特許第5917986号(P5917986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5917986
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】携帯機
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-86445(P2012-86445)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217045(P2013-217045A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】川村 将之
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘明
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−280974(JP,A)
【文献】 特開2010−31589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタからの第1の要求信号を認識するとこれに対応する応答として第1の応答信号を送信し、前記第1の応答信号の送信後において前記通信マスタからの第2の要求信号を認識するとこれに対する応答として第2の応答信号を送信する携帯機において、
前記第1の要求信号及び前記第2の要求信号をともに受信可能とされ、前記第2の要求信号を受信可能待機状態と前記第2の要求信号を受信不能非待機状態との間で切り替えられる複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記待機状態と前記非待機状態とを切り替える制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第1の要求信号の受信状態に基づき、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第2の要求信号の受信しやすさが予め設定される基準レベルを満たすか否かを判断し、前記基準レベルを満たすアンテナの数が予め決められている設定個数を超えるとき、前記基準レベルを満たすアンテナのうち前記設定個数のアンテナを選出し、この選出したアンテナを前記待機状態に、前記選出に漏れたアンテナ及び前記基準レベルを満たさないアンテナを非待機状態に、それぞれ設定するとともに、前記選出されたアンテナにおいて前記第2の要求信号を受信できない場合には、前記選出されたアンテナを前記待機状態から前記非待機状態に切り替えるとともに、前記選出に漏れたアンテナを前記基準レベルを満たさないアンテナよりも優先的に前記非待機状態から前記待機状態に切り替える携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機において、
前記制御回路は、前記第1の要求信号の受信信号の信号強度に基づいて、前記第2の要求信号の受信しやすさを判断するものであって、前記第1の要求信号の受信信号の信号強度の強い順に優先順位を設定し、前記選出されたアンテナにおいて前記第2の要求信号を受信できない場合には、前記優先順位に沿って前記選出に漏れたアンテナを前記非待機状態から前記待機状態に切り替える携帯機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯機において、
前記制御回路は、前記選出されたアンテナの全てを前記非待機状態から前記待機状態に切り替えても前記第2の要求信号を受信できない場合には、前記選出に漏れたアンテナを前記非待機状態から前記待機状態に切り替える携帯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信対象との間で無線通信を行うことにより、通信対象の搭載機器の操作を可能とする携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両との間で無線通信を行う電子キー(携帯機)が開示されている。車両は、電子キーとの無線通信が成立すると、車両ドアの施解錠、エンジン始動等を許可する。例えば、車両は、停車中において車両周辺にウェイク信号を無線送信する。電子キーは、ウェイク信号を受信すると、当該ウェイク信号を受信した旨示すアック信号を無線送信する。車両は、アック信号を受信すると、IDコードを要求するリクエスト信号を無線送信する。電子キーは、リクエスト信号を受信すると、自身のIDコードを含ませたレスポンス信号を無線送信する。車両は、レスポンス信号を受信すると、当該レスポンス信号に含まれるIDコードと自身のIDコードとを照合する。そして、照合が成立した場合に車両ドアの施解錠を許可する。この状態において、車両は、例えば、ドアハンドルに設けられるスイッチの操作を検出すると、車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−194799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子キーには、無線信号を受信するアンテナとして互いに直交する3つのアンテナを採用するものがある。3つのアンテナは、3軸の感度方向を有するのでアンテナが1本の場合よりも、無線信号を受信しやすい。一方で、3つのアンテナとも受信状態を維持する場合、電子キーのバッテリの電力消費量が多くなる。また、3つのアンテナのいずれかにおいて無線信号が受信できればよい。そこで、電子キーは、ウェイク信号の受信を利用して、車両からのウェイク信号を受信できるアンテナを選定し、当該選定したアンテナを使用して、リクエスト信号の受信を行う。
【0005】
しかしながら、電子キーは、ユーザに携帯されるものであるから、当該電子キーが信号を受信する状況は時間とともに変化する。言い換えれば、ウェイク信号を受信した受信アンテナが必ずしもリクエスト信号を好適に受信できるとは限らない。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線信号を受信しやすい携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、通信マスタからの第1の要求信号を認識するとこれに対応する応答として第1の応答信号を送信し、前記第1の応答信号の送信後において前記通信マスタからの第2の要求信号を認識するとこれに対する応答として第2の応答信号を送信する携帯機において、前記第1の要求信号及び前記第2の要求信号をともに受信可能とされ、前記第2の要求信号を受信可能待機状態と前記第2の要求信号を受信不能非待機状態との間で切り替えられる複数のアンテナと、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記待機状態と前記非待機状態とを切り替える制御回路とを備え、前記制御回路は、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第1の要求信号の受信状態に基づき、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第2の要求信号の受信しやすさが予め設定される基準レベルを満たすか否かを判断し、前記第2の要求信号を受信しやすさが前記基準レベルを満たすアンテナの数が予め決められている設定個数を超えるとき、前記第2の要求信号の受信しやすさが前記基準レベルを満たすアンテナのうち前記設定個数のアンテナを選出し、この選出したアンテナを前記待機状態に、前記選出に漏れたアンテナ及び前記基準レベルを満たさないアンテナを非待機状態に、それぞれ設定するとともに、前記選出されたアンテナにおいて前記第2の要求信号を受信できない場合には、前記選出されたアンテナを前記待機状態から前記非待機状態に切り替えるとともに、前記選出に漏れたアンテナを前記基準レベルを満たさないアンテナよりも優先的に前記非待機状態から前記待機状態に切り替えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、携帯機は、受信しやすさの基準を満たし且つ選出された第2の要求信号の受信を認識できない場合には、受信しやすさの基準を満たすものの選出に漏れたアンテナを非待機状態から待機状態へ切り替える。これにより、携帯機は、要求信号を受信できないアンテナの状態を待機状態に維持するよりも、要求信号を受信しやすい。
【0011】
上記構成において、前記制御回路は、前記第1の要求信号の受信信号の信号強度に基づいて、前記第2の要求信号の受信しやすさを判断するものであって、前記第1の要求信号の受信信号の信号強度の強い順に優先順位を設定し、前記選出されたアンテナにおいて前記第2の要求信号を受信できない場合には、前記優先順位に沿って前記選出に漏れたアンテナを前記非待機状態から前記待機状態に切り替えることを要旨とする。
【0012】
受信した第1の要求信号の信号強度が強いアンテナは、受信した第1の要求信号の信号強度が弱いアンテナよりも、受信する第2の要求信号の信号強度が強い可能性が高い。同構成によれば、制御回路は、信号強度が強い第2の要求信号を受信する可能性が高いアンテナを非待機状態から待機状態に切り替える。このため、携帯機は、他のアンテナに切り替えるよりも、第2の要求信号を受信しやすい。
上記構成において、前記制御回路は、前記選出されたアンテナの全てを前記非待機状態から前記待機状態に切り替えても前記第2の要求信号を受信できない場合には、前記選出に漏れたアンテナを前記非待機状態から前記待機状態に切り替えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、無線信号を受信しやすい携帯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
図2】電子キー制御部の処理を示すフローチャート。
図3】各アンテナが受信する要求信号の信号強度、及び各アンテナの待機状態と非待機状態との切り替えを示すタイムチャート。
図4】各アンテナが受信する要求信号の信号強度、及び各アンテナの待機状態と非待機状態との切り替えを示すタイムチャート。
図5】各アンテナが受信する要求信号の信号強度、及び各アンテナの待機状態と非待機状態との切り替えを示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる携帯機を車両との間で無線通信を行う電子キーに具体化した一実施の形態について図1図5を参照して説明する。
図1に示すように、車両10には、電子キー20との間で交信される無線信号によりID照合を実行する電子キーシステム1が搭載されている。電子キーシステム1は、車両10からの無線信号をトリガとしてID照合を実行するスマート通信機能を有している。
【0016】
<車両の構成>
車両10は、各種の車載機器を制御する車載制御部11と、その車載制御部11に電気的に接続されてLF(Low Frequency)帯の要求信号を送信するLF送信部12と、UHF(Ultra High Frequency)帯の応答信号を受信するUHF受信部13とを備えている。なお、要求信号は、ウェイク信号Swk、及びリクエスト信号Srqの総称、応答信号は、アック信号Sac、及びレスポンス信号Sreの総称である。LF送信部12は、LF送信アンテナを有する。LF送信部12は、車載制御部11が生成する要求信号としてのパルス信号を変調し、この変調した信号をLF送信アンテナを介して無線送信する。UHF受信部13は、UHF受信アンテナを有する。UHF受信部13は、UHF受信アンテナを通じて、UHF帯の無線信号を受信し、この受信した信号をパルス信号に復調する。
【0017】
また、車両10は、同じく車載制御部11に電気的に接続されたドアロック装置14及びドアハンドルセンサ15を備えている。ドアロック装置14は、車両ドアのロック/アンロックを切り替える。ドアハンドルセンサ15は、ユーザの図示しないドアハンドルへの接触を検出する。
【0018】
車載制御部11には、不揮発性のメモリ11aが設けられている。このメモリ11aには車両10に固有のIDコードが記憶されている。車載制御部11は、LF送信部12及びUHF受信部13を通じて電子キー20と無線通信を行う。車載制御部11は、電子キー20との間で行われる無線信号の授受を通じて、交信している電子キー20が自身に対応するものか否かを判断する。当該判断は、電子キー20からの無線信号に含まれるIDコードと、メモリ11aに記憶されたIDコードとの照合により行う。そして、自身に対応するものと判断される場合には、ドアロック装置14の作動を許可する。詳しくは、車載制御部11は、ウェイク信号Swkを定期的に送信する。そして、車載制御部11は、ウェイク信号Swkに対する応答としてのアック信号Sacを受信した場合には、リクエスト信号Srqを複数回、ここでは3度送信する。車載制御部11は、リクエスト信号Srqの送信後にレスポンス信号Sreを受信すると、当該レスポンス信号Sreが自身に対応する電子キー20からのものと判断させる場合には、ドアロック装置14の作動を許可する。この状態で、ドアハンドルセンサ15を通じてドアハンドルへの接触を検出した場合、車載制御部11は、ドアロック装置14の作動を実行する。
【0019】
<電子キーの構成>
電子キー20は、CPU等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部21を備える。この電子キー制御部21には、LF帯の無線信号を受信するLF受信部22と、UHF帯の無線信号を送信するUHF送信部23とが電気的に接続されている。LF受信部22は、LF受信アンテナ22aを有する。LF受信部22は、LF受信アンテナ22aを通じてLF帯の無線信号を受信し、その受信した無線信号をパルス信号に復調する。UHF送信部23は、UHF送信アンテナ23aを有する。UHF送信部23は電子キー制御部21が生成する応答信号としてのパルス信号を変調し、この変調した信号をUHF送信アンテナ23aを介して無線送信する。
【0020】
なお、図1の拡大図に示すように、LF受信アンテナ22aは、互いに直行する検出軸を有するX軸アンテナ22x、Y軸アンテナ22y及びZ軸アンテナ22zからなる。X軸アンテナ22x、Y軸アンテナ22y及びZ軸アンテナ22zは、自身の軸方向に沿った磁束の変化に応じた電圧を誘起することでLF帯の無線信号を受信する。LF受信部22は、各アンテナ22x,22y,22zを、図示しないバッテリの電力を消費してLF帯の無線信号を受信可能な待機状態と、バッテリの電力を消費せずLF帯の無線信号を受信しない非待機状態との間で切り替える。
【0021】
また、図1に示すように、LF受信部22は、受信する無線信号の受信信号強度(RSSI)の値を検出するRSSI回路22bが設けられている。RSSI回路22bは、X軸アンテナ22x、Y軸アンテナ22y及びZ軸アンテナ22zのそれぞれを介して受信される無線信号のRSSI値を検出する。そして、その検出結果を電子キー制御部21に出力する。
【0022】
電子キー制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、同メモリ21aには電子キー20に固有のIDコードと同じく固有のウェイクパターンとが記憶されている。
電子キー制御部21は、パターン判定とともに、それぞれのアンテナ22x,22y,22zが受信したウェイク信号Swkの受信信号強度判定(RSSI判定)を行う。電子キー制御部21は、X軸アンテナ22x、Y軸アンテナ22y及びZ軸アンテナ22zのいずれかにおいて、予め設定される受信する信号を好適に読み込むのに必要な信号強度(必要信号強度)を上回る無線信号を受信すると、その無線信号を受信したアンテナを通信に使用するアンテナとして選定する。必要信号強度を有する無線信号を複数のアンテナが受信した場合には、予め設定された優先順位に従って通信に使用するアンテナを選定する。電子キー制御部21は、通信に使用するアンテナを選定した後、そのアンテナで受信された無線信号のパターン判定を行う。電子キー制御部21は、受信した無線信号のパターンが、予めメモリ21aに記憶されているウェイクパターンと一致するとき、当該信号をウェイク信号Swkと認識する。そして、電子キー制御部21は、LF受信部22を通じて、選定したアンテナを待機状態に維持し、他のアンテナを待機状態から非待機状態に切り替える。
【0023】
なお、電子キー制御部21は、ウェイクパターンが一致しない場合、今まで待機状態であったアンテナを非待機状態とするとともに、必要信号強度を超える無線信号を受信したアンテナが他にも存在するときには、とうがいアンテナを待機状態から非待機状態に切り替える。
【0024】
電子キー制御部21は、ウェイク信号Swkを認識すると、当該信号を受信したことを示すアック信号Sacを生成し、生成したアック信号SacをUHF送信部23へ出力する。UHF送信部23は、アック信号Sacを変調し、この変調したアック信号SacをUHF送信アンテナ23aを介して無線送信する。
【0025】
また、電子キー制御部21は、アック信号Sacの送信後に、リクエスト信号Srqを認識すると、当該信号に対する応答としてのレスポンス信号Sreを生成する。レスポンス信号Sreには、メモリ21aに記憶されたIDコードが含まれる。電子キー制御部21は、生成したレスポンス信号SreをUHF送信部23へ出力する。UHF送信部23は、レスポンス信号Sreを変調し、この変調したレスポンス信号SreをUHF送信アンテナ23aを介して無線送信する。
【0026】
<アンテナの切り替え>
次に、LF受信アンテナ22a(アンテナ22x,22y,22z)の待機状態と非待機状態との切り替えについて図2に示すフローチャートに従って説明する。当該フローチャートは、電子キー制御部21により実行される。電子キー制御部21は、アンテナ22x,22y,22zのいずれかで受信した無線信号のパターンと、予めメモリ21aに記憶されているウェイクパターンとが一致する場合、すなわち、ウェイク信号Swkを認識した場合に、この処理を開始する。なお、アンテナ22x,22y,22zは、待機状態とする。
【0027】
まず、電子キー制御部21は、ウェイク信号Swkを受信したアンテナが複数あるか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1においてYES、すなわち、ウェイク信号Swkを受信したアンテナが複数ある場合には、電子キー制御部21は、複数のアンテナが受信したウェイク信号SwkのRSSI判定を行う(ステップS2)。そして、ステップS3へ処理を移行する。なお、ステップS1においてNO、すなわち、ウェイク信号Swkを受信したアンテナが1つである場合にも、電子キー制御部21は、ステップS3へ処理を移行する。
【0028】
ステップS3において、電子キー制御部21は、アンテナ22x,22y,22zの切り替え順を決定する。例えば、ウェイク信号Swkを受信したアンテナが複数ある場合には、ウェイク信号SwkのRSSIが強い順に設定する。例えば、図3に示すように、3つ全てのアンテナ22x,22y,22zが必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信し、且つアンテナ22x,22z,22yの順に信号強度が強い場合、アンテナの切り替え順は、アンテナ22x,22z,22yの順となる。また、例えば、必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信したアンテナが一つである場合には、そのアンテナを一番目とし、残りはアルファベット順に設定する。例えば、図4に示すように、アンテナ22yで必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信し、他のアンテナ22x,22zでウェイク信号Swkを受信できない場合、アンテナの切り替え順は、アンテナ22y,22x,22zの順となる。なお、必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信したアンテナが複数あるとともに、必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信していないアンテナがある場合には、必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信したアンテナについて優先的に切り替える。例えば、図5に示すように、例では、アンテナ22x,22yで必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信し、且つアンテナ22x,22yの順に信号強度が強く、他のアンテナ22zでウェイク信号Swkを受信できない場合、アンテナの切り替え順は、アンテナ22x,22y,22zとなる。
【0029】
図2に示すように、電子キー制御部21は、アンテナ22x,22y,22zの切り替え順を決定した後、ウェイク信号Swkの応答としてのアック信号Sacを送信する(ステップS4)。そして、電子キー制御部21は、ステップS3において決定した切り替え順に基づき、一つのアンテナを待機状態に維持するとともに、他の2つのアンテナを待機状態から非待機状態に切り替える(ステップS5)。
【0030】
次に、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを認識できたか否かを判断する(ステップS6)。ステップS6でYES、すなわち、リクエスト信号Srqを認識できた場合には、レスポンス信号Sreを送信し(ステップS7)、この一連の処理を終了する。
【0031】
なお、ステップS6でNO、すなわち、リクエスト信号Srqを認識できない場合には、リクエスト信号Srqを受信するためのアンテナを、ステップS3において決定した切り替え順に基づき、非待機状態とされていた2つのアンテナうち一方を待機状態に切り替えるとともに、それまで待機状態とされていたアンテナを非待機状態に切り替え(ステップS8)、ステップS6へ処理を移行する。
【0032】
車載制御部11は、レスポンス信号Sreを認識した状態で、ドアハンドルセンサ15が接触を検出すると、ドアロック装置14を作動させて、車両ドアのロック/アンロックを切り替える。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)電子キー制御部21は、アンテナ22x,22y,22zのうち必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信できるアンテナを選定し、選定したアンテナを優先的に待機状態に、他のアンテナを非待機状態に切り替えるようにした。ウェイク信号Swk及びリクエスト信号Srqは、同じ車両10から送信されるものであるから、ウェイク信号Swkを受信できるアンテナはリクエスト信号Srqも受信できる可能性が高い。一方で必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信したアンテナが必ずしもリクエスト信号Srqを好適に受信できるとは限らない。この点、電子キー制御部21は、ウェイク信号Swkの受信後にリクエスト信号Srqを受信できない場合には、待機状態のアンテナを非待機状態に、非待機状態のアンテナを待機状態に切り替えるようした。これにより、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信しやすい。
【0034】
(2)電子キー制御部21は、アンテナ22x,22y,22zにおいて受信されたウェイク信号Swkの受信信号強度判定(RSSI判定)を行う。そして、信号強度が最も強いウェイク信号Swkを受信したアンテナを待機状態に維持し、他のアンテナを待機状態から非待機状態に切り替えるようにした。信号強度が最も強いウェイク信号Swkを受信したアンテナでリクエスト信号Srqの受信を試み、受信できなければ、次に信号強度が強いウェイク信号Swkを受信したアンテナでリクエスト信号Srqの受信を試みる。ウェイク信号Swk及びリクエスト信号Srqは、同じ車両10から送信されるものであるから、ウェイク信号Swkの信号強度が強いアンテナはリクエスト信号Srqも受信できる可能性が高い。これにより、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信しやすい。
【0035】
(3)電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信するために切り替えたアンテナでリクエスト信号Srqを受信できない場合に、当該リクエスト信号Srqを受信するためのアンテナを、必要信号強度を超えるウェイク信号Swkを受信できなかったアンテナに切り替えるようにした。ユーザの移動等により電子キー20と車両10との位置関係は変化することから、必ずしも、ウェイク信号Swkを受信できなかったアンテナがリクエスト信号Srqを受信できないとは限らない。このことから、リクエスト信号Srqを受信できないアンテナを待機状態に維持してリクエスト信号Srqを受信しようとするよりも、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信しやすい。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを認識できない場合には、アンテナ22x,22y,22zのうちウェイク信号Swkを受信できたアンテナを優先的に非待機状態から待機状態に切り替えるようにしたが、優先させなくてもよい。すなわち、非待機状態とされていた2つのアンテナうち一方を待機状態に切り替えるとともに、それまで待機状態とされていたアンテナを非待機状態に切り替えればよい。このように構成した場合であれ、リクエスト信号Srqを受信できないアンテナを待機状態に維持してリクエスト信号Srqを受信しようとするよりも、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信しやすい。
【0037】
・上記実施形態において、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを認識できない場合には、アンテナ22x,22y,22zのうち受信したウェイク信号Swkの信号強度が強い順に非待機状態から待機状態に切り替えるようにしたが、信号強度が強い順でなくてもよい。すなわち、非待機状態とされていた2つのアンテナうち一方を待機状態に切り替えるとともに、それまで待機状態とされていたアンテナを非待機状態に切り替えればよい。このように構成した場合であれ、リクエスト信号Srqを受信できないアンテナを待機状態に維持してリクエスト信号Srqを受信しようとするよりも、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信しやすい。
【0038】
・上記実施形態において、電子キー制御部21は、ウェイク信号Swkを受信したアンテナが1つしかなく、そのアンテナでリクエスト信号Srqを受信できない場合には、ウェイク信号Swkを受信できなかったアンテナのうちアルファベット順に非待機状態から待機状態に切り替えるようにしたが、アルファベット順でなくてもよい。すなわち、非待機状態とされていた2つのアンテナうち一方を待機状態に切り替えるとともに、それまで待機状態とされていたアンテナを非待機状態に切り替えればよい。このように構成した場合であれ、リクエスト信号Srqを受信できないアンテナを待機状態に維持してリクエスト信号Srqを受信しようとするよりも、電子キー制御部21は、リクエスト信号Srqを受信しやすい。
【0039】
・上記実施形態では、リクエスト信号Srqを受信するために待機状態とされるアンテナは、アンテナ22x,22y,22zのうち1つとされたが、2つであってもよい。この様に構成した場合でも、3つ全てを待機状態にするよりも電力の消費が抑制される。
【0040】
・上記実施形態では、LF受信アンテナ22aとして、アンテナ22x,22y,22zを採用したが、本数は3本に限るものではない。LF受信アンテナは、2本以上あればよい。
【0041】
・上記実施形態において、アンテナ22x,22y,22zは、互いに直交する位置関係とされたが、この位置関係に限るものではない。ただし、互いに直交する位置関係であれば、アンテナ22x,22y,22zのいずれかが、車両10からの要求信号を受信しやすい。
【0042】
・上記実施形態では、要求信号はLF帯、応答信号はUHF帯の無線信号とされたが、逆の関係であってもよい。また、同じ周波数帯としてもよい。さらに、これら以外の周波数帯に属する無線信号であってもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
・上記実施形態では、要求信号はウェイク信号Swk及びリクエスト信号Srqの2種類、応答信号はアック信号Sac及びレスポンス信号Sreの2種類の信号とされたが、これに限るものではなく、3種類以上の信号で構成されていてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、車載制御部11は、アック信号Sacの認識後、リクエスト信号Srqを3度送信するとしたが、この回数は任意に変更可能である。また、車載制御部11は、リクエスト信号Srqの送信後に、予め設定される所定時間以内にレスポンス信号Sreを認識できなかった場合に、再度リクエスト信号Srqを送信するようにしてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、車両10と電子キー20との間の無線通信は、ドアロック装置14における車両ドアのロック/アンロックを切り替えるためのものであったが、例えばエンジンのオン/オフなど他のものを切り替えるために行ってもよい。
【0046】
・上記実施形態において、電子キー20は、車両10と通信するものに限らない。例えば、電子キー20と通信する住宅等であってもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項2に記載の携帯機において、前記制御回路は、先に第1の要求信号を受信可能と判断したアンテナを全て試しても第2の要求信号を受信できない場合には、前記第1の要求信号を受信できないと判断されたアンテナを非待機状態から待機状態に切り替える携帯機。
【0048】
ユーザに携帯される携帯機と通信マスタとの位置関係は、常に変化する関係にあることから、必ずしも、第1の要求信号を受信したアンテナが第2の要求信号も受信できるとは限らない。そこで、同構成によれば、第1の要求信号を受信したアンテナが第2の要求信号を受信できない場合には、第1の要求信号を受信できなかったアンテナを非待機状態から待機状態に切り替える。これにより、先のアンテナを待機状態に維持するよりも、第2の要求信号を受信しやすい。
【0049】
(ロ)請求項1〜3のうちいずれか一項、又は前記(イ)に記載の携帯機において、前記複数のアンテナのうち少なくとも3つは互いに直交する位置関係にあることを特徴とする携帯機。
【0050】
同構成によれば、携帯機は、互いに直交する3つのアンテナを備えているので、どの方向からの要求信号も受信しやすい。
【符号の説明】
【0051】
1…電子キーシステム、10…車両、11…車載制御部、11a…メモリ、12…LF送信部、13…UHF受信部、14…ドアロック装置、15…ドアハンドルセンサ、20…電子キー、21…電子キー制御部(制御回路)、21a…メモリ、22…LF受信部、22a…LF受信アンテナ、22b…RSSI回路、23…UHF送信部、23a…UHF送信アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5