(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記止め部(26)は、設定された用量が薬剤容器内に残っている用量と等しいとき前記伸縮式用量ドラム(40)上の止め部材(97)と協働して前記伸縮式用量ドラム(40)の回転を禁止するように構成される、請求項1に記載の薬剤送達装置。
前記伸縮式用量ドラム(40)は、互いに滑動可能に配置された、第1の遠位の部分(41)と、第2の近位の部分(42)とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
前記第1の遠位の部分(41)はその遠位端に用量設定つまみ(41a)を含み、前記用量設定つまみ(41a)は、ユーザによって把持されて第1の方向に回転させられるときに用量を設定するように構成される、請求項4〜5のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
前記用量設定つまみ(41a)は、前記用量ドラム(40)の前記第1の部分(41)にその遠位端で接続された別体の部品であり、または、前記用量設定つまみ(41a)は、前記第1の部分(41)と一体化されており、これにより、前記伸縮式用量ドラム(40)の前記第1の部分(41)は、前記用量設定つまみ(41a)による用量設定中、前記ハウジング(10)に対して第1の方向において遠位方向に回転移動するように構成される、請求項6に記載の薬剤送達装置。
用量を設定している間前記ピストンプランジャ(20)が遠位方向に移動するのを防止するための単方向手段をさらに備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EP−A−1601395に開示されている装置等、このような装置は数多く開発されている。装置は用量設定ドラムを備え、このドラムは、ハウジングおよび駆動スリーブに対して回転させることができ、ユーザが手動で操作すると、プランジャロッドを駆動して、設定された用量の薬剤を送達する。用量設定ドラムを用いて用量を設定し、駆動スリーブを用いて用量を送達する機能を実現するためには、これらの間に、ある種の接続/分離機構が必要である。そこで、所望の機能を実現するために、クラッチまたは単方向接続機構が開発された。この解決策には、互いに協働する多数の部品と、多数のねじ切りされた係合および接続機構が必要であるが、これは、ユーザによって手動で加えられた力が過剰に大きくならないようにするために、慎重に設計することを必要とする。さもなければ、装置は適切に機能しないであろう。また、EP−A−1601395による解決策によって、簡単かつ効率的なやり方で、設定された用量を再設定することが可能か否かについては、疑がわしい。
【0005】
EP−A−1601395の装置のもう一つの特徴は、残っている量よりも多い用量が設定されることを防止しなければならないことである。すなわち、接続機構の螺旋ねじ山の端にナットが達したときに、ナットが用量ダイヤルスリーブの回転を停止し、それによって駆動スリーブがロックされると、用量ダイヤルスリーブの回転と、より多くの用量の設定が、ともに防止される。このねじ山間の直接的な作用は、それほど正確でないので、構成部品間の明確な停止はない。むしろ、摩擦が増して構成部品をそれ以上相対的に回転させることが難しくなるまで、構成部品が相当な回転距離だけ相互に回転させられる可能性がある。したがって、ユーザは、実際に受けた用量よりも多くの用量を受けているという錯覚に陥る可能性がある。
【0006】
さらに、用量設定ドラムおよび駆動スリーブならびにプランジャロッド等の構成部品は、細長く、かつ互いの内側に配置されている。これら構成部品間の詰まりのリスクを回避するためには、いくらかの遊びが必要である。その場合、構成部品間のこのような遊びおよび隙間によって、支えが不足して、潜在的なユーザに悪影響を及ぼし得るがたつきおよびその他の雑音が発生するリスクが増す。
【0007】
概要
本発明の目的は、技術水準の装置の欠陥が修復された薬剤送達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題のうちの1つまたはいくつかを克服するために、独立請求項1に記載の薬剤送達装置が提供される。
【0009】
その他の局面、改良、および変形は、従属請求項、図面、および明細書に開示されている。
【0010】
本願において「遠位」という用語が使用されるとき、これは、用量送達部位から遠ざかる方向を意味する。「遠位部/端」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達装置の使用時に用量送達部位から最も遠くに位置する、送達装置の部分/端部、または送達装置の部材の部分/端部を意味する。同じく、「近位」という用語が使用されるとき、これは、用量送達部位に近づく方向を意味する。「近位部/端」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達装置の使用時に用量送達部位の最も近くに位置する、送達装置の部分/端部、または送達装置の部材の部分/端部を意味する。さらに、「長手方向」「軸」または「長手方向」という用語は、装置またはその構成部品の最も長く延びている部分の方向における、装置またはその構成部品の方向または軸を意味する。同様に、「横断方向」「軸」または「横断方向」という用語は、長手方向に対して概ね垂直な方向における、装置またはその構成部品の方向または軸を意味する。また、装置の機械的構造およびその構成部品の機械的相互接続について述べている以下の説明において特に他の記述がなければ、この装置は、最初の非起動または非操作状態である。
【0011】
本発明は、近位端および遠位端を有するハウジングを備えた薬剤送達装置を提供する。中空のピストンプランジャがハウジング内に配置される。ピストンプランジャは、薬剤送達装置の長手方向に概ね対応する長手方向軸を有する。
【0012】
本発明の装置は、ハウジング内に配置された中空のピストンプランジャと、ハウジングとピストンプランジャの間に同心で配置された伸縮式用量ドラムとを備える。伸縮式用量ドラムは、用量を設定するときおよび用量を送達するときに、ハウジングに対してかつピストンプランジャに対して二方向に移動可能である。
【0013】
中空のピストンプランジャを近位端に向けて駆動するために、ピストンプランジャ駆動手段もこの装置に配置される。ピストン駆動手段は、中空のピストンプランジャの中に移動可能に配置された中空の駆動ドラムスリーブを含み得る。これはさらに伸縮式用量ドラムに固定的に接続されてもよい。よって、中空の駆動ドラムスリーブおよび中空のピストンプランジャは相互に結合可能である。この点について、結合は、所望の機能を与えるために多くの設計による結合となり得ることが理解されるはずである。
【0014】
さらに、この装置は、中空の駆動ドラムスリーブの中に移動可能に配置された長手方向のロッドを有する弾性スピン要素を備え、長手方向のロッドおよび中空の駆動ドラムスリーブは、取外し可能な状態で相互に結合可能であり、それにより、用量の設定後、近位端に向かう弾性スピン要素の軸方向移動によって、長手方向のロッドと中空の駆動ドラムスリーブを相互に結合させ、それにより、中空の駆動ドラムスリーブと中空のピストンプランジャも相互に結合させ、よって、中空のピストンプランジャおよび伸縮式用量ドラムは、設定された用量を送達するために近位端に向けて変位させられ、設定された用量の送達後、遠位端に向かう弾性スピン要素の軸方向移動によって、長手方向のロッドと中空の駆動ドラムスリーブとの結合を解除し、それにより、中空の駆動ドラムスリーブと中空のピストンプランジャとの結合も新たな用量の設定のために解除する。
【0015】
本発明の好ましい特徴によると、この装置は止め部をさらに備え、
この止め
部が中空のピストンプランジャに対して回転可能であるが滑動不能な状態で、止め部は中空のピストンプランジャに接続され、かつ、止め
部が伸縮式用量ドラムに対して滑動可能であるが回転不能な状態で、止め部は伸縮式用量ドラムに接続される。この解決策により、薬剤容器に残っている量よりも多い用量を設定することは不可能である。このようにして、ユーザに対し、送達しようとしている用量が所定の用量よりも少ないことを警告する。好ましくはまた、ユーザに対し、最後の用量がどれだけの量であるかを示すことによって、薬剤容器が新たなものと交換されたときにまたはユーザが別の薬剤送達装置を取得したときに、足りない分を捕捉する用量をユーザに送達できるようにする。
【0016】
ある好ましい解決策に従うと、上記止め部は、設定された用量が薬剤容器内に残っている用量と等しいとき伸縮式用量ドラム上の止め部材と協働して伸縮式用量ドラムの回転を禁止するように、構成される。この点に関して、上記止め部は、その外面に少なくとも1つの突起、リブ、またはレッジを含む概ね環状の部分であり、伸縮式用量ドラムは、互いに滑動可能に配置された、第1の遠位の部分と、第2の近位の部分とを含み、第2の近位の部分はその内面に少なくとも1つの長手方向に延在する溝を含む筒状体であり、止め部材は上記少なくとも1つの溝の端面である。この設計によって、純粋に機械的な止め機構が得られる。また、回転可能である環状部材を使用するとき、ピストンプランジャに対する径方向の支持も得られる。それにより、構成部品間の遊びを最小にするとともにそれでもなおこれら部品間の摩擦を最小にする。
【0017】
さらに用量設定つまみを配置してもよく、用量設定つまみは、ユーザによって把持されて第1の方向に回転させられるときに用量を設定するように構成される。用量設定つまみは、好ましくはアクセスし易くするために装置の遠位領域に配置される。
【0018】
さらに、用量設定つまみは、好ましくは用量ドラムの第1の部分にその遠位端で接続された別体の部品である。代替例として、用量設定つまみは第1の部分と一体化されていてもよい。これにより、伸縮式用量ドラムの第1の部分は、用量設定つまみによる用量設定中、ハウジングに対して第1の方向において遠位方向に回転移動するように構成される。
【0019】
その他の代替例として、用量設定つまみは、駆動ドラムスリーブにその遠位端で接続された別体の部品であってもよい。もう1つの代替例として、用量設定つまみは駆動ドラムスリーブと一体化されていてもよい。これにより、駆動ドラムスリーブは、用量設定つまみによる用量設定中、ハウジングに対して第1の方向において遠因方向に回転移動するように構成される。
【0020】
さらに、この装置は、用量を設定している間ピストンプランジャが遠位方向に移動するのを防止するための単方向手段を備えていてもよい。
【0021】
薬剤送達装置は注射装置、好ましくはペン型注射器であってもよい。
その他の側面、特徴、および利点は、上記概要から、ならびに、図面および請求項を含む以下の説明から、明らかになるであろう。
【0022】
以下の図面は例示のみを目的として本発明の実施の形態を開示する。特に、図面における開示は、本発明の保護範囲を限定することを意図していない。示されている実施の形態は、請求項の範囲内で多くのやり方で変形し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
実施の形態の機械的構造
図1は、本発明の好ましい実施の形態に従う薬剤送達装置の斜視図を示す。この薬剤送達装置は、近位端と遠位端とを有し、近位部または端11および遠位部または端12を有するハウジング10を含む。薬剤送達装置を組立てた状態で、ハウジング10は、薬剤送達装置の外面または外観の一部を形成する。しかしながら、ハウジングは多くの他のやり方で設計し得ることが理解されるはずである。
【0025】
この薬剤送達装置はさらに、薬剤容器を収容する薬剤容器ホルダ80を含む。薬剤容器ホルダ80も、薬剤送達装置の外面または外観の一部を形成する。容器ホルダ80の近位部はさらに、その近位端に、それ自体周知である従来の注射針(図示せず)を装着するための首部82を備える。しかしながら、バヨネットルアーロック(bayonet lure-lock)取付具等のその他の種類の接続部材を配置してもよいことが、理解されるはずである。また、薬剤容器の本体の中に注射針を組込んでもよく、その場合首部82は省略してもよい。
【0026】
キャップ(図示せず)を設けて、使用されていないときの薬剤送達装置の近位端、したがって薬剤容器ホルダ80の近位端を、取外し可能な状態で覆ってもよい。
【0027】
薬剤送達装置の薬剤容器ホルダ80は、薬剤の前進をユーザが見ることができるようにする、すなわち、薬剤送達装置が、薬剤がまだ注射されていない初期段階のままか否か、または、薬剤容器が既に空になっているか否かを、ユーザが見ることができるようにする、窓81を含む。ユーザは、窓81を通して、少なくとも薬剤容器ホルダ80に収容されている(薬剤容器の遠位端はハウジングの近位部の中まで達しているかもしれない)薬剤容器を見ることができる。好ましい実施の形態において、このような窓が2つ、薬剤容器ホルダ80の両側面に配置される。
【0028】
さらに、ハウジング10の
遠位端12には、さらに他の窓13が設けられる。この窓は
、以下でより詳細に説明するように、設定された用量をユーザに対して示すために設けられる。ハウジング10の
遠位端12では、用量設定のための用量設定つまみ41aが遠位方向に突出している。
【0029】
図1は、初期状態の薬剤送達装置を示す。ユーザが用量設定つまみ41aを掴み第1の方向、たとえば時計回り方向に回すと、以下で詳細に説明するように、用量設定つまみ41aおよびその他の構成部品が、一回分の用量を設定するために、遠位方向に移動する。
図2は、このような状態、すなわち一回分の用量が設定されるときの薬剤送達装置の斜視図を示す。
【0030】
図3は、設定された一回分の用量が送達された後の薬剤送達装置の斜視図を示す。
用量設定つまみ41aおよびこれに連結された構成部品が近位方向に移動させられ用量設定つまみ41aが再びその初期位置にあることがわかる。しかしながら、
窓81でわかるように、薬剤送達装置のピストンプランジャ20は近位方向に移動させられており、この時点で薬剤容器内のストッパ29を窓81を通して見ることができる。
【0031】
次に、
図4は、すべての薬剤、すなわち数回分の個別用量が送達された状態の薬剤送達装置の斜視図を示す。この時点で、ストッパ29は薬剤容器85の近位端に位置しており、ねじ切りされた表面21を有するピストンプランジャ20の一部を、窓81を通して見ることができる。
【0032】
薬剤容器ホルダ80は、このホルダを
ハウジング10の近位部11に接続または装着するための装着手段を備える。示されている実施の形態において、装着手段は、対応する凹部14に嵌められる突出部83(
図5参照)を含む。しかしながら、バヨネット取付具、ねじ山等の、薬剤容器ホルダ80をハウジング10に装着するためのその他の装着部材を利用してもよいことが、理解されるはずである。
【0033】
細長いピストンプランジャ20(
図5〜
図7参照)が、ハウジング10の内側に配置され、薬剤送達装置の長手方向に概ね対応する長手方向軸を有する。ピストンプランジャ20は、その外面の少なくとも一部にねじ山21(
図6)を有する。図面に示される好ましい実施の形態において、ピストンプランジャ20の近位部はねじ切りされた構造21を含む。その外面に、ピストンプランジャ20は、少なくとも1つの長手方向溝25(
図6)を含む(示されている実施の形態では、このような溝25が2つ設けられている)。ピストンプランジャ20の近位端には、ストッパ29に当接するようにされたワッシャまたはスピナ28(
図5)が配置される。ストッパ29は、薬剤容器85の内側に、移動可能な状態で収容されることが、意図されている。
【0034】
ピストンプランジャ20は、中央通路51(
図7)が設けられたインサート50の中に嵌められる。この中央通路の中心は、薬剤送達装置の長手方向軸に、概ね一致する。ねじインサートの中央通路51は、ピストンプランジャ20のねじ山21に対して相補的に設計されたねじ山52を備える。インサート50の外面は、ハウジング10の内面上の対応する凹部15(
図5)に嵌められる、少なくとも1つの突出部53等を含む。これにより、インサート50は
ハウジング10の近位部11にロックされる。
図5に示されるように、ハウジングの凹部15は、貫通孔として形成されてもよい。
【0035】
インサート50はさらに、ねじインサート50の遠位側に中央ボア54を含む。中央ボア54の直径は、中央通路51の直径よりも大きいので、階段状の構成が与えられる。中央ボア54の内周面には、鋸歯状の歯が設けられた周方向に延在するラチェット55が設けられる。
【0036】
ラチェット55は、環状の逆回転ブロック要素60(
図7)と協働する。このブロック要素には、外周面61上において、ブロック要素60の概ね周方向に延在する、対向配置された2つのアーム62が設けられる。
図5および
図7にはこのようなアーム62が2つ示されているが、ブロック部材60の大きさに応じて、アームは1つでも十分な場合があり、または、3つ以上のアームを設けてもよい。1つ以上のアーム62は、概ね径方向において可撓性を有する。アーム62の外向きの面の上に、レッジ(ledge)63が配置される。各レッジ63は、ねじインサート50のラチェット55に対して相補的な形状を有する。逆回転ブロック要素60にはさらに、ピストンプランジャ20が延在する中央通路65(
図7)が設けられる。中央通路65には、径方向内向きに向けられた突出部またはリブ66が設けられ、この突出部66は、ピストンプランジャ20の外面の細長い溝25に嵌まる。この構造によって、ピストンプランジャ20の回転ロックが実現されるが、ピストンプランジャ20は長手方向に移動することができる。
【0037】
ピストンプランジャ20にはさらに、中空のピストンプランジャ20(
図7)の内周面22に設けられた複数の長手方向のスプラインまたはリブ23が設けられる。概ね筒状の駆動ドラムスリーブ30(
図5)は、ピストンプランジャ20の径方向内側に配置される。駆動ドラムスリーブ30は、駆動ドラムスリーブ30の長手方向軸を横断する遠位端壁31を有する。遠位端壁31は中央開口部を有し、駆動ドラムスリーブは、以下で説明するように弾性スピン要素70を収容するために中空である。駆動ドラムスリーブ30の近位端は、1つ以上、好ましくは2つの、近位方向に延在する可撓性アーム33を含む。アーム33は、以下で説明するように、径方向の力を受けると径方向に偏向することが可能であるという意味で、可撓性である。各可撓性アーム33の外面は、ピストンプランジャ
20の内
周面22上の長手方向のスプライン23と選択的に係合するための、径方向に突出するピストンプランジャ係合面34(図
9)を含む。この面34の形状は、概ね、ピストンプランジャ20の周方向に配置されたリブ23の形状に相当していてもよい。各可撓性アーム33の内面は、中空の駆動ドラムスリーブ30の中に位置する弾性スピン要素70と選択的に係合するための径方向係合突出部37(図
9)を含む。
【0038】
遠位端壁31は、近位方向に延在する2つのロックアーム35(
図5)によって、結合要素を形成する。ロックアーム35は、それぞれの外面において、用量ドラム40の内面に対して駆動ドラムスリーブ30をロックするためのロック構造36を含む。
【0039】
径方向において見たときのピストンプランジャ20の外側には、伸縮式用量(設定)ドラム40が配置される(
図5および
図6)。用量ドラム40は、概ね筒状であり、ピストンプランジャ20およびハウジング10と同軸で配置される。用量ドラム40は、第1
の部分41と、第2
の部分42とを含み、これらは互いに滑動可能に配置される。
第1の部分41は、用量ドラム40の
第2の部分42と同軸でかつ径方向外側に位置する。
【0040】
第1の部分41は、その外側の
面において、螺旋状または渦巻き状に延在する溝49(
図6)を含む。溝49は、用量ドラム40の近位端から
第1の部分41までその全体にわたって延在する。溝49は、ハウジング10の内面に配置された少なくとも1つの突出部または渦巻き状に延在するレッジセグメント16(
図5)と協働して、用量ドラム40がハウジング10に回転接続され、したがって、これらの相互回転によって上記部分を長手方向に移動させることを、意図している。用量ドラム40の第1の部分41の遠位端領域にはさらに、薬剤送達装置の組立て中に駆動ドラムスリーブ30を動かしてピストンプランジャ20の中に入れたときに、駆動ドラムスリーブ30のロック構造36と係合するロック構造が設けられる。
【0041】
第1の部分41の遠位端には、用量設定つまみ41aが配置される(
図6)。用量設定つまみ41aは、用量ドラム40の第1の部分41の外面よりも幾分大きな直径を有する、近位方向に方向付けられた概ね筒状の部分を含む。用量設定つまみ41aの最外径は、好ましくはハウジング10の外径と同一面にある。伸縮式用量ドラム40の第1の部分41はしたがって、用量設定つまみ41aによる用量設定中にハウジング10に対し第1の方向において遠位方向に回転移動するように、構成される。
【0042】
伸縮式用量ドラム40の第2の部分42の内周面44は、ピストンプランジャ20の、ねじ切りされた外周面21に対して、ねじ山で接続される。具体的には、第2の部分42の近位端は、ねじ切り構造45(
図6)を含む。伸縮式用量ドラム40の第1の部分41とハウジング10の内周面との間のねじ山接続のピッチは、伸縮式用量ドラム40の第2の部分42の内周面44とピストンプランジャ20のねじ切りされた外周面21とのねじ山接続のピッチとは異なる。
【0043】
本発明に従うと、この装置はさらに、止め部26を含み、止め部材が中空のピストンプランジャ20に対して回転可能であるが滑動不能な状態で、止め部は中空のピストンプランジャ20に接続され、かつ、止め部材が伸縮式用量ドラムに対して滑動可能であるが回転不能な状態で、止め部は伸縮式用量ドラムに接続される。上記止め部26は、設定された用量が薬剤容器内に残っている用量と等しいときに伸縮式用量ドラム40上の止め部材97と連係して、伸縮式用量ドラム40の回転が禁止されるように、構成される。止め部26は、外面に少なくとも1つの突出部、リブ、またはレッジ94を含む概ね環状の部分である(
図6)。さらに、筒状体である、第2の近位の部分42は、その内面に、少なくとも1つの長手方向に延在する溝96を含み、上記止め部材97は、上記少なくとも1つの溝の端面である。止め部はピストンプランジャ上の周方向の溝
27に嵌まるように配置され、溝は、ピストンプランジャ20の外面のねじ山21の遠位端領域に配置される。環状体をピストンプランジャの溝に嵌めるために、止め部は、スリット92が設けられ、弾性材料から作られるので、止め部26がピストンプランジャ上に押されるよう、スリット92の隙間が広がるようにすることができる。止め部26は、適所にあるとき、ピストンプランジャに対して回転可能であるが、長手方向にはロックされる。止め部26のリブ94は、第2の部分42の内周面44に配置された長手方向に延在する溝96(
図6)に嵌められることが、意図されている。よって、止め部26は、第2の部分42に対して回転
不能にロックされるが、第2の部分42に対しては長手方向に滑動可能である。
【0044】
弾性スピン要素70は、長手方向ロッド71と遠位プッシュボタン72とを含む。プッシュボタンは、以下で説明するように、薬剤送達中にユーザの指が接触する接触面として機能することが、意図されている。上記のように、弾性スピン要素70の長手方向ロッド71は、中空の駆動ドラムスリーブ30の中に収容される。長手方向のロッド71は、その近位端において、周方向の溝73(
図9)を含む係合構造を備える。この溝に隣接して、近位方向にあるのは突出部74であり、遠位方向にあるのは傾斜面77である。溝73の大きさ、および、長手方向のロッド71上での位置は、駆動ドラムスリーブ30の可撓性アーム33上の径方向内側に向く突出部37が最初に溝73に収容されるように、定められる。このような最初の段階で、可撓性アーム33は、径方向外側には偏向していないが、張力が加わっていない状態である。
【0045】
駆動ドラムスリーブ30と比較したときの弾性スピン要素70の軸方向長さは、薬剤送達の初期状態すなわち係合突出部37が溝73に収容されている状態で、プッシュボタン72の近位面が、隙間76の分だけ、
駆動ドラムスリーブ30の遠位端壁31の遠位面から離れるように、定められる(
図10参照)。この隙間76は、ユーザが用量を設定するときは維持されており、用量ドラム40の第1の部分41、駆動ドラムスリーブ30、および弾性スピン要素70は、遠位方向に移動する。しかしながら、プッシュボタン72が近位方向に押されると直ちに、プッシュボタン72が先ず隙間76を埋めて、駆動ドラムスリーブ30に対し近位方向に長手方向のロッド71を移動させる。このような相対的な変位によって、傾斜面77は、可撓性アーム33上の係合突出部37と接触しこの突出部に押付けられながら移動し、それにより、アーム33を外側に偏向させてピストンプランジャ20の内面22の長手方向のスプラインと係合させる。
【0046】
本実施の形態の機能および動作の説明
送達する用量の設定動作
図8は、初期状態の薬剤送達装置の断面図を示す。
【0047】
一回分の用量を送達するためには、装置を操作して一回分の用量を設定しなければない。送達される一回分の用量を設定するために、ユーザは、ハウジング10と遠位部分に配置された用量設定
つまみ41aを把持し、これらを相対的に回す。この場合に用量設定
つまみ41aはたとえば時計回り方向に回される。用量設定
つまみ41aを回すことによって、用量ドラム40の第1の部分41が回転する。用量ドラム40の螺旋溝49とハウジング10の渦巻き状のレッジセグメントが接続されているので、この回転によって、用量ドラム40の第1の部分41が、ハウジング10に対して遠位方向に移動する。用量設定ドラム40の内側では、駆動ドラムスリーブ30も回転する。なぜなら、駆動ドラムスリーブ30の遠位端
壁31でも用量ドラム40と回転ロックしているからである。このように、駆動ドラムスリーブ30は、用量ドラム40
と一体で回転可能に、
容量ドラム40に接続されている。
【0048】
用量ドラム40の第1の部分41の内面
47の長手方向のリブ48は、用量ドラム40の第2の部分42の外面の長手方向の溝
46と接触している。したがって、第1の部分は第2の部分に対して滑動することができる。さらに、第2の部分42も回転させられ、ピストンプランジャ20のねじ切りされた表面にねじ山45が係合するので、第2の部分42は遠位方向にも移動する。ただし、その速度は、ピッチの相違が原因で、第1の部分41よりも低速度である。第2の部分42の回転はまた、ピストンプランジャ20に対して一定の回転力を生じさせ、これにより、逆回転ブロック要素60を回転させる。この回転が生じる原因は、逆回転ブロック要素60の突出部66がピストンプランジャ24の長手方向の溝25に嵌められているので、ブロック要素60とピストンプランジャ20の間で回転ロックがなされているからである。しかしながら、逆回転ブロック要素60のどのような回転も防止されるように、逆回転ブロック要素60のアーム62の方向が定められアーム62とねじインサート50のラチェット55が協働する。このようにして、ピストンプランジャ20の回転が防止される。回転中、ハウジング10の遠位端12の窓または開口13を通して、用量ドラム40上の印(図示せず)が示されることが、好ましい。よって、患者は、所定の用量が表示されるまで用量設定つまみ41aを回転させる。
【0049】
ユーザが誤って多過ぎる用量を設定した場合、ユーザは、用量設定つまみ41aを逆方向に回すことによって、用量ドラム40および駆動ドラムスリーブ30双方を、正しい用量に達するまで逆方向に回す。
【0050】
図10は、用量が設定されたときの状態の薬剤送達装置の断面図を示す。特に、隙間76がまだ存在していることがわかる。
【0051】
予め設定された用量の薬剤の送達動作
一回分の用量の薬剤を送達するために、ユーザは、用量送達部位、特に、薬剤送達部材が注射針のときは注射部位に、装置の近位端を押し当てる。次の段階では、装置の遠位端の
遠位プッシュボタン72を押す。そうすると、ユーザが加えた力によって隙間76が閉じ
遠位プッシュボタン72は駆動ドラムスリーブ30の遠位
端壁31に接触する。
【0052】
遠位プッシュボタン72に加えられた力により、第1に、駆動ドラムスリーブ30がピストンプランジャ20の内面と係合する。これは先に述べた通りである。第2に、隙間76が埋まると、
遠位プッシュボタン72に加えられた力によって、用量
設定つまみ41aが近位方向に動く。この近位方向の力は用量ドラム40に伝達され、ハウジング10とのねじ山接続によって、用量設定ドラム40がこのときは反時計回り方向に回転し、近位方向に移動する。用量ドラム40と駆動ドラムスリーブ30の間が回転ロックされているので、駆動ドラムスリーブ30も回転する。駆動ドラムスリーブ30のアーム33が径方向に撓むので、駆動ドラムスリーブ30の径方向外側の面34は、ピストンプランジャ20のスプライン23としっかりと係合する。
【0053】
このように、用量ドラム40および駆動ドラムスリーブ30が回転すると、後者は、ピストンプランジャ20も回転させる。この反時計回り方向の回転は、逆回転ブロック要素60によって、ねじインサート50のラチェット55と接触する、そのアーム62の設計のおかげで可能になる。したがって、ピストンプランジャ20は、逆回転ブロック要素60とともに回転し、逆回転ブロック要素60のアーム62がねじインサート50のラチェット55の上でスライドすることによって、聴覚および触覚で識別できる情報を提供する。さらに、ピストンプランジャ20は、ねじインサート50とねじ山接続しているので、回転することによって、近位方向に移動し、このため、ピストンプランジャ20の移動がストッパ29を近位方向に動かして、一回分の用量の薬剤を薬剤送達部材を通して放出させる。この用量の送達は、用量ドラム40が移動してその初期位置に戻った時点で完了している。初期位置は、用量ドラムがさらに移動または回転することを防止する、ある種のブロック部材(図示せず)によって制限することができる。
【0054】
次に、装置を薬剤送達部位から外してもよく、薬剤送達部材は廃棄される。薬剤容器85に、送達するのに十分な用量がまだ含まれていれば、上記ステップを、「送達する用量の設定動作」のステップから繰り返してもよい。
【0055】
しかしながら、薬剤容器に含まれる用量が、所定の用量よりも少ない場合、本発明は、残っている用量よりも多い用量が設定されることを防止する。用量設定つまみ41aが上記のように回転させられたとき、用量設定スリーブの第2の部分42もピストンプランジャ20との関連で回転し、第2の部分42とピストンプランジャ20がねじ山接続されているので、第2の部分42は遠位方向に移動する。止め部26のリブ94は回転の間第2の部分42の溝96の中でスライドするものの、最大の用量が設定されたときに、突起94は、止め部材97である、溝96の端面と接触し(
図11)、これによって、それ以上の用量が設定されることを防止する。このように、止め部26は用量設定ノブ41aがさらに回転させられないようにするので、残っている用量よりも多い用量の設定が防止される。
【0056】
好ましくは、最後の、一回分の用量よりも少ない量を示す何等かの印またはその他の情報手段を装置に設けることによって、ユーザが、その次に、足りない分を捕捉する量を摂取できるようにする。このようにして、薬剤容器内のすべての薬剤を用いることによって、残っている用量が所定の用量よりも少ないせいで無駄になる薬剤が残らないようにすることもできる。
【0057】
図面およびこれまでの説明の中で、本発明を図解し説明してきたが、このような図解および説明は、例示的または典型的なものであって限定的なものではないとみなされねばならない。当業者が変更または修正を以下の請求項の範囲の中でなし得ることが理解されるであろう。特に、本発明は、上記および下記異なる実施の形態からの特徴の何らかの組合せによってさらに他の実施の形態を包含する。
【0058】
さらに、請求項における「備える/含む」という語は、その他の要素またはステップを除外しない。また、不定冠詞「a」または「an」(1つの)は、複数を除外しない。1つの部分が、請求項に記載のいくつかの特徴の機能を果たす場合がある。属性または値に関連する「本質的に」、「約」、「およそ」等の用語は、特に、その属性そのものまたはその値そのものも定める。請求項の中の参照符号は、範囲を限定するものであると解釈されてはならない。