特許第5917911号(P5917911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917911
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】体内水分計および表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A61B5/05 B
   A61B5/05 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-286581(P2011-286581)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132516(P2013-132516A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】小山 美雪
(72)【発明者】
【氏名】吉野 敬亮
(72)【発明者】
【氏名】成松 清幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 孝司
【審査官】 野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−169784(JP,A)
【文献】 特開2002−034946(JP,A)
【文献】 特開2005−334021(JP,A)
【文献】 特開平09−327443(JP,A)
【文献】 特開2004−329225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04−5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に湾曲した形状の挿入部と、
前記挿入部の先端面に保持されたセンサ部と、
を備え、
前記センサ部を被検者の腋窩の体表面に接触させることにより、体内の水分量を検出する体内水分計であって、
前記センサ部からの生体中の水分量に関する電気信号を体内水分量に換算する換算手段と、
前記換算手段により得られた体内水分量を表示する表示手段と、
前記換算手段により得られた体内水分量が第1の基準値未満、かつ、第2の基準値以上である場合に、使用者に脱水の可能性があること、前記第2の基準値未満の場合に、脱水状態であること、を通知すべく前記表示手段による表示の形態を変更する変更手段と、を備え、
前記センサ部が水を測定したときと空気を測定したときに出力する電気信号をそれぞれ100%と0%の体内水分量に割り当て、前記センサ部が出力する電気信号と体内水分量をリニアな関係に対応付けた場合に、前記第1の基準値は35%であり、前記第2の基準値は25%である、ことを特徴とする体内水分計。
【請求項2】
前記換算手段は、前記センサ部が水を測定したときと空気を測定したときに出力する信号をそれぞれ100%と0%の水分量に割り当て、前記センサ部が出力する信号と水分量をリニアな関係に対応付けることにより、前記センサ部からの電気信号を体内水分量に換算することを特徴とする請求項1に記載の体内水分計。
【請求項3】
一方向に湾曲した形状の挿入部と、
前記挿入部の先端面に保持されたセンサ部と、
を備え、
前記センサ部を被検者の腋窩の体表面に接触させることにより、体内の水分量を検出する体内水分計の表示制御方法であって、
前記センサ部からの生体中の水分量に関する電気信号を体内水分量に換算する換算工程と、
前記換算工程で得られた体内水分量を表示部に表示する表示工程と、
前記換算工程で得られた体内水分量が第1の基準値未満、かつ、第2の基準値以上である場合に、使用者に脱水の可能性があること、前記第2の基準値未満の場合に、脱水状態であること、を通知すべく前記表示部における表示の形態を変更する変更工程と、を有し、
前記センサ部が水を測定したときと空気を測定したときに出力する電気信号をそれぞれ100%と0%の体内水分量に割り当て、前記センサ部が出力する電気信号と体内水分量をリニアな関係に対応付けた場合に、前記第1の基準値は35%であり、前記第2の基準値は25%である、ことを特徴とする体内水分計の表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の生体の水分量を測定する体内水分計およびその表示制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検者の生体の水分量を測定することは重要である。生体における脱水症状は、生体中の水分が減少する病態であり、発汗や体温上昇により多くの水分が体内から体外に排出される運動時や気温の高い時に多く発現する。特に、高齢者の場合、生体の水分保持能力自体が低下しているため、一般健常者と比較して脱水症状を起こし易い。
【0003】
通常、生体中の水分が体重の3%以上失われた時点で体温調整の障害が起こると言われている。体温調整の障害が起こり体温が上昇すると、生体中の更なる水分の減少を引き起こすため悪循環に陥り、遂には熱中症と称される病態に至ることとなる。熱中症には、熱痙攣、熱疲労、熱射病等の病態があり、時には全身の臓器障害が起こることもある。このため、熱中症に至る危険を未然に回避するためには、生体の水分量を的確に把握することが不可欠である。
【0004】
生体の水分量を把握する、いわゆる体内水分計としては、従来より、例えば、両手でハンドルを保持するような装置で人体インピータンスを測定し、その測定結果から体内水分量を算出するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−318845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の体内水分計の場合、被検者自身が両手でハンドルを把持することが要求されるため、被検者以外の第三者(測定者)が被検者の体内水分量を測定することができないという問題がある。すなわち、特許文献1に記載された測定部位を前提とする体内水分計の構造では、例えば、意識障害に陥った被検者の体内水分量を、第三者(測定者)が測定できないという問題がある。
【0007】
一方で、被検者以外の第三者(測定者)による測定を容易に行うことができ、かつ、体内水分量の測定に適した測定部位としては、例えば、腋窩の皮膚等が挙げられる。腋窩において体内水分量を測定する場合には、たとえば体温計のような操作性が提供され、且つ、体温計による体温測定のような手軽さで脱水の傾向にあるか否かを判定できることが望ましい。一般に、体温に関しては、37度付近が平熱か否かの境として定着しており、体温を測定するユーザは37度付近を目安に発熱しているか否かの大まかな判断を直感的に行うことができる。しかしながら、体内水分量に関しては、体温のように広く定着した目安がなく、手軽に体内水分量を測定できて、その数値を知ることができたとしても、その数値から脱水状態なのかどうか、あるいはどの程度の脱水状態なのか、を直感的に判断することは困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、腋窩を測定部位とする体内水分計において、脱水状態か否かを容易に判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る体内水分計は以下のような構成を備える。即ち、
一方向に湾曲した形状の挿入部と、
前記挿入部の先端面に保持されたセンサ部と、
を備え、
前記センサ部を被検者の腋窩の体表面に接触させることにより、体内の水分量を検出する体内水分計であって、
前記センサ部からの生体中の水分量に関する電気信号を体内水分量に換算する換算手段と、
前記換算手段により得られた体内水分量を表示する表示手段と、
前記換算手段により得られた体内水分量が第1の基準値未満、かつ、第2の基準値以上である場合に、使用者に脱水の可能性があること、前記第2の基準値未満の場合に、脱水状態であること、を通知すべく前記表示手段による表示の形態を変更する変更手段と、を備え、
前記センサ部が水を測定したときと空気を測定したときに出力する電気信号をそれぞれ100%と0%の体内水分量に割り当て、前記センサ部が出力する電気信号と体内水分量をリニアな関係に対応付けた場合に、前記第1の基準値は35%であり、前記第2の基準値は25%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、腋窩を測定部位とする体内水分計において、使用者は、脱水状態か否かを容易に判断できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態にかかる体内水分計の外観構成を示す図である。
図2】体内水分計の使用態様を説明するための図である。
図3】体内水分計の機能構成を示す図である。
図4】体内水分計の測定回路を説明するための図である。
図5】体内水分計の動作を説明するための図である。
図6】体内水分計の校正方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
<1.体内水分計の外観構成>
図1は、本実施形態に係る体内水分計100の外観構成の一例を示す図である。体内水分計100は、被検者の体表面である腋窩の皮膚にセンサ部を接触させ、センサ部において供給した電気信号に応じた物理量を検出することで被検者の体内の水分量を検出する。本実施形態に係る体内水分計100では、当該物理量(生体中の水分に関するデータ)として被検者の静電容量を測定することにより、腋窩の皮膚の湿り具合を検出し、体内の水分量を算出する。なお、体内水分量を算出するために検出する物理量は静電容量に限られるものではなく、例えば、定電圧もしくは定電流を被検者に供給して測定されるインピーダンスであってもよい。
【0014】
図1に示すように、体内水分計100は本体部110と挿入部120とを備える。本体部110は、上面114、下面115、側面116、117がそれぞれ長軸方向(不図示)に略平行に形成されており、全体として、直線状に形成されている。本体部110の筐体表面には、各種ユーザインターフェースが配置されるとともに、筐体内部には体内水分量を算出するための電子回路が収納される。
【0015】
図1の例では、ユーザインターフェースとして、電源スイッチ111及び表示部112が示されている。電源スイッチ111は、本体部110の後端面113の凹部に配されている。このように凹部に電源スイッチ111を配する構成とすることで、電源スイッチ111の誤操作を防ぐことができる。なお、電源スイッチ111がオンされると後述の電源部411(図3)から体内水分計100の各部への電源供給が開始され、体内水分計100は動作状態となる。
【0016】
表示部112は、本体部110の側面117上において、長軸方向のやや前方側に配されてることが好ましい。これは、体内水分計100を用いて被検者の体内水分量を測定するにあたり、測定者が把持領域118を把持した場合であっても、測定者の把持した手で表示部112が完全に覆われることがないようにするためである(把持した状態でも測定結果が視認できるようにするためである)。
【0017】
表示部112には、水分量の測定結果131が表示される。また、脱水の可能性の度合いや重篤度を参考的に示すためのマーク132もあわせて表示される。本実施形態では、
・水分量の測定結果が35%以上であれば正常であるとして、水滴が満たされたマーク132aを、
・35%未満25%以上であれば、水分がやや足りず、脱水の可能性もあるとして、水滴が半分満たされた状態のマーク132bを、
・25%未満では脱水状態であり、重篤である可能性もあるとして水滴が空の状態のマーク132cを、
それぞれ表示する。
【0018】
電池表示部133には、電池(図3の電源部411)の残量が表示される。また、無効な測定結果が得られた場合や測定エラーが検出された場合には、表示部112に“E”が表示され、その旨をユーザに報知する。なお、表示部112に表示される文字等は、本体部110の上面114側を上とし、下面115側を下として、表示されるものとする。
【0019】
体内水分計100の挿入部120は、上面124及び下面125が曲面形状を有しており、本体部110に対して、全体として、下向きに緩やかに湾曲している。挿入部120の先端面122には、センサ部121がスライド可能に保持されている。
【0020】
センサ部121は、先端面122に略平行な面を有するセンサヘッド123を有しており、センサヘッド123の皮膚への密着を保証する上での押圧を確保するため、不図示のばねにより、矢印141bの方向へ付勢されている(たとえば70gf程度の付勢力)。そして、センサヘッド123が被検者の腋窩の皮膚に押し当てられると、センサ部121が矢印141aの方向(先端面122と略直交する方向、すなわち先端面122の法線方向)に所定量(例えば1mm〜10mm、本実施形態では4mm)スライドし、これにより測定が開始されるよう構成されている(以下、矢印141aの方向をスライド方向と称す)。
【0021】
具体的には、ユーザが電源スイッチ111をオンして体内水分計100を動作状態とした後、センサヘッド123を被検者の腋窩に所定時間以上(例えば2秒以上)押し当てられたことが検知されると、体内水分量の測定が開始される。本実施形態では、ユーザが電源スイッチ111をオンして体内水分計100を動作状態とした後、センサヘッド123を被検者の腋窩に所定負荷(例えば20gf〜200gf、さらに好ましくは30gf〜100gf、本実施形態では70gf)で押し当てたことが検知されると、体内水分量の測定が開始される。このような仕組みにより、測定時におけるセンサヘッド123の腋窩への密着の程度を一定にすることができる。
【0022】
なお、センサヘッド123の被検者との接触面には、電極が敷設され、電極を覆うように保護材が設けられている。また、センサヘッド123の接触面は平面形状に限られず、凸状の曲面形状でもよい。そのような接触面の形状の例としては、球面(例えば半径15mmの球面)の一部とすることが挙げられる。
【0023】
<2.体内水分計の使用例>
次に、上記特徴的な外観形状を有する体内水分計100の使用例について説明する。図2は、体内水分計100の使用例を説明するための図であり、図2(A)は、被測定者の左上半身を、図2(B)は、図2(A)のa−a断面を模式的に示したものである。図2(B)に示すように、体内水分計100は、センサ部121が、被検者の左上腕と左胸壁との間の腋窩に押し当てられた状態で、被検者の体内水分量の測定を行う。
【0024】
センサ部121を腋窩に押し当てるにあたり、測定者は、センサ部121が上側を向くように体内水分計100の把持領域118を右手で把持し、被検者の前方下側から、腋窩に向かって、センサ部121を挿入する。
【0025】
図1で示したように、体内水分計100の挿入部120は緩やかに湾曲しており、被検者の前方下側から腋窩に向かって挿入した際に、上腕の前側の側壁と体内水分計100とが干渉することはなく、また、測定者の右手が被検者の上腕と干渉することもなくセンサ部121を腋窩に略直角に押し当てることができる。
【0026】
また、挿入部120の湾曲方向とセンサ部121のスライド方向141とが一致するように、挿入部120の湾曲形状が形成されているため、測定者は、湾曲方向205に沿って押圧することで、センサ部121を腋窩に略直角に押し当てることができる。
【0027】
このように、本実施形態に係る体内水分計100の形状によれば、高齢者等のように、腋窩が深い被検者であっても、容易に測定を行うことができる。
【0028】
<3.体内水分計の機能構成>
図3は、本実施形態に係る体内水分計100の機能構成例を示すブロック図である。図3において、制御部401は、CPU402、メモリ403を有し、CPU402はメモリ403に格納されているプログラムを実行することにより、体内水分計100における種々の制御を実行する。
【0029】
例えば、CPU402は、図5のフローチャートにより後述する表示部112の表示制御、ブザー422やLEDランプ423の駆動制御、体内水分量の測定(本実施形態では静電容量測定)などを実行する。メモリ403は、不揮発性メモリと揮発性メモリとを含み、不揮発性メモリはプログラムメモリとして、揮発性メモリはCPU402の作業メモリとして利用される。
【0030】
電源部411は、交換が可能なバッテリー、或いは充電が可能なバッテリーを有し、体内水分計100の各部へ電源を供給する。電圧レギュレータ412は、制御部401等へ一定電圧(例えば、2.3V)を供給する。電池残量検出部413は、電源部411から供給される電圧値に基づいて、電池の残量を検出し、その検出結果を制御部401に通知する。制御部401は、電池残量検出部413からの電池残量検出信号に基づいて、電池表示部133の表示を制御する。
【0031】
電源スイッチ111が押下されると、各部への電源部411からの電力供給が開始される。そして、制御部401は、電源スイッチ111のユーザによる押下が1秒以上継続したことを検出すると、電源部411からの各部への電源供給を維持させ、体内水分計100を動作状態とする。上述したように、測定スイッチ414は、センサ部121が矢印141aの方向へ所定量以上押されるとオン状態になる。制御部401は、測定スイッチ414のオン状態が所定時間(例えば2秒)継続すると、水分量の測定を開始する。なお、電源部411の消耗を防止するために、体内水分計100が動作状態になってから5分経過しても測定開始とならない場合は、制御部401は自動的に体内水分計100を電源オフの状態へ移行させる。
【0032】
測定回路421は、センサヘッド123と接続され、静電容量を測定する。図4は、測定回路421の構成例を示す図である。オペアンプ501、502、抵抗503、504、被検者容量510によりCR発振回路が形成されている。被検者容量510によって出力信号505の発振周波数が変化するので、制御部401は、出力信号505の周波数を測定することにより、被検者容量510を算出する。制御部401はこの被検者容量510をさらに体内水分量へ換算し、表示部112に測定結果131として表示する。なお、本実施形態のセンサヘッド123は、例えば、2つのくし型電極が、それぞれのくし歯が互い違いに並ぶように配置されているものとするが、これに限られるものではない。
【0033】
図4に戻る。表示部112は、図1で説明したような表示を制御部401の制御下で行う。ブザー422は、センサ部121の押下による測定の開始や、体内水分量の測定が完了した際に鳴動し、測定の開始や完了をユーザに通知する。LEDランプ423もブザー422と同様の通知を行う。すなわち、LEDランプ423は、センサ部121の押下による測定の開始や、体内水分量の測定が完了した際に点灯し、測定の開始や完了をユーザに通知する。計時部424は、電源がオフの状態であっても電源部411からの電源供給を受けて動作し、動作状態においては時刻を制御部401に通知する。
【0034】
<4.体内水分計の動作>
以上のような構成を備えた、本実施形態に係る体内水分計100の動作を、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
ステップS501では、制御部401が、測定開始の指示を検出する。本実施形態では、測定スイッチ414の状態を監視し、測定スイッチ414のオン状態が2秒以上継続した場合に測定開始の指示を検出したと判定する。制御部401は、測定開始の指示を検出すると、ステップS502において、制御部401は、測定回路421からの出力信号505の発振周波数を測定する。ステップS503では、制御部401は、ステップS502において測定された出力信号505の発振周波数に基づいて、被検者の体内水分量を算出する。
【0036】
ステップS504とステップS505において、制御部401は、ステップS503で算出された体内水分量が第1の基準値(本実施形態では35%)以上か、第1の基準値未満で第2の基準値(本実施形態では25%)以上か、第2の基準値未満かを判定する。体内水分量が第1の基準値以上の場合、処理はステップS506へ進み、制御部401は、脱水の心配がない正常値であることを示すマーク132aを選択する。体内水分量が第1の基準値未満で第2の基準値以上の場合、処理はステップS507へ進み、制御部401は、脱水の可能性があることを示すマーク132bを選択する。更に、体内水分量が第2の基準値未満の場合、処理はステップS508へ進み、制御部401は、脱水状態が進行していることを示すマーク132cを選択する。なお、本実施形態では第1の基準値と第2の基準値により表示の形態を変更しているが、これに限られるものではない。例えば、第1の基準値で表示の形態を変更するのみとしても良いし、3つ以上の基準値で順次に表示の携帯を変更するようにしても良い。
【0037】
次に、ステップS509において、制御部401は、今回の測定により算出された体内水分量を測定結果131として表示部112に表示する。このとき、制御部401は、上記ステップS506〜S508のいずれかで選択されたマーク132を表示部112に表示する。ユーザは体内水分量の測定値を知るとともに、マーク132の表示により脱水状態か非脱水状態かの判定、その重篤度を容易に判断することができる。
【0038】
<5.体内水分計の校正方法および基準値について>
次に、本実施形態による体内水分計の校正方法と、上述した第1の基準値および第2の基準値について説明する。図6(A)に示すように、本実施形態では、体内水分計100を用いて空気中で測定を行なったときの出力信号505(被検者静電容量)をS1、水中を測定したときの出力信号505(被検者静電容量)をS2とした場合に、S1に0%の体内水分量を、S2に100%の体内水分量を割り当てる。そして、S1とS2の間の出力信号と体内水分量をリニアに割り当てた直線201を用いて、センサからの出力信号を体内水分量に換算するように、パラメータを決定してメモリ403の不揮発性メモリに記憶する。ステップS503では不揮発性メモリに格納されたパラメータを用いて、被検者静電容量が体内水分量へ換算される。
【0039】
このような校正が行なわれた体内水分計100を用いて複数の被検者について腋窩で体内水分量を測定するとともに、血液検査により血清浸透圧を測定して得られた結果を図2(B)に示す。一般に血清浸透圧が295mmOsm以上の被検者は脱水状態であると判断される。図示の測定結果に示されるように、血清浸透圧が295mmOsm以上である被検者の85%以上の被検者に対して、体内水分計100による体内水分量の測定結果が35%以下という結果を得ることができた。また、血清浸透圧295mmOsm以上の被検者のほぼ100%に対して、体内水分計100による体内水分量の測定結果が40%以下であり、血清浸透圧295mmOsm以下の被検者のほぼ100%の被検者に対して、体内水分計100による体内水分量の測定結果が25%以上である。よって、第1の基準値としては、25%〜40%の間の値に設定することが考えられるが、本発明者らは一般的な目安として85%以上の被検者に当てはまる数値である体内水分量35%を用いるのが好ましいと考えている。なお、第2の基準値については、25%を用いることとする。
【0040】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る体内水分計100によれば、使用者は、マーク132の表示形態により脱水状態か否か、またその重篤度を、体温測定のように容易に判断することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、第1の基準値や第2の基準値を固定値としたが、これに限られるものではない。例えば、上述したような25%〜40%の範囲でユーザが第1の基準値を設定できるようにしても良い。この場合、第2の基準値は第1の基準値より低い範囲で個別に設定できても良いし、第1の基準値から所定の値を差し引いた値が自動的に設定されるようにしても良い。このような構成にすれば、平常時における体内水分量の測定値に出現する個人差を解消できる。
【0042】
また、上記実施形態では、測定結果が第1の基準値を下回った場合や第2の基準値を下回った場合の表示の形態の変更を、水滴マークの変更により行なったがこれに限られないことは言うまでもない。例えば、表示色を変えるなど、使用者に基準値を下回ったことを通知して注意を喚起できるように表示の形態が変更されればよい。
【0043】
また、本実施形態で規定される第1の基準値や第2の基準値は、水を測定したときと空気を測定したときに出力する信号をそれぞれ100%と0%の水分量に割り当て、センサ部121が出力する信号と水分量をリニアな関係に対応付けた場合の所定値(実施形態では35%と25%)に相当する値として理解されるべきである。本実施形態では、センサ部121の校正方法と基準値の定義を一致させているが、センサ部121の校正方法が異なれば第1の基準値や第2の基準値は、35%や25%とは異なる値となり得るからである。
【符号の説明】
【0044】
100:体内水分計、110:本体部、111:電源スイッチ、112:表示部、113:後端面、114:上面、115:下面、116:側面、117:側面、118:把持領域、120:挿入部、121:センサ部、122:先端面、123:センサヘッド、124:上面、125:下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6