(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917977
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20060101AFI20160428BHJP
G01N 23/087 20060101ALI20160428BHJP
G01N 23/18 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/087
G01N23/18
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-76818(P2012-76818)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-205338(P2013-205338A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】綿引 広明
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−318943(JP,A)
【文献】
特開平09−288071(JP,A)
【文献】
特開2007−127611(JP,A)
【文献】
特開2009−192519(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0133563(US,A1)
【文献】
藤井 正司,「X線を用いた食品の検査と解析」,O plus E,アドコム・メディア株式会社,2009年 6月25日,Vol. 31, No. 7,p. 754-758
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
G01N 23/087
G01N 23/18
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路(2a)上を搬送される被検査物Wに異なるエネルギーのX線で撮像した複数の透過画像を合成して、合成画像を用いて前記被検査物(W)を検査するX線検査装置(1)において、
前記搬送路を形成して該搬送路上の前記被検査物を所定の搬送方向に搬送する搬送手段(2)と、
前記搬送路上の所定の検査エリアで同一の被検査物Wに対して異なるエネルギーのX線を照射するX線発生器(3)と、
前記X線発生器から照射されるX線のエネルギーを前記X線発生器の管電圧及び管電流を制御して切り換える切換手段(11)と、
前記搬送路上に前記検査エリアを形成するように面状に配置された複数のX線検出素子(4a)からなり、前記被検査物を透過したX線を検出して透過画像を撮像するX線検出器(4)と、
前記X線検出器で撮像された同一の被検査物に対する複数の透過画像を記憶する記憶手段(12)と、
前記搬送手段に搬送される前記被検査物が前記検査エリアに収まると該搬送手段を停止させ、前記X線検出器による撮像が完了すると該搬送手段を動作させるように制御する搬送制御手段(13)と、
前記X線発生器から照射されるX線のエネルギーが切り換わったか否かを前記切換手段が制御する前記管電圧及び前記管電流に応じて設定された安定時間のテーブルに基づいて確認する確認手段(14)と、
を備えることを特徴とするX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上を搬送される被検査物に異なるエネルギーのX線で撮像した複数の透過画像を合成して、合成画像を用いて被検査物における異物混入や形状などを検査するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品などの被検査物の各種検査(金属、石、ガラス、樹脂、骨などの異物混入の有無や割れ欠けの有無などの検査)に、被検査物にX線を照射して得られた透過画像を用いることがある。また、X線による透過画像を用いた検査では、同一の被検査物に異なるエネルギーのX線を照射して得られた複数の透過画像を合成することで、1つの合成画像において特長を強調させて精度の高い検査を行うことができる。例えば異物混入の有無の検査において異物検出を行う場合、同一の被検査物にX線発生器(X線管)の管電圧及び管電流を制御して異なるエネルギーのX線(異なる波長分布のX線)で撮像した複数の透過画像を合成することで、1つの合成画像から金属などの高密度の異物があればこれを検出し、樹脂などの低密度の異物があればこれも検出するという検査が可能となる。
【0003】
複数の透過画像を用いて高精度検査を行うものとして、特許文献1に開示される異物検出装置がある。この異物検出装置は、異なるX線エネルギーによる同一被検査物に対する2つの透過データを検出する検出器と、透過データを基準物質の厚さに変換する変換器と、基準物質の厚さに変換した2つの変換データを用いて被検査物と異物を識別する判定器とを備えた構成である。
【0004】
この異物検出装置によれば、搬送される被検査物に対してX線を照射し、検出器は同一被検査物に対する異なるエネルギーのX線による2つの透過データを検出する。検出器が検出した2つの透過データは、透過した物質の組成と厚さに依存している。変換器は、被検査物と同等の元素を持つ基準物質についてその厚さと透過データの値との関係を求めておき、検出器で得られた2つの透過データを基準物質の厚さに変換する。2つの変換データは、同一被検査物について基準物質の厚さに変換した値であるため、同様の元素を持つ場合には同一の値となる。これに対して、異物は基準物質と異なる元素を持つため、異物の2つの変換データは異なる値となる。したがって、2つの変換データを比較することにより、被検査物と異物の識別を行うことができる。なお、2つの変換データの比較はサブトラクションにより行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−318943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される異物検出装置では、搬送される被検査物が搬送方向に並んで配置された2つの検出器を通過するときにそれぞれの検出器で透過データが得られる構成であるため、被検査物が移動することから、2つの透過データを合成したときに、1つ目の検出器で得られた透過データと2つ目の検出器で得られた透過データにずれが生じる可能性があった。ずれが生じた合成データは正確性を欠いたものとなる。
【0007】
また、本願の発明者等は、透過データ(透過画像)のずれの問題を受けて、搬送される被検査物を所定の検査位置で停止させ、共通の検査位置で透過画像を撮像することで複数の透過画像のずれを防止することを考え出した。ところが、これには、前の撮像が終了してから次の撮像のためにX線のエネルギーが切り換わるまでに時間がかかってしまい検査効率が悪化して生産性が低下するという別の問題があった。このような効率悪化の問題は、エネルギーサブトラクション処理において管電圧を急激に上昇させることが難しいということもあるが、それよりも、エネルギーが切り換わったか否かを人が経験などから判断するため、前の撮像が終了してから管電圧が確実に上昇したであろう時間をあけて、すなわち、エネルギーが実際に切り換わった時間よりも長い時間をあけて次の撮像を開始することが原因であった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、効率良い検査が行えて生産性が低下せず、且つ複数の透過画像を用いた検査でずれのない正確な合成画像を得て確実な高精度検査が行えるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載のX線検査装置は、搬送路2a上を搬送される被検査物Wに異なるエネルギーのX線で撮像した複数の透過画像を合成して、合成画像を用いて前記被検査物Wを検査するX線検査装置1において、
前記搬送路2aを形成して該搬送路2a上の前記被検査物Wを所定の搬送方向に搬送する搬送手段2と、
前記搬送路2a上の所定の検査エリアで同一の被検査物Wに対して異なるエネルギーのX線を照射するX線発生器3と、
前記X線発生器3から照射されるX線のエネルギーを
前記X線発生器の管電圧及び管電流を制御して(前の設定値から次の設定値に)切り換える切換手段11と、
前記搬送路2a上に前記検査エリアを形成するように面状に配置された複数のX線検出素子4aからなり、前記被検査物Wを透過したX線を検出して透過画像を撮像するX線検出器4と、
前記X線検出器4で撮像された同一の被検査物Wに対する複数の透過画像を記憶する記憶手段12と、
前記搬送手段2に搬送される前記被検査物Wが前記検査エリアに収まると該搬送手段2を停止させ、前記X線検出器4による撮像が完了すると該搬送手段2を動作させるように制御する搬送制御手段13と、
前記X線発生器3から照射されるX線のエネルギーが切り換わったか否かを
前記切換手段が制御する前記管電圧及び前記管電流に応じて設定された安定時間のテーブルに基づいて確認する確認手段14と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載のX線検査装置によれば、搬送制御手段によって搬送手段の動作を制御して搬送される被検査物を静止状態で撮像することにより、同一の被検査物に対する異なるエネルギーのX線による複数の透過画像の間にずれが生じなくなる。このようなずれが生じていない合成画像を検査に用いることにより、高精度検査を行うことができる。
【0015】
また、
前記切換手段が、X線発生器における管電圧及び管電流の出力を制御することにより、X線の波長分布が変わり、異なるエネルギーのX線が生成されるようになる。また前記X線発生器から照射されるX線のエネルギーが切り換わったか否かを前記切換手段が制御する前記管電圧及び前記管電流に応じて設定された安定時間のテーブルに基づいて確認する確認手段を備えることにより、X線のエネルギーが切り換わったか否かを
安定時間の経過によって画一的に確認し、正確に把握することができる。これにより、エネルギーの切り換えにかかる時間のロスを抑えて効率良い検査が可能となり、生産性が低下しないようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のX線検査装置を示した構成図(模式的な正面図)である。
【
図2】同一の被検査物と照射X線(管電圧及び管電流の値)の関係及び品種ごとの被検査物と照射X線(管電圧及び管電流の値)の関係を説明するための図である。
【
図3】(a)〜(c)確認手段が有する確認テーブルを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
この実施の形態は、搬送路上を搬送される被検査物に異なるエネルギーのX線で撮像した複数の透過画像を合成して、1つの合成画像を用いて被検査物における異物混入や形状などを検査するX線検査装置である。この実施の形態では、合成画像を用いて食品などの被検査物に、金属、石、ガラス、樹脂、骨などの異物が混入しているか否かを検出する(異物混入の有無の検査)。
【0020】
図1に示すように、X線検査装置1は、搬送手段2、X線発生器3及びX線検出器4を備えている。搬送手段2は、ベルトコンベアなどの搬送コンベアであり、放射線防護材料からなる遮蔽構造の図示しない筐体を貫通するように設けられている。搬送コンベア2は被検査物Wを所定の搬送方向(
図1中の矢線方向)に搬送する。このとき、搬送コンベア2の上側循環面は被検査物Wの搬送路2aとなる。
【0021】
筐体内にはX線発生器3及びX線検出器4が設けられている。X線発生器3は、筐体内における上部に設けられている。X線検出器4は、搬送コンベア2の上側循環面と下側循環面の間に設けられている。X線発生器3とX線検出器4は搬送路2aを挟んで対向配置されている。
【0022】
X線発生器3は、金属製の箱内にX線を発生させる図示しないX線管が絶縁油に浸漬されてなり、搬送コンベア2により搬送される被検査物WにX線を照射する。このときX線は、
図1中に一点鎖線で示すような範囲が撮像されるように、X線発生器3から放射状に照射される。ここで、X線管が発生するX線の強度は、X線管の陽極と陰極との間に流す電流(管電流)に比例して変化するとともに、発生するX線の波長がX線管の陽極と陰極との間に印加する電圧(管電圧)に応じて短くなり透過力が強くなる。すなわち、X線管から発生されるX線の線質(X線エネルギー)は、X線管の管電流及び管電圧に応じて変化する。
【0023】
X線検出器4は、図示しないフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータからなる複数のX線検出素子4aとを備えている。X線検出器4は、X線検出素子4aが搬送方向とこの搬送方向と直交する方向に並んで面状に配置されたエリアセンサである。なお、搬送路2a上におけるX線検出器4の直上に位置するエリアは、被検査物Wの撮像が行われる検査エリアとなる。
【0024】
X線検出器4は、X線発生器3から搬送路2a上の検査エリアで被検査物WにX線が照射されて被検査物Wを透過したX線の透過画像を撮像する。具体的には、X線検出素子4aのシンチレータによって光信号に変換され、その光信号がフォトダイオードによって電気信号に変換される。そして更にノイズ除去などの処理を施し、X線透過量に基づいて濃淡分布の透過画像を生成する。なお、他のX線検出例として、テルル化カドミウム(CdTe)のような半導体を用いて、X線を直接的に効率良く電気信号に変換するように構成されてもよい。
【0025】
また、X線検査装置1では、同一の被検査物Wに対して異なるエネルギーのX線で複数回の撮像を行い、それぞれの透過画像を生成し、複数の透過画像を合成して1つの合成画像を生成する。X線検査装置1は、このような合成画像を確実に得るための制御手段10を備えている。
【0026】
制御手段10は、X線発生器3から照射されるX線のエネルギーを被検査物Wの組成や形状、その他の各検査条件に応じた設定値に切り換える切換手段11を備えている。切換手段11では、X線発生器3のX線管の管電圧及び管電流を制御することでX線の波長分布が変わり、X線発生器3から照射されるX線のエネルギーを変更することができる。
【0027】
制御手段10は、検査条件などを定める品種ごとの検査パラメータや、X線検出器4で撮像された同一の被検査物Wに対する複数の透過画像を順次記憶する記憶手段12を備えている。
【0028】
制御手段10は、搬送コンベア2に搬送される被検査物Wが検査エリアに収まると搬送コンベア2を停止させ、X線検出器4による撮像が完了するとこの搬送コンベア2を動作させるように制御する搬送制御手段13を備えている。したがって、被検査物Wは静止状態で撮像される。これにより、透過画像を合成したときにずれが生じることがなくなり、正確な合成画像が得られるようになる。なお、搬送制御手段13による搬送制御は、搬送コンベア2のモータなどの駆動部を制御することで可能となる。また、被検査物Wが検査エリアに収まったか否かは、搬送路2a上に設けられたセンサで被検査物Wの通過を検知するなどして検出可能となる。
【0029】
X線検査装置1では、同一の被検査物Wに対して照射するX線のエネルギーを変更して、透過画像ごとに特長を変えており、これらの透過画像を合成することで1つの合成画像において特長を強調させた高精度検査が可能となる。X線検査装置1では、例えば、エネルギーを変更したX線で3回の撮像を行い、
図2に示すように、同一の被検査物Wにおいて、管電圧及び管電流の値を、1回目は透過画像に金属などの高密度の異物が鮮明にあらわれる値、2回目は樹脂などの低密度の異物が鮮明にあらわれる値、3回目はガラスなどのX線不透過の異物が鮮明にあらわれる値などに切り換える。これにより、3つの透過画像を合成した画像からは、これらの異物があればそれがすべてあらわれるようになる。なお、この実施の形態では、管電圧は10〜100kVの範囲、管電流は0.1〜10mAの範囲で検査条件に応じた値に設定する。また、
図2に示すように、このような管電圧及び管電流の値の組合せを複数パターン(この実施の形態では3パターン)を品種ごとに作成することで、組成や形状(特に厚さ)の異なる被検査物Wを品種P
1 ,P
2 ,P
3 別にそれぞれ特長を変えた3つの透過画像を撮像する構成となる。具体的には、品種P
1 については、1回目に管電圧X
1 kV、管電流x
1 mAに設定されたX線を用いて撮像し、2回目に管電圧Y
1 kV、管電流y
1 mAに設定されたX線、3回目に管電圧Z
1 kV、管電流z
1 mAのX線を用いて撮像する。品種P
2 及び品種P
3 についても同様に、1〜3回の撮像をそれぞれ図中に示すように、管電圧X
2 ,Y
2 ,Z
2 kV、管電流x
2 ,y
2 ,z
2 mAの組合せからなるX線及び管電圧X
3 ,Y
3 ,Z
3 kV、管電流x
3 ,y
3 ,z
3 mAの組合せからなるX線を用いて撮像する。
【0030】
さらに、制御手段10は、X線発生器3から照射されるX線のエネルギーが前の設定値から次の設定値へと切り換わったか否かを確認する確認手段14を備えている。確認手段14による確認事項としては、管電圧及び管電流の値が所望の設定値に変更されてX線発生器3から出力されるX線が安定(上昇又は下降)するまでにかかる時間や、透過画像の濃度チェックなどがある。
【0031】
確認手段14による確認事項を透過画像の濃度チェックとした場合は、例えば、
図1中に斜線で示すような搬送方向と直交した検査エリアの端縁部、又は搬送方向に沿った検査エリアの端縁部、すなわち、X線を受けるが検査に関与しない位置にあるX線検出素子4aを濃度チェックに利用することで実現可能となる。確認手段14では、このX線を受けるが検査に関与しない位置にある複数のX線検出素子4aの濃度の平均が所定の濃度に達したときに、X線のエネルギーが所望の設定値に切り換わったと判断する。
【0032】
また、確認手段14による確認事項を管電圧及び管電流の値が次の設定値に変更されてX線発生器3から出力されるX線が安定するまでにかかる時間とした場合は、確認手段14が基準となる確認テーブルを有することで実現可能となる。この場合、確認手段14は、X線発生器3から照射されるX線のエネルギーが所望の設定値に切り換わったことを確認テーブルに基づいて確認する。確認テーブルとして、
図3(a)〜(c)に示すような管電圧及び管電流がある設定値からある設定値へと変更されてX線発生器3から出力されるX線が安定するまでにかかった時間を各々実測して作成したものがある。
【0033】
図3(a)には、X線の波長分布を変化させる管電圧を切り換えたときの安定時間のテーブルを示している。
図3(a)では、例えば、管電圧V
1 からV
2 に切り換えた場合の安定時間はS
12、V
2 からV
3 に切り換えた場合の安定時間はS
23である。また、管電圧V
2 からV
1 に切り換えた場合の安定時間はS
21、V
3 からV
2 に切り換えた場合の安定時間はS
32である。確認手段14は、このテーブルを用いて、切換手段11で設定値に切り換えられたときからの対応する安定時間が経過したときに、X線のエネルギーが所望の設定値に切り換わったと判断する。
【0034】
また、管電圧の変化が大きい場合には、
図3(b)に示すように、1つの管電圧切換えに対し、管電流変化分を考慮するようなテーブル構成とするとなおよい。
図3(b)には、(a)に示した管電圧V
5 からV
2 に切り換えたときの管電流の変化量ごとの安定時間を示している。
図3(b)では、例えば、管電流I
1 からI
2 に切り換えた場合の安定時間はS
521 、I
1 からI
3 に切り換えた場合の安定時間はS
522 である。また、管電流I
2 からI
1 に切り換えた場合の安定時間はS
521 、I
3 からI
2 に切り換えた場合の安定時間はS
522 である。さらに、管電流に変化がない場合はS
52となる。なお、
図3(b)中の横線は、X線発生器3から管電圧V
5 で管電流I
4 のX線が出力できないことを示している。
【0035】
図3(c)には、(b)に示すような管電流を考慮したテーブルを一部含む場合の確認テーブルの構成例を示している。
図3(c)に示すように、このテーブルは、網掛け部分の管電圧の変化では管電流変化分を考慮するようなテーブル構成をとり、空白部分の管電圧の変化では管電流変化がない管電圧の変化分のみに対応する安定時間のテーブル構成としている。このような構成にすることで、必要な情報だけを持つ最適化したテーブルとすることができる。
【0036】
なお、ここまで確認手段14として透過画像の濃度チェックや実測して得られた確認テーブルについて説明したが、被検査物Wの検査条件を設定する検査パラメータの設定の際に、検査エリアに被検査物がない状態で、管電圧及び管電流を変化させて切換え安定時間を計測し、管電圧及び管電流と共に切換え安定時間を検査パラメータとして記憶手段12に記憶して、そして、この検査パラメータの切換え安定時間を用いて確認手段14で確認するようにしてもよい。なお、この場合の計測は、管電圧及び管電流を変化させた時から複数のX線検出素子4aの濃度の平均が所定の濃度に達するまでの時間であり、検査位置に関係なく行うことができる。
【0037】
上述した実施の形態によれば、搬送制御手段13によって搬送コンベア2の動作を制御して搬送される被検査物Wを静止状態で撮像することにより、同一の被検査物Wに対する異なるエネルギーのX線による3つの透過画像の間にずれが生じなくなる。このようなずれが生じていない1つの合成画像を検査に用いることにより、高精度検査を行うことができる。
【0038】
また、確認手段14を備えることにより、X線のエネルギーが切り換わったか否かを正確に把握することができる。これにより、エネルギーの切り換えにかかる時間のロスを抑えて効率良い検査が可能となり、生産性が低下しないようになる。
【0039】
さらに、確認テーブルに有することで、X線のエネルギーが切り換わったか否かを画一的に確認することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…X線検査装置
2…搬送手段(搬送コンベア)
2a…搬送路
3…X線発生器
4…X線検出器
4a…X線検出素子
11…切換手段
12…記憶手段
13…搬送制御手段
14…確認手段
W…被検査物