(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917972
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】冷却液組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
C09K5/10 F
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-72196(P2012-72196)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-203809(P2013-203809A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150681
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 荘助
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100105061
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 喜博
(72)【発明者】
【氏名】加賀 伸行
(72)【発明者】
【氏名】木村 純一朗
【審査官】
吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−187748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール類を基材とする冷却液組成物であって、
(a)炭素数8〜18の脂肪酸ジカルボン酸又はそのアルカリ金属塩を0.1〜8重量%
(b)炭素数7〜18のアルキル安息香酸又はそのアルカリ金属塩を0.1〜10重量%
(c)炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸又はその塩を0.1〜5重量%
を含有し、亜硝酸塩を含有しない冷却液組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸である請求項1に記載の冷却液組成物。
【請求項3】
前記アルキル安息香酸がp−トルイル酸である請求項1又は2に記載の冷却液組成物。
【請求項4】
アミン、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷却液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコール類を基材とする冷却液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの内燃機関の冷却系統等には、アルミニウム、アルミニウム合金、鋳鉄、鋼、黄銅、はんだ、銅などの金属が使用されている。とくに近年、自動車車体の軽量化を目的として、内燃機関や電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の冷却系統部品にはアルミニウムまたはアルミニウム合金が多用されるに至っている。
【0003】
これらの金属は、水あるいは空気との接触により腐食を生じる。このため、これらの金属の腐食を防止するため、冷却系統には、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、有機酸などの腐食防止剤を含む冷却液組成物が適用されている。
このような組成物の例としては、特許文献1に記載されているように、グリコール類を主成分とし、成分中にホウ酸塩,ケイ酸塩,アミン類,及び亜硝酸塩を含まない不凍液であって、芳香族一塩基酸と,モリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩と,脂肪族二塩基酸,脂肪族一塩基酸,リン酸類,トリアゾール類、チアゾール類,及びホスホン酸類を含んでなることを特徴とする冷却液が公知である。
【0004】
また、特許文献2に記載されているように、グリコール類を主成分とする冷却液組成物において、(a)0 .1〜10 重量%の脂肪族1塩基酸、またはその塩の中から選ばれた少なくとも1種と、(b)0.1 〜10重量%の脂肪族2塩基酸、またはその塩の中から選ばれた少なくとも1種と、(c)0.1 〜10重量%の芳香族1塩基酸、またはその塩の中から選ばれた少なくとも1種と、(d)0 .1 〜1重量%の亜硝酸塩の少なくとも1種と、(e)0.01〜1.0重量%の2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはその塩の中から選ばれる少なくとも1 種と、(f)0 . 0 0 0 1 〜0.1重量%のストロンチウム化合物、マグネシウム化合物、およびカルシウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする、冷却液組成物が公知である。
【0005】
ところが、リン酸塩は、硬水成分と反応して沈殿を生成することから、硬水で希釈した場合には、沈殿を生じていた。沈殿物の生成は、冷却液の腐食防止機能を低下させるだけでなく、生成した沈殿物が冷却系統の循環路に堆積し、冷却系統を閉塞するという事態を引き起こす恐れがあった。
【0006】
一方、ホウ酸塩は、アルミニウムまたはアルミニウム合金に対して腐食性を有し、ケイ酸塩は、液中の安定性に劣り、温度やpHが変化した場合、或いは他の塩類が共存すると容易にゲル化して分離し易く、これにより腐食防止機能が低下するという問題があった。
【0007】
このように金属、特にはアルミニウムまたはアルミニウム合金の防錆に有効な金属腐食防止剤として知られるものは、いずれも使用に際し種々の問題を有しており、アルミニウムまたはアルミニウム合金に対して優れた腐食防止性を示す腐食防止剤の開発が望まれていた。
【0008】
また、冷却液組成物は、これを水で希釈して冷却系統内に充填されるのであるが、希釈冷却水中には僅かながら空気が溶存している。このため、当該希釈冷却水が冷却系統内を循環する過程で圧力差が生じると、これが原因で気泡が発生し、この気泡により金属面が浸食される、いわゆるキャビテーション損傷が発生していた。またキャビテーション損傷を引き起こす気泡は振動によっても発生していた。
【0009】
このような事情に鑑み、特許文献3に記載されているように、キャビテーション損傷の抑制を計った冷却液組成物として、アジピン酸を含み、また安息香酸及びC9〜C12の脂肪族2塩基酸の少なくとも1つを含む有機酸成分又はその塩と、モリブデン酸塩を含み、またメルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、亜硝酸塩、硝酸塩、及びケイ酸塩の少なくとも1つを含む耐食性添加剤と、ホウ酸塩、又はリン酸塩の少なくとも1つのナトリウム塩を含む緩衝液成分と、凝固点降下剤とを含むものが提案されている。
【0010】
また、特許文献4に示すように、グリコール類を主成分とし、成分中に炭素数6〜12の脂肪族二塩基酸、又はそのアルカリ金属塩の中から選ばれた少なくとも1種、p−トルイル酸またはそのアルカリ金属塩を含油してなる冷却液は知られていたが、ウォーターポンプのメカニカルシールの潤滑性が良好でなく、鳴きが発生する恐れがあった。
【0011】
さらに特許文献5には、水を含有する冷却液において、その水として腐食性イオン及びスケール形成イオンを分離除去した脱イオン水を採用することにより、該冷却液を使用する内燃機関等の冷却系統に使用した際に金属の防食性を向上させると共にスケールの形成を抑制してウォーターポンプのメカニカルシールの潤滑性を向上させることが記載されている。
しかし、この冷却液組成物では、堆積物の生成抑制による潤滑性向上は達成したが、冷却液そのものの潤滑性能を向上させたわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−371270号公報
【特許文献2】特開2005−187748号公報
【特許文献3】特開2002−97461号公報
【特許文献4】WO01/70901号公報
【特許文献5】WO99/57218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
アルミニウムの防錆、耐キャビテーション性に優れ、冷却液循環ポンプのメカニカルシールの潤滑性にも優れた冷却液を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1.グリコール類を基材とする冷却液であって、
(a)炭素数8〜18の脂肪酸ジカルボン酸又はそのアルカリ金属塩を0.1〜8重量%
(b)炭素数7〜18のアルキル安息香酸又はそのアルカリ金属塩を0.1〜10重量%
(c)炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸又はその塩を0.1〜5重量%
を含有する冷却液組成物。
2.前記脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸である請求項1に記載の冷却液組成物。
3.前記アルキル安息香酸がp−トルイル酸である請求項1又は2に記載の冷却液組成物。
4.アミン、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷却液組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アルミニウムの防錆、耐キャビテーション性に優れ、冷却液循環ポンプのメカニカルシールの潤滑性にも優れた冷却液組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】磁歪式振動法によるキャビテーション破損防止性能を試験する試験装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的に本発明について述べる。
なお、本発明における冷却液組成物は、使用時において水等により希釈して使用するためのいわゆる濃縮物と、該濃縮物を水等により希釈されて得た冷却液として使用される状態の希釈物、のいずれも包含する組成物である。
(グリコール類)
本発明におけるグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等から1種以上が挙げられるが、その中でも特にエチレングリコール、或いはプロピレングリコールが望ましい。
【0018】
(炭素数8〜18の脂肪酸ジカルボン酸又はそのアルカリ金属塩)
(a)炭素数8〜18の脂肪酸ジカルボン酸又はそのアルカリ金属塩としては、本発明の組成物中に含まれる(a)成分、すなわち脂肪族ジカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩は、鉄、アルミ系金属に対して優れた腐食防止性を有するものである。また、この(a)成分から選ばれる1種若しくは2種以上の混合物と、下記(b)成分及び(c)成分とを組み合せることにより、鋳鉄および鋼に対する優れたキャビテーション損傷の抑制効果が発揮されるようになる。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピペリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2 酸、ドデカン2 酸、ブラシル酸、およびタプチン酸、あるいはそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を単独又は2種以上を使用することができる。中でもスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸およびドデカン2酸は、上記性能に優れるという点でより好ましい。
【0020】
上記(a)成分は冷却液組成物中0.1〜8重量%の範囲で含まれる。(a)成分の含有量が0.1重量%よりも少ない場合、鉄、アルミ系金属に対する腐食防止性と、鋳鉄および鋼に対するキャビテーション損傷の十分な抑制効果が期待できず、8.0重量%よりも多い場合には、8.0重量%を越えた分だけの効果が得られないため、不経済となる。
【0021】
(炭素数7〜18のアルキル安息香酸又はそのアルカリ金属塩)
(b)炭素数7〜18のアルキル安息香酸又はそのアルカリ金属塩としては、鉄、アルミ系金属に対して優れた腐食防止性を有するものが好ましく用いられる。また、この(b)成分から選ばれる1種若しくは2種以上の混合物と、上記(a)成分および下記(c)成分とを組み合せることにより、鋳鉄および鋼に対する優れたキャビテーション損傷の抑制効果が発揮されるようになる。
【0022】
炭素数7〜18のアルキル安息香酸又はそのアルカリ金属塩としては、安息香酸、ニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸などの安息香酸類、p−トルイル酸、p−エチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−tertブチル安息香酸などのアルキル安息香酸、一般式RO−C
6H
4−COOH(RはC
1〜C
5のアルキル基)で表されるアルコキシ安息香酸、一般式R−C
6H
4−CH=COOH(RはC
1〜C
5のアルキル基またはアルコキシ基)で表されるケイ皮酸、アルキルケイ皮酸、アルコキシケイ皮酸、またはそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を単独又は2種以上使用することができる。中でも、安息香酸、p−トルイル酸、およびp−t e r tブチル安息香酸は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の腐食防止性能に優れており、これらの少なくとも1種が含まれていることが望ましい。
【0023】
上記(b)成分は冷却液組成物中0.1〜10重量%の範囲で含まれる。(b)成分の含有量が0.1重量%よりも少ない場合、鉄、アルミ系金属に対する腐食防止性と、鋳鉄および鋼に対するキャビテーション損傷の十分な抑制効果が期待できず、10重量%よりも多い場合には、10重量%を越えた分だけの効果が得られないため、不経済となる。
【0024】
(炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸又はその塩)
(c)炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸又はその塩としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、バルブロ酸、2−メチルヘプタン酸、ノナン酸、4−メチルオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、4−エチルオクタン酸、4−メチルノナン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びイソアラキジン酸及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を単独又は2種以上を使用することができる。
【0025】
炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸又はその塩は、冷却液組成物中0.1〜5重量%の範囲で含まれている。炭素数6〜18の脂肪族モノカルボン酸又はその塩の含有量が、0.1重量%を下回る場合、アルミニウム及び鉄系金属に対する十分な防食性能、鉄系金属に対する十分なキャビテーション損傷の抑制効果が発揮されず、5重量%を上回る場合には、上回る分だけの効果がなく、不経済となる。
但し、本発明においては、アミン、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩を含まないことが望ましい。
アミンやアミン塩を添加させない場合には、仮に亜硝酸塩を添加した場合であってもニトロソアミンを生成することを防止できる効果を発揮することができる。
ケイ酸塩を添加させない場合には、ケイ酸塩の添加によって発生する冷却液中での安定性の低下、熱やpHが変化した場合や他の塩類が共存する場合における容易にゲル化する支障、及び腐食防止機能が低下するという不具合を防止することができる。
ホウ酸塩を含まない場合には、ホウ酸塩によるアルミやその合金の腐食を防止することができ、これにより、冷却液組成物の腐食防止性が早期に低下してしまうという不具合が発生することもない。
【0026】
リン酸塩を含まない場合には、冷却液中に含有される硬水成分と反応することにより沈殿の発生を防止でき、これにより冷却液の腐食防止機能の低下、さらには沈殿物が堆積することによる冷却系統の循環路が閉塞する事態を引き起こすことを防止できる。
亜硝酸塩は、ディーゼルエンジン内において金属、特に鉄表面に皮膜を形成し、この皮膜が気泡による浸食を防ぐ作用を発揮し、キャビテーションに対してきわめて有効に作用する成分ではあるものの、アミン塩と反応して発ガン性物質であるニトロソアミンを発生することも知られており、亜硝酸塩を使用しないことによりニトロソアミンの発生を防止できる。
【0027】
(その他添加剤)
その他の添加剤としては、消泡剤、着色剤等の他に、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、トリアゾール類、チアゾール類を採用することができる。さらに、通常のアルカリ物質、好ましくはナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩の水酸化物を用いて、そのpHが調整される。pH調整範囲としては、6.5〜9.0であり、好ましくは7.0〜9.0の範囲に調整される。尚、本冷却液には消泡剤を添加することができる。
【0028】
また、本発明に使用し得るトリアゾール類としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4−フェニル−1,2,3−トリアゾール、2−ナフトトリアゾール、あるいは4−ニトロベンゾトリアゾール等、及びこれらの塩類等を挙げることができ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。トリアゾール類を添加する際の添加量としては、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜1重量%の範囲である。
トリアゾール類の添加量が0.01重量%未満では、特に銅系の金属に対する防食性能を発揮することができなくなり、3重量%より多くを添加してもそれ以上の防食効果に変化が見られないので無駄になる。
【0029】
本発明に使用し得るチアゾール類としては、メルカプトベンゾチアゾール及びその塩類を挙げることができる。チアゾール類は微量で良く、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%の範囲で添加する。しかし、その添加量が0.01重量%未満では、特に銅系の金属に対する所定の防食性能が得られず、2重量%より多くを添加してもそれ以上の防食効果に変化が見られないので無駄になる。
【0030】
(実施例)
本発明の効果を実施例及び比較例を基に示す。
実施例1及び2と比較例1及び2にて使用した組成の成分及び試験結果を下記表1に示す。
【0032】
(試験方法)
摩擦係数
SiC製のメカニカルシールに垂直荷重30Nをかけ、100℃における試料液中での回転数200rpmでのシール間の回転トルクを測定し、摩擦係数を算出した。
キャビテーション試験
図1に示す装置を用いて、表2に示す条件で磁歪式振動法によるキャビテーション破損防止性能試験を行った。
【0034】
実施例1及び2と比較例1及び2はいずれも同程度のpH値を示しているものの、実施例1及び2によると摩擦係数が低く、これを用いて冷却液とした場合には循環ポンプのメカニカルシール等の潤滑性に優れることを確認できる。
比較例1は本発明における(b)成分を含有しない例であり、この例によれば特にキャビテーション試験の結果が悪いことがわかる。他方特に本発明の(c)成分を含有しない比較例2によると摩擦係数が2.7×10
−5と高いので、実施例によるよりも潤滑性に劣ることは明らかである。
また、本発明による実施例1及び2によると、冷却水が僅かに含有する空気によってもキャビテーション損傷の発生を防止することができるので、キャビテーション試験による質量の減少が極めて低い。一方、上記のように比較例1及び2のいずれによってもキャビテーション試験による質量の減少が多いので、キャビテーションがより頻繁に発生することが理解できる。
このような、特に(a)成分に加えて(b)成分及び(c)成分を共に含有する本発明による効果は、摩擦係数及びキャビテーション試験のいずれか1つをとっても、これらの(b)成分及び(c)成分のいずれか一方を使用するに留まる比較例1及び2に示す効果を単に合わせたものではなく、比較例1及び2のいずれによる結果からも顕著に優れたものである。