(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917501
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】車両用インストルメントクラスタ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20160428BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20160428BHJP
G01D 11/28 20060101ALI20160428BHJP
G01D 7/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G01D11/28 Z
G01D7/00 K
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-514615(P2013-514615)
(86)(22)【出願日】2011年5月23日
(65)【公表番号】特表2013-535027(P2013-535027A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2011058375
(87)【国際公開番号】WO2011157513
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年4月8日
(31)【優先権主張番号】1054719
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】599023978
【氏名又は名称】デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511139453
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ・ドゥ・ストラスブール
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】ムサ,ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】シモン,クロード
(72)【発明者】
【氏名】ギーディー,アラン
(72)【発明者】
【氏名】バリヨ,ティボー
(72)【発明者】
【氏名】エル・ハフィディ,アイドリス
【審査官】
小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−255488(JP,A)
【文献】
実開昭62−200038(JP,U)
【文献】
特開2004−299545(JP,A)
【文献】
特開2006−103589(JP,A)
【文献】
特開平02−282784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両用インストルメントクラスタ(10)であって、
前記車両の運転者に情報を表示するためのディスプレイスクリーン(14)と、
複数のホログラムの形態で記憶される情報が格納されたホログラフィックメモリ(22)と、
表示されるべき情報を前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出し、前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出される前記情報を前記ディスプレイスクリーン(14)上に表示するために、1つまたはそれ以上の読み取り光ビームを発生させるための光源(18)と、
前記インストルメントクラスタ(10)と一体化されたヘッドアップディスプレイデバイスと
を備え、
前記ヘッドアップディスプレイデバイスは、前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出される情報を前記運転者のヘッドアップ視野内に投影するためのコンバイナ(16)を備え、
前記インストルメントクラスタ(10)は、さらに、前記ホログラフィックメモリ(22)と前記ディスプレイスクリーン(14)との間の光路に配置されたビームセパレータ(24)であって、前記光源(18)によって生成された1つまたはそれ以上の光ビームを、前記ディスプレイスクリーン(14)に差し向けられる第1ビームまたは第1ビーム群と、前記ヘッドアップディスプレイデバイスの前記コンバイナ(16)に差し向けられる第2ビームまたは第2ビーム群とに分割するためのビームセパレータ(24)を備え、
前記ビームセパレータ(24)は、前記ヘッドアップディスプレイデバイスの前記コンバイナ(16)に差し向けられる前記1つまたはそれ以上のビームの発散度を調節するための、湾曲した部分反射鏡を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記ホログラフィックメモリ(22)は、
並進移動および回転移動の少なくとも一方を可能にフレーム(34)に取り付けられたホログラフィックストレージサポート(32)と、
前記ホログラフィックストレージサポート(32)を、前記表示されるべき情報に応じて選択された位置に配置し、該位置に維持するための位置決め手段(36,38,50,52,54,56,58)と
を備えるインストルメントクラスタ(10)。
【請求項3】
自動車両用インストルメントクラスタ(10)であって、
前記車両の運転者に情報を表示するためのディスプレイスクリーン(14)と、
複数のホログラムの形態で記憶される情報が格納されたホログラフィックメモリ(22)と、
表示されるべき情報を前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出し、前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出される前記情報を前記ディスプレイスクリーン(14)上に表示するために、1つまたはそれ以上の読み取り光ビームを発生させるための光源(18)と、
前記インストルメントクラスタ(10)と一体化されたヘッドアップディスプレイデバイスと
を備え、
前記ヘッドアップディスプレイデバイスは、前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出される情報を前記運転者のヘッドアップ視野内に投影するためのコンバイナ(16)を備え、
前記ホログラフィックメモリ(22)は、
並進移動および回転移動の少なくとも一方を可能にフレーム(34)に取り付けられた複数のホログラフィックストレージサポート(32)と、
前記ホログラフィックストレージサポート(32)を、互いに独立して、前記表示されるべき情報に応じて選択された夫々の位置に配置し、該位置に維持するための位置決め手段(36,38,50,52,54,56,58)と
を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項4】
請求項3に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記ホログラフィックメモリ(22)と前記ディスプレイスクリーン(14)との間の光路に配置されたビームセパレータ(24)であって、前記光源(18)によって生成された1つまたはそれ以上の光ビームを、前記ディスプレイスクリーン(14)に差し向けられる第1ビームまたは第1ビーム群と、前記ヘッドアップディスプレイデバイスの前記コンバイナ(16)に差し向けられる第2ビームまたは第2ビーム群とに分割するためのビームセパレータ(24)を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項5】
請求項4に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記ビームセパレータ(24)は、前記ヘッドアップディスプレイデバイスの前記コンバイナ(16)に差し向けられる前記1つまたはそれ以上のビームの発散度を調節するための、湾曲した部分反射鏡を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
1つまたはそれ以上の前記ホログラフィックストレージサポート(32)は、ディスク形態である
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項7】
請求項6に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
1つまたはそれ以上の前記ホログラフィックストレージサポート(32)は、ディスク形態の1つまたはそれ以上の前記ホログラフィックストレージサポートの縁部に設けられた案内システム(38,38)によって、回転移動可能に前記フレーム(34)に取り付けられている
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれか一項に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
1つまたはそれ以上の前記ホログラフィックストレージサポート(32)は、前記表示されるべき情報がホログラムの形態で表面上にエッチングされた透明プラスチック材料製のプレートを備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記ヘッドアップディスプレイデバイスの前記コンバイナ(16)は、前記インストルメントクラスタ(10)内に格納可能である
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記コンバイナ(16)は、回折コンバイナである
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項11】
請求項10に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記ヘッドアップディスプレイデバイスは、ディフューザ支持体(28)を備え、
前記ディフューザ支持体(28)は、前記ホログラフィックメモリ(22)から引き出された情報が前記ディフューザ支持体(28)上に物体像形態で復元され、前記物体像の虚像が前記運転者の前記ヘッドアップ視野内に見えるように構成されている
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記コンバイナ(16)は、部分反射鏡を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記光源(18)から入射された光ビームを複数の読み取り光ビームに分割するために、前記光源(18)と前記ホログラフィックメモリ(22)との間の前記光路に配置された1つまたはそれ以上のビームセパレータ(30)を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のインストルメントクラスタ(10)であって、
前記1つまたはそれ以上の読み取り光ビームによって発生された1つまたはそれ以上のスポットを、前記表示されるべき情報に応じて前記ホログラフィックメモリ(22)内で変位させる走査手段(40,42,44,46,48)を備える
インストルメントクラスタ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両用のインストルメントクラスタ(ダッシュボード)に関し、更に詳細には、使用者(詳細には、運転者)に表示されるべき情報をホログラフィックメモリから復元するクラスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用インストルメントクラスタは、今日、主として、機械的システム(例えば、モータ作動式の針またはゲージを備えたダイヤル)、インジケータ灯、蛍光ディスプレイまたは液晶ディスプレイの組み合わせに基づく。インストルメントクラスタは、代表的には、自動車両の作動に関連する情報、例えば、移動速度、エンジンの回転数、当該車両の燃料レベル、走行距離、および、警告、警報(油圧、ブレーキ液のレベル、ドア開放、等)または作動信号(例えば、サイドライト、ロービームまたはハイビームのヘッドライト、ハンドブレーキの作動、等)を表示するのに使用される。
【0003】
特定の自動車には、情報が運転者の視点から見えるように、情報を外部環境に重ねて表示できるヘッドアップディスプレイデバイスが追加的に設けられる。ヘッドアップディスプレイデバイスは、代表的には、画像、特に車両の機能または運転に関連した情報を含む画像を運転者の視野に虚像の形態で投影するために、コンバイナ(combiner)に向かって差し向けられる光ビームを発生させる投影ユニットを含む。こうしたデバイスは、当初は、航空の用途から得られた技術に基づいて作り出された。従って、こうしたデバイスの製造費は多くの場合、高く、こうしたデバイスの販売や低価格車または中価格車への大規模な導入の妨げとなる性質のものであった。
【0004】
現在知られているヘッドアップディスプレイデバイスは、自動車の前方領域の、運転者の前方に装着され、従って、インストルメントクラスタの近傍にあるが、インストルメントクラスタとは別体のディスプレイユニットであるということに着目されるべきである。従って、設計段階および製造段階の両方でのヘッドアップディスプレイデバイスの装着に係る労力(従って費用も)は比較的大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、装着に係る必要とされる労力が、当該技術の現状のヘッドアップデバイスよりも少ないヘッドアップデバイスを提案できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、先ず第1に、ヘッドアップディスプレイデバイスと一体的に設けられたインストルメントクラスタを提案することと、インストルメントクラスタ上とヘッドアップディスプレイデバイスのそばとに同時に表示できる情報を発生できる光学的回折技術に基づくこととによって、この目的を達成する。インストルメントクラスタのディスプレイとヘッドアップディスプレイとを関連させることによって、安全運転に必要な情報を人間工学的見地から良好に配置できるということは理解されよう。
【0007】
更に詳細には、本発明による、特に自動車両用のインストルメントクラスタは、車両の運転者に情報を表示するディスプレイスクリーン(代表的には、半透明ディフューザスクリーン)と、ホログラムの形態で記憶された情報が格納されたホログラフィックメモリと、ホログラフィックメモリから表示されるべき情報を引き出し、ホログラフィックメモリから引き出された情報をディスプレイスクリーン上に表示するために、1つまたはそれ以上の読み取り光ビームを発生させるための光源と、を含む。インストルメントクラスタと一体化されたヘッドアップディスプレイデバイスは、ホログラフィックメモリから引き出された情報を運転者のヘッドアップ視野内に投影するコンバイナを含む。従って、読み取りビームは、表示されるべき情報を含むメモリの領域を照光し、この情報を、一方では、ディスプレイスクリーン上に復元し、他方では、使用者の視点から見えるように外部環境に重ねる。ディスプレイスクリーンは、好ましくは、ホログラフィックメモリから入射されるビームを所定の大きさの角度および最適のコントラストを有するように向き決めできる光学的特性を分子レベルで有するように構成されている。
【0008】
インストルメントクラスタは、好ましくは、光源によって発生された1つまたはそれ以上の光ビームを、ディスプレイスクリーンに差し向けられる第1ビームまたは第1ビーム群と、ヘッドアップディスプレイデバイスのコンバイナに差し向けられる第2ビームまたは第2ビーム群とに分けるために、ホログラフィックメモリとディスプレイスクリーンとの間の光路に配置されたビームセパレータ、例えば、部分反射鏡を備える。従って、表示されるべき情報は、第1ビームまたは第1光ビーム群によってディスプレイスクリーン上に復元され、コンバイナに差し向けられた第2ビームまたは第2ビーム群によって運転者のヘッドアップ視野上に復元される。
【0009】
ビームセパレータは、好ましくは、ヘッドアップディスプレイデバイスのコンバイナに差し向けられた1つまたはそれ以上のビームの発散度を調節する湾曲した(例えば、放物面をなした)部分反射鏡を含む。
【0010】
有利には、ホログラフィックメモリは、並進移動可能および/または回転移動可能にフレームに取り付けられたホログラフィックストレージサポートと、ホログラフィックストレージサポートを、表示されるべき情報に応じて選択された位置に置き、この位置に維持するための位置決め手段(例えば、1つまたはそれ以上の位置決めモータ、および、これに関連する機構)と、を含む。位置決め手段は、好ましくは、運転者に表示されるべき情報を決定するために、車両のパラメータを入力として(例えば、車両のインタフェースを介して)受け取るように構成された制御ユニットによって制御される。運転者に表示されるべき情報は、これらのパラメータに基づいて決定される。従って、制御ユニットは、表示されるべき情報が格納されたホログラフィックメモリの領域が照光されるように位置決め手段を制御する。
【0011】
本発明の有利な実施例によれば、ホログラフィックメモリは、並進移動可能および/または回転移動可能にフレームに取り付けられた複数のホログラフィックストレージサポートと、ホログラフィックストレージサポートを、互いに独立して、表示されるべき情報に応じて選択された夫々の位置に置き、この位置に維持するための位置決め手段と、を含む。このようにして、同時に表示できる情報の組み合わせの数を大幅に増加できる。
【0012】
1つまたはそれ以上のホログラフィックストレージサポートは、好ましくは、ディスク形態であり、詳細には、ディスク形態の1つまたはそれ以上のホログラフィックストレージサポートの縁部に設けられた案内システムによって回転移動可能にフレームに取り付けられている。従って、ディスクが中央スピンドルに装着される場合とは異なり、このディスクまたはこれらのディスクの中央領域を情報の記憶に利用できる。
【0013】
1つまたはそれ以上のホログラフィックストレージサポートは、表示されるべき情報が表面上にホログラムの形態でエッチングされた透明プラスチック材料製(例えば、ポリカーボネート(PC)製、メチルポリメタクリレート(PMMA)製、ポリエチレンテレフタレート(PET)製)のプレートを含む。このようなストレージサポートの主な利点は、マスタの複製による大量生産に適しているので、単位当たりの費用が低いということである。表示しようとする様々な情報を、マイクロ製造技術によってマスタを製造するのに適した、レーザ干渉リソグラフィまたはホログラムのデジタル生成のいずれかによって記録できる。
【0014】
本発明の1つの有利な実施例によれば、ヘッドアップディスプレイデバイスのコンバイナは、インストルメントクラスタ内に格納できる。このため、使用者は、情報をインストルメントクラスタだけに表示するのか、或いは、ヘッドアップディスプレイデバイスを介しても表示するのかのいずれかを選択できる。
【0015】
コンバイナは、部分反射鏡であってもよいし、回折コンバイナであってもよく、即ち、入射光を使用者の視野に逸らすように構成された光学的回折格子を含んでいる。
【0016】
回折コンバイナの場合には、ヘッドアップディスプレイデバイスは、好ましくは、反射ディフューザ支持体を含み、このディフューザ支持体は、ホログラフィックメモリから引き出される情報を物体像形態で復元し、この物体像の虚像が運転者のヘッドアップ視野内に見えるように構成されている。換言すると、1つまたはそれ以上の光ビームは、予め記録された情報の実像の形態で、表示されるべき情報をディフューザ支持体上に復元する。このとき、コンバイナは、ディフューザ支持体から発せられた拡散光を使用者の視野内に逸らし、かくして、拡散光源が使用者の眼からコンバイナまで延びる軸線の延長上にあるような錯覚を生じさせる。
【0017】
複数の読み取りビームを発生させるために、光源とホログラフィックメモリとの間の光路に、複数の光源、および/または、1つもしくはそれ以上のビームセパレータが使用されてもよい。これらは、光源から入射する光ビームを複数の読み取り光ビームに分ける。
【0018】
本発明によるインストルメントクラスタは、好ましくは、1つまたはそれ以上の読み取り光ビームによって生じる1つまたはそれ以上のスポット(照光点)を、表示されるべき情報に応じてホログラフィックメモリ内で変位させる走査手段を含む。走査手段は、好ましくは、スポットの位置を決定し、その結果、表示されるべき情報を決定する制御ユニットによって制御される。ホログラフィックメモリを位置決めするための手段とともに走査手段を使用する場合、これらの2つの手段は、好ましくは、制御ユニットによって制御される。この場合、制御ユニットは、種々の可能な移動を調整する。
【0019】
本発明のその他の特徴は、幾つかの有利な実施例の以下の詳細な説明を、添付図面を参照して読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好ましい実施例による、ヘッドアップディスプレイデバイスと一体的に設けられたインストルメントクラスタの外観図である。
【
図2】
図1のインストルメントクラスタの部分分解図である。
【
図3】
図2に示すビームマルチプライヤの斜視図である。
【
図4】
図2に示すホログラフィックメモリの斜視図である。
【
図5】
図1のインストルメントクラスタの光路を示す概略断面図である。
【
図6】
図1のインストルメントクラスタの変形例による、インストルメントクラスタの光路を示す概略断面図である。
【
図7】情報をホログラムの形態で記録するための構成の概略図である。
【
図8】ホログラフィックストレージディスクの概略正面図である。
【
図9】本発明の別の好ましい実施例による、ヘッドアップディスプレイデバイスと一体的に設けられたインストルメントクラスタの外観図である。
【
図10】
図9のインストルメントクラスタの第1の変形例の図である。
【
図11】
図9のインストルメントクラスタの第2の変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、ヘッドアップディスプレイデバイスと一体的に設けられた自動車両用インストルメントクラスタ10の外観を示す。インストルメントクラスタ10は、略円筒形状のケース12を含み、自動車両の作動に関する情報を表示できる様々な構成要素がケース12内に一体的に設けられている。運転者の方を向くようにされたインストルメントクラスタ10の側部には、半透明光拡散材料製のディスプレイスクリーン14が設けられており、表示されるべき情報がここに投影される。インストルメントクラスタ10は、更に、ヘッドアップディスプレイデバイスによって、情報を外部環境に重ねて表示できる。ヘッドアップディスプレイ用の情報は、運転者の眼から、一体のヘッドアップディスプレイデバイスのコンバイナ16まで延びる軸線の延長上に見え、この情報が、風よけ(例えば、フロントガラス)の前方に、運転者の眼から特定の距離(例えば、1m乃至5m)に表示されているという錯覚を運転者に生じさせる。
【0022】
図2は、
図1のインストルメントクラスタの部分分解図である。
図5は、
図2のシステムの概略縦断面図である。光学システムは、ディスプレイスクリーン14およびコンバイナ16に加えて、光源18(例えば、レーザ)、光ビームマルチプライヤ20、ホログラフィックメモリ22、ビームセパレータ24、偏向ミラー26およびディフューザ支持体28を含む。
【0023】
光源18は、光ビームを発生させる。この光ビームは、光ビームマルチプライヤ20によって複数の読み取りビームに分けられる。光ビームマルチプライヤ20は、反射率が異なるn個(図示の例では、n=3である)の鏡30のセットを含み、分割されたビームの光強度が少なくともほぼP/nに等しいように構成されている。Pは、光源の光強度である。
図2の例では、光路上の第1鏡30および第2鏡30は、夫々、反射率が33%と50%の部分反射鏡である。第3鏡30は、反射率がほぼ100%に近い鏡である。従って、ビームマルチプライヤ20は、n個の読み取りビームを、メモリ22の異なる領域に向けて、および/または、異なる角度で送り返し、ホログラムの形態で記憶された情報を読み取る。
【0024】
図3は、ビームマルチプライヤ20の後側を示す。鏡30は、位置決めシステムによって回転移動可能かつ並進移動可能に取り付けられている。位置決めシステムおよび鏡は、n個の読み取り光ビームによって発生した1つまたはそれ以上のスポットをホログラフィックメモリ22内で変位させるための走査システムを形成する。鏡30のセットは、支持プレート上に支持されている。支持プレートは、モータ40により、ウォーム42を介して回転駆動できる。鏡30は、別のモータ44、歯車46およびベルト48のアッセンブリによって回転駆動される。かくして、各鏡30を、入射ビーム(光源18から入射する)および読み取りビームを含む平面に対して実質的に垂直な夫々の軸線を中心として回転するように形成できる。かくして、ビームマルチプライヤ20の位置決めシステムによって、メモリ22のホログラフィックストレージディスク32上での読み取りビームの入射角度および位置を変えることができ、従って、入射角度およびスポットの位置に応じて引き出す情報を変えることができる。
図1および
図3に示すビームマルチプライヤ20の位置決めシステムは、複数の鏡30間の角度を保存し、従って、n個の光ビームの入射角度を個々に制御することはできない。これを行う必要がある場合には、各鏡30に個々の位置決めシステムが設けられるべきである。
【0025】
図2および
図4に示すように、ホログラフィックメモリ22は、並進移動可能且つ回転移動可能にフレーム34および機械式位置決めシステムに取り付けられたホログラフィックストレージディスク32(例えば、ポリカーボネート、PMMA、またはPETで形成されている)を含む。機械式位置決めシステムは、ディスク32を、表示すべき情報に応じて選択された位置に移動させ、その位置に保持する。機械式位置決めシステムは、ディスク32の縁部に固定された歯付きリム36を含む。リム36は、モータ50に連結された歯車38によって駆動され、これによってディスク32を回転移動できる。かかる厳選された形態によって、必要な情報を記録する上でディスク32の表面全体を使用できる。これは、回転軸線のところでモータによって回転駆動されるシステムとは異なり、ディスクの外縁部で回転案内されるためである。ディスク32上に符号化された情報の読み取りを更に最適化するために、回転移動は、軸線xおよび軸線yに沿った2つの並進移動と組み合わされる。回転と2つの並進とを組み合わせることにより、ディスク32の表面全体を光学的方法でカバーできる。各並進は、モータ52、54の夫々によって行われる。これらのモータは、夫々、ウォーム56,58を駆動する。
【0026】
ビームマルチプライヤ20およびホログラフィックメモリ22の両方の位置決め手段は、制御ユニット(図示せず)によって制御される。制御ユニットは、車両のパラメータ(例えば、速度、燃料レベル、等)を入力として受け取り、これらのパラメータから、運転者に表示されるべき情報(記憶された画像)を演繹し、それによって、表示されるべき情報が格納されたホログラフィックメモリの領域の各々が、適切な入射角度で照光される。
【0027】
ホログラフィックメモリからの読み取り時に、読み取りビームによる照光は、記録時の「参照」波(ビーム)の角度で行われる。これにより光を回折し、これが「物体」波(ビーム)を再生する。ホログラフィックストレージディスク32での回折後、読み取りビームは、表示されるべき情報で「表示」される。表示されるべき情報の記録パラメータは、記憶された画像が実像としてディスプレイスクリーン14上に再生されるように選択される。
【0028】
ホログラフィックストレージディスク32を通過した後、ビームセパレータ24は、読み取りビームを、ビームセパレータ24を透過してディスプレイスクリーン14に当たる第1ビーム群と、ヘッドアップディスプレイデバイスに向かって反射される第2ビーム群とに分割する。ビームセパレータは、反射ビームの発散度を調節し、大きさを最小にするために、部分反射放物面鏡(例えば、反射率が50%)の形態で製造される。偏向ミラー26は、反射ビームをディフューザ支持体28に向かって逸らし、ここで記憶された情報の別の実像が再生される。
【0029】
ディフューザ支持体28上で発生した散乱光は、回折コンバイナ16(これは、例えば、ポリカーボネート、PMMAまたはPETで形成されている)が配置されている場合には、回折コンバイナ16によって運転者に向かって逸らされる。好ましくは、回折コンバイナ16の光回折格子は、拡大機能(運転者に提供される虚像の大きさを調節する)、および、実風景に関係付けつつ運転者の視野での虚像の位置を調節する機能も行う。
【0030】
コンバイナ16は、歯車列62および歯付きベルト64を駆動するモータ60を含む機構によってケース12内に格納することができる。これらの構成要素は、ケース12の後方プレート66上に保持されている。コンバイナは、偏心軸線を中心として回転できるように収容されている。これにより、運転者が選択した作動モード(即ち、ヘッドアップディスプレイの有無)に応じて、出したり再び入れたりすることができる。コンバイナ16を出したり再び入れたりするために、その他の手段を用いてもよいということは理解されよう。例えば、コンバイナを偏心回転させるシステムを使用する代りに、並進移動によってコンバイナを出したり再び入れたりするように構成されたシステムを設けてもよい。
【0031】
図6は、
図2のシステムの変形例の縦断面図を示す。
図6のインストルメントクラスタは、ディフューザ支持体28の代りに偏向ミラー28’を使用する点と、回折コンバイナ16の代りに反射コンバイナ16’を使用する点とによって、
図2および
図5に示すインストルメントクラスタと区別される。
図6の場合には、反射コンバイナ16’は、平らな部分反射鏡(反射率が約60%)である。しかしながら、特に、運転者に表示される虚像の大きさと、虚像が配置される距離とを調節するために、湾曲した部分反射鏡を使用してもよい。
【0032】
ホログラフィックストレージディスク32は、情報を含む画像のホログラムの形態で情報を記憶できる。ホログラフィックストレージディスク32を前方から見た概略図を
図8に示す。ホログラム68は、複数の同心円をなして配置されている。メモリ領域がディスク32の表面のほぼ全体に広がっている。ディスクの機械的駆動装置は、この表面全体を情報の記憶に使用できるように構成されている。表示可能な全ての情報は、ディスク32に予め記録されており、また、車両のパラメータ、または、運転者に特定の情報を表示することを必要とする他の状況のパラメータに応じて読み取られる。各画像は、下記の事項を考慮して記録される。即ち、
・ディスク上でのその位置
・画像の読み取り時および表示時のディスクの向き
・読み取りビームの入射方向
・読み取りビームの波長
・回折ビームの必要とされる方向(従って、ディスプレイ手段上での画像の位置)
・回折ビームの必要とされる発散度
等
【0033】
ホログラフィックメモリの同じ領域に様々なホログラムを重ねることができる(多重ホログラム)ことに着目されたい。これは、これらのホログラムが1つまたはそれ以上の読み取りビームの様々な入射方向に対応するのであれば可能である。かくして、メモリの所要の領域において、各入射角度が、表示情報の一部分と対応する。ホログラムの多重化によって、大量の情報を記憶できる。
【0034】
ホログラフィックストレージディスクを製造するために考えられるプロセスには、デジタルホログラフィおよびアナログホログラフィが含まれる。
【0035】
デジタルホログラフィプロセスでは、表示されるべき画像、読み取りパラメータ(例えば、読み取りビームの波長、入射角度、読み取りビームによって生じるスポットの大きさ、等)および表示パラメータ(例えば、表示手段上の画像の位置および大きさ等)に応じて、コンピュータが回折構造、即ち、ホログラムを計算する。計算は、例えば、反復法、FDTD法(有限差分時間領域法)、EMT(有効媒質理論)等に基づいて行われる。回折構造のデジタルモデルが最終的に得られる。次いで、これがマイクロ製造技術によって書き込まれる。好ましくは、最初に、フォトリソグラフィまたは電子ビームリソグラフィによってホログラフィックストレージディスクのマスタが製造され、次いで、マスタから大量製造プロセスによってコピーが作られる。マスタは、例えば、珪素または水晶等の材料で形成され、次いで、プラスチックの複製のための金型を製造するのに使用される。
【0036】
ホログラフィックメモリの製造にレーザ干渉リソグラフィを選択した場合には、好ましくは、
図7に示すように行われる。レーザビーム70は、ビームセパレータ72(例えば、部分反射鏡)によって2つのビームに分割される。かくして得られたビームの一方は、拡げられた後、レンズ73のアッセンブリによってコリメートされる。コリメートされたビームは、透過型液晶スクリーン74を照光し、これによって、記録されるべき画像がビームに「乗せられる」(物体波76を形成する)。画像の位置およびその大きさは、デジタル処理で選択され、その結果、液晶スクリーン74が制御される。次いで、物体波76を収束レンズに通し、ホログラムの大きさを調節する(これは、1mm
2よりも小さくてもよい)。他方のビーム(参照波78)は、複数の鏡80に差し向けられ、硬質支持体(例えば、ガラスプレート)上に広がって形成された感光性樹脂層82内で物体波76と重ねられる。物体波76と参照波78との干渉によって、感光層82に記録されるホログラムが形成される。
【0037】
図7の記録の全体は、特に、複数のホログラムを連続して記録するように構成されている。このシステムによって、参照波を感光層上に様々な入射方向で差し向けることができる。かくして、感光層82の同じ領域において複数のホログラムを多重化できる。読み取り時には、記録時に使用されたのと同じ入射角度でホログラフィックストレージディスクに当てた読み取りビームを使用して、様々な情報ピースが引き出される。
図7は、参照波78が、先ず、回転移動可能な鏡によって反射されることを示す。鏡は、参照波を鏡M1および鏡M2のいずれかに差し向ける。参照波78を鏡M1に当てることによって、第1ホログラムが記録される。次いで、液晶スクリーン74上に形成された画像が変更され、参照波78を鏡M2に当てることによって、感光層82を支持するプレートを移動することなく、別のホログラムが記録される。この手順を参照波78の他の入射角度について繰り返してもよい。感光層82の同じ場所で多重化できるホログラムの数は、感光性媒体の飽和状態で決まる。
【0038】
感光層82を支持するプレートは、ホログラムを感光層の全面に亘って記録するために、好ましくは、回転移動可能(感光層に対して垂直な軸線を中心として)および/または並進移動可能(感光層の平面内で)に取り付けられている。
【0039】
物体波76および参照波78は、感光性樹脂82の層に干渉縞を形成し、これによって、樹脂の可溶性の空間で変調が生じる。かくして、感光性樹脂の露光された領域の可溶性は、他の領域よりも大きくなるか或いは小さくなる。次いで、ケミカルエッチングによって、未露光領域(または、感光性樹脂の種類、すなわち、負または正に応じた露光領域)が除去され、表面回折構造を得ることができる。次いで、記録されたホログラムの合成材料(例えば、ポリカーボネート、PMMAまたはPVB)製のコピーを大量複製するために、レリーフ状の回折構造が金型に転写される。
【0040】
読み取り時には、ホログラムが記録されたディスクの領域に、ディスクに対して垂直方向からの角度αで読み取りビームが差し向けられる。その結果、復元される画像は、この領域に角度αで記録された画像である。回折方向は、物体波の方向に対応する。表示されるべき画像を含む回折ビームの発散度は、物体波の断面の低減に使用される収束レンズの焦点距離を選択することによって決定される。
【0041】
ホログラフィックメモリに記憶される情報の密度を高めるために、複数のホログラフィックストレージディスクを重ねることができる。これらのディスクは、互いに取り付けられていてもよく(例えば、互いに積み重ねられていてもよく)、一方が他方に対して移動可能であってもよい。第1の場合では、全てのディスクに対して単一の回転および/または並進システムを使用できる。他の場合では、複数のディスクについて別々に回転および/または並進システムが必要とされる。複数の独立したディスクを設けることによる利点は、表示可能な情報の組み合わせに対する柔軟性が向上することである。
【0042】
本発明の別の好ましい実施例によるインストルメントクラスタを
図9乃至
図11に示す。インストルメントクラスタ10’は、2つのディスプレイスクリーン14’および14’’と、一体化されたヘッドアップディスプレイデバイスとを含む。インストルメントクラスタ10’のコンバイナ16’’は、格納式になっている。
図10の変形例によれば、コンバイナ16’’は、並進移動して(矢印84で示す)、インストルメントクラスタ10’のケースに対して出たり入ったりする。
図11の変形例によれば、コンバイナ16’’は、回転移動して(矢印86で示す)。インストルメントクラスタ10’のケースに対して出たり入ったりする。
【0043】
格納機構のその他の変形例が本発明の範疇で可能である。例えば、コンバイナ16,16’,16’’を回転と並進とを組み合わせた移動によって、および/または、コンバイナ16,16’,16’’を前方または後方に傾けることによって、出したり再格納したりできる。
【符号の説明】
【0044】
10,10’…インストルメントクラスタ
12…ケース
14,14’,14’’…ディスプレイスクリーン
16…コンバイナ(回折コンバイナ)
16’…反射コンバイナ
16’’…コンバイナ
18…光源
20…ビームマルチプライヤ
22…ホログラフィックメモリ
24…ビームセパレータ
26…偏向ミラー
28…ディフューザ支持体
28’…偏向ミラー
30…鏡
32…ホログラフィックストレージディスク
34…フレーム
36…リム
38…歯車
40…モータ
42…ウォーム
44…モータ
46…歯車
48…ベルト
50,52…モータ
56,58…ウォーム
60…モータ
62…歯車列
64…歯付きベルト
66…後方プレート
68…ホログラム
70…レーザビーム
72…ビームセパレータ
73…レンズ
74…透過型液晶スクリーン
76…物体波
78…参照波
80…鏡
82…感光性樹脂
84,86…矢印
M1,M2…鏡