特許第5917837号(P5917837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917837コーヒー及び茶類抽出用のフィルタ、並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917837
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】コーヒー及び茶類抽出用のフィルタ、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A47J31/06
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-130282(P2011-130282)
(22)【出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2012-254254(P2012-254254A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2014年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】396026710
【氏名又は名称】株式会社オプトニクス精密
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】絹田 精鎮
(72)【発明者】
【氏名】市野沢 義行
(72)【発明者】
【氏名】青木 恵梨
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第96/033644(WO,A1)
【文献】 特開昭57−103613(JP,A)
【文献】 国際公開第01/097997(WO,A1)
【文献】 特開昭62−288390(JP,A)
【文献】 特公昭48−036835(JP,B1)
【文献】 特開平03−210924(JP,A)
【文献】 特開2010−274308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00 − 31/60
B21D 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線又はX線を用いたリソグラフィ工程と電鋳工程とを組み合わせて、ニッケルを含まない金合金又は純金で構成され、第1方向にジグザグに延びる縦要素と、該第1方向と交差する第2方向に延び該縦要素を連結する横要素と、が配列されると共に、円環状の外周枠と、前記外周枠と同心に形成された円形の中心枠とが一体的に形成された平面的なメッシュ母材を製作し、
前記外周枠に対して前記中心枠を押し込むことで、前記メッシュ母材のメッシュを円錐状に引き延ばし、前記縦要素を伸長させて、隣接する該縦要素同士の間隔を広げて前記メッシュの開口を拡大させるコーヒー及び茶類抽出用のフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー及び茶類抽出用のフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパーフィルターでない抽出用フィルタとして、金属フィルタが開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3074821号公報
【特許文献2】特開平10−85137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属製フィルタの素材としてステンレスを用いた場合には、錆び難いという利点はあるものの、該フィルタにより抽出されるコーヒーや茶の中へ、ステンレス中のニッケルや鉄が溶出することが懸念される。鉄が溶出すると、コーヒーや茶の香りや味を損ねることになる。
【0005】
ステンレスのメッシュに金めっきを施したコーヒーフィルタも市販されているが、金めっきが剥がれた場合にはステンレスのメッシュが露出し、同様にニッケルや鉄が溶出し得る状態となる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、金属フィルタにより抽出されるコーヒーや茶への金属臭の移りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項の発明(コーヒー及び茶類抽出用のフィルタの製造方法)は、紫外線又はX線を用いたリソグラフィ工程と電鋳工程とを組み合わせて、ニッケルを含まない金合金又は純金で構成され、第1方向にジグザグに延びる縦要素と、該第1方向と交差する第2方向に延び該縦要素を連結する横要素と、が配列されると共に、円環状の外周枠と、前記外周枠と同心に形成された円形の中心枠とが一体的に形成された平面的なメッシュ母材を製作し、前記外周枠に対して前記中心枠を押し込むことで、前記メッシュ母材のメッシュを円錐状に引き延ばし、前記縦要素を伸長させて、隣接する該縦要素同士の間隔を広げて前記メッシュの開口を拡大させる。
【0014】
このコーヒー及び茶類抽出用のフィルタの製造方法では、リソグラフィ工程と電鋳工程とを組み合わせることによって、ニッケルを含まない金合金又は純金で構成され、縦要素及び横要素とが配列されたメッシュ母材を容易に製造することができる。またメッシュ母材のメッシュを円錐状に引き延ばし、ジグザグ状の縦要素を伸長させてメッシュの開口を拡大させるので、該開口の大きさの調整が容易である。このため、コーヒーや茶を適切に抽出でき、かつその抽出時に金属臭の移りを抑制可能なフィルタを、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項に記載のコーヒー及び茶類抽出用のフィルタの製造方法によれば、コーヒーや茶を適切に抽出でき、かつその抽出時に金属臭の移りを抑制可能なフィルタを、容易に製造することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】メッシュ母材、治具及び押圧部材を示す分解斜視図である。
図2】治具及び押圧部材により、メッシュ母材を立体的に引き延ばしている状態を示す斜視図である。
図3】(A)引き延ばし前のメッシュの一例を示す拡大図である。(B)引き延ばし後のメッシュを示す拡大図である。
図4】(A)引き延ばし前のメッシュの他の例を示す拡大図である。(B)引き延ばし後のメッシュを示す拡大図である。
図5】フィルタを示す斜視図である。
図6】フィルタの実物を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
(抽出用フィルタの製造方法)
図1において、本実施形態に係るコーヒー及び茶類抽出用のフィルタの製造方法は、まず、紫外線又はX線を用いたリソグラフィ工程と電鋳工程とを組み合わせて、金合金及び又は純金で構成された平面的なメッシュ母材12を製作する。
【0021】
金合金は、金に他の金属を混合した合金であり、該金属の種類やその配合率によって色が変わる。代表的な金合金として、例えばイエローゴールド、グリーンゴールド、ピンクゴールド、レッドゴールド、ホワイトゴールドが挙げられる。ホワイトゴールドにはニッケル系とパラジウム系があるが、ニッケル系は用いず、パラジウム系を用いることが望ましい。純金の場合には、比較的強度が小さいため、例えば、厚みを150μm、質量を15gとする。一方、金合金は純金よりも強度が大きいため、フィルタ10の厚みを50μm、質量を5gとすることができる。
【0022】
メッシュ母材12は、全体として例えば円形に形成され、円環状の外周枠12Aと、該外周枠12Aと同心に形成される円形の中心枠12Bとは、夫々非メッシュ領域とされる。外周枠12Aには、治具16のピン18を通すための複数の貫通孔12Cが周方向に所定間隔で形成されている。また外周枠12Aには、メッシュ母材12の径方向に延びる複数のスリット12Dが周方向に適宜配列されている。このスリット12Dにより、後述するメッシュ14を立体的に引き延ばす際に、外周枠12Aでの皺の発生を抑制できるようになっている。
【0023】
メッシュ母材12における外周枠12Aと中心枠12Bとの間には、メッシュ14が形成される。メッシュ14には、補強のため、例えば円環状の非メッシュ枠14D,14Eが同心円状に形成されている。外周枠12A、メッシュ14、中心枠12B、非メッシュ枠14D,14Eを、電鋳により一体成形することにより、メッシュ母材12が構成される。
【0024】
図3(A),図4(A)の拡大図に示されるように、このメッシュ14には、メッシュ母材12の径方向(第1方向D)にジグザグに延びる縦要素14Vと、該径方向と交差する周方向(第2方向C)に延び該縦要素14Vを連結する横要素14Hと、が配列される。横要素14Hは、縦要素14Vと比較して幅広に構成されている。縦要素14Vのうち、横要素14Hと交差する部位は、強度を高めるために、部分的な幅広部14Bとなっている。縦要素14Vと横要素14Hで囲まれた部分は、開口14Cとなっている。
【0025】
なお、縦要素14Vの振幅や周期は適宜変化していてもよい。またジグザグとは、振幅を有する波形であることを意味する。従って、ジグザグには、三角波状のものに限られず、正弦波状のものや、矩形波状のもの、或いはこれらを夫々半波状にしたものも含まれる。また各種波形を適宜組み合わせてもよい。
【0026】
メッシュ母材12において、第1方向Dが径方向であり、第2方向Cが周方向であるものとしたが、第1方向D及び第2方向Cはこれに限られず、互いに交差する方向であればよい。
【0027】
次に、メッシュ母材12を、例えば容器状や筒状に立体的に引き延ばし、縦要素14Vを伸長させて、隣接する該縦要素14V同士の間隔を広げてメッシュ14の開口14Cを拡大させる。具体的には、図1図2に示されるように、まずメッシュ母材12の外周枠12Aを保持するための治具16を用意する。この治具16は、例えば円環状に形成され、内径が、メッシュ母材12における外周枠12Aの内径(メッシュ14の外径)に対応している。また治具16には、外周枠12Aの貫通孔12Cに挿通可能な複数のピン18が設けられている。
【0028】
図2に示されるように、貫通孔12Cにピン18を通すようにして、メッシュ母材12を治具16上に載置し、該メッシュ母材12の中心枠12Bに、例えば丸棒状の押圧部材20を当てて押し込むことで、メッシュ14を立体的に引き延ばす。外周枠12Aと中心枠12Bとが同心円状となっているため、メッシュ14は引き延ばされて円錐状となる。このとき、図示しない押え部材により、メッシュ母材12の外周枠12Aを治具16との間に挟み込んで保持しておくことが望ましい。このようにして、図5図6に示されるように、コーヒー及び茶類抽出用のフィルタ10が立体的かつ一体的に成形される。なお、図6は、フィルタの実物を示す写真である。
【0029】
これにより、図3(B),図4(B)に示されるように、メッシュ14におけるジグザグ状の縦要素14Vが、横要素14Hに互いに連結されたまま伸長するので、開口14Cをパンタグラフ状に拡大させることができる。なお、図3(B)の構造と、図4(B)の構造とを比較すると、図3(B)の構造は、ジグザグの頂点が横要素14Hで連結されているが、図4(B)の構造は、ジグザグの頂点には横要素14Hが存在していない。従って、図3(B)の構造の方が、メッシュ14の強度的に優位である。
【0030】
このように、本実施形態に係るコーヒー及び茶類抽出用のフィルタの製造方法では、リソグラフィ工程と電鋳工程とを組み合わせることによって、金合金及び/又は純金で構成され、縦要素14V及び横要素14Hとが配列されたメッシュ母材12を容易に製造することができる。
【0031】
またメッシュ母材12を立体的に引き延ばし、ジグザグ状の縦要素14Vを伸長させてメッシュ14の開口14Cを拡大させるので、該開口14Cの大きさの調整が容易である。また、例えば、金合金で製作されたメッシュ母材12を立体的に引き延ばした後、該貫通孔12Cを純金でコーティングすることにより、開口14Cの大きさを調整してもよい。このようにして、コーヒーや茶を適切に抽出でき、かつその抽出時に金属臭の移りを抑制可能なフィルタ10を、容易に製造することができる。
【0033】
(抽出用フィルタ)
このようにして製造されたコーヒー及び茶類抽出用のフィルタ10(図5)は、金合金及び/又は純金で構成されたメッシュ14を有している。金合金や純金はイオン化傾向が小さいので、抽出したコーヒーや茶に金属臭が移ることを抑制することができる。またフィルタ10に付着したコーヒー粉や茶葉は簡単に洗い流すことができ、衛生的である。このことは、図6に写真で示した実物で検証した。更に、見栄えが良好である。
【0034】
またフィルタ10では、メッシュ14と、メッシュでない枠の一例たる外周枠12A、非メッシュ枠14D,14E、及び中心枠12Bが、立体的かつ一体的に形成されて補強されているので、取扱いが容易である。
【0035】
メッシュ14の下部は、該メッシュ14の上部よりも密である。換言すれば、図3(B),図4(B)に示される開口14Cが小さい。ここで、下部とは、例えば、中心枠12Bと非メッシュ枠14Dの間の領域、及び非メッシュ枠14Dと非メッシュ枠14Eの間の領域である。また上部とは、例えば、非メッシュ枠14Eと外周枠12Aとの間の領域である。
【0036】
このように、メッシュ14の下部を上部より密にすることにより、コーヒーや茶葉抽出の際に、細かい粒子がメッシュ14から流出することを抑制できる。また、比較的メッシュ14の上部を比較的粗とする(開口14Cを大きくする)ことにより、抽出速度を向上させることができる。
【0037】
本実施形態では、メッシュ14が3つの領域に区画されているので、該メッシュ14の粗密(開口14Cの大小)を段階的に変化させることも可能である。また粗密を連続的に変化させることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 フィルタ
12 メッシュ母材
12A 外周枠
12B 中心枠
12C 貫通孔
14 メッシュ
14C 開口
14H 横要素
14V 縦要素
C 第1方向
D 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6