特許第5917984号(P5917984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5917984蓄光式表示装置、および蓄光表示ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917984
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】蓄光式表示装置、および蓄光表示ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/20 20060101AFI20160428BHJP
   A62B 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   E01F 9/00 20160101ALI20160428BHJP
【FI】
   G09F13/20 D
   A62B3/00 B
   E01F9/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-86270(P2012-86270)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-218012(P2013-218012A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】村井 信幸
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−160728(JP,U)
【文献】 特開2005−115189(JP,A)
【文献】 特開2001−051632(JP,A)
【文献】 特開2001−193257(JP,A)
【文献】 特開2006−314693(JP,A)
【文献】 特開平11−222578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00−13/46
G09F 7/00− 7/22
A62B 3/00
E01F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
持部材により蓄光表示材原料を保持する蓄光表示材保持体と、
記蓄光表示材保持体が収容固定される収容凹部を備えて蓄光表示対象物に取り付けられる取付部材とを有し、
前記保持部材および取付部材は硬質材料からなり、
前記保持部材には、所定深さの充填凹部が形成され、該充填凹部内に流動性のある前記蓄光表示材原料の充填固化体が保持されるとともに、
前記収容凹部には、保持部材に形成された係止部が係止して蓄光表示材保持体の脱落を防止する被係止部が形成され、
かつ、充填固化体が保持部材に一体化された蓄光表示材保持体が係止部を被係止部に係止させた状態で取付部材に取り付けられている蓄光式表示装置。
【請求項2】
前記取付部材には、止着子を挿入可能な挿入孔が収容凹部の底面に穿孔される請求項1記載の蓄光式表示装置。
【請求項3】
前記保持部材は、充填凹部が全長に渡って連続する長尺に形成される請求項1または2記載の蓄光式表示装置。
【請求項4】
定深さの充填凹部を備える保持部材と、
光表示材とを有し、
前記保持部材は硬質材料により形成されるとともに、
前記蓄光表示材は、流動性のある基材に蓄光顔料を混合して前記充填凹部内に充填し、固化して形成され、
かつ、前記充填凹部は、張り出し部により開放端側を狭められる蓄光表示ユニットの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄光式表示装置、および蓄光表示ユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄光式の表示は従来より避難誘導などに広く用いられており、例えば廊下の壁面に蓄光粘着テープを貼り付けることにより、停電を伴う災害時において避難経路を知らせることができる。しかしながら、このような蓄光粘着テープの場合、壁面の不陸によって剥がれやすいという問題がある。
【0003】
この点、例えば特許文献1には、木製の長板状部材の表面に蓄光粘着テープの貼付面を設け、この貼付面にねじ込まれるビスにより長板状部材をドアや柱に固定した上で、ビスを隠すように貼付面に蓄光粘着テープを貼り付けることが提案されている。この従来例は長板状部材の木目模様によって蓄光粘着テープ周りの外観を向上等するものであるが、このように何らかの硬質部材を介して蓄光粘着テープを蓄光表示対象物に取り付ければ、蓄光表示対象物に不陸がある場合にも容易に剥がれなくなる効果を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-222578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した蓄光粘着テープは、その性質上、蓄光層の厚さが限られるために、蓄光性能をあまり高くすることができないという欠点がある。
【0006】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、長尺に形成したとしても不陸のある場所にしっかりと固定することができるとともに、蓄光性能をより高めることが可能な蓄光式表示装置の提供を目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、かかる蓄光式表示装置に使用可能な蓄光表示ユニットの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
持部材1により蓄光表示材原料を保持する蓄光表示材保持体3と、
記蓄光表示材保持体3が収容固定される収容凹部4を備えて蓄光表示対象物5に取り付けられる取付部材6とを有し、
前記保持部材1および取付部材6は硬質材料からなり、
前記保持部材1には、所定深さの充填凹部2が形成され、該充填凹部2内に流動性のある前記蓄光表示材原料の充填固化体が保持されるとともに、
前記収容凹部4には、保持部材1に形成された係止部7が係止して蓄光表示材保持体3の脱落を防止する被係止部8が形成され、
かつ、充填固化体が保持部材1に一体化された蓄光表示材保持体3が係止部7を被係止部8に係止させた状態で取付部材6に取り付けられている蓄光式表示装置を提供することにより達成される。
【0009】
本発明によれば蓄光式表示装置は、蓄光表示材保持体3と、この蓄光表示材保持体3が固定されるとともに、蓄光表示対象物5に取り付けられる硬質材料からなる取付部材6とを有し、硬質の取付部材6を介して蓄光表示材保持体3が蓄光表示対象物5に取り付けられる。硬質の取付部材6は不陸のない、あるいは蓄光表示対象物5の不陸を低減した固定面を提供し、これにより蓄光表示材保持体3の固定状態を安定させることができる。
【0010】
また、上記蓄光表示材保持体3は、流動性のある蓄光表示材原料を保持部材1に形成された充填凹部2内に充填し、固化して形成される。充填凹部2を所望の深さに形成して蓄光表示材原料を流し込むことにより、所望の厚さ、すなわち所望の蓄光性能を備えた蓄光表示材を得ることができる。さらに、充填凹部2を長尺に形成すれば、長尺の蓄光表示材を製作することが可能になる。この蓄光表示材は、蓄光顔料を2液混合などによって所定の時間が経過した後に硬化する合成樹脂材や、加熱により溶融した合成樹脂材やゴムなどの基材に混合して形成され、これにより充填凹部2への充填に必要な流動性が確保される。
【0011】
加えて、上記保持部材1は硬質材料により形成されており、これにより、上述した合成樹脂材等を充填可能な充填凹部2を形成することができるとともに、充填後に固化して得られた蓄光表示材を保護することができ、さらに、上述した硬質の取付部材6への固定状態を安定させることもできる。加えてまた、蓄光表示材保持体3の上述した取付部材6への固定は、取付部材6に形成された収容凹部4に蓄光表示材保持体3を収容した状態でなされるために、蓄光表示材保持体3が取付部材6から簡単に脱落することもない。
【0012】
したがって本発明によれば、蓄光表示材を不陸のある場所にもしっかりと固定することができるとともに、保持部材1の充填凹部2に充填して形成することにより、蓄光性能をより高めることも可能になる。
【0013】
また、蓄光表示材保持体3の取付部材6への固定は、上述したように取付部材6の収容凹部4内に蓄光表示材保持体3を収容するだけでなく、収容凹部4に蓄光表示材保持体3を嵌合させれば、より強固にすることができる。本発明によれば、蓄光表示材保持体3に係止部7を形成するとともに、この係止部7の係止により蓄光表示材保持体3の脱落を防止する被係止部8を収容凹部4に設けたことにより、さらに強固に固定することができる。
【0014】
さらに、上述した硬質の取付部材6は、蓄光表示対象物5に接着固定することもできるが、止着子9により止着すれば固定状態をより強固にしやすくなる。このように止着子9により蓄光表示対象物5に止着する場合には、止着子9が挿入可能な挿入孔10を収容凹部4の底面11に穿孔しておけば、止着子9の頭部を蓄光表示材保持体3により隠すことができる。
【0015】
また、本発明によれば上述した他の目的は、
定深さの充填凹部2を備える保持部材1と、
光表示材13とを有し、
前記保持部材1は硬質材料により形成されるとともに、
前記蓄光表示材13は、流動性のある基材に蓄光顔料を混合して前記充填凹部内2に充填し、固化して形成され、
かつ、前記充填凹部2は、張り出し部12により開放端側を狭められる蓄光表示ユニットの製造方法を提供することにより達成することができる。
【0016】
蓄光表示ユニット(蓄光ユニット)は、硬質の保持部材1に形成された充填凹部2内に蓄光表示材原料を流し込むことにより形成され、上述した蓄光表示材保持体3として使用することができる。
【0017】
また、上記充填凹部2は、張り出し部12によって開放端側を狭めて形成されており、これにより蓄光表示材13の脱落を良好に防止することができる。この蓄光表示材13は、蓄光表示材原料を張り出し部12を避けるようにして充填凹部2内に流し込めばよいために、製造があまり難しくなることもない。
なお、本発明によれば、
硬質材料からなる保持部材1を備え、該保持部材1に形成された所定深さの充填凹部2内に流動性のある蓄光表示材原料を充填した後、固化して形成される蓄光表示材保持体3と、
硬質材料により形成され、前記蓄光表示材保持体3が収容固定される収容凹部4を備えて蓄光表示対象物5に取り付けられる取付部材6とを有する蓄光式表示装置や、
硬質材料により形成され、張り出し部12により開放端側を狭められた所定深さの充填凹部2を備える保持部材1と、
流動性のある基材に蓄光顔料を混合して前記充填凹部2内に充填し、固化して形成される蓄光表示材13とを有する蓄光表示ユニットを提供することも可能である。


【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、長尺に形成したとしても不陸のある場所にしっかりと固定することができるとともに、蓄光性能をより高めることが可能な蓄光式表示装置を提供することができるために、蓄光式の表示の使い勝手をより高めることができる。
【0019】
また、上記蓄光式表示装置に使用可能な蓄光ユニットを提供することができるために、蓄光式表示装置の蓄光性能等が劣化しても、蓄光ユニットを交換することにより、迅速に蓄光性能等を回復させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る蓄光式表示装置を示す図で、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
図2】蓄光式表示装置の要部拡大図で、(a)は図1(b)の2A部分を示す図、(b)は図1(b)の2B部分を示す図である。
図3】施工作業を説明する要部縦断面図である。
図4】蓄光式表示装置の変形例を示す図で、(a)は第1の変形例を示す分解斜視図、(b)は第2の変形例を示す斜視図である。
図5】施工現場の全体を示す斜視図である。
図6】保持部材の変形例を示す斜視図である。
図7】他の施工現場の全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態において蓄光式表示装置Aは、蓄光表示材13を保持部材1により保持した蓄光ユニット(蓄光表示材保持体3)と、この蓄光ユニット3を保持する金台(取付部材6)とを有し、全体として蓄光表示材13、保持部材1、金台6の3重構造をなす。
【0022】
上記金台6はアルミニウムの押し出し成形品であり、図1(a)および(b)に示すように、帯状の基部20の両側縁部から側壁21を立設して断面略コ字形状に形成され、基部20の表面を底面11、側壁21の内壁面を側面とする嵌合凹部(収容凹部4)を備える。この嵌合凹部4は、両側壁21、21の自由端を内側に折曲して形成される係止顎部(被係止部8)を備え、また、この係止顎部8の先端から基部20に向かって両側壁21、21の内壁面が四分円弧状に形成され(図2(a)参照)、これにより底面11に近づくに従って漸次外側に広がるように、言い換えればアリ溝近似形状に形成される。なお、上記基部20の幅寸法や、上記側壁21の高さは、後述する保持部材1の高さ、幅寸法を基準にして設定される。
【0023】
また、基部20の幅方向の中央部には、長手方向に所定ピッチで皿穴からなるビス穴(挿入孔10)が穿孔される。さらに、基部20の裏面には、後述するように金台6を蓄光表示対象物5に接着剤により固定するときを考慮し、接着剤との接触面積を増やして接着強度を高めるための浅い溝22の多数が形成される(図2(a)参照)。
【0024】
蓄光ユニット3の保持部材1は、上述した金台6同様、アルミニウムを押出成形して形成され、帯状の基部23の両側縁部から側壁24を立設して断面略コ字形状に形成される。上記基部23の幅寸法は、上述した嵌合凹部4の底面11よりも単一の係止顎部8の幅寸法程度やや短くされ、また、上記側壁24の高さ寸法は、嵌合凹部4の側面と同じ程度にされ、保持部材1は、上記基部23の表面を底面11、上記側壁24の内壁面を側面とする充填凹部2を備える。なお、上記基部23の幅寸法や、上記側壁24の高さは、後述する蓄光表示材13の高さ、幅寸法を基準にして設定される。
【0025】
さらに、保持部材1の一方の側壁24は基部23の一側縁よりもやや内側、具体的には単一の係止顎部8の幅寸法程度内側に配置され、これにより側壁24から外側に向かって突出する突出部(係止部7)が形成される。この突出部7の先端縁は、断面形状が略半円形にされる。加えて、上記側壁24の内壁面は、図2(b)に示すように、基部23側において充填凹部2の幅を広げるように円弧状に凹み、開放端側において充填凹部2の幅を狭くするように円弧状に張り出すS字近似の凹凸形状をなし、すなわち、開放端側において基端側よりも内側に向かって張り出す張り出し部12が形成される。言い換えれば、上記充填凹部2は開放端側の幅寸法が狭く、基部側の幅寸法が広いアリ溝近似形状に形成される。加えてまた、上述した凹部4の内壁面は、蓄光表示材13による蓄光輝度を高めるために、白色に塗装される。
【0026】
一方、蓄光ユニット3の蓄光表示材13は、この実施の形態においては、ウレタン樹脂(基材)に蓄光顔料を配合、含有して形成される。上記蓄光顔料は、高輝度のもの、すなわちユウロピウムやジスプロシウムを利用するアルミン酸塩系のものが使用され、また、ウレタン樹脂に対して高配合、具体的にはウレタン樹脂と同量程度となる分量にされる。一方、上記ウレタン樹脂は各種の合成樹脂材においても光透過性に優れたものであり、かつ、各種の合成樹脂材においても上述した保持部材1、すなわちアルミニウムと比較的近い熱膨張率を備えたものである。
【0027】
また、上記蓄光表示材13は、上述した充填凹部2の内部と同じ程度のサイズを有し、充填凹部2に接着固定される。この蓄光表示材13の幅寸法と厚さ寸法は、消防庁が蓄光式誘導標識等に関して示しているL’≧L×100/d’(L’は停電等により通常の照明が消灯してから60分間経過した後における帯状の標示の表面における平均輝度[mcd/m2]、Lは2[mcd/m2]、d’は当該標示の幅[mm])を基準にして適宜設定される。
【0028】
以上の蓄光表示材13の製造方法を以下に説明する。上述したウレタン樹脂は、この実施の形態において2液硬化型のものを使用して製造され、主剤に硬化剤を混合して形成される。2液硬化型は主剤と硬化剤を混合しても所定の硬化時間が経過するまではある程度の流動性を維持しており、この状態でアルミン酸塩系蓄光顔料を投入し、攪拌混合することにより、蓄光顔料をウレタン樹脂の全体にほぼ均質に混合させた流動性のある蓄光表示材13の原料を得ることができる。
【0029】
この後さらにウレタン樹脂の硬化前に、その流動性を利用して蓄光表示材原料が保持部材1の充填凹部2内に充填される。保持部材1は押出成形し、所望の長さに切断することで製作されるため、蓄光表示材原料を充填する前に充填凹部2の長手方向両端の開放部がマスキングされる。また、上記充填凹部2の内壁面には、ウレタン樹脂やアルミニウムと相性のよい白色塗料、接着剤が予め塗装、塗布される。充填凹部2に蓄光表示材原料を流し込む際には、充填凹部2の側壁がS字近似の凹凸形状に形成されることで蓄光表示材原料がスムーズに充填凹部2全体に広がる。さらに、充填凹部2の幅方向中央部に上方から蓄光表示材原料を流し込むと、その粘性と表面張力によって幅方向中央部においてやや盛り上がってしまうため、この盛り上がった部分がヘラ等で適宜除去される。この後、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化時間が経過し、あるいは加熱等によって硬化を促進してウレタン樹脂が固化すれば、蓄光表示材13が完成する。
【0030】
次に、上述した蓄光式表示装置Aの施工手順を以下に説明する。施工は、蓄光表示対象物5に取付部材6を取り付けた後、さらに取付部材6に対して蓄光ユニット3を取り付けてなされる。図5に示すように廊下の壁(蓄光表示対象物5)の下部への取付部材6の取り付けは、例えば図3に示すように、取付部材6のビス穴10を貫通してタッピングスクリュー(止着子9)を壁面にねじ込むことによりなされる。取付部材6は幅方向に線対称形状をなすことから、施工時に天地を気にする必要はない。なお、上述した図5において25は避難口に取り付けられるドア、26はノブ、27は蓄光性のある避難口の誘導標識板である。
【0031】
一方、蓄光ユニット3の取付部材6への取り付けは、先ず、蓄光ユニット3を突出部7が斜め上方に向く姿勢にした上で、上述した様に廊下の壁5に取り付けられた取付部材6の嵌合凹部4に対し、その上方に位置する係止顎部8をくぐらせるようにして突出部7を係止顎部8の内方に挿入する(図3参照)。この状態で突出部7の略半円断面の先端と、嵌合凹部4の四分円弧状の内壁面とが組み合わさり、この後、突出部7先端の円弧面に沿って蓄光ユニット3を垂直回転させ、その下部を嵌合凹部4内に押し込むようにすれば、蓄光ユニット3が嵌合凹部4内に嵌合収容される。
【0032】
図3に示すように、短冊状の蓄光ユニット3の蓄光表示材13とは反対面には、その下部、すなわち突出部7の反対方近傍において両面接着テープ28が貼り付けられており、上述したように蓄光ユニット3の下部を嵌合凹部4内に押し込むと、両面接着テープ28が嵌合凹部4の底面11に接着され、これにより蓄光ユニット3と取付部材6が嵌合固定、および接着固定される。この状態でタッピングスクリュー9の頭部は蓄光ユニット3により隠され、このため蓄光式表示装置Aはすっきりとした外観になる。さらに、蓄光ユニット3は、突出部7が係止顎部8に係止することにより、下端縁を中心にした倒れ込みが防止される。また、蓄光表示材13は張り出し部12によって充填凹部2からの脱落が防止される。
【0033】
なお、図1(b)において金台6の嵌合凹部4の底面11の幅方向中央部に長手通しに設けられる極めて浅い溝29は、押出成形後にビス穴10を穴開け加工するときの幅方向位置の目印となるものである。
【0034】
図4(a)に本発明の第1の変形例を示す。なお、この変形例、および後述する他の変形例等において、上述した実施の形態と同一の要素は図中に同一の符号を付して説明を省略する。この変形例において、蓄光式表示装置A’の取付部材6は、図4(a)および図5に示すように、三方枠の枠材であり、断面C型のチャンネル材近似形状をなし、その外周面に背向方向を向いて一対の嵌合凹部4、4が形成される。この取付部材6は図示しない躯体に溶接され、あるいはボルト止めされて固定される。
【0035】
したがって図5に示すように、避難口のドア周りの三方枠自体を蓄光式表示装置A’として構成することにより、この変形例においては停電時にも避難口を極めてはっきりと把握することができる上に、三方枠を兼ねる硬質の取付部材6によってドア25周りの構造を簡潔にすることができる。また、三方枠に背向方向を向けて一対の蓄光表示材13、13を取り付けることにより、屋外などの室外側から夜間に消防隊員などが避難者の救助に向かう際にも、避難口を明確に把握することができる。
【0036】
図4(b)に本発明の第2の変形例を示す。この変形例は蓄光式表示装置A”を見切り材として構成したものである。図4(b)および図5に示すように、蓄光式表示装置A”は腰板30の上縁に沿って配置され、取付部材6には、腰板30の上縁を飲み込む切欠部31が形成される。この取付部材6は、側壁21が基部20から離れるに従って高さを低くして形成され、これにより腰板30等からの突出を目立たなくされる。上述した切欠部31は、このようにして所定の幅寸法を有して形成される側壁21の一方の基端側に形成される。また、取付部材6の嵌合凹部4には、一方の側壁21にのみ、すなわち図4(b)において上方に位置する側壁21にのみ対応して係止顎部8が形成される。なお、以上の取付部材6は、腰板30の上部において露出する壁5に対し、図示しない接着剤で基部20の裏面を接着されて固定される。
【0037】
したがってこの変形例においては、避難誘導表示に加え、腰板30の上縁が壁5の表面から浮き上がるおそれを防止することができる上に、通常時の壁5の外観を引き締めることもできる。
【0038】
図6に上述した保持部材1の変形例を示す。この変形例において、充填凹部2の底面2aは、幅方向中央部を凹ませて形成される。これにより、蓄光表示材原料は、充填凹部2の幅方向中央部における充填量が増加される。
【0039】
したがってこの変形例においては、蓄光表示材原料を固化させると、この固化に伴う収縮量が幅方向中央部においてより大きくなる。このため、上述したように充填凹部2の幅方向中央部に上方から蓄光表示材原料を流し込み、その粘性と表面張力によって蓄光表示材原料が幅方向中央部でやや盛り上がっても、これをヘラ等で除去せずにそのまま固化させれば、収縮量が大きくなることで幅方向中央部の盛り上がり量を低く抑えることが可能になるし、あるいは、このように蓄光表示材原料を充填凹部2の容積よりもやや多く保持部材1に供給することにより、その固化に伴う収縮によって蓄光表示材13の表面が充填凹部2の上面よりも低くなってしまうことを適宜防止することも可能になる。
【0040】
図7に蓄光式表示装置Aの他の施工例を示す。この施工例は蓄光式表示装置Aを屋外に設置したものであり、この例では車止め32の表面に施工される。この場合、保持部材1と金台6は、耐候性等を考慮してアルミニウムではなくステンレスにより製作されたものが使用される。また、上述した第2の変形例におけるように、嵌合凹部4には上方側にのみ係止顎部8が設けられる。
【0041】
一方、車止め32はコンクリートにより製せられ、蓄光式表示装置Aは、ビス穴10にコンクリートネジ9を打ち込むことにより車止め32に固定される。なお、図7において33は駐車スペースを区画する区画線、38は駐車位置を番号表示したものである。
【0042】
上記車止め32は、図示しない車輪に接触等して車両が駐車スペース内を越えてしまうのを防止する車輪規制面32aを備え、この車輪規制面32aは、車両の進行方向に対して鋭角に交差する傾斜面からなる。蓄光式表示装置Aはこの車輪規制面32aの表面、より詳細にはその表面の上部側に固定される。
【0043】
したがってこの施工例においては、夜間において照明がなくても安全に駐車することができる。また、係止顎部8が上方にのみ形成されるために、蓄光ユニット3と嵌合凹部4との隙間に雨水も溜まりにくくなる。
【符号の説明】
【0044】
1 保持部材
2 充填凹部
3 蓄光表示材保持体
4 収容凹部
5 蓄光表示対象物
6 取付部材
7 係止部
8 被係止部
9 止着子
10 挿入孔
11 底面
12 張り出し部
13 蓄光表示材


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7