(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体管を密封状に囲繞する筐体の分岐部側から該流体管の穿孔部に取付けられた防食コアの位置まで到達できるように往復移動可能な棒状部材と、該棒状部材の先端部近傍に位置して前記分岐部側からの往動時に前記防食コアの孔部を通過し、前記分岐部側への復動時に前記防食コアに係合する爪部と、から成り、
前記爪部は、前記棒状部材の先端部近傍位置に設けられるとともに、前記棒状部材の適所に設けられた調節装置の操作によって、前記爪部の少なくとも一部が前記棒状部材の方向に作動可能になっており、前記爪部の作動に伴って前記爪部と係合状態の前記防食コアを内径方向に変形させるようにしたことを特徴とする防食コアの離脱装置。
前記爪部は、前記棒状部材の先端部近傍位置から少なくとも2方向に放射状に延びており、前記分岐部側からの往動時に縮径方向に作動して前記防食コアの孔部を通過し、前記防食コアの孔部通過後に拡径方向に作動して前記防食コアに係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の防食コアの離脱装置。
前記爪部は、前記防食コアの孔部を通過後に該防食コアの外周面の一部に当接可能な係止部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の防食コアの離脱装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるように、不断流状態で分岐管側から防食コアを穿孔部に取付けるための工具は従来から存在しているものの、一旦穿孔部に取付けられた防食コアを不断流状態で取外すための離脱装置は開発されてない。そのため例えば、経年劣化した防食コアを新しく交換する必要が生じた場合、または防食コアの取付け作業において正確な取付けが出来なかった場合等において、不断流状態で穿孔部から防食コアを取外すことはできなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不断流状態で穿孔部から防食コアを容易に取外すことができる防食コア離脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の防食コアの離脱装置は、
流体管を密封状に囲繞する筐体の分岐部側から該流体管の穿孔部に取付けられた防食コアの位置まで到達できるように往復移動可能な棒状部材と、該棒状部材の先端部近傍に位置して前記分岐部側からの往動時に前記防食コアの孔部を通過し、前記分岐部側への復動時に前記防食コアに係合する爪部と、から成り、
前記爪部は、前記棒状部材の先端部近傍位置に設けられるとともに、前記棒状部材の適所に設けられた調節装置の操作によって、前記爪部の少なくとも一部が前記棒状部材の方向に作動可能になっており、前記爪部の作動に伴って前記爪部と係合状態の前記防食コアを内径方向に変形させるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、前記棒状部材の適所に設けられた調節装置を用いて、前記爪部の一部を前記棒状部材の方向に作動させることにより、前記爪部と係合状態の防食コアを内径方向に変形させることができる。そのため、該流体管の穿孔部に対して防食コアを縮径でき、強固に固定されている防食コアであっても、その離脱作業を極めて効果的に行うことができる。
【0007】
本発明の防食コアの離脱装置は、
前記爪部は、前記棒状部材の先端部近傍位置から少なくとも2方向に放射状に延びており、前記分岐部側からの往動時に縮径方向に作動して前記防食コアの孔部を通過し、前記防食コアの孔部通過後に拡径方向に作動して前記防食コアに係合するように構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、爪部が少なくとも2方向に放射状に延びていることから、該爪部を相対的に作動させることにより、防食コアを内径方向に強い力で確実に変形することができる。また、防食コアの孔部を通過させる際には、爪部を縮径方向に作動させた状態で通過させるとともに、防食コアの孔部通過後には、爪部を拡径方向に作動して防食コアに係合させることができるため、複数の爪部を防食コアの孔部の内径に限らずに当該防食コア内を通過させることができる。
【0008】
本発明の防食コアの離脱装置は、
前記爪部は、前記防食コアの孔部を通過後に該防食コアの外周面の一部に当接可能な係止部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、係止部が防食コアの孔部を通過した後に該防食コアの外周面に当接し、この係止部が防食コアの外周面に当接した状態で爪部を棒状部材の方向に作動することで、防食コアを外周面から内径方向に狭圧して防食コアの外周面の一部を変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1における流体管の穿孔部に防食コアが取付けられた状態を示す正面断面図である。
【
図3】(a)は、防食コアの離脱装置を示す側断面図であり、(b)は、同じく正面断面図であり、(c)は、同じく底面図である。
【
図4】離脱装置の先端部を防食コアの孔部の入り口近傍位置まで到達させた状態を示す正面断面図である。
【
図5】(a)は、離脱装置の先端部を防食コアの孔部に差込んだ状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく平面断面図である。
【
図6】(a)は、先端部における爪部が防食コアの孔部を通過した後、係止突片を防食コアの周端面に係止した状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく平面断面図である。
【
図7】
図5の状態から係止突片で防食コアの周端面を塑性変形した状態を示す側断面図であり、(b)は、同じく平面断面図である。
【
図8】
図6の状態から離脱装置を引き出して防食コアを穿孔部から離脱させた状態を示す正面断面図である。
【
図9】(a)は、実施例2における防食コアの離脱装置の先端部を示す正面図であり、(b)は、同じくK−K断面図である。
【
図10】(a)は、実施例2における離脱装置の先端部を防食コアの孔部に差込んだ状態を示す正面図であり、(b)は同じくL−L断面図である。
【
図11】(a)は、実施例2における先端部における爪部が防食コアの孔部を通過した後、係止突片を防食コアの周端面に係止した状態を示す正面図であり、(b)は、同じくM−M断面図である。
【
図12】(a)は、
図11の状態から係止突片で防食コアの周端面を塑性変形した状態を示す側断面図であり、(b)は、同じくN−N断面図である。
【
図13】(a)は、実施例3における離脱装置の爪部を拡径させた状態を示す平面断面図であり、(b)は、同じく側断面図である。
【
図14】(a)は、実施例3における離脱装置の爪部を縮径させた状態を示す平面断面図であり、(b)は、同じく側断面図である。
【
図15】(a)〜(c)は、爪部の係止突片の形状における各種変形例を示す一部拡大断面図である。
【
図16】実施例1における離脱装置による防食コアの離脱作業の変形例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る防食コアの離脱装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1に係る防食コアの離脱装置につき、
図1〜
図8を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例の流体管2は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面が粉体塗装あるいはモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0012】
流体管2は第1分割部材3aと第2分割部材3bとから成る本発明の筐体としての筐体3によって狭圧されており、より詳しくは第1分割部材3aの内周面に設けられたシール部材によって流体管2の外周面の一部が密封状に囲繞されている。尚、本実施例の筐体3は、3体以上の複数の分割されたケース体からなる分割構造であってもよいし、若しくは分割構造を有さず、鋳型、或いは、溶接加工や機械加工等で連続形成されていても構わない。更に尚、筐体3の材質は鋳鉄等の金属材により構成されているが、流体管の材質に応じて適用されるものであれば、上記で説明した流体管と同様に種々の材質であってもよい。
【0013】
第1分割部材3aは、流体管2と略垂直方向に延びる分岐部3cが延設されており、この分岐部3cには分岐部3cを開閉可能な開閉弁装置16が取付けられ、さらに開閉弁装置16の先には接続管15を介して図示しない分岐管等が配管されている。また、流体管2の管壁には、図示しない穿孔装置によって穿孔された穿孔部2aが形成され、穿孔部2aを介して流体管2内の流体が前記分岐管側に分岐するようになっている。また、穿孔部2aには、その金属部分が露出した内周面を防食するために防食コア5が取付けられている。この防食コア5は、塑性体から形成されており、図示しない所定の取付け装置により防食コア5の先端側、すなわち穿孔部2aに挿入される側の周端面5aを外周側に向けて塑性変形させることで取付けられている。尚、防食コアは、塑性体から形成されるものに限られず、例えば、弾性体から形成される防食コアを穿孔部に圧接し、弾性変形させて取付けるものでもよい。
【0014】
そして、
図2及び
図3に示される防食コアの離脱装置1は、上述した防食コア5が経年劣化などにより穿孔部2aの防食機能を維持できなくなった場合、若しくは定期交換する場合等に、不断流状態において防食コア5を穿孔部2aより取外すための装置である。
【0015】
図2に示されるように、防食コアの離脱装置1(以下、離脱装置1という)は、防食コア5に係合する各部材を有し、離脱装置1の先端に設けられる先端部9と、該先端部9から後方に延びる棒状部材8と、棒状部材8の後端にあり離脱装置1全体を操作するハンドルシャフト10と、から主に構成されている。
【0016】
図3(a)及び(b)に示されるように、棒状部材8は、内部に軸方向に貫通する貫通部8aが形成されており、この貫通部8aに対し回動軸6が軸方向に回動自在であって密封状に挿通されている。また、
図3(b)に示されるように、回動軸6の先端部は、棒状部材8よりも先端側に突出するとともに、外周面に後述するギア6aが固着されている。また後述するが、回動軸6は、回動軸6の後端部からハンドルシャフト10の外側に突出する本発明の調整装置である操作部6bを適宜回動するようになっている。尚、操作部6bは、操作部6bの形状に合わせた専用若しくは汎用の工具を用いて操作してもよいし、作業者が直接把持して操作できるようにしてもよい。
【0017】
また、
図3(b)及び(c)に示されるように、回動軸6のギア6aには、噛合部13a、13aを介して一対の噛合部材13,13が噛合しており、この噛合部材13,13は、棒状部材8の先端から外径方向に張り出す鍔部8bに取付けられた取付け部7,7によって支持されている。取付け部7,7は、ギア6aを向いて開口する断面視略コ字形状を成しており、噛合部材13,13を内部に収容してそれぞれ支持できるようになっている。
【0018】
また、
図3(c)に示されるように、噛合部材13,13は、回動軸6の軸方向と略直交方向に爪部14,14がそれぞれ延設されている。すなわち、操作部6bを回動操作して回動軸6を適宜回動させることにより、ギア6aと噛合部13aとを介して噛合部材13,13がそれぞれ回動軸6の径方向に作動するようになっており、これに伴って爪部14,14を互いに近接、若しくは離間させる。尚、爪部は、必ずしも2本設けられるものに限らず、例えば1本若しくは3本以上設けられてもよい。
【0019】
更に、
図2及び
図3(a)に示されるように、この爪部14,14は、後に詳述するが防食コア5の周端面5aに当接可能な本発明の係止部である係止突片14a,14aを有しており、係止突片14a,14aは、爪部14,14の延設方向の端部から更に直交方向あるいは略直交方向に延び、防食コア5の周端面5aに当接する面がテーパ状になっている。尚、この爪部14,14は、変形しにくくなっていることが好ましく、例えば、爪部をある程度の厚みで形成することで変形しにくくしてもよいし、比較的剛性を有した硬質の材料で形成することで変形しにくくしてもよい。
【0020】
続いて、離脱装置1を用いて不断流状態で防食コア5を取外す様子を
図4から
図8を用いて説明する。先ず、開閉弁装置16の開閉弁16aを閉操作するとともに、接続管15及び前記流体管網を引き離し、
図3に示されるように、代わりに短管21を取付け、次いで蓋部材12を介して離脱装置1を接続する。より詳しく説明すると、開閉弁装置16に短管21を取付けた後、棒状部材8を蓋部材12の挿通孔12aに密封状に挿通して離脱装置1を取付けた蓋部材12を密封状に接続する。
【0021】
次に作業者は、開閉弁装置16を開操作するとともに、前述したハンドルシャフト10を押し込み操作して離脱装置1を流体管2方向へ送り込み、先端部9を穿孔部2aに装着された防食コア5の孔部5Aの入り口近傍位置まで到達させる。
【0022】
続いて
図5(a)に示されるように、ハンドルシャフト10を押し込み操作して更に先端部9を送り込み、防食コア5の孔部5Aに差込む。このとき、
図5(a)及び(b)に示されるように、本実施例1において、棒状部材8が回動しないように固定した状態で操作部6bを回動操作して、爪部14,14を互いに近づけた状態とし、この状態でハンドルシャフト10を押し込み操作して先端部9を流体管2方向へ送り込み、先端部9を防食コア5の孔部5Aに差込む。このように操作することで、爪部14,14の径を防食コア5の内周面より小さくできるため、先端部9を防食コア5の孔部5Aに挿入することができるようになっている。
【0023】
次に
図6(a)に示されるように、更に先端部9を送り込んでいき、爪部14,14を孔部5Aに完全に通過させる。その後、
図6(a)及び(b)に示されるように、操作部6bを回動操作して爪部14,14を互いに離間させた状態とし、その係止突片14a,14aを防食コア5の周端面5aにそれぞれ当接させる。
【0024】
そして、
図7に示されるように、係止突片14a,14aを防食コア5の周端面5aに当接させた状態で、操作部6bを回動操作して再度爪部14,14を互いに近づける。これにより、防食コア5が内径方向に狭圧されて、防食コア5の周端面5aが流体管2の穿孔部2aよりも小径になるように塑性変形するようになる。その後、
図8に示されるように、ハンドルシャフト10を引き出して、防食コア5を穿孔部2aより離脱させる。そして、その後は、特に図示しないが、穿孔部2aから離脱した防食コア5を先端部9と共に開閉弁装置16を通過させ、通過した時点で開閉弁16aを再度閉操作するとともに、短管21、蓋部材12を取外すことで防食コア5の取外し作業を完了する。
【0025】
以上説明したように、棒状部材8に設けられた操作部6bを操作して、爪部14、14を互いに近づけた方向に作動させることにより、防食コア5の周端面5aと係合状態の係止突片14a,14aにより狭圧することができ、防食コア5が内径方向に塑性変形される。そのため、流体管2の穿孔部2aに対して防食コア5を縮径でき、強固に固定されている防食コア5であっても、その離脱作業を極めて効果的に行うことができる。
【0026】
また、防食コア5の孔部5Aに先端部9を挿入する際、爪部14,14が防食コア5の孔部5Aよりも縮径方向に作動した状態でスムーズに通過されるとともに、防食コア5の孔部5A通過後に爪部14,14を拡径方向に作動して防食コアに係合させることができる。
【0027】
また、爪部14,14を互いに近接させること、すなわち爪部14,14の径の縮径や、拡径の調整により、取外すべき防食コア5の形状に合わせて爪部14,14の位置を適宜変更できるため、種々の形状の防食コア5に対応可能である。
【0028】
尚、本実施例における係止突片は、多岐にわたる形状が考えられ、例えば
図15(a)から(c)の係止突片141a,142a及び143aに示されるような形状であってもよい。例えば
図15(a)に示されるように、爪部141の係止突片141aは、防食コア5の周端面5aに当接する面141dを垂直に形成して、防食コア5の外周面5bにおける垂直面との当接面積を増やすようにしてもよい。
【0029】
また、
図15(b)に示されるように、爪部142の係止突片142aは、その端部に防食コア5の周端面5aに向けて突出するフック142dを設けて、防食コア5の周端面5aとの当接面積を減らし、上述した防食コア5を一部内径方向へ変形させる場合に、該当接点に押圧力を集中させるようにしてもよい。
【0030】
また、
図15(c)に示されるように、爪部143の係止突片143aは、防食コア5の周端面5aに当接する面に複数の凹凸の摩擦部143dを設けることによって、係止突片143aと防食コア5の周端面5aとの摩擦力を向上させてもよい。
【実施例2】
【0031】
次に、実施例2に係る防食コアの離脱装置につき、
図9から
図12を用いて説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0032】
まず、実施例2の防食コアの離脱装置11本体について
図9を用いて説明する。
図9(b)に示されるように、離脱装置11は、防食コア5に係合する各部材を有する先端部90と、該先端部90から延びる棒状部材80と、棒状部材80の後端にあり離脱装置11を操作するハンドルシャフト100と、から主に構成されており、ハンドルシャフト100の中央には後述する調整装置150が設けられている。
【0033】
図9に示されるように、棒状部材80の先端は、外径方向に張り出す鍔部80bとなっており、鍔部80bの外周面には、棒状部材80の先端側に延びる取付け部70、70が対向して取付けられている。この取付け部70は、
図9(a)のように間隙70aがそれぞれ形成されており、この間隙70a,70aに後述する摺動部材40,40を介して爪部140、140がそれぞれ配設されるようになっている。
【0034】
棒状部材80は、棒状部材80の内部に軸方向に貫通する貫通部80aに対し移動軸60が進退移動自在に配設されているとともに、この移動軸60の先端側は、棒状部材80よりも先端側に突出している。この移動軸60に棒状部材80よりも先端側に突出した部分には、前述した摺動部材40,40を互いに近接、若しくは離間方向に摺動させる第1テーパ部材51及び第2テーパ部材52が移動軸60の軸方向に離間して設けられている。第1テーパ部材51は、摺動部材40,40のテーパ面40a,40aに対応する角度に傾斜するテーパ面51a,51aを備えているとともに、第2テーパ部材52は、摺動部材40,40のテーパ面40b,40bに対応する角度に傾斜するテーパ面52a,52aを備えている。
【0035】
また、移動軸60は、前述した調整装置150によってその進退移動が調整できるようになっている。詳しくは、調整装置150は、ハンドルシャフト100側から貫通部80a内に挿入される調整ネジ152と、調整ネジ152の後端に設けられハンドルシャフト100の外側に突出する操作部151と、から構成されており、調整ネジ152は、移動軸60の後端に螺設されたネジ穴60aに螺合されている。また移動軸60は、貫通部80aにOリングにより密封状に挿通されるとともに、貫通部80aに軸方向に形成されたキー溝(図示略)に係合されている。
【0036】
すなわち、操作部151を回動操作して調整ネジ152を適宜回動させることにより、移動軸60が貫通部80aの前記したキー溝に沿って、棒状部材80に対して周方向に移動規制された状態で軸方向に進退移動するようになっている。この移動軸60の退行移動時には、摺動部材40,40が第1テーパ部材51のテーパ面51a,51aに沿って摺動されることにより、爪部140,140の位置が相対的に近付くように位置移動するようになっている。また、移動軸60の進行移動時には、摺動部材40,40がテーパ面52a,52aに沿って摺動されることにより、爪部140,140の位置が離間するように位置移動するようになっている。
【0037】
続いて、離脱装置11を用いて不断流状態で防食コア5を取外す様子を
図10及び
図12を用いて説明する。先ず、図面での説明は省略するが、前記実施例と同様に開閉弁装置16の開閉弁16aを閉操作するとともに、接続管15及び前記流体管網を引き離し、短管21を取付け、次いで蓋部材12を介して離脱装置11を接続する。
【0038】
次に
図10に示されるように、作業者は、前述した操作部151を回動操作して移動軸60を軸方向に退行移動させることにより、第1テーパ部材51のテーパ面51a,51aを摺動部材40,40のテーパ面40a,40aに押し当て、爪部140,140を互いに近づけた状態とし、この状態でハンドルシャフト100を押し込み操作して先端部90を流体管2方向へ送り込み、先端部90を防食コア5の孔部5Aに差込む。このように操作することで、爪部140,140の径が防食コア5の内周面より小さくできるため、先端部90を防食コア5の孔部5Aに挿入し易い。
【0039】
次に
図11に示されるように、更に先端部90を送り込み、爪部140,140を防食コア5の孔部5Aに完全に通過させる。その後、操作部151を回動操作して移動軸60を軸方向に進行移動させることにより、第2テーパ部材52のテーパ面52a,52aを摺動部材40,40のテーパ面40b,40bに押し当て、爪部140,140を互いに離間させた状態とし、その係止突片140a,140aを防食コア5の周端面5aにそれぞれ当接させる。
【0040】
そして、
図12に示されるように係止突片140a,140aを防食コア5の周端面5aに係合させた状態で、操作部151を回動操作して再度移動軸60を軸方向に退行移動させることで、防食コア5を狭圧して内径方向に塑性変形させ、ハンドルシャフト100を引き出して防食コア5を穿孔部2aより離脱させる。
【実施例3】
【0041】
次に、実施例3に係る防食コアの離脱装置につき、
図13及び
図14を用いて説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0042】
実施例3の防食コアの離脱装置111本体について
図13を用いて説明する。
図13(a)及び(b)に示されるように、棒状部材80’の先端は、外径方向に張り出す平面視略円形状の鍔部80b’となっており、鍔部80b’には、鍔部80b’の周縁付近から中心に向かって螺旋状に所定長さ延び、軸方向に貫通する長孔18,18が棒状部材80’を挟んだ対角の位置に設けられている。また、この長孔18,18には、ネジやワッシャや軸受け等から成る接続部材28,28が長孔18,18に挿入されており、接続部材28,28には、鍔部80b’を介して爪部240,240が接続されている。
【0043】
また、棒状部材80’は、棒状部材80’の内部に軸方向に貫通する貫通部80a’に配設される回動軸160に回動可能であって密封状に外嵌されており、この回動軸160の先端側は、棒状部材80’よりも先端側に突出しているとともに、回動軸160と略直交方向に張り出す平面視略円形状の張出部160aを備えている。この張出部160aは、爪部240,240と同軸に延びる案内部160c、160cが鍔部80b’側に突設されており、この案内部160cと案内部160cとの間に爪部240,240が配置されている。
【0044】
続いて、爪部240,240の径の縮径や、拡径を調整する様子を説明する。
図13に示されるように、爪部240,240を拡径させた状態において、接続部材28,28は、長孔18,18における鍔部80b’の周縁付近にそれぞれ位置している。
【0045】
次に、図示しないが、作業者が操作部160bを操作部160bの形状に合わせた専用若しくは汎用の工具を用いて回動不能に固定した状態とし、この状態でハンドルシャフト100’を棒状部材80’の軸周りに回動させると、
図14に示されるように、鍔部80b’が回動し、それに伴い、接続部材28,28が長孔18,18における鍔部80b’の中央付近に向けて径方向にガイドされるようになる。このとき接続部材28,28に接続された爪部240,240は、回動不能に固定された案内部160c、160cに配置されているため、棒状部材80’の軸周りに回動することがなく、案内部160c、160cに案内されて爪部240,240が互いに近付いて径が縮径される。
【0046】
このように構成された離脱装置111は、図示しないが上記実施例と同様に、爪部240,240の径を縮径した状態で防食コア5の孔部5Aに差し込み、防食コア5の孔部5Aを完全に通過させた後、爪部240,240の径を拡径した状態とし、その係止突片240a,240aを防食コア5の周端面5aにそれぞれ当接させ、その後、再度爪部240,240の径を縮径し、防食コア5を狭圧して内径方向に塑性変形させ、ハンドルシャフト100’を引き出して防食コア5を穿孔部2aより離脱させる。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0048】
例えば、前記実施例では、防食コア5の周端面5aを穿孔部2aの内側に塑性変形させて取付けられた防食コア5に対し、爪部14,14の係止突片14a,14aを当接させ、爪部14,14を互いに近づけることで狭圧して防食コア5を塑性変形させる態様について説明したが、防食コアの周端面を塑性変形させず、穿孔部にそのままの状態で挿入して取付ける場合、防食コアの周端面に係合する係合部を設ければ、特段に係止突片を設けずともよい。
【0049】
また、例えば、離脱装置による防食コアの離脱作業を行う際において、
図16に示されるように、分岐部3cにおける側面に導入開口3dを設け、導入開口3dからカメラ部30a及び操作軸30bから成る画像取得装置30を密封状に挿入し、すなわち離脱装置1と直交する方向から挿入される画像取得装置30によって防食コア5の周辺を確認しながら、離脱装置1による離脱作業を行ってもよい。また、
図16においては、実施例1の離脱装置1を利用しているが、離脱装置はこれに限らない。
【0050】
また、例えば、本実施例では、先端部9に対抗方向に2本設けられた爪部14,14を互いに近づけることで防食コア5を両側より塑性変形させて穿孔部2aから取外す構成の態様で説明しているが、1つの爪部のみ先端部に有する構成であってもよく、この場合、爪部により防食コア5の周方向における所定の箇所を塑性変形させた後、ハンドルシャフトを回転させて爪部の位置を変更して、当該箇所とは別の箇所、例えば対向する箇所等を塑性変形させることで穿孔部2aから防食コア5を取外し易くするようにしてもよい。
【0051】
また、爪部による防食コア5の外周を変形させる態様は実施例に限られず、爪部における一部が棒状部材の方向に作動可能であればどのような態様であってもよく、例えば、爪部の一部が棒状部材側に向けて突出するように設計してもよい。
【0052】
また、本実施例では、何種類かの爪部及び係止突片の形状を説明してきたが、係止突片の形状は上述したような防食コア5の外周面5bに当接する形状に限らず、例えば、防食コア5の周端面5aに突き刺す針状に形成されてもよいし、防食コア5の対向する内周面及び外周面から挟持する形状等としてもよい。