特許第5917661号(P5917661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917661バイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5917661
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】バイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/24 20060101AFI20160428BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20160428BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H01R4/24
   H01R4/64 A
   H02G1/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-230373(P2014-230373)
(22)【出願日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 勉
(72)【発明者】
【氏名】小田 仁志
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−181870(JP,A)
【文献】 実開昭49−090895(JP,U)
【文献】 特開2000−115930(JP,A)
【文献】 特開2003−272794(JP,A)
【文献】 特開2014−193085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24
H01R 4/64
H01R 11/14
H01R 43/00
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイパス用の電線の一端部に設けられ、前記電線を配電線に電気的に接続するためのバイパスケーブル用コネクタであって、
前記配電線が当接する当接部が内側に設けられた開口を側面に有するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体の当接部に対して進退動自在で、前記当接部側に進むことで前記当接部とで前記配電線を挟持する可動体と、
前記当接部および前記可動体の少なくとも一方に設けられ、前記当接部と前記可動体とで前記配電線を挟持した状態で、前記配電線の絶縁被覆を貫通して前記配電線の心線に電気的に接触する接触刃と、
前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面に設けられ、接地短絡器具のクランプ部を電気的に着脱自在な器具接続部と、
前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面と反対側の側面に設けられ、前記バイパス用の電線が取り付けられる接続板と、
を備えることを特徴とするバイパスケーブル用コネクタ。
【請求項2】
前記器具接続部は、棒材をコ字状に形成したものであり、両端部が前記コネクタ本体に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のバイパスケーブル用コネクタ。
【請求項3】
バイパス用の電線と、該電線の一端部に設けられ前記電線を配電線に電気的に接続するためのバイパスケーブル用コネクタと、を備えたバイパスケーブルであり、
前記バイパスケーブル用コネクタに、
前記配電線が当接する当接部が内側に設けられた開口を側面に有するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体の当接部に対して進退動自在で、前記当接部側に進むことで前記当接部とで前記配電線を挟持する可動体と、
前記当接部および前記可動体の少なくとも一方に設けられ、前記当接部と前記可動体とで前記配電線を挟持した状態で、前記配電線の絶縁被覆を貫通して前記配電線の心線に電気的に接触する接触刃と、
前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面に設けられ、接地短絡器具のクランプ部を電気的に着脱自在な器具接続部と、
前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面と反対側の側面に設けられ、前記バイパス用の電線が取り付けられる接続板と、
を備えることを特徴とするバイパスケーブル。
【請求項4】
前記器具接続部は、棒材をコ字状に形成したものであり、両端部が前記コネクタ本体に接続されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のバイパスケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブルに関し、特に、接地短絡器具(短絡接地器具)と併用されるバイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧停電工事では、停電および送電の操作のために、停電区間前後の配電線にバイパスケーブルを取り付けて作業を行うが、その際に、停電区間の配電線に接地短絡器具を取り付ける必要がある。この接地短絡器具は、従来、クランプ部で配電線の心線を把持するものであり、取り付けるには、配電線の絶縁被覆を剥ぎ取る必要があり、労力と時間がかかるばかりでなく、接地短絡器具の撤去後に絶縁カバーの取付などの絶縁処理を施す必要があった。
【0003】
このため、配電線の絶縁被覆を剥ぎ取ることなく、取付可能な接地短絡器具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この接地短絡器具は、断面半円形の電線受部を有する第1型と第2型とからなる電線接続部を備え、電線受部に針電極を有している。そして、第1型と第2型が結合した挟持位置で、針電極の先端が配電線の芯線部分に到達し、電気的に接続されるものである。
【0004】
一方、バイパスケーブルを配電線に取り付ける際に、配電線の絶縁被覆の剥ぎ取りを不要にする接続クランプ装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この接続クランプ装置は、クランプ本体の下方に、配電線の絶縁被覆を貫通する接触刃を装備した可動接触台が配置され、クランプ本体の上部に、接触刃と対向するようにして接触刃を装備した電線保持部が配置されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−290983号公報
【特許文献2】特開2003−272794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の接地短絡器具では、配電線の絶縁被覆を剥ぎ取る必要はないものの、針電極が配電線の絶縁被覆を貫通するため、接地短絡器具の撤去後に貫通部を補修(絶縁処理)する必要がある。同様に、特許文献2の接続クランプ装置においても、接触刃が配電線の絶縁被覆を貫通するため、接続クランプ装置の撤去後に貫通部を補修する必要がある。つまり、バイパスケーブルと接地短絡器具とを取り付けた場合、2つの貫通部を補修する必要があり、多大な時間と労力とを要していた。
【0007】
また、特許文献1の接地短絡器具は、従来の接地短絡器具とは構成が全く異なる専用の器具のため、新たに装備しなければならず、すべての作業現場で採用するには多大な費用を要する。
【0008】
そこでこの発明は、バイパスケーブルと接地短絡器具とを容易かつ迅速に取付可能にする、バイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、バイパス用の電線の一端部に設けられ、前記電線を配電線に電気的に接続するためのバイパスケーブル用コネクタであって、前記配電線が当接する当接部が内側に設けられた開口を側面に有するコネクタ本体と、前記コネクタ本体の当接部に対して進退動自在で、前記当接部側に進むことで前記当接部とで前記配電線を挟持する可動体と、前記当接部および前記可動体の少なくとも一方に設けられ、前記当接部と前記可動体とで前記配電線を挟持した状態で、前記配電線の絶縁被覆を貫通して前記配電線の心線に電気的に接触する接触刃と、前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面に設けられ、接地短絡器具のクランプ部を電気的に着脱自在な器具接続部と、前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面と反対側の側面に設けられ、前記バイパス用の電線が取り付けられる接続板と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のバイパスケーブル用コネクタにおいて、前記器具接続部は、棒材をコ字状に形成したものであり、両端部が前記コネクタ本体に接続されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、バイパス用の電線と、該電線の一端部に設けられ前記電線を配電線に電気的に接続するためのバイパスケーブル用コネクタと、を備えたバイパスケーブルであり、前記バイパスケーブル用コネクタに、前記配電線が当接する当接部が内側に設けられた開口を側面に有するコネクタ本体と、前記コネクタ本体の当接部に対して進退動自在で、前記当接部側に進むことで前記当接部とで前記配電線を挟持する可動体と、前記当接部および前記可動体の少なくとも一方に設けられ、前記当接部と前記可動体とで前記配電線を挟持した状態で、前記配電線の絶縁被覆を貫通して前記配電線の心線に電気的に接触する接触刃と、前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面に設けられ、接地短絡器具のクランプ部を電気的に着脱自在な器具接続部と、前記コネクタ本体の前記開口が設けられている側面と反対側の側面に設けられ、前記バイパス用の電線が取り付けられる接続板と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載のバイパスケーブルにおいて、前記器具接続部は、棒材をコ字状に形成したものであり、両端部が前記コネクタ本体に接続されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項1および請求項3の発明によれば、可動体を当接部側に進めて当接部と可動体とで配電線を挟持して、接触刃を配電線の心線に接触させることで、バイパスケーブル用コネクタが配電線に電気的に接続される。これにより、バイパスケーブル用コネクタを介してバイパス用の電線が配電線に電気的に接続される。さらに、バイパスケーブル用コネクタの器具接続部に接地短絡器具のクランプ部を装着・接続することで、バイパスケーブル用コネクタを介して接地短絡器具が配電線に電気的に接続される。つまり、バイパスケーブル用コネクタを介して、バイパス用の電線と接地短絡器具とが配電線に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および請求項3の発明によれば、バイパスケーブル用コネクタの器具接続部に接地短絡器具のクランプ部を装着・接続するだけで、接地短絡器具を配電線に電気的に接続することができる。すなわち、接地短絡器具を接続するために、配電線の絶縁被覆を剥ぎ取ったり、接触刃などを絶縁被覆に貫通させたりする必要がなく、接地短絡器具を容易に取り付けることができるとともに、接地短絡器具の撤去後の絶縁処理を削減することができる。このようにして、バイパスケーブル用コネクタを介して、バイパス用の電線と接地短絡器具とを配電線に接続することで、バイパスケーブルと接地短絡器具とを容易かつ迅速に取り付けることが可能となり、また、撤去後の処理を容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【0015】
また、クランプ部を有する既存・既製の接地短絡器具を配電線に接続することができるため、新たな接地短絡器具を装備する必要がなく、設備費を削減することができる。
【0016】
請求項2および請求項4の発明によれば、棒材をコ字状に形成して器具接続部が構成されているだけであるため、簡易にかつ低コストで製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施の形態に係るバイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブルの使用状態を示す正面図である。
図2図1のバイパスケーブル用コネクタおよびバイパスケーブルを示す正面図である。
図3図2の右側面図である。
図4図2の上面図である。
図5図2のバイパスケーブル用コネクタが連結される共用操作棒を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1図5は、この発明の実施の形態を示し、図2は、この実施の形態に係るバイパスケーブル用コネクタ1およびバイパスケーブル10を示す正面図である。バイパスケーブル用コネクタ1は、バイパス用の電線2の一端部に設けられ、電線2を配電線100に電気的に接続するためのコネクタであり、バイパスケーブル10は、バイパス用の電線2と、この電線2の一端部に設けられ電線2を配電線100に電気的に接続するためのバイパスケーブル用コネクタ1と、を備えたケーブルである。
【0020】
バイパスケーブル用コネクタ1は、後述する共用操作棒200の先端部に着脱自在に取り付けられる先端工具であり、共用操作棒200とともに間接活線工具を構成する。このようなバイパスケーブル用コネクタ1は、全体が導電性の材料(金属材)で構成され、主として、コネクタ本体3と、ホルダ4と、可動体5と、接触刃53と、器具接続部6と、を備える。
【0021】
コネクタ本体3は、配電線100が当接する当接部31を有する部材である。すなわち、略C字状で、上部の窪みが当接部31となって、配電線100が当接するようになっている。この当接部31の形状は、配電線100が当接した状態で、後述するようにして、可動体5とで配電線100を適正・強固に挟持できるように設定されている。
【0022】
また、当接部31に対向する下部32と当接部31とを結ぶ垂直部33の内壁面33aは、一直線状に垂直に延びている。さらに、垂直部33の外壁面33bには、図2図4に示すように、平板状の接続板7が、水平軸71を軸心に回動自在に配設されている。そして、バイパス用の電線2の一端部に設けられた接続端子21を、ボルト、ナットなどで接続板7に接続することで、電線2とバイパスケーブル用コネクタ1とが接続され、ボルト、ナットなどを取り外すことで、電線2とバイパスケーブル用コネクタ1とが分離されるようになっている。
【0023】
ホルダ4は、バイパスケーブル用コネクタ1を共用操作棒200に取り付けたり、可動体5を進退動させたりするためのものであり、コネクタ本体3の下部32に設けられている。すなわち、コネクタ本体3の下部32から下方に突出するように、筒状のホルダベース41が配設され、このホルダベース41内に主軸42が、軸心周りに回転自在に配設されている。この主軸42の上端側には、雄ネジ部42aが形成され、この雄ネジ部42aは、コネクタ本体3の下部32に形成された雌ネジ(図示せず)に螺合されて、下部32から当接部31側に突出して配設されている。
【0024】
また、主軸42の下端には、略円筒状の被連結部43が設けられている。この被連結部43には、外周面から内周面に貫通する、導入孔43aと、ガイド孔43bと、係合孔43cとが形成されている。導入孔43aは、被連結部43の下端縁から所定の長さだけ軸方向に沿って上方に延び、ガイド孔43bは、導入孔43aの上端から左右に水平に延び、係合孔43cは、ガイド孔43bの左右の終端から、所定の長さだけ軸方向に沿って下方に延びている。
【0025】
これらの孔43a〜43cは、被連結部43の軸心に対して点対照状に(180°回転させて)2組形成され、孔43a〜43cの幅は、共用操作棒200の連結部202の係合突起203を挿入可能に設定されている。また、被連結部43の内径は、連結部202が嵌合可能に設定されている。
【0026】
一方、共用操作棒200は、図5に示すように、電気絶縁性の棒本体201の上端部に、円柱状の連結部202が配設され、この連結部202には、連結部202の外周面から突出するピン状の係合突起203が、連結部202の軸心に対して点対照状に2つ設けられている。また、棒本体201と連結部202との間には、ネジ部204が設けられ、このネジ部204に締め付けナット205が螺合されている。
【0027】
そして、係合突起203を導入孔43aに位置させた状態で、連結部202を被連結部43内に挿入し、係合突起203がガイド孔43bに達した時点で、共用操作棒200を軸心周りに回転させて、係合突起203を係合孔43cに位置させる。続いて、締め付けナット205を上方に進めて被連結部43(バイパスケーブル用コネクタ1)を押し上げることで、係合突起203が係合孔43cに嵌合して、連結部202と被連結部43とが連結される。また、これとは逆の操作を行うことで、連結部202と被連結部43との連結が解除される。このようにして、バイパスケーブル用コネクタ1が共用操作棒200に着脱自在となっている。
【0028】
可動体5は、コネクタ本体3の当接部31に対して進退動自在で、当接部31側に進むことで当接部31とで配電線100を挟持・把持するものである。すなわち、コネクタ本体3の当接部31と下部32との間に配設され、図3に示すように、カップ状(U字状)の第1の可動体51と、この第1の可動体51内に配設された直方体状の第2の可動体52とから構成されている。
【0029】
この第1の可動体51の底部51aに、ホルダ4の雄ネジ部42aの上端が接続され、第1の可動体51の一側縁(コネクタ本体3の垂直部33側の側縁)51bが、コネクタ本体3の内壁面33aに当接されている。そして、ホルダ4の主軸42(被連結部43)を回転させることで、雄ネジ部42aがコネクタ本体3の下部32に対して進退動し、これに伴って、可動体5がコネクタ本体3の内壁面33aに沿って、当接部31に対して進退動するようになっている。
【0030】
また、可動体5が当接部31側に進むことで、第1の可動体51の両側壁51cの上端縁51dと当接部31とで、配電線100を挟持・把持するように、上端縁51dの形状が設定されている。そして、このようにして、第1の可動体51の上端縁51dと当接部31とで配電線100を挟持・把持することで、バイパスケーブル用コネクタ1が配電線100に取り付けられる。
【0031】
接触刃53は、可動体5に設けられ、当接部31と可動体5とで配電線100を挟持した状態で、配電線100の絶縁被覆を貫通して配電線100の心線に電気的に接触する刃物である。すなわち、図2図3に示すように、配電線100の軸線方向に沿って刃先が延び、第2の可動体52の上面から当接部31側に垂直に突き出るように設けられている。この接触刃53の高さと配設位置は、上記のようにして、第1の可動体51の上端縁51dと当接部31とで配電線100を挟持・把持した状態で、接触刃53が配電線100の絶縁被覆を貫通して配電線100の心線に接触だけする(心線に損傷を与えない)ように設定されている。換言すると、第1の可動体51の上端縁51dと当接部31とで配電線100を挟持するまで、可動体5を当接部31側に進めることで、接触刃53の先端が配電線100の心線に丁度接触するようになっている。
【0032】
器具接続部6は、コネクタ本体3に設けられ、接地短絡器具300のクランプ部301を電気的に着脱自在な部材である。すなわち、図2図4に示すように、棒材をコ字状に形成したものであり、両端部がコネクタ本体3の当接部31の上部(C字の開口上部)に接続され、斜め上方に突出するように配設されている。また、器具接続部6の形状は、水平部6aに接地短絡器具300のクランプ部301を着脱できるように設定されている。つまり、器具接続部6内にクランプ部301を挿入し、クランプ部301を開閉・回動して、水平部6aを把持したり解放したりできるように設定されている。
【0033】
ここで、接地短絡器具300は、従来から広く使用されている既存・既製の接地短絡器具(短絡接地器具)であり、ヘッド302の回転軸303を軸心に開閉自在なフック状のクランプ部301と、ヘッド302に接続された接地電線304とを有する。そして、配電線100に取り付ける際には、配電線100の絶縁被覆を剥ぎ取って、クランプ部301とヘッド302とで配電線100の心線を把持するものである。
【0034】
次に、このような構成のバイパスケーブル用コネクタ1およびバイパスケーブル10の作用や使用方法などについて説明する。ここで、高圧停電工事において、停電および送電の操作のために、配電線100にバイパスケーブル10を取り付けるとともに、配電線100に接地短絡器具300を取り付ける必要がある場合について説明する。
【0035】
第1に、配電線100にバイパスケーブル10を取り付ける。すなわち、上記のようにして、バイパスケーブル10のバイパスケーブル用コネクタ1を共用操作棒200に取り付け、共用操作棒200を操作して、図1に示すように、コネクタ本体3の当接部31に配電線100を当接させる。次に、共用操作棒200を軸心周りに回転させて、ホルダ4の主軸42を回転させ、可動体5を当接部31側に進める。そして、接触刃53を配電線100の絶縁被覆に押し込みながら可動体5を進め、第1の可動体51の上端縁51dと当接部31とで配電線100を挟持する。これにより、接触刃53が配電線100の絶縁被覆を貫通して、配電線100の心線に電気的に接触する。この結果、バイパスケーブル用コネクタ1を介してバイパス用の電線2が配電線100に電気的に接続されるとともに、バイパスケーブル10が配電線100に取り付けられる。
【0036】
第2に、配電線100に接地短絡器具300を取り付ける。すなわち、接地短絡器具300のクランプ部301をバイパスケーブル用コネクタ1の器具接続部6内に挿入し、クランプ部301を閉じて、クランプ部301とヘッド302とで器具接続部6の水平部6aを把持する。これにより、バイパスケーブル用コネクタ1を介して、接地短絡器具300が配電線100に取り付けられ、接地短絡器具300の接地電線304が配電線100に電気的に接続されるものである。
【0037】
以上のように、このバイパスケーブル用コネクタ1およびバイパスケーブル10によれば、バイパスケーブル用コネクタ1の器具接続部6に接地短絡器具300のクランプ部301を装着・接続するだけで、接地短絡器具300を配電線100に電気的に接続することができる。すなわち、接地短絡器具300を接続するために、配電線100の絶縁被覆を剥ぎ取ったり、接触刃などを絶縁被覆に貫通させたりする必要がなく、接地短絡器具300を容易に取り付けることができるとともに、接地短絡器具300の撤去後の絶縁処理を削減することができる。つまり、バイパスケーブル10を取り付けるために、配電線100の絶縁被覆を貫通した箇所のみを絶縁処理すればよい。
【0038】
このようにして、バイパスケーブル用コネクタ1を介して、バイパス用の電線2と接地短絡器具300とを配電線100に接続することで、バイパスケーブル10と接地短絡器具300とを容易かつ迅速に取り付けることが可能となり、また、撤去後の処理を容易かつ迅速に行うことが可能となる。そして、配電線100の絶縁被覆の剥ぎ取りや貫通を減らせる結果、設備の信頼性を向上させることができ、また、絶縁処理を削減できる結果、電線補修材料費を削減することができる。
【0039】
一方、接地短絡器具300がバイパスケーブル10とは別の場所に取り付けられておらず、バイパスケーブル用コネクタ1に接地短絡器具300が取り付けられているため、送電時に接地短絡器具300の撤去をし忘れる、ということを防止・抑制することができる。さらに、棒材をコ字状に形成して器具接続部6が構成されているだけであるため、バイパスケーブル用コネクタ1およびバイパスケーブル10を簡易にかつ低コストで製作することができる。
【0040】
また、従来から広く使用されている既存・既製の接地短絡器具300を配電線100に接続することができるため、針電極や接触刃などを有する新たな接地短絡器具を装備する必要がなく、設備費を削減することができる。しかも、接地短絡器具300のクランプ部301で器具接続部6を把持するだけでよいため、ネジを回して針電極や接触刃などを配電線100の絶縁被覆に貫通させる場合などに比べて、作業が容易で、作業者の負担を大きく軽減することができる。
【0041】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、可動体5のみに接触刃53を設けているが、当接部31のみに接触刃53を設けたり、可動体5と当接部31の双方に接触刃53を設けたりしてもよい。また、バイパス用の電線2とバイパスケーブル用コネクタ1とが接続分離自在となっているが、バイパス用の電線2とバイパスケーブル用コネクタ1とを一体的に接続、固定したバイパスケーブル10としてもよい。
【0042】
さらに、棒材をコ字状に形成して器具接続部6を構成しているが、その他の構成であってもよい。例えば、リング状の器具接続部6とし、この器具接続部6をコネクタ本体3に固定したり吊り下げたりしてもよい。また、器具接続部6の配設位置についても、コネクタ本体3の上部に限らず、接地短絡器具300を取り付けやすく邪魔にならない位置であれば、どこであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 バイパスケーブル用コネクタ
10 バイパスケーブル
2 バイパス用の電線
3 コネクタ本体
31 当接部
4 ホルダ
5 可動体
53 接触刃
6 器具接続部
7 接続板
100 配電線
200 共用操作棒
300 接地短絡器具
301 クランプ部
【要約】
【課題】 バイパスケーブルと接地短絡器具とを容易かつ迅速に取付可能にする。
【解決手段】 配電線100が当接する当接部31を有するコネクタ本体3と、コネクタ本体3の当接部31に対して進退動自在で、当接部31側に進むことで当接部31とで配電線100を挟持する可動体5と、可動体5に設けられ、当接部31と可動体5とで配電線100を挟持した状態で、配電線100の絶縁被覆を貫通して配電線100の心線に電気的に接触する接触刃53と、コネクタ本体3に設けられ、接地短絡器具300のクランプ部301を電気的に着脱自在な器具接続部6と、を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5