(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917553
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】燃料用フィルター
(51)【国際特許分類】
F02M 37/22 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
F02M37/22 G
F02M37/22 J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-542561(P2013-542561)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2013-545031(P2013-545031A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011072320
(87)【国際公開番号】WO2012076692
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】102010062813.1
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ゲンスヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブラウンハイム
(72)【発明者】
【氏名】クロード フレデリク ゲブラー
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート ハール
(72)【発明者】
【氏名】マーク イゲルク
(72)【発明者】
【氏名】ペーター コッピ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヴァイベル
(72)【発明者】
【氏名】トルステン リカ
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/012617(WO,A1)
【文献】
国際公開第03/033101(WO,A1)
【文献】
特表2006−501398(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0202081(US,A1)
【文献】
特表2006−521497(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0062270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/22
F01M 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの構成部からなるハウジング(2)を有し、該ハウジング(2)に第1環状フィルターエレメント(3)が配設された燃料用フィルター(1a)であって、
第2環状フィルターエレメント(6)と、
第3環状フィルターエレメント(7)とを備え、
上記第1環状フィルターエレメント(3)が、粒子フィルターとして構成され、
上記第2環状フィルターエレメント(6)が、集滴具として構成され、
上記第3環状フィルターエレメント(7)が、疎水性の最終水分離器及び粒子フィルターとして構成され、
全ての環状フィルターエレメント(3,6,7)が互いに同軸上に配設されると共に、少なくとも2つの環状フィルターエレメント(3,7)が軸方向に互いにずらして配設され、
上記全ての環状フィルターエレメント(3,6,7)が直列に接続され、燃料が該全ての環状フィルターエレメント(3,6,7)を順次通過し、
上記第1,2,3環状フィルターエレメント(3,6,7)が、独立且つ個別に交換可能となるように構成され、
個々の差し込み接続部(10)によって互いに接続され、且つ少なくとも1つの環状フィルターエレメント(3,6,7)に接続されるアダプターエレメント(9,9’,9’’)が設けられ、
上記アダプターエレメント(9,9’,9’’)の1つは、上記第1環状フィルターエレメント(3)が挿入された際に上記ハウジング(2)の無負荷開口部を閉塞する延設部(55)を備えていることを特徴とする燃料用フィルター(1a)。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料用フィルターにおいて、
燃料が上記全ての環状フィルターエレメント(3,6,7)を半径方向に通過するものであり、
上記第1環状フィルターエレメント(3)を外側から内側に通過し、上記第2環状フィルターエレメント(6)を内側から外側に、又は外側から内側に通過し、上記第3環状フィルター(7)を再び外側から内側に通過することを特徴とする燃料用フィルター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料用フィルターにおいて、
上記第2環状フィルターエレメント(6)は、
集滴性能を有するフリース、メリヤス、編地、又は織地を備えていることを特徴とする燃料用フィルター。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の燃料用フィルターにおいて、
上記第3環状フィルターエレメント(7)は、
最終水分離器として機能する、疎水性で目の細かい網部を備えていることを特徴とする燃料用フィルター。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の燃料用フィルターにおいて、
上記環状フィルターエレメント(3,6,7)が、互いに軸方向に距離を開けて配設されていることを特徴とする燃料用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料用フィルターに関するものであり、特に、請求項1の前提構成に記載された、燃料が半径方向に通過する環状フィルターエレメントを備えた燃料用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関に使用される一般的な燃料用フィルターは、例えば、特許文献1によって公知である。特に、そうした燃料用フィルターを内燃機関の燃料用フィルターとして使用する際には(such fuel filters are used as fuel filter)、内燃機関の内部で水分によって引き起こされる腐食過程を防止すべく、燃料に含まれる水分を可能な限り濾過して取り除くことが、内燃機関の耐用年数を高めるために重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2006 060128号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一般的なタイプの燃料用フィルターの改良、又は少なくとも別の態様に関するものであって、特に良好な濾過性能を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、独立請求項1の主題による発明によって解決される。有利な態様は、従属項の主題を構成する。
【0006】
本発明は、ハウジングと、その内部に配置された、
粒子フィルターとして構成された第1環状フィルターエレメント
に加えて、集滴具として構成された第2環状フィルターエレメントと、疎水性の最終水分離器及び粒子フィルターとして構成された第3環状フィルターエレメントを備えることによって、取り分け良好な濾過性能と分離(deposition)性能とを発揮するようにする、という基本概念に基づく
。3つの環状フィルターエレメントは、全て互いに同軸上に配置されていると共に
、3つの環状フィルターエレメントのうち少なくとも2つは、軸方向に互いにずらして配置されてもいる。その上、全ての環状フィルターエレメントが直列に接続されているため、燃料は環状フィルターエレメントの各々を順次通過する。燃料は、未処理側か
ら3つの環状フィルターエレメントを通過して清浄側に流れなければならない。これこそが、本発明に係る燃料用フィルターが良好な濾過性能を発揮する理由である。個々の環状フィルターエレメントを同軸上に、且つ軸方向にずらして配置することによって、それらを容易に、且つ単独で交換することも可能となり、その結果、燃料用フィルターを概して整備し易く構成することができる。このようにして、総計する
と3つの環状フィルターエレメントを用いることによって
、複数段フィルターを実現できる。これによって
、第1段フィルター、すなわち第1環状フィルターエレメントにおいて、塵埃粒子の濾過による除去や、燃料中に混入した水分の少なくとも僅かな集滴(coalescence)が可能となる。この比較的僅かな集滴過程を経て水滴がやや粗粒化され、この水滴が2番目の環状フィルターエレメント、すなわち、
好ましくは純粋な集滴段として構成される第2段フィルターでさらに集滴されて、一層粗粒化される。例えば、この場合の材質としては、自然由来のものも含めたセルロースを使用することが可能であり、特に、織地、編地、メリヤス(looped fabric)、又はフリース状に構成されたものを用いることができる。その後に続く第3段フィルター、すなわち、第3環状フィルターエレメントにおいては、疎水性の物質から成る目の細かい網部を備えることができる。それによって、第3環状フィルターエレメントが、第1及び第2段フィルターを通過して粗粒化された水滴を停止させて分離する最終水分離器として機能することが可能となる。従って、第1及び第2段フィルターによって予め清浄化された燃料が、第3段フィルターにおいて、
すなわち、第3環状フィルターエレメントによって、再び濾過されると同時に除水される。本発明に係る
、3段からなる燃料用フィルターを用いることによって、特に固形の塵埃粒子に対して取り分け良好な濾過性能を発揮することができると共に、濾過される燃料に対する除水性能を著しく向上させることができる。濾過される燃料に含まれる残留水分は概して減少するため、腐食のリスクを減らすことができる。
【0007】
本発明における他の重要な特徴及び利点は、従属項、図面、及び図面に基づいた関連する記載によって明らかにされることになる。
【0008】
上述の特徴、及び以下で説明される特徴は、それぞれの場合で与えられる組み合わせのみならず、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、他の組み合わせで、又は単独で利用可能であることが了解されよう。
【0009】
本発明の好ましい実施形態は図に示され、以下の記載で詳細に説明される。ここで同一の符号は、同一の、類似の、又は機能的に対応する構成要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る燃料用フィルターの第1の実施形態の断面構成を示す概略図である。
【
図2】第1及び第2環状フィルターエレメントが同軸上に配置されるが、軸方向に互いに距離を開けずに配置される第2の実施形態について、
図1に対応する断面構成を示す概略図である。
【
図3a】第2環状フィルターエレメントが取りうる実施形態の断面構成を示す概略図である。
【
図3b】
図2の実施形態に係る第2環状フィルターエレメントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び2に従うと、本発明に係る燃料用フィルター1aは、ある状況下では通常の流体用フィルター、特にオイル用フィルターとして構成できるものであって、ただ表示されているに過ぎないハウジング2が備えられている。環状フィルターエレメント3,6,7を交換可能とするためには、ハウジング2を開くことができるように設計されなければならない。このため、取り外し可能に接続されたハウジングポット及びハウジングリッド(a housingpot and a housing lid)が備えられている。第1環状フィルターエレメント3は、ラッチ手段50(latching means)によってハウジング2に接続されている。上記ハウジング2が開かれる際には、第1環状フィルターエレメント3は、これが掛け止めされたハウジング構成部(the houging part)と共に、他のハウジング構成部から取り外すことができる。本発明に記載された構成では、全ての環状フィルターエレメント3,6,7は互いに接続されているため、ハウジング2が開かれる際には、燃料用フィルター1aのハウジング2からフィルター装置1を完全に取り外すことができる。もちろん、上記ハウジング2からフィルター装置1の構成部のみを取り外すことが可能であり、残りの構成部をハウジング2の内部に残したまま、又は独立して取り外すことができるような構成を選ぶこともできる。本発明に係るフィルター装置
は、3つの環状フィルターエレメント3,6,7と、アダプターエレメント9,9’と、機能的キャリアー53(functional carrier)と、から構成されている。ハウジング2は、上記機能のためになくてはならないものであるが、この場合はフィルター装置1の構成部ではない。
【0012】
ハウジング2の内部には、上端部及び下端部ディスク4,5を有する第1環状フィルターエレメント3が配設されている。この場合の上下方向は、
図1における上下方向に対応するが、自動車における取り付け位置に対応する必要は無い。好ましくは、フィルター装置1は、取り付け位置について上部であることも意味する
図1における上側で、燃料用フィルター1a内に直立するように、又は吊るされるように取り付けられている。上端部ディスク4にはラッチ手段50が設けられており、このラッチ手段50によって、第1環状フィルターエレメント3がハウジング構成部に回動可能に備え付けられている。好ましくは、第1環状フィルターエレメント3の下端部ディスク5は平坦である。そこに、アダプターエレメント9’が固定されている。このアダプターエレメント9’は、下端部ディスク5と共に直接的に形成することもできるし、第1フィルターエレメント3の形成後に、下端部ディスク5への溶接等の適切な方法を用いて接続することもできる。
【0013】
第1フィルターエレメント3の下端部ディスク5に接続されるアダプターエレメント9’に、さらにアダプターエレメント9を固定することができる。さらなる環状フィルターエレメント6,7を交換可能とすることを望むならば、アダプターエレメント9及び9’とを結ぶ接続部10は、例えばネジ締めや、留め金具(clipping)等によって取り外し可能でなければならない。
【0014】
2つのアダプターエレメント9及び9’の接続部10が、未処理側空間部51から密閉されていることは重要である。これら2つのアダプターエレメント9及び9’は、シール部52によってハウジング2の円蓋部(dome)又は機能的キャリアー53の円蓋部から漏れの無いように固定され、ハウジング2の内部に保持可能な或る種のポット部を構成する。その上、アダプターエレメント9には延設部55が一体的に形成されており、フィルター装置1がハウジング2の内部に挿入される際に、この延設部55が燃料用フィルター1aの燃料ドレン用の無負荷ダクト(no−load duct)60の開口部を密閉する。
【0015】
上記機能的キャリアー53には開口部54が設けられており、燃料から分離された水分が、この開口部54を介して第1環状フィルターエレメント3の清浄側から集水領域(詳細には示さず)へと流れ出ることができる。集水領域は、フィルター装置1の下部に配設することができる。機能的キャリアーは、複数の構成部53’,53’’,及び53’’’から構成されている。内側構成部53’’は清浄側の排出ダクト56を有しており、アダプターエレメント9が、漏れの無いように排出ダクト56に取り付けられている。外側構成部53’は、突出部69と併せて第3環状フィルターエレメント7のための保持部を構成する。
【0016】
例示されている両実施形態では、アダプターエレメント9が、シール部52によって機能的キャリアー53の円蓋部から密閉され、それによって機能的キャリアー53に取り外し可能に固定されている。機能的キャリアー53には、フィルター装置1の清浄側に設けられた燃料の排出ダクト56と、下部に設けられた開口部54と、この開口部54に付随する排水ダクト57とが備えられている。機能的キャリアー53は、さらなるシール部52’によってハウジング2から密閉されている。
【0017】
その上、本発明に従うと、第2環状フィルターエレメント6と第3環状フィルターエレメント7とが備えられている。これら環状フィルターエレメント3,6,7の全てが互いに同軸上に配設されており、そしてまた、3つの環状フィルターエレメント3,6,7のうち少なくとも2つは軸方向にずらして配設されている。
図1に示される本発明に係る燃料用フィルター1aの実施形態を見ると、全ての環状フィルターエレメント3,6,7が互いに軸方向にずらして配設されていると共に、互いに距離を置いて配設されている。その一方で、
図2に示される第2の実施形態においては、第1環状フィルターエレメント3と第2環状フィルターエレメント6とが互いに同軸上に配設されているにも拘らず、互いにずらして配設されていなければ、互いに軸方向に距離を置いて配設されてもいない。しかしながら、全ての実施形態に共通しているのは、全ての環状フィルターエレメント3,6,7は、互いに直列に接続されており、それ故、燃料がそれらを順次通過するということである。特に、
図1に係る燃料装置1(燃料用フィルター1a)において明白に示されているように、環状フィルターエレメント3,6,7を蛇行して流通するということも、全ての実施形態に共通していることである。
【0018】
第1環状フィルターエレメント3の下端部ディスク5には、その内側縁(inner edege)上に突出部61が設けられており、第2環状フィルターエレメント6が漏れの無いように支持されている。
【0019】
図1に示される第1の実施形態では、フィルターエレメント6に上端部ディスク62と下端部ディスク63とが設けられている。ここに示されている第2環状フィルターエレメント6は、集滴に適した材質、例えば2層からなる保護層間に挟み込まれたセルロース又はファイバーグラスから成るメリヤスから構成され、星形プリーツ状(folded star)に形成されてもいる。あるいは、星形プリーツに相当する形状を選ぶこともできる。第2環状フィルターエレメント6には、流れ方向への支持のために外枠部64が必要とされる。この外枠部64は、第2環状フィルターエレメント6における個々の端部ディスク62,63に固定されて接続されている。この2つの端部ディスク62,63には、シール部65,65’を収容するために適したシール凹部が設けられており、このシール部65,65’が、第1環状フィルターエレメント3の下端部ディスク5、及び機能的キャリアー53の円蓋部から第2環状フィルターエレメント6を密閉する。このため、機能的キャリアー53の円蓋部には、上記シール部を支持するために適した逆輪郭が備えられている。機能的キャリアー53及び端部ディスク62,63の両者に対するシール部の外形のデザインは、それぞれ第2環状フィルターエレメント6の形状に依存する。
【0020】
第1の実施形態において、第3環状フィルターエレメント7には支持枠部66が設けられており、疎水性の織地からなる最終水分離器が固定されている。
図1では、第3環状フィルターエレメント7にはリング状の形状が備えられている。
図1によると、シール部68が付せられる基部67によって下側が閉塞されており、このシール部68によって機能的キャリアー53から密閉される。この支持枠部66を、機能的キャリアー53の突出部69に固定することができる。第3環状フィルターエレメント7に異なる形状が備えられていれば、機能的キャリアー53は、それに合うように改められなければならない。第3環状フィルターエレメント7が交換可能であることを望むならば、突出部69と支持枠部66との接続部70は、例えばネジ締め、留め金具による固定(clip fastening)、又はラッチによる固定(latch fastening)といった方式で取り外し可能でなければならない。異なる場合、第3環状フィルターエレメントを、例えば溶接によって機能的キャリアー53に固定されるように接続することができる。
【0021】
第1の実施形態の組み立て作業は、次のように実行される。最初に、機能的キャリアーの構成部53’’に下側アダプターエレメント9が取り付けられなければならない。機能的キャリアーの外側構成部53’が、第3環状フィルターエレメント7と共に機能的キャリアーの構成部53’’上で構成部53’’に取り付けられた後に、機能的キャリアー53に第2環状フィルターエレメント6が取り付けられる。最後に、第1環状フィルターエレメント3が、その端部ディスク5を用いて機能的キャリアー53及びアダプターエレメント9に固定される。第1環状フィルターエレメント3の上端部ディスク4は、さらなるシール部52’’ ’によって漏れの無いように、機能的キャリアー53の上端部に対して支持される。フィルター装置1を変更する際には、ハウジング2から完全に取り除かれる。個々の構成部を互いに分離することができるため、必要な構成部のみが取り替えられる。
【0022】
図2には、実施形態の変形例が示されている。この場合、第1環状フィルターエレメント3は、第1の実施形態のものとほとんど同一である。第2環状フィルターエレメント6を漏れの無いように固定すべく、端部ディスク4及び5の変形が必要とされる。端部ディスク4及び5には、内側に向けて面する縁部71及び71’が設けられている。これらは、第2環状フィルターエレメント6のシール部65及び65’のための支持面としての役割を果たす。これが、第2の実施形態で変形されるものである。第2環状フィルターエレメント6には、シール部65及び65’のための溝部を有し、大変切りつめられた端部ディスク62及び63が設けられている。端部ディスク62及び63には、外側支持枠部64が固定されている。この場合、薄厚のフィルター媒体72は、特に集滴性能を有する必要があるものであって、上記枠部によって支持される。そして、その内側、すなわちフィルター媒体72の上流側には、安定化リブ部(stabilising ribs )73が、薄厚のフィルター媒体72を保持すべく設けられている。
【0023】
この実施形態においても、第3環状フィルターエレメント7は、支持枠部66と疎水性のスクリーンと、から構成されている。この支持枠部66は、適切な接続手段によって、機能的キャリアー53との接続部70に取り外し可能に固定されている。第3環状フィルターエレメント7は、シール部68により機能的キャリアー53から密閉されているため、第3環状フィルターエレメント7の上流側における依然として水分を含む燃料と清浄側56との混合を防止することができる。必要に応じて、第3環状フィルターエレメント7を、例えば溶接を用いて機能的キャリアー53に取り外しできないように接続することもできる。水分の分離効率を向上させるべく、第1環状フィルターエレメント3の下端部ディスク5と機能的キャリアー53の突出部69との間に位置するダクト80に、整流エレメント(Flow−directiong elements)を備えることができる。特に、こうした整流エレメントを、線流、すなわちフィルターエレメント7の表面部に平行な流れを生成するように構成することができる。
【0024】
第2の実施形態のための組み立て作業は、以下のように行われる。最初に、機能的キャリアーの構成部53’’に下側アダプターエレメント9が取り付けられなければならない。機能的キャリアーの外側構成部53’が、第3環状フィルターエレメント7と共に機能的キャリアーの構成部53’’に取り付けられた後に、第2環状フィルターエレメント6と一体的な第1環状フィルターエレメント3が機能的キャリアー53に取り付けられる。最後に、第1環状フィルターエレメント3が、その端部ディスク5によって機能的キャリアー53及びアダプターエレメント9に固定される。第1環状フィルターエレメント3の上端部ディスク4は、さらなるシール部52’’’によって、機能的キャリアー53の構成部53’’’の上端部に対して漏れの無いよう支持される。フィルター装置1を変更する際には、ハウジング2から完全に取り除かれる。個々の構成部を互いに分離することができるため、必要な構成部のみが取り替えられる。
【0025】
図1の燃料用フィルター1aを見ると、燃料が全ての環状フィルターエレメント3,6,7を半径方向に通過していること、すなわち、第1環状フィルターエレメント3を外側から内側に通過し、第2環状フィルターエレメント6を内側から外側に通過し、第3環状フィルターエレメント7を再び外側から内側に通過していることがわかる。これとは対照的に、
図2の燃料用フィルター1aでは、燃料が第2環状フィルターエレメント6を外側から内側にも通過している。
【0026】
概して、第1環状フィルターエレメント3はダートフィルターとして構成されており、
塵埃粒子を濾過して除去するために用いられる。この第1環状フィルターエレメント3に、少なくとも僅かな集滴機能を設けることも可能であり、それによって燃料中に存在する水分を粗粒化(enlarge)することができる。第2環状フィルターエレメント6は、好ましくは純粋な集滴具(coalescer)として構成され、乳化された水滴をさらに粗粒化する。第2環状フィルターエレメント6のための材質を例示すると、今度はフリース、メリヤス、編地、又は織地状に構成された自然由来のセルロースを用いることができる。もちろん、他の又はさらなる集滴物質を、上述のような織地、フリース又はメリヤス状に構成して用いることができる。最後に、第3環状フィルターエレメント7が、疎水性の最終水分離器であると同時にダートフィルターとして構成されており、この第3環状フィルターエレメント7のための材質として、疎水性で目の細かい網部が選ばれる。この疎水性の網部が、第1及び第2環状フィルターエレメント3,6によって粗粒化された水滴の通過を阻止するため、この水滴を第3環状フィルターエレメント7の下部に位置する集水部(water collection space)に集めることができる。それ故、本発明に係る燃料用フィルター1aは、特に良好な濾過性能を発揮することができると共に、混入された水分を可能な限り取り除くことができるため、特に、腐食性を確実に弱めることが可能となる。フィルター装置1の内部で濾過される燃料の流れは、矢印(flow arrow)8によって表示されている。
【0027】
図1及び2で示される燃料用フィルターを見ると、個々の環状フィルターエレメント3,6,7が互いに独立して構成されているため、独立して交換可能であることがわかる。燃料用フィルター1aにおける個々の環状フィルターエレメント3,6,7を固定又は保持すべく(To fasten or hold)、アダプターエレメント9,9’を設けることが可能であり、それぞれの差し込み接続部10を用いて、互いに、そして環状フィルターエレメント3,6,7の1つ以上に接続することができる。
【0028】
図3a及び3bを見ると、
図2における燃料用フィルター1aの第2環状フィルターエレメント6には、フィルター媒体としてメリヤス、織地、又はフリースのみが備えられており、それによって、純粋な集滴具として構成されている。この場合における“環状フィルターエレメント”という単語は、比喩的な意味(transferred sense)でのみ理解される必要がある。しかしながら、
図1の実施形態に係る第2環状フィルターエレメント6の場合においては、“環状フィルターエレメント”という単語は妥当である。
【0029】
本発明に係る燃料用フィルター1aは、比喩的な意味で他の流体用フィルターにも概して適用可能であって、このフィルターを用いることによって、濾過される流体、特に濾過される燃料に取り分け効果的な濾過作用をもたらすことが可能となる。その際には、上記流体を濾過するばかりでなく脱水することもできる。したがって、本発明に係る流体用フィルター、又は本発明に係る燃料用フィルター1aを用いることによって、濾過による固体の除去、及び濾過による水に例示される液体の除去が可能となる。環状フィルターエレメント3,6,7を個別に、ひいては互いに独立して交換することができるということは、本発明に係る燃料用フィルター1aを著しく容易に整備できるようになるということを意味する。