特許第5918023号(P5918023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918023
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】シャント抵抗式電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   G01R15/00 500
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-116152(P2012-116152)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-242240(P2013-242240A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−188935(JP,A)
【文献】 実開昭57−197601(JP,U)
【文献】 特開2004−342677(JP,A)
【文献】 特表2008−519250(JP,A)
【文献】 特開平04−083175(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0201369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
G01R 19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板形状のバスバと、
前記バスバ上に配置された回路基板と、
前記バスバと前記回路基板とを電気的に接続するとともに、前記バスバ上に回路基板を支持する接続部材と、
前記回路基板に搭載され、前記バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために前記接続部材を介して回路基板に印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、を有し、
前記接続部材は、前記バスバにおいて前記回路基板と対峙しない下面側に接続され、当該バスバの縁部から外側へと延出するとともに、前記バスバの厚み方向に折り曲げられると当該厚み方向に延在して前記回路基板に接続されることを特徴とするシャント抵抗式電流センサ。
【請求項2】
前記接続部材は、前記バスバの縁部から延出すると、ミアンダ形状からなる折り返し部を経て前記バスバの厚み方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載されたシャント抵抗式電流センサ。
【請求項3】
前記折り返し部は、前記バスバと垂直な平面内でミアンダ形状が形成されることを特徴とする請求項2に記載されたシャント抵抗式電流センサ。
【請求項4】
前記折り返し部は、前記バスバと平行な平面内でミアンダ形状が形成されることを特徴とする請求項2に記載されたシャント抵抗式電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗式電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス電流や交流大電流等を検出するため抵抗値が既知なシャント抵抗部に被測定電流を流し、このシャント抵抗部に生じる電圧降下を検出することで被測定電流の大きさを検出するシャント抵抗式電流センサが提案されている。例えば、自動車などの車両では配電にバスバと呼ばれる金属片が使用されることがあり、電流の経路に相当するバスバの一部をシャント抵抗部として利用している。このバスバ上には回路基板が配置されており、当該回路基板には、バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために、電圧値を検出する電圧検出手段が搭載される。バスバと回路基板とは接続部材によって電気的に接続され、また接続部材によって回路基板がバスバ上に支持されることとなるが、バスバと回路基板との熱膨張係数の差などによって、それらの接続部分に応力が作用することとなり、耐久性の低下を招くという点が懸念されている。
【0003】
例えば特許文献1には、電流計測装置が開示されている。この電流計測装置は、測定対象となる電流経路に介装されたバスバと、電流測定用の回路が組込まれた回路基板とを備えており、バスバと回路基板とは、直線形状のピン状接続部材を介して電気的、機械的に接続されている。この場合、バスバと回路基板との熱膨張率の相違に基づく形状変化のずれは、ピン状接続部材の傾きによる弾性作用を通じて吸収し、これにより、接続部分に作用する応力を緩和することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された手法において、ピン状接続部材はバスバと接続する一端部がいわゆるプレスフィット端子形状に形成されており、その一端部がバスバに形成された接続孔に圧入されることで、ピン状接続部材とバスバとが接続固定される。また、回路基板にはスルーホールが形成され、またその周囲にはランドが形成されており、ピン状接続部材の他端部がスルーホールに挿入されると、ハンダを用いてランドとピン状接続部材とが接続固定される。
【0006】
このような構成において、ピン状接続部材による弾性作用は、バスバと回路基板との間を繋ぐ部分から得られることになるが、ピン状接続部材が直線形状であるため、弾性作用を得るための部分がバスバと回路基板との間の距離に相当する長さでしか得られず、応力の緩和には限りがあるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シャント抵抗式電流センサにおいて、バスバと回路基板との接続部分に作用する応力を効果的に緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明は、略平板形状のバスバと、バスバ上に配置された回路基板と、バスバと回路基板とを電気的に接続するとともに、バスバ上に回路基板を支持する接続部材と、回路基板に搭載され、バスバに流れる被測定電流の大きさを検出するために接続部材を介して回路基板に印加される電圧値を検出する電圧検出手段と、を有するシャント抵抗式電流センサを提供する。この場合、接続部材は、バスバにおいて回路基板と対峙しない下面側に接続され、当該バスバの縁部から外側へと延出するとともに、バスバの厚み方向に折り曲げられると当該厚み方向に延在して回路基板に接続される。
【0009】
ここで、本発明において、接続部材は、バスバの縁部から延出すると、ミアンダ形状からなる折り返し部を経てバスバの厚み方向に折り曲げられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、折り返し部は、バスバと垂直な平面内でミアンダ形状が形成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明において、折り返し部は、バスバと平行な平面内でミアンダ形状が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接続部材が、バスバの下面側に接続されているので、接続部材には、バスバと回路基板との間の距離に加え、バスバの厚み分がその長さに含まれることとなる。これにより、接続部材において弾性作用を得るための部分(長さ)が、バスバと回路基板との間の距離以上に拡張されることとなるので、弾性作用を有効に得ることができる。その結果、バスバと回路基板との接続部分に作用する応力を効果的に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを模式的に示す上面図
図2図1に示すシャント抵抗式電流センサを模式的に示す側面図
図3図1に示すシャント抵抗式電流センサにおけるバスバを模式的に示す上面図
図4】シャント抵抗式電流センサの使用状態を模式的に示す説明図
図5】接続部材の他の用途を模式的に示す説明図
図6】第2の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサを模式的に示す側面図
図7図6に示すシャント抵抗式電流センサにおけるバスバを模式的に示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1を模式的に示す上面図であり、図2は、図1に示すシャント抵抗式電流センサ1を模式的に示す側面図である。図3は、図1に示すシャント抵抗式電流センサ1におけるバスバ10を模式的に示す上面図である。本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1は、例えばバッテリターミナルとして用いられるものであって、バスバ10と、回路基板20と、電圧検出IC30とを備えている。
【0015】
バスバ10は、略平板形状の導電部材であって、例えば銅マンガン合金や銅ニッケル合金などにより構成されている。このバスバ10は、測定対象となる電流経路に介装されて被測定電流が流れるようになっており、本実施形態では、その一部にシャント抵抗部SRを含んで構成されている。
【0016】
バスバ10は、平板形状の鋼材からプレス成形により所望の形状に形成されている。バスバ10は、例えば略L字状に形成され、それぞれの先端部に貫通孔11,12が形成されている。一方の貫通孔11は、バッテリポスト用の孔として機能すると共に、他方の貫通孔12はワイヤーハーネス固定ネジ用の孔として機能している。
【0017】
回路基板20は、バスバ10上に配置されており、所定の距離を隔ててバスバ10の上面10aと向き合うように配置されている。回路基板20は、後述する接続部材40によりバスバ10上に支持されている。この回路基板20には、回路パターン21が形成されており、回路パターン21における接続部22は、接続部材40を介して、バスバ10と電気的に接続されている。
【0018】
電圧検出IC30は、回路基板20に形成された回路パターン21上に搭載されている。電圧検出IC30は、バスバ10に流れる被測定電流の大きさを検出するために、回路基板20に印加される電圧値を検出する(電圧検出手段)。すなわち、電圧検出IC30は、回路パターン21、接続部材40を介して、バスバ10のシャント抵抗部SRに印加される電圧を検する。これにより、電圧検出IC30は、バスバ10のシャント抵抗部SRに生じる電圧降下を検出し、そして、電圧降下からバスバ10に流れる被測定電流の大きさを検出する。
【0019】
なお、回路基板20のバスバ10と対向する面に温度センサを搭載し、電圧検出IC30は、温度センサによる検出結果に応じて補正を行ってもよい。すなわち、電圧検出IC30は、温度変化による抵抗変化の影響を受けて誤った電流値を検出しないように、温度結果に応じてシャント抵抗部SRにおける抵抗値の補正を行ってもよい。
【0020】
バスバ10と回路基板20とは、一対の接続部材40を介して電気的に接続されている。接続部材40は、導電性を有する線状部材であり、例えば銅又は銅合金により形成されて後述するような所定の形状を備えている。
【0021】
接続部材40において、一方の端部は、回路基板20における接続部22に接続されている。例えば、回路基板20には、接続部22に対応してスルーホールが形成され、接続部材40の一方の端部はスルーホールに挿入されて、ハンダ付けなどされる。これにより、接続部材40は、接続部22を介して回路基板20(回路パターン21)と電気的に接続されるとともに、回路基板20と機械的に接続される。
【0022】
また、接続部材40の他方の端部は、バスバ10の所定位置に接続され、これにより、シャント抵抗部SRの両端部分に一対の接続部材40が接続される。なお、バスバ10に対する接続部材40の接続位置は、シャント抵抗部SRについての電圧降下が測定できる範囲であればどこでもよい。バスバ10と接続部材40の他方の端部との接続方法は、溶接や圧入等、バスバ10と電気的な接続を可能にするものであれば広く適用することができる。
【0023】
本実施形態の特徴の一つとして、個々の接続部材40は、バスバ10の下面10b側、すなわち、回路基板20と対峙しない面側に接続されている。そして、接続部材40は、バスバ10の縁部から外側へと延出するとともに、バスバ10の厚み方向に折り曲げられると当該厚み方向に延在して回路基板20に接続されることとなる。
【0024】
また、本実施形態では、個々の接続部材40は、バスバ10の縁部から外側へと延出した後に単に折り曲げられるのではなく、ミアンダ形状からなる折り返し部41を経てバスバ10の厚み方向に折り曲げられている。この折り返し部41は、バスバ10と垂直な平面内においてミアンダ形状が形成されており、その結果、接続部材40の全体形状も当該平面内に含まれる2次元的な形状で構成されている。
【0025】
図4は、本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1の使用状態を模式的に示す説明図である。本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1のバスバ10はバッテリターミナルとして用いられる。例えば、バスバ10の貫通孔11は、バッテリ70の負極側のバッテリポスト71に接続され、他方の貫通孔12にはワイヤーハーネス固定ネジ72を介してワイヤーハーネスWに接続される。
【0026】
このように本実施形態のシャント抵抗式電流センサ1は、バスバ10と回路基板20とを電気的に接続する接続部材40を備えている。この接続部材40は、バスバ10の下面10b側に接続され、バスバ10の縁部から外側へと延出するとともに、バスバ10の厚み方向に折り曲げられると当該厚み方向に延在して回路基板20に接続されている。
【0027】
かかる構成によれば、接続部材40が、バスバ10の下面10b側に接続されているので、接続部材40には、バスバ10と回路基板20との間の距離に加え、バスバ10の厚み分がその長さに含まれることとなる。これにより、接続部材40において弾性作用を得るための部分(長さ)が、バスバ10と回路基板20との間の距離以上に拡張されることとなるので、弾性作用を有効に得ることができる。その結果、バスバ10と回路基板20との接続部分に作用する応力を効果的に緩和することができる。
【0028】
ここで、接続部材40をバスバ10の上面10a側に接続したとすると、本実施形態と同様の弾性作用を得るためには、バスバ10と回路基板20との間の距離も同等に拡張する必要があり、装置の大型化に繋がり得る。この点、本実施形態によれば、接続部材40をバスバ10の下面10b側に接続していることで、接続部材40の長さの拡張を、バスバ10の厚みを利用して達成することができる。これにより、装置の小型化というメリットを得つつ、バスバ10と回路基板20との接続部分に作用する応力を効果的に緩和することができる。
【0029】
また、本実施形態において、接続部材40は、バスバ10の縁部から延出すると、ミアンダ形状からなる折り返し部41を経てバスバ10の厚み方向に折り曲げられている。
【0030】
かかる構成によれば、バスバ10と回路基板20との間の距離に加え、バスバ10の厚みに相当する距離が含まれることで、接続部材40に折り返し部41を形成するだけのスペースが生じ得る。接続部材40が単純な直線形状のみで構成される場合には、傾きによる応力緩和にはある程度の限度が生じ得るが、折り返し部41を含むことで弾性作用を更に得ることができるので、バスバ10と回路基板20との接続部分に作用する応力を効果的に緩和することができる。また、接続部材40がミアンダ形状からなる折り返し部41を備えるような形態であっても、バスバ10の厚みを利用して、このような形状を含めることができるので、装置の小型化を有効に図ることができる。
【0031】
なお、上述した実施形態では、接続部材40の折り返し部41は、回路基板20と接触しない範囲で形状が設定されている。しかしながら、図5に示すように、回路基板20を接続部材40の折り返し部41と接触するように取り付けることで、バスバ10に対する回路基板20の高さを、接続部材40の折り返し部41を利用して調節するようにしてもよい。
【0032】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1を模式的に示す側面図であり、図7は、図6に示すシャント抵抗式電流センサ1におけるバスバ10を模式的に示す上面図である。本実施形態に係るシャント抵抗式電流センサ1が、第1の実施形態のそれと相違する点は、接続部材40の形態である。以下、第1の実施形態と重複する構成についての説明は省略することとし、相違点を中心に説明を行うこととする。
【0033】
個々の接続部材40は、第1に実施形態と同様、バスバ10の下面10b側に接続されている。この接続部材40には、バスバ10の縁部から外側へと延出した後に、ミアンダ形状からなる折り返し部42が形成される。そして、接続部材40は、この折り返し部42を経た後に、バスバ10の厚み方向に折り曲げられると当該厚み方向に延在して回路基板20に接続される。
【0034】
ここで、本実施形態に係る折り返し部42は、バスバ10と平行な平面内でミアンダ形状が形成されており、その結果、接続部材40の全体の形状は、バスバ10と平行な平面と、バスバ10と垂直な平面とに含まれる3次元的な形状で構成されている。
【0035】
このように本実施形態によれば、接続部材40は、折り返し部42を含むことにより、第1の実施形態と同様、弾性作用を効果的に得ることができるので、バスバ10と回路基板20との接続部分に作用する応力を効果的に緩和することができる。また、弾性作用を担保する折り返し部42が、バスバ10と平行な平面内に形成されているので、折り返し部42の形成スペースをバスバ10の厚み方向に求める必要がなくなり、これをもって、バスバ10の厚み方向に折り曲げた後の接続部材40の長さを縮小することができるので、装置の小型化を有効に図ることができる。
【0036】
以上、本実施形態にかかるシャント抵抗式電流センサについて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の変更が可能である。例えば、バスバは、その一部をシャント抵抗部として含む形態であるが、これに限らず、その全部をシャント抵抗部として利用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 シャント抵抗式電流センサ
10 バスバ
11,12 貫通孔
20 回路基板
21 回路パターン
22 接続部
30 電圧検出IC
40 接続部材
41,42 折り返し部
70 バッテリ
71 バッテリポスト
72 固定ネジ
SR シャント抵抗部
W ワイヤーハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7