【実施例1】
【0014】
以下、本発明の巻取型アンラッピング工具の実施例について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、アンラッピング作業の対象となるジャンパー線3を「作業ジャンパー線3a」と称し、作業ジャンパー線3aの芯線が巻き付けられた端子2を「作業端子2a」と称し、作業端子2aの真下に配置された端子2を「隣接端子2b」と称する(
図4(a)参照)。
【0015】
本発明の一実施例による巻取型アンラッピング工具10(以下、「アンラッピング工具10」と称する。)は、
図1(a),(b)に示すように、フレーム11と、回転軸12と、作業端子先端部挿入部材13と、減速機14(減速ギア)と、巻取ビット15と、シャッター16と、切り刃17とを具備する。
【0016】
ここで、フレーム11は、表面の上部が開口面とされた矩形箱形状を有する。
フレーム11の表面側の下部には、円筒状の隣接端子挿入部材11aが、先端部がフレーム11の開口面よりも突出するように取り付けられている。
隣接端子挿入部材11aの末端部には、隣接端子先端部挿入孔11bが、アンラッピング工具10を中間配線盤に装着すると隣接端子2bの先端部が挿入されるように形成されている(
図5(a)参照)。
【0017】
回転軸12は、矩形棒状の形状を有し、フレーム11の裏面を垂直に貫通するようにフレーム11にベアリング(不図示)を介して取り付けられている。
また、回転軸12は、
図1(e)に示すように、電動ドリル51のビットの先端部を回転軸12の末端部に挿入した状態で電動ドリル51を駆動することにより回転される。
したがって、電動ドリル51のビットとしては、回転軸12の末端部を挿入するための矩形状の挿入孔が先端部に形成されたものを用いる。
【0018】
作業端子先端部挿入部材13は、アンラッピング工具10を中間配線盤に装着すると作業端子2aの先端部が挿入されるように、回転軸12の先端部に取り付けられている(
図5(a)参照)。
なお、作業端子先端部挿入部材13は、回転軸12が回転しても回転しないようにベアリング(不図示)を介して回転軸12の先端部に取り付けられている。
【0019】
減速機14は、巻取ビット15の回転数を調整したり巻取ビット15を自由に移動させたりする機能を持たせるためのものであり、回転軸12の作業端子先端部挿入部材13とフレーム11の裏面との間に取り付けられている。
ここで、減速機14の減速比は、作業端子2aおよび作業ジャンパー線3aに与えるストレスを抑制するために巻取ビット15の回転数を180min-1(毎秒3回転)の超低速とする必要があるが、電動ドリル51としては回転数が500min-1以下の低速のもの、回転数が1000min-1以下の高速のものおよび無段変速機能を備えて最大回転数以下に調整可能なものなどがあるため、電動ドリル51の回転数に応じた値(たとえば、1〜2)に設定される。
【0020】
巻取ビット15は、先端部がフレーム11の開口面から突出し、かつ、先端面が隣接端子挿入部材11aの先端面よりもフレーム11の開口面側に位置するように、かつ、軸方向が回転軸12の軸方向と平行になるように、末端部が減速機14に取り付けられている。
また、巻取ビット15は、電動ドリル51によって回転軸12を回転させると、回転軸12を中心に作業端子先端部挿入部材13の周りをフレーム11の裏面側から見て右回りに回転する(
図1(b)の破線参照)ように、減速機14を介して回転軸12と連結されている。
【0021】
巻取ビット15は、
図2(b)に示すように、作業端子2aから取り外した作業ジャンパー線3aの芯線を巻取ビット15の外周に確実に巻き付けられるように円柱形状とされているが、巻取ビット15の先端部は、巻き付けられた作業ジャンパー線3aの芯線を容易に取り除くことができるように、先端面に向けて径が小さくなるようにテーパが付けられている(
図2(c),(d)参照)。
巻取ビット15の先端部の中央部には、
図2(a)に示すように、作業ジャンパー線3aを嵌入するためのV字状溝が形成されている。
【0022】
シャッター16は、アンラッピング作業時に作業端子2aと作業端子2aを取り囲む端子2とを電気的に絶縁するためのものであり、円筒形状を有する。
ただし、シャッター16の末端面(フレーム11の裏面側の面)には、爪板が、シャッター16の内側に向けてシャッター16の外周面と垂直に一体的に取り付けられている。
【0023】
シャッター16の外周面の左右には、
図1(a)に示すように、シャッター移動用ボタン16aが取り付けられているとともに、フレーム11の左右側面には、
図1(c),(d)に示すように、シャッター移動用ボタン16aをフレーム11の前後方向に沿ってスライドさせるための窓11cが形成されている。
窓11cの長さは、
図1(c)に示すようにシャッター移動用ボタン16aが窓16aの末端部(フレーム11の裏面側の端部)に位置した状態ではシャッター16の大部分がフレーム11内に収納され、
図1(d)に示すようにシャッター移動用ボタン16aが窓16aの先端部に位置した状態ではシャッター16の先端面が隣接端子挿入部材11aの先端面と同一平面上となる位置までフレーム11から突出するような長さとされている。
これにより、アンラッピング工具10を使用しないときにはシャッター16の大部分をフレーム11内に収納することができるとともに、アンラッピング作業時にはシャッター16をフレーム11から突出させて作業端子3aを取り囲む端子3との電気的接触を防止することができる。
また、シャッター移動用ボタン16aをフレーム11内に押し込むことにより、シャッター16をフレーム11から抜き出すことができるようにされている。
【0024】
切り刃17は、
図3に示すように先端面が縦方向の刃先とされたセンター刃であり、
図1(a)に示すようにシャッター16の先端面のフレーム11の裏面側から見て左側に取り付けられている。
切り刃17をシャッター16の外周面のフレーム11の裏面側から見て左側に取り付けている理由は、中間配線盤においてジャンパー線3を端子2に順手で巻き付ける場合には、電動ラッピングツール(回転数=3700min-1)のジャンパー線挿入穴は常に上に止まるように構成されているためにジャンパー線3は上向きに端子2に巻き付けられることから、ジャンパー線3を中間配線盤に向かって左側に曲げて他のジャンパー線3と結束固定しているので(
図4(a)参照)、アンラッピング作業時にシャッター16をフレーム11から突出させると切り刃17で巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aを切断することができるようにするためである(
図3参照)。
【0025】
ただし、中間配線盤においてジャンパー線3を端子2に順手ではなく逆手で巻き付ける場合もあり、この場合には、電動ラッピングツールを逆さにしてジャンパー線3を端子2に巻き付けるので、電動ラッピングツールのジャンパー線挿入穴は常に下に止まるためにジャンパー線3は下向きに端子2に巻き付けられることから、ジャンパー線3を中間配線盤に向かって右側に曲げて他のジャンパー線3と結束固定している(
図4(b)参照)。
したがって、この場合には、アンラッピング工具10を上下逆さにして使用することにより、切り刃17で巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aを切断することができるようにするため、
図4(a)に示したように作業端子2aの真下に配置された端子2を隣接端子2bとする代わりに、
図4(b)に示すように作業端子2aの真上に配置された端子2を隣接端子2b’とする。
【0026】
次に、アンラッピング工具10を用いたアンラッピング作業の手順について、
図5(a)〜(d)を参照して説明する。
(1)巻取準備作業
作業員は、
図5(a)に示すように、作業端子2aの先端部と作業端子先端部挿入部材13との位置合せを目視で確認するためにシャッター16をフレーム11内に収納した状態で隣接端子2bを隣接端子挿入部材11aに挿入しながら、隣接端子挿入部材11aの先端面が中間配線盤の絶縁板1に当接するまでアンラッピング工具10を押し込む。
これにより、作業端子2aの先端部が作業端子先端部挿入部材13に挿入され、隣接端子2bが隣接端子挿入部材11aに挿入されるとともに、隣接端子2bの先端部が隣接端子先端部挿入孔11bに挿入されて、アンラッピング工具10が中間配線盤に装着される。
このとき、作業員は、後述する巻取作業で巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aを切り刃17で切断することができるように、作業ジャンパー線3aを巻取ビット15のV字状溝に嵌入して、巻取ビット15をフレーム11の裏面から見て左側に位置させたのち、作業ジャンパー線3aに沿ってアンラッピング工具10を押し込む。
なお、
図5(a)〜(c)では、図面を見易くするために、巻取ビット15はフレーム11の裏面から見て上側に位置するように図示している。
【0027】
続いて、作業員は、
図5(b)に示すように、回転軸12の末端部を電動ドリル51のビットの先端部に挿入させて、電動ドリル51をアンラッピング工具10に装着する。
【0028】
(2)巻取作業
作業員は、シャッター移動用ボタン16aをスライドさせて、シャッター16を絶縁板1に向かって押し込む(
図5(b)の矢印参照)。
これにより、巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aが絶縁板1と切り刃17とによって挟まれて切断される(
図3参照)。
【0029】
続いて、作業員は、
図5(c)に矢印および破線で示すように、電動ドリル51を回転させて回転軸12を介して巻取ビット15をフレーム11の裏面側から見て右回りに回転させる。
これにより、
図2(c),(d)に示すように、作業端子2aに巻き付けられた作業ジャンパー線3aの芯線を巻き始め部から緩めて巻取ビット15にその先端部から末端部に向かって規則的に巻き付けていくことができる。
【0030】
(3)作業ジャンパー線3aの芯線屑の廃棄作業
作業員は、作業ジャンパー線3aの芯線がすべて巻取ビット15に巻き付けられると、電動ドリル51をアンラッピング工具10から取り外したのち、アンラッピング工具10を手前に引いて中間配線盤から取り除く。
【0031】
続いて、作業員は、
図5(d)に示すように、シャッター移動用ボタン16aを押し込みながらシャッター16をフレーム11と反対側に引いてフレーム11から引き抜く。
これにより、巻取ビット15に巻き付いている作業ジャンパー線3aの芯線がシャッター16の爪板によって巻取ビット15の先端部から押し出されるため、芯線屑を容易に廃棄することができる。
【0032】
以上の説明では、シャッター16の爪板を用いて作業ジャンパー線3aの芯線屑の廃棄作業を行ったが、作業員が手で行うなど他の方法で行ってもよい。
この場合には、爪板は不要となるため、シャッター16は円筒形状とすればよい。