【実施例】
【0025】
以下の実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例において、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
【0026】
[参考例1]
前記式(1)で示される黄色系分散染料(C.I.Disperse イエロー 64を使用;以下「分散染料(1)」と称する。)の原末7.8部、前記式(2)で示される黄色系分散染料(C.I.Disperse イエロー 71を使用;以下「分散染料(2)」と称する。)の原末92.2部を合わせ、これらの原末の合計量と同量の分散剤(デモールN:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)を加えて微粒子化処理を行って、黄色系分散染料組成物(A−1)を製造した。
【0027】
[参考例2]
前記式(3)で示される赤色系分散染料(C.I.Disperse レッド 60を使用;以下「分散染料(3)」と称する。)の原末90部、前記式(4)で示される赤色系分散染料(C.I.Disperse レッド 91を使用;以下「分散染料(4)」と称する。)の原末10部を合わせ、これらの原末の合計量と同量の分散剤(デモールN:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)を加えて微粒子化処理を行って、赤色系分散染料組成物(B−1)を製造した。
【0028】
[参考例3]
前記式(5)で示される青色系分散染料(C.I.Disperse ブルー 56を使用;以下「分散染料(5)」と称する。)の原末75部、前記式(6)で示される青色系分散染料(C.I.Disperse ブルー 204を使用;以下「分散染料(6)」と称する。)の原末25部を合わせ、これらの原末の合計量と同量の分散剤(デモールN:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)を加えて微粒子化処理を行って、青色系分散染料組成物(C−1)を製造した。
【0029】
[参考例4]
参考例1と同様に、分散染料(1)の原末10部、分散染料(2)の原末90部を用いて黄色系分散染料組成物(A−2)を製造した。
【0030】
[参考例5]
参考例2と同様に、分散染料(3)の原末95部、分散染料(4)の原末5部を用いて赤色系分散染料組成物(B−2)を製造した。
【0031】
[参考例6]
参考例3と同様に、分散染料(5)の原末70部、分散染料(6)の原末30部を用いて青色系分散染料組成物(C−2)を製造した。
【0032】
[参考例7]
参考例1と同様に、分散染料(1)の原末5部、分散染料(2)の原末95部を用いて黄色系分散染料組成物(A−3)を製造した。
【0033】
[参考例8]
参考例2と同様に、分散染料(3)の原末97部、分散染料(4)の原末3部を用いて赤色系分散染料組成物(B−3)を製造した。
【0034】
[参考例9]
参考例3と同様に、分散染料(5)の原末80部、分散染料(6)の原末20部を用いて青色系分散染料組成物(C−3)を製造した。
【0035】
[実施例1]
参考例1の黄色系分散染料組成物(A−1)0.131%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例2の赤色系分散染料組成物(B−1)0.050%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例3の青色系分散染料組成物(C−1)を0.061%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0036】
[実施例2]
参考例4の黄色系分散染料組成物(A−2)0.131%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例5の赤色系分散染料組成物(B−2)0.050%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例6の青色系分散染料組成物(C−2)0.061%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0037】
[実施例3]
参考例7の黄色系分散染料組成物(A−3)0.131%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例8の赤色系分散染料組成物(B−3)0.050%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例9の青色系分散染料組成物(C−3)0.061%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、135℃で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0038】
[比較例1]
市販のダイスター社のDianix Yellow HLAを0.094%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Red HLAを0.032%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Blue HLAを0.079%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物に対して80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0039】
[試験例1]
[耐光堅牢度試験]
フェードメーター(ブラックパネル温度:89℃±3℃、84メガジュール)キセノンランプを用いて、162W/平方メートル、144時間条件で、染色物に光照射し、照射部分の変褪色をJIS L−0804の変褪色用グレースケールにて判定した。
実施例1の135℃で染色したポリエステル染色布、実施例2、実施例3で染色したポリエステル染色布の耐光堅牢度は、すべて4−5級であった。
比較例1の135℃で染色したポリエステル染色布の耐光堅牢度は3−4級であった。
【0040】
また、実施例1の135℃で染色したポリエステル染色布、実施例2、実施例3で染色したポリエステル染色布の表裏の色を比較してみたところ、すべて表裏の色の差が小さかった(一見して明らかな相違は目視されなかった)。それとは対照的に、比較例1の135℃で染色したポリエステル染色布の表裏の色の差は大きかった(相違が一見して明らかであった)。
【0041】
[実施例4]
参考例1の黄色系分散染料組成物(A−1)0.262%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例2の赤色系分散染料組成物(B−1)0.100%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例3の青色系分散染料組成物(C−1)0.122%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0042】
[実施例5]
参考例1の黄色系分散染料組成物(A−1)0.524%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例2の赤色系分散染料組成物(B−1)0.200%o.w.f.(対繊維重量)と、参考例3の青色系分散染料組成物(C−1)0.244%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に、水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0043】
[比較例2]
市販のダイスター社のDianix Yellow HLAを0.187%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Red HLAを0.064%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Blue HLAを0.158%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0044】
[比較例3]
市販のダイスター社のDianix Yellow HLAを0.374%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Red HLAを0.128%o.w.f.(対繊維重量)と、Dianix Blue HLAを0.316%o.w.f.(対繊維重量)とを水に加え、酢酸と酢酸ナトリウムによりpH4.5に調整し、サンライフ LP−240(日華化学(株)製、紫外線吸収剤)2.0%o.w.f.を加え、全量を2000部とした染浴を調製し、ポリエステル繊維起毛織物(表側が0.3デニールと裏側が3デニール糸使用)100部を浸漬し、120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度で40分間染色した。次いで、45%のカセイソーダ6部、ハイドロサルファイト6部、サンモールRCー700(日華化学(株)製、アニオン性界面活性剤)3部に水を加えて全量3000部とした浴で、各染色物を80℃、10分間の還元洗浄を施した後に水洗、乾燥して染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0045】
[試験例2]
実施例1、実施例4、実施例5、比較例1、比較例2、比較例3で染色した各ポリエステル染色布について、分光測色器(Macbeth社製Color−Eye 3100)にて色相を測定した。135℃の染色布の色相を標準として、120℃、125℃、130℃の各々の染色布の色相の差ΔEを表1に示す。色相の差ΔEは、小さいほど優れている。すなわち、135℃の染色布の色相(標準)に対するより低い温度の色相の差ΔEが小さいほど、低下された温度での染色時の良好な再現性が実証される。
【0046】
[表1]各温度条件の染色布の色相の差ΔE
【0047】
実施例1、実施例4、実施例5に較べて比較例1、比較例2、比較例3の染色布は、染色温度が下がると色相差が大きくなってしまい、125℃以下では実用に耐えないものであった。逆に言えば、比較例1、比較例2、比較例3に較べて実施例1、実施例4、実施例5の染色布は、染色温度が下がっても色相差が格段に小さかった。
【0048】
[実施例6]
実施例2において、染色温度を120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度とし、染色時間を10分、30分及び60分の各々の時間とした以外は同じ条件で染色を行い、各々の染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0049】
[比較例4]
比較例2において、染色温度を120℃、125℃、130℃及び135℃の各々の温度とし、染色時間を10分、30分及び60分の各々の時間とした以外は同じ条件で染色を行い、各々の染色物(ポリエステル染色布)を得た。
【0050】
[試験例3]
実施例6、比較例4で染色した各ポリエステル染色布について、分光測色器(Macbeth社製Color−Eye 3100)にて色相を測定した。各例の135℃、60分の染色布の色相を標準として、120℃、125℃及び130℃、並びに、10分、30分及び60分の各々の染色布の色相の差ΔEを表2に示す。上記同様、低下された温度での染色時の良好な再現性の観点から、色相の差ΔEは小さいほど優れている。
【0051】
[表2]各温度及び各時間条件の染色布の色相の差ΔE
【0052】
実施例6の分散染料組成物は、比較例4の分散染料組成物に較べて染色温度が低くなっても、また、染色時間が短くなっても色相差が小さかった。
【0053】
以上の結果から明らかなように、本発明の分散染料組成物は、市販の分散染料組成物と比べ疎水性繊維材料を染色した際に優れた耐光堅牢度を示した。さらに、本発明の分散染料組成物は、太さの異なる疎水性繊維材料を表裏とする繊維材料を染色しても,表裏ほぼ同様に染色され、染色時の染色特性が揃っていた。加えて、染色温度が低くても染色時間が短くても、色相の差の少ない染色物が得られ、省エネルギーの観点からも本発明の分散染料組成物は優れていた。一方、比較例の市販の分散染料の混合組成物は、太さの違う繊維材料の染色特性が揃わず、染色温度や染色時間の影響を受けて色相の差を生じ、染色温度の低減や染色時間の短縮はできないことが分かった。
これらの結果は、本発明の分散染料組成物の実用性の高さを示している。