【実施例】
【0027】
[実施例1]ライトサイクルオイルから高付加芳香族製品および軽質パラフィン製品の製造
水添および反応工程、芳香族成分分離工程、およびトランスアルキル化工程を用いてライトサイクルオイルから高付加芳香族および軽質パラフィンの製造
本実施例に使用されたライトサイクルオイルは、流動層接触分解工程の分解留分を使用したところ、流動層接触分解工程原料の種類および工程運転条件によって製造される流動層接触分解留分の物性、組成および収率に違いがありうる。本実施例では、ライトサイクルオイルとして、下記表1に示すように流動層接触分解留分のうち、沸点の範囲が170〜360℃の範囲に属するライトサイクルオイルを準備した。
【0028】
【表1】
【0029】
前記原料を水素処理工程に導入した。前記水素処理工程は、ニッケル−モリブデンの組み合わせ触媒を用いて固定層反応器で行われた。水素処理工程の反応条件を下記表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
前記水素化処理工程によって変化した流量を下記表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
表3から分かるように、水素化処理工程の前には2環以上の芳香族を含む成分が相当量存在したが、前記水素化処理工程後には急激に減少したことが分かる。また、1環芳香族成分が約0.8倍増加し、その中でもナフテン環を有する1環芳香族成分はフィード100を基準に約12.07〜約39.89程度と2.3倍増加した。ナフテン環を有する1環芳香族成分は水添分解工程でナフテン環が切られて高付加芳香族成分または高付加芳香族成分の直接的原料となる。
前記水素化処理工程から得た生成物を水添分解反応器に供給して実施した。ここで使用した触媒はコバルト及びベータゼオライトの組み合わせであり、反応温度は380℃、反応圧力は1200psigであった。
前記分解工程によって変化した流量を下記表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
表4から分かるように、分解工程前のフィード、すなわち水素化処理工程後のフィードと比較すると、高付加芳香族成分であるベンゼン/キシレンが約2000%以上増加した。また、後続のトランスアルキル化によってベンゼン/キシレン生産の原料となるトルエン/C9/C10は約109%増加した。水添分解工程では、オレフィンが生成されず、パラフィンのみ生産される。
水添分解工程によって生成された成分のうち、前記軽質パラフィンを回収し、炭素数6〜10の成分をトランスアルキル化工程に導入した。トランスアルキル化工程で使用した触媒としては、シリカ/アルミナのモル比が90のモルデナイト50重量%およびγ−アルミナバインダー50重量%からなる担体に白金及びスズがそれぞれ0.05および0.5重量部担持された触媒を使用した。トランスアルキル化工程を通過した後に得られた生成物の流量を下記表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5から分かるように、トランスアルキル化工程を経たフィードは、これを経ていないフィードと比較して、高付加芳香族成分であるベンゼンが345%増加し、キシレンが112%さらに増加した。前記トランスアルキル化は、分解工程ではないため、追加のオレフィン生産量の増加はなかった。
【0038】
炭素数11以上の炭化水素の再循環によるライトサイクルオイルから高付加の芳香族及び軽質パラフィンの製造
前記高付加芳香族の製造工程において、水素化処理工程および水添分解工程によって生成された炭素数11以上の炭化水素成分を水添及び反応領域に再循環させた以外は、同一の原料及び反応条件を使用した。
原料として用いられたライトサイクルオイル(A0)、炭素数11以上の炭化水素の再循環なしで得た生成物(A1)、および炭素数11以上の炭化水素の再循環によって得た生成物(A2)を下記表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
表6から分かるように、再循環段階を追加することにより、2環以上を有する芳香族成分を含めなくなり、高付加芳香族成分であるベンゼンが14%増加し、キシレンが14%さらに増加した。また、軽質パラフィンの総和が約14%増加した。このような結果は再循環段階によって高付加芳香族及び軽質パラフィンをより高収率で得ることができることを意味する。
【0041】
トランスアルキル化工程後の未処理留分の再循環による軽質サイクルから高付加の芳香族及び軽質パラフィンの製造
前記炭素数11以上の炭化水素成分を水素化処理工程に再循環させて高付加の芳香族を製造する工程において、トランスアルキル工程から生産された高付加芳香族成分を、芳香族成分分離工程によって一部のベンゼン、トルエン、キシレンを回収し、残りをさらにトランスアルキル工程と水添及び反応領域に再循環させることを繰り返した以外は、同一の原料及び反応条件を使用した。
原料として用いられたライトサイクルオイル(A0)、炭素数11以上の炭化水素の再循環なしで得た生成物(A1)、炭素数11以上の炭化水素の再循環によって得た生成物(A2)、およびトランスアルキル化工程後に未処理重質留分を再循環させて得た生成物(A3)を下記表7に示す。
【0042】
【表7】
【0043】
表7から分かるように、2種の再循環段階をさらに含むことにより、1つの再循環段階のみを含む生成物(A2)に比べて、高付加芳香族成分であるベンゼンおよびキシレンが0.4重量、そして軽質パラフィンであるエタン、プロパン、ブタンが0.14重量増加した。このような結果は、2つの再循環段階を介して高付加芳香族をより高収率で得ることができることを意味する。
【0044】
トランスアルキル化工程後のキシレン処理工程の導入によるライトサイクルオイルから高付加の芳香族及び軽質パラフィンの製造
前記トランスアルキル化工程後の未処理留分の再循環工程において、トランスアルキル化工程から得たキシレン成分をパラキシレン分離工程及びパラキシレン異性化工程からなるキシレン処理工程で処理する以外は、同一の原料及び反応条件を使用した。
原料として用いられたライトサイクルオイル(A0)、炭素数11以上の炭化水素の再循環なしで得た生成物(A1)、炭素数11以上の炭化水素の再循環によって得た生成物(A2)、トランスアルキル化工程後に未処理重質留分を再循環させて得た生成物(A3)、およびキシレン異性化および分離工程によって得た生成物(A4)を下記表8に示す。
【0045】
【表8】
【0046】
表8から分かるように、パラキシレン分離及びパラキシレン異性化工程によって、混合キシレンの大部分を高付加製品のパラキシレンに転換することができ、キシレン成分の不純物であるエチルベンゼン(EB)をすべて除去してベンゼンに転換することができた。このような結果はキシレン工程をさらに導入することにより高付加芳香族の収率および純度を高めることができることを意味する。
【0047】
[実施例2]コールタールから高付加芳香族製品および軽質パラフィン製品の製造
水添及び反応工程、芳香族成分分離工程およびトランスアルキル化工程を用いてコールタールから高付加の芳香族及び軽質パラフィンの製造
本実施例で使用された石炭由来留分は、原料の種類および工程運転条件によって製造される留分の物性および組成に違いがありうる。本実施例では、石炭炭化工程で生成される石炭由来留分として、沸点範囲が78〜350℃の範囲に属しながら、下記表9の組成を有するコールタール(coal tar)を準備した。
【0048】
【表9】
【0049】
前記コールタールを水素処理工程に導入した。前記水素処理工程はニッケル−モリブデンの組み合わせ触媒を用いて固定層反応器で行われた。水素処理工程の反応条件を下記表10に示す。
【0050】
【表10】
【0051】
前記水素化処理工程によって変化した流量を下記表11に示す。
【0052】
【表11】
【0053】
表11から分かるように、水素化処理工程の前には2環以上の芳香族を含む成分が相当量存在したが、前記水素化処理工程後には急激に減少した。また、1環芳香族成分が約7.6倍増加し、その中でもナフテン環を有する1環芳香族成分はフィード100に対して約3.43〜約61.59程度と17倍増加した。ナフテン環を有する1環芳香族成分は水添分解工程でナフテン環が切られて高付加芳香族成分または高付加芳香族成分の直接的原料となる。
前記水素化処理工程から得た生成物を水添分解反応器に供給して実施した。ここで使用した触媒はコバルトとベータゼオライトの組み合わせであり、反応温度は370℃、反応圧力は1100psigであった。
前記分解工程によって変化した流量を下記表12に示す。
【0054】
【表12】
【0055】
表12から分かるように、分解工程前のフィード、すなわち水素化処理工程後のフィードと比較すると、高付加芳香族成分であるベンゼン/キシレンが約670%以上増加した。また、後続のトランスアルキル化によってベンゼン/キシレン生産の原料となるトルエン/C9/10は約540%増加した。水添分解工程では、オレフィンが生成されず、パラフィンのみ生産される。
水添分解工程によって生成された成分のうち、前記軽質パラフィンを回収し、炭素数6〜10の成分を芳香族分離工程に導入してベンゼンを分離し、残りの成分をトランスアルキル化工程に導入した。実施例1ではベンゼン成分が多くないため、ベンゼンの分離なしで炭素数6〜10の成分をトランスアルキル化工程に直ちに導入してもトランスアルキル化工程の容量増加に及ぶ影響が少なく、工程が単純化される。ところが、本実施例は、ベンゼン成分が多いため、分離なしでトランスアルキル化工程に導入する場合、トランスアルキル化工程の容量が大きくなって投資費を増加させ、相対的に高付加芳香族の収率を低下させる非効率的な結果を産む。
トランスアルキル化工程で使用した触媒としては、シリカ/アルミナのモル比が90のモルデナイト50重量%およびγ−アルミナバインダー50重量%からなる担体に白金およびスズがそれぞれ0.05及び0.5重量部担持された触媒を使用した。トランスアルキル化工程を通過した後に得られた生成物の流量を下記表13に示す。
【0056】
【表13】
【0057】
表13から分かるように、トランスアルキル化工程を経たフィードは、これを経ていないフィードと比較して、高付加芳香族成分であるベンゼンが41%増加し、キシレンが57%さらに増加した。前記トランスアルキル化は、分解工程ではないので、追加のオレフィン生産量の増加はなかった。
【0058】
炭素数11以上の炭化水素の再循環によるコールタールから高付加の芳香族及び軽質パラフィンの製造
前記高付加芳香族の製造工程において、水素化処理工程および水添分解工程によって生成された炭素数11以上の炭化水素成分を水添及び反応領域に再循環させた以外は、同一の原料及び反応条件を使用した。
原料として用いられたコールタール(A0)、炭素数11以上の炭化水素の再循環なしで得た生成物(A1)、および炭素数11以上の炭化水素の再循環によって得た生成物(A2)を下記表14に示す。
【0059】
【表14】
【0060】
表14から分かるように、再循環段階を追加することにより、2環以上を有する芳香族成分を含めなくなり、高付加芳香族成分であるベンゼンが31%、キシレンが31%さらに増加した。また、軽質パラフィンの総和が約30%増加した。このような結果は再循環段階によって高付加芳香族及び軽質パラフィンをより高収率で得ることができることを意味する。
【0061】
トランスアルキル化工程後の未処理留分の再循環によるコールタールから高付加の芳香族および軽質パラフィンの製造
前記炭素数11以上の炭化水素成分を水素化処理工程に再循環させて高付加の芳香族を製造する工程において、トランスアルキル化工程から生成された高付加芳香族成分を、芳香族成分分離工程によって一部のベンゼン、トルエン、キシレンを回収し、残りをさらにトランスアルキル工程と水添及び反応領域に再循環させる以外は、同一の原料及び反応条件を使用した。
原料として用いられたコールタール(A0)、炭素数11以上の炭化水素の再循環なしで得た生成物(A1)、炭素数11以上の炭化水素の再循環によって得た生成物(A2)、およびトランスアルキル化工程後に未処理重質留分を再循環させて得た生成物(A3)を下記表15に示す。
【0062】
【表15】
【0063】
表15から分かるように、2つの再循環段階をさらに含むことにより、1つの再循環段階のみ含む生成物(A2)に比べて、高付加芳香族成分であるベンゼンおよびキシレンが0.3重量、そして軽質パラフィンであるエタン、プロパン、ブタンが0.12重量増加した。このような結果は2つの再循環段階を介して高付加芳香族をより高収率で得ることができることを意味する。
【0064】
トランスアルキル化工程後のキシレン処理工程の導入によるコールタールから高付加の芳香族及び軽質パラフィンの製造
前記トランスアルキル化工程後の未処理留分の再循環工程において、トランスアルキル化工程から得たキシレン成分をパラキシレン分離工程及びパラキシレン異性化工程からなるキシレン処理工程で処理する以外は、同一の原料及び反応条件を使用した。
原料として用いられたコールタール(A0)、炭素数11以上の炭化水素の再循環なしで得た生成物(A1)、炭素数11以上の炭化水素の再循環によって得た生成物(A2)、トランスアルキル化工程後に未処理重質留分を再循環させて得た生成物(A3)、およびキシレン異性化および分離工程によって得た生成物(A4)を下記表16に示す。
【0065】
【表16】
【0066】
表16から分かるように、パラキシレン分離及びパラキシレン異性化工程によって、混合キシレンの大部分を、高付加製品であるパラキシレンに転換することができ、キシレン成分の不純物であるエチルベンゼン(EB)をすべて除去してベンゼンに転換することができた。このような結果はキシレン工程をさらに導入することにより高付加芳香族の収率および純度を高めることができることを意味する。
以上、本発明の好適な実施例について説明の目的で開示したが、当業者であれば、添付した請求の範囲に開示された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な変形および置換を加え得ることを理解するであろう。よって、それらの変形または置換も本発明の請求の範囲に属するものと理解すべきである。