特許第5917517号(P5917517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917517分散染料組成物およびそれを用いる疎水性繊維材料の染色法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917517
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】分散染料組成物およびそれを用いる疎水性繊維材料の染色法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/22 20060101AFI20160428BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20160428BHJP
   D06P 1/20 20060101ALI20160428BHJP
   D06P 3/54 20060101ALI20160428BHJP
   C09B 25/00 20060101ALN20160428BHJP
   C09B 57/06 20060101ALN20160428BHJP
   C09B 1/54 20060101ALN20160428BHJP
   C09B 1/50 20060101ALN20160428BHJP
   C09B 5/62 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   C09B67/22 D
   C09B67/22 F
   C09B67/20 F
   D06P1/20
   D06P3/54 Z
   !C09B25/00 B
   !C09B57/06
   !C09B1/54
   !C09B1/50
   !C09B5/62
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-526891(P2013-526891)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2012069188
(87)【国際公開番号】WO2013018713
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-167995(P2011-167995)
(32)【優先日】2011年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳山 博満
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/058209(WO,A1)
【文献】 特開平06−345989(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067027(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/073696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B、D06P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される黄色系分散染料、および下記式(2)で示される黄色系分散染料を含む黄色系分散染料組成物、
下記式(3)で示される赤色系分散染料、および下記式(4)で示される赤色系分散染料を含む赤色系分散染料組成物、ならびに
下記式(5)で示される青色系分散染料、および下記式(6)で示される青色系分散染料を含む青色系分散染料組成物
を含有する分散染料組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

[式中、nは1〜4の整数である。]
【化6】

[式中、RはCHとCOCHの混合物である。]
【請求項2】
黄色系分散染料(1)と黄色系分散染料(2)の重量比率が3:97〜15:85であり、および/または、赤色系分散染料(3)と赤色系分散染料(4)の重量比率が99:1〜85:15であり、および/または、青色系分散染料(5)と青色系分散染料(6)の重量比率が85:15〜70:30である請求項1に記載の分散染料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分散染料組成物を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色法。
【請求項4】
請求項3に記載の染色法で染色された疎水性繊維材料。
【請求項5】
請求項4に記載の疎水性繊維材料を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散染料組成物およびそれを用いる染色法に関する。さらに詳しくは、特定の分散染料を含有した分散染料組成物およびそれを用いる疎水性繊維材料の染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装材料に用いられる合成繊維材料は、自動車内が高温多湿になることや太陽光に露光される時間が他の一般衣料繊維材料に較べ格段に長いため、強い耐温度性や耐光性を要求される。これを解決するために耐光性の強い染料を用いて繊維を染色する方法がとられている。しかし、黄色系染料、赤色系染料、青色系染料の各々の耐光性のバランスが違っていると長時間の露光により一部の色だけが退色を起こす結果、これらの染料による染色物の変色が、時間の経過により次第に大きく見えるようになるという事態が生じやすい。このため使用される黄色系染料、赤色系染料、青色系染料には同じように退色してゆくバランスの取れた耐光性が要求されるが、そのような染料は得られていない。
【0003】
また、合成繊維材料の糸の太さや糸の形状の違い、使われるポリエステル繊維に他の材料を混紡した混紡繊維等の違いにより、同じ染色法においても染色濃度、染色色調等が異なってくる。このように形状、性質の異なる合成繊維材料を毎回、同じように染色加工するために、各種染色条件でも染色再現性にすぐれた染料が要求されている。特に自動車内装材料の染色には、出来るだけその環境条件に対し堅牢度の強い分散染料を使用して染色を行う必要がある。しかし同時に染色特性が揃っていないと、染色された合成繊維材料の染色再現性に違いが出てきてしまう。
【0004】
一方、近年エネルギー消費の節減が唱えられ、染色における作業工程においてもエネルギー使用量の削減、即ち染色温度や時間の低減が求められている。現在、合成繊維材料の中で最も多く使用されているポリエステル繊維を染色するには分散染料が用いられ、通常100℃以上の温度にて染色が行われる。しかし、ポリエステル繊維等をバランス良く均一に染色するためには130℃以上にする必要があり、多くのエネルギーを消費することになる。この染色温度を少しでも下げられれば大きな省エネルギーにつながる。
【0005】
そこで、黄色系染料、赤色系染料、青色系染料の各色の耐光堅牢度が強くかつ揃っており、さらに、温度を下げて染色しても染色時の再現性が良い分散染料組成物と染色法が求められている。しかし、以下の特許文献1〜3を含む先行技術文献には、各種の分散染料組成物が開示されているものの、前記のような要求を満足する染料組成物は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−23254号公報
【特許文献2】特開2004−168950号公報
【特許文献3】国際公開第2007/058209号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、黄色系染料、赤色系染料、青色系染料の各色の耐光堅牢度が強くかつ揃っており、さらに、温度を下げて染色しても染色時の再現性が良い分散染料組成物と染色法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、以下に規定される本発明によって達成される。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、下記の特定の各種分散染料を組みあわせることによって、三原色の分散染料が強くバランスの良い耐光堅牢度を持ち、かつ、染色時の染色温度を下げても染色特性が揃い再現性に優れた分散染料組成物、ならびにそれを用いた染色法を見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の態様は、以下のとおりである。
[1].下記式(1)で示される黄色系分散染料、および下記式(2)で示される黄色系分散染料を含む黄色系分散染料組成物、
下記式(3)で示される赤色系分散染料、および下記式(4)で示される赤色系分散染料を含む赤色系分散染料組成物、ならびに
下記式(5)で示される青色系分散染料、および下記式(6)で示される青色系分散染料を含む青色系分散染料組成物
を含有する分散染料組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

[式中、nは1〜4の整数である。]
【化6】

[式中、RはCHとCOCHの混合物である。]
[2].黄色系分散染料(1)と黄色系分散染料(2)の重量比率が3:97〜15:85であり、および/または、赤色系分散染料(3)と赤色系分散染料(4)の重量比率が99:1〜85:15であり、および/または、青色系分散染料(5)と青色系分散染料(6)の重量比率が85:15〜70:30である上記[1]項に記載の分散染料組成物。
[3].上記[1]または[2]項に記載の分散染料組成物を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色法。
[4].上記[3]項に記載の染色法で染色された疎水性繊維材料。
[5].上記[4]項に記載の疎水性繊維材料を含む物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明による特定の分散染料を含む三原色(黄色系、赤色系および青色系)の分散染料組成物の各々を含有する分散染料組成物、さらに、この分散染料組成物を用いて染色した合成繊維材料は、環境条件に対する優れた耐光堅牢度を持ち、かつ、三原色の耐光堅牢度のバランスも良いという特性を有し、加えて、該分散染料組成物は、染色時の良好な再現性を維持しつつ染色温度を低く抑えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の分散染料組成物は、前記式(1)で示される黄色系分散染料および前記式(2)で示される黄色系分散染料を含む黄色系分散染料組成物、前記式(3)で示される赤色系分散染料および前記式(4)で示される赤色系分散染料を含む赤色系分散染料組成物、ならびに、前記式(5)で示される青色系分散染料および前記式(6)で示される青色系分散染料を含む青色系分散染料組成物を含有する。
【0012】
式(1)で示される黄色系分散染料は、C.I.Disperse イエロー 64である。この分散染料は、公知文献に基づいて製造することもできるが、市販の染料を使用することもできる。
式(2)で示される黄色系分散染料については、ベンゾイミダゾール構造のフェニル基に置換するメトキシ基の置換位置は特に限定されず、混合物であってもよい。例えば、C.I.Disperse イエロー 71として公知である染料が挙げられる。また、この分散染料は、公知文献に基づいて製造することもできるが、市販の染料を使用することもできる。
黄色系分散染料(1)と黄色系分散染料(2)の重量比率は、3:97〜15:85が好ましい。
【0013】
式(3)で示される赤色系分散染料は、C.I.Disperse レッド 60である。この分散染料は、公知文献に基づいて製造することもできるが、市販の染料を使用することもできる。
式(4)で示される赤色系分散染料は、C.I.Disperse レッド 91である。この分散染料は、公知文献に基づいて製造することもできるが、市販の染料を使用することもできる。
赤色系分散染料(3)と赤色系分散染料(4)の重量比率は、99:1〜85:15が好ましい。
【0014】
式(5)で示される青色系分散染料については、臭素原子の置換数、置換位置は置換可能であれば特に限定されず、それらの混合物であってもよい。例えば、C.I.Disperse ブルー 56として公知である染料が挙げられる。また、この分散染料は、公知文献に基づいて製造することもできるが、市販の染料を使用することもできる。
式(6)で示される青色系分散染料は、Rについて混合物であり、例えば、C.I.Disperse ブルー 204が挙げられる。この分散染料は、公知文献に基づいて製造することもできるが、市販の染料を使用することもできる。
青色系分散染料(5)と青色系分散染料(6)の重量比率は、85:15〜70:30が好ましい。
【0015】
本発明の分散染料組成物において、黄色系分散染料組成物、赤色系分散染料組成物及び青色系分散染料組成物の各々の重量割合は、所望の染色の色合い次第であり、(0重量%超100重量%未満である限りは)特に限定されるものではないが、例えば、通常0重量%超99.99重量%以下、典型的には0重量%超99.9重量%以下、より典型的には0重量%超99重量%以下、さらに典型的には0重量%超98重量%以下であってよい。
【0016】
本発明の分散染料組成物には、色合いを調整するため、若しくは、耐光堅牢度、染色特性等を調整するために、さらに他の分散染料を混合して使用することができる。他の分散染料は、染色時に加えて使用してもよい。
同様にして分散染料以外の染料、例えば、直接染料、反応性染料、塩基性染料等を混合して使用することもできる。他の染料や染色薬剤は、染色時に加えて使用してもよい。
その他、本発明の分散染料組成物は、水等の溶剤、後記のキャリヤーや後記の分散剤を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の分散染料組成物は、分散染料の各原末を必要量混合した後、微粒子化(分散化)処理を施して所望の分散染料組成物としてもよい。または、これらの各染料原末について別々に微粒子化(分散化)処理を施した後、混合してもよい。後者にあっては、染浴中で個々に微粒子化(分散化)処理を施された分散染料を添加して染浴中にて形成させてもよい。微粒子化(分散化)処理には、通常、後記のように分散剤を使用する。また、微粒子化された分散染料組成物に、後記の分散剤を後から加えてもよい。
【0018】
一般的に微粒子化処理としては、ナフタレンスルホン酸とアルキルベンゼンスルホン酸とのホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールと2−ナフトール−6−スルホン酸とのホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物等の分散剤;リグニンスルホン酸等のアニオン性分散剤;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、ポリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性分散剤;前記のアニオン性分散剤と前記の非イオン性分散剤との混合物等と、分散染料原末とを、少量の水の存在下で、ボールミルあるいはサンドミル等の粉砕機を用いて、通常0.2〜2μ程度になるまで十分に湿式粉砕する方法が挙げられる。
【0019】
本発明の分散染料組成物は、例えば、微粒子化されたままの液状乃至ペースト状で、あるいは、スプレ−乾燥法等により乾燥してから染色に供される。
【0020】
次に、本発明の分散染料組成物を用いる疎水性繊維材料の染色法について説明する。該疎水性繊維材料としては、特に限定されないが、合成繊維材料であるポリエステル(PET)繊維、カチオン可染ポリエステル(CDP)繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維またはこれら同士の混紡品が挙げられる。さらに、これらとレーヨン等の再生繊維あるいは木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡品であってもよい。また、前記疎水性繊維材料の太さとしては、特に限定されないが、平均の太さが0.1〜10d(デニ−ル)程度が好ましい。
【0021】
該染色法としては、本発明の分散染料組成物を溶解した水性媒体中に該繊維材料を浸漬し、加圧下、好ましくは105℃以上、更に好ましくは110℃〜140℃で、好ましくは30分〜1時間染色することができる。特に好ましくは120℃〜130℃で30分〜45分染色することができる。また、o−フェニルフェノールやトリクロロベンゼン等のキャリヤーの存在下、例えば、水の沸騰状態で染色することもできる。あるいは、本発明の分散染料組成物の染料分散液を布にパディングし、150〜230℃で30秒〜1分間の乾熱処理を施す、所謂サーモゾル方式での染色も可能である。
【0022】
一方、本発明の分散染料組成物を用いて、天然糊剤(例えば、ローカストビーンガム、グアーガム等)、加工糊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、加工ローカストビーンガム等)、合成糊剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸等)等とともに捺染糊を調製し、布に印捺した後にスチーミングまたはサーモゾル処理を施す捺染法による染色を行なってもよい。
【0023】
また、本発明の分散染料組成物にグリセリンあるいはジエチレングリコール等の不乾性剤を添加して得たインクを調製し、パディング等によって予め糊剤等が付与された布に、インクジェット方式のプリンターを用いてプリントした後、スチーミングまたはサーモゾル処理するインクジェット捺染法による染色を行ってもよい。
【0024】
染色する際に本発明の分散染料組成物の使用量は任意であるが、例えば、3デニ−ルの繊維材料を使用する場合には0.05〜20%o.w.f.(対繊維重量)程度が好ましく、0.2〜10%o.w.f.程度が特に好ましい。
【実施例】
【0025】
以下の実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例において、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
【0026】
[参考例1]
前記式(1)で示される黄色系分散染料(C.I.Disperse イエロー 64を使用;以下「分散染料(1)」と称する。)の原末7.8部、前記式(2)で示される黄色系分散染料(C.I.Disperse イエロー 71を使用;以下「分散染料(2)」と称する。)の原末92.2部を合わせ、これらの原末の合計量と同量の分散剤(デモールN:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)を加えて微粒子化処理を行って、黄色系分散染料組成物(A−1)を製造した。
【0027】
[参考例2]
前記式(3)で示される赤色系分散染料(C.I.Disperse レッド 60を使用;以下「分散染料(3)」と称する。)の原末90部、前記式(4)で示される赤色系分散染料(C.I.Disperse レッド 91を使用;以下「分散染料(4)」と称する。)の原末10部を合わせ、これらの原末の合計量と同量の分散剤(デモールN:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)を加えて微粒子化処理を行って、赤色系分散染料組成物(B−1)を製造した。
【0028】
[参考例3]
前記式(5)で示される青色系分散染料(C.I.Disperse ブルー 56を使用;以下「分散染料(5)」と称する。)の原末75部、前記式(6)で示される青色系分散染料(C.I.Disperse ブルー 204を使用;以下「分散染料(6)」と称する。)の原末25部を合わせ、これらの原末の合計量と同量の分散剤(デモールN:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)を加えて微粒子化処理を行って、青色系分散染料組成物(C−1)を製造した。
【0029】
[参考例4]
参考例1と同様に、分散染料(1)の原末10部、分散染料(2)の原末90部を用いて黄色系分散染料組成物(A−2)を製造した。
【0030】
[参考例5]
参考例2と同様に、分散染料(3)の原末95部、分散染料(4)の原末5部を用いて赤色系分散染料組成物(B−2)を製造した。
【0031】
[参考例6]
参考例3と同様に、分散染料(5)の原末70部、分散染料(6)の原末30部を用いて青色系分散染料組成物(C−2)を製造した。
【0032】
[参考例7]
参考例1と同様に、分散染料(1)の原末5部、分散染料(2)の原末95部を用いて黄色系分散染料組成物(A−3)を製造した。
【0033】
[参考例8]
参考例2と同様に、分散染料(3)の原末97部、分散染料(4)の原末3部を用いて赤色系分散染料組成物(B−3)を製造した。
【0034】
[参考例9]
参考例3と同様に、分散染料(5)の原末80部、分散染料(6)の原末20部を用いて青色系分散染料組成物(C−3)を製造した。
【0035】
[実施例1]
参考例1の黄色系分散染料組成物(A−1)0.131%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例2の赤色系分散染料組成物(B−1)0.050%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例3の青色系分散染料組成物(C−1)を0.061%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0036】
[実施例2]
参考例4の黄色系分散染料組成物(A−2)0.131%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例5の赤色系分散染料組成物(B−2)0.050%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例6の青色系分散染料組成物(C−2)0.061%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0037】
[実施例3]
参考例7の黄色系分散染料組成物(A−3)0.131%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例8の赤色系分散染料組成物(B−3)0.050%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例9の青色系分散染料組成物(C−3)0.061%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0038】
[比較例1]
市販のダイスター社のDianix Yellow HLAを0.094%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Red HLAを0.032%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Blue HLAを0.079%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0039】
[試験例1]
[耐光堅牢度試験]
フェードメーター(ブラックパネル温度:89℃±3℃、84メガジュール)キセノンランプを用いて、162W/平方メートル、144時間条件で、染色物に光照射し、照射部分の変褪色をJIS L−0804の変褪色用グレースケールにて判定した。
実施例1の135℃で染色したポリエステル染色布、実施例2、実施例3で染色したポリエステル染色布の耐光堅牢度は、すべて4−5級であった。
比較例1の135℃で染色したポリエステル染色布の耐光堅牢度は3−4級であった。
【0040】
また、実施例1の135℃で染色したポリエステル染色布、実施例2、実施例3で染色したポリエステル染色布の表裏の色を比較してみたところ、すべて表裏の色の差が小さかった(一見して明らかな相違は目視されなかった)。それとは対照的に、比較例1の135℃で染色したポリエステル染色布の表裏の色の差は大きかった(相違が一見して明らかであった)。
【0041】
[実施例4]
参考例1の黄色系分散染料組成物(A−1)0.262%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例2の赤色系分散染料組成物(B−1)0.100%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例3の青色系分散染料組成物(C−1)0.122%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0042】
[実施例5]
参考例1の黄色系分散染料組成物(A−1)0.524%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例2の赤色系分散染料組成物(B−1)0.200%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例3の青色系分散染料組成物(C−1)0.244%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0043】
[比較例2]
市販のダイスター社のDianix Yellow HLAを0.187%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Red HLAを0.064%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Blue HLAを0.158%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0044】
[比較例3]
市販のダイスター社のDianix Yellow HLAを0.374%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Red HLAを0.128%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Blue HLAを0.316%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0045】
[試験例2]
実施例1、実施例4、実施例5、比較例1、比較例2、比較例3で染色した各ポリエステル染色布について、分光測色器(Macbeth社製Color−Eye 3100)にて色相を測定した。135℃の染色布の色相を標準として、120℃、125℃、130℃の各々の染色布の色相の差ΔEを表1に示す。色相の差ΔEは、小さいほど優れている。すなわち、135℃の染色布の色相(標準)に対するより低い温度の色相の差ΔEが小さいほど、低下された温度での染色時の良好な再現性が実証される。
【0046】
[表1]各温度条件の染色布の色相の差ΔE
【0047】
実施例1、実施例4、実施例5に較べて比較例1、比較例2、比較例3の染色布は、染色温度が下がると色相差が大きくなってしまい、125℃以下では実用に耐えないものであった。逆に言えば、比較例1、比較例2、比較例3に較べて実施例1、実施例4、実施例5の染色布は、染色温度が下がっても色相差が格段に小さかった。
【0048】
[実施例6]
実施例2において、染色温度を120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度とし、染色時間を10分、30分及び60分の各々の時間とした以外は同じ条件で染色を行い、各々の染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0049】
[比較例4]
比較例2において、染色温度を120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度とし、染色時間を10分、30分及び60分の各々の時間とした以外は同じ条件で染色を行い、各々の染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0050】
[試験例3]
実施例6、比較例4で染色した各ポリエステル染色布について、分光測色器(Macbeth社製Color−Eye 3100)にて色相を測定した。各例の135℃、60分の染色布の色相を標準として、120℃、125℃及び130℃、並びに、10分、30分及び60分の各々の染色布の色相の差ΔEを表2に示す。上記同様、低下された温度での染色時の良好な再現性の観点から、色相の差ΔEは小さいほど優れている。
【0051】
[表2]各温度及び各時間条件の染色布の色相の差ΔE
【0052】
実施例6の分散染料組成物は、比較例4の分散染料組成物に較べて染色温度が低くなっても、また、染色時間が短くなっても色相差が小さかった。
【0053】
以上の結果から明らかなように、本発明の分散染料組成物は、市販の分散染料組成物と比べ疎水性繊維材料を染色した際に優れた耐光堅牢度を示した。さらに、本発明の分散染料組成物は、太さの異なる疎水性繊維材料を表裏とする繊維材料を染色しても,表裏ほぼ同様に染色され、染色時の染色特性が揃っていた。加えて、染色温度が低くても染色時間が短くても、色相の差の少ない染色物が得られ、省エネルギーの観点からも本発明の分散染料組成物は優れていた。一方、比較例の市販の分散染料の混合組成物は、太さの違う繊維材料の染色特性が揃わず、染色温度や染色時間の影響を受けて色相の差を生じ、染色温度の低減や染色時間の短縮はできないことが分かった。
これらの結果は、本発明の分散染料組成物の実用性の高さを示している。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明による分散染料組成物は、環境条件に対する優れた耐光堅牢度を持ち、かつ、三原色の耐光堅牢度のバランスも良いという特性を有し、加えて、染色時の良好な再現性を維持しつつ染色温度を低く抑えることが可能である。従って、この分散染料組成物は、高温高湿条件に曝されることが多い自動車内装材料用の合成繊維材料の染色のために好適に用いることができる。