特許第5917674号(P5917674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917674ポリチオエーテルポリマー、その調製方法、およびそれを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917674
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ポリチオエーテルポリマー、その調製方法、およびそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/12 20160101AFI20160428BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20160428BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20160428BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160428BHJP
   C07D 251/34 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C08G75/12
   C08L81/02
   C08G59/66
   C09K3/10 Z
   C07D251/34 GCSP
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-256620(P2014-256620)
(22)【出願日】2014年12月18日
(62)【分割の表示】特願2013-516679(P2013-516679)の分割
【原出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-57502(P2015-57502A)
(43)【公開日】2015年3月26日
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】12/823,206
(32)【優先日】2010年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エム. カニア
(72)【発明者】
【氏名】レネ リン
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ ビー. ラオ
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/022802(WO,A1)
【文献】 米国特許第04591522(US,A)
【文献】 特開昭63−280739(JP,A)
【文献】 特開昭60−190426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリチオエーテルを含む組成物であって、ここで、該ポリチオエーテルが、
以下を含む反応体の反応生成物を含み:
(a)以下の式を有するイソシアヌレート含有トリチオール:
【化10】
(ここで、各Rは、C2〜6n−アルキレンである);
(b)以下の式で表されるジチオール:
HS-R-SH
(ここで、Rは、-[(-CH-)-O-]-(-CH-)-であり、ここで、
pは、2〜6の範囲の値を有する整数であり、
qは、1〜5の範囲の値を有する整数であり、
rは、2〜10の範囲の値を有する整数である);および
(c)以下の式で表されるジビニルエーテル
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH
(ここで、mは、0〜10の有理数であり;そして
は、C2−6n−アルキレン基、C2−6分枝鎖アルキレン基、C6−8シクロアルキレン基、C6−10アルキルシクロアルキレン基、または−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−であり、
ここで、pは、2〜6の範囲の値を有する整数であり:
は、1〜5の範囲の値を有する整数であり;そして
は、2〜10の範囲の値を有する整数である);
ここで、該ポリチオエールは室温で液体であり;そして
ここで、該ポリチオエールは2.1〜2.8の平均官能性を有する、
組成物。
【請求項2】
前記反応体が0.1〜0.8モルの(a)含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記反応体が0.05〜1モルの(a)含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
、p’、rおよびr’のそれぞれが2でありそしてqおよびq’のそれぞれが1および2から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
p、p’、、q’、r’およびrのそれぞれが2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
mが1〜4である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
がエチレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
mが1〜4であり;そしてRがエチレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、ここで、
)前記イソシアヌレート含有トリチオールが1,3,5−トリス(2−メルカプトエチル)−[1,3,5]−トリアジン−2,4,6−トリオン(METT)であり;
)前記ジオールが1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(DMDO)であり;そして
)前記ジビニルエーテルがジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)である、
組成物。
【請求項10】
前記ポリチオエーテルが1,000ダルトン〜8,000ダルトンの数平均分子量により特徴付けられる、請求項1に記載のポリチオエーテル。
【請求項11】
エポキシを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記エポキシが、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド、エポキシド化した不飽和樹脂、エポキシ化したフェノール樹脂、および前記のいずれかの組み合わせから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記エポキシが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエポキシノボラック樹脂、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の組成物であって、ここで、
前記イソシアヌレート含有トリチオールが1,3,5−トリス(2−メルカプトエチル)−[1,3,5]−トリアジン−2,4,6−トリオン(METT)であり;
前記ジオールが1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(DMDO)であり;
前記ジビニルエーテルがジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)であり;そして
前記エポキシが、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびポリエポキシノボラック樹脂を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
シーラントとして処方された、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物を用いて形成された硬化されたシーラント。
【請求項17】
式:
【化1A】

によって表されるポリチオエーテルであって、
ここで:
各Yは、同じでもまたは異なってもよく、以下の構造:
−[−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−S−]−H、または
−OH、C1−10n−アルキル、−NCO、エポキシ、アミン、もしくはシラン基でキャッピングされている[−[−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−S−]
を有し
ここで:
は、C−C10n−アルキレン基、C−C分枝鎖アルキレン基、C−Cシクロアルキレン基、C−C10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−X]−(−CH−基、および−[(−CH−X]−(−CH−基(式中、少なくとも1つの−CH−単位はメチル基で置換され;
はC−C10n−アルキレン基、C−C分枝鎖アルキレン基、C−Cシクロアルキレン基、C−C14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、および−[(−CH−X]−(−CH−)から選択され;
XはO原子、S原子、および−NR−基から選択され、ここで、RはH原子およびメチル基から選択され;
pは2〜6の整数であり;
qは1〜5の整数であり;
rは2〜10の整数であり:
mは0〜10の値を有し;そして
nは1〜60の整数であり;そして
各Rは、C2〜6n−アルキレンを表し、そして同じでもまたは異なってもよい、
ポリチオエーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリチオエーテル、該ポリチオエーテルを調製するための方法、および該ポリチオエーテルを含むシーラント組成物等の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チオール終端化含硫化合物は、航空宇宙用シーラント組成物など、主として、架橋による該含硫化合物の燃料耐性性質による種々の応用における使用に十分に好適であることが公知である。航空宇宙用シーラント組成物についての他の所望の特性にはとりわけ、低温での可撓性、短い硬化時間(あらかじめ決められた強度に到達するために必要な時間)、および高温耐性が含まれる。これらの特徴のうちの少なくとも一部を呈し、チオール終端化含硫化合物を含有するシーラント組成物は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10に説明されている。
【0003】
室温および室内圧で液体であり、低温での優れた可撓性および燃料耐性を有する、特許文献7(「第‘179号特許」)に開示されているようなポリチオエーテルはしばしば、例えば航空宇宙用シーラントへの応用において所望される。第‘179号特許に説明されているような一部の場合においては、3以上の平均官能性を有するポリチオエーテルを製造するために、3以上のチオール基を有する化合物などの多官能性化剤(polyfunctionalizing agent)を利用することが望ましい。この所望はしばしば、二官能性の、すなわち直鎖のポリチオエーテルが炭化水素燃料および他の潤滑剤への長時間曝露の際に膨潤する傾向に由来する。しかしながら、このような多官能性化剤の使用の欠点は、接着および伸長などの他の重要なシーラント特性に欠陥を生じさせる傾向であった。結果として、従来技術の3以上の官能性を有する多官能性ポリチオエーテルと比較して、改良された伸長強度および/または引張強度(接着を損なわず)など、実質的に改良されたシーラント特性を有する3以上の平均官能性を有する多官能性ポリチオエーテルを提供することが望ましい。本発明は、先の所望の観点で実施された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2,466,963号明細書
【特許文献2】米国特許第4,366,307号明細書
【特許文献3】米国特許第4,609,762号明細書
【特許文献4】米国特許第5,225,472号明細書
【特許文献5】米国特許第5,912,319号明細書
【特許文献6】米国特許第5,959,071号明細書
【特許文献7】米国特許第6,172,179号明細書
【特許文献8】米国特許第6,232,401号明細書
【特許文献9】米国特許第6,372,849号明細書
【特許文献10】米国特許第6,509,418号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある点においては、本発明は、ポリチオエーテルに関する。これらのポリチオエーテルは、a)イソシアヌレート含有トリチオール、b)(a)とは異なるポリチオール、およびc)ジエンを含む反応体の反応生成物を含む。
【0006】
他の点においては、本発明は、式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、(A)同じでもまたは異なってもよい各Yには、チオエーテル結合を含む反復単位が含まれ、(B)各Rは二価の連結基を表し、同じでもまたは異なってもよい)によって表されるポリチオエーテルに関する。
【0009】
本発明はとりわけ、前記ポリチオエーテルを作製するための方法および、前記ポリチオエーテルを含む、航空宇宙用シーラント組成物を含むシーラント組成物等の組成物を作製するための方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明の目的のために、そうでないと明白に指定される場合を除き、本発明が種々の代替的な変法および工程順序を仮定してもよいことが理解されるべきである。その上、何らかの機能している例、または別段に記載の場合を除き、本明細書および特許請求の範囲において使用される、例えば成分の量を表す数はすべて、用語「約」によってすべての場合において修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、別段の記載がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において示される数的パラメータは、本発明によって得られるべき所望の特性に応じて変動してもよい概数である。少なくとも、および特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する意図としてではなく、各数的パラメータは、報告された有意な桁数の点で、および通常の丸め技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0011】
本発明の広範な範囲を示す数的な範囲およびパラメータが概数であるにもかかわらず、具体的な例において示される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらの個々の試験測定において認められる標準偏差から必ず結果として生じるある誤差を本質的に含有する。
【0012】
また、本明細書で列挙されるいかなる数的範囲も、該数的範囲に包摂される下位の範囲をすべて含むよう意図されると理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10の間の(ならびに最小値1および最大値10を含む)、すなわち、1以上の最小値と10以下の最大値を有する下位の範囲をすべて含むよう意図される。
【0013】
示されるように、本発明のある実施形態は、ポリチオエーテルに関する。本明細書で使用する場合、用語「ポリチオエーテル」は、少なくとも2つのチオエーテル結合、すなわち「−C−S−C−」結合を含む化合物を指す。ある実施形態においては、該化合物はポリマーである。本明細書で使用する場合、「ポリマー」は、オリゴマーならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を指す。別段の記載がない限り、本明細書で使用する場合、分子量は、「Mn」として示され、当該技術分野で認識される様式でポリスチレン標準物質を使用するゲル濾過クロマトグラフィーによって得られるポリマー材料の数平均分子量である。
【0014】
本発明のポリチオエーテルは、a)イソシアヌレート含有トリチオール、b)(a)とは異なるポリチオール、およびc)ジエンを含む反応体の反応生成物を含む。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「イソシアヌレート含有トリチオール」は、構造(II)
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、各Rは二価結合基を表しており、同じでもまたは異なってもよい)を有する化合物を指す。本明細書で使用する場合、「二価」は、置換基として2つの単共有結合を形成する置換基を指す。ある実施形態においては、二価結合基は、炭化水素結合基を有する場合のように、結合基骨格に炭素を含む。本明細書で使用する場合、用語「炭化水素基」は、例えば、分枝鎖または非分枝鎖の、非環状または環状の、飽和または不飽和の基など、種々の基を包含し、例えば、2個〜6個の炭素原子など、2個〜24個(または芳香族基/ヘテロ芳香族基の場合、3個〜24個)の炭素原子を含有することができる。好適な二価炭化水素結合基の非限定例としては、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、オクタデシレン、およびイコシレンなどの、直鎖または分枝鎖アルキレンが挙げられる。好適な二価炭化水素結合基の非限定例としては、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、およびこれらのアルキル置換誘導体などの、環状アルキレンも挙げられる。
【0018】
構造(II)を有する化合物およびそれらの調製のための方法に関する具体的だが非限定的な例としては、米国特許第3,676,440号第1段落50行目〜第5段落60行目、米国特許第4,266,055号第7段落13行目〜30行目、ならびに米国特許第4,791,185号第1段落67行目〜第2段落15行目および第2段落37行目〜47行目に説明される化合物が挙げられ、該特許の各々の引用された部分は、引用により本明細書に援用される。しかしながら、ある実施形態においては、イソシアヌレート含有トリチオールは、エステル結合が実質的にないかまたは完全にないことが望ましい。本明細書で使用する場合、用語「実質的にない」は、イソシアヌレート含有トリチオールが、エステル結合を、仮にあったとしても、付随的不純物として含むことを意味する。いかなる付随的エステル結合も、本発明のポリチオエーテルポリマーの特性に影響しないような付随的な量で存在する。
【0019】
ある実施形態においては、二価結合基は、イソシアヌレート含有のトリイソシアネートと十分量のメルカプト官能性の一価アルコールとの反応生成物を用いる場合であるように、ウレタン結合を含む。好適な例示的イソシアヌレート含有トリイソシアネートには、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートおよびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートなどのジイソシアネートのイソシアヌレート(これらの混合物を含む)が含まれるが、それらに限定されない。好適な例示的メルカプト官能性一価アルコールは、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−3−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、およびこれらに類するもの(それらの混合物を含む)が含まれる。
【0020】
2以上の異なるイソシアヌレート含有トリチオールは、所望の場合に採用することができる。
【0021】
先に記載したように、本発明のポリマーを調製するために使用される反応体は、上述のイソシアヌレート含有トリチオールとは異なるポリチオールも含む。ある実施形態においては、該ポリチオールは、式(III):
HS−R−SH (III)
(ここで、式(III)中、Rは、(i)C2−10n−アルキレン基、(ii)C2−6分枝鎖アルキレン基であって、例えばヒドロキシル基、メチル基もしくはエチル基などのアルキル基、および/またはアルコキシ基であり得る1以上のペンダント基を有してもよい、C2−6分枝鎖アルキレン基、(iii)C6−8シクロアルキレン基、(iv)C6−10アルキルシクロアルキレン基、
(v)−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−、あるいは、
(vi)−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−(式中、少なくとも1つの−CH−単位はメチル基で置換され、pは2〜6に及ぶ値を有する整数であり、qは1〜5に及ぶ値を有する整数であり、rは2〜10に及ぶ値を有する整数であり、XはO、S、もしくは別の二価のヘテロ原子ラジカルなどのヘテロ原子、第二級もしくは第三級アミン基、すなわち−NR−(式中、Rは水素またはメチルである)または別の置換三価ヘテロ原子を含む)等の二価結合基を示す)によって表される化合物を含む。ある実施形態においては、XはOまたはSであり、したがって式(III)におけるRは、
−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−、または
−[(−CH−)−S−]−(−CH−)−である。ある実施形態においては、pおよびrは、両方とも2であるなど、等しい。
【0022】
本発明のポリマーを調製する上での使用に好適な具体的なジチオールの例としては、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメルカプトジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリチオール材料は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、およびヒドロキシル基から選択される1以上のペンダント基を有することができる。好適なアルキルペンダント基には、C−C直鎖アルキル、C−C分枝鎖アルキル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが含まれる。
【0023】
本発明のポリマーを調製する上での使用に好適な他の具体的なジチオールの例としては、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(式(III)中、Rは、
−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−(式中、pは2であり、rは2であり、qは1であり、XはSである)である)、ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(式(III)中、Rは、
−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−(式中、pは2であり、qは2であり、rは2であり、XはOである)である)、および1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(式(III)中、Rは、
−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−(式中、pは2であり、rは2であり、qは1であり、XはOである)である)が挙げられる。炭素骨格におけるヘテロ原子と、メチル基などのペンダントアルキル基との両方を含むジチオールを使用することも可能である。好適な化合物には、例えば、
HS−CHCH(CH)−S−CHCH−SH、
HS−CH(CH)CH−S−CHCH−SH
などのメチル置換DMDS、ならびに
HS−CHCH(CH)−S−CH(CH)CH−SH、および
HS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SH
などのジメチル置換DMDSが含まれる。
【0024】
所望の場合、2以上の異なるジチオールを採用することができる。
【0025】
先に示したように、本発明のポリマーを調製するために使用される反応体は、ジエンも含む。本明細書で使用する場合、用語「ジエン」は、2つの炭素間二重結合を有する化合物を指す。非限定的な例示的なジエンには、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン、ウンデカジエン、ドデカジエン、トリデカジエン、テトラデカジエン、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、イコサジエン、ヘンエイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカジエン、および低分子量ポリブタジエン(M(w)1000g/mol未満)が含まれる。非限定的な例示的な環状ジエンには、シクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、または種々の環の位置に置換基を有するもしくは有さないジオレフィンを含有するより高次の環が含まれる。
【0026】
しかしながら、ある実施形態においては、ジエンは、式(IV):
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH (IV)
(ここで、式(IV)中のRは、C2−6n−アルキレン基、C2−6分枝鎖アルキレン基、C6−8シクロアルキレン基、C6−10アルキルシクロアルキレン基、または
−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−(式中、pは、2〜6に及ぶ値を有する整数であり、qは、1〜5に及ぶ値を有する整数であり、rは、2〜10に及ぶ値を有する整数である)である)によって表される化合物を含む。
【0027】
式(IV)の材料はジビニルエーテルである。好適なジビニルエーテルには、1〜4のオキシアルキレン基など、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有する化合物、すなわち、式(IV)におけるmが1〜4の整数である化合物が含まれる。一部の場合においては、式(IV)におけるmは、2〜4の整数である。本発明のポリマーを製造するために市販のジビニルエーテル混合物を採用することも可能である。このような混合物は、1分子あたりのオキシアルキレン単位の数についての整数ではない平均値を特徴とする。したがって、式(IV)におけるmは、1.0と10.0の間、1.0と4.0の間、または2.0と4.0の間など、0と10.0の間の有理数とすることもできる。
【0028】
本発明のポリチオエーテルが調製されてもよい好適なポリビニルエーテルモノマーには、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)(式(IV)中、Rはエチレンであり、mは1である)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)(式(IV)中、Rはブチレンであり、mは1である)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)(式(IV)中、Rはヘキシレンであり、mは1である)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)(式(IV)中、Rはエチレンであり、mは2である)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(式(IV)中、Rはエチレンであり、mは3である)、テトラエチレングリコールジビニルエーテル(式(IV)中、Rはエチレンであり、mは4である)、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテルなどの、ジビニルエーテルモノマー;トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどのトリビニルエーテルモノマー;ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルなどの四官能性エーテルモノマー;および2以上のこのようなポリビニルエーテルモノマーの混合物が含まれる。ポリビニルエーテル材料は、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、およびアミン基から選択される1以上のペンダント基を有することができる。
【0029】
式(IV)中のRがC2−6分枝鎖アルキレンである有用なジビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させることによって調製することができる。この種の例示的な化合物には、式(IV)中のRがアルキル置換メチレン基、例えば、−CH(CH)−(例えば、PLURIOL(登録商標)E−200ジビニルエーテル(Parsippany,N.J.ののBASF Corp.)などの「PLURIOL(登録商標)」ブレンドなど(式(IV)中のRはエチレンであり、mは3.8である)、またはアルキル置換エチレン(例えば、−CHCH(CH)−(例えば、DPE−2およびDPE−3を含む「DPE」ポリマー配合物(Wayne,N.J.のInternational Specialty Products))である化合物が含まれる。
【0030】
他の有用なジビニルエーテルには、式(IV)中のRがポリテトラヒドロフリル(ポリTHF)またはポリオキシアルキレンであり、平均約3のモノマー単位を有するものなどの化合物が含まれる。
【0031】
所望の場合、式(IV)の2以上のポリビニルエーテルモノマーを使用することができる。
【0032】
本発明のポリチオエーテルは、本明細書の実施例において説明されるものを含むいくつかの方法によって調製することができる。ある実施形態においては、本発明のポリチオエーテルを調製するために使用されるポリチオール材料およびジエン材料、ならびにこれらの個々の量は、末端チオール基を生じるよう選択される。したがって、一部の場合においては、式(III)を有するジチオールまたは式(III)を有する少なくとも2つの異なる化合物の混合物などの(nまたはn+1などの>n)モルのポリチオール、および0.1〜0.8モルなどの約0.05〜1モルのイソシアヌレート含有トリチオールを、式(IV)を有するジビニルエーテルまたは式(IV)を有する少なくとも2つの異なる化合物の混合物などの(n)モルのジエンと反応させる。ある実施形態においては、イソシアヌレート含有トリチオールは、2.1〜2.8など、2.05〜3の平均官能性を有するポリチオエーテルを提供するのに十分な量で反応混合物中に存在する。
【0033】
本発明のポリチオエーテルを作製するために使用される反応は、フリーラジカル触媒によって触媒されてもよい。好適なフリーラジカル触媒には、アゾ化合物、例えば、アゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)などのアゾビスニトリル化合物;過酸化ベンゾイルおよび過酸化t−ブチルなどの有機過酸化物、ならびに過酸化水素などの無機過酸化物が含まれる。該反応は、ラジカル開始剤/感光剤を使用するかまたは使用しないかのいずれかで、紫外光による照射によってももたらすことができる。無機塩基または有機塩基、例えばトリエチルアミンのいずれかを使用するイオン触媒法も使用してもよい。
【0034】
先の説明から認められるように、本発明は、先に説明した一般式(I)のポリチオエーテルにも関する。ある実施形態において、一般式(I)に関して、同じでもまたは異なってもよい各Rは、例えば2個〜6個の炭素原子など、2個〜24個の(または芳香族基/ヘテロ芳香族基の場合においては、3個〜24個の)炭素原子を含有する分枝鎖または非分枝鎖の、非環状または環状の、飽和または不飽和の二価炭化水素基である。好適な二価炭化水素結合基の非限定例としては、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、オクタデシレン、およびイコシレンなどの直鎖または分枝鎖アルキレンが挙げられる。好適な二価炭化水素結合基の非限定例としては、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、およびこれらのアルキル置換誘導体などの環状アルキレンも挙げられる。
【0035】
ある実施形態においては、一般式(I)に関して、同じでもまたは異なってもよい各Rは、その各々の引用部分が引用により本明細書に援用される米国特許第3,676,440号第1段落63〜75行目に具体的に記載されている二価結合部分などの二価結合基を表してもよい。
【0036】
ある実施形態においては、一般式(I)における各二価結合基Rは、ポリチオエーテルが、末端チオール基を先に説明されたようなイソシアヌレート環と結合する二価結合基においてウレタン結合を含むイソシアヌレート含有トリチオールに由来する場合であるようなウレタン結合を含む。
【0037】
ある実施形態において、一般式(I)における各Yは、同じでもまたは異なってもよく、構造(V):
−[−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−S−]− (V)
(式中、Rは、C−C10n−アルキレン基、C−C分枝鎖アルキレン基、C−Cシクロアルキレン基、C−C10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−X]−(−CH−基、および−[(−CH−X]−(−CH−基(式中、少なくとも1つの−CH−単位はメチル基で置換され、RはC−C10n−アルキレン基、C−C分枝鎖アルキレン基、C−Cシクロアルキレン基、C−C14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、および−[(−CH−X]−(−CH−)から選択される)を含む。上記において、XはO原子、S原子、および−NR−基(式中、RはH原子およびメチル基から選択されてもよく、pは2〜6の整数であり、qは1〜5の整数であり、rは2〜10の整数である)から選択されてもよい。加えて、式(V)中のmは0〜10の値を有し、nは1〜60の整数である。例えば、本発明の一部の実施形態においては、mは1であり、Rはn−ブチレンであり、Rはエチレンである。本発明の一部の実施形態においては、Yは
−[−C−O−(−C−O)−C−S−(C)−O−(C)−O−(C)−S−]−H(式中、nは1〜60の値を有する整数である)
である。
【0038】
ある実施形態においては、本発明のポリチオエーテルは、キャッピングされていない、すなわちチオール終端化されている。すなわち、一般式(I)における各Yは構造(VI):
−[−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−S−]−H (VI)
を有する。
【0039】
ある実施形態においては、先に説明したキャッピングされていないポリチオエーテルは、室温で液体である。その上、ある実施形態においては、先に説明したポリチオエーテルは、実施例において説明されるように、Brookfield CAP2000粘度計を使用してASTM D−2849 §79〜90に従って決定される、温度約25℃および圧力約760mmHgで10〜300ポアズ、または一部の場合100〜200ポアズなどの100%固体で500ポアズ以下の粘度を有する。先の範囲内のいかなる端点も使用することができる。
【0040】
ある実施形態においては、先に説明したキャッピングされていないポリチオエーテルは、1モルあたり1,000〜8,000グラムなど、1モルあたり300〜10,000グラムの数平均分子量を有し、該分子量は、ポリスチレン標準物質を使用するゲル濾過クロマトグラフィーによって決定される。先の範囲内のいかなる端点も使用することができる。
【0041】
ある実施形態においては、本発明のポリチオエーテルのTは、−60℃以下など、−55℃以下である。
【0042】
ある実施形態においては、本発明のポリチオエーテルは、「キャッピングされて」おり、すなわち、該ポリチオエーテルは、−OHのような未反応の−SH基、C1−10n−アルキル基などのアルキル、C1−10n−アルキレン基などのアルキレン、−NCO、
【0043】
【化3】
【0044】
、アミン基、またはシラン基、例えば
【0045】
【化4】
【0046】
(式中、RおよびRは各々独立して有機基を表し、Xは1、2、または3である)などの加水分解性官能基、以外の末端基を有する。示されるように、好適な末端基には、例えば(i)例えば(a)ある塩基の存在下で、本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルを一酸化物、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、およびこれらに類するものと反応させること、または(b)フリーラジカル開始剤の存在下で、本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルを例えばアリルアルコールなどのオレフィンアルコールと、もしくは例えばエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、およびこれらに類するものなど、ジオールのモノビニルエーテルと反応させること、によって得られ得るような−OH、(ii)本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルをアルキレンと反応させることによって得られ得るようなアルキル、(iii)本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルをジオレフィンと反応させることによって得られ得るようなアルキレン、(iv)本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルをポリイソシアネートと反応させることによって得られ得るような−NCO、(v)本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルをグリシジルオレフィンと反応させることによって得られ得るような
【0047】
【化5】
【0048】
(この中で、オレフィン基は、例えば、3個〜5個の炭素原子など、3個〜20個の炭素原子を有するアルキレン基またはオキシアルキレン基であってもよく、この具体例としては、アリルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセン、4−ビニル−1−シクロへキセン、1,2−エポキシド、ブタジエンモノエポキシド、イソプレンモノエポキシド、およびリモネンモノエポキシドが挙げられる)、あるいは(vi)本発明のキャッピングされていないポリチオエーテルを、とりわけビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、およびビニルメチルジメトキシシランなどのオレフィンアルコキシシランと反応させることによって得られ得るような加水分解性官能基が含まれる。
【0049】
示されるように、本発明のある実施形態は、すでに説明したポリチオエーテルのうちの1つ以上を含むシーラント組成物、被膜組成物、および/または電気的ポッティング組成物などの組成物に関する。本明細書で使用する場合、用語「シーラント組成物」は、湿気および温度などの大気条件に耐える能力を有し、水、燃料、ならびに他の液体および気体などの材料の透過を少なくとも部分的に遮断するフィルムを製造することが可能である組成物を指す。ある実施形態においては、本発明のシーラント組成物は、例えば、燃料タンクのための航空宇宙用シーラントおよびライニングとして有用である。ある実施形態においては、該組成物は、先に説明されたポリチオエーテル、硬化剤、および充填剤を含む。
【0050】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、先に説明したポリチオエーテルに加えて、1つ以上の追加的な含硫ポリマーを含む。本明細書で使用する場合、用語「含硫ポリマー」は、少なくとも1つの硫黄原子を有する任意のポリマーを指し、該ポリマーには、ポリマー性チオール、ポリチオール、チオエーテル、ポリチオエーテル、およびポリスルフィドが含まれるが、これらに限定されない。「チオール」は、本明細書で使用する場合、チオール基またはメルカプタン基、すなわち、単独の官能基としてか、または例えばチオグリセロールを使用する場合のようなヒドロキシル基などの他の官能基との組み合わせにあるかのいずれかである「SH」基を含む化合物を指す。「ポリチオール」は、ジチオールまたはより高次の官能性のチオールなど、2つ以上のSH基を有する該化合物を指す。このような基は典型的には、他の官能基と反応性のある活性水素を有するような、末端および/またはペンダントである。本明細書で使用する場合、用語「ポリスルフィド」は、硫黄間結合(−S−S−)を含む任意の化合物を指す。「ポリチオール」は、末端硫黄および/またはペンダント硫黄(−SH)と非反応性硫黄原子(−S−または(−S−S−))の両方を含むことができる。したがって、用語「ポリチオール」は一般的に、「ポリチオエーテル」および「ポリスルフィド」を同様に包含する。好適な含硫ポリマーには、例えば、引用により本明細書に援用される米国特許第6,172,179号、第6,509,418号、および第7,009,032号に開示されているものが含まれる。したがって、ある実施形態においては、本発明の組成物は、式(VII)
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (VII)
(式中、(1)Rは、C2−6n−アルキレン基、C3−6分枝鎖アルキレン基、C6−8シクロアルキレン基、またはC6−10アルキルシクロアルキレン基、−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−、または−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−(この式中、少なくとも1つの−CH−単位はメチル基で置換される)を示し、(2)Rは、C2−6n−アルキレン基、C2−6分枝鎖アルキレン基、C6−8シクロアルキレン基、C6−10アルキルシクロアルキレン基、または−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−(式中、Xは、O、S、および−NR−からなる群から選択される1つを示し、RはHまたはメチルを示す)を示し、(3)mは0〜10の有理数であり、(4)nは1〜60の整数であり、(5)pは2〜6の整数であり、(6)qは1〜5の整数であり、(7)rは2〜10の整数である)
を有する構造を含むポリチオエーテルを含む。このようなポリチオエーテルは、その引用部分が引用により本明細書に援用される米国特許第6,172,179号第2段落29行目〜第4段落34行目に説明されている。
【0051】
本発明に従って使用される任意の含硫ポリマーはさらに、ヒドロキシル官能性およびエポキシ官能性を含むがこれらに限定されない、追加的な官能性を含むことができる。
【0052】
ある実施形態においては、本発明のポリチオエーテルは、本発明の組成物中に、該組成物中の不揮発性成分の総重量を基にして少なくとも40重量%、または一部の場合においては少なくとも45重量%など、少なくとも30重量%の量で存在する。ある実施形態においては、本発明のポリチオエーテルは、本発明の組成物中に、該組成物の全不揮発性成分の重量を基にして80重量%以下、または、一部の場合においては75重量%以下など、90重量%以下の量で存在する。
【0053】
示されるように、本発明の硬化可能な組成物のある実施形態は、硬化剤も含む。(特に、本発明のキャッピングされていないチオエーテルが使用される場合における)本発明のある組成物において有用な硬化剤には、エポキシ樹脂、例えば、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド、ならびにエポキシド化した不飽和樹脂およびフェノール樹脂のうちのいずれか、ならびに不飽和化合物、例えば市販のポリオールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、不飽和の合成もしくは天然樹脂化合物、トリアリルシアヌレート、および本発明のポリチオエーテルのオレフィン末端誘導体が含まれる。
【0054】
イソシアネート官能性化合物も、(特に、アミンおよび/またはヒドロキシル末端基を含む本発明のキャッピングされたチオエーテルが使用される場合における)本発明の組成物における有用な硬化剤であり得る。好適なイソシアネート官能性化合物には、ポリマー性ポリイソシアネートが含まれるが、これに限定されず、該ポリマー性ポリイソシアネートの非限定例としては、ウレタン結合(−NH−C(O)−O−)、チオウレタン結合(−NH−C(O)−S−)、チオカルバマート結合(−NH−C(S)−O−)、ジチオウレタン結合(−NH−C(S)−S−)、およびこれらの組み合わせから選択される骨格結合を有するポリイソシアネートが挙げられる。
【0055】
アミン官能性化合物も(特に、イソシアネート末端基を含む本発明のキャッピングされたチオエーテルが使用される場合における)本発明の組成物における有用な硬化剤であり得る。好適なアミンには、本発明のアミン官能性チオエーテルの調製と関連して先に説明されたものが含まれる。
【0056】
加えて、本発明のキャッピングされていないチオエーテルが使用される場合において、有用な硬化剤は、当業者に公知の有機過酸化物および無機過酸化物(例えば、MnO)を使用するチオール基の酸化的カップリングを通じて得ることができる。特定の硬化剤の選択は、硬化する組成物のTに影響し得る。
【0057】
前記組成物において使用されるチオエーテル(複数可)の性質に応じて、該組成物はしばしば、95〜125%など、90%〜150%の化学量論量の選択された硬化剤(複数可)を含有する。
【0058】
本発明の組成物のある実施形態において有用な充填剤には、カーボンブラックおよび炭酸カルシウム(CaCO)などの従来の無機充填剤、ならびに軽量の充填剤を含む、当該技術分野において通常使用されているものが含まれる。好適な軽量の充填剤には、例えば、その引用部分が引用により本明細書に援用される米国特許第6,525,168号第4段落23〜55行目において説明されるものが含まれる。ある実施形態においては、該組成物には、該組成物の総重量を基にして10〜50重量%など、5〜60重量%の充填剤または充填剤の組み合わせが含まれる。
【0059】
明らかなように、本発明のある組成物において採用されるチオエーテル、硬化剤、および充填剤、ならびに下記に説明されるような任意の添加物は、互いに適合性であるよう選択されるべきである。本発明の組成物のための適合性成分の選択は、過度の実験に依らずに当業者によって容易に実施されることができる。
【0060】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、−10℃、または一部の場合においては−20℃など、最大温度0℃で(すなわち、0℃またはそれ未満の温度で)硬化可能であり、−60℃以下、または一部の場合においては−65℃以下など、−55℃以下で硬化する場合、Tを有する。
【0061】
先の成分に加えて、本発明のある組成物は任意に、以下、すなわち、他の成分のうち、とりわけ、着色剤、チキソトロープ剤、促進剤、抑制剤、接着促進剤、溶媒、およびマスキング剤のうちの1つ以上を含むことができる。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「着色剤」は、前記組成物に対して色彩および/または他の不透明性および/または他の視覚的効果を与えるいずれかの物質を意味する。着色料は、離散粒子、分散系、溶液、および/または薄片など任意の好適な形態で被膜に添加することができる。単一の着色剤または2以上の着色剤の混合物は、本発明の被膜において使用することができる。
【0063】
着色剤の例としては、塗料産業において使用されるおよび/またはDry Color
Manufacturers Association(DCMA)において列挙されるものなどの顔料、染料、およびチント(tint)、ならびに特殊効果組成物が挙げられる。着色剤には、例えば、使用条件下で不溶性だが湿潤可能な細かく分割された固体粉末が含まれてもよい。着色剤は、有機または無機であることができ、凝集することができまたは凝集することができない。着色剤は、アクリル粉砕媒体などの粉砕媒体の使用によって、被膜へと組み込むことができ、該粉砕手段の使用は当業者に周知である。
【0064】
顔料および/または顔料組成物の例としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩タイプ(薄片)、ベンゾイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインディゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、およびこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。用語「顔料」および「有色充填剤」は、互換的に使用することができる。
【0065】
染料の例としては、フタログリーンもしくはフタロブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、およびキナクリドンなど、溶媒系ものであるおよび/または水系であるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
チントの例としては、Degussa Inc.から市販されているAQUA−CHEM 896、Eastman Chemical Inc.のAccurate Dispersions事業部から市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなど、水系担体または水混和性担体の中に分散した顔料が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
先に記載したように、着色剤は、ナノ粒子分散系を含むがこれに限定されない分散系の形態にあり得る。ナノ粒子分散系には、所望される可視的な色彩および/または不透明性および/または視覚効果を生じる、1つ以上の高度に分散したナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含むことができる。ナノ粒子分散系には、粒径が70nm未満または30nm未満など、150nm未満の顔料または染料などの着色剤を含むことができる。ナノ粒子は、粒径が0.5mm未満の粉砕媒体を用いてストックの有機顔料または無機顔料を挽くことによって製造することができる。ナノ粒子分散系およびこれを製造するための方法の例は、引用により本明細書に援用される米国特許第6,875,800号B2において確認される。ナノ粒子分散系は、結晶化、沈殿、気相凝縮、および化学的摩耗(すなわち部分溶解)によっても製造することができる。被膜内のナノ粒子の再凝集を最小にするために、樹脂で被覆したナノ粒子の分散系を使用することができる。本明細書で使用する場合、「樹脂で被覆したナノ粒子の分散系」は、ナノ粒子とナノ粒子上の樹脂被膜とを含む分散した離散「混成微粒子」が存在している連続相を指す。樹脂で被覆したナノ粒子の分散系およびそれを製造するための方法の例は、これもまた引用により本明細書に援用される2004年6月24日出願の米国特許出願公報第2005−0287348A1号、2003年6月24日出願の米国仮出願第60/482,167号、および2006年1月20日出願の米国特許出願シリアル番号第11/337,062号において確認される。
【0068】
本発明の組成物において使用してもよい特殊効果組成物の例としては、反射率、光沢、金属光沢、リン光、蛍光、光互変性、感光性、熱変色性、角度変色性、および/または変色などの1つ以上の様相効果を生じる顔料および/または組成物が挙げられる。追加的な特殊効果組成物は、不透明性または肌理など、他の知覚可能な特性を提供することができる。非限定的な実施形態においては、特殊効果組成物は、被膜を異なる角度で見る場合、被膜の色調が変化するよう、変色を生じることができる。色彩効果組成物の例は、引用により本明細書に援用される米国特許第6,894,086号において確認される。追加的な色彩効果組成物には、被覆した透明な雲母および/もしくは合成雲母、被覆したシリカ、被覆したアルミナ、透明な液晶顔料、液晶被膜、ならびに/または任意の組成物を含むことができ、ここで、干渉は、材料内の屈折率の差から結果として生じるのであって、材料表面と空気の間の屈折率の差の起因するものではない。
【0069】
一般に、着色剤は、所望の視覚的効果および/または色彩効果を与えるのに十分な任意の量で存在することができる。着色剤は、本組成物の総重量を基にした重量%を用いて、3〜40重量%または5〜35重量%など、該組成物の1〜65重量%を構成してもよい。
【0070】
チキソトロープ剤、例えばシリカはしばしば、前記組成物の総重量を基にして0.1〜5重量%の量で使用される。
【0071】
アミンなど、当該技術分野で公知の硬化触媒はしばしば、前記組成物の総重量を基にして0.1〜5重量%の量で存在する。有用な触媒の具体例は、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標)、Air Products,Chemical Additives Division,Allentown,Pa.より市販)およびDMP−30(登録商標)(2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含む促進剤組成物、Rohm and Haas.Philadelphia,Pa.より市販)であるが、これらに限定されない。しかしながら、本発明のある実施形態が、いずれかのこのような硬化触媒の不在下でさえ、周囲条件で硬化することが驚くべきことに発見された。
【0072】
ステアリン酸などの抑制剤も同様に、しばしば、前記組成物の総重量を基にして0.1〜5重量%の量で使用される。接着促進剤は採用される場合、しばしば、該組成物の総重量を基にして0.1〜15重量%の量で存在する。好適な接着促進剤としては、Occidental Chemicalsから入手可能なMETHYLONフェノール樹脂などのフェノール樹脂、ならびにMomentive Performance Materialsから入手可能なSilquest A−187およびSilquest A−1100などの、エポキシ、メルカプト、またはアミノ官能性シランなどの有機シランが挙げられる。該組成物の低レベルの何らかの悪臭を隠すのに有用なパイナップル(pine)芳香剤または他の香気などのマスキング剤はしばしば、該組成物の総重量を基にして0.1〜1重量%の量で存在する。
【0073】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、少なくとも一部の場合において航空宇宙用シーラントにおいて通常有用であるよりも高いTを有するポリチオエーテル(複数可)を該組成物に含めてもよい可塑剤を含む。すなわち、可塑剤の使用は、該組成物のTを効果的に低下させてもよく、したがって、チオエーテル単独のTを基に期待されるものを超えて、硬化した重合可能な組成物の低温での可撓性を増大させてもよい。本発明の組成物のある実施形態において有用である可塑剤には、例えば、フタラートエステル、塩素化パラフィン、および水素化テルフェニルが含まれる。可塑剤または可塑剤の組み合わせはしばしば、該組成物の1〜10重量%など、1〜40重量%を構成する。ある実施形態においては、該組成物において使用される可塑剤(複数可)の性質および量に応じて、−55℃までなど、−50℃までのT値を有する本発明のチオエーテルを使用することができる。
【0074】
ある実施形態においては、本発明の組成物はさらに、例えば、該組成物の総重量を基にして15重量%未満、および一部の場合においては10重量%未満など、0〜15重量%に及ぶ量で、イソプロピルアルコールなどの1つ以上の有機溶媒を含むことができる。
【0075】
しかしながら、ある実施形態においては、本発明の組成物は、有機溶媒または水性溶媒、すなわち水など、いずれかの溶媒を実質的に含まない、または一部の場合においては完全に含まない。別の言い方をすれば、ある実施形態においては、本発明の組成物は実質的に100%固体である。
【0076】
ある実施形態においては、すでに説明したシーランド組成物などの組成物は、2パック組成物など、複数パックの組成物として具現化され、ここで、1つのパッケージは、すでに説明したポリチオエーテルを含み、第二のパックは硬化剤を含む。すでに説明した添加物および他の材料を、所望の通りまたは必要に応じて、いずれかのパッケージに添加することができる。2つのパッケージは、使用時に、または使用時が迫ったときに、互いに単純に混合される。
【0077】
本発明の組成物は、種々の基材のいずれかに付与することができる。本発明の組成物が付与される共通の基材には、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、これらの陽極酸化した、下塗りした、有機物で被覆した、およびクロメートで被覆した形態、エポキシ、ウレタン、グラファイト、ガラス繊維混成物、KEVLAR(登録商標)、アクリル,ならびにポリカーボネートを含むことができる。
【0078】
本発明の組成物は、基材の表面上に、または下層にわたって、当業者に公知のいずれかの好適な被覆プロセスによって直接付与することができる。
【0079】
ある実施形態においては、本発明の組成物は燃料耐性である。本明細書で使用する場合、用語「燃料耐性」は、本発明の組成物を基材に付与し、硬化させた場合、引用により本明細書に援用されるASTM D792またはAMS 3269において説明されるものに類似した方法に従った1型のジェット基準流体(JRF)において140°F(60℃)および周囲圧力で1週間浸漬した後に、%膨潤体積が40%以下である、一部の場合においては25%以下である、一部の場合においては20%以下である、さらに他の場合においては10%以下である、シーラントなどの硬化生成物を提供することができることを意味する。1型のジェット基準流体(JRF)は、燃料耐性の決定のために本明細書で採用される場合、以下の組成を有する(1989年7月1日に発行されたAMS 2629の第3.1.1節およびそれ以降を参照されたい。これは、SAE(Society of Automotive Engineers、Warrendale,Pa)から入手可能である(これは引用により本明細書に援用される):引用により本明細書に)。
【0080】
トルエン 28±1体積%
シクロヘキサン(工業用) 34±1体積%
イソオクタン 38±1体積%
第三級ジブチルジスルフィド 1±0.005体積%
(ドクタースイート(doctor sweet))
ある実施形態においては、本発明のシーラント組成物は、AMS 3279の第3.3.17.1節の試験手順AS5127/1の第7.7節において説明されている手順に従って測定する場合、少なくとも100%の伸長および少なくとも400psiの引張強度を有するシーラントなどの硬化生成物を提供する。実際、本発明の多官能性ポリチオエーテルが、従来技術による多官能性ポリチオエーテルと比較して、伸長および/または引張強度など、実質的に改良されたシーラント特性を有することができることは、驚くべき発見であった。
【0081】
ある実施形態においては、本発明のシーラント組成物は、SAE AS5127/1の第7.8段落において説明されている手順に従って測定した場合、200psiを超える、一部の場合においては少なくとも400psiのラップ剪断強度を有するシーラントなどの硬化生成物を提供する。
【0082】
先の説明から明らかであるべきであるように、本発明は、本発明の組成物を利用する開口を密封するための方法にも関する。該方法は、(a)本発明の組成物を表面に付与して、開口を密封することと、(b)例えば周囲条件下で該組成物を硬化させることとを含む。また、認められるように、本発明は、本発明の被膜組成物で被覆した少なくとも1つの表面を含む航空宇宙ビークル、および本発明のシーラント組成物で密封された少なくとも1つの開口を備えた航空宇宙ビークルにも関する。
【0083】
以下の実施例は、本発明を説明しているが、本発明を実施例の詳細に限定するものとして解釈されるべきではない。別段の記載がない限り、以下の実施例におけるおよび明細書全体での部および百分率はすべて重量によるものである。
【実施例】
【0084】
(比較例1)
12.6gのトリアリルシアヌレート(「TAC」)を454.17gの1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(「DMDO」)とともに第一のフラスコに入れた。0.007gの50%KOH溶液を該フラスコに入れた。次に、この混合物を155〜165°Fまで加熱し、撹拌した。第二のフラスコに、0.40gのVazo−67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))(E.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能)を340.77gのジエチレングリコールジビニルエーテル(「DEG−DVE」)に添加した。Vazo−67およびDEG−DVEを混合して、DEG−DVE混合物を形成した。このDEG−DVE混合物を第一のフラスコに6時間かけて添加した。この添加は、第一のフラスコの温度が160°Fに到達した後に開始し、160〜163°Fの温度を維持しながら続行した。このDEG−DVE混合物を第一のフラスコへ完全に添加した後、0.56gのVazo−67を1時間あたり0.14gの間隔で、所望のメルカプタン当量に到達するまで添加した。次に、第一のフラスコの中の温度を200〜210°Fまで2時間上昇させた。次に、第一のフラスコを170°Fまで冷却し、減圧下に1時間置いた。結果として生じる化合物は、1696のメルカプタン当量、2.21のメルカプタン官能性、および80ポアズの粘度を有していた。
【0085】
(比較例2)
36.12g(0.05モル)のCAPCURE(登録商標)3−800(式VIII(式中、Rは脂肪族炭化水素であり、「n」は1〜2の値を有する)によって表されるトリチオール)および424.58gのDMDO(2.33モル)を1Lの4つ首丸底フラスコに入れた。
【0086】
【化6】
【0087】
前記フラスコに攪拌機、通気アダプタ、および温度計を備え付けた。撹拌を開始し、フラスコを乾燥窒素で洗い流し、この反応混合物を169°Fまで加熱した。ジエチレングリコールジビニルエーテル(349.0g、2.21モル)におけるラジカル開始剤Vazo−67(0.4g)の溶液をこの反応混合物に4時間かけて導入し、その間、158〜169°Fの温度を維持した。11の部分のVazo−67(各約0.151g)を1時間間隔で添加し、この間、温度を158〜169℃に維持した。この反応混合物を212°Fで2時間加熱し、176°Fまで冷却し、172〜176°F/4〜5mmHgで1時間脱気した。結果として生じるポリマー(理論上の官能性:2.21)は、1536のメルカプタン当量、および171ポアズの粘度を有していた。
【0088】
(実施例1)
15.21gの1,3,5−トリス(2−メルカプトエチル)−[1,3,5]−トリアジン−2,4,6−トリオン(「METT」)(式IXによって表される)を第一のフラスコへ、435.78gのDMDOとともに入れた。
【0089】
【化7】
【0090】
0.007gの50%KOH溶液を該フラスコに入れた。次に、この混合物を155〜165°Fまで加熱し、撹拌した。第二のフラスコにおいて、0.43gのVazo−67を349.70gのDEG−DVEに添加した。このVazo−67およびDEG−DVEを混合して、DEG−DVE混合物を形成した。このDEG−DVE混合物を第一のフラスコへ6時間かけて添加し、この間、155〜165°Fの温度を維持した。DEG−DVE混合物を第一のフラスコへ完全に添加した後、0.075gのVazo−67を約165°Fの温度で添加した。次に、168〜172°F間の温度で約1.4gのVazo−67を1時間につき約0.14gの間隔で、所望のメルカプタン当量に到達するまで添加した。次に、第一のフラスコの中の温度を200〜210°Fまで2時間上昇させた。次に、第一のフラスコを170°Fまで冷却し、減圧下に1時間置いた。結果として生じる組成物は、1668のメルカプタン当量、2.21のメルカプタン官能性、および72ポアズの粘度を有していた。
【0091】
(シーラント組成物の調製)
表1の成分および量を使用して、比較例1、比較例2、および実施例1のポリチオエーテルを使用して、シーラント組成物を調製した。量はそれぞれ、基剤および促進剤の総重量を基にして重量%である。
【0092】
【表1】
【0093】
Air Products & Chemicalsから入手可能。
Occidental Chemicalから入手可能なMETHYLON 75108。
フェノール/ポリスルフィド接着促進剤は、約31%のVARCUM 29202フェノール樹脂、66%のThiokol LP−3ポリスルフィド、および米国特許第4,623,711号の実施例4に従って調製された(1モルのジチオール対1モルのポリスルフィドの比の)3%のポリマーを、約150°F(65℃)の温度で45分間反応させ、次に45〜60分間かけて230°F(110℃)まで加熱し、次に230°F(110℃)で165分間加熱することによって調製した。
E.I.duPont de Nemours Companyから入手可能なチタネート。
Momentive Performance Materialsから入手可能なアミノ官能性シラン。
Hexiconから入手可能なビスフェノールAジグリシジルエーテル。
Dow Chemicalから入手可能なエポキシノボラック。
Solvayから入手可能な可塑剤。
Cabot Corp.から入手可能なフェルバム76%WDGカルバミン酸塩。
10Momentive Performance Materialsから入手可能なA−187エポキシ官能性シラン。
【0094】
化合した基剤組成物を1.0:1.1の当量比で促進剤組成物と完全に混合し、周囲温および周囲湿度で2日間、次いで140°Fで1日間硬化させた(以後、「乾燥」と呼ぶ)。次に、この組成物を試験して、引張強度、伸長、および剥離強度を決定した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
SAE AS5127/1B第7.7段落に従って試験。
AMS 3265B第8.1段落に従って試験。結果を直線1インチあたりのポンド(pli)/(%粘着)として報告。
乾燥標品。
SAE AS5127/1B第8.1段落に従って、1型ジェット基準燃料中に標品を140°Fで7日間浸漬した後に試験。
SAE 5127/1B第8.1段落に従って、1型ジェット基準燃料/3%NaCl溶液中に標品を140°Fで7日間浸漬した後に試験。
報告した結果は、3つの標品の平均であった。
【0097】
これらの結果によって示されるように、本発明の実施形態に従ったポリチオエーテルポリマーを含むシーラント組成物は、高い引張強度および伸長を有している。さらに、本発明の組成物は、欠陥のある剥離強度を有していない。
【0098】
本発明の特定の実施形態が説明目的のために先に説明されたが、本発明の詳細に関する数多くの変法が、添付の特許請求の範囲に定義されるように本発明から逸脱することなく実施されてもよいことは、当業者に明白である。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
以下を含む反応体の反応生成物を含むポリチオエーテル:
a)イソシアヌレート含有トリチオール、
b)(a)とは異なるポリチオール、および
c)ジエン。
(項2)
前記イソシアヌレート含有トリチオールは、構造
【化8】

(式中、Rは二価結合基を表し、同じでもまたは異なってもよい)を有する、上記項1に記載のポリチオエーテル。
(項3)
各Rは直鎖または分枝鎖アルキレンを表す、上記項2に記載のポリチオエーテル。
(項4)
前記アルキレンはエチレンを含む、上記項3に記載のポリチオエーテル。
(項5)
各Rはウレタン結合を含む、上記項2に記載のポリチオエーテル。
(項6)
前記イソシアヌレート含有トリチオールはエステル結合を実質的に含まない、上記項1に記載のポリチオエーテル。
(項7)
前記ポリチオール(b)はジチオールを含む、上記項1に記載のポリチオエーテル。
(項8)
前記ジチオールは式:
HS−R−SH
(式中、Rは二価結合基を示す)によって表される化合物を含む、上記項7に記載のポリチオエーテル。
(項9)
Rは
−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−、または
−[(−CH−)−S−]−(−CH−)
であり、式中pは2〜6に及ぶ値を有する整数であり、qは1〜5に及ぶ値を有する整数であり、rは2〜10に及ぶ値を有する整数である、上記項8に記載のポリチオエーテル。
(項10)
前記ジエンは式:
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH
(式中、RはC2−6n−アルキレン基、C2−6分枝鎖アルキレン基、C6−8シクロアルキレン基、C6−10アルキルシクロアルキレン基、または
−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−(式中、pは2〜6に及ぶ値を有する整数であり、qは1〜5に及ぶ値を有する整数であり、rは2〜10に及ぶ値を有する整数である)である)によって表される化合物を含む、上記項1に記載のポリチオエーテル。
(項11)
前記ポリチオエーテルは2.1〜2.8の平均官能性を有する、上記項1に記載のポリチオエーテル。
(項12)
上記項1に記載のポリチオエーテルと硬化剤および充填剤のうちの少なくとも1つとを含む組成物。
(項13)
上記項12に記載の組成物から堆積されたシーラントを用いて密封された少なくとも1つの開口を備えた航空宇宙ビークル。
(項14)
以下を含む反応体の反応生成物を含むポリチオエーテル:
a)イソシアヌレート含有トリチオール、
b)ジチオール、および
c)ジビニルエーテル。
(項15)
前記ジチオールは、式:
HS−R−SH
(式中、Rは
−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−または
−[(−CH−)−S−]−(−CH−)
であり、式中pは2〜6に及ぶ値を有する整数であり、qは1〜5に及ぶ値を有する整数であり、rは2〜10に及ぶ値を有する整数である)によって表される化合物を含む、上記項14に記載のポリチオエーテル。
(項16)
式:
【化9】

(式中、(A)各Yは、同じでもまたは異なってもよく、チオエーテル結合を含む反復単位であり、(B)各Rは、二価結合基を表し、同じでもまたは異なってもよい)によって表される化合物を含むポリチオエーテル。
(項17)
各Rは直鎖または分枝鎖アルキレンを表す、上記項16に記載のポリチオエーテル。
(項18)
各Yは構造
−[−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−S−]
(式中、Rは、C−C10n−アルキレン基、C−C分枝鎖アルキレン基、C−Cシクロアルキレン基、C−C10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−X]−(−CH−基および−[(−CH−X]−(−CH−基(式中、少なくとも1つの−CH−単位はメチル基で置換される)
から選択され、
はC−C10n−アルキレン基、C−C分枝鎖アルキレン基、C−Cシクロアルキレン基、C−C14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、および−[(−CH−X]−(−CH−から選択され、
Xは、O原子、S原子、および−NR−基(式中、RはH原子およびメチル基から選択される)から選択され、
pは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
mは、0〜10の値を有し、
nは、1〜60の整数である)
を含む、上記項16に記載のポリチオエーテル。
(項19)
式:
【化10】

(式中、各Rは同じでもまたは異なってもよく、ウレタン結合を含む二価結合基を表す)を有するイソシアヌレート含有トリチオール。