【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られた共重合ポリエチレンナフタレートの諸物性の測定は以下の方法により実施した。
【0035】
(1)固有粘度(IV)測定
常法に従って、溶媒であるオルトクロロフェノール中、35℃で測定した。
【0036】
(2)ガラス転移温度(Tg)測定
25℃で24時間減圧乾燥した共重合芳香族ポリエステルを示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定した。測定試料はアルミニウム製パン(TA Instruments社製)に約10mg計量し、窒素雰囲気下で測定した。
【0037】
(3)共重合率算出
本発明の製造方法により得られた共重合芳香族ポリエステル中の共重合率は、日本電子製JEOLA−600を用いて600MHzの
1H−NMRスペクトルを測定し、上記式(I)の芳香族ジオールに帰属するメチレン基を構成する水素原子(1分子あたり4(m+n)個=4p個とする。)のピーク面積をA、エチレングリコール中のメチレン基を構成する水素原子(1分子あたり4個)のピーク面積をB、ジエチレングリコール中のメチレン基を構成する水素原子(1分子あたり8個)のピーク面積をCとすると、
上記式(I)芳香族ジオールの共重合率は、
[A/4p]/([A/4p]+[B/4]+[C/8])=2A/(2A+2pB+pC)
で算出できる。同様にエチレングリコールの共重合率は、
2pB/(2A+2pB+pC)×100
で算出し、残りのジオール成分であると考えられるジエチレングリコールの共重合率は、100%からそれらの成分の共重合率を差し引いて算出した。
【0038】
(4)末端カルボキシル濃度(末端COOH)測定
共重合芳香族ポリエステルをベンジルアルコールに溶解して、0.1N−NaOHにて滴定した値であり、1×10
6g当たりのカルボキシル当量である。
【0039】
(5)流動性
共重合芳香族ポリエステルの流動性の指標としてメルトボリュームレート(MVR)を測定した。得られたペレットをISO 1133の規格に従い測定を行った。MVRの値が大きいほど流動性が良好で成形しやすく、逆にMVRの値が小さいほど流動性が悪く成形しにくいことを示す。
【0040】
(6)荷重たわみ温度測定
本発明により得られた共重合芳香族ポリエステルをISO 75の方法に従い測定を行った。
【0041】
(7)耐加水分解性
プレッシャークッカー槽と呼ばれる試験槽を使用して、成形品をその試験槽の中にて110℃×100時間処理し、その前後のIVを測定し、その保持率を算出した。
IV保持率(%)=(処理後のIV)/(処理前のIV)×100
IV保持率が95%以上のものを耐加水分解性良好と判断し○、90%以上95%未満のものを耐加水分解性がやや良好と判断し△、90%未満のものを耐加水分解性不良と判断し×とした。
【0042】
(8)溶融成形時の固有粘度の低下(ΔIV)測定
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた共重合芳香族ポリエステルはシリンダ温度265℃、金型温度70℃に設定し、比較例6〜7で得られたポリエチレンナフタレートはシリンダ温度300℃、金型温度80℃で射出成形した。本条件で成形した成形品のIVを測定し下記式を用いてΔIVを算出した。
ΔIV=(チップのIV)−(成形品のIV)
【0043】
(9)含有元素濃度(P,Ge)
共重合ポリエステルの成形品から蛍光X線(理学製、Rataflex RU200)で定法により測定した。
【0044】
[実施例1]
2価ジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを60重量部、2価ジオールとしてエチレングリコールを22重量部、さらには共重合成分として、ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体(上記式(II)で表される芳香族ジオール、以下同じ。)の含有量が99.1モル%、かつ3分子付加体(上記式(III)で表される芳香族ジオール、以下同じ。)の含有量が0.6モル%であるビスフェノールS誘導体(上記式(I)で表される芳香族ジオール、以下同じ。)を50重量部、エステル交換反応触媒として酢酸カルシウム一水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として20ミリモル%、酢酸マグネシウム四水塩を2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として50ミリモル%加え、0.08MPaの加圧下で反応温度が245℃となるように昇温しながらエステル交換反応を行った。反応温度が245℃になった時点で10分かけて系内を常圧に戻しさらに40分間反応を保持した。40分後に非晶性二酸化ゲルマニウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として60ミリモル%加え、さらに15分後にトリメチルホスフェートを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として70ミリモル%加えて反応させた。反応温度が250℃に到達した時点で反応生成物を重縮合反応槽移して重縮合反応を開始した。
【0045】
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで50分掛けて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度295℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から180分間が経過した時点で重縮合反応を終了して共重合ポリエチレンナフタレートを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度を測定し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ61ミリモル%、68ミリモル%であった。
【0046】
[実施例2]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ60ミリモル%、70ミリモル%であった。
【0047】
[実施例3]
ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体の含有量を95.8モル%、3分子付加体の含有量を2.1モル%に変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ59ミリモル%、71ミリモル%であった。
【0048】
[実施例4]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は実施例3と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン濃度はカルボン酸に対してそれぞれ58ミリモル%、67ミリモル%であった。
【0049】
[比較例1]
ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体の含有量を97.0モル%、3分子付加体の含有量を3.0モル%に変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ61ミリモル%、69ミリモル%であった。
【0050】
[比較例2]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は比較例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、更には流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ59ミリモル%、70ミリモル%であった。
【0051】
[比較例3]
ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体の含有量を88.0モル%、3分子付加体の含有量を9.8モル%に変更した以外は比較例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表1に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ62ミリモル%、68ミリモル%であった。
【0052】
【表1】
【0053】
[比較例4]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は比較例3と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、更には流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ60ミリモル%、71ミリモル%であった。
【0054】
[比較例5]
2価ジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを60重量部、2価ジオールとしてエチレングリコールを22重量部、さらには共重合成分として、ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体の含有量が99.1モル%、かつ3分子付加体の含有量が0.6モル%であるビスフェノールS誘導体を50重量部、エステル交換反応触媒として酢酸カルシウムと酢酸マグネシウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量としてそれぞれ20、70ミリモル%加え、反応温度が220℃となるように昇温しながら常圧にてエステル交換反応を行った。反応温度が220℃になった時点から40分間反応を保持し、40分後に二酸化ゲルマニウムを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として60ミリモル%加え、さらに15分後にトリメチルホスフェートを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として70ミリモル%加えて反応させた。反応温度が240℃に到達した時点で反応生成物を重縮合反応槽移して重縮合反応を開始した。
【0055】
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで50分掛けて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度295まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から180分間が経過した時点で重縮合反応を終了して共重合ポリエチレンナフタレートを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ61ミリモル%、69ミリモル%であった。
【0056】
[比較例6]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は比較例5と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、更には流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ58ミリモル%、72ミリモル%であった。
【0057】
[比較例7]
ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体の含有量を97.0モル%、3分子付加体の含有量を3.0モル%に変更した以外は比較例5と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ59ミリモル%、68ミリモル%であった。
【0058】
[比較例8]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は比較例7と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、更には流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ61ミリモル%、70ミリモル%であった。
【0059】
[比較例9]
ビスフェノールSエチレンオキサイド2分子付加体の含有量を88.0モル%、3分子付加体の含有量を9.8モル%に変更した以外は比較例5と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、さらには流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ58ミリモル%、69ミリモル%であった。
【0060】
[比較例10]
リン化合物をホスホノ酢酸トリエチルに変更した以外は比較例9と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基、共重合率、含有されているリン元素濃度・ゲルマニウム元素濃度を測定し、更には流動性、成形品の固有粘度、荷重たわみ温度、耐加水分解性を評価し、その結果を表2に示した。なお測定の結果、共重合ポリエチレンナフタレート中のゲルマニウム元素濃度、リン元素濃度はカルボン酸に対してそれぞれ60ミリモル%、69ミリモル%であった。
【0061】
【表2】