特許第5917561号(P5917561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917561孔を備えるゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブヘッドの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917561
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】孔を備えるゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20160428BHJP
【FI】
   A63B53/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-547727(P2013-547727)
(86)(22)【出願日】2012年1月3日
(65)【公表番号】特表2014-501167(P2014-501167A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】US2012020107
(87)【国際公開番号】WO2012094341
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/429,692
(32)【優先日】2011年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591086452
【氏名又は名称】カーステン マニュファクチュアリング コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソルハイム ジョン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】モラレス エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクソン エリック エム.
(72)【発明者】
【氏名】コール エリック ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウッド ポール ディ.
(72)【発明者】
【氏名】シュバイガート ブラッド ディ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャーツソン マーティ アール.
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−011839(JP,A)
【文献】 特開2006−020860(JP,A)
【文献】 特開2005−329154(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3028211(JP,U)
【文献】 特開2004−159794(JP,A)
【文献】 米国特許第07448964(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース、ヒール、トウ、及び、トップエッジと、
フェースに対向して画定されるバックと、
フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンと、を備え、
クラウンは、
第1の領域と、
第1の領域とバックとの間の第2の領域と、
第2の領域にある複数の孔であって、少なくとも1つの孔の最大寸法が0.25インチ以下である、複数の孔と、
を備え
第1の領域と第2の領域は、フェースから離れる方向に延在する釣鐘形の曲線によって分離されており、
少なくとも2つの孔が異なる最大寸法を有する、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
フェース、ヒール、トウ、及び、トップエッジと、
フェースに対向して画定されるバックと、
フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンと、を備え、
クラウンは、
少なくとも1つの孔の最大寸法が0.25インチ以下である、複数の孔と、
フェースとバックとの間に延在する少なくとも1つの補強リブであって、補強リブの最小幅が孔の最大寸法よりも大きい、少なくとも1つの補強リブと、
を備え
少なくとも2つの孔が異なる最大寸法を有する、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
ゴルフクラブのためのクラブヘッドの製造方法であって、
フェースと、ヒールと、トウと、トップエッジと、フェースに対向して画定されるバックと、フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンと、を備えるクラブヘッドを形成するステップと、
クラウンに複数の孔を形成するステップであって、少なくとも1つの孔の最大寸法が0.25インチ以下であり、クラウンは、第1の領域と、第1の領域とバックとの間の第2の領域と、を画定し、第1の領域と第2の領域は、フェースから離れる方向に延在する釣鐘形の曲線によって分離され、孔が第2の領域に形成され、少なくとも2つの孔が異なる最大寸法を有する、ステップと、
を備える、方法。
【請求項4】
第2の領域に複数の孔を形成する前に、第2の領域に凹部を形成するステップをさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の孔を形成するステップは、複数の孔を形成するためにクラウンを打ち抜くステップを備える、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの補強リブを第2の領域に形成するステップをさらに備える、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの補強リブを第2の領域に形成するステップをさらに備え、補強リブは、第2の領域の、孔のない部分によって画定される、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第2の領域にカバーを取り付けるステップをさらに備える、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2011年1月4日発行の米国特許仮出願第61/429,692号明細書の利益を主張するものであり、その開示全体を参照により本明細書中に組み込む。
【0002】
本願は、概して、ゴルフクラブに関し、特に、孔を備えるゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴルフクラブヘッド、特に、ゴルフクラブヘッドのクラウンは、ゴルフボールの、ゴルフクラブヘッドのフェースに対する衝突によって発生した力の作用を示すために、いくつかの領域に分割されうる。ゴルフボールの、フェースにおける衝突により、クラウンの第1の領域内に伝わり、そこに直に作用する内部応力がゴルフボールの衝突力によって直に発生するように、第1の領域がゴルフクラブヘッドのフェースによって画定される衝突面と連なっている。加えて、ゴルフボールの、フェースに対する衝突後に発生した力により感知されるべき応力および振動が、ゴルフクラブヘッドの第1の領域と比較して、第2の領域において相対的に低くなるように、ゴルフクラブヘッドの第2の領域は、ゴルフクラブヘッドの第1の領域とバックとの間のクラウンに沿って画定してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフクラブヘッドの重量を低減するため、および/またはその重心を変えるため、クラウンの第2の領域に沿って画定される多くの比較的大きな孔を備えた多くのゴルフクラブヘッドが形成される。しかしながら、この大きな孔の配置により、ゴルフボールがゴルフクラブヘッドのフェースに当たる際、クラウンの第2の領域において内部応力の不均衡分布または不均一分布を引き起こす可能性がある。特に、集中する応力のポケットである応力上昇要素(stress risers)が、孔と孔との間のクラウンの材料に発生する可能性がある。ゴルフボールの衝突力によって発生した内部応力が、クラウンの第2の領域に不均一に分配されゴルフクラブヘッドの特定の部分に集中する場合に、応力上昇要素が生じる。ゴルフボールによる繰り返しの衝突後、曲げ力がクラウンの特定の領域に集中することによりクラウンの第2の領域に発生した過剰な内部応力が原因で、孔と孔の間の領域に亀裂が入るか、そうでなければ破損するため、この、クラウンの第2の領域における内部応力の不均衡な分布は、経時的なゴルフクラブヘッドの構造破損を引き起こす可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】複数の孔を示すゴルフクラブヘッドの一実施形態の斜視正面図である。
【0006】
図2図1のゴルフクラブヘッドの斜視背面図である。
【0007】
図3図1のゴルフクラブヘッドの斜視側面図である。
【0008】
図4】ゴルフクラブヘッドのクラウンに沿った複数の孔の配置を示す図1のゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0009】
図5図1のゴルフクラブヘッドの底面図である。
【0010】
図6図1のゴルフクラブヘッドの断面図である。
【0011】
図7】ゴルフクラブヘッドの凹部内に画定される複数の孔を示す図6の拡大図である。
【0012】
図8】ゴルフクラブヘッドの第1の領域と第2の領域との間の分割を示すため、第1の平面と、第1の平面の、ゴルフクラブヘッドのフェースによって画定されたロフト面との並列関係と、を示す、図1のゴルフクラブヘッドの簡略図である。
【0013】
図9】第1の平面によって設けられた釣鐘形の曲線による、ゴルフクラブヘッドの、第1の領域と第2の領域とへの分割を示す、図1のゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0014】
図10図1のゴルフクラブヘッドの複数の孔のうち4つの孔の概略図である。
【0015】
図11A】種々の実施形態による複数の孔の概略図である。
図11B】種々の実施形態による複数の孔の概略図である。
図11C】種々の実施形態による複数の孔の概略図である。
図11D】種々の実施形態による複数の孔の概略図である。
図11E】種々の実施形態による複数の孔の概略図である。
【0016】
図12図1のゴルフクラブヘッドを製造する方法を示すフローチャートである。
【0017】
図13】ゴルフクラブヘッドのクラウンに沿った複数の孔の配置を示す別の実施形態によるゴルフクラブヘッドのクラウンの一部の頂面図である。
【0018】
図14図13のゴルフクラブヘッドの底面図である。
【0019】
図15】ゴルフクラブヘッドの第1の領域と第2の領域との間の分割を示すため、第1の平面と、第1の平面の、ゴルフクラブヘッドのフェースによって画定されたロフト面との並列関係と、を示す、図13のゴルフクラブヘッドの簡略図である。
【0020】
図16】第1の平面によって設けられた釣鐘形の曲線による、ゴルフクラブヘッドの、第1の領域と第2の領域とへの分割を示す、図13のゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0021】
図17図13のゴルフクラブヘッドを製造する方法を示すフローチャートである。
【0022】
図18】ゴルフクラブヘッドのクラウンに沿った複数の孔の配置を示す別の実施形態によるゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0023】
図19図18のゴルフクラブヘッドの底面図である。
【0024】
図20】第1の平面、ならびにゴルフクラブヘッドの第1の領域と第2の領域との間の分割を示すため、第1の平面の、ゴルフクラブヘッドのフェースによって画定されたロフト面との並列関係を示す、図18のゴルフクラブヘッドの簡略図である。
【0025】
図21】第1の平面によって設けられた釣鐘形の曲線による、ゴルフクラブヘッドの、第1の領域と第2の領域とへの分割を示す、図18のゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0026】
図22図18のゴルフクラブヘッドの複数の孔のいくつかの孔の概略図である。
【0027】
図23図18のゴルフクラブヘッドを製造する方法を示すフローチャートである。
【0028】
図24】ゴルフクラブヘッドのクラウンに沿った複数の孔の配置を示す別の実施形態によるゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0029】
図25図24のゴルフクラブヘッドの底面図である。
【0030】
図26】ゴルフクラブヘッドの第1の領域と第2の領域との間の分割を示すため、第1の平面と、第1の平面の、ゴルフクラブヘッドのフェースによって画定されたロフト面との並列関係と、を示す、図24のゴルフクラブヘッドの簡略図である。
【0031】
図27】第1の平面によって設けられた釣鐘形の曲線による、ゴルフクラブヘッドの、第1の領域と第2の領域とへの分割を示す、図24のゴルフクラブヘッドの頂面図である。
【0032】
図28図24のゴルフクラブヘッドを製造する方法を示すフローチャートである。
【0033】
図29】いくつかの実施形態によるゴルフクラブヘッドの応力プロファイルを示すグラフである。
【0034】
図30図29に示した応力プロファイルに使用したゴルフクラブヘッドの実施形態である。
図31図29に示した応力プロファイルに使用したゴルフクラブヘッドの実施形態である。
図32図29に示した応力プロファイルに使用したゴルフクラブヘッドの実施形態である。
図33図29に示した応力プロファイルに使用したゴルフクラブヘッドの実施形態である。
図34図29に示した応力プロファイルに使用したゴルフクラブヘッドの実施形態である。
図35図29に示した応力プロファイルに使用したゴルフクラブヘッドの実施形態である。
【0035】
図36】いくつかの実施形態によるゴルフクラブヘッドの応力プロファイルを示す別のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面において対応する参照符号は対応する要素を示す。図に使用される表題は、特許請求の範囲の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0037】
ゴルフクラブヘッドは、ゴルフボールの、ゴルフクラブヘッドのフェースに対する衝突によって発生した力の作用を示すため、いくつかの領域に分割されうる。前述のように、第1の領域は、ゴルフクラブヘッドのフェースによって画定される衝突面と連なっている。このため、ゴルフボールの、フェースにおける衝突は、ゴルフボールによる衝突の力によって発生した内部応力がゴルフクラブヘッドの第1の領域内に伝わり、そこに直に作用する直接の原因となる。ゴルフボールの、フェースに対する衝突後に発生した力により生じる応力および振動が、第1の領域と比較して、第2の領域において相対的に低くなるように、ゴルフクラブヘッドの第2の領域を、ゴルフクラブヘッドの第1の領域とバックとの間に画定してもよい。
【0038】
図面を参照すると、ゴルフクラブヘッドの一実施形態が図1に図示され、全体として100で示される。一般に、ゴルフクラブヘッド100は、フェース102と、ソール105と、ヒール106と、トウ110と、複数の溝115と、を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド100は、単一部材であっても、共に製造した複数の部分を含んでもよい。1つの例では、ゴルフクラブヘッド100は、鋳造法または他の適切な種類の製造法によって形成される中空体であってもよい。なお、フェース102は、ゴルフクラブヘッド100の一体部品であってもよい。あるいは、フェース102は、ゴルフクラブヘッド100の本体と別個の部品であっても、ゴルフクラブヘッド100の本体に挿入されるものであってもよい。
【0039】
ゴルフクラブヘッド100は、シャフト(図示せず)に係合するように構成された孔113を画定するホーゼル108を含む。特に、シャフトは、一端においてゴルフクラブヘッド100に係合してもよく、反対端においてグリップ(図示せず)に係合してもよい。例えば、ゴルフクラブヘッド100は、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、2番ウッドゴルフクラブ、3番ウッドゴルフクラブ、4番ウッドゴルフクラブ、5番ウッドゴルフクラブ、6番ウッドゴルフクラブ、7番ウッドゴルフクラブ、8番ウッドゴルフクラブまたは9番ウッドゴルフクラブ)、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド、もしくは1つ以上のキャビティ、孔、凹部またはチャネルを有する中空体または本体を備えた任意の他の適切な種類のゴルフクラブヘッドなどのウッド型ゴルフクラブであってもよい。上記の例では、ウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッド、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド)について示すおよび/または説明するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法を、他の適切な種類のゴルフクラブヘッドに適用してもよい。
【0040】
なお、フェース102を、ホーゼル108の近傍に形成してもよく、ゴルフボール(図示せず)を打つための面を提供する。フェース102は、鋼材、チタン材、チタン合金材、チタンベース材などの、1つ以上の金属または金属合金、それらの組み合わせ、1つ以上の複合材料、1つ以上のプラスチック材料、または他の適切な種類の材料から作製してもよい。しかしながら、フェース102は、以下により詳細に記載されるような、ゴルフクラブヘッド100に含まれるものと同じ材料から作製してもよい。特に、フェース102は、図1に全体として115で示される複数の溝を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド100は、フェース102に対向して形成されるバック111をさらに含み、ソール105は、バック111とフェース102との間に画定されている。さらに示されるように、クラウン109は、ソール105に対向して形成される一方で、フェース102は、ホーゼル108の近傍に形成されるヒール106と、フェース102の最遠端部に画定されるトウ110とによって画定される。フェース102は、クラウン109とフェース102との間に画定されるトップエッジ104と、ソール105とフェース102との間に画定されるリーディングエッジ103とをさらに含む。一実施形態では、バック111は、ゴルフクラブヘッド100の重心および慣性モーメントを変えるための挿入物134を受容するように構成されているキャビティ132を画定してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法はこの点に関して限定されない。ゴルフクラブヘッド100は、種々のゴルフ規格関連機関、統括団体および/または規則設定団体によって定められるゴルフの規則および/または規格に適合するものであるが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0041】
図9を参照すると、一実施形態では、クラウン109は、第1の領域118と、第1の領域118と第2の領域120との間の境界を画定してもよい釣鐘形の曲線122を有する第2の領域120とを含んでもよい。釣鐘形の曲線の詳細は米国特許第7,892,111号明細書に提供されており、その全開示が参照によって組み込まれる。第1の領域118は、ゴルフボール(図示せず)などの物体によるゴルフクラブヘッド100のフェース102に対する衝突に応答して、第2の領域120よりも比較的高い応力を支持し、かつ耐えてもよい。1つの例では、釣鐘形の曲線122は、第1の点125と、第2の点126と、第3の点127と、を含んでもよい。第1の点125は、ゴルフクラブヘッド100のトウ110に、またはその近傍に配置してもよい。一方で、第2の点126は、ゴルフクラブヘッド100のヒール106に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点127は、第1の点125と第2の点126との間に画定される中点に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点127は、第1の点125および第2の点126よりもゴルフクラブヘッド100のバック111の近くに画定される。
【0042】
図8に示すように、クラウン109の第1の領域118と第2の領域120との間の境界を画定する釣鐘形の曲線122は、フェース102のロフト角114と、所定の距離D1だけ離れた第1の平面116との間の関係によって決定されてもよい。一実施形態では、所定の距離D1は、フェース102のトップエッジ104と、第1の平面116の、第1の平面116がクラウン109に交差する位置との間の距離として画定してもよい。例えば、所定の距離D1は、1インチよりも大きくてもよい。あるいは、所定の距離D1は、フェース102のリーディングエッジ103と、第1の平面116がソール105に交差する第1の平面116の位置との間の距離として画定してもよい。なお、第1の平面116の位置は、ゴルフクラブヘッド100のロフト角114の向きまたは角度によって設定してもよい。一実施形態では、ロフト角114は、特定のゴルフクラブヘッド100のフェース102の角度によって設定してもよい。例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッドのロフト角114は、6°〜16°の範囲であってもよく、その一方で、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッドのロフト角114は、12°〜30°の範囲であってもよい。ハイブリッド型ゴルフクラブヘッドのロフト角114は、16°〜34°の範囲であってもよい。したがって、クラウン109に沿う釣鐘形の曲線122の位置を、第1の平面116の、クラウン109との交点により決定し、釣鐘形の曲線122の第1の点125および第2の点126(図9)または第3の点127のいずれかの位置を設定してもよい。
【0043】
図1〜7を参照すると、ゴルフクラブヘッド100の一実施形態は、クラウン109の第2の領域120に配置された外周124によって画定された凹部128内に形成された複数の孔112をさらに含んでもよい。1つの例では、釣鐘形の曲線122は、外周124の、第1の領域118と連通する部分を画定してもよい。凹部128が、クラウン109上において第1の領域118よりも相対的に低く配置されるように、凹部128は、また、外周124に沿って画定される凹部リップ136を形成してもよい。
【0044】
図10は、孔112のうちの4つの概略図を示す。各孔112は、直径DAを有してもよく、隣接する孔から外周間距離PPおよび中心間距離CCだけ離間している。孔112が一定距離CCで離間している場合、直径DAを増加すると距離PPが減少し、直径DAを減少すると距離PPが増加するため、直径DAと距離PPとは反対に影響しあう。例えば、孔112Aにより示されるように(すなわち、より大きな孔は破線で示される)、直径DA1は孔112の直径DAよりも大きい。したがって、距離PP1は、距離PPよりも小さい。別の例では、孔112Bにより示されるように(すなわち、より小さな孔は破線で示される)、直径DA2は、孔112の直径DAよりも小さい。したがって、距離PP2は、距離PPよりも大きい。
【0045】
孔112Aは一定距離CCにおける最大孔サイズを示してもよい。記載した最大孔サイズよりも大きないかなる孔サイズもゴルフクラブヘッド100の強度および構造弾性を損なう可能性のあるような程度まで距離PPを減少させる可能性がある。しかしながら、最大孔サイズは、クラウン109が構成される材料および/またはクラウン109の厚さなどのゴルフクラブヘッドの物理的特性によって変えてもよい。例えば、クラウン109を構成する材料の剛性を増加することによって、より大きな最大孔サイズを可能にしてもよい。
【0046】
孔112Bは、一定距離CCにおける最小孔サイズを示すものであってもよい。記載した最小孔サイズよりも小さないかなる孔サイズも、本明細書中に記載される、孔112をクラウン109上に有することにより、ゴルフクラブヘッドに付与される特性を減少させる可能性がある。しかしながら、最小孔サイズは、クラウンが構成される材料および/またはクラウンの厚さなどの、ゴルフクラブヘッドの物理的特性によって変えてもよい。例えば、クラウン109が構成される材料の剛性が低下することによって、最小許容孔サイズが減少する場合がある。
【0047】
図10を参照すると、線119は、フェース102を概略的および全般的に示す。孔112は、線119に対して菱形パターンで配置されている。しかしながら、本明細書中に記載されるゴルフクラブヘッドの特性を提供するため、あらゆる孔パターンおよび/または向きを使用してもよい。
【0048】
図11A〜Eを参照すると、異なる孔パターンのいくつかの例が示される。図11Aでは、孔112は、正方形パターンで配置されている。図11Bでは、6つの孔112が中心孔112を囲んでおり、六角形パターンに類似している。図11Cでは、孔112は、三角形パターンで配置されている。図11Dでは、孔112は、いかなる孔も含まない大きな中央部分121を有する大きな正方形パターンで配置されている。図11Eでは、孔112は、ランダムなパターンで配置されている。図11A〜Eのパターンは例示的なものであり、クラウン上の孔パターンの数多くの可能性を示す。さらに、孔112が異なるサイズを有する場合、可能となる孔パターンの数が増加してもよい。
【0049】
上記の図10の例示的な説明では、距離CCが一定とされる一方で、直径DAおよび距離PPは変えられる。しかしながら、図11A〜Eに示されるように、特定の孔サイズ、距離、パターン、向きおよび/またはクラウン109上における分布を提供するために、パラメータDA、PPまたはCCのいずれを変えてもよいし、一定としてもよい。例えば、直径DAが一定である場合、すなわち、特定の孔サイズが好適である場合、距離CCと距離PPとは、直接影響しあう。例えば、距離CCが減少すると距離PPも減少する。別の例では、距離PPが一定である場合、すなわち、同じ外周間距離PPを有する孔が好適である場合、クラウン109上における孔112の好適な分布構成を提供するため、距離CCと直径DAとの両方を変えてもよい。したがって、特定の孔サイズ、孔間距離、パターン、向きおよび/またはクラウン109上における分布パターンを提供するため、隣接する孔112のそれぞれの対について、パラメータDA、PPおよびCCの任意の1つまたは複数を変えることができる。
【0050】
1つの例では、直径DAに対する距離PPの比率は以下の式に従い固定してもよい。
【0051】
PP=DA・R
【0052】
ここで、Rは定数を示す。Rは実験結果に基づき決定してもよく、実験結果のいくつかは、以下に詳細に記載される。一例によれば、異なる孔構成を有する実験結果は、特定の物理的特性および材料特性を有するゴルフクラブヘッドにおいて、1.23の値を有するRが、ゴルフクラブヘッドに十分な強度および構造弾性を付与する一方で、クラウンからほぼ最適なまたは最適な量の質量を除去することを示した。前述の実験結果を本明細書中に詳細に記載する。したがって、直径DAが0.093”(0.2cm)であれば、距離PPは0.115”(0.3cm)である。
【0053】
一態様では、クラウン109の第2の領域120内の凹部に配置された複数の孔112により、ゴルフクラブヘッド100の一部分から質量が除去され、その質量は、ゴルフクラブヘッド100の別のより最適な位置に移動されるが、なお十分な強度および構造弾性が、ゴルフクラブヘッド100に付与される。加えて、複数の孔112により、ゴルフボール(図示せず)の、フェース102への衝突後、孔を全く有しないクラウン109と比較して、クラウン109全体にわたり全般的により均一な力の分布が提供される。複数の孔112のこの構造配置は、フェース102における衝撃力は、これら力がクラウン109の第2の領域120に伝わる間、ゴルフクラブヘッドの特定の部分100、特に、クラウン109の、複数の孔112間に画定される部分に集中することを防ぐ。この、複数の孔112による、衝突後の、クラウン109全体にわたる全般的により均一な力の分布は、また、上述した、衝突後の、第2の領域120全体にわたるこれら力の不均一分布に起因する、応力上昇要素またはクラウン109の特定の領域に衝撃力を集中させる応力集中要素に起因しうる経時的なゴルフクラブヘッド100の構造破損を防止する。
【0054】
一実施形態では、複数の孔112を被覆するため、保護カバー130をクラウン109に係合させてもよい。保護カバー130は、あらゆる種類の金属材料、人工材料または天然材料で構成してもよい。例えば、保護カバー130は、保護カバー130がクラウン109の一部または全体のいずれかに接着し、かつそれを被覆することを可能にする接着剤を片面に有する、ポリカーボネートまたは高分子材料から作製したフィルムまたはテープであってもよい。いくつかの実施形態では、保護カバー130は、高い耐衝撃性を示す一方で、低い耐ひっかき性も有するポリカーボネート材料から作製してもよい。他の実施形態では、保護カバー130は、ポリエチレン、ネオプレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはそれらの組み合わせなどの任意の種類の高分子材料から作製してもよい。別の実施形態では、保護カバー130は、保護カバー130の、凹部128の外周124に沿った構造的係合(structural engagement)を可能にし、複数の孔112を被覆する、上述したものと同じ材料から作製される剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー130がクラウン109の第2の領域120の領域、例えば、凹部128の領域がクラウン109の第1の領域118と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、保護カバー130では、より大きな孔を有する先行技術のゴルフクラブヘッドにおいて使用されている保護カバーに必要な任意の構造補強を、クラウン109に設ける必要はない。本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0055】
上記の実施形態では凹部(例えば、凹部128)を含むゴルフクラブヘッド100を記載するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は凹部を含まなくてもよい。例えば、複数の孔112は、第2の領域120が第1の領域118と同一面上になるように、クラウン109の第2の領域120に沿って画定してもよい。したがって、ゴルフクラブヘッド100のいくつかの実施形態では、複数の孔112を形成するための領域を画定するための凹部128および/または複数の孔112を覆うための、またはそうでなければ被覆するための保護カバー130を必要としない。
【0056】
他の実施形態では、複数の孔112のそれぞれは様々な直径を有してもよい。複数の孔112の各孔112の直径は、0.005インチ〜0.40インチ(例えば、0.0127cm〜1.016cm)であってもよい。下限値は、0.005インチ(0.0127cm)、0.006インチ(0.0152cm)、0.007インチ(0.0178cm)、0.008インチ(0.0203cm)、0.009インチ(0.0229cm)、0.01インチ(0.0254cm)、0.02インチ(0.0508cm)、0.03インチ(0.0762cm)または0.04インチ(0.1016cm)であってもよい。孔112の直径の上限は、0.32インチ(0.813cm)、0.33インチ(0.838cm)、0.34インチ(0.864cm)、0.35インチ(0.889cm)、0.36インチ(0.914cm)、0.37インチ(0.940cm)、0.39インチ(0.991cm)または0.40インチ(0.1.016cm)であってもよい。
【0057】
別の例では、複数の孔112の各孔112の直径の範囲は、0.05インチ(0.127cm)〜0.31インチ(例えば、0.05インチ(0.127cm)、0.06インチ(0.152cm)、0.07インチ(0.179cm)、0.08インチ(0.203cm)、0.09インチ(0.229cm)、0.10インチ(0.254cm)、0.11インチ(0.279cm)、0.12インチ(0.305cm)、0.13インチ(0.330cm)、0.14インチ(0.356cm)、0.15インチ(0.381cm)、0.16インチ(0.406cm)、0.17インチ(0.432cm)、0.18インチ(0.457cm)、0.19インチ(0.483cm)、0.20インチ(0.508cm)、0.21インチ(0.533cm)、0.22インチ(0.559cm)、0.23インチ(0.584cm)0.24インチ(0.610cm)、0.25インチ(0.635cm)、0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.686cm)、0.28インチ(0.711cm)、0.29インチ(0.737cm)、0.30インチ(0.762cm)または0.31インチ(0.787cm))であってもよい。さらに別の例では、複数の孔112の各孔112の直径は、0.022インチ(0.0559cm)、0.020インチ(0.0508cm)、0.018インチ(0.0457)、または0.016インチ(0.0406cm)、または0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.689)、0.28インチ(0.711cm)、または0.29インチ(0.737cm)であってもよい。別の実施形態では、複数の孔112の各孔112の直径は0.093インチ(0.236cm)であってもよい。
【0058】
上記の例のいくつかでは、同一の直径または実質的に類似する直径を有する複数の孔112の全てを記載しているが、装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。例えば、複数の孔112の2つ以上の孔は、異なる直径を有してもよい(例えば、複数の孔112の直径は孔ごとに異なってもよい)。特に、以下に詳細に記載されるように、第1の孔は第1の直径と関連付けてもよく、第2の孔は第2の直径と関連付けてもよい。第1の直径は第2の直径よりも大きい。
【0059】
一実施形態では、複数の孔112の各孔112は0.30インチ(0.762cm)以下の直径を有してもよい。別の実施形態では、複数の孔112の各孔112は、0.25インチ(0.635cm)以下の直径を有してもよい。他の実施形態では、複数の孔112は、0.20インチ(0.508cm)以下の直径を有してもよく、その一方で、他の実施形態では、複数の孔112のそれぞれは、0.175インチ(0.444cm)、0.150インチ(0.381cm)、0.125インチ(0.312cm)、0.100インチ(0.254)、0.093インチ(0.236cm)、0.075(0.191cm)または0.050(0.127cm)以下の直径を各々有してもよい。なお、クラウン109の第2の領域120に沿って画定される孔112の数は、複数の孔112の直径に依存する。例えば、0.25インチ(0.635cm)の孔直径を有するゴルフクラブヘッド100は、約60個の孔を有してもよく、その一方で、0.093インチ(0.236cm)の孔直径を有するゴルフクラブヘッド100は、約576個の孔を有してもよい。別の例では、0.093インチ(0.236cm)と0.040インチ(0.102cm)の孔直径の組み合わせを有するゴルフクラブヘッド100は、約1500個の孔を有してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。特に、複数の孔112の数および/またはサイズは、ゴルフクラブヘッド100(例えば、470cc以下のゴルフクラブヘッド)の体積に基づいて変更してもよい。
【0060】
複数の孔112は、また、異なる構成およびサイズを画定してもよい。例えば、複数の孔112は、丸形構成、楕円形構成、菱形構成、正方形構成、矩形構成、六角形構成、五角形構成、線形構成および/または非線形構成を有してもよい。加えて、複数の孔112は、特定のパターンの範囲内において異なる直径または構成を有してもよい。最後に、第2の領域120内の孔112のパターンは、繰り返しパターン、非繰り返しパターン、対称パターンおよび/または非対称パターンを画定してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。さらに、上記の例では、ゴルフクラブヘッド100のクラウン109上に配置された複数の孔112について記載したが、複数の孔112を、ゴルフクラブヘッドの他の部分(例えば、ソールのみ、クラウンとソール等)に配置してもよい。
【0061】
一実施形態では、ゴルフクラブヘッド100は、鋼、鋼合金、チタン、チタン合金(例えば、チタン6−4またはチタン8−1−1)から作製してもよい。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッド100は、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタンアルミナイド、繊維ベースの複合材および金属マトリックス複合材、またはそれらの混合物を含む1つ以上の材料から作製してもよい。いくつかの実施形態では、繊維ベースの複合材は、炭素繊維、ファイバーグラス、またはKEVLAR(登録商標)、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、チタンの割合は、チタン合金については、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%、完全に100%チタンで作製されたゴルフクラブヘッド100については100%であってもよい。他の実施形態では、ファイバーグラスの割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。さらに他の実施形態では、KEVLAR(登録商標)の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、KEVLAR(登録商標)は、任意の種類のパラ系アラミド合成繊維であってもよい。いくつかの実施形態では、炭素繊維の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、ゴルフクラブヘッド100は、50%がチタンであり、50%が1つ以上の繊維ベースの複合材であってもよいが、他の実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッドは上記のいずれの割合のチタンを、1つ以上の各々の割合の繊維ベースの複合材と組み合わせて含んでもよい。
【0062】
図12を参照すると、フローチャートは、複数の孔112を有するゴルフクラブヘッド100を製造するための1つの方法を示している。ブロック1000では、ゴルフクラブヘッド100を形成するための型(図示せず)が提供される。ブロック1002では、フェース102と、ソール105と、ヒール106と、トウ110と、バック111と、クラウン109と、シャフトに係合するように構成された孔113を画定するホーゼル108と、を有するゴルフクラブヘッド100が、型を使用して形成される。一実施形態では、型によって形成されたクラウン109は、ゴルフクラブヘッド100のバック111とフロントエッジ104との間に画定される。なお、型を使用して、凹部128をクラウン109に沿って画定してもよい。ブロック1004では、複数の孔112が、クラウン109に沿って形成される。複数の孔112は、クラウン109の材料を完全に貫通する孔112を形成する打ち抜き工程を使用して形成してもよい。代わりとして、複数の孔112ではなく、複数の小さな凹部(図示せず)を、クラウン109の材料内に形成してもよいが、それらは、クラウン109の材料を完全に貫通しなくてもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。ブロック1006では、保護カバー130は、クラウン109の部分に沿って画定される外周124内の複数の孔112に係合し、かつそれらを被覆するように構成してもよい。上述したように、保護カバー130は、保護カバー130がクラウン109の一部または全体のいずれかに接着し、かつそれを被覆することを可能にする接着剤を片面に有するポリカーボネートまたはプラスチック材料から作製したフィルムまたはテープであってもよく、その一方で、別の実施形態においては、保護カバー130は、凹部128によって画定される外周124に沿って構造的に係合し、複数の孔112を被覆する剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー130がクラウン109の第2の領域120の領域、例えば、凹部128が、クラウン109の第1の領域118と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0063】
動作の特定の順序を図12に示すが、これら動作を他の時間的順序において実施してもよい。例えば、図12に示される2つ以上の動作を、連続的に、並行して、または同時に実施してもよい。あるいは、示される2つ以上の動作を逆の順序で実施してもよい。さらに、図12に示される1つ以上の動作を全く実施しなくてもよい。本明細書中に記載される装置、方法および製造物品はこの点に関して限定されない。
【0064】
図13〜17を参照すると、ゴルフクラブヘッドの別の実施形態が図示され、全体として200で示される。一般に、ゴルフクラブヘッド200は、フェース202と、ソール205と、ヒール206と、トウ210と、を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド200は、また、フェース202上の複数の溝215を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド200は、単一部材であっても、一緒に製造された複数の部分を含んでもよい。1つの例では、ゴルフクラブヘッド200は、鋳造法または他の適切な種類の製造法によって形成される中空体であってもよい。なお、フェース202は、ゴルフクラブヘッド200の一体部品であってもよい。あるいは、フェース202は、ゴルフクラブヘッド200の本体と別個の部品であっても、ゴルフクラブヘッド200の本体の挿入物であってもよい。
【0065】
ゴルフクラブヘッド200は、シャフト(図示せず)に係合するように構成された孔213を画定するホーゼル208を含む。特に、シャフトは、一端においてゴルフクラブヘッド200に係合してもよく、反対端においてグリップ(図示せず)に係合してもよい。例えば、ゴルフクラブヘッド200は、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、2番ウッドゴルフクラブ、3番ウッドゴルフクラブ、4番ウッドゴルフクラブ、5番ウッドゴルフクラブ、6番ウッドゴルフクラブ、7番ウッドゴルフクラブ、8番ウッドゴルフクラブまたは9番ウッドゴルフクラブ)、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド、もしくは1つ以上のキャビティ、孔、凹部またはチャネルを有する中空体または本体を備えた任意の他の適切な種類のゴルフクラブヘッドなどのウッド型ゴルフクラブであってもよい。上記の例では、ウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッド、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド)を示すおよび/または説明するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、他の適切な種類のゴルフクラブヘッドに適用してもよい。
【0066】
なお、フェース202を、ホーゼル208の近傍に形成してもよく、ゴルフボール(図示せず)を打つための面を提供する。フェース202は、鋼材、チタン材、チタン合金材、チタンベース材などの、1つ以上の金属または金属合金、それらの組み合わせ、1つ以上の複合材料、1つ以上のプラスチック材料、または他の適切な種類の材料から作製してもよい。しかしながら、フェース202は、以下により詳細に記載されるような、ゴルフクラブヘッド200に含まれるものと同じ材料から作製してもよい。特に、フェース202は、複数の溝215を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド200は、フェース202に対向して形成されるバック211をさらに含み、ソール205がバック211とフェース202との間に画定される。さらに示されるように、クラウン209は、ソール205に対向して形成される。一方で、フェース202は、ホーゼル208の近傍に形成されるヒール206と、フェース202の最遠端部に画定されるトウ210とによって画定される。フェース202は、クラウン209とフェース202との間に画定されるトップエッジ204と、ソール205とフェース202との間に画定されるリーディングエッジ203とをさらに含む。ゴルフクラブヘッド200は、種々のゴルフ規格関連機関、統括団体および/または規則設定団体によって定められるゴルフの規則および/または規格に適合するものであるが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0067】
図16を参照すると、一実施形態では、クラウン209は、第1の領域218と、第1の領域218と第2の領域220との間の境界を画定してもよい釣鐘形の曲線222を有する第2の領域220とを含んでもよい。釣鐘形の曲線の詳細は米国特許第7,892,111号明細書に記載されている。第1の領域218は、ゴルフボール(図示せず)などの物体によるゴルフクラブヘッド200のフェース202おける衝突に応答して、第2の領域220よりも比較的高い応力を支持し、かつ耐えてもよい。1つの例では、釣鐘形の曲線222は、第1の点225と、第2の点226と、第3の点227と、を含んでもよい。第1の点225は、ゴルフクラブヘッド200のトウ210に、またはその近傍に配置してもよい一方で、第2の点226は、ゴルフクラブヘッド200のヒール206に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点227は、第1の点225と第2の点226との間に画定される中点に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点227は、第1の点225および第2の点226よりもゴルフクラブヘッド200のバック211の近くに画定される。
【0068】
図15に示すように、クラウン209の第1の領域218と第2の領域220との間の境界を画定する釣鐘形の曲線222は、フェース202のロフト角214と、所定の距離D1だけ離れた第1の平面216との間の関係によって決定されてもよい。一実施形態においては、所定の距離D1は、フェース202のトップエッジ204と、第1の平面216の、第1の平面216がクラウン209に交差する位置との間の距離として画定してもよい。例えば、所定の距離D1は、1インチよりも大きくてもよい。あるいは、所定の距離D1は、フェース202のリーディングエッジ203と、第1の平面216がソール205に交差する第1の平面216の位置との間の距離として画定してもよい。なお、第1の平面216の位置は、ゴルフクラブヘッド200のロフト角214の向きまたは角度によって設定してもよい。一実施形態では、ロフト角214は特定のゴルフクラブヘッド200のフェース102の角度によって設定してもよい。例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッドのロフト角214は、6°〜16°の範囲であってもよく、その一方で、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッドのロフト角214は、12°〜30°の範囲であってもよい。ハイブリッド型ゴルフクラブヘッドのロフト角214は、16°〜34°の範囲であってもよい。したがって、クラウン209に沿う釣鐘形の曲線222の位置を、第1の平面216の、クラウン209との交点により決定し、釣鐘形の曲線122の第1の点225および第2の点226(図16)または第3の点227のいずれかの位置を設定してもよい。
【0069】
図13を参照すると、ゴルフクラブヘッド200の一実施形態は、クラウン209の第2の領域220に配置された外周224によって画定された凹部228内に形成された複数の孔212をさらに含んでもよい。1つの例では、釣鐘形の曲線222は、外周224の、第1の領域218に連通する部分を画定してもよい。凹部228が、クラウン209上において第1の領域218よりも相対的に低く配置されるように、凹部228は、また、外周224に沿って画定される凹部リップ236を形成してもよい。ゴルフクラブヘッド200は、また、クラウン209の特定の位置において、クラウン209の剛性を増加するため、第2の領域220に、補強リブ219を含んでもよい。図13の例では、補強リブ219A〜Cと称される3つの補強リブが、クラウン209上に設けられる。補強リブ219A〜Cは、クラウン209の、孔212を含まない領域により画定されてもよい。したがって、補強リブ219は、クラウン209の、補強リブ219を画定する部分に孔212を形成しないことによってクラウン209上に形成してもよい。
【0070】
図13の例に示すように、補強リブ219Aは、フェース202に対して略垂直であり、補強リブ219Bと補強リブ219Cとに分岐し、略Y字形の補強構造を形成してもよい。補強リブ219Aは、近接部から釣鐘形の曲線222の第3の点227に、バック211に向かって延びてもよい。したがって、フェース202にかかる衝撃力は、部分的に補強リブ219Aに伝達されてもよい。第2の領域220の特定の位置において、補強リブ219Bおよび補強リブ219Cは衝撃力を、バック211に分散するか拡散する。図13は、特に、補強リブ219A〜Cとして示される補強リブ219の一例を示す。しかしながら、任意の補強リブ構成をクラウン209上に設けることができる。各補強リブ219の幅、長さ、向きは、クラウン209のサイズ、厚さまたはクラウン209、孔212のサイズ、分布パターンおよび他の特性、および/またはクラウン209が構成される材料に依存してもよい。例えば、補強リブ219A〜Cはクラウン220上に、フェース202にかかる衝撃力から生じる、クラウン209上の最大応力位置(highest stress locations)に一致するよう戦略的に配置されうる。一般に、補強リブの幅は、孔212の最大寸法よりも大きくてもよい。例えば、孔212が円形であれば、補強リブ219の幅は孔212の直径よりも大きくてもよい。さらに、補強リブ219の幅は、任意の2つの隣接する孔212間の最大距離よりも大きくてもよい。
【0071】
補強リブ219は、クラウン209、もしくはクラウン209の、大きな衝撃力または高い応力が生じる領域に、構造補強を提供する。補強リブ219は、また、クラウン209全体における高い応力の均一な分配を補助してもよい。したがって、補強リブ219があるため、孔212のサイズ、パターン、向き、形状および/または分布は、図1〜12に従い、上述した実施形態の孔112と比較して異なってもよい。例えば、クラウン209上に補強リブ219を有することは、より高い孔密度(aperture density)(すなわち、面積当たりの孔)を可能にしてもよく、これは、互いにより接近するより多数の孔を有することによって達成してもよい。別の例では、孔212のサイズを増加してもよいし、補強リブ219があることにより、孔212間の距離を、孔112と比較して低減してもよい。したがって、補強リブ219の形状、サイズ、向き、パターンまたは他の特性は、図1〜12の実施形態と類似の結果を達成するための孔212の形状、サイズ、向き、分布パターンまたは他の特性に直接影響してもよい。
【0072】
一態様では、クラウン209の第2の領域220内に位置する複数の孔212により、ゴルフクラブヘッド200の一部分から質量が除去され、その質量は、ゴルフクラブヘッド200の別のより最適な位置に移動されるが、なお十分な強度および構造弾性がゴルフクラブヘッド200に付与される。なお、複数の孔212により、ゴルフボール(図示せず)の、フェース202への衝突後、孔を全く有しないクラウン209と比較して、クラウン209全体にわたり、全般的により均一な力の分布が提供される。この、複数の孔212の構造配置は、フェース202にかかる衝撃力は、これら力がクラウン209の第2の領域220、特に、クラウン209の、複数の孔212間に画定される部分に伝わる間、ゴルフクラブヘッド200の特定の部分に集中することを防ぐ。しかしながら、クラウン209の他の領域に比して応力が高い特定の位置に補強リブ219を設けることができる。この、複数の孔212および補強リブ219による、衝突後の、クラウン209全体にわたる全般的により均一な力の分布は、また、上述したような、衝突後の、第2の領域220全体にわたるこれら力の不均一分布に起因する、応力上昇要素またはクラウン209の特定の領域に衝撃力を集中させる応力集中要素に起因しうる経時的なゴルフクラブヘッド200の構造破損を防止する。
【0073】
一実施形態では、複数の孔212を被覆するため、保護カバー230を、クラウン209に係合させてもよい。保護カバー230は、あらゆる種類の金属材料、人工材料または天然材料で構成してもよい。例えば、保護カバー230は、保護カバー230がクラウン209の一部または全体のいずれかに接着し、かつ、それを被覆することを可能にする接着剤を片面に有する、ポリカーボネートまたは高分子材料から作製したフィルムまたはテープであってもよい。いくつかの実施形態では、保護カバー230は、高い耐衝撃性を示す一方で、低い耐ひっかき性も有するポリカーボネート材料から作製してもよい。他の実施形態では、保護カバー230は、ポリエチレン、ネオプレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはそれらの組み合わせなどの任意の種類の高分子材料から作製してもよい。別の実施形態では、保護カバー230は、保護カバー230の、凹部228の外周224に沿った構造的係合を可能にし、複数の孔212を被覆する、上述したものと同じ材料から作製される剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー230がクラウン209の第2の領域220の領域、例えば、凹部228の領域が、クラウン209の第1の領域218と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、保護カバー230では、より大きな孔を有する先行技術のゴルフクラブヘッドにおいて使用されている保護カバーに必要な任意の構造補強を、クラウン209に設ける必要はない。本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0074】
上記の実施形態では凹部(例えば、凹部228)を含むゴルフクラブヘッド200を記載するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は凹部を含まなくてもよい。例えば、複数の孔212および補強リブ219は、第2の領域220が第1の領域218と同一面上になるように、クラウン209の第2の領域220に沿って画定してもよい。したがって、ゴルフクラブヘッド200のいくつかの実施形態では、複数の孔212および補強リブ219を形成するための領域を画定するための凹部228および/または複数の孔212を覆うための、またはそうでなければ被覆するための保護カバー230を必要としない。
【0075】
他の実施形態では、複数の孔212のそれぞれは様々な直径を有してもよい。複数の孔212の各孔212の直径は、0.005インチ〜0.40インチ(例えば、0.0127cm〜1.016cm)であってもよい。下限値は、0.005インチ(0.0127cm)、0.006インチ(0.0152cm)、0.007インチ(0.0178cm)、0.008インチ(0.0203cm)、0.009インチ(0.0229cm)、0.01インチ(0.0254cm)、0.02インチ(0.0508cm)、0.03インチ(0.0762cm)または0.04インチ(0.1016cm)であってもよい。孔112の直径の上限は、0.32インチ(0.813cm)、0.33インチ(0.838cm)、0.34インチ(0.864cm)、0.35インチ(0.889cm)、0.36インチ(0.914cm)、0.37インチ(0.940cm)、0.39インチ(0.991cm)または0.40インチ(0.1.016cm)であってもよい。
【0076】
別の例では、複数の孔212の各孔212の直径の範囲は、0.05インチ(0.127cm)〜0.31インチ(例えば、0.05インチ(0.127cm)、0.06インチ(0.152cm)、0.07インチ(0.179cm)、0.08インチ(0.203cm)、0.09インチ(0.229cm)、0.10インチ(0.254cm)、0.11インチ(0.279cm)、0.12インチ(0.305cm)、0.13インチ(0.330cm)、0.14インチ(0.356cm)、0.15インチ(0.381cm)、0.16インチ(0.406cm)、0.17インチ(0.432cm)、0.18インチ(0.457cm)、0.19インチ(0.483cm)、0.20インチ(0.508cm)、0.21インチ(0.533cm)、0.22インチ(0.559cm)、0.23インチ(0.584cm)0.24インチ(0.610cm)、0.25インチ(0.635cm)、0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.686cm)、0.28インチ(0.711cm)、0.29インチ(0.737cm)、0.30インチ(0.762cm)または0.31インチ(0.787cm))であってもよい。
【0077】
さらに別の例では、複数の孔212の各孔212の直径は、0.022インチ(0.0559cm)、0.020インチ(0.0508cm)、0.018インチ(0.0457)、または0.016インチ(0.0406cm)、または0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.689)、0.28インチ(0.711cm)、または0.29インチ(0.737cm)であってもよい。別の実施形態では、複数の孔212の各孔212の直径は0.093インチ(0.236cm)であってもよい。
【0078】
上記の例のいくつかでは、同一の直径または実質的に類似する直径を有する複数の孔212の全てを記載しているが、装置、製造物品および方法はこの点に関して限定されない。例えば、複数の孔212の2つ以上の孔が異なる直径を有してもよい(例えば、複数の孔212の直径は孔ごとに異なってもよい)。特に、以下に詳細に記載されるように、第1の孔は第1の直径と関連付けてもよく、第2の孔は第2の直径と関連付けてもよい。第1の直径は第2の直径よりも大きい。
【0079】
一実施形態では、各孔212は、0.30インチ(0.762cm)以下の直径を有してもよい。別の実施形態では、各孔212は、0.25インチ(0.635cm)以下の直径を有してもよい。他の実施形態では、複数の孔212は0.20インチ(0.508cm)以下の直径を有してもよく、その一方で、他の実施形態では、複数の孔212のそれぞれは、0.175インチ(0.444cm)、0.150インチ(0.381cm)、0.125インチ(0.312cm)、0.100インチ(0.254)、0.093インチ(0.236cm)、0.075(0.191cm)、または0.050(0.127cm)以下の直径を各々有してもよい。なお、クラウン209の第2の領域220に沿って画定される孔212の数は、複数の孔212の直径に依存する。例えば、0.25インチ(0.635cm)の孔直径を有するゴルフクラブヘッド200は、約60個の孔を有してもよく、その一方で、0.093インチ(0.236cm)の孔直径を有するゴルフクラブヘッド200は、約576個の孔を有してもよい。別の例では、0.093インチ(0.236cm)と0.040インチ(0.102cm)の孔直径の組み合わせを有するゴルフクラブヘッド100は、約1500個の孔を有してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法はこの点に関して限定されない。特に、複数の孔212の数および/またはサイズは、ゴルフクラブヘッド200(例えば、470cc以下のゴルフクラブヘッド)の体積に基づいて変更してもよい。
【0080】
複数の孔212は、また、異なる構成およびサイズを画定してもよい。例えば、複数の孔212は、丸形構成、楕円形構成、菱形構成、正方形構成、矩形構成、六角形構成、五角形構成、線形構成および/または非線形構成を有してもよい。加えて、複数の孔212は、特定のパターンの範囲内において異なる直径または構成を有してもよい。最後に、第2の領域220内の孔212のパターンは、繰り返しパターン、非繰り返しパターン、対称パターンおよび/または非対称パターンを画定してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。さらに、上記の例では、ゴルフクラブヘッド200のクラウン209に配置された複数の孔212について記載しているが、複数の孔212をゴルフクラブヘッドの他の部分(例えば、ソールのみ、クラウンとソール等)に配置してもよい。
【0081】
孔212の数およびサイズ、ならびに補強リブ219の数およびサイズは、互いに影響してもよい。例えば、互いに比較的接近した大きな孔を有するクラウンは、ゴルフクラブヘッドの十分な強度および構造弾性を提供するため、より多数の補強リブ、またはより広い/より大きな補強リブを必要としてもよい。比較的互いにかなり離れたより小さな孔は、しかしながら、クラウンの十分な強度および構造弾性を提供するため、より多数の補強リブ、またはより広い/より大きな補強リブを必要としなくてもよい。
【0082】
一実施形態では、ゴルフクラブヘッド200は、鋼、鋼合金、チタン、チタン合金(例えば、チタン6−4またはチタン8−1−1)から作製してもよい。他の実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッドは、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタンアルミナイド、繊維ベースの複合材および金属マトリックス複合材、またはそれらの混合物を含む1つ以上の材料から作製してもよい。いくつかの実施形態では、繊維ベースの複合材は、炭素繊維、ファイバーグラス、またはKEVLAR(登録商標)、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、チタンの割合は、チタン合金については、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%、完全に100%チタンで作製されたゴルフクラブヘッド200については100%であってもよい。他の実施形態では、ファイバーグラスの割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。さらに他の実施形態では、KEVLAR(登録商標)の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、KEVLAR(登録商標)は任意の種類のパラ系アラミド合成繊維であってもよい。いくつかの実施形態では、炭素繊維の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、ゴルフクラブヘッド200は、50%がチタンであり、50%が1つ以上の繊維ベースの複合材であってもよいが、他の実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッドは、上記のいずれの割合のチタンを1つ以上の各々の割合の繊維ベースの複合材と組み合わせて含んでもよい。
【0083】
図17を参照すると、フローチャートが複数の孔212を備えたゴルフクラブヘッド200を製造するための1つの方法を示す。ブロック2000では、ゴルフクラブヘッド200を形成するための型(図示せず)が提供される。ブロック2002では、フェース202と、ソール205と、ヒール206と、トウ210と、バック211と、クラウン209と、シャフトに係合するように構成された孔213を画定するホーゼル208と、を有するゴルフクラブヘッド200は、型を使用して形成される。一実施形態では、型によって形成されたクラウン209は、ゴルフクラブヘッド200のバック211とフロントエッジ204との間に画定される。なお、型を使用して、凹部228をクラウン209に沿って画定してもよい。ブロック2004では、複数の孔212が、クラウン109に沿って形成される。複数の孔212は、クラウン209の材料を完全に貫通する孔212を形成する打ち抜き工程を使用して形成してもよい。代わりとして、複数の孔212ではなく、複数の小さな凹部(図示せず)をクラウン209の材料内に形成してもよいが、それらは、クラウン209の材料を完全に貫通しなくてもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。1つの例では、ブロック2004において、補強リブ219は、クラウン209の、補強リブ219の位置に一致する部分に孔212を形成しないことによって形成してもよい。しかしながら、補強リブ219を提供するための他の方法を使用してもよい。例えば、ブロック2004において、複数の孔を形成後、リブ形状の部品を接着剤でクラウン209に取り付け、溶接、はんだ付けまたは他の固定法によって補強リブ219を形成してもよい。
【0084】
ブロック2006では、保護カバー230は、クラウン209の部分に沿って画定される外周224内の複数の孔212に係合し、かつそれらを被覆するように構成してもよい。上述したように、保護カバー230は、保護カバー230がクラウン209の一部または全体のいずれかに接着し、かつ、それを被覆することを可能にする接着剤を片面に有するポリカーボネートまたはプラスチック材料から作製したフィルムまたはテープであってもよく、その一方で、別の実施形態においては、保護カバー230は、凹部228によって画定される外周224に沿って構造的に係合し、複数の孔212を被覆する剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー230がクラウン209の第2の領域220の領域、例えば、凹部228がクラウン209の第1の領域218と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0085】
動作の特定の順序を図17に示すが、これら動作を他の時間的順序において実施してもよい。例えば、図17に示される2つ以上の動作を、連続的に、並行して、または同時に実施してもよい。あるいは、示される2つ以上の動作を逆の順序で実施してもよい。さらに、図17に示される1つ以上の動作を全く実施しなくてもよい。本明細書中に記載される装置、方法および製造物品は、この点に関して限定されない。
【0086】
図18〜23を参照すると、ゴルフクラブヘッドの別の実施形態が図示され、全体として300で示される。一般に、ゴルフクラブヘッド300は、フェース302と、ソール305と、ヒール306と、トウ310と、を含んでもよい。ゴルフクラブ300は、また、フェース302上の複数の溝315を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド300は、単一部材であっても、一緒に製造された複数の部分を含んでもよい。1つの例では、ゴルフクラブヘッド300は、鋳造法または他の適切な種類の製造法によって形成される中空体であってもよい。加えて、フェース302は、ゴルフクラブヘッド300の一体部品であってもよい。あるいは、フェース302は、ゴルフクラブヘッド300の本体と別個の部品であっても、ゴルフクラブヘッド300の本体の挿入物であってもよい。
【0087】
ゴルフクラブヘッド300は、シャフト(図示せず)に係合するように構成された孔317を画定するホーゼル308を含む。特に、シャフトは、一端においてゴルフクラブヘッド300に係合してもよく、反対端においてグリップ(図示せず)に係合してもよい。例えば、ゴルフクラブヘッド300は、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、2番ウッドゴルフクラブ、3番ウッドゴルフクラブ、4番ウッドゴルフクラブ、5番ウッドゴルフクラブ、6番ウッドゴルフクラブ、7番ウッドゴルフクラブ、8番ウッドゴルフクラブまたは9番ウッドゴルフクラブ)、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド、もしくは1つ以上のキャビティ、孔、凹部またはチャネルを有する中空体または本体を備えた任意の他の適切な種類のゴルフクラブヘッドなどのウッド型ゴルフクラブであってもよい。上記の例では、ウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッド、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド)を示すおよび/または説明するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、他の適切な種類のゴルフクラブヘッドに適用してもよい。
【0088】
なお、フェース302を、ホーゼル308の近傍に形成してもよく、ゴルフボール(図示せず)を打つための面を提供する。フェース302は、鋼材、チタン材、チタン合金材、チタンベース材などの、1つ以上の金属または金属合金、それらの組み合わせ、1つ以上の複合材料、1つ以上のプラスチック材料、または他の適切な種類の材料から作製してもよい。しかしながら、フェース302は、以下により詳細に記載されるような、ゴルフクラブヘッド300に含まれるものと同じ材料から作製してもよい。特に、フェース302は、複数の溝315を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド300は、フェース302に対向して形成されるバック311をさらに含み、ソール305がバック311とフェース302との間に画定される。さらに示されるように、クラウン309は、ソール305に対向して形成される。一方で、フェース302は、ホーゼル308の近傍に形成されるヒール306と、フェース302の最遠端部に画定されるトウ310とによって画定される。フェース302は、クラウン309とフェース302との間に画定されるトップエッジ304と、ソール305とフェース302との間に画定されるリーディングエッジ303とをさらに含む。ゴルフクラブヘッド300は種々のゴルフ規格関連機関、統括団体および/または規則設定団体によって定められるゴルフの規則および/または規格に適合するものであるが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0089】
図21を参照すると、一実施形態では、クラウン309は、第1の領域318と、第1の領域318と第2の領域320との間の境界を画定してもよい釣鐘形の曲線322を有する第2の領域320とを含んでもよい。釣鐘形の曲線の詳細は米国特許第7,892,111号明細書に記載されている。第1の領域318は、ゴルフボール(図示せず)などの物体によるゴルフクラブヘッド300のフェース302おける衝突に応答して、第2の領域320よりも比較的高い応力を支持し、かつ耐えてもよい。1つの例では、釣鐘形の曲線322は、第1の点325と、第2の点326と、第3の点327と、を含んでもよい。第1の点325は、ゴルフクラブヘッド300のトウ310に、またはその近傍に配置してもよい一方で、第2の点326は、ゴルフクラブヘッド300のヒール306に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点327は、第1の点325と第2の点326との間に画定される中点に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点327は、第1の点325および第2の点326よりもゴルフクラブヘッド300のバック311の近くに画定される。
【0090】
図21に示すように、クラウン309の第1の領域318と第2の領域320との間の境界を画定する釣鐘形の曲線322は、フェース302のロフト角314と、所定の距離D1だけ離れた第1の平面316との間の関係によって決定されてもよい。一実施形態においては、所定の距離D1は、フェース302のトップエッジ304と、第1の平面316の、第1の平面316がクラウン309に交差する位置との間の距離として画定してもよい。例えば、所定の距離D1は1インチよりも大きくてもよい。あるいは、所定の距離D1は、フェース302のリーディングエッジ303と、第1の平面316がソール305に交差する第1の平面316の位置との間の距離として画定してもよい。なお、第1の平面316の位置は、ゴルフクラブヘッド300のロフト角314の向きまたは角度によって設定してもよい。一実施形態では、ロフト角314は、特定のゴルフクラブヘッド300のフェース302の角度によって設定してもよい。例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッドのロフト角314は、6°〜16°の範囲であってもよく、その一方で、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッドのロフト角314は、12°〜30°の範囲であってもよい。ハイブリッド型ゴルフクラブヘッドのロフト角314は、16°〜34°の範囲であってもよい。したがって、クラウン309に沿う釣鐘形の曲線322の位置を、第1の平面316の、クラウン309との交点により決定し、釣鐘形の曲線132の第1の点325および第2の点326(図21)または第3の点327のいずれかの位置を設定してもよい。
【0091】
図18および図22を参照すると、ゴルフクラブヘッド300の一実施形態は、クラウン309の第2の領域320に配置された外周234によって画定された凹部328内に形成された複数の第1の孔312および複数の第2の孔317をさらに含んでもよい。以下に詳細に記載されるように、第2の孔317は、第1の孔312よりも小さい。1つの例では、釣鐘形の曲線322は、外周334の、第1の領域318に連通する部分を画定してもよい。凹部328が、クラウン309上において第1の領域318よりも相対的に低く配置されるように、凹部328は、また、外周334に沿って画定される凹部リップ336を形成してもよい。
【0092】
一態様では、クラウン309の第2の領域320内に位置する複数の孔312および317によりゴルフクラブヘッド300の一部分から質量が除去され、その質量は、ゴルフクラブヘッド300の別のより最適な位置に移動されるが、なお十分な強度および構造弾性がゴルフクラブヘッド300に付与される。なお、複数の孔312および317により、ゴルフボール(図示せず)の、フェース302への衝突後、孔を全く有しないクラウン309と比較して、クラウン309全体にわたり全般的に均一な力の分布が提供される。複数の孔312および317のこの構造配置は、これら力がクラウン309の第2の領域320、特に、クラウン309の、複数の孔312と複数の孔317との間に画定される部分に伝わる間、フェース302にかかる衝撃力がゴルフクラブヘッド300の特定の部分に集中することを防ぐ。この、複数の孔312による、衝突後の、クラウン309全体にわたる全般的に均一な力の分布は、また、上述したような、衝突後の、第2の領域320全体にわたるこれら力の不均一分布に起因する、応力上昇要素またはクラウン309の特定の領域に衝撃力を集中させる応力集中要素に起因しうる経時的なゴルフクラブヘッド300の構造破損を防止する。
【0093】
図22を参照すると、孔312および317の配置を示す拡大概略図が示される。孔312の構成および配置は、上記の孔112に類似してもよい。したがって、各孔312は、隣接する孔312から外周間距離PP1だけ離間している直径DA1を有してもよく、隣接する孔312との中心間距離CC1を有してもよい。4つの孔312の群は、各孔312に比べて小さくても、同じでも、大きくてもよい中央部分319(破線で示される)を画定する。構造の材料、寸法、厚さ等のような、クラブヘッド300および/またはクラウン309の物理的特性によっては、クラウン309の強度および構造弾性を低下させることなく、さらなる質量を中央部分319から除去してもよい。クラウン309から除去されることになるさらなる質量は、中央部分319にある孔317により実現してもよい。孔317は、クラブヘッドの物理的特性に従って大きさを決定してもよく、このため、中央部分319の残りの部分は、クラウン309の十分な強度および構造弾性を提供することができる。したがって、クラウン309からの、最適なまたはほぼ最適な質量の除去を提供するため、クラウン209の強度および構造弾性にマイナスに影響することなく、孔312および317のサイズ、スペーシング、パターン、向き、分布および他の特性を決定することができる。
【0094】
一実施形態では、複数の孔312および317を被覆するために、保護カバー330をクラウン309に係合させてもよい。保護カバー330は、あらゆる種類の金属材料、人工材料または天然材料で構成してもよい。例えば、保護カバー330は、保護カバー330がクラウン309の一部または全体のいずれかに接着し、かつそれを被覆することを可能にする接着剤を片面に有する、ポリカーボネートまたは高分子材料から作製したフィルムまたはテープであってもよい。いくつかの実施形態では、保護カバー330は、高い耐衝撃性を示す一方で、低い耐ひっかき性も有するポリカーボネート材料から作製してもよい。他の実施形態では、保護カバー330は、ポリエチレン、ネオプレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはそれらの組み合わせなどの任意の種類の高分子材料から作製してもよい。別の実施形態では、保護カバー330は、保護カバー330の、凹部328の外周234に沿った構造的係合を可能にし、複数の孔312および317を被覆する、上述したものと同じ材料から作製される剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー330がクラウン309の第2の領域320の領域、例えば、凹部328の領域がクラウン309の第1の領域318と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、保護カバー330では、より大きな孔を有する先行技術のゴルフクラブヘッドにおいて使用されている保護カバーに必要な任意の構造補強を、クラウン309に設ける必要はない。本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0095】
上記の実施形態では凹部(例えば、凹部328)を含むゴルフクラブヘッド300を記載するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は凹部を含まなくてもよい。例えば、複数の孔312および317は、第2の領域320が第1の領域318と同一面上になるように、クラウン309の第2の領域320に沿って画定してもよい。したがって、ゴルフクラブヘッド300のいくつかの実施形態では、複数の孔312および317を形成するための領域を画定するための凹部328および/または複数の孔312および317を覆うための、またはそうでなければ被覆するための保護カバー330を必要としない。
【0096】
他の実施形態では、複数の孔312および317のそれぞれは様々な直径を有してもよい。各孔312の直径は、0.005インチ〜0.40インチ(例えば、0.0127cm〜1.016cm)であってもよい。下限値は、0.005インチ(0.0127cm)、0.006インチ(0.0152cm)、0.007インチ(0.0178cm)、0.008インチ(0.0303cm)、0.009インチ(0.0329cm)、0.01インチ(0.0254cm)、0.02インチ(0.0508cm)、0.03インチ(0.0762cm)または0.04インチ(0.1016cm)であってもよい。孔312の直径の上限は、0.32インチ(0.813cm)、0.33インチ(0.838cm)、0.34インチ(0.864cm)、0.35インチ(0.889cm)、0.36インチ(0.914cm)、0.37インチ(0.940cm)、0.39インチ(0.991cm)または0.40インチ(0.1.016cm)であってもよい。別の実施形態では、複数の孔312の各孔312の直径は0.093インチ(0.236cm)であってもよい。
【0097】
別の例では、各孔312の直径の範囲は、0.05インチ(0.127cm)〜0.31インチ(例えば、0.05インチ(0.127cm)、0.06インチ(0.152cm)、0.07インチ(0.179cm)、0.08インチ(0.303cm)、0.09インチ(0.329cm)、0.10インチ(0.254cm)、0.11インチ(0.279cm)、0.12インチ(0.305cm)、0.13インチ(0.330cm)、0.14インチ(0.356cm)、0.15インチ(0.381cm)、0.16インチ(0.406cm)、0.17インチ(0.432cm)、0.18インチ(0.457cm)、0.19インチ(0.483cm)、0.30インチ(0.508cm)、0.31インチ(0.533cm)、0.32インチ(0.559cm)、0.33インチ(0.584cm)0.34インチ(0.610cm)、0.25インチ(0.635cm)、0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.686cm)、0.28インチ(0.711cm)、0.29インチ(0.737cm)、0.30インチ(0.762cm)または0.31インチ(0.787cm))であってもよい。
【0098】
さらに別の例では、各孔312の直径は、0.022インチ(0.0559cm)、0.020インチ(0.0508cm)、0.018インチ(0.0457)、または0.016インチ(0.0406cm)であっても、0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.689)、0.28インチ(0.711cm)であっても、0.29インチ(0.737cm)であってもよい。別の実施形態では、複数の孔312の各孔312の直径は0.093インチ(0.236cm)であってもよい。
【0099】
上述のように、孔317は、孔312の4つによって画定される領域である中央部分319に形成される。孔317のサイズは、中央部分319のサイズおよび/または孔312のサイズを基にしてもよい。例えば、孔317の直径は、孔312の直径の2/3、1/2または1/3などの、孔312の直径の分数であってもよい。したがって、図22を参照すると、孔312および317のサイズは以下の式に基づくものであってもよい。
DA2=F・DA1
【0100】
ここで、DA2は孔317の直径、DA1は孔312の直径、Fは直径DA2と直径DA1との間の関係を定める係数である。例えば、Fは、0.001〜約1のあらゆる値をとることができる。しかしながら、F=1では、孔312と孔317とが同じ直径を有することになり、図1〜12の実施形態に類似する。別の例では、図22を参照すると、孔317のサイズは、孔312と隣接する孔317との間の外周間距離PP1が、2つの隣接する孔312間の外周間距離PP1と同じになるように決定してもよい。したがって、孔312および孔317のサイズは、クラブヘッド300の性能、強度および構造弾性にマイナスに影響することなくクラウン309から質量が除去される、および/またはクラブヘッド300の性能を最適化する、またはほぼ最適化するように、任意の手法で、または任意の数学的関係に基づき決定してもよい。
【0101】
上記の例のいくつかでは、同一の直径または実質的に類似する直径を有する複数の孔312の全て、および/または同一の直径または実質的に類似する直径を有する複数の孔317について記載しているが、装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。例えば、複数の孔312のうち2つ以上の孔が異なる直径を有してもよい(例えば、複数の孔312の直径は孔ごとに異なってもよい)。別の例では、複数の孔317のうち2つ以上の孔は、異なる直径を有してもよい(例えば、孔317の直径は、孔ごとに異なってもよい)。
【0102】
一実施形態では、各孔312は、0.30インチ(0.762cm)以下の直径を有してもよい。別の実施形態では、各孔312は0.25インチ(0.635cm)以下の直径を有してもよい。他の実施形態では、複数の孔312は、0.20インチ(0.508cm)以下の直径を有してもよく、その一方で、他の実施形態では、複数の孔312のそれぞれは、0.175インチ(0.444cm)、0.150インチ(0.381cm)、0.125インチ(0.312cm)、0.100インチ(0.254)、0.093インチ(0.236cm)、0.075(0.191cm)、または0.050(0.127cm)以下の直径を各々有してもよい。孔312が中央部分319のサイズを画定するため、上に詳細に記載したように、孔317のサイズは孔312のサイズに依存する。
【0103】
クラウン309の第2の領域320に沿って画定される孔312の数は、複数の孔312の直径に依存する。例えば、0.25インチ(0.635cm)の孔直径を有するゴルフクラブヘッド300は、約60個の孔を有してもよく、その一方で、0.093インチ(0.236cm)の孔直径を有するゴルフクラブヘッド300は、約576個の孔を有してもよい。別の例では、0.093インチ(0.236cm)と0.040インチ(0.102cm)の孔直径の組み合わせを有するゴルフクラブヘッド300は、約1500個の孔を有してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。特に、複数の孔312の数および/またはサイズは、ゴルフクラブヘッド300(例えば、470cc以下のゴルフクラブヘッド)の体積に基づいて変更してもよい。図22を参照すると、各孔317は、4つの孔312によって囲まれている。または、各孔312は、4つの孔317によって囲まれている。したがって、孔312および孔317の数は、孔312の数をわずかに下回っても、超えてもよい。
【0104】
複数の孔312と複数の孔317は、また、異なる構成およびサイズを画定してもよい。例えば、複数の孔312は、丸形構成、楕円形構成、菱形構成、正方形構成、矩形構成、六角形構成、五角形構成、線形構成および/または非線形構成を有してもよい。したがって、孔317の形状は、孔312の形状と類似してもよい。しかしながら、孔317の形状は、孔312の形状と異なってもよい。なお、複数の孔312と複数の孔317は、特定のパターンの範囲内において異なる直径または構成を有してもよい。最後に、第2の領域320内の孔312および孔317のパターンは、繰り返しパターン、非繰り返しパターン、対称パターンおよび/または非対称パターンを画定してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。さらに、上記の例では、ゴルフクラブヘッド300のクラウン309に配置された複数の孔312および317について記載しているが、複数の孔312および/または複数の孔317をゴルフクラブヘッドの他の部分(例えば、ソールのみ、クラウンとソール等)に配置してもよい。
【0105】
一実施形態では、ゴルフクラブヘッド300は、鋼、鋼合金、チタン、チタン合金(例えば、チタン6−4またはチタン8−1−1)から作製してもよい。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッド300は、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタンアルミナイド、繊維ベースの複合材および金属マトリックス複合材、またはそれらの混合物を含む1つ以上の材料から作製してもよい。いくつかの実施形態では、繊維ベースの複合材は、炭素繊維、ファイバーグラス、またはKEVLAR(登録商標)、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、チタンの割合は、チタン合金については、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%、完全に100%チタンで作製されたゴルフクラブヘッド300については100%であってもよい。他の実施形態では、ファイバーグラスの割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。さらに他の実施形態では、KEVLAR(登録商標)の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、KEVLAR(登録商標)は任意の種類のパラ系アラミド合成繊維であってもよい。いくつかの実施形態では、炭素繊維の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッド50%がチタンであり、50%が1つ以上の繊維ベースの複合材であってもよいが、他の実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッドは、上記のいずれの割合のチタンを1つ以上の各々の割合の繊維ベースの複合材と組み合わせて含んでもよい。
【0106】
図23を参照すると、フローチャートは、複数の孔312および複数の孔317を有するゴルフクラブヘッド300を製造するための1つの方法を示す。ブロック3000では、ゴルフクラブヘッド300を形成するための型(図示せず)が提供される。ブロック3002では、フェース302と、ソール305と、ヒール306と、トウ310と、バック311と、クラウン309と、シャフトに係合するように構成された孔313を画定するホーゼル308と、を有するゴルフクラブヘッド300が、型を使用して形成される。一実施形態では、型によって形成されたクラウン309は、ゴルフクラブヘッド300のバック311とフロントエッジ304との間に画定される。なお、型を使用して、凹部328を、クラウン309に沿って画定してもよい。ブロック3004Aおよびブロック3004Bでは、複数の孔312および複数の孔317各々が、クラウン309に沿って形成される。複数の孔312は、クラウン309の材料を完全に貫通する孔312を形成する打ち抜き工程を使用して形成してもよい。代わりとして、複数の孔312ではなく、複数の凹部(図示せず)を、クラウン109の材料内に形成してもよいが、それらはクラウン109の材料を完全に貫通しなくてもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。複数の孔312と複数の孔317は、同じ打ち抜き工程によって同時に形成してもよい。換言すると、打ち抜き型は、孔312および孔317の両方を1つの工程で作製することができるように、孔312および孔317に対応する突起物を含む。したがって、ブロック3004Aおよびブロック3004Bは、一工程を示すものであってもよい。しかしながら、孔312と孔317は、別々に形成してもよい。例えば、ブロック3004Aでは、孔312は型を使用して1つの打ち抜き工程により形成してもよいが、ブロック3004Bでは、孔317は異なる型を使用して別の打ち抜き工程により形成される。
【0107】
ブロック3006では、保護カバー330は、クラウン309の部分に沿って画定される外周324内の複数の孔312および複数の孔317に係合し、かつそれらを被覆するように構成してもよい。上述したように、保護カバー330は、保護カバー330がクラウン309の一部または全体のいずれかに接着し、かつそれを被覆することを可能にする接着剤を片面に有するポリカーボネートまたはプラスチック材料から作製したフィルムまたはテープであってもよく、その一方で、別の実施形態においては、保護カバー330は、凹部328によって画定される外周324に沿って構造的に係合し、複数の孔312および複数の孔317を被覆する剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー330がクラウン309の第2の領域320の領域、例えば、凹部328がクラウン309の第1の領域318と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0108】
動作の特定の順序を図23に示すが、これら動作は他の時間的順序において実施してもよい。例えば、図23に示される2つ以上の動作を、連続的に、並行して、または同時に実施してもよい。あるいは、示される2つ以上の動作を逆の順序で実施してもよい。さらに、図23に示される1つ以上の動作を全く実施しなくてもよい。本明細書中に記載される装置、方法および製造物品は、この点に関して限定されない。
【0109】
図24〜28を参照すると、ゴルフクラブヘッドの別の実施形態が図示され、全体として400で示される。一般に、ゴルフクラブヘッド400は、フェース402と、ソール405と、ヒール406と、トウ410と、を含んでもよい。ゴルフクラブ400は、また、フェース402上の複数の溝415を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド400は、単一部材であっても、一緒に製造された複数の部分を含んでもよい。1つの例では、ゴルフクラブヘッド400は、鋳造法または他の適切な種類の製造法によって形成される中空体であってもよい。なお、フェース402は、ゴルフクラブヘッド400の一体部品であってもよい。あるいは、フェース402は、ゴルフクラブヘッド400の本体と別個の部品であっても、ゴルフクラブヘッド400の本体の挿入物であってもよい。
【0110】
ゴルフクラブヘッド400は、シャフト(図示せず)に係合するように構成された孔413を画定するホーゼル408を含む。特に、シャフトは、一端においてゴルフクラブヘッド400に係合してもよく、反対端においてグリップ(図示せず)に係合してもよい。例えば、ゴルフクラブヘッド400は、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、2番ウッドゴルフクラブ、3番ウッドゴルフクラブ、4番ウッドゴルフクラブ、5番ウッドゴルフクラブ、6番ウッドゴルフクラブ、7番ウッドゴルフクラブ、8番ウッドゴルフクラブまたは9番ウッドゴルフクラブ)、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド、もしくは1つ以上のキャビティ、孔、凹部またはチャネルを有する中空体または本体を備えた任意の他の適切な種類のゴルフクラブヘッドなどのウッド型ゴルフクラブであってもよい。上記の例では、ウッド型ゴルフクラブヘッド(例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッド、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッド、ハイブリッド型ゴルフクラブヘッド)を示すおよび/または説明するが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、他の適切な種類のゴルフクラブヘッドに適用してもよい。
【0111】
なお、フェース402を、ホーゼル408の近傍に形成してもよく、ゴルフボール(図示せず)を打つための面を提供する。フェース402は、鋼材、チタン材、チタン合金材、チタンベース材などの、1つ以上の金属または金属合金、それらの組み合わせ、1つ以上の複合材料、1つ以上のプラスチック材料、または他の適切な種類の材料から作製してもよい。しかしながら、フェース402は、以下により詳細に記載されるような、ゴルフクラブヘッド400に含まれるものと同じ材料から作製してもよい。特に、フェース402は、複数の溝415を含んでもよい。ゴルフクラブヘッド400は、フェース402に対向して形成されるバック411をさらに含み、ソール405がバック411とフェース402との間に画定される。さらに示されるように、クラウン409は、ソール405に対向して形成される。一方で、フェース402は、ホーゼル408の近傍に形成されるヒール406と、フェース402の最遠端部に画定されるトウ410とによって画定される。フェース402は、クラウン409とフェース402との間に画定されるトップエッジ404と、ソール405とフェース402との間に画定されるリーディングエッジ403とをさらに含む。ゴルフクラブヘッド400は種々のゴルフ規格関連機関、統括団体および/または規則設定団体によって定められるゴルフの規則および/または規格に適合するものであるが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0112】
図27を参照すると、一実施形態では、クラウン409は、第1の領域418と、第1の領域418と第2の領域440との間の境界を画定してもよい釣鐘形の曲線422を有する第2の領域420とを含んでもよい。釣鐘形の曲線の詳細は米国特許第7,892,111号明細書に記載されている。第1の領域418は、ゴルフボール(図示せず)などの物体によるゴルフクラブヘッド400のフェース402に対する衝突に応答し、第2の領域420よりも比較的高い応力を支持し、かつ耐えてもよい。1つの例では、釣鐘形の曲線422は、第1の点425と、第2の点426と、第3の点427と、を含んでもよい。第1の点425は、ゴルフクラブヘッド400のトウ410に、またはその近傍に配置してもよい一方で、第2の点426は、ゴルフクラブヘッド400のヒール406に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点427は、第1の点425と第2の点426との間に画定される中点に、またはその近傍に配置してもよい。第3の点427は、第1の点425および第2の点426よりもゴルフクラブヘッド400のバック411の近くに画定される。
【0113】
図27に示すように、クラウン409の第1の領域418と第2の領域440との間の境界を画定する釣鐘形の曲線422は、フェース402のロフト角414と、所定の距離D1だけ離れた第1の平面416との間の関係によって決定されてもよい。一実施形態では、所定の距離D1は、フェース402のトップエッジ404と、第1の平面416の、第1の平面416がクラウン409と交差する位置との間の距離として画定してもよい。例えば、所定の距離D1は、1インチよりも大きくてもよい。あるいは、所定の距離D1は、フェース402のリーディングエッジ403と、第1の平面416がソール405と交差する第1の平面416の位置との間の距離として画定してもよい。なお、第1の平面416の位置は、ゴルフクラブヘッド400のロフト角414の向きまたは角度によって設定してもよい。一実施形態では、ロフト角414は、特定のゴルフクラブヘッド400のフェース102の角度によって設定してもよい。例えば、ドライバ型ゴルフクラブヘッドのロフト角414は、6°〜16°の範囲であってもよく、その一方で、フェアウェイ型ゴルフクラブヘッドのロフト角414は、12°〜30°の範囲であってもよい。ハイブリッド型ゴルフクラブヘッドのロフト角414は、16°〜34°の範囲であってもよい。したがって、クラウン409に沿う釣鐘形の曲線422の位置を、第1の平面416の、クラウン409との交点によって決定し、釣鐘形の曲線142の第1の点425および第2の点426(図27)または第3の点427のいずれかの位置を設定してもよい。
【0114】
図24を参照すると、ゴルフクラブヘッド400の一実施形態は、クラウン409の第2の領域420に配置される外周424によって画定された凹部428内に形成される複数孔412A〜Fをさらに含んでもよい。複数の孔412A〜Fは、クラウン409上の孔の一例を示す。したがって、本明細書中においては、全体的に孔412A〜Fを言及するために参照符号412を使用する。1つの例では、釣鐘形の曲線422は、第1の領域418に連通する外周424の部分を画定してもよい。凹部428が、クラウン409上において第1の領域418よりも相対的に低く配置されるように、凹部428は、また、外周424に沿って画定される凹部リップ436を形成してもよい。
【0115】
一態様では、複数の孔412A〜Fによりゴルフクラブヘッド400の一部分から質量が除去され、その質量はゴルフクラブヘッド400の別のより最適な位置に移動されるが、なお十分な強度および構造弾性が、ゴルフクラブヘッド400に付与される。加えて、複数の孔412A〜Fにより、ゴルフボール(図示せず)の、フェース402への衝突後、孔を全く有しないクラウン409と比較して、クラウン409全体にわたり全般的により均一な力の分布が提供される。この複数の孔412A〜Fの構造配置により、フェース402にかかる衝撃力は、これら力がクラウン409の第2の領域420、特に、クラウン409の、複数の孔412A〜F間に画定される部分に伝わる間、ゴルフクラブヘッド400の特定の部分に集中することを防止する。この、複数の孔412A〜Fによる、衝突後の、クラウン409全体にわたる全般的により均一な力の分布は、また、上述した、衝突後の、第2の領域420全体にわたるこれら力の不均一分布に起因する、応力上昇要素またはクラウン409の特定の領域に衝撃力を集中させる応力集中要素に起因しうる経時的なゴルフクラブヘッド400の構造破損を防止する。
【0116】
孔412A〜Fは、釣鐘形の曲線422の近辺からゴルフクラブヘッド400のバック411まで、サイズが漸次的に増加する。図24に示すように、孔412Aは、釣鐘形の曲線422に最も近い孔であり、かつ孔412A〜Fのうち最小のものである。孔412Bは、わずかに大きい。同様に、孔412C〜Eの直径は、ゴルフクラブヘッド400のバック411の近傍の孔412Fまで増加する。本明細書中に詳述するように、フェース402近傍の衝撃力は、クラウン409によって、ゴルフクラブヘッド400のフェース402からバック411に向かって伝達される。したがって、衝撃力は、クラウンを通じて分散し、したがって、衝撃力は、フェース402の近傍においてより高く、かつゴルフクラブヘッド400のバック411に向かう方向に漸次的に減少する。孔412A〜Fのサイズの漸次的な変化は、クラウン409を通りゴルフクラブヘッド400のフェース402からバック411まで伝わる衝撃力の漸次的な減少に一致するように構成してもよい。したがって、ゴルフクラブヘッド400の強度および構造弾性を損なうことなく、ほぼ最適な量の質量を釣鐘形の曲線422からバック411まで漸次的な状態でクラウン409から除去してもよい。
【0117】
一実施形態では、複数の孔412A〜Fを被覆するため、保護カバー430をクラウン409に係合させてもよい。保護カバー430は、あらゆる種類の金属材料、人工材料または天然材料で構成してもよい。例えば、保護カバー430は、保護カバー430がクラウン409の一部または全体のいずれかに接着し、かつ被覆することを可能にする接着剤を片面に有するポリカーボネートまたは高分子材料から作製したフィルムまたはテープであってもよい。いくつかの実施形態では、保護カバー430は、高い耐衝撃性を示す一方で、低い耐ひっかき性も有するポリカーボネート材料から作製してもよい。他の実施形態では、保護カバー430は、ポリエチレン、ネオプレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはそれらの組み合わせなどの任意の種類の高分子材料から作製してもよい。別の実施形態では、保護カバー430は、保護カバー430の、凹部428の外周424に沿った構造的係合を可能にし、複数の孔412を被覆する、上述したものと同じ材料から作製される剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー430は、クラウン409の第2の領域420の領域、例えば、凹部428の領域がクラウン409の第1の領域418と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、保護カバー430では、より大きな孔を有する先行技術のゴルフクラブヘッドにおいて使用されている保護カバーに必要な任意の構造補強をクラウン409に設ける必要はない。本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0118】
上記の実施形態では、凹部(例えば、凹部428)を含むゴルフクラブヘッド400について記載しているが、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、凹部を含まなくてもよい。例えば、複数の孔412A〜Fは、第2の領域420が第1の領域418と同一面上になるように、クラウン409の第2の領域420に沿って画定してもよい。したがって、ゴルフクラブヘッド400のいくつかの実施形態では、複数の孔412A〜Fを形成するための領域を画定するための凹部428および/または複数の孔412A〜Fを覆うための、またはそうでなければ被覆するための保護カバー430を必要としない。
【0119】
他の実施形態では、複数の孔412A〜Fは様々な直径を有してもよい。各孔412A〜Fの直径は、0.005インチ〜0.40インチ(例えば、0.0127cm〜1.016cm)であってもよい。下限値は、0.005インチ(0.0127cm)、0.006インチ(0.0152cm)、0.007インチ(0.0178cm)、0.008インチ(0.0403cm)、0.009インチ(0.0429cm)、0.01インチ(0.0254cm)、0.02インチ(0.0508cm)、0.03インチ(0.0762cm)または0.04インチ(0.1016cm)であってもよい。孔412A〜Fの直径の上限は、0.32インチ(0.813cm)、0.33インチ(0.838cm)、0.34インチ(0.864cm)、0.35インチ(0.889cm)、0.36インチ(0.914cm)、0.37インチ(0.940cm)、0.39インチ(0.991cm)または0.40インチ(0.1.016cm)であってもよい。
【0120】
別の例では、各孔412A〜Fの直径の範囲は、0.05インチ(0.127cm)〜0.31インチ(例えば、0.05インチ(0.127cm)、0.06インチ(0.152cm)、0.07インチ(0.179cm)、0.08インチ(0.403cm)、0.09インチ(0.429cm)、0.10インチ(0.254cm)、0.11インチ(0.279cm)、0.12インチ(0.305cm)、0.13インチ(0.330cm)、0.14インチ(0.356cm)、0.15インチ(0.381cm)、0.16インチ(0.406cm)、0.17インチ(0.432cm)、0.18インチ(0.457cm)、0.19インチ(0.483cm)、0.40インチ(0.508cm)、0.41インチ(0.533cm)、0.42インチ(0.559cm)、0.43インチ(0.584cm)0.24インチ(0.610cm)、0.25インチ(0.635cm)、0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.686cm)、0.28インチ(0.711cm)、0.29インチ(0.737cm)、0.30インチ(0.762cm)または0.31インチ(0.787cm))であってもよい。
【0121】
さらに別の例では、各孔412A〜Fの直径は、0.022インチ(0.0559cm)、0.020インチ(0.0508cm)、0.018インチ(0.0457)、または0.016インチ(0.0406cm)、または0.26インチ(0.660cm)、0.27インチ(0.689)、0.28インチ(0.711cm)、または0.29インチ(0.737cm)であってもよい。別の実施形態では、各孔412A〜Fの直径は、0.093インチ(0.236cm)であってもよい。クラウン409の第2の領域420に沿って画定される孔412A〜Fの数は、孔412A〜Fの直径に依存する。複数の孔412A〜Fの数および/またはサイズは、ゴルフクラブヘッド400の体積(例えば、470cc以下のゴルフクラブヘッド)に基づいて変更してもよい。
【0122】
上記では、孔412A〜Fの例示的なサイズを提供した。孔412A〜Fのサイズは、漸次的に増加するため、最小の孔412Aは、上記の孔サイズのうち小さな方に含まれてもよく、最大の孔412Fは、上記の孔サイズのうち大きな方に含まれてもよい。孔412B〜Eのサイズは、孔412Aのサイズと孔412Fのサイズとの間に含まれる。
【0123】
複数の孔412A〜Fは、また、異なる構成およびサイズを画定してもよい。例えば、複数の孔412A〜Fは、丸形構成、楕円形構成、菱形構成、正方形構成、矩形構成、六角形構成、五角形構成、線形構成および/または非線形構成を有してもよい。なお、孔412A、孔412B、孔412C、孔412D、孔412Eおよび孔412Fの各列は、隣接する列の孔と異なる形状を有してもよい。さらに、孔412A〜Fの各列内の孔は、同じ列内の隣接する孔と異なる形状および/またはサイズを有してもよい。第2の領域120内の孔412A〜Fのパターンは、繰り返しパターン、非繰り返しパターン、対称パターンおよび/または非対称パターンを画定してもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。さらに、上記の例では、ゴルフクラブヘッド400のクラウン409に配置された複数の孔412A〜Fについて記載しているが、複数の孔412を、ゴルフクラブヘッドの他の部分(例えば、ソールのみ、クラウンとソール等)に配置してもよい。例示的な孔412A〜Fは、漸次的に拡大する孔の6つの列を画定する。しかしながら、漸次的に増加する、および/または構成を変化する、より多いまたは少ない列、行、または斜めに向いた孔を、クラウン409上に設けることができる。
【0124】
一実施形態では、ゴルフクラブヘッド400は、鋼、鋼合金、チタン、チタン合金(例えば、チタン6−4またはチタン8−1−1)から作製してもよい。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッド400は、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタンアルミナイド、繊維ベースの複合材および金属マトリックス複合材、またはそれらの混合物を含む1つ以上の材料から作製してもよい。いくつかの実施形態では、繊維ベースの複合材は、炭素繊維、ファイバーグラス、またはKEVLAR(登録商標)、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、チタンの割合は、チタン合金については、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%、完全に100%チタンで作製されたゴルフクラブヘッド400については、100%であってもよい。他の実施形態では、ファイバーグラスの割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。さらに他の実施形態では、KEVLAR(登録商標)の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、KEVLAR(登録商標)は、任意の種類のパラ系アラミド合成繊維であってもよい。いくつかの実施形態では、炭素繊維の割合は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッドは50%がチタンであり、50%が1つ以上の繊維ベースの複合材であってもよいが、他の実施形態では、本開示によるゴルフクラブヘッドは、上記のいずれの割合のチタンを1つ以上の各々の割合の繊維ベースの複合材と組み合わせて含んでもよい。
【0125】
図28を参照すると、フローチャートが複数の孔412A〜Fを備えたゴルフクラブヘッド400を製造するための1つの方法を示す。ブロック4000では、ゴルフクラブヘッド400を形成するための型(図示せず)が提供される。ブロック4002では、フェース402と、ソール405と、ヒール406と、トウ410と、バック411と、クラウン409と、シャフトに係合するように構成された孔413を画定するホーゼル408と、を有するゴルフクラブヘッド400が、型を使用して形成される。一実施形態では、型によって形成されたクラウン409は、ゴルフクラブヘッド400のバック411とフロントエッジ404との間に画定される。なお、型を使用して、凹部428をクラウン409に沿って画定してもよい。ブロック4004Aでは、孔412Aは、クラウン409に沿って形成される。ブロック4004Bでは、孔412Bはクラウン409に沿って形成される。孔412C〜Eを形成するための工程は、同様に、ブロック4004Fにおいて、孔412Fがクラウン409に沿って形成されるまで継続される。上に記載した例によれば、複数の孔412A〜Fは、クラウン409の材料を完全に貫通する孔412を形成する打ち抜き工程を使用して形成してもよい。代わりとして、複数の孔412A〜Fではなく、複数の凹部(図示せず)をクラウン409の材料内に形成してもよいが、それらはクラウン409の材料内を完全に貫通しなくてもよい。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法はこの点に関して限定されない。複数の孔412A〜Fは、クラウン409上に同時に形成してもよい。例えば、打ち抜き型は、孔412A〜Fを1つの打ち抜き工程で形成することができるように、孔412A〜Fのすべてに対応する突起物を含んでもよい。しかしながら、孔412A、孔412B、孔412C、孔412D、孔412Eまたは孔412Fの列のいずれを、別個の打ち抜き型および/または工程によってクラウン409上に形成してもよい。例えば、孔412Aは、第1の打ち抜き工程において第1の打ち抜き型によって形成してもよい。孔412Bは、第2の打ち抜き工程において第2の打ち抜き型によって形成してもよい。孔412Cは、第3の打ち抜き工程において第3の打ち抜き型によって形成してもよい。孔412Dは、第4の打ち抜き工程において第4の打ち抜き型によって形成してもよい。孔412Eは、第5の打ち抜き工程において第5の打ち抜き型によって形成してもよい。孔412Fは、第6の打ち抜き工程において第6の打ち抜き型によって形成してもよい。したがって、孔412A〜Fを、1つの工程または複数の工程において形成してもよい。
【0126】
ブロック4006では、保護カバー430は、クラウン409の部分に沿って画定される外周424内の複数の孔412に係合し、それらを被覆するように構成してもよい。上述したように、保護カバー430は、保護カバー430がクラウン409の一部または全体のいずれかに接着し、かつそれを被覆することを可能にする接着剤を片面に有するポリカーボネートまたはプラスチック材料から作製したフィルムまたはテープであってもよく、その一方で、別の実施形態においては、保護カバー430は、凹部428によって画定される外周424に沿って構造的に係合し、複数の孔412を被覆する剛性のカバーであってもよい。これら配置のいずれにおいても、保護カバー430が、クラウン409の第2の領域420の領域、例えば、凹部428がクラウン409の第1の領域418と同じ高さになることを可能にする。しかしながら、本明細書中に記載される装置、製造物品および方法は、この点に関して限定されない。
【0127】
動作の特定の順序を図28に示すが、これら動作は、他の時間的順序において実施してもよい。例えば、図28に示される2つ以上の動作を、連続的に、並行して、または同時に実施してもよい。あるいは、示される2つ以上の動作を逆の順序で実施してもよい。さらに、図28に示される1つ以上の動作を全く実施しなくてもよい。本明細書中に記載される装置、方法および製造物品は、この点に関して限定されない。
【0128】
図29を参照すると、ゴルフボールの、各ゴルフクラブヘッドのフェースへの衝突後、各々のゴルフクラブヘッドによって生じた応力特性を特定するため、6つの異なるゴルフクラブヘッドにおいて実施した試験の結果を示すグラフが示される。各ゴルフクラブヘッドについて、クラウンの中心において経時的に発生した応力の量を測定することにより、試験を実施した。試験に使用した全てのゴルフクラブヘッドは、同じチタン合金から作製されたものであり、唯一の違いは、クラウンの孔のサイズおよび配置であった。中実のクラウンを有する参照ゴルフクラブヘッドは例外である。グラフは、ゴルフボールの衝突時および衝突後、クラウンの中心において経時的に発生した応力値のレベルを示すためのタイムラインを含む。なお、タイムラインは、ゴルフボールがフェースに接触するピークインパクト(peak impact)の時間を示す第1の垂直基準線800と、ゴルフボールの、ゴルフクラブヘッドのフェースとの接触の終了を示す第2の基準線810とを含む。したがって、2つの基準線800と810の間の時間は、衝突時、ゴルフボールがゴルフボールヘッドのフェースに実際に接触している時間を示す。
【0129】
図30〜35は、本明細書中に記載した試験に使用されるクラブヘッド900、910、920、930、940および950を各々示す。クラブヘッド900は参照クラブヘッドであり、いかなる孔も有しない。クラブヘッド910は、図1〜12の実施形態のクラブヘッド100に類似しており、複数の孔912を含む。図31の実施形態では、孔912のそれぞれは、0.093インチ(0.2cm)の直径を有する。クラブヘッド920は、また、図1〜12の実施形態のクラブヘッド100に類似しており、複数の孔922を含む。しかしながら、孔922のそれぞれは、0.3インチ(0.8cm)の直径を有する。したがって、孔922は、孔912よりも大きい。クラブヘッド930は、補強部材939を備えた2つの大きな孔932を含み、補強部材939の各側には、孔932が画定される。クラブヘッド940は、3つの大きな孔942を含み、2つの補強部材949は、その各側に孔942を画定する。クラブヘッド950は、複数の孔952と、クラブヘッド950のバックの近傍の大きな腎臓形の孔954とを含む。
【0130】
図29のグラフに示すように、ゴルフボールを各ゴルフクラブのフェースで打つ際に各クラブの各々のクラウンのほぼ中心にかかる応力を測定することによって、上記のクラブヘッドを試験した。ゴルフボールのフェースへの衝突時および衝突後の他のゴルフクラブヘッドの性能を測定するための上限測定基準(upper end metric)を設けるための参照クラブヘッドとしてクラブヘッド900を使用した。ゴルフクラブヘッド900は、ゴルフボールの衝突時および衝突後、クラウンの中心において、ある期間にわたり変動が最小限であるか全くない、かなり小さな応力値を生じるため、このようなゴルフクラブヘッドは、クラウン内に形成された種々のサイズの孔を有するゴルフクラブヘッドの応力プロファイルの比較のための優れた参照または対照ゴルフクラブヘッドであると考えられる。
【0131】
上述したように、図30〜35のクラブヘッドは、サイズおよび形状が類似しており、同じ材料から構成されている。したがって、図30〜35のゴルフクラブヘッドのそれぞれにおける応力対時間のプロット(以下、応力プロファイルと呼ぶ)は、ゴルフボールを打つ際の、各クラブヘッドの応力プロファイルに対する孔サイズおよび構成の影響を示す。参照クラブヘッド900の応力プロファイルは、図31〜35の他のクラブヘッドの応力プロファイルに対して最適な応力プロファイルを示してもよい。したがって、図31〜35のクラブヘッドの中から、最適なクラブヘッド孔サイズおよび構成を決定するため、図31〜35の各クラブヘッドの応力プロファイルを、参照クラブヘッド900の応力プロファイルと比較することができる。クラブヘッドの孔の数が少ないほど、および/または孔のサイズが小さいほど、このクラブヘッドの応力プロファイルは、参照クラブヘッド900の応力プロファイルに類似しうる。しかしながら、より少数の孔および/またはより小さな孔を有すると、クラブヘッド900に対してクラブヘッドの性能を向上させるために、クラブヘッドが十分に重量低減されず、クラブヘッドの重心が十分に移動しない。したがって、最適な孔サイズは、可能な限りクラブヘッド900の応力プロファイルに近い応力プロファイルを提供する一方で、また、個人が使用する際、クラブの性能を最適化するために最大の重量低減およびクラブヘッドの重心の移動を提供する孔サイズとして画定してもよい。したがって、孔サイズの最適な範囲は、最適な孔サイズに近似する様々な孔サイズで画定してもよく、この範囲内にある孔サイズは、ほぼ最適な応力プロファイル、重量低減および重心移動を提供する。
【0132】
グラフに示すように、フェースへのゴルフボールの衝突時の参照ゴルフクラブヘッド900の動作特性は、わずか約5,000psiのピーク応力値を示し、500〜1000psiの応力値に即座に低下する。この場合、ゴルフボールがフェースに衝突を続ける間、変動は、最小限であるか全くない。ゴルフクラブヘッド910は、ゴルフクラブヘッド900と類似の応力プロファイルを示すようである。ゴルフクラブヘッド910は、約14,000psiのピーク応力値に達し、同様に、3,000〜6,000psiの値範囲に即座に低下する。この場合、衝突後、応力値の変動は最小限であるか全くない。
【0133】
対照的に、0.30インチの直径を有する孔を備えたゴルフクラブヘッド920は、約23,000psiのピーク応力値に達し、衝突後、ゴルフボールがゴルフクラブヘッド920のフェースから離れてかなり経過した後も、応力値が4,000psiからピーク値の約24,000psiの間の範囲で、継続的に変動した。ゴルフクラブヘッド930およびゴルフクラブヘッド940は、さらに高いピーク応力値およびより広い範囲で継続的な変動を示した。複数の孔および腎臓形状の孔配置を有するゴルフクラブヘッド950は、ゴルフクラブヘッド930およびゴルフクラブヘッド940よりも低いピーク応力値を示したが、クラブヘッド910よりも高い応力値を示し、試験したタイムフレーム内において、大きな継続的な変動を有した。特に、ゴルフクラブヘッド930は、ゴルフボールによる衝突時、約45,000psiの高い応力値に達し、衝突後、約55,000psiのピーク応力値に達した。この場合、それら応力値の継続的な変動は、1つの変動で最低約9,000psi〜最高約55,000psiの範囲であった。ゴルフクラブヘッド940は、ゴルフボールによる衝突時、約53,000psiの高い応力値に達し、ゴルフボールによる衝突後、約80,000psiのピーク応力値に達した。この場合、鋭く、比較的高いピーク応力であった。このような、ゴルフクラブヘッドの製造に使用されるチタン合金の弾性限度に比して高いピーク応力値は、ゴルフクラブヘッドの構造破損につながる可能性がある。例えば、チタン合金は115,000psi〜125,000psiの弾性限度を有し、ピーク応力値がその弾性限度の20%未満であるか、約23,000〜25,000psiであることが望ましい。試験結果に基づき、ゴルフクラブヘッド920は、弾性限度の約20%のピーク応力値を有し、ゴルフクラブヘッド930およびゴルフクラブヘッド940は、弾性限度のそれぞれ約32%および44%のピーク応力値に達する。ゴルフクラブヘッド950は、弾性限度をわずかに上回るピーク応力値を有する。比較すると、ゴルフクラブヘッド910および参照ゴルフクラブヘッド900は、それぞれ約11%および4%のピーク応力値に達する。これらは、ゴルフクラブヘッド920、930、940および950よりもかなり低い。したがって、ゴルフクラブヘッド910は、クラウン内に形成された孔を有する他のゴルフクラブヘッド920、930、940および950よりもかなり低い応力プロファイルを有する。
【0134】
参照ゴルフクラブヘッド900に対する上記6つのゴルフクラブヘッドのこれら試験結果は、0.093インチの直径を有する孔を備えたゴルフクラブヘッド910が、参照ゴルフクラブヘッド900と実質的に類似する応力プロファイルを有することを示す。特に、参照ゴルフクラブヘッド900およびゴルフクラブヘッド910の両方は、衝突時、実質的に釣鐘形の分布を形成する応力値を有する。この分布では、衝突時に応力値が徐々に上昇して最大になり、その後、徐々に減少し、衝突後は、変動がわずかであるか全くない。この非変動応力プロファイルが好適とされよう。その理由は、ゴルフクラブヘッドに印加される応力(最終的にゴルフクラブヘッドの構造破損を引き起こす可能性がある)が低下し、また、ゴルフボールによる衝突後、クラウン全体にわたり力を比例分布するからである。上述のように、応力上昇要素または応力集中要素を発生させないため、この力の比例分布は好適であろう。
【0135】
対照的に、前述のように、ゴルフクラブヘッド910よりも大きな孔を有するゴルフクラブヘッド920、930、940および950は、クラウンの中心において非常に高いピーク応力値および変動応力プロファイルを示した。このようなピーク応力値は、応力値の継続的な変動と併せて、ゴルフボールによる繰り返しの衝突後、経時的にゴルフクラブヘッドの構造破損を引き起こすことが明らかとなっているため望ましくない。ある試験では、対象ゴルフクラブヘッドのフェースに対する衝突の数は、1,000〜2,000回の衝突であっても、2,000〜4,000回の衝突であっても、4,000回の衝突であっても、それを超える衝突であってもよい。仮想衝突解析では、ゴルフクラブヘッド910の構造破損はフェースにおいて発生し、クラウンでは発生せず、その一方で、他のゴルフクラブヘッド920、930、940および950の構造破損は、クラウンにおいてのみ、特に、クラウンの、孔と孔との間の部分において発生することを示した。これはゴルフクラブヘッド910に比べて高い応力上昇要素によるものである。
【0136】
図36に示される別のグラフでは、最適な性能が提供される範囲内にある0.25インチ(例えば、0.64cm)の直径を有する複数の孔を有する、960で示される、ゴルフクラブヘッドの別の実施形態の応力プロファイルが示される。ゴルフクラブヘッド960の応力プロファイルを、参照ゴルフクラブヘッド900の応力プロファイル、0.093インチ(例えば、0.24cm)の直径を有する孔を備えたゴルフクラブヘッド910の応力プロファイル、および0.30インチ(例えば、0.76cm)の直径を有する孔を備えたゴルフクラブヘッド920の応力プロファイルと比較した。図36のグラフに示すように、0.25インチ(例えば、0.64cm)の孔を有するゴルフクラブヘッド960は、衝突時、約22,000psiのピーク応力値に達するが、これは、0.30インチの孔を有するゴルフクラブヘッド920に類似するものである。しかしながら、ゴルフクラブヘッド920の応力値は、衝突後、実質的に同じピーク応力値(例えば、20,000psi〜22,000psi)まで継続的に変動する。その一方で、ゴルフクラブヘッド960の応力値は、衝突時、徐々に減少し、10,000psi〜12,000psiから約4,000psiの間の範囲のかなり低い応力値において変動する。ゴルフクラブヘッド920の応力値の、4,000psi〜22,000psi(18,000psi)の範囲は、ゴルフクラブヘッド920を曲げる、少ない曲げを生じさせるゴルフクラブヘッド960の5,000psi〜10,000psi(5,000psi)の範囲よりもかなり大きな範囲の変動である。したがって、ゴルフクラブヘッド960は、図1〜12の実施形態による孔のサイズの上限となりうる。換言すると、ゴルフクラブヘッドの材料構造および他の物理的特性によるが、直径0.25インチ(例えば、0.64cm)以下の孔を有する図1〜12の実施形態によるゴルフクラブヘッドは、最適な性能を提供する範囲内にある一方で、直径0.25インチ超の孔を有するゴルフクラブヘッドは、最適な性能を提供する範囲外にある。
【0137】
図36を参照すると、変更した参照クラブ980に試験を実施し、参照ゴルフクラブヘッド900の半分の厚さ(例えば、0.015インチまたは0.04cm)のクラウン深さを有する中実クラブのゴルフクラブヘッドの応力プロファイルが、最適な性能の範囲内にある0.093インチ(例えば、0.24cm)の直径をそれぞれが有する複数の孔112を有するゴルフクラブヘッド910の応力プロファイルに実質的に類似することを示した。示されるように、それぞれが0.093インチの直径を有する複数の孔912を有するゴルフクラブヘッド910は、参照ゴルフクラブヘッド900の半分の厚さを有する変更した参照ゴルフクラブヘッド980と類似の応力プロファイルを有し、それによって、複数の孔912を有するゴルフクラブヘッド910が中実構造で形成されたゴルフクラブヘッドと類似の応力プロファイル性能を有することが実証される。
【0138】
類似のサイズ、幾何学的形状、構造の材料、クラウン厚さ(クラブヘッド980以外)および他の物理的特性を有するクラブヘッドに上記の試験を実施した。ゴルフクラブヘッド30〜35の群の中で、0.093インチの孔を有するゴルフクラブヘッド31においてほぼ最適な結果が得られるものと思われる。しかしながら、ゴルフクラブヘッド30〜35とは異なるサイズ、幾何学的形状、構造の材料、クラウン厚さおよび/または他の物理的特性を有するクラブヘッドにおいては、0.093インチ以外の孔サイズにおいてほぼ最適な結果を得ることができる。例えば、クラブヘッド31よりも大きなクラブヘッドでは、0.093インチ超の孔サイズにおいてほぼ最適な結果を得ることができる。したがって、前述した実験結果では、試験したクラブヘッド31〜35の群の中では、0.093インチの孔サイズにおいて最良の結果が得られることが明らかになっているが、実験結果では、ほぼ最適なまたは最適な結果を達するために孔サイズを特定のサイズに限定していない。さらに、実験結果は、好適な結果を得るために孔構成を特定の構成に限定することなく、孔構成の、ゴルフクラブヘッドの振動および応力特性に対する影響を示す。
【0139】
本明細書中に記載される実施形態では、クラウンは中空である。したがって、ボールをゴルフクラブヘッドのフェースで打つとき、クラウンの振動によりクラウン内部に音が発生し、その後、クラウンの孔から放出される。これは、ギターまたはバイオリンまたはドラムなどの打楽器に類似している。孔および/またはクラウンのサイズ、向き、分布パターン、形状および他の特性が、ボールを打つ際にゴルフクラブヘッドにより生成される音に影響する可能性がある。したがって、特定のタイプの音が好適である場合、孔および/またはクラウンは、特定のタイプの音をほぼ生成する、または生成するように構成することができる。例えば、ゴルファーにブランドの認識を促すため、ゴルフクラブの特定のブランドに関連する特定の孔構成によって識別性のある音を生成してもよい。
【0140】
さらに、本明細書中に記載した孔を備えるゴルフクラブヘッドおよび製造の方法は種々の実施形態において実施してもよく、これら実施形態についての前述の説明は、可能なあらゆる実施形態についての完全な説明を必ずしも示すわけではない。むしろ、図面の詳細な説明および図面自体は、エッジ構成を備えるゴルフクラブヘッドおよび製造の方法の少なくとも1つの好適な実施形態を開示するものであり、孔を備えるゴルフクラブヘッドおよび製造の方法の別の実施形態を開示しうるものである。孔を備えるゴルフクラブヘッドおよび製造の方法の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されるものとする。
【0141】
任意の特定の請求項に請求される全ての要素は、その特定の請求項に請求される孔を備えるゴルフクラブまたは製造の方法に必須のものである。したがって、1つ以上の請求した要素の交換は、再構成をなすものであり、修正ではない。さらに、特定の実施形態についての利益、他の利点および課題に対する解決策が記載されている。利益、利点、課題に対する解決策、ならびに任意の利益、利点または解決策を生じさせる、またはより顕著にする任意の1つまたは複数の要素は、しかしながら、特許請求の範囲のいずれかまたは全ての重要な、必要なまたは必須の特徴または要素として解釈されるものではない。
【0142】
本発明を種々の態様と関連付けて記載したが、本発明はさらに変形可能であることが理解されよう。本出願は、一般に本発明の原理に従い、本発明が関連する技術において公知であり、かつ慣行であるような、本開示からの逸脱を含む、本発明のいかなる変形形態、使用、あるいは改変形態も包含することを意図するものである。
以下に、本実施例の特徴を列挙する。
(特徴1)
フェース、ヒール、トウ、及び、トップエッジと、
フェースに対向して画定されるバックと、
フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンと、を備え、
クラウンは、
フェースに対して凹んだ中心部分を有する第1の領域と、
第1の領域とバックとの間の第2の領域と、
第2の領域にある複数の孔であって、少なくとも1つの孔の最大寸法が0.3インチ以下である、複数の孔と、
を備える、ゴルフクラブヘッド。
(特徴2)
孔のすべては、略等しい最大寸法を有する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴3)
孔のうちの少なくとも2つは、異なる最大寸法を有する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴4)
複数の孔は、孔の少なくとも1つの繰り返しパターンを画定する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴5)
第2の領域に画定される凹部をさらに備え、複数の孔は、凹部内に画定される、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴6)
複数の孔を被覆するため、クラウンに係合するように構成されている保護カバーをさらに備える、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴7)
複数の孔の数は、60〜1500個の範囲である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴8)
フェース、ヒール、トウ、及び、トップエッジと、
フェースに対向して画定されるバックと、
フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンと、を備え、
クラウンは、
第1の領域とバックとの間の第2の領域と、
第2の領域にある複数の孔であって、少なくとも1つの孔の最大寸法が0.3インチ以下である、複数の孔と、
第2の領域にあり、かつフェースとバックとの間に延在する少なくとも1つの補強リブであって、補強リブの最小幅が孔の最大寸法よりも大きい、少なくとも1つの補強リブと、
を備える、ゴルフクラブヘッド。
(特徴9)
孔のすべては、略等しい最大寸法を有する、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴10)
孔のうちの少なくとも2つは、異なる最大寸法を有する、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴11)
複数の孔は、孔の少なくとも1つの繰り返しパターンを画定する、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴12)
第2の領域に画定される凹部をさらに備え、複数の孔は、凹部内に画定される、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴13)
複数の孔を被覆するため、クラウンに係合するように構成されている保護カバーをさらに備える、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴14)
複数の孔の数は、60〜1500個の範囲である、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴15)
フェース、ヒール、トウ、及び、トップエッジと、
フェースに対向して画定されるバックと、
フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンであって、第2の領域にある複数の孔を備え、隣接する孔と比較して、各孔のサイズがフェースからバックの方向に漸次的に増加する、クラウンと、
を備える、ゴルフクラブヘッド。
(特徴16)
複数の孔は、孔の少なくとも1つの繰り返しパターンを画定する、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴17)
第2の領域に画定される凹部をさらに備え、複数の孔は、凹部内に画定される、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴18)
複数の孔を被覆するため、クラウンに係合するように構成されている保護カバーをさらに備える、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴19)
複数の孔の数は、60〜1500個の範囲である、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
(特徴20)
ゴルフクラブのためのクラブヘッドの製造方法であって、
フェースと、ヒールと、トウと、トップエッジと、フェースに対向して画定されるバックと、フェースのトップエッジからバックまでの間、ならびにヒールからトウまでの間に延在するクラウンと、を備えるクラブヘッドを形成するステップと、
クラウンに複数の孔を形成するステップであって、少なくとも1つの孔の最大寸法が0.3インチ以下であり、クラウンは、フェースに対して凹んだ中心部分を有する第1の領域と、第1の領域とバックとの間の第2の領域と、を画定し、孔が第2の領域に形成される、ステップと、
を備える、方法。
(特徴21)
第2の領域に複数の孔を形成する前に、第2の領域に凹部を形成するステップをさらに備える、請求項20に記載の方法。
(特徴22)
複数の孔を形成するステップは、複数の孔を形成するためにクラウンを打ち抜くステップを備える、請求項20に記載の方法。
(特徴23)
少なくとも1つの補強リブを第2の領域に形成するステップをさらに備える、請求項20に記載の方法。
(特徴24)
少なくとも1つの補強リブを第2の領域に形成するステップをさらに備え、補強リブは、第2の領域の、孔のない部分によって画定される、請求項20に記載の方法。
(特徴25)
第2の領域にカバーを取り付けるステップをさらに備える、請求項20に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-7】
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36