【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、2−ブロモ−1′−アセトナフトン、シクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩及び4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩の合成例を、参考例1〜3に示す。
【0033】
〔参考例1〕
<2−ブロモ−1′−アセトナフトン/トルエン溶液の調製>
1−アセトナフトン51.2g(0.300mol)及びメタノール70gからなる溶液に、18〜24℃にて、臭素48.5g(0.303mol)を1時間かけて滴下した。次いで、反応懸濁液を冷却後、濃縮物が101gになるまで減圧濃縮した。濃縮物をトルエン153g及び食塩水200gに分配し、トルエン層を食塩水200gで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥して、淡黄褐色透明の2−ブロモ−1′−アセトナフトン(0.300mol)/トルエン溶液を得た。
【0034】
〔参考例2〕
<シクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩の合成>
シクロヘキサンカルボニトリル69.4g(0.636mol)及び脱水エタノール31.4g(0.682mol)からなる溶液に、冷却下3〜13℃にて、塩化水素ガス34.5g(0.946mol)を1時間45分間かけて吹き込んだ。同温度で6時間撹拌後、4℃/6日間静置し、固化した反応液から、減圧下にて揮発分を除去して、白色結晶性固体のシクロヘキサンイミド酸エチルエステル・塩酸塩124.2g(0.648mol、収率101.9%)を得た。
該固体を粉砕し、氷冷下に振とうしながら、アンモニア18.3g(1.075mol)及び脱水エタノール110.3gからなる溶液を少量ずつ加えた後、氷冷下にて4時間、室温に戻して更に一晩撹拌した。この懸濁液を減圧濃縮し112.3gのウエット結晶を得た。該結晶をヘキサン/ジクロロメタン混合溶剤(1:2体積比)で洗浄後、減圧下に乾燥して、白色結晶状のシクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩102.4g(0.630mol、収率99.0%)を得た。
【0035】
〔参考例3〕
<4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩の合成>
4−ピリジンカルボニトリル104.2g(1.00mol)及びメタノール750mLからなる溶液に、室温下にて28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液19.3g(0.100mol)及びメタノール150mLからなる溶液を加え、15時間撹拌した。次いで、塩化アンモニウム58.8g(1.10mol)を加え、45〜50℃にて1時間45分間撹拌した。その後、21℃まで冷却し、不溶物をろ去して、ろ液を減圧下乾固し、白色固体を得た。該固体を粉砕し、アセトンで洗浄後、減圧下に乾燥して、白色粉末状の4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩145.7g(0.924mol、収率92.4%)を得た。
【0036】
〔
参考例4〕
<2−シクロヘキシル−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
シクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩48.8g(0.300mol)をN,N−ジメチルアセトアミド121gに45℃にて加温懸濁させ、炭酸カリウム112g(0.810mol)を加えて42〜45℃/1時間撹拌後、参考例1で調製した2−ブロモ−1′−アセトナフトン/トルエン溶液を43〜52℃にて52分間かけて滴下した。滴下終了後、68〜70℃にて2時間30分間撹拌した。
次いで、反応懸濁液を冷却後、水1Lと撹拌し、分液した有機層を水1Lで洗浄した。有機層が約半分の量になるまで減圧濃縮し結晶を析出させた。該結晶をろ取し、トルエンで洗浄した後、減圧下に乾燥して褐色粉末を得た。該粉末をアセトニトリル300mL及びエタノール150mLの混合溶剤より再結晶して、乳白色粉末29.3gを得た。
【0037】
得られた粉末の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、
1H NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp192−193℃
・TLC(シリカゲル,アセトン):Rf=0.65
・
1H NMR(DMSO-d
6):δ=1.06−2.03(m,11H),7.07−8.83(m,8H).
・MS(EI):m/z(%)=276(M
+,59),247(19),235(12),221(100),208(43),167(35),152(7),139(14),127(4),110(6).
これらのスペクトルデータから、得られた粉末は、化学式(IV)で示される2−シクロヘキシル−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。収率35.3%。
【0038】
【化5】
【0039】
〔
参考例5〕
<2−シクロヘキシル−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1の1−アセトナフトンを2−アセトナフトンに代えて、参考例1の方法に準拠して2−ブロモ−2′−アセトナフトン/トルエン溶液を調製した。
参考例4の2−ブロモ−1′−アセトナフトン/トルエン溶液を2−ブロモ−2′−アセトナフトン/トルエン溶液に代えて、
参考例4の方法に準拠して合成試験を行い、微黄褐色結晶を得た。
【0040】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、
1H NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp199−201℃
・TLC(シリカゲル,アセトン):Rf=0.64
・
1H NMR(DMSO-d
6):δ=1.24−2.00(m,11H),7.35−8.26(m,8H).
・MS(EI):m/z(%)=276(M
+,58),247(20),235(12),221(100),208(43),167(12),152(6),139(17),127(4),111(7).
これらのスペクトルデータから、得られた結晶は、化学式(V)で示される2−シクロヘキシル−4−(2−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。収率35.0%。
【0041】
【化6】
【0042】
〔実施例
1〕
<4−(1−ナフチル)−2−(4−ピリジル)イミダゾールの合成>
参考例4のシクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩を4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩に代えて、
参考例4の方法に準拠して合成試験を行い、ベージュ色粉末を得た。
【0043】
得られた粉末の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、
1H NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp173−175℃
・TLC(シリカゲル,アセトン):Rf=0.31
・
1H NMR(DMSO-d
6):δ=7.57−8.71(m).
・MS(EI):m/z(%)=271(M
+,100),243(4),167(45),139(22),118(4),105(4).
これらのスペクトルデータから、得られた粉末は、化学式(VI)で示される4−(1−ナフチル)−2−(4−ピリジル)イミダゾールであるものと同定した。収率25.2%。
【0044】
【化7】
【0045】
〔実施例
2〕
まず、
参考例4、5および実施例1において合成した4−ナフチルイミダゾール化合物と、これらとは別に2−フェニルイミダゾール(2PZ、四国化成工業製)を有効成分とする銅の酸化防止剤を各々調製した。次いで、該防止剤に銅を接触させることにより銅の表面に化成皮膜を形成させた。そして、銅に対する溶融半田の濡れ時間を測定して、イミダゾール化合物が作用する銅表面への酸化防止性能を評価した。この場合、溶融半田の濡れ時間が短い程、イミダゾール化合物の酸化防止性能が優れているものと判定される。
評価試験の詳細は、次のとおりである。
(1)酸化防止剤の調製
イミダゾール化合物、酸、金属塩及びハロゲン化合物を、表1記載の組成となるようにイオン交換水に溶解させた後、アンモニア水でpHを調整して酸化防止剤を調製した。
(2)表面処理方法
材質が金属銅の試験片(5mm×50mm×0.3mmの銅版)を脱脂し、次いでソフトエッチングを行い、所定温度の酸化防止剤に所定時間浸漬して、銅の表面に化成皮膜を形成させた後、水洗して乾燥した。
(3)濡れ時間の測定
表面処理を行った試験片を、ポストフラックス(JS−64MSS、弘輝製)に浸漬して、半田濡れ性試験器(SAT−2000、レスカ製)を使用して半田濡れ時間(秒)を測定した。使用した半田は錫−鉛系共晶半田(H63A−B20、千住金属工業製)であり、測定条件は半田温度240℃、浸漬深さ2mm、浸漬スピード16mm/秒とした。
なお、半田濡れ時間を測定した試験片は、(A)表面処理直後のものと、(B)温度40℃、湿度90%RHの恒温恒湿器に入れて96時間放置したものと、(C)さらに200℃で10分間加熱したものである。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した試験結果によれば、本願発明の4−ナフチルイミダゾール化合物を有効成分として含有する酸化防止剤は、銅の表面に耐湿性及び耐熱性に優れた化成皮膜を形成させることができるので、銅表面の酸化防止に有用である。