(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
攪拌翼を有する攪拌手段を備え、晶析対象物質を含む原水にカルシウム剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応部を有する晶析反応槽と、前記晶析反応部へ前記原水を通水する通水手段と、を備え、
前記晶析反応槽内には、前記晶析反応槽の外周壁に対向する内周壁を配置し、内外周壁間で上向流を形成して、前記結晶と処理水との固液分離を行う固液分離部が設けられ、
前記通水手段は、前記晶析反応部への前記原水の通水を間欠的に行い、
前記通水手段による間欠通水時の前記原水の通水時間は、前記固液分離部における滞留時間の1倍以上2倍以下であり、前記通水手段による間欠通水時の前記原水の通水停止時間は、前記固液分離部における滞留時間の1/4倍以上1/2倍以下の時間であることを特徴とする晶析反応装置。
攪拌翼を有する攪拌手段を備え、晶析対象物質を含む原水にカルシウム剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応部を有する晶析反応槽と、前記晶析反応部へ前記原水を通水する通水手段と、を備え、
前記晶析反応槽内には、前記晶析反応槽の外周壁に対向する内周壁を配置し、内外周壁間で上向流を形成して、前記結晶と処理水との固液分離を行う固液分離部が設けられ、
前記通水手段は、前記晶析反応部への前記原水の通水を間欠的に行い、
前記固液分離部が設けられている前記晶析反応槽の外周壁に、前記処理水を排出する排出口が形成され、
前記内周壁の上端は、前記排出口と同じ高さ、又は前記処理水の一部が前記排出口から排出可能な範囲で前記排出口より低い位置にあり、前記固液分離部内の処理水の一部は、前記内周壁を越えて前記晶析反応部に返送されることを特徴とする晶析反応装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る晶析反応装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、晶析反応装置1は、晶析反応槽10、種晶サイロ12、カルシウム剤を晶析反応槽10へ添加する添加手段の一例としてのカルシウム剤添加ライン14、原水を晶析反応槽10へ流入させる流入手段の一例としての原水通水ライン16及びバルブ18、種晶添加ライン20、処理水排出ライン22、難溶性塩排出ライン24、を備えている。
【0014】
晶析反応槽10には、原水貯槽(不図示)からの原水通水ライン16、カルシウム剤貯槽(不図示)からのカルシウム剤添加ライン14が接続されている。また、種晶サイロ12と晶析反応槽10との間は、種晶添加ライン20が接続されている。さらに、晶析反応槽10の処理水排出口21には、処理水排出ライン22が接続され、晶析反応槽10の難溶性塩排出口には、難溶性塩排出ライン24が接続されている。
【0015】
晶析反応槽10内には、難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応部28と、難溶性塩結晶と処理水との固液分離を行う固液分離部30とが設けられている。晶析反応槽10内には、晶析反応槽10の外周壁に対向する内周壁26が設けられており、この外周壁と内周壁26間を固液分離部30としている。本実施形態の内周壁26は晶析反応槽10の外周壁の所定区間に設けられているが、内周壁26は外周壁の全周にわたって設けられていてもよい。
【0016】
晶析反応部28と固液分離部30とは内周壁26により区画されており、内周壁26の下部には、晶析反応部28と固液分離とが連通する連通口32が形成されている。また、前述した処理水排出口21は、固液分離部30が形成されている晶析反応槽10の外周壁に設けられており、この処理水排出口21に処理水排出ライン22が接続されている。
【0017】
晶析反応槽10の晶析反応部28には、ドラフトチューブ36、晶析反応部28内の流体を撹拌する攪拌手段の一例としての攪拌装置34を備える。攪拌装置34は攪拌翼38を備え、攪拌翼38は、ドラフトチューブ36内に配置され、撹拌軸を介して伝達されるモータが発生する回転力によって回転する。
【0018】
本実施形態に係る晶析反応装置1の動作について説明する。
【0019】
まず、原水通水ライン16のバルブ18を開放し、原水通水ライン16を通して、フッ素、リン等の晶析対象物質を含有する原水(以下、単に「原水」と呼ぶ場合がある。)を晶析反応槽10の晶析反応部28に通水する。また、カルシウム剤添加ライン14を通して、カルシウム剤を晶析反応部28に添加する。さらに、モータにより種晶サイロ12中の種晶が種晶添加ライン20を通して晶析反応部28に添加されることが好ましい。
【0020】
そして、晶析反応槽10の晶析反応部28において、原水に含まれるフッ素、リン等の晶析対象物質がカルシウム剤と反応して、フッ化カルシウム、リン酸カルシウム(難溶性カルシウム塩)が生成して、種晶表面に析出し、難溶性塩(難溶性カルシウム塩)の結晶が生成する。
【0021】
晶析反応部28内で生成したフッ化カルシウム、リン酸カルシウム等の難溶性カルシウム塩の結晶は、例えば定期的に難溶性塩排出ライン24から引き抜かれ、系外へ排出される。難溶性カルシウム塩の結晶の引き抜き方法は、特に制限されるものではないが、チューブポンプ等のスラリ用ポンプを用いて、晶析反応槽10から難溶性カルシウム塩の結晶を引き抜く方法でも良いし、
図1に示すように難溶性塩排出ライン24にバルブ24aを取り付け、単に重力によって晶析反応槽10から難溶性カルシウム塩の結晶を引き抜く方法でもよい。
【0022】
一方、晶析反応部28内の晶析反応後の処理水は、連通口32から固液分離部30に流入する。この際、処理水と共に、難溶性塩の結晶の一部が固液分離部30に流入するが、固液分離部30では、晶析反応後の処理水が上向流を形成して固液分離部30を通過し、処理水中に含まれる難溶性塩結晶と処理水とが固液分離される。固液分離された処理水は、処理水排出ライン22を通して、本実施形態の最終処理水として系外に排出される。
【0023】
ここで、晶析反応部28への原水の通水を継続すると、晶析反応部28内の難溶性カルシウム塩の結晶(種晶表面に析出できなかった難溶性カルシウム塩結晶等も含む)や種晶サイロ12から補給された種晶等の一部は、晶析反応後の処理水と共に固液分離部30に流れたまま、固液分離部30内に溜められる。これらの結晶や種晶のうち特に粒径の細かい結晶や種晶は固液分離部30に流れやすい。したがって、晶析反応槽10への原水の通水を継続すると、晶析反応部28内に粒径の細かい結晶や種晶を保持することが困難となるため、晶析反応部28内に存在する結晶や種晶の単位重量当たりの表面積を大きく保つことができずに、難溶性カルシウム塩の結晶の回収率が低下してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、晶析反応部28への原水の通水を間欠的に行う、すなわち通水と通水停止を繰り返し行うことにより、難溶性カルシウム塩の結晶の回収率を向上させている。まず、本実施形態では、晶析反応部28への原水の通水を行い、難溶性カルシウム塩の結晶を得る。この際、得られる難溶性カルシウム塩の結晶(種晶も含む)の一部、特に細かい粒径の難溶性カルシウム塩の結晶は、前述したように固液分離部30内に流れ、固液分離部30内に溜められる。しかし、本実施形態では、晶析反応槽10への原水の通水停止を行い、固液分離部30内に滞留した細かい粒径の難溶性塩の結晶等を自然沈降させ、少なくともその結晶等の一部を晶析反応部28に戻す操作を行う。このように原水の通水を間欠的に行うと、次の原水の通水の開始の際には、細かい粒径の難溶性カルシウム塩の結晶等が晶析反応部28内に保持されているため、種晶サイロ12から種晶の補給量を増やすことなく、晶析反応部28内の難溶性カルシウム塩の結晶等の単位重量当たりの表面積が大きくなり、難溶性塩結晶の回収率を向上させることができる。本実施形態における原水の通水時間及び通水停止時間は、例えば、難溶性カルシウム塩の結晶を生成させる時間及び固液分離部30内に滞留する結晶等を自然沈降させる時間を確保するために適宜設定されるものであるが、原水の通水時間及び通水停止時間は以下の条件に設定されることが好ましい。
【0025】
まず、原水通水ライン16のバルブ18を開放し、晶析反応部28への原水の通水時間を固液分離部30における滞留時間の1倍以上2倍以下の範囲で、原水を晶析反応部28へ通水する。その後、原水通水ライン16のバルブ18を閉じ、晶析反応部28への原水の通水停止時間を固液分離部30における滞留時間の1/4倍以上1/2倍以下の範囲で、晶析反応部28への原水の通水を停止する。これにより、細かい粒径の難溶性カルシウム塩の結晶等が晶析反応部28内に沈降する時間が十分に確保され、晶析反応部28内で保持されるため、難溶性カルシウム塩の結晶の回収率をより向上させることができる。晶析反応部28内には、主に50μm以下の細かい粒径の結晶がより多く保持されるため、難溶性カルシウム塩の結晶の回収率をより向上させることができる。仮に、装置内の粒子が全て同じ大きさだとすると、粒子1個当たりの表面積は、粒子径の2乗に比例して大きくなるが、単位重量当たりの粒子個数は、粒子径の3乗に反比例して大きくなる。そのため、単位重量当たりの表面積は、(粒子径)
3/(粒子径)
2=粒子径に反比例して大きくなるため、本実施形態の条件で原水の通水及び停止を行い、粒径の小さい難溶性カルシウム塩の結晶等を晶析反応部28内により多く存在させることにより、晶析反応部28内の結晶の単位重量当たりの表面積は飛躍的に上昇し、難溶性塩結晶の回収率を大幅に向上させることができる。ここで、固液分離部30おける滞留時間とは、晶析反応槽10へ流入する原水の滞留時間であり、固液分離部30の容積を晶析反応槽10へ流入する原水の流入量で割った値で表される。なお、本実施形態のバルブ18の開閉は手動であっても自動であってもよい。
【0026】
晶析反応部28への原水の通水時間が固液分離部30における滞留時間の1倍未満であると、通水時間が短く、装置で処理できる水量が少なくなり、難溶性カルシウム塩の結晶を回収する効率が悪くなる場合がある。また、晶析反応部28への原水の通水時間が固液分離部30における滞留時間の2倍超であると、細かい粒径の難溶性カルシウム塩の結晶等が系外へ多く排出され、晶析反応部28内に細かい粒径の結晶を十分に保持することができない場合があり、難溶性カルシウム塩の結晶の回収率を向上させることが困難となる。晶析反応部28への原水の通水停止時間が固液分離部30における滞留時間の1/4倍未満であると、固液分離部30内に滞留している粒径の細かい結晶が晶析反応部28内へ戻りきれず、晶析反応部28内に細かい粒径の結晶を十分に保持することができない場合があり、難溶性カルシウム塩の結晶の回収率を向上させることが困難となる。また、晶析反応部28への原水の通水停止時間が固液分離部30における滞留時間の1/2倍超であると、停止時間が長く、装置で処理できる水量が少なくなり、難溶性カルシウム塩の結晶を回収する効率が悪くなる場合がある。
【0027】
次に、固液分離部30で処理水と分離されず、処理水と共に通過してしまう微細な難溶性カルシウム塩の結晶等について考える。
【0028】
例えば、補給した種晶のうち微細すぎる粒径のものや、種晶表面に析出できなかった難溶性カルシウム塩の結晶等の微細粒子は、固液分離部30で分離しきれず、上向流によって処理水と共に流出し、系外に排出されてしまう。一般的に、この排出された微細粒子は、回収されずに汚泥として処分されてしまうが、この微細粒子を固液分離可能な粒径にまで成長させることができれば、発生汚泥量を削減することができ、かつ種晶の補給量も削減することが可能となる。従来、処理水と共に流出する微細粒子を固液分離可能な粒径にまで成長させるために、処理水中の微細粒子を晶析反応部に戻す方法が提案されている(例えば、特開2002−292202、特開2009−226232、特開2010−207755)。
【0029】
本実施形態では、
図1に示す晶析反応装置1のように、固液分離部30と晶析反応部28とを隔てる内周壁26の上端が、処理水排出口21と同じ高さか、または処理水の一部が処理水排出口21から排出可能な範囲で処理水排出口21より低い位置に設定する。
【0030】
一般的に、晶析反応部28の水位は処理水排出口21と同じ高さであるため、内周壁26の上端を処理水排出口21と同じ高さかその高さより低くしてしまうと、晶析反応部28内の難溶性カルシウム塩の結晶等が内周壁26を越えて固液分離部30側に越流してしまう。しかし、本実施形態の晶析反応装置1においては、晶析反応部28内の結晶の表面積を高く維持するために、結晶濃度が高い状態で運転するため、晶析反応部28内の流体の単位体積当たりの比重は固液分離部30内の流体の比重より高くなり易い。このように、晶析反応部28と固液分離部30に比重差が生じると、晶析反応部28と固液分離部30に水位差が生じる。この水位差は、装置の大きさ等によって数mの水位差となる場合がある。したがって、本実施形態のように、内周壁26の上端の位置を上記のように下げても、晶析反応部28内の原水が固液分離部30に越流することはなく、固液分離部30内の処理水の一部を晶析反応部28に戻せることになる。これにより、処理水中に含まれる微細粒子(難溶性カルシウム塩の結晶や種晶等)を、何の動力機器も使うことなく、晶析反応部28に返送することが可能となるため、より晶析反応部28内の難溶性カルシウム塩の結晶や種晶の粒径分布を細かく維持することが可能となる。その結果、更に難溶性カルシウム塩の結晶の回収率を向上させることが可能となる。
【0031】
次に、本実施形態の晶析反応装置1のその他の条件等について説明する。
【0032】
本実施形態において、カルシウム剤及び原水の晶析反応部28への添加(注入点)は、攪拌翼38の近傍に行われることが好ましい。カルシウム剤及び原水を攪拌翼38の近傍に添加することにより、カルシウム剤及び原水は、晶析反応部28へ注入されると直ちに拡散せしめられ、カルシウム剤濃度やフッ素、リン等の晶析対象物質濃度が素早く低下する。このため、形成された難溶性塩が液中に直接析出することが少なくなり、晶析反応部28内の種晶上の難溶塩結晶として液中の晶析対象物質(フッ素、リン等)をじっくり取り込むことができる。
【0033】
本実施形態においては、筒内に攪拌装置34の攪拌翼38が位置するようにドラフトチューブ36を設置することが好ましい。このとき、攪拌翼38は下降流を形成するものであることが好ましい。このようにドラフトチューブ36を設置すると、チューブ下部に向けて下降流が生じ、拡散流速が比較的大きいゾーンが形成される。このため、原水やカルシウム剤等をより素早く拡散させることができ、原水やカルシウム剤の濃度が局所的に濃い領域同士が接触せずに、難溶性カルシウム塩粒子の直接生成が抑制される。
【0034】
また、上記のようにドラフトチューブ36および攪拌翼38を設置すると、チューブ外周部には流れのゆるやかな上向流ゾーンが形成される。このゾーンでは、粒子が分級されて小粒径の粒子はチューブ外側面に沿って上昇すると共に、チューブ上端からチューブ内部に再侵入して下降し、原水やカルシウム剤等の注入点付近やその下部の撹拌ゾーンへと再循環する。これら小粒径の結晶が核となって晶析反応を促進せしめるため、難溶性塩結晶の回収率を向上させることができる。
【0035】
さらに、晶析反応が進んで粒径が大きくなった結晶は、チューブ外周部の上向流によっては上昇せず、下に沈んで再びドラフトチューブ36内には入り込まないため、成長した結晶が攪拌翼38との衝突により破壊されてしまうことを防止することができるため、難溶性塩結晶の回収率の向上に寄与することができる。
【0036】
本実施形態では、晶析反応部28に酸又はアルカリを添加し、晶析反応部28における晶析反応液のpHを0.8〜3の範囲とすることが好ましく、1〜1.5の範囲とすることがより好ましい。酸又はアルカリを添加して晶析反応部28のpHを0.8〜3の範囲で運転することにより、例えば、処理水のフッ素、リン等の晶析対象物質濃度を低減させることができる。
【0037】
本実施形態におけるフッ素、リン等の晶析対象物質含有原水は、晶析処理により除去されるフッ素、リン等を含むものであれば、如何なる由来の原水であっても良く、例えば、半導体関連産業をはじめとする電子産業、発電所、アルミニウム工業等から排出される原水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
晶析対象物質となるフッ素、リン等は、晶析反応により晶析するのであれば、任意の状態で原水中に存在することが可能である。原水中に溶解しているという観点から、晶析対象物質はイオン化した状態であるのが好ましい。
【0039】
本実施形態において用いられるカルシウム剤としては、例えば塩化カルシウム、水酸化カルシウム等が用いられる。カルシウム剤を添加する形態としては、粉末状態でもよいし、スラリ状態であってもよい。
【0040】
カルシウム剤の注入量としては、カルシウムの化学当量としてフッ素、リンの0.8倍〜2倍、1倍〜2倍までがよいが、1倍〜1.2倍がよりよい。カルシウムの化学当量が原水のフッ素、リンの化学当量の2倍より多いとフッ化カルシウム、リン酸カルシウムが種晶上に析出せずに微粒子として生成しやすく、処理水にフッ化カルシウム、リン酸カルシウムが混入する場合があり、0.8倍より少ないと、原水中のフッ素、リンのうちフッ化カルシウム、リン酸カルシウムとならない割合が多くなり、処理水にフッ素、リンが混入する場合がある。
【0041】
本実施形態においては、原水とカルシウム剤とを晶析反応部28に添加する前に、あらかじめ、晶析反応部28に種晶が存在していてもよいし、あらかじめ晶析反応部28内に種晶が存在していなくてもよい。安定した処理を行うためには、晶析反応部28にあらかじめ種晶が存在していることが好ましい。
【0042】
種晶は、その表面に生成した難溶性カルシウム塩の結晶を析出させることができるものであればよく、任意の材質が選択可能であり、例えば、ろ過砂、活性炭、およびジルコンサンド、ガーネットサンド、サクランダム(商品名、日本カートリット株式会社製)などをはじめとする金属元素の酸化物を含んで構成される粒子、ならびに、晶析反応による析出物である難溶性カルシウム塩を含んで構成される粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より純粋な難溶性塩をペレット等として入手できるという観点から、晶析反応による析出物である難溶性塩を含んで構成される粒子が好ましい。晶析反応による析出物である難溶性カルシウム塩を含んで構成される粒子としては、例えば、フッ化カルシウムを析出させる場合には蛍石等が挙げられ、リン酸カルシウムを析出させる場合にはリン鉱石等が挙げられる。
【0043】
晶析反応部28へ通水する原水の流量は、晶析反応を良好に行う観点から、滞留時間1〜4時間の範囲であることが好ましく、2〜4時間であることがさらに好ましい。
【0044】
固液分離部30を流れる処理水の流速(LV)は、固液分離を良好に行う観点から、0.1〜2.0m/hの範囲が好ましく、0.2〜1.0m/hの範囲がより好ましい。
【0045】
図2は、参考例の晶析反応装置の構成の一例を示す模式図である。
図2に示す晶析反応装置100は、晶析反応槽110、種晶サイロ112、カルシウム剤を晶析反応槽110へ添加する添加手段の一例としてのカルシウム剤添加ライン114、原水を晶析反応槽110へ流入させる流入手段の一例としての原水通水ライン116、種晶添加ライン118、処理水排出ライン120、難溶性塩排出ライン122、を備えている。
【0046】
晶析反応槽110には、原水貯槽(不図示)からの原水通水ライン116、カルシウム剤貯槽(不図示)からのカルシウム剤添加ライン114が接続されている。また、種晶サイロ112と晶析反応槽110との間は、種晶添加ライン118が接続されている。さらに、晶析反応槽110の処理水排出口111には、処理水排出ライン120が接続され、晶析反応槽110の難溶性塩排出口には、難溶性塩排出ライン122が接続されている。
【0047】
晶析反応槽110内には、難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応部126と、難溶性塩結晶と処理水との固液分離を行う固液分離部128とが設けられている。晶析反応槽110内には、晶析反応槽110の外周壁に対向する内周壁124が設けられており、この外周壁と内周壁124間を固液分離部128としている。本実施形態の内周壁124は晶析反応槽110の外周壁の所定区間に設けられているが、内周壁124は外周壁の全周にわたって設けられていてもよい。
【0048】
晶析反応部126と固液分離部128とは内周壁124により区画されており、内周壁124の下部には、晶析反応部126と固液分離部128とが連通する連通口130が形成されている。また、前述した処理水排出口111は、固液分離部128が形成されている晶析反応槽110の外周壁に設けられており、この処理水排出口111に処理水排出ライン120が接続されている。
【0049】
また、固液分離部128と晶析反応部126とを隔てる内周壁124の上端は、処理水排出口111と同じ高さか、または処理水の一部が処理水排出口111から排出可能な範囲で処理水排出口111より低い位置に設定する。
【0050】
晶析反応槽110の晶析反応部126には、ドラフトチューブ134、晶析反応部126内の流体を撹拌する攪拌手段の一例としての攪拌装置132を備える。攪拌装置132は攪拌翼136を備え、攪拌翼136は、ドラフトチューブ134内に配置され、撹拌軸を介して伝達されるモータが発生する回転力によって回転する。
【0051】
本実施形態に係る晶析反応装置100の動作について説明する。
【0052】
まず、原水通水ライン116を通して、フッ素、リンの晶析対象物質を含有する原水(以下、単に「原水」と呼ぶ場合がある。)を晶析反応部126に通水する。また、カルシウム剤添加ライン114を通して、カルシウム剤を晶析反応部126に添加する。さらに、モータにより種晶サイロ112中の種晶が種晶添加ライン118を通して晶析反応部126に添加されることが好ましい。
【0053】
そして、晶析反応槽110の晶析反応部126において、原水に含まれるフッ素、リンの晶析対象物質がカルシウム剤と反応して、フッ化カルシウム、リン酸カルシウム(難溶性カルシウム塩)が生成して、種晶表面に析出し、難溶性塩(難溶性カルシウム塩)の結晶となる。
【0054】
晶析反応部126内で生成したフッ化カルシウム、リン酸カルシウムの難溶性カルシウム塩の結晶は、例えば定期的に難溶性塩排出ライン122から引き抜かれ、系外へ排出される。難溶性カルシウム塩の結晶の引き抜き方法は、特に制限されるものではないが、チューブポンプ等のスラリ用ポンプを用いて、晶析反応槽110から難溶性カルシウム塩の結晶を引き抜く方法でも良いし、
図1に示すように難溶性塩排出ライン122にバルブ122aを取り付け、単に重力によって晶析反応槽110から難溶性カルシウム塩の結晶を引き抜く方法でもよい。
【0055】
一方、晶析反応部126内の晶析反応後の処理水は、連通口130から固液分離部128に流入する。この際、処理水と共に、難溶性塩の結晶の一部が固液分離部128に流入するが、固液分離部128では、晶析反応後の処理水が上向流を形成して固液分離部128を通過し、処理水中に含まれる難溶性塩結晶と処理水とが固液分離される。固液分離された処理水は、処理水排出ライン120を通して、本実施形態の最終処理水として系外に排出される。
【0056】
ところで、補給した種晶のうち微細すぎる粒径のものや、種晶表面に析出できなかった難溶性カルシウム塩の結晶等の微細粒子は、固液分離部128で分離しきれず、上向流によって処理水と共に流出し、系外に排出されてしまう。一般的に、この排出された微細粒子は、回収されずに汚泥として処分されてしまうが、この微細粒子を固液分離可能な粒径にまで成長させることができれば、発生汚泥量を削減することができ、かつ種晶の補給量も削減することが可能となる。従来、処理水と共に流出する微細粒子を固液分離可能な粒径にまで成長させるために、処理水中の微細粒子を反応部分に戻す方法が提案されている(例えば、特開2002−292202、特開2009−226232、特開2010−207755)。
【0057】
本実施形態では、
図2に示す晶析反応装置100のように、固液分離部128と晶析反応部126とを隔てる内周壁124の上端が、処理水排出口111と同じ高さか、または処理水の一部が処理水排出口111から排出可能な範囲で処理水排出口111より低い位置に設定する。
【0058】
一般的に、晶析反応部126の水位は処理水排出口111と同じ高さであるため、内周壁124の上端を処理水排出口111と同じ高さかその高さより低くしてしまうと、晶析反応部126内の難溶性カルシウム塩の結晶等が内周壁124を越えて固液分離部128側に越流してしまう。しかし、フッ化カルシウム、リン酸カルシウムの結晶を得る場合、晶析反応部126内の流体の単位体積当たりの比重は固液分離部128内の流体の比重より高くなり易い。例えばフッ化カルシウムの結晶を得る場合、晶析反応部126内の結晶を含んだ原水1L当たりの重さは2.0kg/Lになり得る。これに対し、固液分離部128内の比重はせいぜい1.0kg/L〜1.2kg/L程度である。
【0059】
このように、晶析反応部126と固液分離部128に比重差が生じると、晶析反応部126と固液分離部128に水位差が生じる。したがって、本実施形態のように、内周壁124の上端の位置を上記のように下げても、晶析反応部126内の原水が固液分離部128に越流することはなく、固液分離部128内の処理水の一部を晶析反応部126に戻せることになる。これにより、処理水中に含まれる微細粒子(難溶性カルシウム塩の結晶や種晶等)を、何ら動力機器を使用することなく晶析反応部126に返送することが可能となるため、より晶析反応部126内の難溶性カルシウム塩の結晶や種晶の粒径分布を細かく維持することが可能となる。その結果、更に難溶性カルシウム塩の結晶の回収率を向上させることが可能となる。
【0060】
次に、本実施形態の晶析反応装置100のその他の条件について説明する。
【0061】
本実施形態における晶析対象物質含有原水は、晶析処理により除去されるフッ素、リンを含むものである。しかし、フッ素、リンを含むものであれば、如何なる由来の原水であっても良く、例えば、半導体関連産業をはじめとする電子産業、発電所、アルミニウム工業等から排出される原水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
晶析対象物質となるフッ素、リンは、晶析反応により晶析するのであれば、任意の状態で原水中に存在することが可能である。原水中に溶解しているという観点から、フッ素、リンはイオン化した状態であるのが好ましい。
【0063】
本実施形態において、カルシウム剤及び原水の晶析反応部126への添加(注入点)は、攪拌翼136の近傍に行われることが好ましい。カルシウム剤及び原水を攪拌翼136の近傍に添加することにより、カルシウム剤及び原水は、晶析反応部126へ注入されると直ちに拡散せしめられ、カルシウム剤濃度やフッ素、リン濃度が素早く低下する。このため、形成された難溶性塩が液中に直接析出することが少なくなり、晶析反応部126内の種晶上の難溶塩結晶として液中のフッ素、リンをじっくり取り込むことができる。
【0064】
本実施形態においては、筒内に攪拌装置132の攪拌翼136が位置するようにドラフトチューブ134を設置することが好ましい。このとき、攪拌翼136は下降流を形成するものであることが好ましい。このようにドラフトチューブ134を設置すると、チューブ下部に向けて下降流が生じ、拡散流速が比較的大きいゾーンが形成される。このため、原水やカルシウム剤等をより素早く拡散させることができ、原水やカルシウム剤の濃度が局所的に濃い領域同士が接触せずに、難溶性カルシウム塩粒子の直接生成が抑制される。
【0065】
また、上記のようにドラフトチューブ134および攪拌翼136を設置すると、チューブ外周部には流れのゆるやかな上向流ゾーンが形成される。このゾーンでは、粒子が分級されて小粒径の粒子はチューブ外側面に沿って上昇すると共に、チューブ上端からチューブ内部に再侵入して下降し、原水やカルシウム剤等の注入点付近やその下部の撹拌ゾーンへと再循環する。これら小粒径の結晶が核となって晶析反応を促進せしめるため、難溶性塩結晶の回収率を向上させることができる。
【0066】
さらに、晶析反応が進んで粒径が大きくなった結晶は、チューブ外周部の上向流によっては上昇せず、下に沈んで再びドラフトチューブ134内には入り込まないため、成長した結晶が攪拌翼136との衝突により破壊されてしまうことを防止することができるため、難溶性塩結晶の回収率の向上に寄与することができる。
【0067】
本実施形態では、晶析反応槽110に酸又はアルカリを添加し、晶析反応部126における晶析反応液のpHを0.8〜3の範囲とすることが好ましく、1〜1.5の範囲とすることがより好ましい。酸又はアルカリを添加して晶析反応部126のpHを0.8〜3の範囲で運転することにより、例えば、処理水のフッ素、リンの晶析対象物質濃度を低減させることができる。
【0068】
本実施形態において用いられるカルシウム剤としては、例えば塩化カルシウム、水酸化カルシウム等が用いられる。カルシウム剤を添加する形態としては、粉末状態でもよいし、スラリ状態であってもよい。
【0069】
カルシウム剤の注入量としては、カルシウムの化学当量としてフッ素、リンの0.8倍〜2倍、1倍〜2倍までがよいが、1倍〜1.2倍がよりよい。カルシウムの化学当量が原水のフッ素、リンの化学当量の2倍より多いとフッ化カルシウム、リン酸カルシウムが種晶上に析出せずに微粒子として生成しやすく、処理水にフッ化カルシウム、リン酸カルシウムが混入する場合があり、0.8倍より少ないと、原水中のフッ素、リンのうちフッ化カルシウム、リン酸カルシウムとならない割合が多くなり、処理水にフッ素、リンが混入する場合がある。
【0070】
本実施形態においては、原水とカルシウム剤とを晶析反応部126に添加する前に、あらかじめ、晶析反応部126に種晶が存在していてもよいし、あらかじめ晶析反応部126内に種晶が存在していなくてもよい。安定した処理を行うためには、晶析反応部126にあらかじめ種晶が存在していることが好ましい。
【0071】
種晶は、その表面に生成した難溶性カルシウム塩の結晶を析出させることができるものであればよく、任意の材質が選択可能であり、例えば、ろ過砂、活性炭、およびジルコンサンド、ガーネットサンド、サクランダム(商品名、日本カートリット株式会社製)などをはじめとする金属元素の酸化物を含んで構成される粒子、ならびに、晶析反応による析出物である難溶性塩を含んで構成される粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より純粋な難溶性塩をペレット等として入手できるという観点から、晶析反応による析出物である難溶性塩を含んで構成される粒子が好ましい。晶析反応による析出物である難溶性塩を含んで構成される粒子としては、フッ化カルシウムを析出させる場合には、例えば蛍石等が挙げられ、リン酸カルシウムを析出させる場合には、例えばリン鉱石等が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
実施例1では、
図1に示す晶析反応装置を用い、以下の条件で、フッ素含有原水からフッ化カルシウムの回収を行った。
【0074】
<晶析反応装置>
晶析反応部サイズ:130L(440mmφ×880mmH)
固液分離部サイズ:230L(440×590×880mmH)
<試験条件>
フッ素含有原水流量:50L/h
フッ素含有原水のフッ素濃度:10000mg/L
カルシウム剤:消石灰10%スラリを塩酸で溶解した溶液
晶析反応部内のpH:pH2(NaOHを添加して調整)
晶析反応部内の初期充填種晶:20kg(その後の種晶の補給無し)
晶析反応部内のスラリ濃度:30〜35v/v%(難溶性塩排出管から適宜引き抜く)
【0075】
実施例1の固液分離部の滞留時間は4.6h(230(L)/50(L/h))となり、晶析反応部の滞留時間は2.7hとなった。
【0076】
実施例1では、原水を晶析反応部へ9.2時間通水した後、2.3時間通水を停止した。通水時間が400時間に達するまで、この通水及び通水停止を繰り返した。通水時の固液分離部の処理水の流速(LV)は0.2m/hであった。
【0077】
(実施例2)
実施例2では、原水を晶析反応部へ4.6時間通水した後、1.15時間通水を停止したこと以外は実施例1と同様の条件で試験を行った。
【0078】
(実施例3)
実施例3では、原水を晶析反応部へ4.6時間通水した後、2.3時間通水を停止したこと以外は実施例1と同様の条件で試験を行った。
【0079】
(実施例4)
実施例4では、固液分離部サイズを23L(440×60×880mmH)に変更した晶析反応装置を用いた。また、実施例4では、原水を晶析反応部へ0.46時間通水した後、0.23時間通水を停止した。通水時間が400時間に達するまで、この通水及び通水停止を繰り返した。なお、通水時の固液分離部の処理水の流速(LV)は2.0m/hであった。
【0080】
(比較例1)
比較例1では、原水の通水停止を行わず、原水を晶析反応部へ400時間通水したこと以外は実施例1と同様の条件で試験を行った。通水時の固液分離部の処理水の流速(LV)は0.2m/hであった。
【0081】
(比較例2)
比較例2では、固液分離部サイズを23L(440×60×880mmH)に変更した晶析反応装置を用いて、原水の通水停止を行わず、原水を晶析反応部へ400時間通水したこと以外は実施例1と同様の条件で試験を行った。通水時の固液分離部の処理水の流速(LV)は2.0m/hであった。
【0082】
(比較例3)
比較例3では、
図2に示す晶析反応装置のように、周壁の上端を処理水排出口と同じ高さに設定した晶析反応装置を用いて、原水の通水停止を行わず、原水を晶析反応部へ400時間通水したこと以外は実施例1と同様の条件で試験を行った。通水時の固液分離部の処理水の流速(LV)は0.2m/hであった。
【0083】
表1に、実施例1〜4及び比較例1〜3の固液分離部の処理水の流速、晶析反応部への原水の通水時間、通水停止時間、及び通水400時間経過後のフッ化カルシウムの回収率をまとめた。
【0084】
【表1】
【0085】
図3は、実施例1の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図であり、
図4は、実施例2の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図であり、
図5は、実施例3の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図であり、
図6は、実施例4の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図であり、
図7は、比較例1の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図であり、
図8は、比較例2の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図であり、
図9は、比較例3の晶析反応部内の結晶の粒径分布を示す図である。晶析反応部内の結晶の粒径分布は、通水400時間後の晶析反応部内の粒径分布を、粒度分布計(ベックマン・コールター社製 LS230)を用いて測定した。
【0086】
種晶の補給を行わず原水の連続通水によりフッ化カルシウムを回収した比較例1では、
図7及び表1の結果から判るように、晶析反応部内に、粒径が100μm以上の結晶が多く存在し、回収率も65%と低かった。さらに、固液分離部の処理水の流速を2.0m/hに上げた比較例2では、
図8及び表1の結果から判るように、晶析反応部内に、粒径が125μm以上の結晶が多く存在し、回収率も50%とさらに低くなった。一方、原水の通水を間欠的に行った実施例、具体的には、原水の通水を固液分離部の滞留時間の1倍以上2倍以下の時間行い、通水停止を固液分離部の滞留時間の1/4倍以上1/2倍以下の時間行った実施例1〜4では、
図3〜6及び表1の結果から判るように、晶析反応部内に、粒径が100μm以下の結晶が多く存在し、回収率も75%以上となり比較例1及び2より高い回収率を得ることができた。特に、原水の通水を固液分離部の滞留時間の1倍の時間、通水停止を固液分離部の滞留時間の1/2倍の時間の間行った実施例3、原水の通水を固液分離部の滞留時間の1倍の時間、通水停止を固液分離部の滞留時間の1/2倍の時間行った実施例4では、
図5、
図6及び表1の結果から判るように、晶析反応部内に、50μm以下の粒径の結晶が存在するようになり、回収率も90%以上と実施例1,2より高い回収率を得ることができた。すなわち、原水の通水を固液分離部の滞留時間の1倍の時間行い、通水停止を固液分離部の滞留時間の1/2倍の時間行うことにより、より細かい粒径の結晶を晶析反応部内に保持することができ、フッ化カルシウム結晶の回収率もより向上することがわかった。比較例3は原水を連続通水したものであるが、固液分離部の処理水を晶析反応部に返送しているため、晶析反応部内に、50μm以下の粒径の結晶が存在するようになり、回収率も90%以上となった。