特許第5918085号(P5918085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918085
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】スプリンクラ消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/40 20060101AFI20160428BHJP
   A62C 35/62 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   A62C37/40
   A62C35/62
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-192430(P2012-192430)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46031(P2014-46031A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中川 治靖
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−233894(JP,A)
【文献】 特開2010−069066(JP,A)
【文献】 特開2006−280643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/40
A62C 35/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予作動弁と、
該予作動弁の二次側に設けられ、スプリンクラヘッドが接続される二次側配管と、
前記スプリンクラヘッドが防護する区画の火災を検出する火災検出手段と、
前記二次側配管に接続されて平常時は前記二次側配管内を負圧にする真空ポンプと、
を具備する予作動式のスプリンクラ消火設備において、
前記スプリンクラヘッドは、平常時は前記スプリンクラヘッドの本体をカバーし、火災時は火災の熱で前記スプリンクラヘッドの本体から落下するコンシールド部と、該コンシールド部の落下を検出するコンシールド部落下検出手段と、を有し、
前記火災検出手段と前記コンシールド部落下検出手段の両方が作動したときに前記予作動弁を開放するように制御する第1の制御手段を有し、
前記スプリンクラヘッドが開栓方向に付勢する付勢手段を有しなくても火災時に消火開始できるようにした
ことを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記二次側配管と前記真空ポンプとの間に介在する真空配管を電動で開閉する開閉弁と、前記火災検出手段と前記コンシールド部落下検出手段の両方が作動したとき前記開閉弁を閉止するように制御する第2の制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記二次側配管と前記真空ポンプとの間に介在する真空配管に、前記真空ポンプの吸引力に抗して前記二次側配管方向へ弁体を付勢して開弁する付勢手段と、前記予作動弁が開放して前記二次側配管側から所定の水圧が加わると閉止する弁体と、を具備する逆止弁を有することを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項4】
前記火災検出手段と前記コンシールド部落下検出手段の両方が作動したときに、前記真空ポンプの運転を停止するように制御する第3の制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項5】
前記第1〜3の制御手段は、前記制御条件から火災検出手段の作動を除き、前記コンシールド部落下検出手段の作動を制御条件とする単独モードを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項6】
前記予作動弁の一次側または二次側の配管に、予作動弁開放時の放水流量を所定の流量に制限する流量制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスプリンクラ消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関し、特に、予作動弁の二次側配管を負圧状態にした予作動式のスプリンクラ消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管内を圧縮気体で充填し、その二次側配管の基端側に予作動弁を設けた、乾式加圧型の予作動式スプリンクラ消火設備がある。このようなスプリンクラ消火設備は、火災発生時、スプリンクラヘッドと同じ防護区画に設置された火災検出手段である火災感知器の作動、あるいは、火災検出手段とスプリンクラヘッド作動検出手段の両方の作動によって、予作動弁が開放し、二次側配管が充水されるように構成されている。
【0003】
このようなスプリンクラ消火設備では、二次側配管が常時は充水されておらず、スプリンクラヘッドが破損しただけでは予作動弁が開放しないので、火災でもないのに水が漏れるような水損を生じにくい。
【0004】
しかしながら、竣工時や定期点検等で通水試験を行った後に二次側配管を排水しても、スプリンクラヘッドが接続される立ち下がり管部分に水が残る場合がある。立ち下がり管に水が残ると、配管内の酸素と反応して立ち下がり管部分が腐食することがあり、また、スプリンクラヘッドが破損した場合に立ち下がり管に残った水が漏れて水損を起こすことがある。
【0005】
そこで、二次側配管に真空ポンプを接続し、配管内を負圧にした予作動式スプリンクラ消火設備が提案されている(例えば特許文献1参照)。この負圧型予作動式スプリンクラ消火設備では、二次側配管内は圧縮気体の代わりに負圧空気となるので、前述のような腐食や漏水が起こりにくい。このような従来の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備では、スプリンクラヘッド作動検出手段として、二次側配管内が所定の圧力以上となったときに、あるいは、二次側配管内の圧力上昇率が所定値以上となったときに、作動する圧力検出手段が開示されている(特許文献1及び2を参照)。
【0006】
一方、従来より、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管内を加圧水で充填し、その二次側配管の基端側に予作動弁を設けた、湿式加圧型の予作動式スプリンクラ消火設備がある。このようなスプリンクラ消火設備は、火災発生時、スプリンクラヘッドと同じ防護区画に設置された火災検出手段である火災感知器の作動、あるいは、火災検出手段とスプリンクラヘッド作動検出手段の両方の作動によって、予作動弁が開放し、二次側配管が充水されるように構成されている。
【0007】
このようなスプリンクラ消火設備では、スプリンクラヘッドが破損しただけでは予作動弁が開放しないので、加圧送水装置が始動することはない。しかしながら、二次側配管が常時は充水されているため、火災でもないのに配管内の水が漏れて水損を生じる虞があった。
【0008】
そこで、二次側配管に真空ポンプを接続し、配管内を負圧にした湿式の予作動式スプリンクラ消火設備が提案されている(例えば特許文献3参照)。このようなスプリンクラ消火設備では、二次側配管内は負圧水となるので、配設した配管の総落差抵抗を上回る吸引が行われている限り、前述のような漏水は起こりにくい。
【0009】
ところで、従来の閉鎖型のスプリンクラヘッドは、感熱分解機構に支持されて内部の放水口を閉止する弁体を備える。そして、火災の熱によって感熱分解機構が作動して落下すると同時に前記弁体も落下し、スプリンクラヘッド内部の放水口が開栓されて放水を行うものである。
【0010】
しかしながら、上記したような従来の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備に、従来の閉鎖型スプリンクラヘッドを設置した場合、火災によってスプリンクラヘッドの感熱分解機構が作動しても二次側配管内が負圧である為、弁体が二次側配管側に吸引されて開栓しない。二次側配管を充水しない乾式であろうと、二次側配管を充水する湿式であろうと、同様である。すなわち、二次側配管内の圧力は上昇しない。
【0011】
このような場合、二次側配管内が所定の圧力以上、あるいは、二次側配管内の圧力上昇率が所定値以上、となったことによってスプリンクラヘッドの作動を検出することはできない。
【0012】
そこで、火災によって感熱分解機構が作動したときに内部の弁体を開栓する為に、この弁体を二次側配管内の負圧に抗して開栓方向に常時付勢する付勢手段を備えたスプリンクラヘッドが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0013】
このような付勢手段を備えたスプリンクラヘッドを用いれば、火災時は二次側配管内の負圧に抗して開栓することができる。したがって、二次側配管内が所定の圧力以上、あるいは、二次側配管内の圧力上昇率が所定値以上、となったことによってスプリンクラヘッドの作動を検出することも可能となる。
【0014】
一方、スプリンクラヘッド作動の有無にかかわらず、火災感知器が作動したことによって予作動弁を開放するようなものもある(例えば特許文献3を参照)。
このようなスプリンクラ消火設備は、火災発生時に作動したスプリンクラヘッドから放水可能とする為に、真空ポンプからの配管を閉止するなどして、二次側配管の吸引を停止せねばならない。しかしながら、火災感知器は火災以外の要因によって誤作動する場合があり、このようなときにスプリンクラヘッドが破損すると、加圧送水装置が始動し、大きな水損を生じる虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実公平6−26292号公報
【特許文献2】特開2010−233894号公報
【特許文献3】再公表特許WO00−61238号公報
【特許文献4】特開平11−206908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、常時は二次側配管内を負圧とした予作動式スプリンクラ消火設備において、かかる問題を解決するために成されたものである。
【0017】
そして、常時開栓方向に付勢する付勢手段を有する特殊なスプリンクラヘッドを用いることなく、簡単な構成で火災によるスプリンクラヘッドの作動を速やかに検出して早期に消火開始できるスプリンクラ消火設備を得ることを目的とする。
【0018】
また、火災感知器が誤作動したときであっても、スプリンクラヘッドが破損したときに、破損したスプリンクラヘッドから水が漏れないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、予作動弁と、該予作動弁の二次側に設けられ、スプリンクラヘッドが接続される二次側配管と、前記スプリンクラヘッドが防護する区画の火災を検出する火災検出手段と、前記二次側配管に接続されて平常時は前記二次側配管内を負圧にする真空ポンプと、を具備する予作動式のスプリンクラ消火設備において、前記スプリンクラヘッドは、平常時は前記スプリンクラヘッドの本体をカバーし、火災時は火災の熱で前記スプリンクラヘッドの本体から落下するコンシールド部と、該コンシールド部の落下を検出するコンシールド部落下検出手段と、を有し、前記火災検出手段と前記コンシールド部落下検出手段の両方が作動したときに前記予作動弁を開放するように制御する第1の制御手段を有し、前記スプリンクラヘッドが開栓方向に付勢する付勢手段を有しなくても火災時に消火開始できるようにしたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記二次側配管と前記真空ポンプとの間に介在する真空配管を電動で開閉する開閉弁と、前記火災検出手段と前記コンシールド部落下検出手段の両方が作動したとき前記開閉弁を閉止するように制御する第2の制御手段を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記二次側配管と前記真空ポンプとの間に介在する真空配管に、前記真空ポンプの吸引力に抗して前記二次側配管方向へ弁体を付勢して開弁する付勢手段と、前記予作動弁が開放して前記二次側配管側から所定の水圧が加わると閉止する弁体と、を具備する逆止弁を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記火災検出手段と前記コンシールド部落下検出手段の両方が作動したときに、前記真空ポンプの運転を停止するように制御する第3の制御手段を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記第1〜3の制御手段が、前記制御条件から火災検出手段の作動を除き、前記コンシールド部落下検出手段の作動を制御条件とする単独モードを有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記予作動弁の一次側または二次側の配管に、予作動弁開放時の放水流量を所定の流量に制限する流量制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項1に記載の構成によれば、コンシールド部落下検出手段と火災検出手段の両方が作動したときに予作動弁を開放するので、スプリンクラヘッドが内部の弁体を開栓方向に付勢する付勢手段を有しないものであっても、火災時に放水して消火することができる。また、スプリンクラヘッドが破損したときの水損を防止出来る。
【0026】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項2に記載の構成によれば、コンシールド部落下検出手段と火災検出手段の両方が作動したときに、予作動弁を開放するとともに、開閉弁が真空配管を閉止するので、真空ポンプに消火用水が流れ込むことがなく、真空ポンプに高い負荷がかかって壊れることがない。
【0027】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項3に記載の構成によれば、予作動弁が開放されたとき、二次側配管の水圧で真空配管に設けた逆止弁を閉止するので、真空ポンプに消火用水が流れ込むことがなく、真空ポンプに高い負荷がかかって壊れることがない。
【0028】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項4に記載の構成によれば、コンシールド部落下検出手段と火災検出手段の両方が作動したときに真空ポンプの運転を停止するので、真空ポンプに高い負荷がかかって壊れることがない。また、真空配管に設けた開閉弁または逆止弁が閉止して真空配管が閉塞されても、真空ポンプの運転を停止するので閉切運転とはならず、真空配管及び真空ポンプに高い負荷がかかって壊れることがない。
【0029】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項5に記載の構成によれば、自動火災報知設備の点検や改修工事等によって火災検出手段が機能していないときであっても、単独モードとし、コンシールド部落下検出手段によって火災を監視し、消火することが出来る。
【0030】
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項6に記載の構成によれば、二次側配管が負圧空気であっても、加圧送水装置を流れる消火用水の流量は、二次側配管から吸引されても所定の流量に制限されるので、過流量によるウォーターハンマの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施の形態1に係る乾式のスプリンクラ消火設備の構成図である。
図2】実施の形態2に係る湿式のスプリンクラ消火設備の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備について、図1に基づいて説明する。
<スプリンクラ消火設備の構成>
まず、本実施の形態1の構成を説明する。
【0033】
本実施の形態のスプリンクラ消火設備は、平常時は二次側配管12を充水せずに負圧空気とする、乾式の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備である。
【0034】
そして、スプリンクラヘッド2、予作動弁22、一次側配管11、二次側配管12、真空配管14、真空ポンプ24、開閉弁31、真空スイッチ53、加圧送水装置21、流量制御手段としての定流量弁23、消火水槽10、中継器51、消火システム制御盤5、消火ポンプ制御盤6、及び、真空ポンプ制御盤52、等から構成される。
【0035】
火災を監視して消火する区画である防護区画1には、複数のスプリンクラヘッド2が設けられる。複数のスプリンクラヘッド2は各々立ち下がり配管13に接続される。また、立ち下がり配管13のそれぞれは、平常時は充水されない二次側配管12に接続される。
【0036】
この二次側配管12の一方の端部(基端側)は、平常時は閉止しており火災時に電気的に開放される予作動弁22の一方の端部(二次側)に接続される。予作動弁22の他方の端部(一次側)は、一次側配管11の一方の端部に接続される。また、一次側配管11の他方の端部(基端側)は、火災発生時の送水流量を所定の値に制限する流量制御手段としての定流量弁23を介して、加圧送水装置21の吐出口に接続される。
【0037】
なお、この実施の形態では、定流量弁23を予作動弁22の一次側に設けたが、予作動弁22の二次側に設けても良い。
【0038】
一方、二次側配管12の他方の端部は、末端試験弁25の一方の端部に接続される。末端試験弁25の他方の端部には、排水配管16が接続される。スプリンクラ消火設備の水漏れ試験等によって二次側配管12に充填された水は、末端試験弁25及び予作動弁22に備えた図示しない排水弁を開くことにより、外部に排出される。通常の監視状態においては、末端試験弁25は閉じられた状態となる。
【0039】
また、二次側配管12には、真空配管14の一方の端部が接続される。真空配管14の他方の端部には真空ポンプ24が接続され、平常時は真空配管14を介して二次側配管12を負圧にする。
【0040】
この真空配管14には、後述する開閉弁31が介在するように設けられる。真空配管14には、真空スイッチ53が接続され、真空配管14の内圧を所定の値以下とするように真空ポンプ制御盤52を介して、真空ポンプ24を制御する。
【0041】
スプリンクラヘッド2は、火災の熱によって落下するコンシールド部2aと、コンシールド部2aが落下したときに作動する、コンシールド部落下検出手段であるコンシールド部落下検出スイッチ2bを備える、公知のスプリンクラヘッドである。詳しくは特許第3925596号公報で開示しているので、その説明を省略するが、前記特許公報の説明が援用される。このコンシールド部落下検出スイッチ2bは、中継器51を介して消火システム制御盤5に電気的に接続され、コンシールド部落下信号を消火システム制御盤5へ送出する。
【0042】
また、火災を監視する自動火災報知設備として、火災検出手段としての火災感知器3と火災受信機4が設けられる。防護区画1には、防護区画1内で発生した火災を監視する火災感知器3を設け、この火災感知器3は火災受信機4と電気的に接続される。
【0043】
そして、火災感知器3の火災発報を受信した火災受信機4は、火災判断アルゴリズム(例えば、火災受信機の技術上の規格を定める総務省令に規定されている、周知の蓄積機能等)によって火災判断を行い、火災と判断したときに火災信号を消火システム制御盤5へ送出する。この火災判断アルゴリズムは火災感知器3内に備えても良い。
【0044】
なお、一般に火災感知器3は、火災発報したときにその状態を自己保持するものが多い。故に、一過性のノイズ等によって火災感知器3が誤作動した場合であっても、多くは火災発報の状態を自己保持する。したがって、火災受信機4における火災判断は、火災感知器3の火災発報信号を単に遅延するような安易なものであってはならない。そのようなものを設けても、誤作動の顕在化が遅くなるだけに過ぎないからである。
【0045】
消火システム制御盤5は、中継器51を介して、予作動弁22に接続される。具体的には、予作動弁22を駆動する電動のパイロット弁である遠隔起動弁22bおよび予作動弁22の開放による消火用水の通水を検知する流水検知手段としての流水信号スイッチ22aと電気的に接続される。そして、さらに、中継器51を介して、開閉弁31、スプリンクラヘッド2のコンシールド部落下検出スイッチ2b、とも電気的に接続される。
【0046】
消火システム制御盤5は、中継器51を介してスプリンクラヘッド2のコンシールド部落下検出スイッチ2bからのコンシールド部落下信号を受信する。
【0047】
なお、中継器51を設けず、中継器51に接続する上記機器を直接消火システム制御盤5へ電気的に接続するように構成しても良く、適宜選択される。
【0048】
消火システム制御盤5は、コンシールド部落下信号と火災受信機4からの火災信号によって予作動弁22を制御する、図示しない第1の制御手段を備える。
【0049】
また、消火システム制御盤5は、前記コンシールド部落下信号と火災受信機4からの火災信号によって開閉弁31を制御する、図示しない第2の制御手段を備える。この開閉弁31は、二次側配管12と真空ポンプ24との間に介在する真空配管14に設けられた電動の開閉弁である。
【0050】
なお、この開閉弁31は、電動の開閉弁に代えて、予作動弁22の開放に連動して閉止するように制御されるメカニカルな弁としても良い。
【0051】
例えば、内部の弁体を二次側配管12の負圧に抗して開弁する付勢手段と、二次側配管12側から所定の水圧が加わると閉止する弁体と、を有する逆止弁としても良い。このように構成すると、平常時は前記付勢手段によって開弁して、真空ポンプ24によって二次側配管12を吸引して負圧に保つことが出来る。また、火災時は、予作動弁22が開放されて消火用水が二次側配管12へ圧送されてくると、その水圧によって閉止する。開閉弁31をこのように構成した場合は、先に述べた第2の制御手段は不要である。
【0052】
また、消火システム制御盤5は、前記コンシールド部落下信号と火災受信機4からの火災信号によって真空ポンプ24を制御する、図示しない第3の制御手段を備える。
【0053】
上記第1〜3の制御手段は、消火システム制御盤5内部の制御回路として個々に設けても良いが、一体化した制御装置、例えばCPUとソフトウェアによって制御する制御装置として設けても良く、適宜選択される。
【0054】
消火ポンプ制御盤6は、加圧送水装置21、一次側配管11に設けられる図示しない圧力検出手段と電気的に接続される。平常時、一次側配管11は所定の圧力で充水されており、前記圧力検出手段が予作動弁22の開放による減圧を検出すると、加圧送水装置21を始動し、消火水槽10から消火用水を圧送する。
【0055】
真空ポンプ制御盤52は、消火システム制御盤5とも電気的に接続され、火災時は、上述した第3の制御手段からの信号によって、真空ポンプ24の運転を停止するように制御する。
【0056】
なお、真空ポンプ制御盤52は、消火システム制御盤5からの信号に依らず、後述するように、自律的に消火ポンプ24を制御するようにしても良い。
<スプリンクラ消火設備の動作>
以下、実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備の動作について説明する。
【0057】
このスプリンクラ消火設備は、運転を開始する前に予め二次側配管12内の水を抜いてある。そして運転開始後の平常時(監視状態)においては、二次側配管12は充水せず、真空ポンプ24を起動させて二次側配管12内及び真空配管14内が大気圧より低い負圧としている、乾式の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備である。
【0058】
これら二次側配管12内及び真空配管14内は、立ち下がり配管13とスプリンクラヘッド2との接続部等から徐々に空気が流入し、次第に負圧である管内圧力が上がってくる(大気圧に近づいてくる)。負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が所定の圧力以上となったことを真空スイッチ53で検出した場合、真空ポンプ制御盤52が真空ポンプ24を作動させて、二次側配管12内及び真空配管14内の負圧を一定以下の圧力に保っている。
【0059】
平常時、一次側配管11は予作動弁22まで充水され、二次側配管12内及び真空配管14内は充水されていない状態となっている。
【0060】
防護区画1で火災が発生すると、火災を感知した火災感知器3は火災受信機4へ火災発報信号を送出し、この火災発報信号を受信した火災受信機4は、所定の火災判断アルゴリズムによって火災判断を行い、火災と判断したときは消火システム制御盤5に火災信号を送出する。
【0061】
その後スプリンクラヘッド2のコンシールド部2aが火災の熱で落下すると、コンシールド部落下検出スイッチ2bがコンシールド部落下信号を送出し、消火システム制御盤5は中継器51を介して、スプリンクラヘッド2のコンシールド部2aの落下を検出する。
【0062】
前記火災信号と前記コンシールド部落下信号の両方を検出したとき、消火システム制御盤5に備わる第1の制御手段は、放水を行うための制御を行う。すなわち、遠隔起動弁22bを開放することによって予作動弁22を開放し、二次側配管12に消火用水を供給する(充水する)。
【0063】
予作動弁22が開放された後、これに伴って一次側配管11の圧力が低下する。この圧力低下を図示しない圧力検出手段が検出し、この圧力検出手段からの圧力低下信号を受けた消火ポンプ制御盤6は加圧送水装置21を始動し、二次側配管12へ向かって消火用水を圧送する。なお、予作動弁22が開放されて消火用水が二次側配管12へ流れると、予作動弁22に設けられた流水信号用スイッチ22aは、中継器51を介して消火システム制御盤5に流水信号を送出する。この流水信号を受信した消火システム制御盤5は、放水中であることを表示する。
【0064】
また、予作動弁22を開放するとき、消火システム制御盤5の第2の制御手段は開閉弁31を閉止するように制御する。開閉弁31を電動の開閉弁に代えて前記した逆止弁とした場合は、二次側配管12内の圧力によって開閉弁31は自律的に閉止する。この場合、消火システム制御盤5に第2の制御手段は不要である。
【0065】
このように予作動弁22を開放し、加圧送水装置21によって消火用水を二次側配管12へ圧送するとき、二次側配管12と真空ポンプ24との間に介在する真空配管14は、開閉弁31によって閉止される。したがって、二次側配管12から真空配管14を介して真空ポンプ24に消火用水が流入することはない。これによって、真空ポンプ24が水を吸引して過負荷となることを防止し、真空ポンプ24の故障や破損を防ぐ。
【0066】
このとき、真空配管14が閉塞されるので、真空ポンプ24が作動すると閉切運転となってしまい、真空ポンプ24と真空配管14に負荷がかかって破損する虞がある。
【0067】
そこで、開閉弁31を閉止するとき、消火システム制御盤5に備わる第3の制御手段が真空ポンプ制御盤52に真空ポンプ24の運転停止信号を送出するようにしておく。すなわち火災受信機4からの火災信号とコンシールド部落下検出スイッチ2aの作動を検出したときに真空ポンプ24の運転を停止し、真空ポンプ24が閉切運転となることを防止する。
【0068】
なお、真空ポンプ制御盤52は、消火システム制御盤5からの信号に依らず、自律的に消火ポンプ24を停止制御するようにしても良い。すなわち、真空スイッチ53で所定の圧力以下とならぬように、真空ポンプ制御盤52を介して真空ポンプ24の運転を制御する。その場合、第3の制御手段は不要である。
【0069】
予作動弁22を開放すると、負圧となっている二次側配管12から吸引され、加圧送水装置21には定格を超える流量の消火用水が流れ、ウォーターハンマが発生して、配管等を破損する虞がある。そこで、予作動弁22の一次側または二次側に、火災時の通過流量を一定に制限する流量制御手段23を設けておく。
【0070】
この流量制御手段23としては、定流量弁、オリフィスが用いられる。この流量制御手段23により、二次側配管12内が負圧であることに起因する過流量とはならないので、火災時の放水流量を所定の値に制限してウォーターハンマの発生を防止できる。
【0071】
二次側配管12内を圧送される消火用水は、立ち下がり配管13を介して、スプリンクラヘッド2へ達する。この後、火災の熱によってスプリンクラヘッド2の感熱分解機構が作動して落下し、感熱分解機構によって支持されていた弁体はその支持を失う。このとき、二次側配管12は加圧送水装置21から圧送された消火用水によって加圧されているので、前記弁体は押し出されるように落下し、スプリンクラヘッド2内部の放水口は確実に開栓する。そして開栓したスプリンクラヘッド2から防護区画1に規定放水圧力で放水し、防護区画1で発生した火災を消火する。
【0072】
以上のように、本実施の形態のスプリンクラ消火設備は、以下の条件がすべて揃って初めて放水する。すなわち、火災感知器3の火災発報、火災受信機4の火災判断、火災の熱によるスプリンクラヘッド2のコンシールド部2aの落下、火災の熱によるスプリンクラヘッド2の感熱分解機構の作動、である。
【0073】
したがって、火災感知器3の誤作動、コンシールド部2aの脱落、スプリンクラヘッド2の破損が生じても、水損を起こすことがない。
【0074】
ところで、第1乃至第3の制御手段の制御条件は、いずれも火災受信機4の火災判断アルゴリズムを介して火災と判断した火災感知器3の作動とスプリンクラヘッド2からのコンシールド落下を両方検出することであった。
【0075】
しかしながら、自動火災報知設備は法定定期点検が課せられており、そのようなときは点検時の火災信号を消火システム制御盤5に送出するわけにはいかない。実際に火災が起きているわけではないからである。このようなとき、火災受信機4では、消火システム制御盤5への火災信号を遮断する操作を行う。改修工事などによって、自動火災報知設備が一時的に機能しない状況もあり得る。
【0076】
このとき、実際に火災が発生した場合、上記制御条件が満たされることはないので、このスプリンクラ消火設備が作動することはないが、これは問題である。
【0077】
よって、消火システム制御盤5に単独モードを設定し、自動火災報知設備が機能しないような状況でも、このスプリンクラ消火設備が自動消火可能なものとする。すなわち、火災受信機4からの火災信号がなくても、コンシールド部落下信号だけで、第1乃至第3の制御手段から制御できるようにするものである。
【0078】
この単独モードのときにコンシールド部2aが誤作動すると、二次側配管12に消火用水が圧送され、開閉弁31が閉止し、真空ポンプ24が停止するが、スプリンクラヘッド2が作動しない限り放水されることはない。したがって、自動消火設備として必要最小限の機能を損なうことがないようにできる。
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係るスプリンクラ消火設備について、図2に基づいて説明する。なお、実施の形態1と同一部分は同一の符号を付し、その説明を省略する。
<スプリンクラ消火設備の構成>
まず、本実施の形態2の構成を説明する。
【0079】
本実施の形態のスプリンクラ消火設備が実施の形態1と最も異なる点は、平常時に二次側配管120を充水し、負圧水とする、湿式の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備であることにある。これに応じて、二次側が充水される予作動弁220、予作動弁220に備わる流水信号用スイッチ220a、予作動弁220のパイロット弁である遠隔起動弁220b、平常時に充水される立ち下がり配管130、中継器510が実施の形態1と異なる。
【0080】
また、充水される二次側配管120を負圧とする為に、二次側配管120に連通し、その上方へ突設した立ち上がり分岐管に真空配管14が接続される。これは、前記立ち上がり分岐管の落差によって、二次側配管120内の水が真空配管14に吸い込まれてしまわないようにするものである。
【0081】
そして、前記立ち上がり分岐管の上端には水位検出器32が設けられ、前記立ち上がり分岐管内が所定の水位以下、すなわち所定の圧力以上の負圧となるように制御される。この水位検出器32は中継器510を介して消火システム制御盤5と電気的に接続される。水位検出器32の検出用電極が位置する高さまで充水すると、水位検出器32は充水信号を送出する。その充水信号を受信すると、消火システム制御盤5は真空ポンプ制御盤52を介して真空ポンプ24を停止するように制御する。これによって、二次側配管120内の圧力下限(負圧上限)が定まる。
【0082】
真空配管14に接続された真空スイッチ53は、真空配管14内の圧力が所定の値まで上昇したときに信号を送出する。この信号を受信した真空ポンプ制御盤52は真空ポンプ24を始動し、真空配管14内の圧力上限以下(負圧下限以上)となるように制御する。
【0083】
そして、真空配管14内の圧力が所定の値以下(所定の負圧以上)とならぬよう、真空配管14には真空破壊弁33が設けられる。
【0084】
これら、水位検出器32、真空破壊弁33等、湿式の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備特有の構成と動作は特許文献3に開示されているので、詳細な説明は省略するが、特許文献3の説明が援用される。
【0085】
なお、二次側配管120内は負圧であっても充水されており、予作動弁220を開放したときに過流量となってウォーターハンマを生ずる虞は少ないので、実施の形態1で用いた流量制御手段23は基本的に不要である。
【0086】
その他の構成は、実施の形態1と同様である。
<スプリンクラ消火設備の動作>
以下、実施の形態2に係るスプリンクラ消火設備の動作について説明する。
【0087】
このスプリンクラ消火設備は、運転を開始する前に予め二次側配管120内を充水している。そして運転開始後の平常時(監視状態)においては、二次側配管120は充水され、真空ポンプ24を起動させて二次側配管120内及び真空配管14内が大気圧より低い負圧としている、湿式の負圧型予作動式スプリンクラ消火設備である。
【0088】
火災感知器3が火災発報し、その火災発報信号を受信した火災受信機4が火災判断アルゴリズムによって火災と判断すると消火システム制御盤5へ火災信号を送出する。
【0089】
そして、火災受信機4からの火災信号と、中継器510を介してコンシールド部落下検出スイッチ2bからのコンシールド部落下信号と、を受信すると、消火システム制御盤5の第1の制御手段は予作動弁220を開放する。また、消火システム制御盤5の第2の制御手段は、二次側配管120に連通し、その上方へ突設された前記立ち上がり配管と真空ポンプ24との間に介在する真空配管14に設けた開閉弁310を閉止する。さらに、消火システム制御盤5の第3の制御手段は、真空ポンプ制御盤52を介して真空ポンプ24を停止させる。
【0090】
予作動弁220が開放された後、一次側配管11の圧力低下によって加圧送水装置21が始動し、二次側配管120へ向かって消火用水を圧送する点は、実施の形態1と同様である。
【0091】
そして二次側配管120内の消火用水は速やかに加圧され、火災の熱によって作動したスプリンクラヘッド2内部の放水口は確実に開栓する。そして開栓したスプリンクラヘッド2から防護区画1に規定放水圧力で放水し、防護区画1で発生した火災を消火する。
【0092】
本実施の形態のスプリンクラ消火設備は、実施の形態1と同様の条件がすべて揃って初めて放水する。したがって、火災感知器3の誤作動、コンシールド部2aの脱落、スプリンクラヘッド2の破損が生じても、水損を起こすことがない。
【0093】
単独モードについても、実施の形態1と同様である。
【符号の説明】
【0094】
1 防護区画、 2 スプリンクラヘッド、
2a コンシールド部、 2b コンシールド部落下検出スイッチ、
3 火災感知器、 4 火災受信機、 5 消火システム制御盤、
51 中継器、 52 真空ポンプ制御盤、 53 真空スイッチ
6 消火ポンプ制御盤、 10 消火水槽、 11 一次側配管、
12、120 二次側配管、 13、130 立ち下がり配管、
14 真空配管、 16 排水配管、 21 加圧送水装置、
22、220 予作動弁、
22a、220a 流水信号用スイッチ、 22b、220b 遠隔起動弁、
23 定流量弁、 24 真空ポンプ、 25 末端試験弁、
31 開閉弁、 32 水位検出器、 33 真空破壊弁、
図1
図2