特許第5918079号(P5918079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59180794−ナフチルイミダゾール化合物及び酸化防止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918079
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】4−ナフチルイミダゾール化合物及び酸化防止剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20160428BHJP
   C09K 15/30 20060101ALI20160428BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C07D401/04CSP
   C09K15/30
   B23K35/14 C
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-186339(P2012-186339)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-43412(P2014-43412A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】平尾 浩彦
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−297685(JP,A)
【文献】 特開2011−098890(JP,A)
【文献】 特開昭57−009866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/00−421/14
C09K 15/00− 15/34
B23K 35/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示される4−ナフチルイミダゾール化合物。
【化1】
【請求項2】
請求項1記載の4−ナフチルイミダゾール化合物を含有することを特徴とする銅又は銅合金の酸化防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な4−ナフチルイミダゾール化合物及び該イミダゾール化合物を含有する銅又は銅合金の酸化防止剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に類似のイミダゾール化合物として、例えば、特許文献1には、化学式(II)で示される4−(1−ナフチル)−2−フェニルイミダゾール及び化学式(III)で示される4−(2−ナフチル)−2−フェニルイミダゾールが開示されている。しかしながら、この文献には本発明のイミダゾール化合物の開示はない。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−244390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な4−ナフチルイミダゾール化合物及び該イミダゾール化合物を含有する銅又は銅合金の酸化防止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化学式(I)で示される新規な4−ナフチルイミダゾール化合物を合成し得ることを認め、また該イミダゾール化合物が銅又は銅合金表面の酸化防止効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、第1の発明は化学式(I)で示される4−ナフチルイミダゾール化合物であり、第2の発明は該イミダゾール化合物を含有することを特徴とする銅又は銅合金の酸化防止剤である。
【0007】
【化2】
【発明の効果】
【0008】
本発明の4−ナフチルイミダゾール化合物は、金属、特に銅又は銅合金(以下、両者を併せて単に銅と云う)の表面の酸化防止剤や、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤として、また医農薬分野の中間原料としても有用なものである。また、本発明の4−ナフチルイミダゾール化合物を含有する銅の酸化防止剤は、銅表面をはんだ付けする際のはんだ付け性を良好なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の4−ナフチルイミダゾール化合物は
−(1−ナフチル)−2−(4−ピリジル)イミダゾール及び
4−(2−ナフチル)−2−(4−ピリジル)イミダゾールである。
【0010】
本発明の4−ナフチルイミダゾール化合物は、公知の方法に準拠して合成することが出来る。例えば、反応式(A)に示されるように、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物及びアミジン化合物を脱ハロゲン化水素剤の存在下、有機溶媒中で加熱反応をさせることにより合成することができる。
【0011】
【化3】
(式中、Aは前記と同様であり、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0012】
前述の反応においてアミジン化合物の使用量は、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物に対して、0.8〜1.5倍モルが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1倍モルの割合とすればよい。脱ハロゲン化水素剤の使用量は、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物に対して、1〜10倍当量の割合が好ましい。
【0013】
前記の2位ハロゲン化アセトナフトン化合物としては、2−クロロ−1′−アセトナフトン、2−ブロモ−1′−アセトナフトン、2−ヨード−1′−アセトナフトン、2−クロロ−2′−アセトナフトン、2−ブロモ−2′−アセトナフトン及び2−ヨード−2′−アセトナフトンが挙げられる。
【0014】
これらの2位ハロゲン化アセトナフトン化合物は、アセトナフトン化合物の2位をハロゲン化することにより合成することができる。2位ハロゲン化の内、2位塩素化及び2位ヨウ素化も可能であるが、アセトナフトン化合物1モルに対し、1モルの臭素を反応させる2位臭素化が最も簡便である。
【0015】
前記のアセトナフトン化合物としては、1−アセトナフトン及び2−アセトナフトンが挙げられる。これらは公知の化合物であり、試薬として市販されているものを使用することができる。
【0016】
前記のアミジン化合物は、公知の方法に準拠して合成することができる
【0017】
【0018】
−ピリジンカルボキサミジンは、反応式(B)に示されるように、ナトリウムメトキシドを触媒として4−ピリジンカルボニトリルをメタノールと反応させ、次いで塩化アンモニウムと反応させることによって塩酸塩として合成することができる。
【0019】
【化4】
【0020】
4−ナフチルイミダゾール化合物の合成には、上記の反応で得られる4−ピリジンカルボキサミジン・塩酸塩を使用することができるが、フリー体(4−ピリジンカルボキサミジン)にしたもの及び臭化水素酸塩等の無機酸塩や酢酸塩等の有機酸塩も使用することができる。
また、前記の4−ピリジンカルボニトリルは公知の物質であり、試薬として市販されているものを使用することができる。
【0021】
前記の脱ハロゲン化水素剤としては、公知のものを制限なく使用できる。このような脱ハロゲン化水素剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような無機アルカリ類、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)のような有機塩基類、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシドのような金属アルコキシド化合物などが挙げられる。
【0022】
前記の有機溶媒としては、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物及びアミジン化合物を溶解することができ、かつ反応に関与しないものであれば公知のものを制限なく使用できる。このような溶媒として、例えば、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などのアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられ、これらの溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
反応温度については、室温〜還流温度とすることが好ましく、反応時間については、1〜10時間とすることが好ましい。反応は、通常大気圧下で行えばよい。
【0024】
以上の反応条件下で生成した4−ナフチルイミダゾール化合物は、通常の後処理によって単離することができる。
例えば、反応終了後の反応混合物を水層と有機溶媒層に分配し、有機溶媒層を水で洗浄することにより結晶として析出する粗製の4−ナフチルイミダゾール化合物を得ることができ、それを再結晶操作等により精製することができる。
【0025】
この4−ナフチルイミダゾール化合物は、水に溶解させて調製される銅の酸化防止剤の有効成分として使用される。該イミダゾール化合物は酸化防止剤中に、0.01〜10重量%の割合、好ましくは0.1〜5重量%の割合で含有される。該イミダゾール化合物の含有割合が0.01重量%より少ないと、銅表面に形成される化成皮膜の膜厚が薄くなり、銅表面の酸化を十分に防止することができない。また、10重量%より多い場合には酸化防止剤中に該イミダゾール化合物が溶け残ったり、あるいは完溶したとしても再析出する虞があり好ましくない。
【0026】
本発明の実施において、当該イミダゾール化合物を水に溶解(水溶液化)するに当たっては、一般的には、酸として有機酸又は無機酸を使用するが、少量の有機溶剤を併用しても良い。この際に使用される代表的な有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、グルコン酸、アクリル酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−{2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸、3−プロポキシプロピオン酸、3−ブトキシプロピオン酸、安息香酸、パラニトロ安息香酸、パラトルエンスルホン酸、サリチル酸、ピクリン酸、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、酒石酸、アジピン酸等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらの酸は、酸化防止剤中に0.1〜50重量%の割合、好ましくは1〜30重量%の割合で含有される。
【0027】
また、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールあるいはアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコール等の水と自由に混和するものが適している。
【0028】
本発明の酸化防止剤には、銅の表面における化成皮膜の形成速度を速めるために銅化合物を添加することができ、また形成された化成皮膜の耐熱性を更に向上させるために亜鉛化合物を添加しても良い。
前記銅化合物の代表的なものとしては、酢酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化銅、水酸化銅、リン酸銅、硫酸銅、硝酸銅等が挙げられる。
また、前記亜鉛化合物の代表的なものとしては、酸化亜鉛、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、蓚酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛等が挙げられ、何れも酸化防止剤中に0.01〜10重量%の割合、好ましくは0.02〜5重量%の割合で含有させれば良い。
【0029】
本発明の酸化防止剤には、化成皮膜の形成速度及び該皮膜の耐熱性を更に向上させるために、ハロゲン化合物を酸化防止剤中に0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の含有割合となるように添加することができる。ハロゲン化合物としては、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、ヨウ化ナトリム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム等が挙げられる。
【0030】
本発明の酸化防止剤を用いて銅の表面を処理する際には、酸化防止剤のpHを調整することが好ましい。このpHは、酸化防止剤の組成(成分の種類と含有量)や後述する処理温度と処理時間に応じて適宜設定される。
pHを下げる場合には、前述の有機酸又は無機酸を使用することができ、pHを上げる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの他、アンモニアあるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類等の緩衝作用を有する物質が好ましく使用できる。
【0031】
本発明の酸化防止剤を用いて銅の表面を処理する際の条件としては、酸化防止剤の液温を10〜70℃、接触時間を1秒〜10分とすることが好ましい。接触方法としては、浸漬、噴霧、塗布等の方法が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、2−ブロモ−1′−アセトナフトン、シクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩及び4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩の合成例を、参考例1〜3に示す。
【0033】
〔参考例1〕
<2−ブロモ−1′−アセトナフトン/トルエン溶液の調製>
1−アセトナフトン51.2g(0.300mol)及びメタノール70gからなる溶液に、18〜24℃にて、臭素48.5g(0.303mol)を1時間かけて滴下した。次いで、反応懸濁液を冷却後、濃縮物が101gになるまで減圧濃縮した。濃縮物をトルエン153g及び食塩水200gに分配し、トルエン層を食塩水200gで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥して、淡黄褐色透明の2−ブロモ−1′−アセトナフトン(0.300mol)/トルエン溶液を得た。
【0034】
〔参考例2〕
<シクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩の合成>
シクロヘキサンカルボニトリル69.4g(0.636mol)及び脱水エタノール31.4g(0.682mol)からなる溶液に、冷却下3〜13℃にて、塩化水素ガス34.5g(0.946mol)を1時間45分間かけて吹き込んだ。同温度で6時間撹拌後、4℃/6日間静置し、固化した反応液から、減圧下にて揮発分を除去して、白色結晶性固体のシクロヘキサンイミド酸エチルエステル・塩酸塩124.2g(0.648mol、収率101.9%)を得た。
該固体を粉砕し、氷冷下に振とうしながら、アンモニア18.3g(1.075mol)及び脱水エタノール110.3gからなる溶液を少量ずつ加えた後、氷冷下にて4時間、室温に戻して更に一晩撹拌した。この懸濁液を減圧濃縮し112.3gのウエット結晶を得た。該結晶をヘキサン/ジクロロメタン混合溶剤(1:2体積比)で洗浄後、減圧下に乾燥して、白色結晶状のシクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩102.4g(0.630mol、収率99.0%)を得た。
【0035】
〔参考例3〕
<4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩の合成>
4−ピリジンカルボニトリル104.2g(1.00mol)及びメタノール750mLからなる溶液に、室温下にて28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液19.3g(0.100mol)及びメタノール150mLからなる溶液を加え、15時間撹拌した。次いで、塩化アンモニウム58.8g(1.10mol)を加え、45〜50℃にて1時間45分間撹拌した。その後、21℃まで冷却し、不溶物をろ去して、ろ液を減圧下乾固し、白色固体を得た。該固体を粉砕し、アセトンで洗浄後、減圧下に乾燥して、白色粉末状の4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩145.7g(0.924mol、収率92.4%)を得た。
【0036】
参考例4
<2−シクロヘキシル−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
シクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩48.8g(0.300mol)をN,N−ジメチルアセトアミド121gに45℃にて加温懸濁させ、炭酸カリウム112g(0.810mol)を加えて42〜45℃/1時間撹拌後、参考例1で調製した2−ブロモ−1′−アセトナフトン/トルエン溶液を43〜52℃にて52分間かけて滴下した。滴下終了後、68〜70℃にて2時間30分間撹拌した。
次いで、反応懸濁液を冷却後、水1Lと撹拌し、分液した有機層を水1Lで洗浄した。有機層が約半分の量になるまで減圧濃縮し結晶を析出させた。該結晶をろ取し、トルエンで洗浄した後、減圧下に乾燥して褐色粉末を得た。該粉末をアセトニトリル300mL及びエタノール150mLの混合溶剤より再結晶して、乳白色粉末29.3gを得た。
【0037】
得られた粉末の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp192−193℃
・TLC(シリカゲル,アセトン):Rf=0.65
1H NMR(DMSO-d6):δ=1.06−2.03(m,11H),7.07−8.83(m,8H).
・MS(EI):m/z(%)=276(M+,59),247(19),235(12),221(100),208(43),167(35),152(7),139(14),127(4),110(6).
これらのスペクトルデータから、得られた粉末は、化学式(IV)で示される2−シクロヘキシル−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。収率35.3%。
【0038】
【化5】
【0039】
参考例5
<2−シクロヘキシル−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1の1−アセトナフトンを2−アセトナフトンに代えて、参考例1の方法に準拠して2−ブロモ−2′−アセトナフトン/トルエン溶液を調製した。
参考例4の2−ブロモ−1′−アセトナフトン/トルエン溶液を2−ブロモ−2′−アセトナフトン/トルエン溶液に代えて、参考例4の方法に準拠して合成試験を行い、微黄褐色結晶を得た。
【0040】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp199−201℃
・TLC(シリカゲル,アセトン):Rf=0.64
1H NMR(DMSO-d6):δ=1.24−2.00(m,11H),7.35−8.26(m,8H).
・MS(EI):m/z(%)=276(M+,58),247(20),235(12),221(100),208(43),167(12),152(6),139(17),127(4),111(7).
これらのスペクトルデータから、得られた結晶は、化学式(V)で示される2−シクロヘキシル−4−(2−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。収率35.0%。
【0041】
【化6】
【0042】
〔実施例
<4−(1−ナフチル)−2−(4−ピリジル)イミダゾールの合成>
参考例4のシクロヘキサンカルボキサミジン塩酸塩を4−ピリジンカルボキサミジン塩酸塩に代えて、参考例4の方法に準拠して合成試験を行い、ベージュ色粉末を得た。
【0043】
得られた粉末の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp173−175℃
・TLC(シリカゲル,アセトン):Rf=0.31
1H NMR(DMSO-d6):δ=7.57−8.71(m).
・MS(EI):m/z(%)=271(M+,100),243(4),167(45),139(22),118(4),105(4).
これらのスペクトルデータから、得られた粉末は、化学式(VI)で示される4−(1−ナフチル)−2−(4−ピリジル)イミダゾールであるものと同定した。収率25.2%。
【0044】
【化7】
【0045】
〔実施例
まず、参考例4、5および実施例1において合成した4−ナフチルイミダゾール化合物と、これらとは別に2−フェニルイミダゾール(2PZ、四国化成工業製)を有効成分とする銅の酸化防止剤を各々調製した。次いで、該防止剤に銅を接触させることにより銅の表面に化成皮膜を形成させた。そして、銅に対する溶融半田の濡れ時間を測定して、イミダゾール化合物が作用する銅表面への酸化防止性能を評価した。この場合、溶融半田の濡れ時間が短い程、イミダゾール化合物の酸化防止性能が優れているものと判定される。
評価試験の詳細は、次のとおりである。
(1)酸化防止剤の調製
イミダゾール化合物、酸、金属塩及びハロゲン化合物を、表1記載の組成となるようにイオン交換水に溶解させた後、アンモニア水でpHを調整して酸化防止剤を調製した。
(2)表面処理方法
材質が金属銅の試験片(5mm×50mm×0.3mmの銅版)を脱脂し、次いでソフトエッチングを行い、所定温度の酸化防止剤に所定時間浸漬して、銅の表面に化成皮膜を形成させた後、水洗して乾燥した。
(3)濡れ時間の測定
表面処理を行った試験片を、ポストフラックス(JS−64MSS、弘輝製)に浸漬して、半田濡れ性試験器(SAT−2000、レスカ製)を使用して半田濡れ時間(秒)を測定した。使用した半田は錫−鉛系共晶半田(H63A−B20、千住金属工業製)であり、測定条件は半田温度240℃、浸漬深さ2mm、浸漬スピード16mm/秒とした。
なお、半田濡れ時間を測定した試験片は、(A)表面処理直後のものと、(B)温度40℃、湿度90%RHの恒温恒湿器に入れて96時間放置したものと、(C)さらに200℃で10分間加熱したものである。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した試験結果によれば、本願発明の4−ナフチルイミダゾール化合物を有効成分として含有する酸化防止剤は、銅の表面に耐湿性及び耐熱性に優れた化成皮膜を形成させることができるので、銅表面の酸化防止に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、金属、特に銅(銅合金を含む)の表面の酸化防止剤や、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤として、また医農薬分野の中間原料としても有用な4−ナフチルイミダゾール化合物を提供することができる。また、銅表面をはんだ付けする際のはんだ付け性を良好なものとする酸化防止剤を提供することができる。