(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記既設窓枠は、前記当接部材として見込み面の室外側に位置する縁部にそれぞれ網戸レールを有するものであり、室外側から前記取付片部材を介して前記網戸レールに前記取付ネジを締結することにより、前記新設窓枠を保持することを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る改装用窓枠の取付構造の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1及び
図2は、本発明の実施の形態1である取付構造により建物の開口Hに対して改装用の新設建具10を設置した状態を示すものである。ここで例示する改装用の新設建具10は、窓枠11と左右2枚の障子12とを備え、窓枠11に対して2枚の障子12を左右方向にスライドさせて開閉する、いわゆる「引き違い窓」と称されるものである。本実施の形態1では、さらに、窓枠11において室外側に位置する部位に網戸13を1枚備えた新設建具10を例示している。尚、以下においては後述する既設建具の構成要素と区別するため、新設建具10の各構成要素に「新設」という接頭語を付してそれぞれを説明する。
【0023】
新設窓枠11は、
図1及び
図2に示すように、新設上枠11a、新設下枠11b及び左右一対の新設縦枠11cを四周枠組みすることによって横長に構成した合成樹脂製のものである。新設上枠11a、新設下枠11b及び新設縦枠11cには、個々の外周側に位置する部位が薄肉状に構成してあり、新設窓枠11の室外側に位置する外周部に支持用見付け面11dが構成してある。支持用見付け面11dは、新設窓枠11の室外側に臨む見付け面11eよりも突出量の小さい四周枠状の平面である。新設窓枠11の外形寸法は、後述する既設建具の各枠21a,21b,21cに設けた網戸レール21dによって囲まれる矩形の開口よりも小さく構成してある。2枚の新設障子12は、それぞれ新設上框12a、新設下框12b及び左右一対の新設縦框12cを四周框組みすることによって構成した新設框の内部にガラス板12dを保持したもので、新設窓枠11の内部に左右方向に沿ってスライド可能に配設してある。これらの新設障子12は、互いに同一の大きさを有し、かつそれぞれの一方の新設縦框12cを重ね合わせて左右に並設した場合に新設窓枠11の開口を閉塞することのできる大きさに構成してある。新設網戸13は、新設障子12と同様、新設網戸用上框13a、新設網戸用下框13b及び左右一対の新設網戸用縦框13cを四周框組みすることによって構成した新設網戸用框の内部に網13dを張って構成したもので、新設窓枠11の内部において新設障子12よりも室外側に位置する部位に左右方向に沿ってスライド可能に配設してある。
【0024】
一方、建物の開口Hに設置されていた改装前の既設建具は、図には明示していないが、窓枠21と左右2枚の障子とを備え、窓枠21に対して2枚の障子を左右方向にスライドさせて開閉する引き違い窓である。新設建具10と同様、窓枠21において室外側に位置する部位には、網戸がスライド可能に配設されていた。尚、以下においては上述した新設建具10の構成要素と区別するため、既設建具の各構成要素に「既設」という接頭語を付してそれぞれを説明する。
【0025】
既設窓枠21は、既設上枠21a、既設下枠21b及び左右一対の既設縦枠21cを四周枠組みすることによって構成したアルミニウム製のものである。既設上枠21aは、まぐさM1に対して室外側に位置する見付け面と内方側の見込み面との角部に取り付けられ、既設下枠21bは、窓台M2に対して室外側に位置する見付け面と内方側の見込み面との角部に取り付けられ、既設縦枠21cは、柱M3に対して室外側に位置する見付け面と内方側の見込み面との角部に取り付けられ、
図2に示すように、建物の開口Hに対して既設窓枠21が室外側に突出した構成にある。
【0026】
既設窓枠21の既設上枠21a、既設下枠21b及び一対の既設縦枠21cには、それぞれの室外側に位置する縁部に網戸レール21dが設けてある。網戸レール21dは、各既設枠21a,21b,21cの見込み面から突出したヒレ状部分である。既設上枠21a及び既設下枠21bに設けた網戸レール21dは、既設網戸の既設上框及び既設下框の溝に係合することによって既設網戸のスライドを案内するためのものである。既設縦枠21cに設けた網戸レール21dは、既設網戸を閉めた際に既設縦框の溝に係合するものである。図中の符号21eは、既設上枠21a及び既設下枠21bの互いに対向する見込み面に設けた一対の障子レールである。これらの障子レール21eは、既設窓枠21に対して既設障子をスライド可能に案内するためのヒレ状部分であり、網戸レール21dよりも室内側に位置する部位から互いに平行となる状態で既設上枠21a及び既設下枠21bの各見込み面から突出している。
【0027】
上記のように構成された既設窓枠21に対して新設窓枠11を取り付ける場合には、まず、既設窓枠21から既設障子及び既設網戸を取り外す。その後、
図2に示すように、建物の開口Hにおいて既設上枠21aよりも室内側に位置する部位に上方スペーサs1を配設し、この上方スペーサs1の下面から既設上枠21aの見込み面に渡ってフラットプレート24を取り付ける。フラットプレート24は、室外側に位置する縁部に上方当接片部24a及び下方当接片部24bを有した金属製のもので、既設上枠21aに設けた網戸レール21dの室内側に臨む見付け面に対し、シール部材w1を介して上方当接片部24aを当接させた状態で既設上枠21a及び上方スペーサs1にそれぞれネジb1によって取り付けられる。
【0028】
既設窓枠21の既設下枠21bに対しては、網戸レール21dと室外側に位置する障子レール21eとの間に締結用ブラケット25を取り付けるとともに、室内側に位置する見込み面から窓台M2に渡る部位の複数箇所に補強金具30を取り付ける。
【0029】
締結用ブラケット25は、網戸レール21dと障子レール21eとの間の全長に渡る部位に上方に突出した突条を構成する金属部材であり、障子レール21eにネジb2を締結することによって既設下枠21bに取り付けられる。
【0030】
補強金具30は、
図4に示すように、矩形の平板状を成す基板部31と、基板部31の一側縁から
図4中の下方に向けて直角に屈曲した下垂部32とを一体に成形した金属部材である。補強金具30のそれぞれは、
図2に示すように、基板部31が既設下枠21bの見込み面から窓台M2において室外側に位置する見込み面までの間を覆い、かつ下垂部32が既設下枠21bの室内側立上り部21fを覆う位置に配置され、基板部31を介して窓台M2にネジb9によって取り付けられる。さらに、補強金具30の下垂部32から既設下枠21bの室内側立上り部21fを介して窓台20にネジb10を締結することにより、補強金具30を介して窓台M2に対する既設下枠21bの取付強度が確保される。
【0031】
図1に示すように、既設窓枠21の既設縦枠21cには、室内側に位置する部位にそれぞれ側方スペーサs2を配設しておく。側方スペーサs2の寸法は、対向する見込み面の相互間隔が新設窓枠11の全幅とほぼ等しくなるように設定してある。
【0032】
一方、新設建具10の新設窓枠11には、新設下枠11bにシール部材w2を介して下方舌状片部26を取り付ける。下方舌状片部26は、新設下枠11bの下面から下方に向けて突設した金属製のヒレ状部材であり、取付ボルトb3及びナットn1により新設下枠11bの全長に渡って設けられる。下方舌状片部26の室外側に臨む見付け面は、新設下枠11bの支持用見付け面11dとほぼ同一平面となるように設けてある。
図2からも明らかなように、下方舌状片部26の下縁部は、既設下枠21bに設けられた網戸レール21dの板厚に相当する寸法だけ、室外側に向けて階段状に構成してある。
【0033】
上記のようにして下方舌状片部26を取り付けた新設窓枠11は、新設障子12及び新設網戸13を取り外した状態で室内側から既設窓枠21の内部に建て込まれ、下方舌状片部26の室内側に臨む見付け面がシール部材w3を介して既設下枠21bの網戸レール21dにおいて室外側に臨む見付け面に当接され、その後、新設上枠11aの支持用見付け面11dがフラットプレート24に設けた下方当接片部24bの室内側に臨む見付け面にシール部材w4を介して当接される。
【0034】
これらの操作や作業の間、下方舌状片部26を先に既設窓枠21の内部に挿入することで、既設上枠21aの網戸レール21d及び既設下枠21bの網戸レール21dに対して新設上枠11aや新設下枠11b、下方舌状片部26が干渉する事態を招来する恐れがない。また、新設縦枠11cの外径寸法が網戸レール21dの相互間隔よりも小さく設定してあるため、既設縦枠21cの網戸レール21dに対して新設縦枠11cが干渉することもない。
【0035】
次いで、新設上枠11aに対しては、その見込み面からフラットプレート24にネジb4を締結し、フラットプレート24及び既設上枠21aを介してまぐさM1との間を固定する。新設下枠11bに対しては、下方舌状片部26から締結用ブラケット25に対してネジb5を締結し、締結用ブラケット25及び既設下枠21bを介して窓台M2との間を固定する。
【0036】
この状態から新設縦枠11cに対しては、取付片部材27を取り付ける。取付片部材27は、
図1及び
図3に示すように、金属製の平板状部材であり、新設縦枠11cに設けたターンナットn2に室外側から見込み方向に沿って取付ボルトb6を締結させることより新設縦枠11cの支持用見付け面11dに設けられる。図には明示していないが、取付片部材27は、新設縦枠11cに対してそれぞれの高さ方向のほぼ中央となる部位、新設縦枠11cの上端部及び新設縦枠11cの下端部の3箇所ずつ、互いに間隔を確保して配設される。それぞれの取付片部材27は、新設窓枠11の室外側に臨む見付け面に沿って配設されており、個々の外端部が新設窓枠11の外周側に臨む見込み面から外方に突出している。取付片部材27は、その突出量が既設縦枠21cの見込み面から側方スペーサs2の見込み面までの距離にほぼ等しく設定してあり、個々の室内側に臨む見付け面が既設縦枠21cに設けた網戸レール21dに対向した状態となる。従って、室外側から取付片部材27及び網戸レール21dに対して取付ネジb7を締結すれば、取付片部材27及び既設縦枠21cを介して新設縦枠11cを柱M3に固定することができる。尚、取付片部材27と既設縦枠21cの網戸レール21dとの間には、適宜スペーサs3を介在させるようにしている。最後に、建物の開口Hにおいて室内側に位置する四周の見込み面にそれぞれ額縁部材28を取り付けることによって新設建具10が完成する。
【0037】
上述した取付構造によれば、建物の開口Hから既設窓枠21を取り外す必要がないため、新設建具10の改装を容易化することが可能となる。しかも、網戸レール21dに対して見込み方向に沿って締結する取付ネジb7の位置は、適宜調整することが可能である。従って、新設窓枠11が鼓状に変形する事態を有効に抑えることが可能となる。
【0038】
また、新設上枠11aの支持用見付け面11dとフラットプレート24の下方当接片部24bとの間、フラットプレート24の上方当接片部24aと既設上枠21aの網戸レール21dとの間、新設下枠11bと下方舌状片部26との間、新設下枠11bの下方舌状片部26と既設下枠21bの網戸レール21dとの間に関しては、それぞれ全長に渡って配設したシール部材w4,w1,w2,w3により水の浸入が確実に阻止されることになる。また、新設縦枠11cと既設縦枠21cとの間に関しては、取付片部材27の相互間からシール剤を充填することで水密性を確保することが可能となる。さらに、取付片部材27相互の隙間や充填したシール剤については、取付ネジb7の頭部にスナップ部材29aを配設し、このスナップ部材29aを介してカバー部材29bを配設すれば覆い隠すことができ、外観品質を損なうこともない。尚、カバー部材については必ずしも新設縦枠11cと既設縦枠21cとの間に限らず、既設上枠21aの室外側に臨む見付け面及び既設下枠21bに取り付けた下方舌状片部26の室外側に臨む見付け面にそれぞれスナップ部材31aを配設し、これらのスナップ部材31aを介して既設上枠21aや下方舌状片部26にカバー部材31bを設けるようにしても良い。
【0039】
また、既設下枠21bの複数箇所に補強金具30を取り付けることにより、既設下枠21bと窓台M2との間の取付強度を新たに確保するようにしているため、事前に既設下枠21bの取り付け状態を確認せずとも、新設窓枠11の新設下枠11bに加えられる新設障子12を確実に支持することが可能となる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態1では、矩形の平板状を成す基板部31と、基板部31の一側縁から直角に屈曲した下垂部32とを一体に成形した補強金具30を適用することにより、既設下枠21bと窓台M2との間の取付強度を新たに確保するようにしたが、補強金具の形状は、これに限定されない。例えば、
図5及び
図6に示した実施の形態2では、実施の形態1よりも重量の重い新設障子を適用することを前提としたものであり、実施の形態1とは異なる構成の補強金具130を適用している。尚、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。また、実施の形態2で適用する新設建具については、実施の形態1とは重量が異なるものの、基本的な構成は同様である。従って、実施の形態2の新設建具についても、実施の形態1と同様の構成に同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0041】
実施の形態2で適用する補強金具130は、
図6及び
図7に示すように、矩形の平板状を成す基板部131と、基板部131の一側縁から
図7中の下方に向けて直角に屈曲した後、基板部131と平行となるように屈曲して延在した窓台当接部132と、窓台当接部132の一側縁中央部から
図7中の下方に向けて直角に屈曲した中央下垂部133と、中央下垂部133の両側となる部位から突出した一対の支持面部134とを一体に成形した金属部材である。それぞれの支持面部134は、窓台当接部132と同一平面上を延在した後、
図7中の下方に向けて傾斜し、さらに屈曲して窓台当接部132と平行となるように延在しており、個々の突出端部の上面が窓台当接部132の上面よりも一段低くなっている。補強金具130のそれぞれは、
図6に示すように、窓台当接部132を介して既設下枠21bの見込み面に当接され、基板部131が窓台M2において室外側に位置する見込み面を覆い、かつ中央下垂部133が既設下枠21bの室内側立上り部21fを覆う位置に配置され、基板部131と窓台M2との間にスペーサssを介在させた状態で、基板部131を介してネジb17により窓台M2に取り付けられる。さらに、補強金具130の中央下垂部133から既設下枠21bの室内側立上り部21fを介して窓台M2にネジb18を締結することにより、補強金具130を介して窓台M2に対する既設下枠21bの取付強度が確保される。
【0042】
上述した取付構造においても、建物の開口Hから既設窓枠21を取り外す必要がないため、新設建具10の改装を容易化することが可能となる。しかも、網戸レール21dに対して見込み方向に沿って締結する取付ネジb7の位置は、適宜調整することが可能である。従って、新設窓枠11が鼓状に変形する事態を有効に抑えることが可能となる。
【0043】
しかも、既設下枠21bの複数箇所に補強金具130を取り付けることにより、既設下枠21bと窓台M2との間の取付強度を新たに確保するようにしているため、事前に既設下枠21bの取り付け状態を確認せずとも、新設窓枠11の新設下枠11bに加えられる新設障子12を確実に支持することが可能となる。
【0044】
さらに、既設下枠21bに補強金具130を取り付けた状態においては、室外側に向けてそれぞれ一対の支持面部134が突設した状態となり、既設窓枠21に対して新設窓枠11を建て込んだ場合、支持面部134によって新設窓枠11の下面が支持されることになる。従って、既設窓枠21に対して新設窓枠11を建て込む作業が容易となるばかりでなく、新設建具10が比較的重い重量を有するものであってもより確実に支持することができるようになる。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態1では、取付片部材27として平板状のものを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示す実施の形態3では、屈曲した板状の取付片部材127を適用している。すなわち、実施の形態3で適用する取付片部材127は、平板状の取付部127aと、平板状を成すネジ締結部127bとが互いに直角に屈曲した形状を成すものである。この取付片部材127は、取付部127aを介して新設縦枠11cの外方に臨む見込み面に取り付けてあり、ネジ締結部127bが新設縦枠11cの見付け面11eに沿って外方に突出している。新設縦枠11cに対して取付片部材127をそれぞれ3箇所に取り付ける点は、実施の形態1と同様である。また、取付片部材127を新設縦枠11cに取り付ける場合に取付ボルトb6及びターンナットn2を適用するのも実施の形態1と同様である。図には明示していないが、実施の形態1と同様に、取付ネジb7の頭部にスナップ部材及びカバー部材を配設することにより、取付片部材127相互の隙間を覆い隠しても良い。尚、その他実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してある。
【0046】
上述した取付構造においても、建物の開口Hから既設窓枠21を取り外す必要がないため、新設建具10の改装を容易化することが可能となる。しかも、網戸レール21dに対して見込み方向に沿って締結する取付ネジb7の位置は、適宜調整することが可能である。従って、新設窓枠11が鼓状に変形する事態を有効に抑えることが可能となる。
【0047】
さらに、実施の形態3の取付構造によれば、新設縦枠11cに対する取付片部材127の取付位置を見込み方向に沿って調整することにより、既設窓枠21に対する新設窓枠11の見込み方向に沿った位置を変更することが可能となる。
【0048】
(実施の形態4)
実施の形態3では、取付片部材127のネジ締結部127bと網戸レール21dとの間に直接取付ネジb7を締結するようにしているが、
図9に示す実施の形態4のように、取付片部材227のネジ締結部227bと網戸レール21dとの間に補助取付片部材227cを介在させるようにしても良い。補助取付片部材227cは、金属製の平板状部材であり、取付片部材227のネジ締結部227bから網戸レール21dまでの間を接続できる寸法に形成してある。補助取付片部材227cは、取付ネジb7,b8により一方の端部が網戸レール21dに締結され、他方の端部が取付片部材227のネジ締結部227bに締結される。図には明示していないが、実施の形態1と同様に、取付ネジb7の頭部にスナップ部材及びカバー部材を配設することにより、取付片部材227相互の隙間を覆い隠しても良い。
【0049】
上述した取付構造においては、取付片部材227におけるネジ締結部227bの新設縦枠11cからの突出量を小さく抑えておくことができるため、予め新設縦枠11cに取付片部材227を取り付けた状態で既設窓枠21に取り込むことが可能となる。従って、新設縦枠11cを取り付ける場合に取付ネジb7,b8の締結方向が新設窓枠11に対して見込み方向に限られることになり、作業性を向上させることが可能である。
【0050】
また、互いに外形寸法が異なる新設窓枠11を取り付ける場合にも、補助取付片部材227cの長さを変更することで対応することができ、取付片部材227についてはこれを共用化することが可能となる。
【0051】
(実施の形態5)
実施の形態4では、互いに外形寸法が異なる新設窓枠11を取り付ける場合に補助取付片部材227cの長さを変更することで取付片部材227を共用化するようにしているが、
図10に示す実施の形態5のように、予め取付部327aからのネジ締結部327bの長さを大きく形成した取付片部材327を用いるようにしても良い。すなわち、取り付けるべき新設窓枠11の外形寸法に応じてネジ締結部327bを切除すれば、取付片部材327を唯一用意するだけで異なる外形寸法の新設窓枠11を取り付けることが可能となる。ネジ締結部327bを切除する場合には、カッター等の工具を適用しても良いが、予めネジ締結部327bに複数の溝を形成しておけば、工具を用いることなく不要部分を折り取ることも可能である。図には明示していないが、実施の形態1と同様に、取付ネジb7の頭部にスナップ部材及びカバー部材を配設することにより、取付片部材327相互の隙間を覆い隠しても良い。
【0052】
尚、上述した実施の形態1〜実施の形態5では、いずれも既設建具として引き違い窓を例示しているが、必ずしも引き違い窓である必要はない。但し、既設建具が室外側となる部位に網戸レールを有していることは必須である。また、新設建具として引き違い窓を例示しているが、新設建具に制限はない。さらに、新設窓枠11として合成樹脂製の部材のみからなるものを例示しているが、新設窓枠としては合成樹脂製の部材と金属製の部材とを有した複合体で構成されたものであっても構わない。
【0053】
(実施の形態6)
図11及び
図12は、本発明の実施の形態6である取付構造により建物の開口Hに対して改装用の新設建具110を設置した状態を示すものである。ここで例示する改装用の新設建具110は、
図12に示すように、窓枠111と上下2枚の障子112とを備え、窓枠111に対して片方の障子112のみを上下方向にスライドさせて開閉する、いわゆる「片上げ下げ窓」と称されるものである。尚、以下においては後述する既設建具の構成要素と区別するため、新設建具110の各構成要素に「新設」という接頭語を付してそれぞれを説明する。
【0054】
新設窓枠111は、
図11及び
図12に示すように、新設上枠111a、新設下枠111b及び左右一対の新設縦枠111cを四周枠組みすることによって縦長に構成した合成樹脂製のものである。新設窓枠111の外形寸法は、後述する既設建具の各枠に設けたガラス当接ヒレによって囲まれる矩形の開口よりも小さく構成してある。2枚の新設障子112は、それぞれ新設上框112a、新設下框112b及び左右一対の新設縦框112cを四周框組みすることによって構成した新設框の内部にガラス板112dを保持したものである。これらの新設障子112は、互いに同一の大きさを有し、かつ上方の新設下框112bと下方の新設上框112aを重ね合わせて上下に並設した場合に新設窓枠111の開口を閉塞することのできる大きさに構成してある。室外側に配設される上方の新設障子112は、嵌め殺し窓として新設窓枠111に固定される。室内側に配設される新設障子112は、新設窓枠111の内部において上下方向に沿ってスライド可能である。
【0055】
一方、建物の開口Hに設置されていた改装前の既設建具は、窓枠121に障子を固定した嵌め殺し窓である。尚、以下においては上述した新設建具110の構成要素と区別するため、既設建具の各構成要素に「既設」という接頭語を付してそれぞれを説明する。
【0056】
既設窓枠121は、既設上枠121a、既設下枠121b及び左右一対の既設縦枠121cを四周枠組みすることによって構成したアルミニウム製のものである。既設上枠121a、既設下枠121b及び一対の既設縦枠121cには、互いに対向する見込み面にガラス当接ヒレ121dが設けてある。ガラス当接ヒレ121dは、室内側に臨む見付け面を有したもので、既設建具においてはシール部材(図示せず)を介して既設ガラス板が当接される部分である。建物の開口Hにおいて既設上枠121a、既設下枠121b及び左右一対の既設縦枠121cよりも室内側に位置する部位には、既設額縁部材128が配設されている。
【0057】
上記のように構成された既設窓枠121に対して新設窓枠111を取り付ける場合には、まず、既設窓枠121から既設ガラス板を取り外す。その後、
図12に示すように、建物の開口Hに残した既設額縁部材128において既設上枠121aよりも室内側に位置する部位に上方スペーサs11を配設し、この上方スペーサs11の下面から既設上枠121aの見込み面に渡ってフラットプレート124を取り付ける。フラットプレート124は、室外側に位置する縁部に上方当接片部124a及び下方当接片部124bを有した金属製のものである。このフラットプレート124は、既設上枠121aに設けたガラス当接ヒレ121dの室内側に臨む見付け面に対し、シール部材w11を介して上方当接片部124aを当接させた状態で既設上枠121a及び上方スペーサs11にそれぞれネジb11によって取り付けられ、既設上枠121aから下方に向けて下方当接片部124bを突設させた状態にある。建物の開口Hに残した既設額縁部材128おいて既設下枠121bよりも室内側に位置する部位には、下方スペーサs12を配設しておく。
【0058】
一方、新設建具110の新設窓枠111には、シール部材w12を介して新設下枠111bに下方舌状片部126を取り付ける。下方舌状片部126は、新設下枠111bの下面から下方に向けて突設した金属製のヒレ状部材であり、取付ボルトb12及びナットn11により新設下枠111bの全長に渡って設けられる。下方舌状片部126の室外側に臨む見付け面は、新設下枠111bの見付け面とほぼ同一平面となるように設けてある。
図12からも明らかなように、下方舌状片部126には、載置片部126aが設けてある。載置片部126aは、下方舌状片部126の室外側に臨む見付け面から室外側に向けて突設した部分であり、下方舌状片部126の全長に渡って設けてある。
【0059】
さらに、新設窓枠111には、一対の新設縦枠111cの外方に臨む見込み面にそれぞれ金属製の取付片部材427を取り付ける。取付片部材427は、平板状の取付部427aと、平板状を成すネジ締結部427bとが互いに直角に屈曲した形状を成すものである。この取付片部材427は、新設縦枠111cとの間にシール部材w13を介在させ、取付ボルトb13及びナットn12により取付部427aを介して新設縦枠111cの全長に渡って取り付けてあり、ネジ締結部427bが新設縦枠111cの見付け面に沿って外方に突出している。新設縦枠111cからのネジ締結部427bの突出量は、既設縦枠121cの互いに対向する見込み面の相互間に配置することができるとともに、ネジ締結部427bの室外側に臨む見付け面が、それぞれ既設縦枠121cのガラス当接ヒレ121dに対向することができるように設定してある。
【0060】
上記のようにして下方舌状片部126及び取付片部材427を取り付けた新設窓枠111は、室内側から既設窓枠121の内部に建て込まれ、下方舌状片部126の載置片部126aが既設下枠121bの見込み面に当接されるとともに、下方舌状片部126の室外側に臨む見付け面がシール部材w14を介して既設下枠121bのガラス当接ヒレ121dに当接される。その後、新設上枠111aの室外側に臨む見付け面がフラットプレート124に設けた下方当接片部124bの室内側に臨む見付け面にシール部材w15を介して当接される。既設縦枠121cよりも室内側に位置する既設額縁部材128と新設縦枠111cとの間には、それぞれ側方スペーサs13を配設しておく。
【0061】
次いで、新設上枠111aに対しては、その見込み面からフラットプレート124にネジb14を締結し、フラットプレート124及び既設上枠121aを介してまぐさM1との間を固定する。新設下枠111bに対しては、既設下枠121bの室外側に臨む見付け面からネジb15を締結することにより、下方舌状片部126と下方舌状片部126との間を連結する。
【0062】
新設縦枠111cに対しては、取付片部材427のネジ締結部427bが既設縦枠121cのガラス当接ヒレ121dに対向した状態にあり、互いの間にシール部材w16を介在させた状態でガラス当接ヒレ121dの室外側に臨む見付け面から取付ネジb16を締結することにより、ガラス当接ヒレ121dとの間が固定される。最後に、建物の開口Hにおいて室内側に位置する四周の見込み面にそれぞれ額縁部材228を取り付けることによって新設建具110が完成する。図には明示していないが、実施の形態1と同様に、取付ネジb16の頭部にスナップ部材及びカバー部材を配設すれば、既設窓枠121と新設窓枠11との接合部分を覆い隠すことができる。
【0063】
上述した取付構造によれば、建物の開口Hから既設窓枠121を取り外す必要がないため、新設建具110の改装を容易化することが可能となる。しかも、ガラス当接ヒレ121dに対して見込み方向に沿って締結する取付ネジb16の位置は、適宜調整することが可能である。従って、新設窓枠111が鼓状に変形する事態を有効に抑えることが可能となる。
【0064】
また、新設上枠111aとフラットプレート124の下方当接片部124bとの間、フラットプレート124の上方当接片部124aと既設上枠121aのガラス当接ヒレ121dとの間、新設下枠111bと下方舌状片部126との間、下方舌状片部126と既設下枠121bのガラス当接ヒレ121dとの間、取付片部材427の取付部427aと既設縦枠121cとの間、取付片部材427のネジ締結部427bとガラス当接ヒレ121dとの間に関しては、それぞれ全長に渡って配設したシール部材w15,w11,w12,w14,w13,w16によって水の浸入が確実に阻止されることになる。