぞれに含まれる各回路素子の定数が定められている。すなわち、前記のとおり、高速受信回路31に含まれる各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値(下限値)を乗算した値α2が、低速受信回路51に含まれる前記各部分回路の増幅率についての正常範囲の代表値(上限値)を乗算した値α1以上となるように、受信部11は構成されている。
そして、受信部11(高速受信回路31及び低速受信回路51)がこのように構成されているか否かの検査を行う必要がある。そこで、前記条件(第2乗算値σ2≧第1乗算値σ1)を満たす確認を行うことによって、この検査を実現することができ、この結果、新光ビーコン1Aにおいて、第1上流端P1よりも第2上流端P2を上流側又は実質的に同じ位置にする位置設定を行うことが可能となる。
【0091】
この第3処理部42cによる検査処理は、前記第1処理部42a及び前記第2処理部42bによる検査処理と併せて行われるのが好ましい。そして、この第3処理部42cによれば、第1上流端P1よりも第2上流端P2が上流側又は実質的に同じ位置にする位置設定されることの確認が可能となる。
【0092】
<4. 検査方法について>
以上より、本実施形態の検査装置40による検査方法は、部分検査ステップ(
図8のステップS1〜S4)と、全体検査ステップ(
図8のステップS5〜S7)とを含む。部分検査ステップでは、少なくとも一つの増幅回路を含むようにして受信回路31(51,61)を複数に区画した部分回路を検査単位として、この検査単位となる各部分回路の入力信号と出力信号とを取得し、これら入力信号と出力信号に基づいて当該部分回路毎の増幅率が確認される。そして、全体検査ステップでは、検査用の光信号を受光素子32(52)に入力して受信回路31(51,61)から出力された信号(前記光信号出力信号)に基づいて受光部11の動作が確認される。そして、これら部分検査ステップと全体検査ステップとを総合することによって、前記のとおり、受光部11全体としての機能の検査が可能となる。
【0093】
特に本実施形態の部分検査ステップでは、各部分回路からの出力信号が、その部分回路への入力信号を規定の増幅率によって増幅させた信号となっているか否かの判定処理を、第1処理部42aが行う。この第1処理部による部分検査ステップによって、部分回路毎の増幅率の確認が可能となる。
そして、全体検査ステップでは、各受信系の受信回路31(51,61)からの光信号出力信号の出力の有無により、各受信系の動作の確認処理を、第2処理部42bが行う。この第2処理部42bによる全体検査ステップでは、増幅回路が多段に接続された各受信系それぞれの受信回路31(51,61)の増幅率を確認する必要はなく、受信回路31(51,61)からの信号の出力の有無により、この受光部11の動作の確認が可能となる。
【0094】
さらに、本実施形態では、各受信系において、検査対象となる部分回路の前段側に設けられた抵抗素子R1(
図9参照)等の回路素子と、この部分回路との間に、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号を入力させている。この回路素子は、検査対象となる部分回路への入力信号が、この部分回路の前段側に接続されている他の前記部分回路へ入力されるのを抑える素子である。
ここで、
図9において、検査対象となる部分回路C2の前段側に比較的大きな入力信号i1を入力すると、この入力信号i1が、検査対象としている部分回路C2の前段側に接続されている他の部分回路C1へも入力されて、この他の部分回路C1から信号n1が出力される場合に、この信号n1も検査対象としている部分回路C2に入力され、意図せぬ入力信号となるおそれがある。そこで、検査対象となる部分回路C2の前段側に、抵抗素子R1等の回路素子が設けられており、この回路素子と、検査対象となる部分回路C2との間に、ファンクションジェネレータ44が生成した入力信号i1を入力することによって、意図した入力信号i1に基づく検査が可能となる。
【0095】
<5. 光ビーコン1の製造方法>
図11は、光ビーコン1(
図2参照)の製造方法を説明するフロー図である。なお、この
図2はビーコンヘッド2に関しての製造工程を示している。
前記のとおり、光ビーコン1が有するビーコンヘッド2は、車載機20に対して光信号(ダウンリンク光)を送信可能な投光部10と、車載機20から光信号(アップリンク光)を受光してこれを電気信号に変換可能な受光部11と有している。投光部10及び受光部11はそれぞれ回路基板上に設けられており、この回路基板が、ビーコンヘッド2の筐体2a内に設置されている。投光部10は、ビーコン制御機3から送出される下りフレームを送信信号に変換する送信回路と、この送信信号をダウンリンク方向の光信号に変換する発光素子(発光ダイオード)とを有している。受光部11は、アップリンク光を受光して電気信号を出力する受光素子32,52と、この受光素子側からの電気信号を増幅して出力する増幅回路が多段接続された受信回路31,51,61とを備えている。
【0096】
そして、このような光ビーコン1の製造方法には、ビーコンヘッド2に関して、
図11に示すように、受光部11の検査を行う第1の検査工程と、ビーコンヘッド2を組み立てる組み立て工程と、この組み立て後の検査を行う第2の検査工程とが含まれる。前記組立工程は、投光部10及び受光部11の各回路や素子が設けられている基板を、筐体2a内に組み入れ、ビーコンヘッド2の完成品を得る工程である。前記第1の検査工程は、上記<3. 前記検査装置40による検査方法について>及び<4. 検査方法について>の項目で説明した検査方法により受光部11の検査を行う工程である。つまり、第1の検査工程は、基板単体の検査である。第2の検査工程については後に説明する。
この製造方法によれば、第1の検査工程において、受光部11全体としての機能の検査が行われることで、信頼性の高い受光部11を備えているビーコンヘッド2を得ることが可能となる。なお、
図11に示す本実施形態の製造方法では、第1の検査工程を行ってから組立工程を行っているが、これとは反対に、組立工程を行ってから第1の検査工程を行ってもよい。また、この製造方法(第1の検査工程)には、投光部10に関しても検査を行う工程が含まれていても良い。なお、光ビーコン1は、ビーコンヘッド2の他にビーコン制御機3も備えており、このビーコン制御機3は、ビーコンヘッド2とは別に独立して製造される。ビーコン制御機3は、処理装置や記憶装置が筐体内に組み込まれ、前記処理装置によって実行されるコンピュータプログラムが前記記憶装置に格納されることで製造される。そして、ビーコンヘッド2の製造(組立)及びビーコン制御機3の製造の後に、それぞれ独立して製造されたビーコンヘッド2とビーコン制御機3とを組み合わせて光ビーコン1のセットとし、このセットについての検査を実施してもよい。
【0097】
第2の検査工程について説明する。
ここで、前記のとおり(
図3参照)、新光ビーコン1Aでは、高速フレームUL2と低速フレームUL1との双方のアップリンク光の受信を可能とする。さらに、前記のとおり(
図10参照)、これらアップリンク光を受信可能なアップリンク領域UAに関して、前記第1上流端P1よりも、前記第2上流端P2を、道路の走行方向上流側(
図10では右側)とする位置設定、又は、第1上流端P1を第2上流端P2と実質的に同じにする位置設定が行われるのが好ましい。
【0098】
そこで、前記第1上流端P1と前記第2上流端P2とが上記の位置関係になっていることを、出荷前に事前に確認する必要があり、この確認が、前記第2の検査工程で行われる。つまり、第2の検査工程では、少なくとも1つの伝送速度(例えば、低速フレーム)を受信可能な範囲の限界値(低速フレームの場合は第1上流端P1)を特定する検査が行われる。
その検査の具体的方法は、受光部11が光信号を受信可能な範囲の限界値を検査する方法であって、第1工程と、第2工程と、第3工程とを含む。第1工程では、光源と前記受光部11を一定距離だけ離れた位置関係にセットする。第2工程では、前記一定距離を保持しつつ、前記光源が送出する光信号の前記受光部11に対する入射角度を複数の角度値に変更する。第3工程では、前記受光部11が光信号を適切に受信できる否かを各々の角度値において判定し、その判定結果が入れ替わる角度値を前記限界値とする。
【0099】
上記の第2の検査工程での検査方法において、「光信号を適切に受信できる」かの否かの判定は、例えば、その光信号を光電気変換したデジタル信号のビットエラーレートが所定の閾値以上であるか否か、或いは、その光信号の受光パワーが所定の閾値以上であるか否かなどによって行うことができる。
また、「判定結果が入れ替わる角度値」とは、判定結果が変化する前の角度値(=φi)から変化した後の角度値(=φj)のうちのいずれか一方、或いは、その間に含まれる任意の角度値(φi<φ<φjを満たすφ値、或いは、φj<φ<φiを満たすφ値)のことをいう。
この第2の検査工程での検査方法によれば、検査対象の受光部11についての受光可能範囲の限界値が入射角度の角度値によって特定される。このため、受光部11が光信号を受信可能な範囲の限界値を特定できる。なお、第2の検査工程で行われる検査方法は他の方法であってもよい。
【0100】
<6. 第1上流端P1と第2上流端P2との位置設定について>
前記のとおり、第1上流端P1と第2上流端P2との位置設定(
図10参照)を行うことの意義を説明するために、まず、高速フレームUL2の不感領域に関して説明する。
【0101】
<6.1 高速フレームUL2の不感領域による問題点>
図10は、高速フレームUL2の不感領域Fの一例を示す説明図である。
図10において、実線のエリアRA1は、受光部11が低速フレームUL1を実際に受信可能なエリアを示し、仮想線(一点鎖線)により境界を示すエリアRA2は、受光部11が高速フレームUL2を実際に受信可能なエリアを示している。
【0102】
P1は、低速フレームUL1を受信可能なエリアRA1の所定高さH(例えば、H=1.0m)における最上流端(以下、「第1上流端」という。)であり、P2は、高速フレームUL2を受信可能なエリアRA2の所定高さHにおける最上流端(以下、「第2上流端」という。)である。なお、この場合の「受信可能」とは、上りフレームUL1,UL2を、所定のビットエラーレート(例えば、規格値では10
−5)以下で受信できることを意味する。
【0103】
ここで、
図10に示すように、エリアRA1の車両進行方向の範囲は、エリアRA2の同方向の範囲よりも広くなる。
かかる範囲の広狭差を、第1上流端P1と第2上流端P2の位置関係で換言すると、上りフレームUL1,UL2の受光に同じレンズを用いる通常の受光部11では、第1上流端P1が第2上流端P2よりも上流側に位置するということになる。その理由は、次の通りである。
【0104】
すなわち、受光部11のフィルタ回路部36(
図5参照)では、上りの電気信号を外乱(ダウンリンク光や太陽光の反射光を受光素子が感知して生じた電気信号)と分離するために、上り帯域の電気信号(本実施形態では64kbpsと256kbps)は通過させるが、下り帯域の電気信号(本実施形態では1024kbps)を含む約500kHz以上の帯域成分を遮断する周波数特性を有するものを用いる必要がある。
【0105】
したがって、遮断周波数に近い高速フレームUL2の方が低速フレームUL1よりもフィルタ34に対する透過性がやや落ち、その結果、受光部11の受信性能としては、低速フレームUL1よりも高速フレームUL2の方が若干悪くなる。
かかる伝送速度の差による受信性能の差が、そのまま低速フレームUL1と高速フレームUL2の受信可能な範囲の広狭となって表れ、低速フレームUL1を実際に受信可能な「物理的」な最上流端である第1上流端P1が、高速フレームUL2を実際に受信可能な「物理的」な最上流端である第2上流端P2よりも上流側になる。
【0106】
このため、第1上流端P1から第2上流端P2までの領域は、低速フレームUL1を受信可能であるが高速フレームUL2を受信不能な領域(以下、「不感領域」という。)Fとなる。
【0107】
不感領域Fによる問題点を説明する。
例えば、
図3において、車載機20Aが最初に低速フレームUL1を送信し、その後に受信する折り返しフレームで自身車両IDを確認してから、高速フレームUL2を送信する通信規約を採用すると、車両の走行速度によっては、不感領域Fにおいて車載機20Aが高速フレームUL2を送信することもあり得る。
特に、車両が例えば時速10km以下の低速で通信領域Aを通過するような場合には、新車載機20Aが、低速フレームUL1のアップリンク送信→ダウンリンク切り替え後の折り返しフレームのダウンリンク受信→高速フレームUL2のアップリンク送信までの一連の送受信を、すべて不感領域Fで行う場合がある。
【0108】
このように、車載機20Aが不感領域Fにおいて高速フレームUL2を送信すると、その高速フレームUL2を光ビーコン1Aの受光部11は受信できない。
また、車載機20Aがダウンリンク受信する時間を確保するために、高速フレームUL2に再送チャンスを与えない通信規約を採用する場合には、車載機20Aが不感領域Fで送信した高速フレームUL2を光ビーコン1Aが取り逃がすと、その高速フレームUL2を取得できる可能性がなくなってしまう。
【0109】
そこで、本実施形態では、第2上流端P2が第1上流端P1よりも上流側又は実質的に同じ位置にする位置設定を行うことにより、不感領域Fの発生を防止し、光ビーコン1Aの受光部11が高速フレームUL2を確実に受信できるようにすることができる。以下、かかる位置設定の方法の具体例を説明する。
【0110】
<6.2 位置設定の具体例>
本実施形態では、受光部11の受信回路31,51(
図5参照)を構成する各増幅回路の増幅率が所定の関係となるように設定する回路設計を行うことにより、「物理的」な最上流端である第2上流端P2が「物理的」な最上流端である第1下流端P1よりも上流側となるように、それらの上流端P1,P2の位置設定を行うようにしている。
【0111】
すなわち、前記のとおり、受光部11の内のPD32を含む通信用受光系26Aは、高速帯域で動作する高速受信回路31を有しており、受光部11の内のPSD52を含む通信用受光系26Bは、低速帯域で動作する低速受信回路51を有している。高速受信回路31及び低速受信回路51には、それぞれ増幅回路が含まれている。
【0112】
ここで、高速受信回路31における受信性能と、低速受信回路51における受信性能の差は、そのまま、高速フレームUL2と低速フレームUL1とを受信可能なエリアの差となって表れる。
したがって、高速受信回路31に含まれる各部分回路の増幅率を乗算した前記第2乗算値σが、低速受信回路51に含まれる各部分回路の増幅率を乗算した前記第1乗算値σ1以上となるような回路設計を行い、高速受信回路31における高速フレームUL2の受信性能を、低速受信回路51における低速フレームUL1の受信性能よりも高くなるようにする。
この回路設計によれば、
図10に示すP1とP2の位置関係が逆転し、高速フレームUL2を実際に受信可能なエリアRA2の最上流端である第2上流端P2が、低速フレームUL1を実際に受信可能なエリアR1の最上流端である第1上流端P1よりも上流側になる。
【0113】
このように、受光部11の高速受信回路31及び低速受信回路51それぞれを構成する増幅回路の増幅率を適切に設定することにより、物理的な最上流端である第2上流端P1が物理的な最上流端である第1上流端P1よりも上流側(或いは、実質的に同じ位置でもよい。)に設定されているので、低速フレームUL1は受信できるが高速フレームUL2を受信できない不感領域Fが生じない。
したがって、不感領域Fにおいて低速フレームUL1が送信されることによって、後続の高速フレームUL2が受信できなくなるのを未然に防止でき、低速フレームUL1の後に送信される高速フレームUL2を適切に受信できる、アップリンク方向でマルチレート対応の光ビーコン1が得られることになる。
【0114】
<7. 付記>
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。