(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917581
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】営巣材落下防止ネット
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
E04G21/32 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-28492(P2014-28492)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-151819(P2015-151819A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
(72)【発明者】
【氏名】神田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 博之
(72)【発明者】
【氏名】池淵 強
(72)【発明者】
【氏名】田中 努
(72)【発明者】
【氏名】佐野 智大
(72)【発明者】
【氏名】大國 竜幸
(72)【発明者】
【氏名】両見 雄二
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−261123(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3103978(JP,U)
【文献】
特開2005−318696(JP,A)
【文献】
特開2011−006841(JP,A)
【文献】
特開2011−072197(JP,A)
【文献】
特開2012−205324(JP,A)
【文献】
特開2008−029265(JP,A)
【文献】
特開2013−090510(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3002989(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網材を袋状にした営巣受け部と、
該営巣受け部の開口部を開いた状態で、営巣受け部を被固定部材に固定するための固定手段とを備え、
営巣受け部は、開口部側が帯状に形成された細目の網材で構成され、該細目の網材よりも底部側が帯状に形成された粗目の網材で構成され、
前記細目の網材は、収容する営巣材を、底部を構成する粗目の網材内まで落とし込みすべく案内する幅の帯状であることを特徴とする営巣材落下防止ネット。
【請求項2】
袋状にした営巣受け部と、
該営巣受け部の開口部を開いた状態で、営巣受け部を被固定部材に固定するための固定手段とを備え、
営巣受け部は、開口部側が帯状に形成されたシートで構成され、該シートよりも底部側が帯状に形成された網材で構成され、
前記シートは、収容する営巣材を、底部を構成する網材内まで落とし込みすべく案内する幅の帯状であることを特徴とする営巣材落下防止ネット。
【請求項3】
前記固定手段は、営巣受け部の開口部から延出して設けられた紐材、あるいは、営巣受け部の開口部に取り付けられた面ファスナーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の営巣材落下防止ネット。
【請求項4】
営巣受け部は、営巣受け部の開口部に挿通された紐材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の営巣材落下防止ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄塔のアームに営巣された営巣材を撤去する際に、アームから営巣材が落下するのを防止するための営巣材落下防止ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電柱で営巣された営巣材を撤去する際に使用される種々の営巣材落下防止ネットが提供されている。例えば、電柱の腕金に営巣された営巣材の下方に、枠体に張設された網材を配置する営巣材落下防止ネットが提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
この営巣材落下防止ネットは、矩形状の枠体と、該枠体に張設された網材と、枠体に取り付けられた複数の吊部材とを備える。
【0004】
そして、撤去した営巣材を網材に向かって落下させて収容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−261123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の営巣材落下防止ネットの場合、撤去した営巣材を網材に落とし込む際、場合によっては、網材の開口部近傍に営巣材が引っ掛かって、網材の開口部から網材内に落とし込めず、営巣材を網材で包み込んで収容できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、撤去した営巣材を網材の開口部近傍に引っ掛けることなく、網材の開口部から網材内に確実に落とし込んで収容できる営巣材落下防止ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る営巣材落下防止ネットは、網材を袋状にした営巣受け部と、該営巣受け部の開口部を開いた状態で、営巣受け部を被固定部材に固定するための固定手段とを備え、営巣受け部は、開口部側
が帯状に形成された細目の網材で構成され、
該細目の網材よりも底部側が帯状に形成された粗目の網材で構成され
、前記細目の網材は、収容する営巣材を、底部を構成する粗目の網材内まで落とし込みすべく案内する幅の帯状であることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、細目の網材及び粗目の網材によって風をうまく逃がすことができて、風の影響を受けることなく、営巣受け部を被固定部材に取り付けることができる。また、開口部側の所定範囲の細目の網材の開口部近傍に営巣材を引っ掛けることなく、営巣受け部の開口部から営巣受け部内に営巣材を確実に落とし込んで収容することができるとともに、収容した営巣材を営巣受け部で包み込んで落下させることなく持ち運ぶことができる。
【0010】
別の発明に係る営巣材落下防止ネットは、袋状にした営巣受け部と、該営巣受け部の開口部を開いた状態で、営巣受け部を被固定部材に固定するための固定手段とを備え、営巣受け部は、開口部側
が帯状に形成されたシートで構成され、
該シートよりも底部側が帯状に形成された網材で構成され
、前記シートは、収容する営巣材を、底部を構成する網材内まで落とし込みすべく案内する幅の帯状であることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、網材によって風をうまく逃がすことができて、風の影響を受けることなく、営巣受け部を被固定部材に取り付けることができる。また、開口部側の所定範囲のシートの開口部近傍に営巣材を引っ掛けることなく、営巣受け部の開口部から営巣受け部内に営巣材を確実に落とし込んで収容することができるとともに、収容した営巣材を営巣受け部で包み込んで落下させることなく持ち運ぶことができる。
【0012】
前記固定手段は、営巣受け部の開口部から延出して設けられた紐材、あるいは、営巣受け部の開口部に取り付けられた面ファスナーであることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、固定手段が紐材である場合、営巣材の下方で、営巣材を落とし込めるように、営巣受け部の開口部を営巣材よりも大きく開いた状態で、被固定部材に紐材を結びつけて、被固定部材に営巣受け部を取り付ける。また、固定手段が面ファスナーである場合、営巣材の下方で、営巣材を落とし込めるように、営巣受け部の開口部を営巣材よりも大きく開いた状態で、被固定部材に営巣受け部の開口周縁部を巻き付けて、雄型及び雌型の面ファスナーを互いに面着させて、被固定部材に営巣受け部を取り付ける。
【0014】
また、固定手段が紐材である場合、営巣材を収容した営巣受け部の開口部を括って閉じることができる。また、固定手段が面ファスナーである場合、雄型及び雌型の面ファスナーを互いに面着させることで、営巣材を収容した営巣受け部の開口部を容易に閉じることができる。
【0015】
さらに、営巣受け部は、営巣受け部の開口部に挿通された紐材を設けることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、営巣受け部に営巣材を収容した状態で、紐材を引っ張ることで、営巣受け部の開口部を絞って閉じれば、開口部から営巣材を落下させることなく持ち運べる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、営巣材を網材の開口部近傍に引っ掛けることなく、網材の開口部から網材内に確実に落とし込んで収容できる、といった優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る営巣材落下防止ネットを示す斜視図。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットを鉄塔のアームに実装した状態を示す斜視図。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットの営巣受け部内に営巣材を落とし込んで収容した状態を示す斜視図。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットにおいて、営巣材を収容した営巣受け部の開口部を紐材で括った状態を示す斜視図。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットの変形例を示す図であり、開口部に沿って面ファスナーを配置した営巣受け部を示す図。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットの変形例を示す図であり、開口部に紐材を挿通した営巣受け部を示す図。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットの変形例を示す図であり、開口部側の所定範囲をシートで構成した営巣受け部を示す図。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る営巣材落下防止ネットを、営巣材を覆うように鉄塔のアームに実装した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る営巣材落下防止ネットについて
図1〜
図4を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、鉄塔のアームに営巣された営巣材を収容する営巣材落下防止ネットを例にとって説明する。
【0020】
本実施形態に係る営巣材落下防止ネットは、
図1に示す如く、営巣受け部2と、固定手段3とを備える。
【0021】
営巣受け部2は、網材を袋状にしたものである。具体的には、一対の矩形状の網材を対向させて、両網材の両側部と底部とを縫い合わせて袋状にしたものである。より具体的には、営巣受け部2の開口部2a側の所定範囲が細目の網材20で幅小の帯状に構成され、前記所定範囲以外が粗目の網材21で幅大の帯状に構成される。営巣受け部2の素材としては、例えば、耐候性があって、軽量で可撓性を有する合成樹脂材が好ましい。
【0022】
そして、細目の網材20の網目は、例えば、1〜2mm角で、粗目の網材21の網目は、例えば、3〜5mm角であることが好ましい。また、細目の網材20の占有面積が、粗目の網材21の占有面積よりも小さく設定されている。この理由としては、営巣受け部2に対する風の影響を少なくするためである。また、営巣受け部2の開口部2a側の所定範囲を細目の網材20で構成することにより、営巣受け部2の開口部2aからの営巣材Xの営巣受け部2内への落とし込みが円滑に行われる。
【0023】
本実施形態において、固定手段3は、営巣受け部2の開口部2aから延出して設けられた複数の紐材である。具体的には、紐材3は、営巣受け部2の開口部2aに所定の間隔をおいて2本ずつ取り付けられている。それぞれの紐材3,3の一端部が並列して取り付けられ、それぞれの他端部が自由端となるように設けられている。そして、紐材3によって、営巣受け部2の開口部2aを開いた状態で、営巣受け部2を、被固定部材である鉄塔PのアームAを構成する鋼材Sに対して自在に固定する(
図2参照)。なお、紐材3は、営巣材防止ネット1を鉄塔PのアームAに強固に取り付けられることが可能であれば、営巣受け部2の開口部2aに所定の間隔をおいて1本ずつ配置してもよい。
【0024】
つぎに本実施形態に係る営巣材落下防止ネット1の使用態様について説明する。まず、
図1に示す如く、営巣受け部2の開口部2aを両側から引っ張って、営巣受け部2の開口部2aを矩形状に開いた状態にする。具体的には、営巣材Xを落とし込めるように、営巣受け部2の開口部2aの大きさを、営巣材Xよりも大きくなるように開く。
【0025】
そして、
図2に示す如く、営巣材Xの下方に、営巣受け部2の開口部2aが位置するように、該開口部2aに取り付けられた紐材3を、鉄塔PのアームAを構成する鋼材Sに巻き付けて、鋼材Sに営巣受け部2を固定する。
【0026】
鉄塔PのアームAの鋼材Sから営巣材Xを撤去して、
図3に示す如く、営巣受け部2内に営巣材Xを落とし込んで、営巣受け部2に営巣材Xを包み込むように収容する。
【0027】
この際、営巣受け部2の開口部2a側の所定範囲が細目の網材20になっているので、営巣受け部2の開口部2a近傍で営巣材Xが引っ掛かることがなく、営巣受け部2内に営巣材Xを落とし込んで収容することができる。特に、営巣材Xに使用される金属製のハンガーや鉄線や木の枝が、営巣受け部2の細目の網材20の網目に引っ掛かることがないので、粗目の網材21内まで営巣材Xを容易に落とし込んで収容することができる。
【0028】
つぎに、
図4に示す如く、営巣材Xを収容する際に大きく開口させた状態の営巣受け部2の開口部2aを、営巣材Xを営巣受け部2に収容した時点で、紐材3を鋼材Sから取り外して、紐材3によって営巣受け部2の開口部2aを括って閉じる。そうすることで、営巣受け部2に収容した営巣材Xを、営巣受け部2の開口部2aから落下させることなく、営巣受け部2に営巣材Xを収容した状態で、営巣材落下防止ネット1をリュックサックや身体に結び付けて地上に持ち運べる。
【0029】
このように、本実施形態に係る営巣材落下防止ネットによれば、営巣受け部2の開口部2aに営巣材Xを引っ掛けることなく、営巣受け部2の開口部2近傍から営巣受け部2内に営巣材Xを落とし込んで収容することができる。また、風の影響を受けることなく、営巣受け部2を鋼材Sに取り付けることができる。すなわち、営巣材Xの地上への落下を防止できるとともに、営巣材撤去作業の効率化が図れる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論のことである。
【0031】
例えば、前記実施形態の場合、固定手段としての紐材3を、鉄塔PのアームAの鋼材Sに巻きつけて、営巣受け部2を鋼材Sに取り付けるようにしたが、例えば、
図5に示す如く、複数の矩形状の雌型及び雄型の面ファスナー30a,30bを営巣受け部2の開口部2aの周縁に沿って外面及び内面に配置して、互いの面ファスナー30a,30b同士を面着させて、アームAの鋼材Sと営巣受け部2との間を隙間なく固定するようにしてもよい。これによって、営巣材Xに使用される金属製のハンガーや鉄線や木の枝が、アームAの鋼材Sと営巣受け部2との隙間から落下するのを防止できる。また、鋼材Sは、アームAの構成によっては、複雑に配置される場合があるため、種々の鋼材Sの配置状態に対応して営巣受け部2を取り付けできるように、雄型の面ファスナー30bから離間した内面に雌型の面ファスナー30cを配置するようにしてもよい。
【0032】
また、前記実施形態の場合、固定手段としての紐材3を用いて、営巣受け部2の開口部2aを閉じるようにしたが、
図6に示す如く、営巣受け部2の開口部2aに紐材4を挿通し、紐材4を引っ張って、営巣受け部2を巾着状にして、営巣受け部2の開口部2aを閉じるようにしてもよい。
【0033】
また、前記実施形態の場合、営巣受け部2の開口部2a側の所定の範囲を細目の網材20で構成したが、
図7に示す如く、細目の網材20の代わりにシート200で構成してもよい。但し、風の影響を考慮すれば、風の通しやすい本実施形態の
図1に示す営巣受け部2の形態であることが好ましい。
【0034】
また、前記実施形態の場合、営巣材Xの下方に、営巣受け部2の開口部2aが位置するように、鉄塔PのアームAの鋼材Sに営巣材落下防止ネット1を取り付けるようにしたが、
図8に示す如く、アームAの延びる方向に対して直交する両側面を覆うように取り付けるようにしてもよい。具体的には、営巣材落下防止ネット1の両側方を、傾斜して配置されるアームAの鋼材Sの位置に吊り上げて固定する。この際、吊り上げられた営巣材落下防止ネット1の両側部によって、営巣材Xの両側方において、高さ方向の領域と、アームAの延びる方向の領域とが覆われるようになり、風による営巣材Xの落下(飛散)を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…営巣材落下防止ネット、2…営巣受け部、2a…開口部、20…細目の網材、21…粗目の網材、3…固定手段(紐材)、30a〜30c…面ファスナー、4…紐材、200…シート、P…鉄塔、A…アーム、S…鋼材(被固定部材)、X…営巣材