特許第5917647号(P5917647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917647
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】巻取型アンラッピング工具
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/033 20060101AFI20160428BHJP
   B25B 27/14 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H01R43/033
   B25B27/14 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-206869(P2014-206869)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-76413(P2016-76413A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】井本 謙次
(72)【発明者】
【氏名】同前 年明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 清貴
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−179727(JP,U)
【文献】 実開平04−018995(JP,U)
【文献】 実開昭54−044988(JP,U)
【文献】 実開平02−107210(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッピング端子(3a)にラッピングされたジャンパー線(2a)を取り外すアンラッピング作業に用いるための巻取型アンラッピング工具(10)であって、
表面が開口面とされた箱形状のフレーム(11)と、
該フレームの裏面を垂直に貫通するように該フレームに取り付けられた回転軸(12)と、
該回転軸の先端部に取り付けられた作業端子先端部挿入部材(13)と、
先端部が前記フレームの開口面から突出し、軸方向が前記回転軸の軸方向と平行になるとともに該回転軸を回転させると前記作業端子先端部挿入部材の周りを回転するように該回転軸に取り付けられた巻取ビット(15)と、
前記フレーム内に収納可能に該フレームに取り付けられた筒形状のシャッター(16)と、
該シャッターの先端面に取り付けられた切り刃(17)と、
を具備することを特徴とする、巻取型アンラッピング工具。
【請求項2】
前記切り刃が、前記シャッターの先端面の前記フレームの裏面側から見て左側に取り付けられており、
前記巻取ビットが、前記作業端子先端部挿入部材の周りを前記フレームの裏面側から見て右回りに回転するにようにされている、
ことを特徴とする、請求項1記載の巻取型アンラッピング工具。
【請求項3】
隣接端子挿入部材(11a)が、先端部が前記フレームの開口面よりも突出するように該フレームの表面側に取り付けられており、
前記ラッピング端子に隣接する隣接ラッピング端子(2b)の先端部を挿入するための隣接端子先端部挿入孔(11b)が、前記隣接端子挿入部材の末端部に形成されている、
ことを特徴とする、請求項1または2記載の巻取型アンラッピング工具。
【請求項4】
シャッター移動用ボタン(16a)が、前記シャッターの外周面の左右に取り付けられており、
前記シャッター移動用ボタンが前記フレームの前後方向に沿ってスライドできるようにするための窓(11c)が、該フレームの左右側面に形成されており、
前記窓の長さが、前記シャッター移動用ボタンが該窓の一端部に位置した状態では前記シャッターの大部分が前記フレーム内に収納されるとともに、前記シャッター移動用ボタンが該窓の他端部に位置した状態では前記シャッターの先端面が前記隣接端子挿入部材の先端面と同一平面上となる位置まで前記フレームから突出するような長さとされている、
ことを特徴とする、請求項3記載の巻取型アンラッピング工具。
【請求項5】
前記回転軸の先端部側に取り付けられた、かつ、前記巻取ビットの回転数を調整するための減速機(14)をさらに具備することを特徴とする、請求項1乃至4いずれかに記載の巻取型アンラッピング工具。
【請求項6】
前記巻取ビットが、前記減速機を介して前記回転軸と連結されており、
前記巻取ビットが、先端面に向けて径が小さくなるようなテーパが先端部に付けられた円柱形状とされており、
前記巻取ビットの先端部の中央部に、前記ラッピング端子から配線されている前記ジャンパー線を嵌入するためのV字状溝が形成されている、
ことを特徴とする、請求項5記載の巻取型アンラッピング工具。
【請求項7】
爪板が、前記シャッターの内側に向けて該シャッターの末端面に取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至6いずれかに記載の巻取型アンラッピング工具。
【請求項8】
前記シャッター移動用ボタンを前記フレーム内に押し込むことにより、前記シャッターを該フレームから抜き出すことができるようにされていることを特徴とする、請求項7記載の巻取型アンラッピング工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間配線盤におけるジャンパー線のアンラッピング作業などに用いるのに好適な巻取型アンラッピング工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数組の通信装置間を接続するために、多数本のラッピング端子(金属ピン)が格子状に配置された中間配線盤(IDF:Intermediate Distribution Frame)が用いられている。
【0003】
このような中間配線盤では、図4(a)および図5(a)に示すように、多数本のラッピング端子2(以下、「端子2」と称する。)が絶縁板1(ブロック)の表面および裏面に狭い間隔で等間隔に格子状に設けられており、絶縁板1の裏面に配置された端子2に通信線を巻き付けて中間配線盤と通信装置とを接続するとともに絶縁板1の表面に配置された端子2にジャンパー線3をラッピングすることにより、通信装置間を接続している。
【0004】
近年、通信装置の取替に伴う大規模な通信ケーブル端末撤去作業を中間配線盤で行うことが増加傾向にあり、端子2にラッピングされたジャンパー線3を取り外す際には、アンラッピング機能を備えた市販の電動ラッピングツールを用いている。
【0005】
なお、下記の特許文献1には、動力用バネの弾発力によってエンドレスベルトを牽引して両プーリを回転させる動力部の一方のプーリに連繋されて回転する駆動シャフトの先端にラッピング工具・アンラッピング工具を着脱可能に取り付けてアンラッピング工具を自動的に反時計回りに回転させることにより、ラッピング端子に巻き付けられたジャンパー線の芯線を簡単に取り外せるようにしたラッピング・アンラッピングツールが開示されている。
下記の特許文献2には、ホールドスリーブの一端に固定したコイルスプリングをシャフトに伸縮自在に取り付けることにより、ホールドスリーブにより破損した線材を取り除くとともにビット部の破損を防ぐようにした破損防止付アンラッピング工具が開示されている。
下記の特許文献3には、少なくとも平形ラッピング端子の長方形断面の短辺長の間隔を隔てて相対峙した一対の抑え撥条板を空転自在に中空孔の軸線方向に並行内在させることにより、平形ラッピング端子の場合であってもラッピング線が途中で折れてしまったりラッピング端子をねじり曲げたりすることを防止できるようにしたアンラップ工具が開示されている。
下記の特許文献4には、先端部に導線ラッピング部が出入りする孔を備えたサイドカバーの先端から捕捉棒の先端に至る長さを導線ラッピング部の長さ以下とするとともにサイドカバーの内面と捕捉棒の先端部との間隙を導線の直径より広くすることにより、ジャンパー線の配線・変更作業の作業性を損なうことなく隣接するラッピングポストとの短絡を防止できるようにしたラッピングツールが開示されている。
下記の特許文献5には、円筒形状ビットの先端部を略半円環状に形成して電線の巻き始め部から取り外すことにより、作業性の向上を図れるようにしたラッピング電線の巻き戻し工具が開示されている。
下記の特許文献6には、第1のスリーブより突出するビット上に挿入した第2のスリーブの一端部を接着するとともに他端部に長手方向に溝部を設けて芯線の巻き始め部から取り外すことにより、作業性の向上を図れるようにしたアンラップ工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−238556号公報
【特許文献2】実開昭64−16087号公報
【特許文献3】実開平3−60792号公報
【特許文献4】特開2014−44910号公報
【特許文献5】実開平1−9386号公報
【特許文献6】実開平2−107210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、市販の電動ラッピングツールでは、アンラッピング機能を用いて端子2に巻き付けられたジャンパー線3の芯線を緩めることはできても撤去することができないという問題があるとともに、作業員は無理な作業姿勢で行う手作業が多く肩および腕に疲労が蓄積して作業能率が低下するという問題があった。
【0008】
なお、上記の特許文献1〜4に開示されたラッピング・アンラッピングツールなどでは、ラッピング端子に巻き付けられた電線の巻き戻しや隣接するラッピング端子との電気的短絡防止はできるが、駆動方式が手回しおよびバネ駆動であるため、作業能率の向上に課題が残っているという問題がある。
上記の特許文献5に開示されたラッピング電線の巻き戻し工具では、作業前に予め巻き始め部付近の電線を数ミリ残して切断する必要があるため、作業工程が増えて、巻き戻す端子数が多いほど作業能率の改善効果が低下するという問題と、巻き始め部付近の電線を数ミリ残して切断する場所は狭隘であり熟練した技術が必要であるという問題とがある。また、筒状ビットを回転させて端子と電線との間にクサビとして割り込んで巻き戻しするため、巻き戻された電線に癖が残り、巻き付け案内ガイドがないためビットの外周に規則的に巻き付けることが不安定になるという問題と、ビットの外周に巻き付いた電線が隣接するラッピング端子に接触する対策が不足しているという問題とがある。
上記の特許文献6に開示されたアンラップ工具では、作業前に予め巻き始め部付近の電線を切断する必要があるため、作業工程が増えて、巻き戻す端子数が多いほど作業能率の改善効果が低下するという問題がある。また、筒状ビットを回転させてラッピング端子の電線を巻き戻して内部に取り込むため、巻き戻された電線に癖が残り、巻き終わり部まで緩めることが不足したり途中で断線したりする恐れがあるという問題と、電線が途中で断線した場合には狭隘な内部に閉じ込められて排出が困難になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、アンラッピング作業の効率化を図ることができる巻取型アンラッピング工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の巻取型アンラッピング工具は、ラッピング端子(3a)にラッピングされたジャンパー線(2a)を取り外すアンラッピング作業に用いるための巻取型アンラッピング工具(10)であって、表面が開口面とされた箱形状のフレーム(11)と、該フレームの裏面を垂直に貫通するように該フレームに取り付けられた回転軸(12)と、該回転軸の先端部に取り付けられた作業端子先端部挿入部材(13)と、先端部が前記フレームの開口面から突出し、軸方向が前記回転軸の軸方向と平行になるとともに該回転軸を回転させると前記作業端子先端部挿入部材の周りを回転するように該回転軸に取り付けられた巻取ビット(15)と、前記フレーム内に収納可能に該フレームに取り付けられた筒形状のシャッター(16)と、該シャッターの先端面に取り付けられた切り刃(17)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記切り刃が、前記シャッターの先端面の前記フレームの裏面側から見て左側に取り付けられており、前記巻取ビットが、前記作業端子先端部挿入部材の周りを前記フレームの裏面側から見て右回りに回転するにようにされていてもよい。
隣接端子挿入部材(11a)が、先端部が前記フレームの開口面よりも突出するように該フレームの表面側に取り付けられており、前記ラッピング端子に隣接する隣接ラッピング端子(2b)の先端部を挿入するための隣接端子先端部挿入孔(11b)が、前記隣接端子挿入部材の末端部に形成されていてもよい。
シャッター移動用ボタン(16a)が、前記シャッターの外周面の左右に取り付けられており、前記シャッター移動用ボタンが前記フレームの前後方向に沿ってスライドできるようにするための窓(11c)が、該フレームの左右側面に形成されており、前記窓の長さが、前記シャッター移動用ボタンが該窓の一端部に位置した状態では前記シャッターの大部分が前記フレーム内に収納されるとともに、前記シャッター移動用ボタンが該窓の他端部に位置した状態では前記シャッターの先端面が前記隣接端子挿入部材の先端面と同一平面上となる位置まで前記フレームから突出するような長さとされていてもよい。
前記回転軸の先端部側に取り付けられた、かつ、前記巻取ビットの回転数を調整するための減速機(14)をさらに具備してもよい。
前記巻取ビットが、前記減速機を介して前記回転軸と連結されており、前記巻取ビットが、先端面に向けて径が小さくなるようなテーパが先端部に付けられた円柱形状とされており、前記巻取ビットの先端部の中央部に、前記ラッピング端子から配線されている前記ジャンパー線を嵌入するためのV字状溝が形成されていてもよい。
爪板が、前記シャッターの内側に向けて該シャッターの末端面に取り付けられていてもよい。
前記シャッター移動用ボタンを前記フレーム内に押し込むことにより、前記シャッターを該フレームから抜き出すことができるようにされていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の巻取型アンラッピング工具は、以下に示す効果を奏する。
(1)シャッターを閉じて切り刃でジャンパー線を切断したのちに巻取ビットを作業端子先端部挿入部材の周りを回転させることにより、ラッピング端子に巻き付けられたジャンパー線の芯線を巻取ビットに巻き付けていくことができるため、ジャンパー線をラッピング端子から容易に取り外すことができ、アンラッピング作業の効率化を図ることができる。
(2)通信装置の取替に伴う大規模な通信ケーブル端末撤去作業における作業者の疲労軽減および作業の効率化を図ることができる。
(3)既設の中間配線盤などにも適用することができる。
(4)汎用の電動ドリル(電動ドライバ)を利用することにより低廉なコストで導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例による巻取型アンラッピング工具10の構成について説明するための図である。
図2図1に示した巻取ビット15の機能について説明するための図である。
図3図1に示した切り刃17の機能について説明するための図である。
図4】中間配線盤におけるジャンパー線3のラッピングされた状態について説明するための図である。
図5図1に示した巻取型アンラッピング工具10を用いたアンラッピング作業の手順について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の目的を、シャッターを閉じて切り刃でジャンパー線を切断したのちに巻取ビットを作業端子先端部挿入部材の周りを回転させることにより、ラッピング端子に巻き付けられたジャンパー線の芯線を巻取ビットに巻き付けていく構成とすることにより実現した。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の巻取型アンラッピング工具の実施例について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、アンラッピング作業の対象となるジャンパー線3を「作業ジャンパー線3a」と称し、作業ジャンパー線3aの芯線が巻き付けられた端子2を「作業端子2a」と称し、作業端子2aの真下に配置された端子2を「隣接端子2b」と称する(図4(a)参照)。
【0015】
本発明の一実施例による巻取型アンラッピング工具10(以下、「アンラッピング工具10」と称する。)は、図1(a),(b)に示すように、フレーム11と、回転軸12と、作業端子先端部挿入部材13と、減速機14(減速ギア)と、巻取ビット15と、シャッター16と、切り刃17とを具備する。
【0016】
ここで、フレーム11は、表面の上部が開口面とされた矩形箱形状を有する。
フレーム11の表面側の下部には、円筒状の隣接端子挿入部材11aが、先端部がフレーム11の開口面よりも突出するように取り付けられている。
隣接端子挿入部材11aの末端部には、隣接端子先端部挿入孔11bが、アンラッピング工具10を中間配線盤に装着すると隣接端子2bの先端部が挿入されるように形成されている(図5(a)参照)。
【0017】
回転軸12は、矩形棒状の形状を有し、フレーム11の裏面を垂直に貫通するようにフレーム11にベアリング(不図示)を介して取り付けられている。
また、回転軸12は、図1(e)に示すように、電動ドリル51のビットの先端部を回転軸12の末端部に挿入した状態で電動ドリル51を駆動することにより回転される。
したがって、電動ドリル51のビットとしては、回転軸12の末端部を挿入するための矩形状の挿入孔が先端部に形成されたものを用いる。
【0018】
作業端子先端部挿入部材13は、アンラッピング工具10を中間配線盤に装着すると作業端子2aの先端部が挿入されるように、回転軸12の先端部に取り付けられている(図5(a)参照)。
なお、作業端子先端部挿入部材13は、回転軸12が回転しても回転しないようにベアリング(不図示)を介して回転軸12の先端部に取り付けられている。
【0019】
減速機14は、巻取ビット15の回転数を調整したり巻取ビット15を自由に移動させたりする機能を持たせるためのものであり、回転軸12の作業端子先端部挿入部材13とフレーム11の裏面との間に取り付けられている。
ここで、減速機14の減速比は、作業端子2aおよび作業ジャンパー線3aに与えるストレスを抑制するために巻取ビット15の回転数を180min-1(毎秒3回転)の超低速とする必要があるが、電動ドリル51としては回転数が500min-1以下の低速のもの、回転数が1000min-1以下の高速のものおよび無段変速機能を備えて最大回転数以下に調整可能なものなどがあるため、電動ドリル51の回転数に応じた値(たとえば、1〜2)に設定される。
【0020】
巻取ビット15は、先端部がフレーム11の開口面から突出し、かつ、先端面が隣接端子挿入部材11aの先端面よりもフレーム11の開口面側に位置するように、かつ、軸方向が回転軸12の軸方向と平行になるように、末端部が減速機14に取り付けられている。
また、巻取ビット15は、電動ドリル51によって回転軸12を回転させると、回転軸12を中心に作業端子先端部挿入部材13の周りをフレーム11の裏面側から見て右回りに回転する(図1(b)の破線参照)ように、減速機14を介して回転軸12と連結されている。
【0021】
巻取ビット15は、図2(b)に示すように、作業端子2aから取り外した作業ジャンパー線3aの芯線を巻取ビット15の外周に確実に巻き付けられるように円柱形状とされているが、巻取ビット15の先端部は、巻き付けられた作業ジャンパー線3aの芯線を容易に取り除くことができるように、先端面に向けて径が小さくなるようにテーパが付けられている(図2(c),(d)参照)。
巻取ビット15の先端部の中央部には、図2(a)に示すように、作業ジャンパー線3aを嵌入するためのV字状溝が形成されている。
【0022】
シャッター16は、アンラッピング作業時に作業端子2aと作業端子2aを取り囲む端子2とを電気的に絶縁するためのものであり、円筒形状を有する。
ただし、シャッター16の末端面(フレーム11の裏面側の面)には、爪板が、シャッター16の内側に向けてシャッター16の外周面と垂直に一体的に取り付けられている。
【0023】
シャッター16の外周面の左右には、図1(a)に示すように、シャッター移動用ボタン16aが取り付けられているとともに、フレーム11の左右側面には、図1(c),(d)に示すように、シャッター移動用ボタン16aをフレーム11の前後方向に沿ってスライドさせるための窓11cが形成されている。
窓11cの長さは、図1(c)に示すようにシャッター移動用ボタン16aが窓16aの末端部(フレーム11の裏面側の端部)に位置した状態ではシャッター16の大部分がフレーム11内に収納され、図1(d)に示すようにシャッター移動用ボタン16aが窓16aの先端部に位置した状態ではシャッター16の先端面が隣接端子挿入部材11aの先端面と同一平面上となる位置までフレーム11から突出するような長さとされている。
これにより、アンラッピング工具10を使用しないときにはシャッター16の大部分をフレーム11内に収納することができるとともに、アンラッピング作業時にはシャッター16をフレーム11から突出させて作業端子3aを取り囲む端子3との電気的接触を防止することができる。
また、シャッター移動用ボタン16aをフレーム11内に押し込むことにより、シャッター16をフレーム11から抜き出すことができるようにされている。
【0024】
切り刃17は、図3に示すように先端面が縦方向の刃先とされたセンター刃であり、図1(a)に示すようにシャッター16の先端面のフレーム11の裏面側から見て左側に取り付けられている。
切り刃17をシャッター16の外周面のフレーム11の裏面側から見て左側に取り付けている理由は、中間配線盤においてジャンパー線3を端子2に順手で巻き付ける場合には、電動ラッピングツール(回転数=3700min-1)のジャンパー線挿入穴は常に上に止まるように構成されているためにジャンパー線3は上向きに端子2に巻き付けられることから、ジャンパー線3を中間配線盤に向かって左側に曲げて他のジャンパー線3と結束固定しているので(図4(a)参照)、アンラッピング作業時にシャッター16をフレーム11から突出させると切り刃17で巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aを切断することができるようにするためである(図3参照)。
【0025】
ただし、中間配線盤においてジャンパー線3を端子2に順手ではなく逆手で巻き付ける場合もあり、この場合には、電動ラッピングツールを逆さにしてジャンパー線3を端子2に巻き付けるので、電動ラッピングツールのジャンパー線挿入穴は常に下に止まるためにジャンパー線3は下向きに端子2に巻き付けられることから、ジャンパー線3を中間配線盤に向かって右側に曲げて他のジャンパー線3と結束固定している(図4(b)参照)。
したがって、この場合には、アンラッピング工具10を上下逆さにして使用することにより、切り刃17で巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aを切断することができるようにするため、図4(a)に示したように作業端子2aの真下に配置された端子2を隣接端子2bとする代わりに、図4(b)に示すように作業端子2aの真上に配置された端子2を隣接端子2b’とする。
【0026】
次に、アンラッピング工具10を用いたアンラッピング作業の手順について、図5(a)〜(d)を参照して説明する。
(1)巻取準備作業
作業員は、図5(a)に示すように、作業端子2aの先端部と作業端子先端部挿入部材13との位置合せを目視で確認するためにシャッター16をフレーム11内に収納した状態で隣接端子2bを隣接端子挿入部材11aに挿入しながら、隣接端子挿入部材11aの先端面が中間配線盤の絶縁板1に当接するまでアンラッピング工具10を押し込む。
これにより、作業端子2aの先端部が作業端子先端部挿入部材13に挿入され、隣接端子2bが隣接端子挿入部材11aに挿入されるとともに、隣接端子2bの先端部が隣接端子先端部挿入孔11bに挿入されて、アンラッピング工具10が中間配線盤に装着される。
このとき、作業員は、後述する巻取作業で巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aを切り刃17で切断することができるように、作業ジャンパー線3aを巻取ビット15のV字状溝に嵌入して、巻取ビット15をフレーム11の裏面から見て左側に位置させたのち、作業ジャンパー線3aに沿ってアンラッピング工具10を押し込む。
なお、図5(a)〜(c)では、図面を見易くするために、巻取ビット15はフレーム11の裏面から見て上側に位置するように図示している。
【0027】
続いて、作業員は、図5(b)に示すように、回転軸12の末端部を電動ドリル51のビットの先端部に挿入させて、電動ドリル51をアンラッピング工具10に装着する。
【0028】
(2)巻取作業
作業員は、シャッター移動用ボタン16aをスライドさせて、シャッター16を絶縁板1に向かって押し込む(図5(b)の矢印参照)。
これにより、巻き始め部付近の作業ジャンパー線3aが絶縁板1と切り刃17とによって挟まれて切断される(図3参照)。
【0029】
続いて、作業員は、図5(c)に矢印および破線で示すように、電動ドリル51を回転させて回転軸12を介して巻取ビット15をフレーム11の裏面側から見て右回りに回転させる。
これにより、図2(c),(d)に示すように、作業端子2aに巻き付けられた作業ジャンパー線3aの芯線を巻き始め部から緩めて巻取ビット15にその先端部から末端部に向かって規則的に巻き付けていくことができる。
【0030】
(3)作業ジャンパー線3aの芯線屑の廃棄作業
作業員は、作業ジャンパー線3aの芯線がすべて巻取ビット15に巻き付けられると、電動ドリル51をアンラッピング工具10から取り外したのち、アンラッピング工具10を手前に引いて中間配線盤から取り除く。
【0031】
続いて、作業員は、図5(d)に示すように、シャッター移動用ボタン16aを押し込みながらシャッター16をフレーム11と反対側に引いてフレーム11から引き抜く。
これにより、巻取ビット15に巻き付いている作業ジャンパー線3aの芯線がシャッター16の爪板によって巻取ビット15の先端部から押し出されるため、芯線屑を容易に廃棄することができる。
【0032】
以上の説明では、シャッター16の爪板を用いて作業ジャンパー線3aの芯線屑の廃棄作業を行ったが、作業員が手で行うなど他の方法で行ってもよい。
この場合には、爪板は不要となるため、シャッター16は円筒形状とすればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 絶縁板
2 端子
2a 作業端子
2b,2b’ 隣接端子
3 ジャンパー線
3a 作業ジャンパー線
10 アンラッピング工具
11 フレーム
11a 隣接端子挿入部材
11b 隣接端子先端部挿入孔
11c 窓
12 回転軸
13 作業端子先端部挿入部材
14 減速機
15 巻取ビット
16 シャッター
16aシャッター移動用ボタン
17 切り刃
51 電動ドリル
図1
図2
図3
図4
図5