(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917507
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】タイコグラフィ法によるプローブのキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20 20060101AFI20160428BHJP
G01T 1/29 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
G01N23/20 370
G01T1/29 A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-517534(P2013-517534)
(86)(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公表番号】特表2013-534633(P2013-534633A)
(43)【公表日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】GB2011051205
(87)【国際公開番号】WO2012001397
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年4月15日
(31)【優先権主張番号】1010822.3
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511079229
【氏名又は名称】フェーズ フォーカス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー メイデン
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/064051(WO,A1)
【文献】
特表2012−511147(JP,A)
【文献】
特開2005−062054(JP,A)
【文献】
Andrew M.Maiden et al.,An improved ptychographical phase retrieval algorithm for diffractive imaging,Ultramicroscopy,2009年 9月,Vol.109 No.10,pp.1256-1262
【文献】
Martin Dierolf et al.,Ptychographic coherent diffractive imaging of weakly scattering specimens,New Journal of Physics,2010年 3月31日,Vol.12,pp.035017-1〜035017-14
【文献】
THIBAULT,P. 他,“High-Resolution Scanning X-ray Diffraction Microscopy”,SCIENCE,2008年 7月18日,Volume 321, Number 5887,Pages 379-382,SOM: NPL 12-004685,URL,DOI: 10.1126/science.1158573
【文献】
PIERRE THIBAULT,HIGH-RESOLUTION SCANNING X-RAY DIFFRACTION MICROSCOPY: SUPPORTING ONLINE MATERIAL,SCIENCE,2008年 7月18日,Volume 321, Number 5887,Pages 1-10,URL,www.sciencemag.org/cgi/content/full/321/5887/379/DC1
【文献】
VINE,D.J. 他,“Ptychographic Fresnel coherent diffractive imaging”,PHYSICAL REVIEW A,2009年12月 8日,Volume 80,Article 063823, 5 Pages
【文献】
Martin Dierolf et al.,Ptychographic X-ray computed tomography at the nanoscale,nature,2010年 9月23日,Vol.467,pp.436-439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
G01B 15/00−15/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標対象物の領域のイメージを構築するためのイメージデータを提供する方法であって、
少なくとも1つの検出器によって検出された放射強度に基づく基準目標対象物の基準回折パターンを提供するステップと、
前記基準回折パターンに基づいて、プローブ関数のための初期推測を決定するステップであって、前記プローブ関数のための前記初期推測は、前記基準目標対象物のプローブ領域に入射した放射線の平均強度に基づくものであるところのステップと、
前記プローブ関数のための前記初期推測、及び、対象物関数のための初期推測に基づく反復プロセスによって、少なくとも1つの検出器によって検出された放射強度に応じた目標対象物のためのイメージデータを決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出器によって検出された放射線は、前記基準目標対象物から反射されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの検出器によって検出された放射線は、前記基準目標対象物中を伝達されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブ関数のための前記初期推測を用いて、1つの目標対象物又は複数の目標対象物のためのイメージデータを決定する、請求項1から3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記基準目標対象物は、イメージデータが決定される最初の目標対象物である、請求項1から4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記基準目標対象物は、キャリブレーションの目的のみに用いられる目標対象物である、請求項1から4の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
プローブ関数のための初期推測を決定するステップが、
前記基準目標対象物の前記プローブ領域に入射した前記放射線の平均強度を、前記基準回折パターンに基づいて推定し、
前記プローブ関数のための前記初期推測が、推定された平均強度と等しい平均強度を有するように、前記プローブ関数のための前記初期推測を選択する
ことを含む、請求項1から6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記平均強度を推定することが、
前記基準回折パターンについて高速フーリエ変換を行って、複数の複素数のマトリックスを生成し、
複数の前記複素数の複数の絶対値を加算して、実数を生成する
ことを含み、
前記プローブ関数のための前記初期推測を選択することが、
前記実数の平方根を求めて、実数値Nを生成し、
前記プローブ関数Pのための前記初期推測を、P=MN/K、但し、Mは前記プローブ領域を表すマトリックスであり、Kは規格化因子である、になるように選択する
ことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Kは、マトリックスMにおける値の和である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブ領域の評価を提供するステップを更に含み、
マトリックスMにおける値が、評価されたプローブ領域外においてはゼロであり、評価されたプローブ領域内では1であり、
Kは、マトリックスMにおける複数の1の値に等しい、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータによって実行可能な複数の指示を含む機械可読データ記憶媒体であって、コンピュータによって実行されるときに、請求項1から10の何れか1つによる方法を実施する機械可読データ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標対象物の領域のイメージを構築するために利用することが可能なタイプのイメージデータを提供するための方法及び装置に関する。本発明は、特に、これに限定されるものではないが、未知のプローブ関数を利用した反復プロセスを用いて、この種のイメージデータを提供する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標対象物(場合により、「試料」と呼ぶ)についての空間的情報を導き出すための多くの種類のイメージング技術が知られている。しかしながら、多くの場合、明視野顕微鏡等の従来の手段によって目標試料を直接的に撮像することはできない。例えば、従来の透過イメージングにおいては、平面波光によって、対象物が照射される。対象物によって散乱した複数の波は、イメージを形成するためのレンズによって、再び干渉を受ける。超短波長撮像(X線又は電子線)の場合にこの技術は、収差及び不安定性に関する様々な周知の問題を有しており、この収差及び不安定性は、結果的に得られるイメージの解像度及び判読性を制限するレンズによって生ずる。典型的なものとして、実現可能な解像度は、理論的限界値よりも数倍大きい。他のタイプのイメージ技術も知られているが、これらの多くは、解像度の制限、長いデータ収集時間、又は、複雑で高価な器具を必要とすること等の問題を有している。
【0003】
多くの場合、試料が入射放射線を散乱させるところの方向を測定することによって、試料の特性のうちの幾つかを引き出すことができる。試料から少し離れた位置において散乱した放射線の分布は、回折パターンとして知られており、放射線が十分な可干渉性を有している場合には、その回折パターンを測定することから試料のイメージを形成することができる。このようなイメージを形成するための1つの技術をタイコグラフィ法と呼ぶ。ここで、「プローブ」として知られた、十分な可干渉性を有する波面によって、目標試料は照射されるが、その強度は、局部的な側部内に集中し、そこにおいて、試料と相互作用を起こす。1組の複数の回折パターンは次いで、各パターンが、試料及びプローブの異なる相対的な側部の位置に対応するように、1つ又は複数の検出器によって記録される。これらの位置が選択され、その結果として、試料の問題の領域が、プローブの複数の重複する位置によってカバーされる。高い解像度のイメージ技術の一例が国際公開公報WO2005/106531号に開示されている。同公報をあらゆる目的のために引用することによって、ここに組み入れるものとする。国際公開公報WO2005/106531号に開示された技術は、現在では当業者により、タイコグラフィカル反復エンジン(又はPIE)と呼ばれている。これは、目標対象物の位置で放射線源からの入射放射線を提供し;上記目標対象物によって散乱した放射線の強度を少なくとも1つの検出器によって検出し、そして、上記目標対象物に対する入射放射線又は目標対象物の後ろのアパーチャを高い解像度で位置決めすることなしに、検出された強度に対するイメージデータを提供し;検出された上記強度を用いて、目標対象物の領域のイメージを構築するためのイメージデータを生成することを含んでいる。伝達関数や照度関数等の、移動可能な緩やかに変化するプローブ関数を利用した反復プロセスを用いて、上述したイメージデータを生成することもできる。
【0004】
PIEは、1組の複数の回折パターン測定値から、対象物の領域に関するイメージデータを回収するための絶好な技術を提供するものである。波面の強度は、局部的な側部内に集中し、そこにおいて、対象物と相互作用を起こすという要件の下で、各回折パターンは、可干渉性の放射線の周知の波面で対象物を照射することによって形成される。このような波面の例として、これが平面波によって、又は、平面波によって照射された凸レンズによって生成された焦点によって照射された場合には、アパーチャを越えて少し離れて形成されるものである。対象物が平面波光によって照射され、目標対象物の後ろのアパーチャを用いて、対象物の領域によって散乱した照射を選択するという状況に対してもこの技術は適用可能である。
【0005】
この意味で、回折パターンは、対象物を越えて少し離れたところで、光波面の伝搬方向に対して垂直な平面において、光学的配置によって生じる強度の分布である。この位置は測定平面と呼ばれ、この面で行われた測定はΨ
k(u)で表わされる。ここで、uは適切な座標ベクトルである。測定平面と試料の面との間の距離が小さい場合に、回折パターンは近接場回折パターンとして呼ばれることに留意すべきである。この距離が大きい場合に、回折パターンは遠視野回折パターンと呼ばれる。
【0006】
タイコグラフィ法は、CCDカメラ等の適切な記録デバイスを用いて測定平面で記録された幾つかの回折パターンを利用するものである。対象物の横の位置、及び、局部的な光波面は、各パターン毎に異なっている。
【0007】
PIEの制約は、有用なイメージデータを提供するために、プローブ関数(例えば、目標対象物の後ろのアパーチャと関連する伝達関数、又は、入射放射線に関連する照射関数)の特性を知り、評価しなければならないことである。これは時間の掛る設定技術を必要とし、用いられたプローブ関数が正確でない場合には、不正確な問題を生ずる。
【0008】
PIEのこの制約を処理する技術が、国際公開公報WO2010/064051号に開示されている。同公報をあらゆる目的のために引用することによって、ここに組み入れるものとする。国際公開公報WO2010/064051号に開示された技術は、拡張タイコグラフィカル反復エンジン、又は、ePIEと呼ばれている。この技術は、プローブ波面のおおまかな初期推定、及び、目標試料のおおまかな初期推定から始まる。ePIEの各反復によって、プローブと試料の最新の推定値が生成される。初期推定は正確である必要はない。プローブの形状において、おおまかな初期推定のみが与えられたイメージを生成することはアルゴリズムで可能である。しかしながら、アルゴリズムによって正確なイメージを生成しない場合もある。場合によっては、ePIEの各反復によって、以前の反復から生じたものよりも正確でない試料及びプローブの推定値を生成し、アルゴリズムが逸れると言われることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述した問題を少なくとも部分的に軽減することである。
【0010】
タイコグラフィ法は、反射モード(照射ビームが目標試料から反射する)又は伝達モード(照射ビームが目標試料中に伝達する)の何れにおいても実施される撮像に適用できる。ここで、伝達(transmission/transmissive/transmit)という用語を用いた場合には、反射(reflection/reflective/reflect)という用語を同様に用いてもよかったと理解すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、目標対象物の領域のイメージを構築するためのイメージデータを提供する方法であって、
少なくとも1つの検出器によって検出された放射強度に基づく基準目標対象物の基準回折パターンを提供し、前記基準回折パターンに基づいて、プローブ関数のための初期推
測を決定し、前記プローブ関数のための前記初期推
測、及び、対象物関数のための初期推
測に基づく反復プロセスによって、少なくとも1つの検出器によって検出された放射強度に応じた目標対象物のためのイメージデータを決定することを含む方法が提供される。
【0013】
前記少なくとも1つの検出器によって検出された放射線は、前記基準目標対象物から反射されたもの、又は、前記基準目標対象物中を伝達されたものであってもよい。
【0014】
前記プローブ関数のための前記初期推
測を用いて、1つの目標対象物又は複数の目標対象物のためのイメージデータを決定するものでもよい。
【0015】
前記基準目標対象物は、
イメージデータが決定される最初の目標対象物で
あるものでもよい。
【0016】
前記基準目標対象物は、キャリブレーションの目的のみに用いられる目標対象物であってもよい。
【0017】
プローブ関数のための初期推
測を決定することが、前記基準目標対象物のプローブ領域に入射した放射
線の平均強度を、前記基準回折パターンに基づいて推定し、前記プローブ関数のための前記初期推
測が、推定された平均強度と等しい平均強度を有するように、前記プローブ関数のための前記初期推
測を選択することを含んでいてもよい。
【0018】
平均強度を推定することが、前記基準回折パターンについて高速フーリエ変換を行って、複数の複素数のマトリックスを生成し、複数の前記複素数の複数の絶対値を加算して、実数を生成
することを含み、前記プローブ関数のための前記
初期推測を選択することが、前記実数の平方根を求めて、実数値Nを生成し、前記プローブ関数Pのための前記初期推
測を、P=MN/K、但し、Mは前記プローブ領域を表すマトリックスであり、Kは規格化因子である、になるように選択することを含んでいてもよい。
【0019】
Kは、マトリックスMにおける値の和であってもよい。
【0020】
前記プローブ領域の評価を提供することを更に含んでいてもよく、マトリックスMにおける値が、評価されたプローブ領域外においてはゼロであり、評価されたプローブ領域内では1であり、Kは、マトリックスMにおける複数の1の値に等しい。
【0021】
また、本発明は、コンピュータによって実行可能な複数の指示を含む機械可読データ記憶媒体であって、コンピュータによって実行されるときに、上記方法を実施する機械可読データ記憶媒体を提供する。
【0022】
本発明の実施態様を適用して、プローブ関数の反復改善中に発散の尤度を減少又は消去させることによって、ePIE法及びシステムの性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施形態を単なる一例として添付図面を参照して以下に説明する:
【
図2】プローブ関数と、目標対象物がある場合の回折パターンの形成とを示す図である。
【
図4】プローブ関数と、目標対象物がない場合の回折パターンの形成とを示す図である。
【
図5】プローブ関数と、キャリブレーション対象物がある場合の回折パターンの形成とを示す図である。
【
図6】目標対象物の領域の高解像度イメージを構築するために用いられるイメージデータを提供するための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面において、同一の符号は同一の構成要素を示す。
【0025】
図1は、目標対象物の構造に関する情報に対応するイメージデータを決定するために、散乱パターンをどのように展開し使用するかを示している。当然のことながら、用語「目標対象物」とは、放射線の散乱を生じさせる入射放射線の経路に置かれた試料又は物品をいう。また当然のことながら、この目標対象物は、入射放射線に対して少なくとも部分的に透過的である。この目標対象物は、特定の反復構造を有していてもよく、又は、これを有していなくてもよい。又は、この目標対象物は、散乱パターンを反射した放射線に基づいて測定する場合には、全体又は部分的に反射特性を有していてもよい。
【0026】
入射放射線10は目標対象物11に当てられる。用語「放射線」とは、放射源からのエネルギーとして広義に解釈すべきであることは当然である。これは、X線、電子及び/又は音波等の放出粒子を含む電磁放射線を含むものである。このような放射線は、波動関数Ψ(r)によって表わされる。この波動関数は、当業者によって理解されているように、実数部と虚数部とを含んでいる。これは、波動関数係数及び位相によって表わされる。Ψ(r)
*はΨ(r)の複素共役であって、Ψ(r)Ψ(r)
*=|Ψ(r)|
2であり、ここで|Ψ(r)|
2は、波動関数に関して測定される強度である。
【0027】
入射放射線10は、試料11を通過してこれを越えるときに散乱される。存在する入射放射線の波動関数として、試料は、この試料の目標の前の側における入射放射線の波動関数に関する振幅及び位相の双方において変更される。生じ得る散乱は、フーリエ回折、屈折、及び/又はフレネル回折、及び、他のタイプの散乱を含み、ここにおいて、入射放射線の特性が、試料の後に伝播された結果として変更される。CCD検出器12等の配列された複数の検出器が、試料から遠く離れて配置され、回折平面13で回折パターンが形成される。複数の検出器12が、試料から距離D(このDは、回折パターンが、点光源から有効に形成されるのに十分に長い距離である)だけ離れて位置している場合には、フーリエ回折パターンが形成されることになる。複数の検出器を近く位置させることによって、回折平面が試料に近接して形成される場合には、フレネル回折パターンが形成されることになる。
【0028】
入射放射線10は、目標対象物11の第1の面に当る。入射放射線は、試料で散乱を生じ、伝達された放射線は、回折平面13に伝播され、そこで、回折パターンが形成される。
【0029】
図2は、
図1のプロセスをより詳細に示している。放射線10は、例えば、弱いレンズによっておおよその位置で焦点に合わせられ、その結果として、目標対象物の第1の面の領域が照射される。この弱いレンズは、勿論、1組の複数のプレート、及び、電子ビーム用の電圧供給手段、又は、X線用の反射面等の適切な焦点装置を備えていてもよい。この弱く集まる焦点は、厳密な放射ビームを実質的に制限するのに十分である。勿論、強く集束された放射線を用いることは可能であるが、放射線を強く集束させる必要はない。ここで、目標対象物は、対象物関数O(r)を提供し、これは、問題の対象物を通過する結果としての入射波内に導入される位相及び振幅の変化を表している。目標対象物で入射した照射に係る放射線は、プローブ関数P(r)を示しており、これは、レンズや他の光学部品によって形成されるコースティック又は照射プロファイルによって生じる照射関数を形成する。P(r)は、対象物の面で求められるこの波動場の不動の複素数値である。出射波関数Ψ(r,R)は、散乱放射線が目標対象物の下流側の面を出るときの、この散乱放射線を限定する。この出射波が空間を通って伝播されるときに、これは、回折平面13で回折パターンΨ(u)を形成することになる。
【0030】
勿論、弱い(又は実に強い)焦点調節を対象物に対して行うこと以外に、対象物の後ろのアパーチャを用いて、非集束の照射を用いることも可能である。アパーチャを目標対象物の後ろに位置させて、調査用の目標の領域を選択する。このアパーチャはマスクに形成されており、従って、このアパーチャは、「サポート」を定義する。サポートとは、関数がゼロでないところの関数の領域である。換言すれば、このサポート以外では、関数はゼロである。従って、サポート以外では、マスクは放射線の透過を阻止する。用語「アパーチャ」とは、放射線の局部伝達関数をいう。これを、0から1の間のモジュラス値を有する二次元の複素変数で表わすことができる。様々な透過率の物理的なアパーチャの領域を有するマスクがその例である。
【0031】
従って、入射放射線は試料の上流側に当り、これが伝播されると、試料によって散乱が生ずる。従って、試料波O(r)は、対象物との相互作用の後、放射線の出射波関数として形成される。このように、O(r)は二次元の複素関数を表して、O(r)(但し、rは二次元座標である)における各点は、複素数であるこれと関連を有していたものである。O(r)は出射波を物理的に表わしており、これは、平面波によって照射された対象物から発せられる。例えば、電子の散乱の場合には、問題の対象物を通過した結果として、入射波中に導入された位相及び振幅の変更を表すものである。このアパーチャは、プローブ関数P(r)(又は伝達関数)をもたらし、これは、分析のための対象物の出射波関数の一部を選択する。勿論、アパーチャを選択すること以外に、透過回折格子又は他のこの種のフィルター関数を、目的物関数の下流側に位置させてもよい。プローブ関数P(r−R)は、アパーチャ伝達関数であり、アパーチャは位置Rに置かれている。このプローブ関数を、モジュラス及び位相によって与えられる複素数値を伴った複素関数として表わすことができ、このモジュラス及び位相は、プローブによって、そこに入射する完全平面波に導入されるモジュラス及び位相の変更を表す。
【0032】
出射波関数Ψ(r,R)は、放射線がアパーチャを出るときのこの放射線の出射波関数である。この出射波関数Ψ(r,R)は、回折平面での回折パターンΨ(u)を形成する。ここで、rは実空間におけるベクトル座標であり、uは回折空間におけるベクトル座標である。
【0033】
散乱した放射線を検出するところの回折平面を試料側に近接するように移動させた場合には、
図1に関して記載された、形成に係るアパーチャを有する実施態様、及び、
図2に関して記載された、アパーチャを有しない実施態様の双方によって、フーリエ回折パターンでなく、フレネル回折パターンを検出する。この場合、出射波Ψ(r,R)から回折パターンΨ(u)までの伝播関数は、フーリエ変換ではなく、フレネル変換である。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る反復プロセスを示しており、この反復プロセスを用いて、特定のタイプのイメージデータを回復することができ、この特定のタイプのイメージデータを用いて、1組の回折パターンから対象物の領域のイメージを構築することができる。ここに示された反復プロセス30は、対象物における推測31、及び、用いられたプローブ関数の形成における推測32から始まる。次いで、これらの初期推
測は、反復プロセスにおいて推測を実施することによって置き換えられる。イメージ関数のためのこれらの初期推
測は、ランダム分布であってもよく、また、他の測定又は事前に行われた計算に基づく、事前に計算された近似であってもよい。プローブ関数のための初期推
測について以下に詳述する。複数の試料ポイントにおいて推測をモデル化する。従って、これらは、マトリックスによって表わされる。これらのマトリックスは、コンピュータ又は他のこの種の処理装置によって格納され、処理される。これらの試料ポイントは、適切に等間隔に配置され、矩形状のアレイを構成する。k回の反復後のプローブ関数の推測をP
k(r)で表わし、k回の反復後に回収されたイメージをO
k(r)で表わす。従って、プローブ関数及び対象物関数のための最初の推測は、それぞれP
0(r)及びO
0(r)であり、ここにおいて、rは適切な座標ベクトルである。
【0035】
対象物及びプローブ関数の相対位置に関する現時点の並進{へいしん}ベクトルをR
kで表わせば、推測に係る対象物分布とプローブ関数との間の相互作用は下式によってモデル化される:
【数1】
【0036】
これは現時点での出射波面である。本発明の実施形態によれば、反復プロセスを用いて、対象物の推測33を更新する。更新されたプローブ関数の推測34もまた反復計算される。
【0037】
対象物の更新に関して言えば、第1のステップは、ステップ35において、出射波面Ψ(r,R
k)を決定することである。これは、上記式1を用いて行われる。次のステップは、この出射波面を測定平面まで伝播させることであり、これは、コヒーレント波面のための伝播の適切なモデルを用いて実行される。この伝播を作用素Tによって表わす。
【数2】
【0038】
ステップ36において示された順変換係数Tは、伝播された波面Ψ
k(u)を生成する。ここで、uは測定平面における基準座標である。Ψ
k(u)は複素数値であるため、これを下記の通り表わすことができる:
【数3】
【0039】
次いで、モデル化されたこの波面を測定された回折パターンと比較しなければならない。対象物での推定が正しい場合には、次の等式がkの値毎に適用できる。
【数4】
【0040】
伝播された出射波面のモジュラスは、記録された回折パターン強度の平方根と等しい。一般的にはそうではないが、対象物での推測に係るものは、試料ポイントにおける真の対象物を正確に表わすものではない。相等しいことを強化するために、伝播された出射波面のモジュラスを、下記の通り、記録された回折パターン強度の平方根で置き換える:
【数5】
【0041】
ステップ37において、伝播された出射波面のモジュラスが、記録された回折パターン強度の平方根で置き換えられる。
【0042】
次いで、補正された波面は、逆伝播作用素を用いて、対象物の平面に伝播される:
【数6】
【0043】
この逆伝播ステップ39は、補正された出射波面Ψ’
k(r,R
k)を提供する。次いで、更新ステップ40の演算が行われて、改善された対象物の推測値O
k+1(r)を生成する。更新ステップ40は、下記に従って実施される:
【数7】
【0044】
この更新関数は、
図3においてU1と表示されており、これは、対象物の推測O
k+1(r)の更新を生成する。パラメータaは、対象物の変化率を左右する。この数値が高くなると、更新に係る対象物の推測における安定性が欠如するに至るため、この数値を0から2の間に調節すべきである。本発明の実施形態によれば、プローブ関数を、対象物関数とほぼ同様に再構築する。プローブ関数の推測は対象物の推測の更新と共に実行させる。(勿論、プローブ関数を任意的に、対象物関数よりも多い又は少ない回数で更新することも可能である)。これを実施するために、キャリブレーション回折パターンとして作用する更なる回折パターンを、システムから取り除かれた目標対象物と共に、測定平面において記録してもよい。このキャリブレーション回折パターンを、目標対象物を位置する前に、又は、上述した回折パターンを測定した後に目標対象物を取り除いた後で、記録してもよく、また、目標対象物を正しく位置する前後に記録された複数の回折パターンの組合せであってもよい。また、キャリブレーション回折パターンを、目標対象物の代わりに、キャリブレーション対象物511と共に、測定平面に記録してもよい。また、キャリブレーション回折パターンを、目標対象物を位置させる前に記録したり、又は、上述した以前の回折パターンの測定後、目標対象物を取り除いた後に記録してもよく、また、目標対象物を正しく位置する前後に記録された複数の回折パターンの組合せであってもよい。又は、キャリブレーション回折パターンを、目標対象物の代わりに、キャリブレーション対象物511と共に、測定平面に記録してもよい。この場合もまた、このキャリブレーション回折パターンを、目標対象物を位置させる前に記録したり、又は、上述した以前の回折パターンの測定後、目標対象物を取り除いた後に記録してもよく、また、目標対象物を正しく位置する前後に記録された複数の回折パターンの組合せであってもよい。キャリブレーション対象物511は、既知数の対象物関数を有する対象物であり、従って、測定された回折パターンと、対象物関数からプローブ関数を導き出すことができる。
【0045】
即ち、プローブ関数そのもののキャリブレーション回折パターンを、目標対象物なしで記録してもよい。この回折パターンの測定について、
図4に示す。
図5には他の配列が示されており、ここにおいては、目標対象物の代わりに、既知数の対象物関数を有するキャリブレーション対象物511を用いて、キャリブレーション回折パターンを測定する。キャリブレーション回折パターンは、測定値Ω
p(u)として示される。
【0046】
ステップ32では、P
0(r)が、以下に詳述するように、プローブ関数の初期推
測として選ばれる。以上に詳述した修正/更新ステップと同様に、更新ステップ46を行うことによって、更新関数U2を用いる。この更新関数は以下の通りである:
【数8】
【0047】
この更新関数の結果として、プローブ関数のための現行の評価値が生成される。パラメータβは、プローブの推測値の変化率を左右する。この数値が高くなると、更新に係る対象物の推測における安定性が欠如するに至るため、この数値を0から2の間に調節すべきである。プローブ関数のための現行の評価値をステップ35で用いて、出射波面を生成してもよい。
【0048】
幾つかの実施形態において利用することが可能な、
図3の反復方法の代替手段が国際公開公報WO2010/064051号に記載されている。
【0049】
上述したように、アルゴリズムの逸れに起因して、このアルゴリズムでは正確なイメージを生成することができない場合がある。本発明者等は、プローブ波面の強度がその初期推定値に正確に組み入れられない場合に、この逸れが生ずることを発見した。モデル化された(推定された)強度が過度に大きかったり、又は、小さかったりした場合に、ePIEの各反復によって、試料とプローブとの推定値が生成されるが、これらの推定値は、以前の反復から生じた推定値よりも正確ではなく、従って、アルゴリズムが逸れる。
【0050】
本発明の実施形態によれば、基準試料を用いて測定された基準回折パターンを利用したePIEに、プローブの強度の初期推定を与えることによって、この逸れを回避し、少なくする。この回折パターンを、目標試料から測定されたものと同様に記録してもよく、また、これらのパターンのうちの1つを実際に、幾つかの実施形態において、基準回折パターンとして用いてもよい。測定に係るものが、基準試料から反射される放射線である場合には、基準回折パターンは、入射プローブの強度の大部分を反射する試料の領域からのものであることが好ましい。測定に係るものが、基準試料中を透過した放射線である場合には、基準回折パターンは、入射プローブの強度の大部分を伝播する領域からのものであることが好ましい。これにより、基準回折パターンの強度がプローブの強度とほぼ等しくなることが確保される。基準試料の選択を特に限定するものでなく、上述したように、目標試料であってもよい。また、キャリブレーション対象物511を用いて、キャリブレーション回折パターンを決定する場合には、このキャリブレーション回折パターンを、基準回折パターンとして用いてもよい。
【0051】
測定された回折パターンを用いて、プローブの領域における試料に入射した放射線のパワーを計算する。次いで、プローブの領域に関する適切な知識と共に、このように計算されたパワーを用いて、プローブの領域全体に亘る入射放射線の平均強度、又は、平均振幅を導き出す。ここで、用いられたプローブの領域とは、測定に係る回折パターンを生ぜしめる、試料の領域を意味する。
【0052】
一例としてのこの実施形態によれば、初期のプローブが、基準回折パターン(例えば、基準試料を用いて測定された強度)に高速フーリエ変換(FFT)を実施することによって形成される。これにより、複素数のマトリックスが得られ、次いで、その絶対値を加算して、プローブの領域に入射した放射線のパワーの代表値を得る。次いで、その合計値の平方根を求めて、プローブの領域全体に取り入れられた放射線のRMS振幅を代表する、単一の実数値Nを得る。ここで、この領域についての評価を行う。この領域外では、真のプローブが強度において低レベルになって、プローブの形状が荒れる。これは、コンピュータにおいて、マトリックスMによって示され、その値は、プローブが閾値強度未満であると考えられるゼロ(0)と、閾値超であると考えられる一(1)である。Mにおける1の合計値を算出して、実数値Kを得る。次いで、初期プローブの推定値は、コンピュータにおいて、マトリックスPによって表わされる。
【数9】
【0053】
即ち、マトリックスMにおける各項にNを乗じ、Kによって
除算する。この結果とし得、プローブ関数の初期推
測が得られ、この推
測は、プローブの領域全体において平均化された入射放射線とほぼ同一の振幅を有し、従って、ほぼ同一の強度を有する。プローブ関数の初期推
測は、プローブの近接領域以外ではゼロであり、プローブの領域内では、一定の均一な値である。
【0054】
当業者には明らかなように、上述した数学的な演算の幾つか又はすべてをコンピュータを用いて実施することができる。
【0055】
これらの実施形態によれば、適切な強度を有するプローブ関数のための初期推
測を提供し、測定された基準回折パターンに基づいて、推測に係るプローブ関数の強度を推測に係る平均強度になるように選択することによって、プローブ関数の反復改善中における逸れの尤度を減少又は除去させる。
【0056】
幾つかの好ましい実施形態においては、プローブの強度の推定値を、複数の目標試料からの複数の反復アルゴリズムプロセスにおいて用いてもよい。即ち、調査に係る目標試料毎のためにプローブの強度の初期推
測を収集しなくてもよい。
【0057】
図6は、イメージデータを提供するための装置を示しており、この装置は、
図1及び2に示された上述した実施形態による目標対象物の領域の高解像度イメージを構成するために使用される。放射線源50は、目標11の選択された領域に弱集束させるレンズ51上に照射をもたらす。入射放射線は、入射波関数52と出射波関数53とを有している。この出射波関数は、距離Dに亘って伝播され、そこにおいて、複数の検出器12上に回折パターンが形成される。この距離Dは、伝播に係る出射波関数53が遠視野においてフーリエ回折パターンを形成するように、十分に長いことが有利である。この検出器アレイは、少なくとも1つの検出器を提供し、これは、目標対象物11によって散乱した放射線の強度を検出することができる。位置決め手段54が設けられており、これは、マイクロアクチュエータであってもよく、これは、目標対象物を、目標対象物に関して所望の1又は複数の位置に位置決めすることができる。このようにして、源50からの放射線が、目標11の上流側の面の異なる複数の位置に入射される。
【0058】
また、伝播に係る出射波関数53が近視野において検出器配列上にフレネル回折パターンを形成するように、距離Dを十分に短くすることが有利な場合がある。
【0059】
制御ユニット55は、制御信号をマイクロアクチュエータに供給し、検出器アレイ12における複数のピクセル検出器の各々からの強度測定結果を受け取る。この制御ユニット55は、マイクロプロセッサ56及びデータ格納手段57を、ユーザインターフェースと共に含んでおり、このユーザインターフェースは、ユーザディスプレイやユーザ入力キーパッドを含んでいてもよい。この制御ユニットは、遠隔制御用のラップトップ59又はPC等の更なる処理デバイスに接続される。また、この制御ユニット55を、ラップトップやPCによって提供してもよいことは勿論である。制御ユニット55は、イメージデータの生成をリアルタイムで自動的に制御する。また、ユーザは、ユーザインターフェース58を用いて、イメージング用の目標対象物の複数の領域を選択したり、更なるユーザ入力を提供したりすることができる。
【0060】
使用中に、放射線源50は、レンズ51に放射線を供給する。目標対象物11は、制御ユニット55の制御下において、アクチュエータ54によって選択的に位置決めされる。この放射線は回折パターンを形成し、これは、検出器アレイ12における複数の検出器の各々によってそれぞれの位置で検出される。これらの検出器からの検出結果は、制御ユニットに入力され、データ格納手段57に格納される。イメージデータを導き出すために単一の位置のみを用いる場合には、マイクロプロセッサは、このように検出された情報を、上述したアルゴリズムに関する情報を含むプログラム指示と共に用いて、イメージデータを導き出す。しかしながら、イメージデータをファイナライズするために1又はそれを超える更なる位置が必要な場合には、制御ユニットは、次いで、アクチュエータ54に信号を発し、このアクチュエータは、試料を他の選択された位置に移動させる。このアクチュエータは、試料を数多くの異なる位置のうちの1つに位置させることもできる。再位置決めの後に、検出器アレイ上に形成された更なる回折パターンを測定し、その結果を制御ユニットに格納する。一例として、アレイ12は、1200×1200ピクセルのCCDアレイであってもよい。更なる強度測定を必要としない場合には、この段階でイメージデータが、上述したアルゴリズムを用いた2組の新たに格納された結果に従って、制御ユニットによって生成される。生成されたままのイメージデータを表示したり、このイメージデータから生成された高解像度イメージを、PC上又はこの種の装置上のユーザインターフェース1209又は遠隔ディスプレイ上に表示してもよい。代替えとして、又は、付加的に、イメージデータそのものを利用して、(例えば、予め決定された値に対して比較されるデータ値によって)目標対象物に関連する特性を決定することもできる。
【0061】
アクチュエータを用いて、目標対象物を光学経路外に移動させて、目標対象物なしの回折パターンを測定することを可能にすることもできる。また、この移動を、他のアクチュエータ(図示せず)やユーザインターフェースによって行ってもよい。
【0062】
本発明の更に他の実施形態によれば、拡散器が目標の後ろのアパーチャを覆っている。この拡散器は、目標からの波面を拡散して、試料に入射した放射線を、測定された回折パターンにおいて、すべての回折角度に亘ってより均一に拡散させる。拡散器の位置に関して、照射関数又はプローブ関数を回復するために必要な測定を実施することによって、拡散器の効果を自動的に良好に回復することができる。従って、この拡散器は、目標からの波面を任意の方向に拡散するものでもよく、拡散器の特質を先験的に認識しておく必要はない。
【0063】
このような拡散器を用いることによって、回折パターンのダイナミックレンジを減少させる。大半の検出器は限定されたダイナミックレンジを有しているので、回折パターンのダイナミックレンジを減少させることによって、回折パターンのより忠実な表現を決定することができる。更に、試料に入射する放射線は、あらゆる回折角度に亘って広がるので、イメージデータを提供するために必要な入射束を減少させ、これによって、目標対象物に対して与える損傷の可能性を少なくすることができる。
【0064】
任意の伝達関数を有する如何なるタイプの拡散器を用いてもよい。当業者によって理解されているように、拡散器の選択は、使用される放射線の特性と、所望の拡散効果に依存する。例えば、可視光の場合は、拡散器を、すりガラスの拡散器から構成してもよい。
【0065】
本明細書中の発明の詳細な説明と特許請求の範囲にわたり、「含む(comprise)」および「含む(contain)」およびこれらの変化形は、「含むがこれに限定されるものではない」ことを意味し、他の部分、追加、要素、数値、またはステップを排除することを意図するものではない(そして排除するものではない)。本明細書中の発明の詳細な説明と特許請求の範囲にわたり、文脈が要求しない限り、単数は複数を含む。特に、不定冠詞が使用されるところには、文脈が要求しない限り、単数と同様に複数も考慮しているものとして明細書を解釈すべきである。
【0066】
発明の特定の側面、実施形態又は実施例と併せて記述された特徴、数値、特性、要素、化学的な部分またはグループは、ここに記述されたものと矛盾しない限り、ほかの側面、実施形態、または例にも適用可能であると解釈すべきである。本明細書(添付した特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴のすべて、及び/又は、このように開示された方法又はプロセスのステップのすべてを、これらの特徴及び/又はステップの少なくとも幾つかが相互に限定されるところの組合せを除き、如何なる組合せにおいてどのように組み合わせてもよい。本発明は、上述した実施形態の詳細な事項に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付した特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴のうちの新規な何れか1つ、又は、新規な組合せ、又は、このように開示された方法又はプロセスのステップのうちの新規な何れか1つ、又は、新規な組合せに及ぶものとする。
【0067】
読者の注意は、本願に関して本明細書と同時に、又は、それに先んじて提出され、本明細書と共に公衆の縦覧に付されるすべての書類及び文書に向けられるものであり、これらの書類及び文書の内容を、引用によりここに組み入れるものとする。